説明

タイヤ

【課題】ゴム成分として天然ゴム分子中に極性基を含有する変性天然ゴムと、補強用充填剤として特定構造の含水ケイ酸とを含有ゴム組成物をタイヤ部材に用いることにより、加工性に優れると共に、低燃費性、耐摩耗性及び耐破壊性に優れたタイヤを提供する。
【解決手段】天然ゴム分子中に極性基を含有する変性天然ゴムと、含水ケイ酸とを含有してなるゴム組成物であって、含水ケイ酸のセチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)(m/g)と音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の直径の最頻値Aac(nm)とが下記式(I)
ac≧−0.76×(CTAB)+274・・・(I)
を満たすゴム組成物をタイヤ部材に用いたことを特徴とするタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低発熱性、耐摩耗性、加工性に優れたタイヤに関し、更に詳しくは、補強用充填剤として特定構造の含水ケイ酸、ゴム成分として変性天然ゴムを含有するゴム組成物をタイヤ部材に用いた低発熱性、耐摩耗性、加工性に優れたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム用補強充填剤としては、カーボンブラックが使用されている。これは、カーボンブラックがゴム組成物に高い耐摩耗性を付与し得るからである。近年、省資源、省エネルギーの社会的な要請に伴い、自動車の燃料消費節約を目的として、タイヤゴムの低発熱も同時に求められるようになってきた。カーボンブラックの単独使用で低発熱化を図ろうとする場合、カーボヘンブラックの充填量を減らす、あるいは、粒径の大きいものを使用することが考えられるが、いずれの場合も補強、耐摩耗性、湿潤路面でのグリップ性が低下するのを避けられないことが知られている。一方、低発熱性を向上させるために充填剤としてシリカが知られているが(例えば、特許文献1〜4)、シリカはその表面官能基であるシラノール基の水素結合により粒子同士が凝集する傾向にあり、また、シラノール基は親水性を有する−OH基のためにゴム分子とのぬれ性が良くなく、ゴム中へのシリカの分散は悪い。これをよくするためには混練時間を長くする必要がある。また、ゴム中へのシリカの分散が不十分なためゴム組成物のムーニー粘度が高くなり、押出しなどの加工性に劣るなどの欠点を有していた。さらに、シリカ粒子の表面が酸性であることから、ゴム組成物を加硫する際に、加硫促進剤として使用される塩基性物質を吸着し、加硫が十分行われず、弾性率が上がらないという欠点も有していた。
【0003】
これらの欠点を改良するために、シランカップリング剤が開発されたが、依然としてシリカの分散は十分なレベルには達しておらず、特に工業的に良好なシリカ粒子の分散を得ることは困難であった。そこで、疎水化剤で表面を処理したシリカを混練してシランカップリング剤の反応を促進することが行われている(特許文献1)。
【0004】
また、特許文献5には、疎水性沈降ケイ酸を用いることが開示されているが、完全疎水化処理した沈降ケイ酸を用いているので、シランカップリング剤が反応する表面シラノール基が存在しなくなるため、ゴムの補強が十分にとれないという欠点があった。さらに、低発熱性を高めるため、シリカを大粒径化することが行われているが、大粒径化することでシリカの比表面積が低下し、補強性が悪くなる。特許文献6には、特殊形状のシリカを用いることが開示されているが、ゴム組成物の低発熱性、耐摩耗性が十分ではない。
【0005】
一方、昨今、自動車の低燃費化に対する要求が強くなりつつあり、転がり抵抗の小さいタイヤが求められている。そのため、タイヤのトレッド等に使用するゴム組成物として、tanδが低く(以下、「低ロス性」とする)、低発熱性に優れたゴム組成物が求められている。また、トレッド用のゴム組成物においては、低ロス性に加え、安全性及び経済性の観点から、耐摩耗性及び破壊特性に優れることが求められる。これに対して、ゴム成分にカーボンブラックやシリカ等の補強性充填剤を配合したゴム組成物の低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性を改良するには、ゴム組成物中の補強性充填剤とゴム成分との親和性を向上させることが有効である。
【0006】
例えば、ゴム組成物中の補強性充填剤とゴム成分との親和性を向上させ、補強性充填剤による補強効果を向上させるために、末端変性により補強性充填剤との親和性を向上させた合成ゴム(例えば、特許文献7、8、9、10、及び11参照)や、主鎖の変性により補強性充填剤との親和性を向上させた合成ゴム(例えば、特許文献12、及び13参照)等が開発されている。
しかしながら、本発明者らが、上記特許文献7〜13に記載の変性合成ゴムを用いたゴム組成物の低発熱性、耐摩耗性及び耐破壊性について検討したところ、該ゴム組成物は、一般的な合成ゴムを用いたゴム組成物に比べて低発熱性、耐摩耗性及び耐破壊性に優れるものの、十分とは言えず、依然として改良の余地があることが分った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−248116号公報
【特許文献2】特開平7−70369号公報
【特許文献3】特開平8−245838号公報
【特許文献4】特開平3−252431号公報
【特許文献5】特開平6−157825号公報
【特許文献6】特開2006−37046号公報
【特許文献7】国際公開2003/046020号パンフレット
【特許文献8】特表2004−513987号公報
【特許文献9】特開平11−29603号公報
【特許文献10】特開2003−113202号公報
【特許文献11】特公平6−29338号公報
【特許文献12】特表2003−534426号公報
【特許文献13】特開2002−201310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の各課題に鑑み、これを解消しようとするものであり、含水ケイ酸の分散を改良すると共に、従来の変性合成ゴムを用いたゴム組成物に比べて、更に、耐摩耗性と低発熱性、加工性を共に大幅に改善したゴム組成物をタイヤ部材に用いたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来技術の課題等について鋭意検討した結果、ゴム成分と含水ケイ酸とを少なくとも含有するゴム組成物をタイヤ部材に用いたタイヤにおいて、ゴム成分として特定物性となる変性天然ゴムを用いると共に、含水ケイ酸として特定構造を持たせることで、低発熱性が得られる一方、耐摩耗性、補強性、加工性が大幅に改善されたタイヤが得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0010】
すなわち、本発明のタイヤは、次に(1)〜(11)に存する。
(1) 天然ゴム分子中に極性基を含有する変性天然ゴムと、含水ケイ酸とを含有してなるゴム組成物であって、含水ケイ酸のセチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)(m/g)と音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の直径の最頻値Aac(nm)とが下記式(I)
ac≧−0.76×(CTAB)+274・・・(I)
を満たすゴム組成物をタイヤ部材に用いたことを特徴とするタイヤ。
(2) 含水ケイ酸が、その灼熱減量(750℃で3時間加熱した時の質量減少%)と加熱減量(105℃で2時間加熱した時の質量減少%)とが下記式(II)
(灼熱減量)−(加熱減量)≦3・・・(II)
を満たすことを特徴とする上記(1)に記載のタイヤ。
(3) 含水ケイ酸が、音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の直径の最頻値が1μm以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のタイヤ。
(4) 含水ケイ酸が、CTABが50〜250m/gであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のタイヤ。
(5) ゴム成分100質量部に対して含水ケイ酸を10〜150質量部を配合してなることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のタイヤ。
(6) 変性天然ゴムの極性基が、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、アルコキシシリル基及びスズ含有基からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のタイヤ。
(7) 変性天然ゴムの極性基含有量が、変性天然ゴムのゴム成分に対して0.001〜0.5mmol/gであることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のタイヤ。
(8) 更に、ゴム成分として、変性合成ゴムを含有することを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のタイヤ。
(9) 変性合成ゴムは、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体又は共重合体である上記(8)に記載のタイヤ。
(10) 変性合成ゴムは、分子末端が変性されている上記(8)または(9)に記載のタイヤ。
(11) 変性合成ゴムは、主鎖が変性されている上記(8)または(9)に記載のタイヤ。
【0011】
なお、本発明で使用する含水ケイ酸は、後述するように、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ塩水溶液を硫酸等の鉱酸で中和することにより含水ケイ酸を析出、沈殿させる方法、いわゆる沈殿法含水ケイ酸の製造方法に準じた方法により得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ゴム成分として天然ゴム分子中に極性基を含有する変性天然ゴムと、補強用充填剤として特定構造の含水ケイ酸とを含有ゴム組成物をタイヤ部材に用いることにより、加工性に優れると共に、低燃費性、耐摩耗性及び耐破壊性に優れたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】各実施例、各比較例で使用した含水ケイ酸のCTABとAacの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明のタイヤは、天然ゴム分子中に極性基を含有する変性天然ゴムと、含水ケイ酸とを含有してなるゴム組成物であって、含水ケイ酸のセチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)(m/g)と音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の直径の最頻値Aac(nm)とが下記式(I)
ac≧−0.76×(CTAB)+274・・・(I)
を満たすゴム組成物をタイヤ部材に用いたことを特徴とするものである。
【0015】
本発明のゴム組成物に含まれるゴム成分となる変性天然ゴム(A)は、tanδ低減により転がり抵抗が改善され低発熱性を発揮すると共に、未変性の天然ゴムに比べて補強性充填剤である含水ケイ酸に対する親和性が高い。また、本発明のゴム組成物に含まれる後述する変性天然ゴムと共に用いる変性合成ゴム(B)も、tanδ低減により転がり抵抗が改善され低発熱性を発揮すると共に、未変性の合成ゴムに比べて補強性充填剤である含水ケイ酸に対する親和性が高い。そして、変性天然ゴム(更に、含有する変性合成ゴム)と、上記含水ケイ酸とを用いた本発明のゴム組成物をタイヤ部材へ用いたものは、変性天然ゴムと、特定構造の含水ケイ酸との相乗効果により、ゴム成分に対する補強性充填剤である含水ケイ酸の分散性が著しく高く、含水ケイ酸の補強効果が更に十分に発揮されて、加工性と共に、破壊特性及び耐摩耗性に優れる上、低発熱性(低ロス性)が大幅に向上するものである。
【0016】
上記変性天然ゴム(A)の製造には、原料として、天然ゴムラテックスを用いてもよいし、天然ゴム、天然ゴムラテックス凝固物及び天然ゴムカップランプからなる群から選択される少なくとも一種の固形天然ゴム原材料を用いてもよい。
【0017】
例えば、天然ゴムラテックスを原料とする場合は、極性基含有変性天然ゴムラテックスを製造し、更に凝固及び乾燥させることで、極性基含有変性天然ゴムを得ることができる。ここで、極性基含有変性天然ゴムラテックスの製造方法としては、特に限定されず、例えば、(A1)天然ゴムラテックスに極性基含有単量体を添加し、該極性基含有単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させる方法、(A2)天然ゴムラテックスに極性基含有メルカプト化合物を添加し、該極性基含有メルカプト化合物を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子に付加させる方法、(A3)天然ゴムラテックスに極性基含有オレフィン及びメタセシス触媒を加え、該メタセシス触媒によって天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子に極性基含有オレフィンを反応させる方法が挙げられる。
【0018】
上記変性天然ゴム(A)の製造に用いる天然ゴムラテックスとしては、特に限定されず、例えば、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、界面活性剤や酵素で処理した脱タンパク質ラテックス、及びこれらを組み合せたもの等を用いることができる。
【0019】
上記天然ゴムラテックスに添加される極性基含有単量体は、分子内に少なくとも一つの極性基を有し、天然ゴム分子とグラフト重合できる限り特に制限されるものでない。ここで、該極性基含有単量体は、天然ゴム分子とグラフト重合するために、分子内に炭素−炭素二重結合を有することが好ましく、極性基含有ビニル系単量体であることが好ましい。上記極性基の具体例としては、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、アルコキシシリル基、及びスズ含有基等を好適に挙げることができる。これら極性基を含有する単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0020】
上記アミノ基を含有する単量体としては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくとも1つのアミノ基を含有する重合性単量体が挙げられる。該アミノ基を有する重合性単量体の中でも、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等の第3級アミノ基含有単量体が特に好ましい。これらアミノ基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。ここで、第1級アミノ基含有単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、4−ビニルアニリン、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、第2級アミノ基含有単量体としては、(1)アニリノスチレン、β−フェニル−p−アニリノスチレン、β−シアノ−p−アニリノスチレン、β−シアノ−β−メチル−p−アニリノスチレン、β−クロロ−p−アニリノスチレン、β−カルボキシ−p−アニリノスチレン、β−メトキシカルボニル−p−アニリノスチレン、β−(2−ヒドロキシエトキシ)カルボニル−p−アニリノスチレン、β−ホルミル−p−アニリノスチレン、β−ホルミル−β−メチル−p−アニリノスチレン、α−カルボキシ−β−カルボキシ−β−フェニル−p−アニリノスチレン等のアニリノスチレン類、(2)1−アニリノフェニル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−3−メチル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−3−クロロ−1,3−ブタジエン、3−アニリノフェニル−2−メチル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−3−メチル−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−3−クロロ−1,3−ブタジエン等のアニリノフェニルブタジエン類、(3)N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド等のN−モノ置換(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。更に、第3級アミノ基含有単量体としては、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート及びN,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。上記N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン等のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル等が挙げられ、これらの中でも、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が特に好ましい。また、上記N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヘキシルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物等が挙げられ、これらの中でも、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が特に好ましい。
【0021】
上記ニトリル基を含有する単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。これらニトリル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0022】
上記ヒドロキシル基を含有する単量体としては、1分子中に少なくとも1つの第1級、第2級及び第3級ヒドロキシル基を有する重合性単量体が挙げられる。かかる単量体としては、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体、ヒドロキシル基含有ビニルエーテル系単量体、ヒドロキシル基含有ビニルケトン系単量体等が挙げられる。ここで、ヒドロキシル基含有単量体の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数は、例えば、2〜23である)のモノ(メタ)アクリレート類;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有不飽和アミド類;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、m−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ビニルベンジルアルコール等のヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物類等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物が好ましく、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体が特に好ましい。ここで、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエステル、アミド、無水物等の誘導体が挙げられ、これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等のエステルが特に好ましい。これらヒドロキシル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0023】
上記カルボキシル基を含有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラコン酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸類;フタル酸、コハク酸、アジピン酸等の非重合性多価カルボン酸と、(メタ)アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和化合物とのモノエステルのような遊離カルボキシル基含有エステル類及びその塩等が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸類が特に好ましい。これらカルボキシル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0024】
上記エポキシ基を含有する単量体としては、(メタ)アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−オキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらエポキシ基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0025】
上記含窒素複素環基を含有する単量体において、該含窒素複素環としては、ピロール、ヒスチジン、イミダゾール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。なお、該含窒素複素環は、他のヘテロ原子を環中に含んでいてもよい。ここで、含窒素複素環基としてピリジル基を含有する単量体としては、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等のピリジル基含有ビニル化合物等が挙げられ、これらの中でも、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が特に好ましい。これら含窒素複素環基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0026】
上記アルコキシシリル基を含有する単量体としては、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジベンジロキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルベンジロキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、6−トリメトキシシリル−1,2−ヘキセン、p−トリメトキシシリルスチレン等が挙げられる。これらアルコキシシリル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0027】
上記スズ含有基を有する単量体としては、アリルトリ−n−ブチルスズ、アリルトリメチルスズ、アリルトリフェニルスズ、アリルトリ−n−オクチルスズ、(メタ)アクリルオキシ−n−ブチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリメチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリフェニルスズ、(メタ)アクリルオキシ−n−オクチルスズ、ビニルトリ−n−ブチルスズ、ビニルトリメチルスズ、ビニルトリフェニルスズ、ビニルトリ−n−オクチルスズ等のスズ含有単量体を挙げることができる。これらスズ含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0028】
上記極性基含有単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させる場合は、上記極性基含有単量体の天然ゴム分子へのグラフト重合を、乳化重合で行う。ここで、該乳化重合においては、一般的に、天然ゴムラテックスに水及び必要に応じて乳化剤を加えた溶液中に、上記極性基含有単量体を加え、更に重合開始剤を加えて、所定の温度で撹拌して極性基含有単量体を重合させることが好ましい。なお、上記極性基含有単量体の天然ゴムラテックスへの添加においては、予め天然ゴムラテックス中に乳化剤を加えてもよいし、極性基含有単量体を乳化剤で乳化した後に天然ゴムラテックス中に加えてもよい。なお、天然ゴムラテックス及び/又は極性基含有単量体の乳化に使用できる乳化剤としては、特に限定されず、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のノニオン系の界面活性剤が挙げられる。
【0029】
上記重合開始剤としては、特に制限はなく、種々の乳化重合用の重合開始剤を用いることができ、その添加方法についても特に制限はない。一般に用いられる重合開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロライド、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。なお、重合温度を低下させるためには、レドックス系の重合開始剤を用いることが好ましい。かかるレドックス系重合開始剤において、過酸化物と組み合せる還元剤としては、例えば、テトラエチレンペンタミン、メルカプタン類、酸性亜硫酸ナトリウム、還元性金属イオン、アスコルビン酸等が挙げられる。レドックス系重合開始剤における過酸化物と還元剤との好ましい組み合せとしては、tert−ブチルハイドロパーオキサイドとテトラエチレンペンタミンとの組み合せ等が挙げられる。上記変性天然ゴム(A)を用いて、ゴム組成物の加工性を低下させることなく低ロス性及び耐摩耗性を向上させるには、各天然ゴム分子に上記極性基含有単量体が少量且つ均一に導入されることが重要であるため、上記重合開始剤の添加量は、上記極性基含有単量体に対し1〜100mol%の範囲が好ましく、10〜100mol%の範囲が更に好ましい。
【0030】
上述した各成分を反応容器に仕込み、30〜80℃で10分〜7時間反応させることで、天然ゴム分子に上記極性基含有単量体がグラフト共重合した変性天然ゴムラテックスが得られる。また、該変性天然ゴムラテックスを凝固させ、洗浄後、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー等の乾燥機を用いて乾燥することで変性天然ゴム(A)が得られる。ここで、変性天然ゴムラテックスを凝固するのに用いる凝固剤としては、特に限定されるものではないが、ギ酸、硫酸等の酸や、塩化ナトリウム等の塩が挙げられる。
【0031】
上記天然ゴムラテックスに添加されて、該天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子に付加反応する極性基含有メルカプト化合物は、分子内に少なくとも一つのメルカプト基と該メルカプト基以外の極性基とを有する限り特に制限されるものでない。上記極性基の具体例としては、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、合酸素複素環基、アルコキシシリル基、及びスズ含有基等を好適に挙げることができる。これら極性基を含有するメルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0032】
上記アミノ基を含有するメルカプト化合物としては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくとも1つのアミノ基を有するメルカプト化合物が挙げられる。該アミノ基を有するメルカプト化合物の中でも、第3級アミノ基含有メルカプト化合物が特に好ましい。ここで、第1級アミノ基含有メルカプト化合物としては、4−メルカプトアニリン、2−メルカプトエチルアミン、2−メルカプトプロピルアミン、3−メルカプトプロピルアミン、2−メルカプトブチルアミン、3−メルカプトブチルアミン、4−メルカプトブチルアミン等が挙げられる。また、第2級アミノ基含有メルカプト化合物としては、N−メチルアミノエタンチオール、N−エチルアミノエタンチオール、N−メチルアミノプロパンチオール、N−エチルアミノプロパンチオール、N−メチルアミノブタンチオール、N−エチルアミノブタンチオール等が挙げられる。更に、第3級アミノ基含有メルカプト化合物としては、N,N−ジメチルアミノエタンチオール、N,N−ジエチルアミノエタンチオール、N,N−ジメチルアミノプロパンチオール、N,N−ジエチルアミノプロパンチオール、N,N−ジメチルアミノブタンチオール、N,N−ジエチルアミノブタンチオール等のN,N−ジ置換アミノアルキルメルカプタン等が挙げられる。これらアミノ基含有メルカプト化合物の中でも、2−メルカプトエチルアミン及びN,N−ジメチルアミノエタンチオール等が好ましい。これらアミノ基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0033】
上記ニトリル基を有するメルカプト化合物としては、2−メルカプトプロパンニトリル、3−メルカプトプロパンニトリル、2−メルカプトブタンニトリル、3−メルカプトブタンニトリル、4−メルカプトブタンニトリル等が挙げられ、これらニトリル基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0034】
上記ヒドロキシル基を含有するメルカプト化合物としては、1分子中に少なくとも1つの第1級、第2級又は第3級ヒドロキシル基を有するメルカプト化合物が挙げられる。該ヒドロキシル基含有メルカプト化合物の具体例としては、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプト−2−プロパノール、4−メルカプト−1−ブタノール、4−メルカプト−2−ブタノール、3−メルカプト−1−ブタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、3−メルカプト−1−ヘキサノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプトベンジルアルコール、2−メルカプトフェノール、4−メルカプトフェノール等が挙げられ、これらの中でも、2−メルカプトエタノール等が好ましい。これらヒドロキシル基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0035】
上記カルボキシル基を含有するメルカプト化合物としては、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸、メルカプトマロン酸、メルカプトコハク酸、メルカプト安息香酸等が挙げられ、これらの中でも、メルカプト酢酸等が好ましい。これらカルボキシル基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0036】
上記含窒素複素環基を含有するメルカプト化合物において、該含窒素複素環としては、ピロール、ヒスチジン、イミダゾール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。なお、該含窒素複素環は、他のヘテロ原子を環中に含んでいてもよい。ここで、含窒素複素環基としてピリジル基を含有するメルカプト化合物としては、2−メルカプトピリジン、3−メルカプトピリジン、4−メルカプトピリジン、5−メチル−2−メルカプトピリジン、5−エチル−2−メルカプトピリジン等が挙げられ、また、他の含窒素複素環基を含有するメルカプト化合物としては、2−メルカプトピリミジン、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトイミダゾール等が挙げられ、これらの中でも、2−メルカプトピリジン、4−メルカプトピリジン等が好ましい。これら含窒素複素環基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0037】
上記アルコキシシリル基を含有するメルカプト化合物としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらの中でも、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が好ましい。これらアルコキシシリル基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0038】
上記スズ含有基を有するメルカプト化合物としては、2−メルカプトエチルトリ−n−ブチルスズ、2−メルカプトエチルトリメチルスズ、2−メルカプトエチルトリフェニルスズ、3−メルカプトプロピルトリ−n−ブチルスズ、3−メルカプトプロピルトリメチルスズ、3−メルカプトプロピルトリフェニルスズ等のスズ含有メルカプト化合物を挙げることができる。これらスズ含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0039】
上記極性基含有メルカプト化合物を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子に付加させる場合は、一般に、天然ゴムラテックスに水及び必要に応じて乳化剤を加えた溶液中に、上記極性基含有メルカプト化合物を加え、所定の温度で撹拌することで、上記極性基含有メルカプト化合物を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子の主鎖の二重結合に付加反応させる。なお、上記極性基含有メルカプト化合物の天然ゴムラテックスヘの添加においては、予め天然ゴムラテックス中に乳化剤を加えてもよいし、極性基含有メルカプト化合物を乳化剤で乳化した後に天然ゴムラテックスに加えてもよい。また、必要に応じて、更に有機過酸化物を添加することもできる。なお、天然ゴムラテックス及び/又は極性基含有メルカプト化合物の乳化に使用できる乳化剤としては、特に限定されず、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のノニオン系の界面活性剤が挙げられる。
【0040】
ゴム組成物の加工性を低下させることなく低ロス性及び耐摩耗性を向上させるには、各天然ゴム分子に上記極性基含有メルカプト化合物が少量且つ均一に導入されることが重要であるため、上記変性反応は、撹拌しながら行うことが好ましく、例えば、天然ゴムラテックス及び極性基含有メルカプト化合物等の上記成分を反応容器に仕込み、30〜80℃で10分〜24時間反応させることで、天然ゴム分子に上記極性基含有メルカプト化合物が付加した変性天然ゴムラテックスが得られる。
【0041】
上記天然ゴムラテックスに添加される極性基含有オレフィンは、分子内に少なくとも一つの極性基を有し、また、天然ゴム分子とクロスメタセシス反応するために炭素−炭素二重結合を有する。ここで、上記極性基の具体例としては、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、アルコキシシリル基、及びスズ含有基等を好適に挙げることができる。これら極性基含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0042】
上記アミノ基を含有するオレフィンとしては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくとも1つのアミノ基を含有するオレフィンが挙げられる。該アミノ基を有するオレフィンの中でも、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等の第3級アミノ基含有オレフィンが特に好ましい。これらアミノ基含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。ここで、第1級アミノ基含有オレフィンとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、4−ビニルアニリン、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、第2級アミノ基含有オレフィンとしては、(1)アニリノスチレン、β−フェニル−p−アニリノスチレン、β−シアノ−p−アニリノスチレン、β−シアノ−β−メチル−p−アニリノスチレン、β−クロロ−p−アニリノスチレン、β−カルボキシ−p−アニリノスチレン、β−メトキシカルボニル−p−アニリノスチレン、β−(2−ヒドロキシエトキシ)カルボニル−p−アニリノスチレン、β−ホルミル−p−アニリノスチレン、β−ホルミル−β−メチル−p−アニリノスチレン、α−カルボキシ−β−カルボキシ−β−フェニル−p−アニリノスチレン等のアニリノスチレン類、(2)1−アニリノフェニル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−3−メチル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−3−クロロ−1,3−ブタジエン、3−アニリノフェニル−2−メチル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−3−メチル−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−3−クロロ−1,3−ブタジエン等のアニリノフェニルブタジエン類、(3)N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド等のN−モノ置換(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。更に、第3級アミノ基含有オレフィンとしては、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート及びN,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。上記N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン等のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル等が挙げられ、これらの中でも、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が特に好ましい。また、上記N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヘキシルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物等が挙げられ、これらの中でも、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が特に好ましい。
【0043】
上記ニトリル基を含有するオレフィンとしては、(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。これらニトリル基含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0044】
上記ヒドロキシル基を含有するオレフィンとしては、1分子中に少なくとも1つの第1級、第2級及び第3級ヒドロキシル基を有するメタセシス反応性オレフィンが挙げられる。かかるオレフィンとしては、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系オレフィン、ヒドロキシル基含有ビニルエーテル系オレフィン、ヒドロキシル基含有ビニルケトン系オレフィン等が挙げられる。ここで、ヒドロキシル基含有オレフィンの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数は、例えば、2〜23である)のモノ(メタ)アクリレート類;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有不飽和アミド類;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、m−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ビニルベンジルアルコール等のヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物類等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系オレフィン、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物が好ましく、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系オレフィンが特に好ましい。ここで、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系オレフィンとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエステル、アミド、無水物等の誘導体が挙げられ、これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等のエステルが特に好ましい。これらヒドロキシル基含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0045】
上記カルボキシル基を含有するオレフィンとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラコン酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸類;フタル酸、コハク酸、アジピン酸等の非重合性多価カルボン酸と、(メタ)アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和化合物とのモノエステルのような遊離カルボキシル基含有エステル類及びその塩等が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸類が特に好ましい。これらカルボキシル基含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0046】
上記エポキシ基を含有するオレフィンとしては、(メタ)アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−オキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらエポキシ基含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0047】
上記含窒素複素環基を含有するオレフィンにおいて、該含窒素複素環としては、ピロール、ヒスチジン、イミダゾール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。なお、該含窒素複素環は、他のヘテロ原子を環中に含んでいてもよい。ここで、含窒素複素環基としてピリジル基を含有するオレフィンとしては、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等のピリジル基含有ビニル化合物等が挙げられ、これらの中でも、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が特に好ましい。これら含窒素複素環基含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0048】
上記アルコキシシリル基を含有するオレフィンとしては、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジベンジロキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルベンジロキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、6−トリメトキシシリル−1,2−ヘキセン、p−トリメトキシシリルスチレン等が挙げられる。これらアルコキシシリル基含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0049】
上記スズ含有基を有するオレフィンとしては、アリルトリ−n−ブチルスズ、アリルトリメチルスズ、アリルトリフェニルスズ、アリルトリ−n−オクチルスズ、(メタ)アクリルオキシ−n−ブチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリメチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリフェニルスズ、(メタ)アクリルオキシ−n−オクチルスズ、ビニルトリ−n−ブチルスズ、ビニルトリメチルスズ、ビニルトリフェニルスズ、ビニルトリ−n−オクチルスズ等のスズ含有単量体を挙げることができる。これらスズ含有オレフィンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0050】
メタセシス触媒によって天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子に極性基含有オレフィンを反応させる場合は、一般に、天然ゴムラテックスに水及び必要に応じて乳化剤を加えた溶液中に、上記極性基含有オレフィンを加え、更にメタセシス触媒を加えて、所定の温度で撹拌して天然ゴム分子と極性基含有オレフィンをメタセシス反応させる。ここで、上記極性基含有オレフィンの天然ゴムラテックスへの添加においては、予め天然ゴムラテックス中に乳化剤を加えてもよいし、極性基含有オレフィンを乳化剤で乳化した後に天然ゴムラテックス中に加えてもよい。なお、天然ゴムラテックス及び/又は極性基含有オレフィンの乳化に使用できる乳化剤としては、特に限定されず、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のノニオン系の界面活性剤が挙げられる。
【0051】
上記メタセシス触媒としては、天然ゴム分子と上記極性基含有オレフィンとのメタセシス反応に対して触媒作用を有する限り特に制限されず、種々のメタセシス触媒を用いることができる。該メタセシス触媒は、遷移金属を含有するが、天然ゴムラテックス中で使用するため、水に対する安定性が高いことが好ましい。そのため、メタセシス触媒を構成する遷移金属は、ルテニウム、オスミウム及びイリジウムのいずれかであることが好ましい。上記メタセシス触媒として、具体的には、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロライド[RuCl(=CHPh)(PCy]の他、RuCl(=CH−CH=CPh)(PPh、RuCl(=CHPh)(PCp、RuCl(=CHPh)(PPh、RuCl(=CHPh)[CyPCHCHN(CHCl]等を挙げることができる。なお、化学式中、Cyはシクロヘキシル基を示し、Cpはシクロペンチル基を示す。上記メタセシス触媒の添加量は、上記極性基含有オレフィンに対し1〜500mol%の範囲が好ましく、10〜100mol%の範囲が更に好ましい。
【0052】
上述した各成分を反応容器に仕込み、30〜80℃で10分〜24時間反応させることで、天然ゴム分子に上記極性基が導入された変性天然ゴムラテックスが得られる。
【0053】
また、原料として、天然ゴム、天然ゴムラテックス凝固物及び天然ゴムカップランプからなる群から選択される少なくとも一種の天然ゴム原材料を用いる場合は、極性基含有化合物を機械的せん断力を与えて、天然ゴム原材料にグラフト重合又は付加させることにより変性天然ゴムが得られる。
【0054】
上記天然ゴム原材料としては、乾燥後の各種固形天然ゴム、各種天然ゴムラテックス凝固物(アンスモークドシートを包含する)又は天然ゴムカップランプを用いることができ、これら天然ゴム原材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0055】
上記極性基含有化合物を天然ゴム原材料中の天然ゴム分子にグラフト重合させる場合、該極性基含有化合物は、分子内に炭素−炭素二重結合を有することが好ましく、極性基含有ビニル系単量体であることが好ましい。一方、極性基含有化合物を天然ゴム原材料中の天然ゴム分子に付加反応させる場合、該極性基含有化合物は、分子内にメルカプト基を有することが好ましく、極性基含有メルカプト化合物であることが好ましい。
【0056】
上記天然ゴム原材料と極性基含有化合物との混合物に機械的せん断力を与える手段としては、二軸押出混練装置及びドライプリブレーカーが好ましい。ここで、極性基含有化合物を天然ゴム原材料中の天然ゴム分子にグラフト重合させる場合は、上記機械的せん断力を与えられる装置内に天然ゴム原材料及び極性基含有化合物(好ましくは、極性基含有ビニル系単量体)と共に重合開始剤を投入し、機械的せん断力を与えることで、天然ゴム原材料中の天然ゴム分子に極性基含有化合物をグラフト重合により導入することができる。また、極性基含有化合物を天然ゴム原材料中の天然ゴム分子に付加反応させる場合は、上記機械的せん断力を与えられる装置内に天然ゴム原材料及び極性基含有化合物(好ましくは、極性基含有メルカプト化合物)を投入し、必要に応じて有機過酸化物等を更に投入して、機械的せん断力を与えることで、天然ゴム原材料中の天然ゴム分子の主鎖の二重結合に極性基含有化合物を付加反応させることができる。ここで使用する極性基含有化合物としては、上述した極性基含有単量体、極性基含有メルカプト化合物、極性基含有オレフィン等が挙げられる。
【0057】
上述した各成分を機械的せん断力を与えられる装置内に仕込み、機械的せん断力を与えることで、天然ゴム分子に上記極性基含有化合物がグラフト重合又は付加した変性天然ゴム(A)が得られる。なお、この際、天然ゴム分子の変性反応を加温して行ってもよく、好ましくは30〜160℃、より好ましくは50〜130℃の温度で行うことで、十分な反応効率で変性天然ゴムを得ることができる。
【0058】
上記変性天然ゴムの極性基含有量は、変性天然ゴム中のゴム成分に対して0.001〜0.5mmol/gの範囲が好ましく、0.002〜0.3mmol/gの範囲が更に好ましく、0.003〜0.2mmol/gの範囲がより一層好ましい。変性天然ゴム(A)の極性基含有量が0.001mmol/g未満では、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性を十分に改良できないことがある。また、変性天然ゴム(A)の極性基含有量が0.5mmol/gを超えると、粘弾性、S−S特性(引張試験機における応力−歪曲線)等の天然ゴム本来の物理特性を大きく変えてしまい、天然ゴム本来の優れた物理特性が損なわれると共に、ゴム組成物の加工性が大幅に悪化するおそれがある。
【0059】
更に、本発明では、上記変性天然ゴムと共に、ゴム成分として変性合成ゴム(B)を含有せしめることができる。
用いることができる上記変性合成ゴム(B)としては、特に制限はなく、公知の変性合成ゴムを使用することができる。例えば、変性合成ゴムとしては、単量体として共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を使用し、該共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体又は共重合体の分子末端及び又は主鎖を変性したものを使用することができる。具体的に、分子末端を変性した公知の変性合成ゴムとしては、国際公開2003/046020号、特表2004−513987号、特開平11−29603号、特開2003−113202号、及び特公平6−29338号に開示の変性合成ゴムを例示することができ、主鎖を変性した公知の変性合成ゴムとしては、特表2003−534426号、及び特開2002−201310号に開示の変性合成ゴムを例示することができる。
【0060】
上記変性合成ゴムの合成に用いる単量体に関し、共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、また、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン及び2,4,6−トリメチルスチレン等が挙げられる。
【0061】
分子末端が変性された変性合成ゴムは、例えば、(B1−1)上記単量体をリビング重合させた後、活性末端を変性剤で変性させる方法、(B1−2)上記単量体を官能基を有する重合開始剤を用いてリビング重合させる方法等で製造することができる。なお、上記リビング重合は、アニオン重合で行ってもよいし、配位重合で行ってもよく、また、(B1−1)と(B1−2)を組み合せた方法、即ち、上記単量体を官能基を有する重合開始剤を用いてリビング重合させた後、活性末端を変性剤で変性させる方法を採用してもよい。
【0062】
また、主鎖が変性された変性合成ゴムは、例えば、(B2−1)上記単量体の(共)重合体に極性基含有単量体をグラフト重合させる方法、(B2−2)上記単量体と極性基含有単量体を共重合させる方法、(B2−3)上記単量体の(共)重合体に極性基含有化合物を付加させる方法等で製造することができる。なお、極性基含有単量体を用いた共重合は、乳化重合で行ってもよいし、リビングアニオン重合やリビングラジカル重合であってもよく、上記単量体と極性基含有単量体の共重合体は、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物から選択される単量体と極性基含有単量体とがブロック重合したものであってもよい。また、上記(B2−1)共役ジエン化合物や芳香族ビニル化合物等の(共)重合体に極性基含有モノマーをグラフト重合させる方法、並びに上記(B2−2)共役ジエン化合物や芳香族ビニル化合物等と極性基含有モノマーを共重合させる方法において、使用する極性基含有単量体としては、上述の変性天然ゴムの項で例示した極性基含有単量体等を使用することができる。また、上記(B2−3)共役ジエン化合物や芳香族ビニル化合物等の(共)重合体に極性基含有化合物を付加させる方法において、使用する極性基含有化合物としては、変性天然ゴム(A)の項で例示した極性基含有メルカプト化合物等を使用することができる。
【0063】
アニオン重合で活性末端を有する(共)重合体を製造する場合、重合開始剤としては、リチウム化合物が好ましく、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が更に好ましい。なお、アニオン重合における重合開始剤の使用量は、単量体100g当り0.2〜20mmolの範囲が好ましい。上記ヒドロカルビルリチウムとしては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等が挙げられる。また、上記リチウムアミド化合物としては、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチムジ−2−エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムメチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられる。
【0064】
上記リチウムアミド化合物として、式:Li−AM[式中、AMは、下記式(III):
【化1】

(式中、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基である)で表される置換アミノ基又は下記式(IV):
【化2】

(式中、Rは、3〜16のメチレン基を有するアルキレン基、置換アルキレン基、オキシアルキレン基又はN−アルキルアミノ−アルキレン基を示す)で表される環状アミノ基である]で表されるリチウムアミド化合物を用いることで、式(III)で表される置換アミノ基及び式(IV)で表される環状アミノ基からなる群から選択される少なくとも一種の窒素含有官能基が導入された変性合成ゴムが得られる。
【0065】
上記式(III)において、Rは、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、3−フェニル−1−プロピル基及びイソブチル基等が好適に挙げられる。なお、Rは、それぞれ同じでも異なってもよい。また、上記式(IV)において、Rは、3〜16個のメチレン基を有するアルキレン基、置換アルキレン基、オキシアルキレン基又はN−アルキルアミノ−アルキレン基である。ここで、置換アルキレン基には、一置換から八置換のアルキレン基が含まれ、置換基としては、炭素数1〜12の鎖状若しくは分枝状アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。また、Rとして、具体的には、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オキシジエチレン基、N−アルキルアザジエチレン基、ドデカメチレン基及びヘキサデカメチレン基等が好ましい。
【0066】
上記リチウムアミド化合物は、二級アミンとリチウム化合物から予備調製して重合反応に用いてもよいが、重合系中で生成させてもよい。ここで、二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソブチルアミン等の他、アザシクロヘプタン(即ち、ヘキサメチレンイミン)、2−(2−エチルヘキシル)ピロリジン、3−(2−プロピル)ピロリジン、3,5−ビス(2−エチルヘキシル)ピペリジン、4−フェニルピペリジン、7−デシル−1−アザシクロトリデカン、3,3−ジメチル−1−アザシクロテトラデカン、4−ドデシル−1−アザシクロオクタン、4−(2−フェニルブチル)−1−アザシクロオクタン、3−エチル−5−シクロヘキシル−1−アザシクロヘプタン、4−ヘキシル−1−アザシクロヘプタン、9−イソアミル−1−アザシクロヘプタデカン、2−メチル−1−アザシクロヘプタデセ−9−エン、3−イソブチル−1−アザシクロドデカン、2−メチル−7−t−ブチル−1−アザシクロドデカン、5−ノニル−1−アザシクロドデカン、8−(4’−メチルフェニル)−5−ペンチル−3−アザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、1−ブチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン、8−エチル−3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン、1−プロピル−3−アザビシクロ[3.2.2]ノナン、3−(t−ブチル)−7−アザビシクロ[4.3.0]ノナン、1,5,5−トリメチル−3−アザビシクロ[4.4.0]デカン等の環状アミンが挙げられる。また、リチウム化合物としては、上記ヒドロカルビルリチウムを用いることができる。
【0067】
一方、配位重合で活性末端を有する(共)重合体を製造する場合、重合開始剤としては、希土類金属化合物を用いるのが好ましく、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分を組み合わせて用いることが更に好ましい。
【0068】
上記配位重合に用いる(a)成分は、希土類金属化合物、及び希土類金属化合物とルイス塩基との錯化合物等から選択される。ここで、希土類金属化合物としては、希土類元素のカルボン酸塩、アルコキサイド、β−ジケトン錯体、リン酸塩及び亜リン酸塩等が挙げられ、ルイス塩基としては、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、1価又は2価のアルコール等が挙げられる。上記希土類金属化合物の希土類元素としては、ランタン、ネオジム、プラセオジム、サマリウム、ガドリニウムが好ましく、これらの中でも、ネオジムが特に好ましい。また、(a)成分として、具体的には、ネオジムトリ−2−エチルヘキサノエート,それとアセチルアセトンとの錯化合物,ネオジムトリネオデカノエート,それとアセチルアセトンとの錯化合物,ネオジムトリn−ブトキシド等が挙げられる。これら(a)成分は一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
上記配位重合に用いる(b)成分は、有機アルミニウム化合物から選択される。該有機アルミニウム化合物として、具体的には、式:RAlで表されるトリヒドロカルビルアルミニウム化合物、式:RAlH又はRAlHで表されるヒドロカルビルアルミニウム水素化物(式中、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜30の炭化水素基である)、炭素数1〜30の炭化水素基をもつヒドロカルビルアルミノキサン化合物等が挙げられる。該有機アルミニウム化合物として、具体的には、トリアルキルアルミニウム,ジアルキルアルミニウムヒドリド,アルキルアルミニウムジヒドリド,アルキルアルミノキサン等が挙げられる。これらの化合物は一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。なお、(b)成分としては、アルミノキサンと他の有機アルミニウム化合物とを併用するのが好ましい。
【0070】
上記配位重合に用いる(c)成分は、加水分解可能なハロゲンを有する化合物又はこれらとルイス塩基の錯化合物;三級アルキルハライド、ベンジルハライド又はアリルハライドを有する有機ハロゲン化物;非配位性アニオン及び対カチオンからなるイオン性化合物等から選択される。かかる(c)成分として、具体的には、アルキルアルミニウム二塩化物、ジアルキルアルミニウム塩化物、四塩化ケイ素、四塩化スズ、塩化亜鉛とアルコール等のルイス塩基との錯体、塩化マグネシウムとアルコール等のルイス塩基との錯体、塩化ベンジル,塩化t−ブチル,臭化ベンジル,臭化t−ブチル、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。これら(c)成分は一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0071】
上記重合開始剤は、上記の(a),(b),(c)成分以外に、必要に応じて、重合用単量体と同じ共役ジエン化合物及び/又は非共役ジエン化合物を用いて予備的に調製してもよい。また、(a)成分又は(c)成分の一部又は全部を不活性な固体上に担持して用いてもよい。上記各成分の使用量は、適宜設定することができるが、通常、(a)成分は単量体100g当たり0.001〜0.5mmolである。また、モル比で(b)成分/(a)成分は5〜1000、(c)成分/(a)成分は0.5〜10の範囲が好ましい。
【0072】
上記活性末端を有する(共)重合体の活性末端を変性剤で変性するにあたって、変性剤としては、窒素含有化合物、ケイ素含有化合物、スズ含有化合物等を用いることができる。
【0073】
上記変性剤として用いることができる窒素含有化合物としては、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)、N−メチルピロリドン、4−ジメチルアミノベンジリデンアニリン、4,4’−ビス(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(N,N−ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−(N,N−ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、[4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル]メチルエチルケトン、4,4’−ビス(1−ヘキサメチレンイミノメチル)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(1−ピロリジノメチル)ベンゾフェノン、4−(1−ヘキサメチレンイミノメチル)ベンゾフェノン、4−(1−ピロリジノメチル)ベンゾフェノン、[4−(1−ヘキサメチレンイミノ)フェニル]メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0074】
また、変性剤として用いる窒素含有化合物は、更にクロロスルフェニル基又はクロロスルフォニル基を有していてもよく、窒素に加えてクロロスルフェニル基又はクロロスルフォニル基を有する変性剤としては、特開平11−29603号に開示の2,4−ジニトロベンゼンスルフェニルクロライド、4−ニトロベンゼンスルフェニルクロライド、4−ニトロベンゼンスルフォニルクロライド、2−アセタミドベンゼンスルフォニルクロライド、1−アミノナフチル−5−スルフォニルクロライド、キノリンスルフォニルクロライド、ジメチルスルファモイルクロライド、ジメチルスルフォニルクロライド、2,4−ジニトロベンゼンスルフォニルクロライド等を使用することができる。
【0075】
なお、上記窒素含有化合物による変性に先立って、活性末端を有する(共)重合体に特開2003−113202号に開示の極性基を有する1,1−ジフェニルエチレン化合物を反応させておいてもよく、該1,1−ジフェニルエチレン化合物として、具体的には、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン等を使用することができる。
【0076】
また、上記変性剤として用いることができるケイ素含有化合物としては、ヒドロカルビルオキシシラン化合物が好ましく、下記式(V):
【化3】

〔式中、Aは(チオ)エポキシ、(チオ)インシアネート、(チオ)ケトン、(チオ)アルデヒド、イミン、アミド、イソシアヌル酸トリエステル、(チオ)カルボン酸ヒドロカルビルエステル、(チオ)カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物及び炭酸ジヒドロカルビルエステルの中から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基で;R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基で;Rは単結合又は炭素数1〜20の二価の不活性炭化水素基であり;nは1〜3の整数であり;ORが複数ある場合、複数のORはたがいに同一でも異なっていてもよく;また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない〕又は下記式(VI):
−Si−(OR4−p ・・・ (VI)
〔式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり;pは0〜2の整数であり;ORが複数ある場合、複数のORはたがいに同一でも異なっていてもよく;また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない〕で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物が更に好ましい。
【0077】
上記式(V)に関し、Aにおける官能基の中で、イミンはケチミン、アルジミン、アミジンを包含し、(チオ)カルボン酸エステルは、アクリレートやメタクリレート等の不飽和カルボン酸エステルを包含する。また、(チオ)カルボン酸の金属塩の金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Sn、Zn等を挙げることができる。また、nは1〜3の整数であるが、3が好ましく、nが2又は3の場合、各ROは、同一でも異なってもよい。
【0078】
及びRとしては、炭素数1〜20のアルキル基,炭素数2〜18のアルケニル基,炭素数6〜18のアリール基,炭素数7〜18のアラルキル基等が挙げられる。ここで、上記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状,枝分かれ状,環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,オクチル基,デシル基,ドデシル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基,ビニル基,プロぺニル基,アリル基,ヘキセニル基,オクテニル基,シクロペンテニル基,シクロヘキセニル基等が挙げられる。また、上記アリール基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基等が挙げられる。更に、上記アラルキル基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよく、例えば、ベンジル基,フェネチル基,ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0079】
の内の炭素数1〜20の二価の不活性炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキレン基が好ましい。該アルキレン基は、直鎖状,枝分かれ状,環状のいずれであってもよいが、特に直鎖状のものが好適である。該直鎖状アルキレン基としては、メチレン基,エチレン基,トリメチレン基,テトラメチレン基,ペンタメチレン基,ヘキサメチレン基,オクタメチレン基,デカメチレン基,ドデカメチレン基等が挙げられる。
【0080】
式(V)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物が好ましい。
【0081】
一方、式(VI)において、R及びRについては、それぞれ上記式(V)におけるR及びRについて説明したとおりである。式(VI)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン等が挙げられ、これらの中でも、テトラエトキシシランが好ましい。
【0082】
なお、上記ヒドロカルビルオキシシラン化合物により(共)重合体の変性(一次変性)を行った後、該変性(共)重合体を、多価アルコールのカルボン酸部分エステルと更に反応させてもよいし、縮合促進剤を加え、残存又は新たに加えられたヒドロカルビルオキシシラン化合物により変性(二次変性)してもよい。ここで、多価アルコールのカルボン酸部分エステルとしては、ソルビタンモノラウリン酸エステル、ソルビタンモノパルミチン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタントリステアリン酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステル、ソルビタントリオレイン酸エステル等を使用することができ、縮合促進剤としては、国際公開2003/046020号に開示の酸化数2のスズのカルボン酸塩、酸化数4のスズ化合物、酸化数4チタン化合物等を使用することができる。
【0083】
また、上記変性剤としては、下記式(VII):
ZX ・・・ (VII)
〔式中、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基からなる群から選択され;Zは、スズ又はケイ素であり;Xは、それぞれ独立して塩素又は臭素であり;aは0〜3で、bは1〜4で、但し、a+b=4である〕で表されるカップリング剤も好ましい。式(VII)のカップリング剤で変性した共役ジエン系重合体は、少なくとも一種のスズ−炭素結合又はケイ素−炭素結合を有する。ここで、Rとして、具体的には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、ネオフィル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。式(VII)のカップリング剤としては、四塩化スズ、RSnCl、RSnCl、RSnCl等が好ましく、四塩化スズが特に好ましい。
【0084】
上記変性剤による変性反応は、溶液反応で行うのが好ましく、該溶液中には、重合時に使用した単量体が含まれていてもよい。また、変性反応の反応形式は特に制限されず、バッチ式でも連続式でもよい。更に、変性反応の反応温度は、反応が進行する限り特に限定されず、重合反応の反応温度をそのまま採用してもよい。なお、変性剤の使用量は、(共)重合体の製造に使用した重合開始剤1molに対し、0.25〜3.0molの範囲が好ましく、0.5〜1.5molの範囲が更に好ましい。
【0085】
本発明に用いるゴム組成物において、ゴム成分として、上記変性合成ゴムを併用する場合は、上記変性天然ゴムと上記変性合成ゴムとの質量比(A/B)は、90/10〜10/90の範囲であることが好ましい。変性天然ゴム(A)と変性合成ゴム(B)との合計に占める変性天然ゴム(A)の割合が10質量%未満では、変性天然ゴム(A)を使用する効果が十分に発揮されない恐れがあり、一方、変性天然ゴム(A)と変性合成ゴム(B)との合計に占める変性合成ゴム(B)の割合が10質量%未満では、変性合成ゴム(B)を使用する効果が十分に発揮されない恐れがある。
【0086】
本発明で用いる構造性の含水ケイ酸は、シリカやカーボンブラックなどで一般に測定されている方法で測定した特性値が、次のよう関係を満たすことで確認できる。
即ち、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)(m/g)と音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の数の最頻値の直径Aac(nm)とが下記式(I)
ac≧−0.76×(CTAB)+274・・・(I)
を満たし、好ましくは灼熱減量(750℃で3時間加熱した時の質量減少%)と加熱減量(105℃で2時間加熱した時の質量減少%)とが下記式(II)
(灼熱減量)−(加熱減量)≦3・・・(II)
を満たす含水ケイ酸である。
【0087】
セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)は、含水ケイ酸表面に対するセチルトリメチルアンモニウムブロミドの吸着量から算出した含水ケイ酸の比表面積(m/g)である。
CTABの測定は、ASTM D3765−92記載の方法に準拠して行うことができる。ASTM D3765−92記載の方法は、カーボンブラックのCTABを測定する方法であるので、若干の修正を加える。即ち、カーボンブラックの標準品を使用せず、セチルトリメチルアンムニウムブロミド(以下、CE−TRABと略記する)標準液を調製し、これによって含水ケイ酸OT(ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)溶液の標定を行い、含水ケイ酸表面に対するCE−TRAB1分子当たりの吸着断面積を0.35nmとしてCE−TRABの吸着量から、比表面積を算出する。
【0088】
本発明で用いる含水ケイ酸は、CTABが50〜250m/g、好ましくは100〜200m/gであることが望ましい。CTABが50m/g未満であるとゴム組成物の貯蔵弾性率が著しく低下し、250m/gより大きいと未加硫時のゴム組成物の粘度が上昇するおそれがある。
【0089】
含水ケイ酸の粒子径として、音響式粒度分布測定装置によって測定した径(音響式粒度分布径)が構造性の発達の指標になる。含水ケイ酸の粒子は、微粒径の粒子が一次凝集したものと、僅かに二次凝集しているものも含んでいる。
音響式粒度分布測定装置による測定は、含水ケイ酸の0.01M KCl水溶液を超音波で5分間分散処理し、泡を除去して二次凝集体を破壊した後、測定する。含水ケイ酸の一次凝集体の粒径と粒子数の分布が得られ、このうち、最も頻度が多く現われた粒子の直径をAac(nm)とすると、
ac≧−0.76×(CTAB)+274・・・(I)
を満足するとき、ゴム組成物の低発熱性と耐摩耗性が共に改善される。Aacが、この条件を満たさない時、低発熱性と耐摩耗性のどちらか又は両方が低下する。さらに、Aacは、1μm以下であることが好ましい。1μmより大きいと含水ケイ酸が破壊核となり、ゴム組成物の力学的特性が損なわれる虞がある。
【0090】
さらに、本発明で用いる含水ケイ酸を加熱した時の質量の減少(%)と灼熱した時の質量減少(%)の差が、
(灼熱減量)−(加熱減量)≦3・・・(II)
であることが好ましい。
加熱減量及び灼熱減量は、JIS K6220−1ゴム用配合剤の試験方法に準じて行い、加熱減量は通常105±2℃で2時間加熱した時の質量の減少%、灼熱減量は通常750±25℃で3時間強熱した時の質量の減少%である。
【0091】
本発明で用いる含水ケイ酸の使用量は、ゴム成分100質量部、好ましくは、上記変性天然ゴム100質量部、または、上記変性天然ゴムと上記変性合成ゴムとの合計100質量部に対して、10〜150質量部である。
上記含水ケイ酸の使用量が10質量部未満であると、本発明の効果を発揮することができず、一方、150質量部を越えると、加工性が低下することとなる。
【0092】
本発明で使用する含水ケイ酸は、沈殿法含水ケイ酸の製造方法に準じて製造される。例えば、予め一定量の温水を張り込んだ反応容器中に、pH、温度を制御しながらケイ酸ナトリウムおよび硫酸を入れ、一定時間添加して含水ケイ酸スラリーを得る。
続いて、該含水ケイ酸スラリーをフィルタープレス等のケーキ洗浄が可能なろ過機により濾別、洗浄して副生電解質を除去した後、得られた含水ケイ酸ケーキをスラリー化し、噴霧乾燥機等の乾燥機を用いて乾燥し製造される。
【0093】
本発明では、シランカップリング剤を用いることが好ましい。シランカップリング剤は含水ケイ酸表面に残存するシラノール基とゴム成分ポリマーと反応して、含水ケイ酸とゴムとの結合橋として作用し補強相を形成する。
本発明で用いられるシランカップリング剤は、好ましくは下記一般式で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも一種である。
【0094】
3−mSi−(CH−S−(CH−SiA3−m
・・・(VIII)
〔式中、AはC2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子であり、Bは炭素数1〜3のアルキル基であり、mは1〜3の整数、aは1〜9の整数、bは1以上の整数で分布を有していてもよい。但し、mが1の時、2つのBは同一でも異なってもよく、mが2又は3の時、2つ又は3つのAは同一でも異なってもよい。〕
【0095】
3−mSi−(CH−Y・・・(IX)
〔式中、AはC2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子であり、Bは炭素数1〜3のアルキル基であり、Yはメルカプト基、ビニル基、アミノ基、グリシドキシ基又はエポキシ基であり、mは1〜3の整数、cは0〜9の整数である。但し、mが1の時、2つのBは同一でも異なってもよく、mが2又は3の時、2つ又は3つのAは同一でも異なってもよい。〕
【0096】
3−mSi−(CH−S−Z・・・(X)
〔式中、AはC2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子であり、Bは炭素数1〜3のアルキル基であり、Zはベンゾチアゾリル基、N,N−ジメチルチオカルバモイル基又はメタクリロイル基であり、mは1〜3の整数、aは1〜9の整数、bは1以上の整数で分布を有していてもよい。但し、mが1の時、2つのBは同一でも異なってもよく、mが2又は3の時、2つ又は3つのAは同一でも異なってもよい。〕
【0097】
具体的には、一般式(VIII)で表されるシランカップリング剤としては、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス−(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス−(3−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、
【0098】
一般式(IX)で表されるシランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、
【0099】
一般式(X)で表されるシランカップリング剤としては、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリロイルモノスルフィドが挙げられる。
【0100】
シランカップリング剤の使用量は、含水ケイ酸の量に対して、1〜20質量%が好ましい。使用量が1質量%未満では、十分なカップリング効果が得られないことがあり、20質量%を超えると、ポリマーのゲル化を引き起こすことがある。
【0101】
本発明のゴム組成物では、上記構造性の含水ケイ酸と共に、更に、SAF、HAF、ISAF、FEF、GPFなどのカーボンブラックを補強用充填剤として用いることができる。カーボンブラックを配合することによって、ゴム組成物の耐摩耗性を更に向上することができる。
カーボンブラックの使用量は、好ましくはゴム成分100質量部に対して80質量部以下で、カーボンブラックと含水ケイ酸を合わせた総配合量が120質量部以下であることが好ましい。総配合量をゴム成分100質量部に対して120質量部以下とすることで、低発熱性及び耐摩耗性を十分に向上させることができる。
【0102】
更に、上記構造性の含水ケイ酸、カーボンブラックの他、本発明の効果を損なわない範囲で、下記一般式(XI):
mM・xSiO・zHO ・・・ (XI)
〔式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり;m、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である〕で表される無機化合物等を用いることができる。
【0103】
上記式(XI)の無機化合物としては、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al・HO);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)];炭酸アルミニウム[Al(CO]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO)、チタン白(TiO)、チタン黒(TiO2n−1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、クレー(Al・2SiO)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al・3SiO・5HO等)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiO等)、ケイ酸カルシウム(CaSiO等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiO等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等を挙げることができる。これら補強性充填剤は、一種単独で用いてもよし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0104】
本発明のゴム組成物には、必要に応じて、ゴム工業で通常使用される配合剤、例えば、他の補強性充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤等を適宜配合することができる。
【0105】
本発明のゴム組成物は、ロール等の開放式混練機やバンバリーミキサー等の密閉式混練機等を用いて混練することにより得られ、成形加工後に加硫を行い、各種タイヤ部材に適用可能である。
【0106】
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いたことを特徴とする。ここで、本発明のタイヤにおいては、上記ゴム組成物をトレッドゴムに用いることが特に好ましく、上記ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、上記変性天然ゴムと上記構造性含水ケイ酸との相乗効果により、加工性に優れると共に、低発熱性であるため転がり抵抗が低く、耐摩耗性に優れるものとなる。本発明のタイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスも使用できる。
【実施例】
【0107】
次に、変性天然ゴムの製造例、変性合成ゴムの製造例、含水ケイ酸の製造例、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例等に何ら限定されるものではない。
また、含水ケイ酸の物性、実施例及び比較例におけるゴム組成物の低発熱性、耐摩耗性、加工性、並びに、タイヤ性能を下記の方法により測定、評価した。
【0108】
<変性天然ゴムの製造例1>
(天然ゴムラテックスの変性反応工程)
フィールドラテックスをラテックスセパレーター[斎藤遠心工業製]を用いて回転数7500rpmで遠心分離して、乾燥ゴム濃度60%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、予め10mLの水と90mgの乳化剤[エマルゲン1108,花王株式会社製]をN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート 3.0gに加えて乳化したものを990mLの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら常温で30分間撹拌した。次に、重合開始剤としてtert−ブチルハイドロパーオキサイド1.2gとテトラエチレンペンタミン1.2gとを加え、40℃で30分間反応させることにより、変性天然ゴムラテックスを得た。
【0109】
(凝固及び乾燥工程)
上記変性天然ゴムラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、変性天然ゴムラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して変性天然ゴムAを得た。このようにして得られた変性天然ゴムAの質量から、単量体として加えたN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートの転化率が100%であることが確認された。また、該変性天然ゴムAを石油エーテルで抽出し、更にアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することによりホモポリマーの分離を試みたが、抽出物を分析したところホモポリマーは検出されず、添加した単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることが確認された。従って、得られた変性天然ゴムAの極性基含有量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.027mmol/gである。
【0110】
<変性天然ゴムの製造例2>
単量体としてN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート3.0gの代わりに、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2.1gを加える以外は、上記製造例1と同様にして変性天然ゴムBを得た。また、変性天然ゴムAと同様にして、変性天然ゴムBを分析したところ、添加した単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることが確認された。従って、変性天然ゴムBの極性基含有量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.027mmol/gである。
【0111】
<変性天然ゴムの製造例3>
単量体としてN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート3.0gの代わりに、4−ビニルピリジン1.7gを加える以外は、上記製造例1と同様にして変性天然ゴムCを得た。また、変性天然ゴムAと同様にして、変性天然ゴムCを分析したところ、添加した単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることが確認された。従って、変性天然ゴムCの極性基含有量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.027mmol/gである。
【0112】
<変性天然ゴムの製造例4>
フィールドラテックスに水を添加して、乾燥ゴム濃度30%のラテックスを得た。このラテックス2000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、予め10mLの水と90mgの乳化剤[エマルゲン1108,花王株式会社製]を2−メルカプトエチルアミン1.2gに加えて乳化したものを添加し、撹拌しながら60℃で8時間反応させることにより、変性天然ゴムラテックスDを得た。その後、製造例1と同様に凝固及び乾燥することにより変性天然ゴムDを得た。また、得られた変性天然ゴムDの極性基含有量を熱分解ガスクロマトグラフ−質量分析計を用いて分析したところ、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.021mmol/gであった。
【0113】
<変性天然ゴムの製造例5>
極性基含有メルカプト化合物として2−メルカプトエチルアミン1.2gの代わりに、2−メルカプトピリジン1.8gを加える以外は、上記製造例4と同様にして変性天然ゴムEを得た。また、得られた変性天然ゴムEの極性基含有量を熱分解ガスクロマトグラフ−質量分析計を用いて分析したところ、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.022mmol/gであった。
【0114】
<変性天然ゴムの製造例6>
上記濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、予め10mLの水と90mgの乳化剤[エマルゲン1108,花王株式会社製]をN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート 3.0gに加えて乳化したものを990mLの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら30分間撹拌した。次に、メタセシス触媒としてビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロライド3.0gを加え、40℃で7時間反応させることにより、変性天然ゴムラテックスFを得た。その後、製造例1と同様に凝固及び乾燥することにより変性天然ゴムFを得た。このようにして得られた変性天然ゴムFの質量から、添加したN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートの転化率が84%であることが確認された。また、該変性天然ゴムFを石油エーテルで抽出し、更にアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することにより天然ゴム分子に導入されていないオレフィン同士の反応物の分離を試みたところ、天然ゴム分子に導入されていないオレフィン同士の反応物が仕込みオレフィン量の6%検出された。従って、上記変性天然ゴムFの極性基含有量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.021mmol/gである。
【0115】
<変性天然ゴムの製造例7>
フィールドラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、該ラテックスを凝固させ、更に、得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した。次に、得られた凝固物の乾燥ゴム含有量を求め、乾燥ゴム量換算で600gの凝固物と、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート3.0gと、tert−ブチルハイドロパーオキサイド(t−BHPO)1.2gとを混練機内で室温にて30rpmで2分間練り込み、均一に分散させた。次に、得られた混合物にテトラエチレンペンタミン(TEPA)1.2gを均一に加えながら、神戸製鋼製二軸混練押出機[同方向回転スクリュー径=30mm, L/D=35, ベントホール3ヶ所]を用い、バレル温度120℃、回転数100rpmで機械的せん断力を加えながら押し出すことにより、乾燥した変性天然ゴムGを得た。また、得られた変性天然ゴムGの質量から、単量体として加えたN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートの転化率は、83%であった。更に、該変性天然ゴムGを石油エーテルで抽出し、更にアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することによりホモポリマーの分離を試みたところ、ホモポリマーが仕込みモノマー量の7%検出された。従って、上記変性天然ゴムGの極性基含有量は、天然ゴム原材料中の固形ゴム成分に対して0.021mmol/gである。
【0116】
<変性合成ゴムの製造例1>
乾燥し、窒素置換した内容積約900mLの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン283g、1,3−ブタジエン50g、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.0057mmol及びヘキサメチレンイミン0.513mmolをそれぞれシクロヘキサン溶液として注入し、これにn−ブチルリチウム(n−BuLi)0.57mmolを加えた後、撹拌装置を備えた50℃の温水浴中で4.5時間重合反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。次に、重合反応系に、四塩化スズ 0.100mmolをシクロヘキサン溶液として加え、50℃で30分間撹拌した。その後、反応系に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを加えて、重合反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して変性合成ゴムI(変性ポリブタジエンゴム)を得た。得られた変性合成ゴムIのビニル結合(1,2−結合)量をH−NMR[日本電子製, Alpha 400MHz NMR装置,CDCl中]スペクトルにおける積分比より求めたところ、ブタジエン単位のビニル結合量が14質量%であった。また、得られた変性合成ゴムIのカップリング効率をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より得られるデータのうち高分子量側のピーク面積比率を用いて算出したところ、カップリング効率は65%であった。また、得られた変性合成ゴムIは、ガラス転移温度が−95℃であった。
【0117】
<変性合成ゴムの製造例2>
乾燥し窒素でパージ洗浄したゴム隔壁付きボトル内で、1,3−ブタジエン単量体 0.5gのヘキサン溶液、ネオデカン酸ネオジム0.32mmolのヘキサン溶液、メチルアルミノキサン31.7mmolのトルエン溶液、及び水素化ジイソブチルアルミニウム6.67mmolのヘキサン溶液を混合することにより、触媒の調製を行った。この混合物を2分間接触させた後、更に、塩化ジエチルアルミニウム 1.27mmolのヘキサン溶液を加えた。次に、この混合物を室温で約15分間熟成させた。
【0118】
撹拌機と温度制御用ジャケットが備わっている2ガロンのステンレス鋼製反応槽内で、上記のようにして調製した触媒溶液と1,3−ブタジエン単量体 611gをヘキサン約3459gに入れて25℃で混合することによりポリブタジエン重合体を生成させた。この混合物を24℃で約10分間撹拌した。ジャケットの温度を72℃に昇温して撹拌を33分間継続し、その後、ジャケットの温度を70℃にまで下げた。重合体セメントをサンプリングして、乾燥及び窒素によるパージ洗浄を行なった別々のボトルに入れた。
【0119】
次に、4−(N,N−ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(DEAB)をトルエン溶液としてネオジム対比50当量加え、50℃で180分間反応させ、その後、ヘキサンに溶解させた少量のイソプロピルアルコールと2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)によりクエンチを行なった後、イソプロピルアルコール中で凝固させて重合体を単離し、次にドラムで乾燥し、変性合成ゴムJを得た。得られた変性合成ゴムJをFTIRで分析したところ、シス構造が93%であった。
【0120】
<変性合成ゴムの製造例3>
DEABに代えて、N,N’−ジメチルイミダゾリジノンを加える以外は、上記変性合成ゴム製造例2と同様にして変性合成ゴムKを得た。
【0121】
<変性合成ゴムの製造例4>
2Lの撹拌機及び温度調節器付きガラス製セパラブルフラスコにコバルト触媒系で製造したポリブタジエンゴム[宇部興産社製,UBEPOL−150L]130gとトルエン 1.2Lを加えて撹拌下に60℃に昇温してポリブタジエンを完全に溶解させた。次に予めテトラヒドロフランに溶解させた変性剤2,4−ジニトロベンゼンスルフェニルクロライド 39mmolを添加して60℃、2時間変性反応した。反応終了後、室温に冷却して,この反応液を3リットルフラスコに移してメタノール 1.2Lを加えて変性ポリブタジエンを沈殿させた。沈殿した変性ポリブタジエンを300メッシュの金網で分離して、酸化防止剤としてテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン[日本チバガイギー社製,Irganox1010]を仕込みポリブタジエンゴムに対して1000ppm練り混み、100℃で1時間真空乾燥させて、変性合成ゴムLを得た。
【0122】
<変性合成ゴムの製造例5>
乾燥及び窒素置換された、ゴム詮付容積100mLのガラスびんに、以下の順番に、1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液(15.2質量%)7.11g、ネオジムネオデカノエートのシクロヘキサン溶液(0.56M)0.59mL、メチルアルミノキサンMAO[東ソーアクゾ製PMAO]のトルエン溶液(アルミニウム濃度として3.23M)10.32mL、水素化ジイソブチルアルミ[関東化学製]のヘキサン溶液(0.90M)7.77mLを投入し、室温で2分間熟成した後、塩素化ジエチルアルミ[関東化学製]のヘキサン溶液(0.95M)1.45mLを加え室温で、時折撹拌しながら15分間熟成した。こうして得られた触媒溶液中のネオジムの濃度は、0.11M(mol/L)であった。次に、約900ミリリットル容積のゴム栓付きガラスびんを乾燥及び窒素置換し、乾燥精製された1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液及び乾燥シクロヘキサンを各々投入し、1,3−ブタジエン 12.5質量%のシクロヘキサン溶液が400g投入された状態とした。次に、前記調製した触媒溶液 2.28mL(ネオジム換算0.025mmol)を投入し、50℃の温水浴中で1.0時間重合を行った。
【0123】
次に、第1次変性剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランをヘキサン溶液(1.0M)として、23.5当量(ネオジム対比)投入し、50℃で60分間処理した。続いて、ソルビタントリオレイン酸エステル(関東化学製)を単体で1.2mL加えて、さらに50℃で1時間変性反応を行った後、重合系に老化防止剤2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)のイソプロパノール5%溶液 2mLを加えて反応を停させ、更に微量のNS−5を含むイソプロパノール中で再沈殿を行ない、ドラム乾燥することにより変性合成ゴムM(変性ポリブタジエンゴム)を得た。
【0124】
<変性合成ゴムの製造例6>
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン 300g、1,3−ブタジエン 40g、スチレン 14g、ジテトラヒドロフリルプロパン 0.2mmol及びヘキサメチレンイミン(HMI)0.48mmolを加え、更にn−ブチルリチウム(n−BuLi)0.48mmolを加えた後、50℃で1.5時間重合反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。次に、重合反応系に、変性剤として四塩化スズ 0.12mmolを速やかに加え、更に50℃で30分間変性反応を行った。その後、重合反応系に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを加えて、重合反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して変性合成ゴムN(変性スチレン−ブタジエン共重合体)を得た。
【0125】
得られた変性合成ゴムNの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8020、カラム:東ソー製GMH−XL(2本直列)、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として求めたところ、変性合成ゴムNは、四塩化スズによる変性反応前の数平均分子量(Mn)が221×10で、四塩化スズによる変性反応後の重量平均分子量(Mw)が662×10であった。また、得られた変性合成ゴムNの結合スチレン量をH−NMRスペクトルの積分比より求めたところ、結合スチレン量は26%であった。更に、得られた変性合成ゴムNのガラス転移点をパーキンエルマー社製の示差熱分析機(DSC)7型装置を用い、−100℃まで冷却した後に10℃/minの昇温速度で昇温して測定したところ、ガラス転移点は−38℃であった。
【0126】
<変性合成ゴムの製造例7>
ヘキサメチレンイミンを加えない以外は、上記変性合成ゴム製造例6と同様にして変性合成ゴムO(変性スチレン−ブタジエン共重合体)を製造した。得られた変性合成ゴムOは、変性反応前の数平均分子量(Mn)が218×10で、変性反応後の重量平均分子量(Mw)が615×10で、結合スチレン量が26%で、ガラス転移点が−38℃であった。
【0127】
<変性合成ゴムの製造例8>
内容積20Lのステンレス製重合反応機を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後に、1,3−ブタジエン1480g、スチレン520g、テトラヒドロフラン122g、ヘキサン10.2kg、n−ブチルリチウム(n−ヘキサン溶液11.0mmol)を添加し、撹拌下に65℃で3時間重合を行った。重合完了後、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン11.0mmolを添加し、撹拌下に60分間反応させた後、環状アミンである1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン11.0mmolを添加し、撹拌下に30分間反応させ、次いでメタノール10mLを加えて、更に5分間撹拌した。その後、重合反応容器の内容物を取り出し、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール[住友化学製のスミライザーBHT]10gを加え、ヘキサンの大部分を蒸発させた後、55℃で12時間減圧乾燥し、変性合成ゴムP(変性スチレン−ブタジエン共重合体)を得た。
【0128】
<変性合成ゴムの製造例9>
窒素置換した重合容器に、水200質量部、ロジン酸石鹸4.5質量部、1,3−ブタジエン71.5質量部、スチレン28質量部、ジエチルアミノエチルメタクリレート1.0質量部、及びt−ドデシルメルカプタン0.3質量部を仕込んだ。その後、重合容器の温度を5℃に設定し、重合開始剤として、p−メタンハイドロパーオキサイド0.1質量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.07質量部、硫酸第1鉄7水和物0.05質量部、及びソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.15質量部を添加して重合を開始し、重合転化率が60%に達した時点でジエチルヒドロキシアミンを添加して重合を停止した。次いでスチームストリッピングにより未反応単量体を回収して、固形分濃度 21%のスチレン−ブタジエン共重合体の水系分散液を得た。その後、スチレン−ブタジエン共重合体水系分散液を硫酸と塩化ナトリウムにより凝固させクラムとし、熱風乾燥機で乾燥させ、変性合成ゴムQを得た。この変性合成ゴムQの結合スチレン量は23.5質量%であり、ムーニー粘度は47であった。
【0129】
含水ケイ酸の物性
(1)音響式粒度分布径の測定
各含水ケイ酸の0.01M KCl水溶液を超音波で5分間分散処理し、泡を除去した後、超音波式粒度分布測定装置DT1200(Dispertion Technology社製)を用いて、含水ケイ酸の1次凝集体の直径の最頻値Aac(nm)を測定した。
【0130】
(2)CTABの測定
ASTM D3765−92記載の方法に準拠して実施した。ASTM D3765−92記載の方法は、カーボンブラックのCTABを測定する方法であるので、若干の修正を加えた。すなわち、カーボンブラックの標準品であるIRB#3(83.0m/g)を使用せず、別途セチルトリメチルアンムニウムブロミド(以下、CE−TRABと略記する)標準液を調製し、これによって含水ケイ酸OT(ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)溶液の標定を行い、含水ケイ酸表面に対するCE−TRAB1分子当たりの吸着断面積を0.35nmとしてCE−TRABの吸着量から、比表面積(m/g)を算出した。これは、カーボンブラックと含水ケイ酸とでは表面が異なるので、同一表面積でもCE−TRABの吸着量に違いがあると考えられるからである。
【0131】
(3)加熱減量及び灼熱減量の測定
含水ケイ酸サンプルを秤量し、加熱減量の場合は105±2℃でサンプルを2時間加熱し、灼熱減量の場合は750±25℃でサンプルを3時間加熱した後、質量を測定し、加熱前のサンプル質量との差を加熱前の質量に対して%で表した。
【0132】
(4)タイヤの転がり抵抗
タイヤサイズ185/70R14の空気入りタイヤに170kPaの内圧を充填したあと、395kgの荷重を負荷しながら、大型試験ドラム上を時速80km/hで所定時間走行させ、次に前記ドラムの駆動力を遮断して、タイヤを慣性走行させ、この時のタイヤの減速度から転がり抵抗を求め、比較例を100として指数表示した。指数が大きい程、転がり抵抗が小さく好ましい。
【0133】
(5)タイヤの耐摩耗性
タイヤの転がり抵抗の評価に用いたのと同様のタイヤにて国内一般市街地を10,000km走行させた時の残溝深さより求めた。比較例を100として指数により表示した。指数が大きい程、耐摩耗性が良好である。
【0134】
(6)加工性
JIS K6300−1994に従い、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度130℃の条件でムーニー粘度(ML1+4、130℃)を測定し、比較例1を100として指数で表示した。この値が大きい程、加工性が悪いことを示す。
【0135】
含水ケイ酸の製造
製造例A
攪拌機を備えた容量180Lのジャケット付ステンレス製反応槽に、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液(SiO 160g/L、SiO/NaOモル比3.3)0.6Lを入れ96℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は、0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を96℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から白濁をはじめ、47分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を96℃に30分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。得られたケイ酸スラリーをフィルタープレスで濾過、水洗を行なって湿潤ケーキを得た。次いで、湿潤ケーキを乳化装置を用いてスラリーとして、噴霧式乾燥機で乾燥して湿式法含水ケイ酸Aを得た。
【0136】
製造例B
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.6Lを入れ、90℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を90℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から白濁をはじめ、47分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を90℃に30分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Bを得た。
【0137】
製造例C
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.6Lを入れ、84℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を84℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から白濁をはじめ、48分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を84℃に30分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Cを得た。
【0138】
製造例D
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.6Lを入れ、90℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を90℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から白濁をはじめ、47分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を90℃に60分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Dを得た。
【0139】
製造例E
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.6Lを入れ、78℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を78℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から白濁をはじめ、49分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を78℃に60分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Eを得た。
【0140】
製造例F
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.6Lを入れ、65℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を65℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から反応溶液は白濁をはじめ、50分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を65℃に60分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Fを得た。
【0141】
製造例G
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水86Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.5Lを入れ、96℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を96℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を615ml/分、硫酸(18mol/L)を27ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から反応溶液は白濁をはじめ、40分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を96℃に30分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は62g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Gを得た。
【0142】
(実施例1〜8及び比較例1〜6)
実施例1〜8においては、上記変性天然ゴムの製造例1、2を用いると共に、それぞれ製造例A〜Gで製造した含水ケイ酸A〜Gを、比較例1では天然ゴムとしてRSS#3、東ソー・シリカ社製NipsilAQを、比較例2では天然ゴムとしてRSS#3、Degussa社製ULTRASIL VN2を使用し、比較例3,4において、天然ゴムとしてRSS#3、含水ケイ酸としてB、Cを、比較例5、6においては、上記変性天然ゴムの製造例1、2を用いると共に、東ソー・シリカ社製NipsilAQを使用し、下記表1に示す種類と量の配合剤とからなるゴム組成物を常法により調製した。
各実施例、比較例において使用した含水ケイ酸の物性及び未加硫ゴムの物性、タイヤ性能は下記表2及び表3に示した。
【0143】
【表1】

上記表1中の*1〜*6は、下記のとおりである。
*1:シーストKH(N339)〔東海カーボン社製〕
*2:含水ケイ酸の製造例A〜Gに記載
*3:シランカップリング剤Si75〔Degussa社製〕
*4:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
*5:ジフェニルグアニジン
*6:N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
【0144】
【表2】

【0145】
【表3】

【0146】
図1に実施例、比較例で使用した含水ケイ酸のCTABと音響式粒度分布径Aacの関係をグラフで示す。実施例で用いた含水ケイ酸は、AacがY(Aac)=−0.76×(CTAB)+274の直線より上にあって、前記の式(I)を満たしているのに対して、比較例1、2で使用した含水ケイ酸は、Aacが小さいことが分かる。また、表2から各実施例の含水ケイ酸は、灼熱減量と加熱減量の差が前記式(II)をも満たしている。
上記表2及び表3の結果から明らかなように、本発明の条件を充足する含水ケイ酸、変性天然ゴムを含有するゴム組成物をタイヤ部材となるタイヤトレッド部に使用することで、加工性、低発熱性と耐摩耗性が高度に両立したタイヤが得られることが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム分子中に極性基を含有する変性天然ゴムと、含水ケイ酸とを含有してなるゴム組成物であって、含水ケイ酸のセチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)(m/g)と音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の直径の最頻値Aac(nm)とが下記式(I)
ac≧−0.76×(CTAB)+274・・・(I)
を満たすゴム組成物をタイヤ部材に用いたことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
含水ケイ酸が、その灼熱減量(750℃で3時間加熱した時の質量減少%)と加熱減量(105℃で2時間加熱した時の質量減少%)とが下記式(II)
(灼熱減量)−(加熱減量)≦3・・・(II)
を満たすことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
含水ケイ酸が、音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の直径の最頻値が1μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
含水ケイ酸が、CTABが50〜250m/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
ゴム成分100質量部に対して含水ケイ酸を10〜150質量部を配合してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
変性天然ゴムの極性基が、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、アルコキシシリル基及びスズ含有基からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
変性天然ゴムの極性基含有量が、変性天然ゴムのゴム成分に対して0.001〜0.5mmol/gであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
更に、ゴム成分として、変性合成ゴムを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項9】
変性合成ゴムは、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体又は共重合体であることを特徴とする請求項8に記載のタイヤ。
【請求項10】
変性合成ゴムは、分子末端が変性されていることを特徴とする請求項8または9に記載のタイヤ。
【請求項11】
変性合成ゴムは、主鎖が変性されていることを特徴とする請求項8または9に記載のタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−26388(P2011−26388A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171310(P2009−171310)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】