説明

タグ付加分子ライブラリーを使用した受容体の脱オーファン化

本発明は、GPCR経路をモジュレートする(活性化もしくは阻害する、増強もしくは低下させる)能力について試験化合物および試験条件をスクリーニングする方法を提供し、また、一般的に細胞におけるGPCR経路の機能、例えばオーファンGPCRの機能を評価する方法を提供する。本発明の方法の別の態様においては、親油性感光性物質を細胞膜に付加する。候補リガンド又は候補リガンドのライブラリーは、分子に付加した後、リガンドを受容体と結合させうる。光源を用いて感光性物質を励起した後、切断可能なリンカーを切断し、分子タグを放出させる。放出された分子タグは、細胞外液中で検出することができ、これは、上述したようにGPCRについてのリガンド構造についての情報を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年1月17日に出願された米国特許仮出願第60/440,840号、2003年1月17日に出願された米国特許仮出願第60/440,838号、および2003年3月4日に出願された米国特許出願第10/379,965号に基づく優先権を主張する(これらは全て、参照により本明細書に援用される)。
【0002】
本発明は、細胞表面受容体に特異的に結合する化合物のクラスを同定する方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、薬剤標的の最も重要なファミリーの1つである。Gタンパク質仲介型シグナル伝達系は、多様な生物(哺乳動物および酵母等)において同定されてきた。GPCRは、他の細胞外シグナルと比べてとりわけ、神経伝達物質、ホルモン、臭気物質(odorant)および光に対して応答する。GPCRは、7つの異なる疎水性領域(それぞれ約20〜30アミノ酸長)を特徴とし、膜貫通ドメインを形成するタンパク質の大きなスーパーファミリーであると考えられている。アミノ酸配列は、スーパーファミリー全体にわたっては保存されていないが、それぞれの系統発生的に関係するサブファミリーは、新規メンバーを同定および分類するのに使用できるいくつかの高度に保存されたアミノ酸モチーフを含んでいる。個々のGPCRは特定のシグナル伝達経路を活性化するが、少なくとも10の異なるシグナル伝達経路がGPCRを介して活性化されることが知られている。例えば、β2アドレナリン受容体(βAR)は、プロトタイプの哺乳動物GPCRである。アゴニスト結合に応答して、βAR受容体はGタンパク質(G)を活性化し、次にこれが細胞中でのアデニル酸シクラーゼおよびサイクリックアデノシン一リン酸の生成を促進する。
【0004】
GPCRスーパーファミリーのメンバーは、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ(GRK)リン酸化、そしてその後のアレスチン結合が関与する一般的なメカニズムを介して脱感作すると仮定されている。タンパク質βアレスチンは、Gタンパク質受容体キナーゼによりリン酸化されたアゴニスト活性化受容体と結合することにより、GPCRシグナル伝達を調節する。βアレスチンタンパク質は、受容体内在化の間はGPCRに結合したままである。GPCRとαアレスチンとの相互作用は、いくつかの方法を用いて測定できる。一例では、βアレスチンタンパク質を、緑色蛍光タンパク質と融合させて、タンパク質融合体を作る(Barakら (1997) J. Biol. Chem. 272(44):27497-500)。βアレスチンとGPCRとのアゴニスト依存型結合は、蛍光顕微鏡検査により可視化できる。また、顕微鏡検査を使用して、その後のGPCR−βアレスチン複合体のクラスリン被覆ピットへの輸送を可視化できる。生存細胞中でβアレスチンとGPCRとの結合を測定する他の方法としては、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)、BRET(生物発光エネルギー移動)、または酵素補完(enzyme complementation)(Rossiら (1997) Proc.Natl Acad. Sci.USA 94(16):8405-10)等の技術が挙げられる。
【0005】
現在、天然リガンドおよび機能が知られているGPCRはおよそ400である。これらの公知のGPCRは、それらの内因性リガンドに由来して、5つの主要カテゴリーに分類されている:すなわち、クラスA ロドプシン様;クラスB セクレチン様;クラスC 代謝調節型グルタミン酸/フェロモン;クラスD 真菌性フェロモン;クラスE cAMP(タマホコリカビ類(dictyostelium))。クラスAの代表的なメンバーは、アミン受容体(例えば、ムスカリン性、ニコチン性、アドレナリン性、アデノシン、ドーパミン、ヒスタミンおよびセロトニン)、ペプチド受容体(例えば、アンギオテンシン、ブラジキニン、ケモカイン、エンドセリンおよびオピオイド)、ホルモン受容体(例えば、卵胞刺激、ルトロピンおよびチロトロピン)、ならびにロドプシン(光)、嗅神経(におい)および味覚(味)受容体を含む感覚受容体である。クラスBの代表としては、セクレチン、カルシトニン、ガストリンおよびグルカゴン受容体が挙げられる。
【0006】
今日使われている多数の利用可能な治療薬は、血管拡張、心拍、気管支拡張、内分泌および腸蠕動を含む生命に関わる生理学的反応を仲介するためGPCRを標的としている(WilsonおよびBergsma (2000) Pharm. News 7:105-114)。例えば、βアドレナリン受容体に対するリガンドは、アナフィラキシー、ショック、高血圧、低血圧、喘息および他の症状の治療に使用される。さらに、リガンドの不在下でGPCR細胞応答が生じるGPCRの自発的活性化の発生により疾患が引き起こされ得る。GPCRのアンタゴニストである薬剤は、この自発的活性を低減し(逆作動として知られるプロセス)、重要な治療薬である。例えば、Georgeら、Nature Reviews Drug Discovery, 1:808-820(2002);Howardら、Trends in Pharmaceutical Sciences, 22:132-140(2001);Seymour, Current Drug Targets, 2:117-133(2001)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
GPCRの治療的重要性から、GPCRリガンド活性について化合物を高速スクリーニングする方法が望まれている。本発明は、GPCR経路をモジュレートする(活性化または阻害する、増強または低下する)能力について、試験化合物および試験条件をスクリーニングする方法を提供し、また、全般的な細胞におけるGPCR経路の機能(オーファンGPCRの機能等)を評価する方法を提供する。本発明の方法の別の態様では、親油性感光性物質を細胞膜に結合させる。候補リガンドまたは候補リガンドのライブラリーを分子に付加させた後、リガンドを受容体に結合可能にさせる。光源を用いて感光性物質を励起した後、切断可能なリンカーを切断し、分子タグを放出させる。放出された分子タグは、上述したように細胞外液中で検出することができ、これがGPCRのリガンドの構造についての情報を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本発明は、GPCR活性のモジュレーターをスクリーニングする方法であって:a)既知または未知のGPCRを発現している、親油性感光性物質で標識化された細胞を準備するステップ、b)細胞を、切断可能な結合により分子タグとコンジュゲートされた試験化合物に暴露するステップ;c)感光性物質を照射して、分子タグを切断する一重項酸素を生成するステップ、およびd)放出された分子タグからシグナルを検出するステップ、を含む方法を提供する。別の態様では、本発明の方法は、試験化合物の存在下で生成されるシグナルと、不在下で生成されるシグナルとを比較するステップをさらに提供し得、シグナルの変化は化合物がGPCRのモジュレーターであることを示す。
【0009】
従って、本発明は、オーファンGPCRのモジュレーターを同定する都合の良い方法を提供する。オーファンGPCRとは、配列比較を利用した方法により典型的に同定されるが、コグネイトリガンドは知られていない新規受容体である。400から5000ものオーファンGPCRがヒトゲノムにおいてコードされ得ると推定されており、新規薬剤の開発に対する大きい可能性を表している。
【0010】
図面の簡単な説明
図1A〜1Bは、分子タグを有するペプチドライブラリーが、オーファンGPCRを発現している細胞に適用された本発明の方法の一態様を示す。
【0011】
図1Cは、ペプチド結合測定によってオーファンGPCRについての構造情報を決定するためのペプチドライブラリーの一実施形態を示す。
【0012】
図1Dは、感光性物質を、細胞の細胞表面膜に固定させる(anchoring)方法を示す。
【0013】
図2は、フェノールのヒドロキシル基が無水物を用いて保護されている市販の6−カルボキシフルオレセインで出発する合成手法の一例を示す。標準的な抽出設定(workup)の際、95%の生成物収率を得た。この材料をホスフィチル化(phosphitylated)して、ホスホロアミダイトモノマーを生成する。
【0014】
図3は、アミノアルコールとして対称ビス−アミノアルコールリンカーを使用し、その後第2のアミンを多数のカルボン酸誘導体と共役させることを示す。
【0015】
図4は、移動度改変物質(mobility modifier)として作用し得るいくつかの安息香酸誘導体の構造を示す。
【0016】
図5は、5−アミノフルオレセインを出発材料とし、保護ホスホロアミダイトモノマーに変換するのに同じ一連のステップを使用する代替的手法の使用を示す。
【0017】
図6は、分子タグの合成において移動度改変物質にアセンブリできるいくつかのアミノアルコールおよび二塩化二酸化物(diacid dichloride)を示す。
【0018】
図7A〜7Fは、酸化に不安定な結合、および一重項酸素によって仲介されるそれらそれぞれの切断反応を示す。
【0019】
図8A〜Bは、eタグ部分と抗体とをコンジュゲートさせてeタグプローブを形成し、および得られたプローブと一重項酸素とを反応させてスルフィン酸部分を放出分子タグとして生成する方法論の概要を示す。
【0020】
図9A〜Jは、設計および合成されたeタグ部分の構造を示す(Pro1は、Molecular Probes, Inc.から市販されている)。
【0021】
図10A〜Iは、図9に示すeタグ部分の合成の化学反応を示す。
【0022】
定義
「膜関連被分析物」とは、それを膜に固定できる親油性部分を有するか、あるいは親油性部分を有する別の分子に結合している物質、化合物、分子、またはそれらの成分もしくは部分を意味する。膜関連被分析物は、サンプル中に存在し、ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、有機分子、ハプテン、エピトープ、生物学的細胞の一部、タンパク質の翻訳後修飾、受容体、複合糖類、ビタミン、ホルモン等が挙げられるがこれらに限定されない。1以上の被分析物が単一の分子物と関連し得る(例えば、同じタンパク質上の異なるリン酸化部位)。
【0023】
「抗体」とは、別の分子の特定の空間および極性の組織体に特異的に結合し、従ってそれに対して相補的であると定義される免疫グロブリンを意味する。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得、当該分野で周知の技術により(例えば、宿主および血清の集合の免疫により(ポリクローナル)、または連続的なハイブリッド細胞系を調製して分泌タンパク質を回収することにより(モノクローナル)、または天然型抗体の特異的結合に必要なアミノ酸配列を少なくともコードするヌクレオチド配列もしくはその突然変異形態をクローニングおよび発現させることにより)調製され得る。抗体は、完全免疫グロブリンまたはそのフラグメントを含み得、この免疫グロブリンは様々なクラスおよびイソタイプ(IgA、IgD、IgE、IgGl、IgG2a、IgG2bおよびIgG3、IgM等)を含む。これらのフラグメントは、Fab、FvおよびF(ab’)2、Fab’等を含み得る。さらに、免疫グロブリンまたはそれらのフラグメントの凝集体、ポリマーおよびコンジュゲートが、特定のポリペプチドに対する結合親和性が維持される限り、適切な場合に使用できる。
【0024】
「抗体結合組成物」とは、1つ以上の抗体を含み、抗体からその結合特異性を誘導する分子または分子の複合体を意味する。抗体結合組成物としては、第1の抗体が標的分子に特異的に結合し、第2の抗体が第1の抗体の定常領域に特異的に結合する抗体対;標的分子および分子タグまたは感光性物質等の部分で誘導化されたストレプトアビジンに特異的に結合するビオチン化抗体;標的分子に特異的で、分子タグまたは感光性物質等の部分で誘導化したデキストラン等のポリマーにコンジュゲートされた抗体;標的分子に特異的で、分子タグもしくは感光性物質等の部分、または後者を含むポリマーで誘導化したビーズ、マイクロビーズまたは他の固相支持体にコンジュゲートされた抗体、が挙げられるがこれらに限定されない。
【0025】
「結合化合物」とは、膜関連被分析物に特異的に結合可能な分子タグが直接または間接的に結合できる任意の分子を意味する。結合化合物としては、抗体、抗体結合組成物、ペプチド、タンパク質、特に分泌タンパク質およびオーファン分泌タンパク質、核酸、ならびに最大1000ダルトンの分子量を有し、水素、炭素、酸素、窒素、硫黄およびリンからなる群より選択される原子から構成される有機分子、が挙げられるがこれらに限定されない。
【0026】
分離カラムに関連した「キャピラリーサイズの」とは、プレートまたは微小流体デバイス中のキャピラリー管またはチャネルを意味し、分離カラムの直径または最大寸法は約25〜500ミクロンで、分離媒体全体にわたる効率的な放熱を可能にし、その結果媒体中の熱対流が低くなる。
【0027】
本明細書で使用する場合、「クロマトグラフィー」または「クロマトグラフィー分離」とは、化合物の混合物(例えば、被分析物を含む)を含む移動相(通常、液体)の流れが、移動相と固定相(通常固体)との分布差によりこのような化合物の分離を促す分析方法を意味するかまたは指す。
【0028】
分子タグの分離に関連した「分離プロファイル」とは、アッセイで生成される各タイプの分子タグの数の読出しまたは測定値を提供する、チャート、グラフ、曲線、棒グラフ、またはシグナル強度データ対時間もしくは時間に関係する他の変数の他の表示を意味する。分離プロファイルは、採用する分離技術に応じたデータのエレクトロフェログラム、クロマトグラム、エレクトロクロマトグラム、または同様なグラフ表示であり得る。分離プロファイルに関連した「ピーク」または「バンド」または「ゾーン」とは、分離した化合物が集中する領域を意味する。例えば、異なる分子タグが異なる発光スペクトルの異なる蛍光標識を有する場合、ならびにデータを複数の波長にて回収および記録する場合には、単一のアッセイについて複数の分離プロファイルが存在し得る。
【0029】
一方の分子が別の分子(例えば、標的ポリヌクレオチドに対するプローブ)へ結合することに関連して「特異的」または「特異性」とは、2つの分子間の認識、接触および安定した複合体の形成、ならびに該分子と他の分子との実質的に低い認識、接触または複合体形成を意味する。一態様では、第1の分子と第2の分子との結合に関連した「特異的」とは、第1の分子が、反応物またはサンプル中の別の分子を認識し複合体を形成する範囲で、第2の分子と最大数の複合体を形成することを意味する。この最大数は、少なくとも50%であることが好ましい。一般的に、特異的結合事象に関与する分子は、その表面または空洞中に、互いに結合する分子間の特異的認識を生じる領域を有する。特異的結合の例としては、抗体−抗原相互作用、酵素−基質相互作用、ポリヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチド間の二重らせんまたは三重らせんの形成、受容体−リガンド相互作用等が挙げられる。本明細書で使用する場合、特異性または特異的結合に関連した「接触」とは、2つの分子が十分に密接しており、弱い非共有結合の化学物質相互作用(ファンデルワールス力、水素結合、イオンおよび疎水性相互作用等)が、分子の相互作用の中心となることを意味する。本明細書で使用する場合、2つ以上の分子に関連した「安定した複合体」とは、このような分子が、例えば特異的結合により非共有結合凝集体を形成し、アッセイ条件下で非凝集状態よりも熱力学的に好ましいことを意味する。
【0030】
本明細書で使用する場合、複数の蛍光標識に関連した「スペクトル的に分解可能」という用語は、標識の蛍光発光バンドが十分に区別されており(つまり十分に非重複であり)、それぞれの標識が結合している分子タグが、標準的光検出系により(例えば、米国特許第4,230,558号;同第4,811,218号等、またはWheelessら、21-76頁、Flow Cytometry:Instrumentation and Data Analysis (Academic Press, New York, 1985)掲載に記載されている系に例示されるような、バンドパスフィルタおよび光電子増倍管等の系を採用して)各標識が生成する蛍光シグナルに基づいて区別できることを意味する。
【0031】
クロマトグラフィー分離に関連した「順相」とは、極性の固定相およびより低い極性の移動相を用いて、親水性および親油性に基づいて分離を行うことを意味する。従って、疎水性化合物は、親水性化合物よりも速く溶出する。順相クロマトグラフィーの固相上の基の例として、アミン(−NH)およびヒドロキシル(−OH)基がある。
【0032】
クロマトグラフィー分離に関連した「逆相」とは、親水性および親油性に基づき分離を行うことを意味する。固定相は、通常、共有結合したn−アルキル鎖またはフェニル基を有するシリカ基質充填剤で構成される。例えば、C−8はオクチル鎖を表し、C−18はマトリックス中のオクタデシルリガンドを表す。各リガンド上のマトリックスが疎水性であるほど、疎水性部分を保持するカラムの傾向が高い。従って、親水性化合物は、疎水性化合物よりも速く溶出する。
【0033】
クロマトグラフィー分離に関連した「イオン交換」とは、サンプル中のイオンと、固定相中の対イオンとの選択的交換に基づき分離を行うことを意味する。イオン交換は、ポリマーマトリックスに結合した電荷担持官能基を含むカラムを用いて行う。官能性イオンはカラムに永久的に結合し、それぞれ対イオンが結合している。サンプルは、固定相の対イオンをそれ自体のイオンで置き換えることにより保持される。移動相が固定相のサンプルイオンと置き換わるように移動相の特性を変化させる(すなわち、pHを変化させる)ことにより、サンプルをカラムから溶出させる。
【0034】
本明細書および請求の範囲における「サンプル」という用語は、広い意味で使われる。他方で、標本または培養物(例えば、微生物学的培養物)を含むことを意図する。他方で、生物学的および環境的サンプルの両方を含むことを意図する。サンプルは、合成由来源の標本を含み得る。生物学的サンプルは、ヒトを含む動物、流体、固体(例えば、便)または組織、ならびに乳製品、野菜、肉および肉副産物等の液体および固体の食物および飼料の製品および成分、ならびに廃棄物であり得る。生物学的サンプルとしては、患者から採取した物質(培養物、血液、唾液、脳脊髄液、胸膜液、乳汁、リンパ液、痰、精液、針吸引物が挙げられるがこれらに限定されない)等が挙げられ得る。生物学的サンプルは、家畜の様々あるファミリーの全て、および野生または野生種動物(有蹄動物、クマ、魚、齧歯動物等の動物が挙げられるがこれらに限定されない)から得ることができる。環境サンプルとしては、環境物質(表面物質、土、水および産業サンプル等)、ならびに食物および乳製品処理用機器、装置、設備、器具、使い捨ておよび非使い捨て品から得られたサンプルが挙げられる。これらの例は、本発明に適応するサンプルの種類を限定するものではない。
【0035】
本明細書で使用する場合、「キット」という用語は、物質を送達するための任意の送達系を指す。反応アッセイに関連して、このような送達系としては、反応試薬(例えば、適切な容器に入ったプローブ、酵素等)および/または支持材料(例えば、緩衝材、アッセイを行うための指示書等)の保存、一方の場所から別の場所への輸送または送達を可能にする系が挙げられる。例えば、キットは、関連する反応試薬および/または支持材料を含む1つ以上の封入体(例えば、箱)を含む。このような内容物は、一緒にまたは別々に意図するレシピエントに送達される。例えば、第1の容器はアッセイで使用する酵素を含み、第2の容器はプローブを含み得る。
【0036】
「ポリペプチド」は、一方のアミノ酸のカルボキシ基と他方のアミノ酸のアミノ基との間の水が失われるアミド結合により互いと化学的に結合したアミノ酸残基から構成される化合物のクラスを指す。ポリペプチドは、このような残基を多数含み得るアミノ酸残基のポリマーである。ペプチドは、一般的により少ない数のアミノ酸で構成されていること以外はポリペプチドに類似している。ペプチドは、オリゴペプチドと呼ばれることもある。ポリペプチドとペプチドとの明確な区別はない。便宜上、本開示および請求の範囲においては、「ポリペプチド」という用語を、概してペプチドおよびポリペプチドを指すために用いる。アミノ酸残基は、天然または合成であり得る。
【0037】
「タンパク質」は、通常、生物学的細胞により合成され、定義された三次元構造に折り畳まれたポリペプチドを指す。タンパク質は、一般的に、約5,000〜約5,000,000以上の分子量、さらに通常は約5,000〜約1,000,000の分子量であり、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋体の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化およびユビキチン化等の翻訳後修飾を含み得る。例えば、Wold, F., Post-translational Protein Modifications:Perspectives and Prospects, 1-12頁(Post-translational Covalent Modification of Proteins, B. C. Johnson編, Academic Press, New York, 1983掲載)。タンパク質としては、限定しない例示として、サイトカインまたはインターロイキン、例えば、キナーゼ、プロテアーゼ、ガラクトシダーゼ等の酵素、プロタミン、ヒストン、アルブミン、免疫グロブリン、硬タンパク質、リンタンパク質、ムコタンパク質、色素タンパク質、リポタンパク質、核タンパク質、糖タンパク質、T細胞受容体、プロテオグリカン、未分類タンパク質、例えば、ソマトトロピン、プロラクチン、インスリン、ペプシン、ヒト血漿において見とめられるタンパク質、血液凝固因子、血液型因子、タンパク質ホルモン、癌抗原、組織特異的抗原、ペプチドホルモン、栄養マーカー、組織特異的抗原および合成ペプチドが挙げられる。
【0038】
「分泌タンパク質」という用語は、(i)細胞内で発現され、(ii)細胞から細胞外媒体に分泌され(例えば、典型的に、小胞体から細胞膜を通るように発現タンパク質を指示するリーダー配列を必要とする)、そして(iii)受容体(典型的に細胞表面受容体)に作用していくらかの細胞性事象または活性(細胞増殖または刺激を含む細胞内事象、細胞表面事象または細胞−細胞相互作用事象であり得る)を生じるかまたは起こす、タンパク質を指す。
【0039】
「リガンド」という用語は、本明細書において、分泌タンパク質、またはリガンド−受容体相互作用を介して所与の受容体に結合するそのタンパク質を指すためにも使用する。
【0040】
「オーファン分泌タンパク質」という用語は、1つ以上の(i)タンパク質が結合する細胞型、(ii)タンパク質が結合する受容体、および(iii)タンパク質とその受容体との結合により生成される作用について特性決定されていない分泌タンパク質(またはリガンド)を意味する。例としては、脾臓細胞、リンパ節細胞もしくは胸腺細胞の生成および/または増殖を刺激可能なものを含むサイトカインおよびリンホカイン、免疫刺激もしくは免疫抑制活性を示すタンパク質、造血、組織成長、細胞化学走化性もしくは化学運動性事象(細胞付着分子等)、または細胞動員(recruitment)リガンドを調節するタンパク質、抗炎症活性および抗腫瘍活性を有するタンパク質が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明は、既知または未知の機能を有する細胞表面受容体に対するリガンドを構造的に同定する方法を提供する。一態様では、目的の受容体を発現する生物学的細胞を、親油性感受性物質で処理して、それらの表面上に感受性物質で処理した膜を形成する。次いで、それぞれ異なる分子タグを有する結合化合物の複数のライブラリーを、結合条件下で細胞とインキュベートして、目的の受容体に対してより高い親和性を有するライブラリーのメンバーが、より多い量で受容体に結合するようにする。任意に、結合しなかった、または結合の弱い結合化合物を洗浄により除去し、その後、感受性物質で処理した膜の感受性物質を誘導して、それぞれの結合化合物に分子タグを付加する切断可能な結合を切断するための活性種を生成する。次いで、放出された分子タグを分離および同定して、それぞれのライブラリーのメンバーの結合強度の測定値を得る。一態様では、このような結合化合物は、好ましくは6〜15のアミノ酸長を有する、そしてより好ましくは8〜12のアミノ酸長を有するペプチドである。
【0042】
本発明の一実施形態を、図1Aおよび1Bに図示している。細胞表面膜(101)ならびに受容体(102、「R1」)、(104、「R2」)および(106、「R3」)を有する細胞(100)(膜関連被分析物)を親油性感光性物質(108)とインキュベートして、未処理細胞(110)の一部である、感光性物質で処理された膜(109)を形成する(107)。分子タグ(「mT」)が付加した結合化合物(112)と、感光性物質で処理された膜(109)とを、結合化合物(112)とそれらのそれぞれの標的膜関連被分析物との特異的結合が可能な条件下で混合する。次いで、反応混合物(116)を、膜結合感光性物質を励起する波長および強度の光で照射し(118)、図1Bに示す結合化合物から分子タグ(122)を切断する一重項酸素を生成する。次いで、分子タグ(122)を反応混合物(120)から分離し(124)、分離プロファイル(126)で同定する。分子タグのピークで測定される結合ペプチドの相対量は、細胞表面上の受容体の性質についての情報、および受容体に結合するペプチドの同定を提供する。
【0043】
一態様では、タグ付加ペプチドライブラリーは、図1Cに図示する形態を有する。所定の長さNおよびアミノ酸配列AA−AA−AA−...−AAを有するペプチドを選択する。次に、それぞれ同じ分子タグmTを有するKペプチド混合物のセットを合成する。数字Kは、範囲が広くNより大きくても小さくてもよい。一態様では、KはNと等しく、図1Cにおいて「XXi」(130、132および134)と示される各アミノ酸位において、一定のアミノ酸セットからのアミノ酸をランダムに挿入することにより混合物が作られる。通常、一定のセットは、例えば約20の大きさを有する天然型アミノ酸であるが、非天然型アミノ酸を含んでもっと大きくてもよく、例えば、30以上の大きさを有していてもよい。一定のセットは、天然型アミノ酸のサブセット、例えば、荷電アミノ酸、親油性アミノ酸等のいくらかの共通の生理化学的性質のものでもあり得る。上記したように、一態様では、Nは8〜12の範囲にある。分子タグは、従来の化学反応(例えば、以下に開示する分子タグのNHS−エステルを介したオンカラム(on−column)またはオフカラム(off−column)付加のいずれか)を使用してペプチドのN末端を介して都合よく付加し得る。
【0044】
以下により詳細に記載するように、標的膜関連被分析物は、放出された分子タグの分離および同定により決定される。分離される分子間の1つ以上の物理的、化学的または光学的な差異(電気泳動的移動度、分子量、形状、溶解度、pKa、疎水性、電荷、電荷/質量比、極性等が挙げられるがこれらに限定されない)に基づいて分子を区別できる幅広い分離技術が採用できる。一態様では、複数の分子タグは、電気泳動的移動度および光学検出特性が異なり、電気泳動により分離される。別の態様では、複数の分子タグは、分子量、形状、溶解度、pKa、疎水性、電荷、極性が異なり、順相または逆相HPLC、イオン交換HPLC、キャピラリーエレクトロクロマトグラフィー等の技術により分離される。
【0045】
本発明の別の態様は、微粒子から放出された後に、採用される分離技術により区別できるバンドまたはピークに分離され得る分子タグのセットを提供することである。セット中の分子タグは、化学的に異なり得る。しかし、便宜上、分子タグのセットは通常化学的に関連する。例えば、以下により詳細に記載するように、全てペプチドであるか、または同じ基本構成要素もしくはモノマーの異なる組合せから構成されるか、または異なる置換基を有する同じ基礎骨格(basic scaffold)を用いて合成して異なる分離特性を授ける。複数ある分子タグの数は、採用する分離のモード、検出のために分子タグに使う標識、結合部分の感受性(切断可能な結合が切断される効率)等を含むいくつかの要因に応じて異なり得る。一態様では、複数の分子タグの数は、2〜数十(例えば、50)にわたり得る。他の態様では、集合の大きさは、2〜40、2〜20、2〜10、3〜50、3〜20、3〜10、4〜50、4〜10、5〜20、または5〜10であり得る。
【0046】
分子タグおよび切断可能な結合
一実施形態では、切断誘導部分により生成される活性種(一重項酸素等)と切断可能な結合との反応により、分子タグは結合化合物から切断される。例えば、Singhら、国際特許公報WO01/83502号。
【0047】
本発明の一態様は、それぞれ異なるライブラリーが、切断可能な結合を介して付加された1つ以上の分子タグを有する複数の結合化合物のライブラリーを提供することを含む。結合化合物のライブラリーの性質、切断可能な結合、および分子タグは幅広く異なり得る。一態様では、本発明で使用するライブラリーは、大きい化合物ライブラリーのばらばらなサブセットである。このようなライブラリーの化合物は、コンビナトリアル合成が可能なNモノマーの直鎖状オリゴマーであることが好ましい。ばらばらなサブセットは、モノマーの出発配列を選択し、ライブラリー出発配列の配列に沿った各位置にランダムに選択したモノマーを連続的に組み込むことによりライブラリーを生成することにより都合よく合成され得る。従って、例えば、10量体出発配列および8つのモノマー選択のものについては、それぞれ8つのメンバーを有する10の10量体ライブラリーが生成され得る。結合化合物のライブラリーは、図1Aおよび1Bに図示するようなペプチドライブラリーであることが好ましい。
【0048】
一態様では、結合化合物に付加される分子タグは、式:
P−L−E
(式中、Pはペプチドライブラリーであり、Lは切断可能な結合であり、Eは分子タグである。)
で表すことができる。切断可能な結合Lは、酸化に不安定な結合であることが好ましく、一重項酸素により切断され得る結合であることがより好ましい。切断可能な結合(例えば、酸化に不安定な結合)および分子タグEは、慣用的な化学反応によりPに付加される。
【0049】
Lが酸化に不安定な場合、Lは、チオエーテルもしくはそのセレン類似体;または炭素−炭素二重結合を含むオレフィンであって、オキソ基への二重結合の切断により分子タグEが放出されるものであることが好ましい。例示のオレフィンとしては、炭素原子においてαメチン(CH、少なくとも1つの水素原子を有する炭素原子)で置換された硫化ビニル、ビニルエーテル、エナミン、イミンが挙げられ、ここで、ビニル基は環式であり得、ヘテロ原子は環式であるか、環式オレフィン炭素原子において置換されていてもよく、少なくとも1つから最大4つのヘテロ原子がオレフィン炭素原子に結合している。得られるジオキセタンは、周囲温度を上回る温度(通常約75℃未満)にて加熱することにより、酸もしくは塩基での反応により、または感光性物質の不在下もしくは存在下での光活性化により、自発的に分解する。このような反応は、以下の例示の参考文献に記載されている:すなわち、AdamおよびLiu、J. Amer. Chem. Soc. 94, 1206-1209, 1972、Andoら、J.C.S. Chem. Comm. 1972,477-8、Andoら、Tetrahedron 29, 1507-13, 1973、Andoら、J. Amer. Chem. Soc. 96, 6766-8, 1974、AndoおよびMigita、同書 97, 5028-9, 1975、WassermanおよびTerao, Tetra. Lett. 21,1735-38, 1975、AndoおよびWatanabe、同書 47, 4127-30, 1975、Zaklikaら、Photochemistry and Photobiology 30,35-44, 1979、ならびにAdamら、Tetra. Lett. 36, 7853-4, 1995。米国特許第5,756,726号も参照のこと。
【0050】
ジオキセタンは、オレフィンの一方の炭素原子において分子タグで、および他方の炭素原子において結合部分で置換された活性化オレフィンと一重項酸素との反応により形成される。例えば、米国特許第5,807,675号を参照のこと。これらの切断可能な結合は、以下の式で表され得る:
−W−(X)α=Cβ(Y)(Z)−
(式中:
Wは、結合、ヘテロ原子、例えば、O、S、N、P、M(安定した共有結合を形成する金属を意図する)、または官能性(カルボニル、イミノ等)であり得、XまたはCαに結合し得る;少なくとも1つのXは脂肪族、芳香族、脂環族または複素環であり、ヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を介してCαに結合しており、他方のXは同じまたは異なっていてよく、さらに水素、脂肪族、芳香族、脂環族または複素環、通常、芳香族または芳香族複素環であり得る(ここで、1つのXはYと共にこれらが結合している炭素原子と環(通常複素環)を形成し、一般的に水素以外は約1〜20、通常1〜12、より通常には1〜8個の炭素原子であり、一方のXが0〜6、通常0〜4個のヘテロ原子を有し、他方のXは少なくとも1つのヘテロ原子、最大6個のヘテロ原子、通常1〜4個のヘテロ原子を有する;
Yは、Xの定義に当てはまり、通常、ヘテロ原子を介してCβに結合しており、示されるようにXと共に複素環を形成し得る;
Zは、通常、上述したCβに直接またはヘテロ原子を介して結合した、上述した約4〜12、通常4〜10個のの炭素原子、および0〜4個のヘテロ原子の複素環芳香族を含む芳香族である;
nは、分子タグがCα又はXに結合しているか否かに応じて1または2である;
YおよびZの一方は、結合部分に結合するための官能性を有するか、または結合部分に結合している(例えば、結合部分Tに対する連結基として作用するかまたはそれを含む))。
【0051】
切断の際に分子タグEが以下に記載する大きさの範囲内にあるように、W、X、YおよびZを選択することが好ましい。
【0052】
例示の切断可能な結合としては、S(分子タグ)−3−チオールアクリル酸、N(分子タグ);N−メチル4−アミノ−4−ブテン酸、3−ヒドロキシアクロレイン、N−(4−カルボキシフェニル)−2−(分子タグ)−イミダゾール、オキサゾール、およびチアゾールが挙げられる。
【0053】
同じく関心があるのは、9位にて、式:
−(CO)X(A)−
(式中
は、O、S、NおよびSeからなる群より選択される、通常最初の3つのうちの1つであるヘテロ原子であり、
Aは、分子タグで置換された少なくとも2つの炭素原子、通常多くて6つの炭素原子の鎖であり、Aの他の原子価は水素により満たされることが好ましいが、鎖は他の基(アルキル、アリール、複素環基等)で置換され得る。Aは、一般的に多くて10個の炭素原子である。)
の二価基で置換されたN−アルチルアクリジニル誘導体である。
【0054】
同じく関心があるのは、環が通常少なくとも1つの芳香族基により置換され、場合によっては分子タグを放出するのに加水分解が必要となる、置換型イミダゾール、チアゾール、オキサゾール等に例示されるような、ジヘテロシクロペンタジエン等の複素環化合物である。
【0055】
同じく関心があるのは、テルル(Te)原子に対して水素原子βを有するエチレン基にTeが結合しているTe誘導体であり、ここでエチレン基は、オキソ基を有し得る脂環族または複素環の一部であり、好ましくは芳香族環に融合されており、Teの他の原子価は分子タグに結合している。環は、クマリン、ベンゾキサジン、テトラリン等であり得る。
【0056】
いくつかの好ましい切断可能な結合およびそれらの切断生成物を、図7A〜Fに図示している。図7Aに示すチアゾール切断可能結合「−CH−チアゾール−(CH2)−C(=O)−NH−タンパク質」は、部分「−CH−C(=O)−NH−CHO」を有する分子タグを生じる。nは、好ましくは1〜12の範囲にあり、より好ましくは1〜6の範囲にある。図7Bに示すオキサゾール切断可能結合「−CH−オキサゾール−(CH−C(=O)−NH−タンパク質」は、部分「−CH−C(=O)O−CHO」を有する分子タグを生じる。オレフィン切断可能結合(図7C)は、上述した結合化合物の実施形態「P−L−M−D」と関連して、Dをフルオレセイン色素として図示している。オレフィン切断可能結合は、他の実施形態でも採用され得る。例示のオレフィン結合の切断により、形態:「R−(C=O)−M−D」の分子タグが生じる(ここで、「R」は、上記した分子タグEの一般的説明の範囲内の任意の置換基であり得る)。Rは、電子供与基であることが好ましい。例えば、Ullmanら、米国特許第6,251,581号;SmithおよびMarch, March's Advanced Organic Chemistry:Reactions, Mechanisms, and Structure,第5版(Wiley-Interscience, New York,2001);等。より好ましくは、Rは、1〜8個の炭素原子、ならびにO、SおよびNからなる群より選択される0〜4個のヘテロ原子を有する電子供与基である。さらに好ましくは、Rは、−N(Q)、−OQ、p−[CN(Q)]、フラニル、n−アルキルピロリル、2−インドリル等である(ここで、Qはアルキルまたはアリール)。図7Cのオレフィン切断可能結合をさらに参照すると、置換基「X」および「R」は、切断可能結合Lを表す上記式の置換基「X」および「Y」と等価である。特に、図7CのXは、モルホリノ、−OR’または−SR’’であることが好ましい(ここで、R’およびR’’は、1〜8個の炭素原子、ならびにO、SおよびNからなる群より選択される0〜4個のヘテロ原子を有する脂肪族、芳香族、脂環族または複素環である)。形態「−(CH−S−CH(C)C(=O)NH−(CH−NH−」を有する好ましいチオエーテル切断可能結合を、図6Dに図示する(ここで、nは2〜12の範囲、より好ましくは2〜6の範囲にある)。図7Dに示すタイプのチオエーテル切断可能結合は、結合部分Tおよび分子タグEに、図7Eおよび7Fに示す前駆体化合物により結合し得る。結合部分Tのアミノ基に結合するために、従来の化学反応により末端ヒドロキシルをNHSエステルに変換する。アミノ基との反応および結合後、Fmoc保護基を除去して、遊離アミンを生成し、次いでこれを、最後の反応ステップがホスホロアミダイト基の代わりにNHSエステルの付加であること以外は図1、2および4のスキームにより生成される化合物等の分子タグのNHSエステルと反応させる。
【0057】
分子タグEは、活性種(特に一重項酸素)について安定で、検出またはリポーター基を含む水溶性有機化合物である。さもなければ、Eは、大きさおよび構造が幅広く異なり得る。一態様では、Eは、約100〜約2500ダルトン、より好ましくは約100〜約1500ダルトンの分子量を有する。Eの好ましい構造は、以下により詳細に記載する。検出基は、電気化学、蛍光または発色シグナルを生成し得る。検出基は、蛍光シグナルを生成することが好ましい。
【0058】
複数の組成物中の分子タグは、同じ集合の他のメンバーと比べてそれぞれ固有の分離特性および/または固有の光学特性を有する。一態様では、クロマトグラフィーまたは電気泳動の分離特性は、例えば、電圧、カラム圧、カラムの種類、移動相、電気泳動の分離溶媒等の当該分野では慣用の標準的な分離条件セット下での保持時間である。別の態様では、光学特性は、所与の波長または波長バンド等における発光スペクトル、蛍光寿命、蛍光強度等の蛍光特性である。蛍光特性は、蛍光強度であることが好ましい。例えば、集合の各分子タグは、同じ蛍光発光特性を有し得るが、それぞれ互いと固有の保持時間が異なる。他方で、集合の2つ以上の分子タグは同じ保持時間を有し得るが、固有の蛍光特性(例えば、スペクトル的に分解可能な発光スペクトル)を有し、集合の全てのメンバーが分子分離および蛍光測定の組合せにより区別可能である。
【0059】
一態様では、分子タグEは(M,D)である(ここで、Mは移動度改変部分であり、Dは検出部分である)。「(M,D)」という表記は、MおよびD部分の順序が、いずれの部分も切断可能な結合Lに隣接し得るものであることを示す。つまり、「P−L−(M,D)」は、2つの形態:「P−L−M−D」または「P−L−D−M」のいずれかの結合化合物を示す。
【0060】
検出部分Dは、蛍光標識または色素、発色標識または色素、電気化学標識等であり得る。Dは、蛍光色素であることが好ましい。本発明で使用する蛍光色素の例としては、以下の参考文献に開示される、水溶性ローダミン色素、フルオレセイン、4,7−ジクロロフルオレセイン、ベンゾキサンチン色素、およびエネルギー転移色素が挙げられる:Handbook of Molecular Probes and Research Reagents, 第8版,(Molecular Probes, Eugene, 2002);Leeら、米国特許第6,191,278号;Leeら、米国特許第6,372,907号;Menchenら、米国特許第6,096,723号;Leeら、米国特許第5,945,526号;Leeら、Nucleic Acids Research, 25:2816-2822 (1997);Hobb, Jr., 米国特許第4,997,928号;Khannaら, 米国特許第4,318,846号;Reynolds, 米国特許第3,932,415号;Eckertら、米国特許第2,153,059号;Eckertら、米国特許第2,242,572号;Taingら、国際特許公報WO02/30944号;等。さらに具体的にな蛍光色素の例としては、5−および6−カルボキシローダミン6G;5−および6−カルボキシ−X−ローダミン、5−および6−カルボキシテトラメチルローダミン、5−および6−カルボキシフルオレセイン、5−および6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、2’,7’−ジメトキシ−5−および6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−5−および6−カルボキシフルオレセイン、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−5−および6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、1’,2’,7’,8’−ジベンゾ−5−および6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、1’,2’,7’,8’−ジベンゾ−4’,5’−ジクロロ−5−および6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、2’,7’−ジクロロ−5−および6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、ならびに2’,4’,5’,7’−テトラクロロ−5−および6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセインが挙げられる。Dは、フルオレセインまたはフルオレセイン誘導体であることが最も好ましい。
【0061】
移動度改変部分Mの大きさおよび組成は、1結合から、鎖状になった約100原子、通常は多くて約60原子、より通常は多くて約30原子にわたり異なり得る(ここで、原子は、炭素、酸素、窒素、リン、ホウ素および硫黄である)。一般的に、結合以外の場合、移動度改変部分は、約0〜約40、より通常には約0〜約30個のヘテロ原子を有し、これは上記ヘテロ原子に加えて、ハロゲンまたは他のヘテロ原子を含み得る。水素以外の合計原子数は、一般的に約200原子未満、通常約100原子未満である。酸性基が存在する場合、移動度改変部分が存在する媒体のpHに応じて、様々な陽イオンが酸性基と会合し得る。酸は、有機でも無機でもあり得、カルボキシル酸、チオノカルボキシル酸、チオカルボキシル酸、ヒドロキサム酸、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸、ボロン酸、硝酸、亜硝酸等が挙げられる。正電荷については、置換基は、アミノ(アンモニウムを含む)、ホスホニウム、スルホニウム、オキソニウム等を含む(ここで、置換基は、一般的に、約1〜6個の炭素原子の脂肪族であり、ヘテロ原子1個当たりの炭素原子の合計数は、通常約12未満、通常約9未満である)。側鎖としては、アミン、アンモニウム塩、ヒドロキシル基(フェノール基を含む)、カルボキシル基、エステル、アミド、ホスフェート、複素環が挙げられる。Mは、同じまたは異なる化学的特性の異なるモノマーを有するホモオリゴマーまたはヘテロオリゴマーであり得る(例えば、ヌクレオチドおよびアミノ酸)。
【0062】
別の態様では、(M,D)部分は、コンビナトリアルライブラリーの生成で使用される化学骨格から構築される。例えば、以下の参考文献は、多様な移動度改変部分を生成するのに有用な骨格化合物を記載している:ペプトイド(PCT公報WO91/19735号、1991年12月26日)、コードペプチド(PCT公報WO93/20242号、1993年10月14日)、ランダムバイオオリゴマー(PCT公報WO92/00091号、1992年1月9日)、ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチド等のダイバーソマー(diversomere)(Hobbs DeWitt, S.ら、Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 90:6909-6913 (1993))、ビニル性ポリペプチド(Hagiharaら、J. Amer. Chem. Soc. 114:6568 (1992))、β−D−グルコース骨格を有する非ペプチド(nonpeptidal)ペプチド模倣薬(Hirschmann, R.ら、J. Amer. Chem. Soc. 114:9217-9218 (1992))、小さい化合物ライブラリーの類似体有機合成(Chen, C.ら、J. Amer. Chem. Soc. 116:2661 (1994))、オリゴカルバメート(Cho, C. Y.ら、Science 261:1303(1993))、ペプチジルホスホネート(Campbell, D.A.ら, J. Org. Chem. 59:658(1994));Chengら、米国特許第6,245,937号;Heizmannら、"Xanthines as a scaffold for molecular diversity, "Mol. Divers. 2:171-174 (1997);Paviaら、Bioorg. Med. Chem., 4:659-666(1996);Ostreshら、米国特許第5,856,107号;Gordon, E. M.ら、J. Med. Chem. 37:1385(1994);等。この態様では、Dは骨格上の置換基であり、Mは残りの骨格であることが好ましい。
【0063】
さらに別の態様では、(M,D)部分は、容易なアセンブリを可能にする1つ以上の同じまたは異なる一般的なまたは市販の結合、架橋および標識化試薬から、特に合成の全体または一部について市販のDNAまたはペプチド合成機を用いて構築される。この態様では、(M,D)部分は、通常ホスホジエステルおよびアミド結合により繋がったサブユニットから構成される。前駆体の例としては、ジメトキシトリチル(DMT)保護型ヘキサエチレングリコールホスホロアミダイト、6−(4−モノメトキシトリチルアミノ)ヘキシル−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイト、12−(4−モノメトキシトリチルアミノ)ドデシル−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイト、2−[2−(4−モノメトキシトリチル)アミノエトキシ]エチル−(2−シアノエチル)、N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイト、(S−トリチル−6−メルカプトヘキシル)−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイト、5’−フルオレセインホスホロアミダイト、5’−ヘキサクロロ−フルオレセインホスホロアミダイト、5’−テトラクロロ−フルオレセインホスホロアミダイト、9−O−ジメトキシトリチル−トリエチレングリコール、1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト、3(4,4’ジメトキシトリチルオキシ)プロピル−1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト、5’−O−ジメトキシトリチル−1’,2’−ジデオキシリボース−3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト、18−Oジメトキシトリチルヘキサエチレングリコール、1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト、12−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)ドデシル−1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト、1,3−ビス−[5−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)ペンチルアミド]プロピル−2−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト、1−[5−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)ペンチルアミド]−3−[5−フルオレノメトキシカルボニルオキシペンチルアミド]−プロピル−2−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト、トリス−2,2,2−[3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロピルオキシメチル]エチル−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト、スクシンイミジルtrans−4−(マレイミジルメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸(SMCC)、スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)、スクシンイミジルアセチルチオ酢酸、テキサスレッド−X−スクシンイミジルエステル、5−および6−カルボキシテトラメチルローダミンスクシンイミジルエステル、ビス−(4−カルボキシピペリジニル)スルホンローダミンジ(スクシンイミジルエステル)、5−および6−((N−(5−アミノペンチル)アミノカルボニル)テトラメチルローダミン、スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチラート(SMPB);N−γ−マレイミドブチリル−オキシスクシンイミドエステル(GMBS);p−ニトロフェニルヨウ化酢酸(NPIA);4−(4−N−マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH);および同様の試薬が挙げられるがこれらに限定されない。上記試薬は、例えば、Glen Research (Sterling, VA)、Molecular Probes (Eugene, OR)、Pierce Chemical等の試薬提供元から市販されている。従来の合成スキームにおける上記試薬の使用は当該分野で周知である。例えば、Hermanson, Bioconjugate Techniques (Academic Press, New York, 1996)。特に、Mは以下の試薬から構築され得る:ジメトキシトリチル(DMT)保護型ヘキサエチレングリコールホスホロアミダイト、6−(4−モノメトキシトリチルアミノ)ヘキシル−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイト、12−(4−モノメトキシトリチルアミノ)ドデシル−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイト、2−[2−(4−モノメトキシトリチル)アミノエトキシ]エチル−(2−シアノエチル)N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイト、(S−トリチル−6−メルカプトヘキシル)−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイト、9−O−ジメトキシトリチル−トリエチレングリコール,1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト、3(4,4’ジメトキシトリチルオキシ)プロピル−1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト、5’−O−ジメトキシトリチル−1’,2’−ジデオキシリボース−3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト、18−Oジメトキシトリチルヘキサエチレングリコール、1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト、12−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)ドデシル−1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト、1,3−ビス−[5−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)ペンチルアミド]プロピル−2−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト、1−[5−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)ペンチルアミド]−3−[5−フルオレノメトキシカルボニルオキシペンチルアミド]−プロピル−2−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト、トリス−2,2,2−[3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロピルオキシメチル]エチル−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト、スクシンイミジルtrans−4−(マレイミジルメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸(SMCC)、スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)、スクシンイミジルアセチルチオ酢酸、スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチラート(SMPB);N−γ−マレイミドブチリル−オキシスクシンイミドエステル(GMBS);p−ニトロフェニルヨウ化酢酸(NPIA);および4−(4−N−マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)。
【0064】
Mはまた、公知のポリマーサブユニット合成方法により調製されるポリマー鎖を含み得る。選択された長さの酸化ポリエチレン含有鎖の生成方法は周知である。例えば、Grossmanら、米国特許第5,777,096号。定義された大きさの複数サブユニットポリマーユニットを、直接または連結基を介して互いと結合(couple)させることを含むこれらの方法は、ポリエーテル(例えば、酸化ポリエチレンおよび酸化ポリプロピレン)、ポリエステル(例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸)、ポリペプチド、オリゴ糖、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルホンアミド、ポリスルホキシド、ポリホスホネート、およびそれらのブロックコポリマー(荷電されたまたは荷電されていない連結基により結合した複数のサブユニットのユニットから構成されるポリマーを含む)等の様々な種類のポリマーに対して適用可能であることが理解されよう。ホモポリマーに加えて、本発明により使用されるポリマー鎖は、選択された長さのコポリマー(例えば、ポリプロピレンユニットと交互に存在する酸化ポリエチレンユニットのコポリマー)を含む。別の例は、ホモポリマーまたは混合したポリマーとして選択された長さおよびアミノ酸組成(すなわち、天然型または人工のアミノ酸残基を含む)のポリペプチドである。
【0065】
別の態様では、放出後、分子タグEは式:
A−M−D
(式中:
Aは−C(=O)Rであり、ここでRは、1〜8個の炭素原子ならびにO、SおよびNからなる群より選択される0〜4個のヘテロ原子を有する脂肪族、芳香族、脂環族または複素環;−CH−C(=O)−NH−CHO;−SOH;−CH−C(=O)O−CHO;−C(=O)NH−(CH−NH−C(=O)C(=O)−(C)であり(ここでnは2〜12の範囲にある);
Dは、蛍光色素であり;ならびに
Mは、A−M−Dの合計分子量が約100〜約2500ダルトンの範囲内にあるという条件付きで上述したとおりである。)
により定義される。
【0066】
別の態様では、Dはフルオレセインであり、A−M−Dの合計分子量は、約100〜約1500ダルトンの範囲内にある。
【0067】
別の態様では、Mは、通常は直線鎖で分子を互いと結合させる官能基を有する小さい分子から合成され得る。このような官能基としては、カルボン酸、アミンおよびヒドロキシまたはチオール基が挙げられる。本発明によれば、電荷供与部分は、コア鎖(core chain)からつながる1つ以上の側鎖基を有し得る。側鎖基は、標識または電荷供与部分の別の分子に結合させる官能性を有する。採用する官能基の反応から生じるよくある官能性は、コンジュゲートさせる分子間の共有結合を形成することにより例示される。このような官能性は、ジスルフィド、アミド、チオアミド、ジチオール、エーテル、尿素、チオ尿素、グアニジン、アゾ、チオエーテル、カルボン酸、ならびに硫黄およびリンを含むエステルおよびアミド(例えば、スルホン酸、リン酸エステル、スルホンアミド、チオエステル等)である。
【0068】
分子タグを結合化合物に付加させる
分子タグを結合化合物に共有結合させることについては、参考文献中で豊富な手引きを見つけることができる。例えば、Hermanson, Bioconjugate Techniques, (Academic Press, New York, 1996)等。本発明の一態様では、1つ以上の分子タグを、結合化合物上の共通の反応基に直接または間接的に付加させる。共通の反応基としては、アミン、チオール、カルボン酸、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトン等が挙げられ、市販の架橋剤により分子タグに結合させ得る。例えば、Hermanson(上記引用);Haugland, Handbook of Fluorescent Probes and Research Products, 第9版(Molecular Probes, Eugene, OR, 2002)。一実施形態では、分子タグのNHS−エステルを、結合化合物上の遊離アミンと反応させる。
【0069】
結合化合物のライブラリーをそれぞれ異なる分子タグにより別々に誘導化した後、他のライブラリーと共にプールして、結合化合物の複数のライブラリーを形成する。通常、異なる種類のライブラリーはそれぞれ、同じ比率の組成で存在する。しかし、比率は、設計上の選択として変化し、特定の結合化合物の1つまたはサブセットが具体的な実施形態またはアッセイについての所望または要求に応じてより高いまたは低い比率で存在し得る。このような設計上の選択に影響を与えうる要因としては、特定の標的に対するアフィニティおよびアビディティ、標的の相対的な存在度、分子タグの検出部分の蛍光特性等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0070】
ペプチドを合成するための化学反応は、当該分野で周知である。例えば、Margin,ら、Ann. Rev. Biochem. (1970) 39:841-866を参照のこと。一般的に、このような合成は、適切な保護基、すなわち反応に関与しない官能基でのブロッキングを伴う。次いで、遊離官能基を反応させて、所望の結合を形成する。メリフィールド合成のように、樹脂上でペプチドを生成できる(Merrifield, J. Am. Chem. Soc. (1980) 85:2149-2154、およびHoughtenら、Int. J. Pep. Prot. Res. (1980) 16:311-320)。次いで、公知の技術により、ペプチドを樹脂から取り除く。
【0071】
ペプチドの合成のために利用可能な多数の技術の概括は、J. M. Stewartら,"Solid Phase Peptide Synthesis, W. H. Freeman Co, San Francisco (1969);J. Meienhofer, "Hormonal Proteins and Peptides", (1973), vol. 2, p. 46, Academic Press (New York)(固相ペプチド合成について);およびE. Schroderら、"The Peptides", vol. 1, Academic Press (New York), 1965(溶液合成について)から知ることができる。
【0072】
一般的に、これらの方法は、1つ以上のアミノ酸、または適切に保護されたアミノ酸を、伸長中のペプチド鎖に連続的に付加することを含む。通常、適切な保護基は、第1のアミノ酸アミノ基またはカルボキシル基のいずれかを保護する。その後、保護または誘導化されたアミノ酸は、適切に保護された相補(アミノまたはカルボキシル)基を有する配列中の次のアミノ酸をアミド結合を形成するのに適した条件下で付加することにより、不活性固体支持体に結合できるか、または溶液に入れて利用できる。次いで、保護基をこの新たに付加したアミノ酸残基から除去し、次いで、次のアミノ酸(適切に保護されたもの)を付加し、同様に続ける。全ての所望のアミノ酸が正確な配列において結合された後、残った保護基があれば(および固体支持体があれば)順次にまたは同時に除去して、最終的なペプチドを得る。保護基は、公知方法により、利用する具体的な保護基に応じて所望どおりに除去される。例えば、保護基は、水素および炭素担持パラジウム、ナトリウム含有液体アンモニア等による還元;トリフルオロ酢酸、フッ化水素酸等での加水分解により除去され得る。
【0073】
活性種を生成するための親油性感受性物質
感受性物質は、好ましくは酸化により切断可能な結合を切断できる活性種を生成するように誘導できる化学化合物である。活性種は、その切断誘導効果がその生成部位近傍にしか及ばないような短期間の活性を示す化学物質種であることが好ましい。活性種は本質的に短命であり、生成部位の近傍を超えることによる有意なバックグラウンドを生じないようにするか、または活性種を効率的に除去するスカベンジャーを採用して、生成部位の短距離を超えた切断可能な結合とは反応できないようにする。活性種の例としては、一重項酸素、過酸化水素、NADHおよびヒドロキシルラジカル、フェノキシラジカル、スーパーオキシド等が挙げられる。酸化を生じる活性種の抑制剤の例としては、ポリエン、カロテノイド、ビタミンE、ビタミンC、チロシン、ヒスチジンおよびグルタチオンのアミノ酸−ピロールN−コンジュゲート等が挙げられる。例えば、Beutnerら、Meth. Enzymol., 319:226-241(2000)。
【0074】
本発明によれば、サンプル中の膜を親油性感受性物質と混合して、感受性物質で処理した膜を形成する。親油性感受性物質は、感受性物質を生物学的膜に安定して固定させる親油性部分で、感受性物質を直接または間接的に誘導化することにより形成される。反応性官能性を有する親油性化合物を、感受性物質または架橋剤上の相補的な官能性と反応させて、膜に固定させるための共有結合した親油基を有する感受性物質を生成し得る。あるいはまた、親油基を有する捕捉部分(ビオチン等)を膜に固定させた後、アビジンまたはストレプトアビジンにコンジュゲートさせ、最終的にアビジンまたはストレプトアビジンを介してビオチン化感受性物質を付加させてもよい。
【0075】
親油性感受性物質および切断可能な結合についての重要な配慮は、結合化合物が膜関連被分析物に結合した際に、感受性物質により生成される活性種が拡散して、切断可能な結合と相互作用する前に活性を失うほど互いと離れ過ぎていないことである。従って、切断ステップの間、感受性物質は、好ましくは結合した切断誘導部分の1000nm以内、好ましくは20〜100nmにある。この切断誘導部分の有効範囲は、本明細書においてその「有効近傍」と称する。
【0076】
活性種を生成するための感受性物質としては、過酸化水素を生成するオキシダーゼ(グルコースオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼ、NADH−FMNオキシドレダクターゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グリセリルリン酸オキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、コリンオキシダーゼおよびアルコールオキシダーゼ等)、ヒドロキシルラジカルを生成する西洋ワサビペルオキシダーゼ、NADHまたはNADPHを生成する様々なデヒドロゲナーゼ、高い局所pHを得るためにアンモニアを生成するウレアーゼ等の酵素が挙げられる。
【0077】
本発明で使用するのに好ましい感受性物質は、光励起に応答して分子酸素から一重項酸素を生成する感光性物質である。本明細書で使用する場合、「感光性物質」とは、光により活性化されると、分子酸素を一重項酸素に変換する光吸着分子を指す。親油性部分を有する適切な感光性物質は、以下の参考文献に開示されている:Youngら、米国特許第6,375,930号;およびYoungら、米国特許出願第2002/0006378号(これらは、参照により本明細書に援用する)。親油基または捕捉部分で誘導化され得、本明細書で使用できるビオチン等のさらなる感光性物質は、以下の参考文献に開示されている:Sesslerら、米国特許第5,292,414号;Masuyaら、米国特許第5,344,928号;McCapra、米国特許第5,705,622号;Levyら、第4,883,790号;Meunierら、米国特許第5,141,911号;等(これらは、参照により本明細書に援用する)。以下の参考文献は、ビオチンと親油性部分とのコンジュゲートを使用して、ビオチン化分子を、アビジンまたはストレプトアビジンを介して膜に固定することを開示している:Plantら、Anal. Biochem., 176:420-426 (1989);Bayerら、Biochim. Biophys. Acta, 550:464-473 (1979);Ramirezら、J. Chromatogr. A, 971:117-127(2002);等(これらは、参照により本明細書に援用する)。
【0078】
感光性物質としては、色素および芳香族化合物が挙げられ、概して、複数のコンジュゲートした二重または三重結合を通常有する共有結合した原子から構成される化合物である。化合物は、典型的に、約200〜約1,100nm、通常約300〜約1,000nm、好ましくは約450〜約950nmの波長範囲にある光を吸収し、最大吸光度における吸光係数は、励起波長において、約500M−1cm−1、好ましくは約5,000M−1cm−1、より好ましくは約50,000M−1cm−1を上回る。酸素の不在下での光吸収後に生成される励起状態の寿命は、通常、少なくとも約100ナノ秒、好ましくは少なくとも約1ミリ秒である。一般的に、寿命は、本発明による試薬中の結合を切断できる程度に十分に長くなければならない。このような試薬は、通常、以下に議論する濃度にて存在する。感光性物質が励起された状態は、通常、その基底状態とは異なるスピン量子数(S)を有し、基底状態が通例どおり一重項(S=0)である場合、通常、三重項(S=1)である。感光性物質は、高い項間交差収率を有することが好ましい。つまり、感光性物質の光励起は、通常、少なくとも約10%、望ましくは少なくとも約40%、好ましくは約80%を上回る効率を有する三重項状態を生成する。
【0079】
選択した感光性物質は、比較的光安定性で、好ましくは一重項酸素とは効率的に反応しない。ほとんどの有用な感光性物質にはいくつかの構造的特徴が存在する。ほとんどの感光性物質は、多くは芳香族構造である剛体構造に保持された、少なくとも1つ、そして多くの場合3つ以上のコンジュゲートされた二重または三重結合を有する。これらは、カルボニルもしくはイミン基、または周期表の3〜6行目から選択される重原子(特にヨウ素もしくは臭素)等の項間交差を促す少なくとも1つの基を含むことが多いか、あるいは拡張した芳香族構造を有し得る。
【0080】
感光性物質を光活性化して一重項酸素を生成するために、幅広い種類の光源が利用可能である。現実的な持続時間の間で十分な一重項酸素を生成するのに十分に強力である限り、多色性および単色性光源の両方が使用できる。照射の長さは、感光性物質の性質、切断可能な結合の性質、照射光源の力、およびサンプルからのその距離等に依る。一般的に、照射期間は、約1マイクロ秒未満から長くて約10分間、通常約1ミリ秒〜約60秒間の範囲にある。照射の強度および長さは、感光性物質分子の少なくとも約0.1%、通常感光性物質分子の少なくとも約30%、そして好ましくは感光性物質分子の実質的に全てを励起するのに十分なものであるべきである。光源の例としては、例えば、ヘリウム−ネオンレーザ、アルゴンレーザ、YAGレーザ、He/Cdレーザおよびルビーレーザ等のレーザ;光ダイオード;水銀、ナトリウムおよびキセノンランプ;例えば、タングステンおよびタングステン/ハロゲン等の白熱灯;閃光灯;等が挙げられるがこれらは例示であり限定するものではない。
【0081】
本発明で利用できる感光性物質の例は、上記特性を有するものであり、以下の参考文献において列挙されている:Turro, Modern Molecular Photochemistry(上記引用);SinghおよびUllman、米国特許第5,536,834号;Liら、米国特許第5,763,602号;Ullmanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 5426-5430(1994);Strongら、Ann. New York Acad. Sci., 745:297-320(1994);Martinら、Methods Enzymol., 186:635-645(1990);Yarmushら、Crit. Rev. Therapeutic Drug Carrier Syst., 10:197-252 (1993);Peaseら、米国特許第5,709,994号;Ullmanら、米国特許第5,340,716号;Ullmanら、米国特許第6,251,581号;McCapra、米国特許第5,516,636号;Wohrle, Chimia, 45:307-310(1991);Thetford、欧州特許公報第0484027号;Sesslerら、SPIE, 1426:318-329 (1991);Madisonら、Brain Research, 522:90-98 (1990);Poloら、Inorganic Chimica Acta, 192:1-3 (1992);Demasら、J. Macromol. Sci., A25:1189-1214(1988);等。一実施形態では、本発明で使用する感光性物質は、例えば、Roelant、米国特許第6,001,573号(参照により本明細書に援用する)に記載されるポルフィリンである。本発明での使用に適した多数のポルフィリンが市販されている。例えば、Frontier Scientific, Inc. (Logan, Utah);Molecular Probes, Inc. (Eugene, Oregon);等。
【0082】
感光性物質の例を、表1bに一覧する。
【表1b】

親油性感受性物質で膜を処理する
親油性感受性物質は、炭化水素鎖を含む疎水性部分が内側に方向付けられ、より親水性のものが外向きに方向付けできるリン脂質と同様の配置および様式で脂質膜に組み込むことができる。従って、通常の細胞膜のように、親油性感受性物質の炭化水素部分は脂質環境に取り入れられる一方で、親水性感受性物質部分は膜表面における水性界面に曝され得る。
【0083】
無傷の細胞性構造が必要な場合、親油性感受性物質を細胞に組み込むのに使用する方法は、細胞および膜の完全性を最小限にしか破壊しないことが好ましい。さらに、細胞は、常套的な組織化学的または細胞化学的な手順により固定および処理され得るが、これらの手順は組み込みに影響を及ぼさないことが好ましい。
【0084】
膜は、BarakおよびWebb (1981) J. Cell Biol. 90:595-604に記載される方法により親油性感受性物質で標識化され得る。典型的に、無傷の細胞等の膜は、好ましくは水性媒体中で、本発明の化合物と接触させる。水性媒体は、水、水および有機溶剤(DMSO、DMF、DMA、またはそれらの混合物等)であり得、リン酸、酢酸、トリス等の緩衝液を含み得る。膜および親油性感受性物質は、1分間〜約1週間、好ましくは約1時間〜76時間、より好ましくは約2時間〜約48時間、またはその間の任意の整数の間にわたり接触させる。製剤は、化学的または機械的処理(界面活性剤(例えば、Tween80)の添加、振とう、攪拌、エレクトロポーレーション等)にさらに供され得る。あるいはまた、標識化が得られるまで、製剤を、約30℃〜50℃、好ましくは約35℃〜約40℃まで加熱してもよい。標識化の後、結合していない成分を、例えば洗浄または遠心分離により除去して、感受性物質標識化細胞または膜を単離してもよい。
【0085】
あるいはまた、図1Dに示すように、親油基を有するビオチン等の捕捉部分を膜に固定して、その後アビジンまたはストレプトアビジンにコンジュゲートさせ、最終的にアビジンまたはストレプトアビジンを介してビオチン化感受性物質を付加させてもよい。細胞(1301)を、親油性部分(1304)を有するビオチン(以下、ビオチン−Gと称する)と混合して、遊離ビオチンを含む膜を有する細胞の集合(1306)を形成する。この集合に、アビジンまたはストレプトアビジン(1310)を添加して、ビオチン−アビジンまたはビオチン−ストレプトアビジン複合体(1312)を細胞表面上に形成する。次いで、これらの細胞を、ビオチン化感光性物質と混合して(1313)、感受性物質で処理した膜を含む細胞表面に複合体(1312)を形成する。
【0086】
放出された分子タグの分離
上記したように、1つ以上の物理、化学および/または光学特性に基づいて分子タグを区別できる分離技術による分離のための分子タグを設計する。このような分離技術は、分子タグ(従って、対応する被分析物)の有無についての定量情報、および定質情報を提供できることが好ましい。一態様では、液相分離技術を採用して、分子タグの混合物を含む溶液(例えば、緩衝溶液、反応溶剤等)を処理して、個々の種類の分子タグを分離する。通常、このような分離は、分子タグが、このような出発混合物から、進路に沿って、それぞれの分子タグの高濃度領域に対応する識別可能なピークまたはバンドが形成されるまで異なる移動をすることを含む。このような進路は、流動、電界、磁界等により規定され得る。具体的な分離技術の選択は、技術を使用する上での費用および利便性、分子タグの化学的性質を考慮した上での技術の分解能、分離する分子タグの数、採用する検出モードの種類等を含むいくつかの要因に依る。分子タグは、電気泳動的にまたはクロマトグラフィーにより分離されることが好ましい。
【0087】
A.電気泳動的分離
電気泳動の方法は周知であり、特定の複数の分子タグを形成および分離するために当業者が設計上の選択をする上で豊富な手引きが存在する。以下は、電気泳動についての参考文献の例である:Krylovら、Anal. Chem., 72:111R-128R(2000);P.D. GrossmanおよびJ. C. Colburn, Capillary Electrophoresis:Theory and Practice, Academic Press, Inc., NY(1992);米国特許第5,374,527号;同第5,624,800号;同第5,552,028号;ABI PRISM 377 DNA Sequencer User's Manual, Rev. A, 1995年1月, 第2章(Applied Biosystems, Foster City, CA);等。一態様では、分子タグは、キャピラリー電気泳動により分離される。当業者の範囲内にある設計上の選択としては、いくつかの市販のモデルからの機器の選択、分離媒体の種類および濃度、pHを含む実行条件の選択、所望の分離時間、温度、電圧、キャピラリーの種類および寸法、検出モード、分離する分子タグの数等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0088】
本発明の一態様では、電気泳動的分離の間またはその後に、分離した化合物の蛍光シグナルおよび移動時間(もしくは移動距離)を記録することにより、または分子タグの相対的な蛍光および移動の順序のチャートを(例えば、エレクトロフェログラムとして)構築することにより、分子タグを検出または同定する。このような検出を行うために、分子タグは、標準的な手段、例えば、高輝度水銀灯、レーザ等により照射され得る。典型的に、分子タグは、He−Neガスレーザまたは固体ダイオードレーザにより生成されるレーザ光により照射される。その後、光検出器、例えば、光電子増倍管、電荷結合素子等により蛍光シグナルが検出できる。電気泳動検出系の例は、他に記載されており、例えば、米国特許第5,543,026号;同第5,274,240号;同第4,879,012号;同第5,091,652号;同第6,142,162号;等がある。別の態様では、分子タグは、例えば、米国特許第6,045,676号に記載されるように電気化学的に検出され得る。
【0089】
電気泳動的分離は、移動度の差に基づく電界における分子の移動および分離を含む。電気泳動的分離の様々な形態として、フリーゾーン(free zone)電気泳動、ゲル電気泳動、等電点電気泳動、等速電気泳動、キャピラリー電気クロマトグラフィー、およびミセル動電クロマトグラフィーが例示されるがこれらに限定されない。キャピラリー電気泳動は、約1〜約200マイクロメーター、通常、約10〜約100マイクロメーターの断面寸法の管またはチャネルにおいて行われる、好ましくは動電流(electrokinetic flow)(電気泳動的、誘電泳動(dielectrophonetic)および/または電気浸透流等)による電気分離(electroseparation)を含む。キャピラリーは、シリコン、石英、ガラスまたはプラスチックから構成されるウエハまたは膜中の長い独立したキャピラリー管またはチャネルであり得る。
【0090】
キャピラリー電気分離では、増幅および他の反応を行うキャピラリーデバイスの一部であるかまたは連結している電気分離チャネルにアリコートを導入することにより、分子タグを含む反応混合物のアリコートを電気分離に供する。次いで、チャネルに含まれる導電性媒体に電位を印加し、組合せ内の成分を移動させる。一般的に、印加される電位は、当該分野で周知の慣習により所望の成分の電気分離を得るのに十分なものである。当業者は、本発明で使用する所与の試薬セットおよび/または切断される標識の性質、反応媒体の性質等に適した電位を決定することができる。媒体および電位についてのパラメータを含む電気分離のパラメータは、通常、最適化されて、所望の成分の最大の分離を達成する。これは経験的に達成することができ、当業者の範囲内に十分ある。
【0091】
検出は、米国特許第5,560,811号(第11欄、19〜30行目)、同第4,675,300号、同第4,274,240号および同第5,324,401号(これらの関連する開示は参照により本明細書に援用される)に示す方法を含む、キャピラリー電気泳動カラムの分析に関連するいずれの公知方法によるものでもあり得る。電気泳動分野の当業者は、幅広い電位または電界強度が使用できることを認識するであろう。例えば、10〜1000V/cm、より典型的には約200〜約600V/cmの電界が使用される。市販の系に対する上限電圧は、約40〜約60cmのキャピラリー長さで約30kVであり、約600V/cmの最大電界が得られる。DNAについては、典型的に、キャピラリーを被覆して、電気浸透流を低減し、キャピラリーの注入端は負電位に保つ。
【0092】
検出を容易にするために、装置全体が、一般的に約180〜約1500nm、通常約220〜約800nm、より通常には約450〜約700nmの範囲にある波長の光の透過損失を低くする光学的に透明なプラスチック材料から加工されていてもよい。適切な材料としては、融合シリカ、プラスチック、石英、ガラス等が挙げられる。
【0093】
B.クロマトグラフィー分離
本発明の一態様では、複数の分子タグを、1つ以上の物理的特性(分子量、形状、溶解度、pKa、疎水性、電荷、極性等が挙げられるがこれらに限定されない)に基づき、クロマトグラフィーによる分離のために設計する。クロマトグラフィー分離技術は、カラムの種類、固相、移動相等のパラメータに基づき選択し、その後1回の作業で分離されて区別できるピークまたはバンドを形成し得る複数の分子タグを選択する。本発明で使用するのにどのHPLC技術を選択するかはいくつかの要因により決定され、検出する分子タグの数(すなわち、集合の大きさ)、アッセイで生成される各分子タグの推定量、多重アッセイで使用するセットの候補である分子タグの入手可能性および合成し易さ、採用する検出様式、ならびにHPLC機器、カラムおよび溶剤の入手可能性、信頼性、コストおよび容易性が挙げられる。一般的に、限られた量のサンプルを分析するのに適し、最も高い分解分離を提供するカラムおよび技術が好ましい。このような選択をするための手引きは参考文献から知ることができる。例えば、Snyderら、Practical HPLC Method Development, (John Wiley and Sons, New York, 1988);Millner, "High Resolution Chromatography:A Practical Approach", Oxford University Press, New York (1999)、Chi-San Wu, "Column Handbook for Size Exclusion Chromatography", Academic Press, San Diego (1999)、およびOliver, "HPLC of Macromolecules:A Practical Approach, Oxford University Press", Oxford, England (1989)。特に、カラムの種類、固相等の条件を前提として、クロマトグラフィー分離の系の開発および最適化のための手順が利用可能である。例えば、Haberら、J. Chromatogr. Sci., 38:386-392(2000);Outinenら、Eur. J.Phann. Sci., 6:197-205(1998);Lewisら、J. Chromatogr., 592:183-195および197-208(1992);等。
【0094】
一態様では、分子タグ候補の初期選択は、典型的に選択されたカラムおよび固定相により分離される分子の生理化学性質により決定される。その後、上記参考文献に記載されるような従来の最適化手順に従って、および特定の実施形態の分離の目的により適した候補分子タグに置き換えることにより、初期選択を経験的に改善する。一態様では、本発明の分離の目的は、(i) 60分未満、より好ましくは40分未満、さらにより好ましくは10〜40分間の分離時間で、分子タグ集合を区別可能なピークまたはバンドに分離すること、(ii)どの対も少なくとも1.0、より好ましくは少なくとも1.25、さらにより好ましくは少なくとも1.50の分解能を有するようなピークまたはバンドの形成、(iii)分離の間のカラム圧が150バール未満、(iv)25℃〜90℃の範囲、好ましくは35℃〜80℃の範囲の分離温度、および(v)複数の区別可能ピークが5〜30の範囲にあり、全てのピークが同じクロマトグラムにあること、を含む。本明細書で使用する場合、2つのピークまたはバンドを参照して言う「分解能」とは、2つのピーク、またはピークの平均底幅で割ったバンド中心間の距離である。例えば、Snyderら(上記引用)。
【0095】
クロマトグラフィー方法を使用して、分子タグを、それらのクロマトグラフィー特性に基づき分離する。クロマトグラフィー特性は、例えば、定義された条件下、または特定のクロマトグラフィー媒体から分子タグが溶出される特定の条件下における、特定のクロマトグラフィー媒体上での分子タグの保持時間であり得る。分子タグのクロマトグラフィー特性はまた、定義された条件下で特定のクロマトグラフィー媒体を用いてクロマトグラフィーにより分離される分子タググループもしくはセットに含まれる分子タグの溶出の順序、または溶出のパターンであり得る。分子タグのクロマトグラフィー特性は、分子タグの物理的特性、ならびに分子タグとクロマトグラフィー媒体および移動相との相互作用により決定される。クロマトグラフィーの定義された条件としては、具体的な移動相溶液、カラム形状(カラムの直径および長さを含む)、カラム作業のpH、流速、圧力および温度、ならびに分子タグの所望の分離を得るために変化し得る他のパラメータが挙げられる。分子タグ、または分子タグのクロマトグラフィー特性は、様々なクロマトグラフィー方法を用いて決定できる。
【0096】
標準的液体クロマトグラフィー方法を使用して分子タグを分離できるが、高圧(または高速)液体クロマトグラフィー(HPLC)は、高い分解能、分析の時間短縮、より高い再現性、ならびに機器作業およびデータ分析の自動化による容易さの利点を提供する。HPLC方法はまた、様々な生理化学特性に基づく分子タグの分離を可能にする。HPLCは密接に関係するタグを区別するのに使用できるため、同様の特性を有する分子タグを同じ実験において一緒に使用することができる。HPLC方法を用いて得られる高度な分解能により、得られる分子タグが互いと区別できるようになるため、タグ付加プローブの大きいセットの使用が可能になる。タグ付加プローブの大きいセットを検出する能力は、標的核酸および標的被分析物の多重検出を行う場合に利点となる。本明細書で使用する場合、「HPLC」とは、(i)最長300mmの長さおよび最大5mmの内径を有する剛体の円筒型分離カラムを採用し、(ii)分離カラムに充填される、最大5μmの同じ直径を有する剛体球状粒子(例えば、シリカ、アルミナ等)から構成される固相を有し、(iii)35℃〜80℃の温度および最大150バールのカラム圧において実行され、(iv)1μL/分〜4mL/分の流速を採用する、液相クロマトグラフィー分離を指す。HPLCで使用する固相粒子は、(i)平均粒径の大きさの分布が狭く、実質的に全ての粒径が平均値の10%以内にあり、(ii)70〜300オングストロームの範囲の同じ孔径を有し、(iii)50〜250m/gの表面積を有し、(iv)1〜5/nmの結合相密度(すなわち、面積単位当たりの保持リガンドの数)を有することをさらに特徴とする。
【0097】
単一の実験で一般的に検出される分子タグのセットは、質量、電荷、質量−電荷比、検出可能タグ(異なる蛍光体もしくは同位体標識等)、または他の固有の特性が異なる化学的に関係する分子のグループである。従って、サンプル中の分子タグを分離するのに適したクロマトグラフィー媒体を選択する際には、分子タグの化学性質および分子タググループにおける分子タグ間の具体的な差異の両方が考慮され得る。
【0098】
液体クロマトグラフィーによる分子タグの分離は、分子タグの電荷、大きさおよび疎水性等の分子タグの物理的特性、または親和性マトリックス上の色素、レクチン、薬剤、ペプチドおよび他のリガンド等の分子に結合する分子タグの能力等の機能的特徴に基づき得る。多様なクロマトグラフィー媒体が、分子タグの電荷、大きさ、疎水性および他のクロマトグラフィー特性に基づいて分子タグを分離するのに適している。具体的なクロマトグラフィー媒体の選択は、採用する分子タグの特性に依る。
【0099】
電荷に基づく分子タグの分離は、イオン交換クロマトグラフィーにより行うことができる。ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドおよび核酸を分離する方法は、当業者に周知であり、例えばMillner, 前掲(1999)に記載されている。この技術では、分離は、移動相と、固定相上のイオン部位との間のイオン(陰イオンまたは陽イオン)の交換に基づく。荷電された化学種を、固定相の表面に共有結合させて、イオン交換樹脂を調製する。移動相は、樹脂イオン基と反対の電荷を有する対イオンを多数含んで、イオン対を形成する。対イオンと同じイオン電荷を有する分子タグは、対イオンと平衡状態になる。分子タグイオンは、対イオンと交換されて、支持体上の共有結合した電荷と対を成し得る。分子タグイオンは、支持体上の荷電基と対を成すとカラムを移動しない。分子タグイオン保持は、支持体上の異なるイオンの親和性、ならびに対イオンの種類、イオン強度およびpHを含む他の溶液パラメータに基づいている。
【0100】
イオン交換媒体は、強イオン交換体および弱イオン交換体を含む2つのクラスに分けられる。弱イオン交換体の電荷は移動相のpHにより変化し、強イオン交換体の電荷はpHとは本質的に無関係である。ほとんどの場合、強交換体を選択して分子タグを分離する方が有利であるが、分子タグが強交換体と非常に固く結合する場合には、分子タグの最大回収を可能にする弱交換体が有利である。
【0101】
分子タグを分離するのに有用なイオン交換媒体は、陰イオンまたは陽イオン交換体の両方を含む。従って、分子タグを分離するのに陰イオンまたは陽イオン交換体のいずれを使用するかは、クロマトグラフィーステップのpHにおける分子タグの電荷に依存する。分離するためのpHは、分子タグの等電点(pI)、または分子タグのグループの平均等電点を決定し、一般的に、陰イオン交換のためにはpIを1pH単位上回って、または陽イオン交換のためにはpIを1pH単位下回って使用することにより選択できる。
陽イオン交換樹脂は−SO3−、−OPO3−および−COO−等の陰イオン官能基を有し、陰イオン交換マトリックスは、通常、一般式−NHR2+および−NR3+を有する陽イオン性第3級および第4級アンモニウム基を含む。ペプチド、ポリペプチド、核酸および化学化合物である分子タグを分離するためのイオン交換クロマトグラフィー媒体の例としては、S、QおよびDEAE樹脂としてそれぞれ一般的に知られているスルホン酸、第4級アミンおよび第3級アミン等の官能基を有する強性および弱性の陰イオンおよび陽イオン交換樹脂が挙げられる。
【0102】
化学化合物(例えば、アルキレンおよびアラルキレン)等の小分子である分子タグの分離は、小さい孔径の樹脂を用いて実行でき、大きい孔の樹脂は、一般的にペプチド、ポリペプチドおよび核酸分子である分子タグを分離するために使用される。
【0103】
疎水性相互作用に基づく分子タグの分離は、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および密接に関係する逆相クロマトグラフィー方法により実行できる。疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、小分子およびペプチドを分離するのに一般的に最も有用であり、逆相クロマトグラフィーは、ポリペプチドおよび核酸等のより大きい分子により広く適用されている。HICは、化学的に結合した疎水性固定相を採用し、移動相の方が固定相よりもより極性である。HICは、分子タグの疎水性部分と疎水性マトリックスとの相互作用に基づいている。HICを使用して、有機分子、オリゴヌクレオチドおよびペプチドを含む様々な種類の分子タグを分離できる。オリゴヌクレオチド、ペプチドまたは化学化合物である分子タグを分離するためのHICクロマトグラフィー媒体の例としては、セファロースマトリックスと共役したフェニル、ブチルまたはオクチル疎水性リガンド、およびポリスチレン/ジビニルベンゼンマトリックスと共役したエーテル、イソプロピルまたは疎水性リガンドが挙げられる。
【0104】
逆相クロマトグラフィーは、化学的に結合した相が移動相よりも疎水性(非極性)であるクロマトグラフィーの種類である。これは、固定相が親水性(極性)で、出発移動相が固定相よりも非極性である順相クロマトグラフィーと「逆」である。有機改変物質(通常、アセトニトリルまたはメタノール)の濃度が高くなる移動相勾配が、逆相HPLCにおいて一般的に使われる。これらの勾配は、疎水性が高くなる順に溶質分子を溶出する。水溶性分子タグを分離するために本発明で使用される移動相の例としては、水、ニトロメタン、メタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、酢酸、メトキシエタノール、ベンジルアルコール、アセトン等が挙げられるがこれらに限定されない。移動相は、均一濃度で使用されるか、または連続的に変化する比率で組み合わせられてカラムに送達され得る。後者の場合、通常、2つの溶剤を、時間経過と共に直線的に変化する比率で組み合わせる(すなわち、勾配送達)。
【0105】
異なる選択性を得るために様々な移動相添加物を使用して、分子タグの分離を改善できる。例えば、イオン対試薬を逆相HPLC方法で使用できる。イオン対試薬の例としては、陰イオンのイオン対試薬であるトリフルオロ酢酸(TFA)、および陽イオンのイオン対試薬であるテトラブチルリン酸アンモニウムが挙げられる。
【0106】
逆相HPLCを使用して、様々な種類の分子タグ(有機分子、オリゴヌクレオチド、ペプチドおよびポリペプチドを含む)を分離できる。逆相HPLCは、互いと密接に関係したペプチドまたはポリペプチド分子タグを分離するのに特に有用である。分子タグを分離するための逆相クロマトグラフィー媒体の例としては、C〜Cl8を含む基から選択されるフェニル基、シアノ基または脂肪族基等の保持リガンドが表面に結合した粒子(例えば、シリカまたはアルミナ)が挙げられる。粒子は、80〜300オングストロームの孔径を有することが好ましい。
【0107】
ペプチドである分子タグを分離するための逆相クロマトグラフィー媒体の例としては、C〜Cl8の範囲にある脂肪族保持リガンドが表面に結合し、60〜80オングストロームの孔径を有する粒子が挙げられる。分子タグを分離するのに有用な市販の調製物としては、例えば、Apex WPオクタデシルC18、オクチルC、ブチルCおよびフェニル、Aquaprep RP−3000 CおよびC、Bakerbond WPオクタデシルC18、オクチルC、ブチルCおよびジフェニルが挙げられる。
【0108】
逆相またはイオン対HPLC方法が全ての分子タグの十分な分離を得るのに不十分な場合、異なる保持プロセスによって異なる選択効果が得られるため、順相HPLCに切り替えることが有益かもしれない。逆相クロマトグラフィーに使われる条件とは対照的に、順相クロマトグラフィーでは、使用する固定相は親水性(極性)で、出発移動相は固定相よりも非極性である。サンプル保持は固定相への吸着により制御され、分子は固定相に由来する溶剤分子と置き換わらなければならない。順相クロマトグラフィーを使用して、様々な物理化学的特性を有する分子タグを分離できる。
【0109】
混合モードクロマトグラフィーも、分子タグを分離するために使用でき、オリゴヌクレオチドリポータータグを分離するのに特に有用である。混合モードクロマトグラフィーは、分離する分子タグと固定相との疎水性および静電相互作用の両方を活用する。混合モードカラム充填材料の例としては、アルキルおよびアリール残基を有する誘導化アミノプロピルシリカ粒子であるNACS−12が挙げられる。
【0110】
HPLCによる分離の前に、サンプルを分画するか、または前分離ステップに供して、例えば、リポータータグ以外の微粒子物質または分子を除去してもよい。遠心分離、沈降、濾過および抽出等のサンプルを分画するための標準的な生化学方法に加えて、様々なHPLCプレカラムまたはガードカラムがこの目的のために使用できる。
分離された分子タグは、分子タグの固有の特性(吸光、蛍光または電気化学特性等)の検出、および分子タグに付加した検出基または部分の検出を含む様々な分析方法を用いて検出できる。必須ではないが、様々な検出基または部分を分子タグに付加させて、クロマトグラフィー分離後に検出し易くできる。
【0111】
液体クロマトグラフィーで使用する検出方法は、周知で、市販されており、自動化およびハイスループットサンプリングに適合できる。分子タグの分析のために選択する検出方法は、分子タグが検出可能な基または部分を含むか否か、使用される検出基の種類、ならびに分子タグおよび使用される場合には検出基の物理化学的特性に依存する。蛍光、電解質伝導度、屈折率および蒸発光散乱に基づく検出方法を使用して、様々な種類の分子タグが検出できる。
【0112】
様々な光学検出器が、液体クロマトグラフィーにより分離された分子タグを検出するために使用できる。核酸、ポリペプチド、ペプチドならびに他の高分子および小分子を紫外線(UV)/可視分光検出器を用いて検出する方法は周知であるため、UV/可視検出はHPLC分析の検出方法として最も幅広く使われている。透明な極性液体である移動相と一緒に使う場合には、赤外線分光光度計も高分子および小分子を検出するために使用できる。
【0113】
可変波長およびダイオードアレイ検出器は、2つの市販されている種類のUV/可視分光光度計を代表する。一部の可変波長UV検出器の有用な特徴は、ピークがフローセルを通過している間に、様々な波長において分光学的走査および厳密な吸光読取りを行える能力である。ダイオードアレイ技術は、2つ以上の波長における吸光測定を可能にする追加の利点を提供し、これは、このような吸光測定の比率の計算を可能にする。多重波長におけるこのような吸光配分は、ピークが1つではなく1つ以上の分子タグを表すか否かを決定する際に特に役立つ。
【0114】
蛍光検出器も、蛍光分子タグ(蛍光検出基を含むもの、および本質的に蛍光であるもの等)を検出するのに使用できる。典型的に、蛍光の感度は比較的高く、分子タグが蛍光体を含む場合には他の分光学的検出方法よりも有利である。分子タグは検出可能な固有の蛍光を有し得るが、分子タグが適切な蛍光検出基を含む場合には、サンプル中の単一の分子タグを検出することが可能である。
【0115】
電気化学検出方法も、HPLCにより分離された分子タグを検出するのに有用である。電気化学検出は、適切な電極における、分子タグの酸化または還元反応から生じる電流の測定に基づく。電流レベルは分子タグ濃度に直接比例するため、所望であれば電気化学検出が定量的に使用できる。
【0116】
蒸発光散乱検出は、光の多色性ビーム経路を通過する際に光子散乱を生じる粒子の能力に基づく。HPLCからの液体流出物をまず霧状にし、得られた分子タグを含むエアロゾルを、光ビームに通す。サンプル中に存在する分子タグの量に比例し、発色体、蛍光体または電気活性基等の検出基の有無とは無関係であるシグナルが生成される。従って、蒸発光散乱検出には、分子タグ上の検出基または部分の存在は必要ではない。
【0117】
質量分析方法も、HPLCで分離された分子タグを検出するために使用できる。質量分析器は、小さい質量差のイオンを分解でき、イオンの質量を高精度かつ高感度に測定できる。質量分析方法は、当該分野で周知である(Burlingameら Anal. Chem. 70:647R-716R(1998);KinterおよびSherman, Protein Sequencing and Identification Using Tandem Mass Spectrometry Wiley-Interscience, New York (2000)を参照)。
【0118】
スペクトル解析および定量分析等の、任意の検出方法を用いて得られたデータの分析は、マニュアルまたはコンピュータ支援型であり、自動化方法を用いて実行できる。様々なコンピュータプログラムが、ピーク積分、ピーク領域、高さおよび保持時間を決定するために使用できる。このようなコンピュータプログラムは、分子タグの存在を定質的または定量的に測定するために便利に使用できる。HPLCおよび対応する検出器と共に使用するコンピュータプログラムは、当業者に周知であり、一般的に市販のHPLCおよび検出系と一緒に提供される。
【0119】
サンプルに含まれる具体的な分子タグは、例えば、参照分子タグの既知のクロマトグラフィー特性のデータベースとの比較により、またはピークを個々に積分する必要なくサンプル中の成分の同定を可能にするクロマトグラフィーパターンマッチング等のアルゴリズム方法により測定できる。多数の分子タグを同時に同定する場合、所望であれば、方法を組み合わせることによりサンプル中の分子タグの種類が決定できる。
【0120】
様々な市販の系が、分子タグのハイスループット分析によく適している。当業者は、分子タグのHPLC分析を自動化するのに有用な、自動化サンプル調製系および自動注入系等の適切な設備を決定できる。自動化方法は、多数のサンプルを処理する場合、または標的被分析物を検出する本発明の方法を多重適用する場合に、分子タグのハイスループット分析に使用できる。本発明での使用に適したHPLC機器系の例は、Agilent 1100シリーズHPLC系(Agilent Technologies, Palo Alto, CA)である。
【0121】
当業者は、特に分析をハイスループット形式で行う場合に、分子タグの信頼性の高い分析を得るのに有用な品質管理対策を承知しているであろう。このような品質管理対策としては、外部および内部参照標準、クロマトグラフピーク形状の分析、機器性能の評価、ならびに例えば、直線性の範囲、サンプルの回収、サンプルの溶液安定性および測定の精度を測定することによる実験方法の検証が挙げられる。
【0122】
本発明の別の態様では、分子タグを、キャピラリーエレクトロクロマトグラフィー(CEC)により分離する。CECでは、電気浸透流により、液相を、例えば30〜100μmの内径を有するキャピラリー状カラムに通す。CECは、Svec, Adv. Biochem. Eng. Biotechnol. 76:1-47(2002);Vanhoenackerら、Electrophoresis, 22:4064-4103(2001);等の参考文献に開示されている。CECカラムは、従来の逆相HPLCに使用されるものと同じ固相物質を使用でき、さらにいわゆる「モノリシック」非特定充填剤(non-particular packing)を使用してもよい。一部の形態のCECでは、圧力および電気浸透によりサンプル含有溶剤をカラムに通す。
【0123】
分子タグの合成手法の例
合成手法の一例の概要を図1に示す。市販の6−カルボキシフルオレセインで出発して、無水物を用いてフェノールヒドロキシル基を保護する。イソ酪酸無水物含有ピリジンを採用したが、他の種類のものも同等に適している。エステル官能性を保護基として選択する重要性に留意することが重要である。この種は、ホスホロアミダイトモノマー合成の間、およびオリゴヌクレオチド構築の間、無傷のままである。これらの基は、合成されたオリゴヌクレオチドが、アンモニアを用いて脱保護されるまで除去されない。保護の後、DCCを共役剤として用いたN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS−エステル)の形成を介して、粗物質をin situで活性化させる。DCU副産物を濾過除去し、アミノアルコールを添加する。多数のアミノアルコールが市販されており、それらの一部はアミノ酸の還元から誘導される。アミノアルコールが「HN−(CH−OH」の形態の場合、nは2〜12、より好ましくは2〜6の範囲にある。アミンだけが、N−ヒドロキシスクシンイミドに置き換わるのに十分な程度に反応する。標準的な抽出設定において、95%の生成物収率を得た。この物質をホスフィチル化して、ホスホロアミダイトモノマーを生成する。追加の分子タグの合成のために、対称的なビス−アミノアルコールリンカーをアミノアルコール(図2)として使用する。このようにして、次いで、第2のアミンをホスフィチル化反応の前に多数のカルボン酸誘導体(図3に示すいくつかの可能性のある安息香酸誘導体に例示される)と共役させる。
【0124】
あるいはまた、分子タグは、5−アミノフルオレセインを出発材料として使用する代替的戦略によって作製され得る(図4)。大容量の溶剤に入った過剰量の二塩化二酸化物への5−アミノフルオレセインの添加は、二量体形成よりも、モノアシル化生成物を優先的に形成する。フェノール基は、これらの条件下では反応しない。水性設定は、末端酸塩化物をカルボン酸に変換させる。この生成物は、6−カルボキシフルオレセインに類似しており、同じ一連のステップを使用して、その保護されたホスホロアミダイトモノマーに変換される。市販の二塩化二酸化物、およびSOClまたは塩化アセチルを使用して二塩化二酸化物に変換できる二価酸が多数ある。市販の二塩化二酸化物およびアミノアルコールは多数ある(図5)。これらの合成手法は、コンビナトリアルケミストリーに理想的に適している。
【0125】
図1、2および4のスキームで構築される分子タグを、例えば以下に記載する化学反応を使用して、ホスフィチル化の前または後にさらに反応させて、切断可能な結合を付加させる。
【0126】
分子タグは、ポリペプチド−結合部分に結合するのに適切な官能性を一端に有するようにアセンブルされ得る。様々な官能性が採用できる。従って、ペプチドに普通存在する官能性(カルボキシ、アミノ、ヒドロキシおよびチオール等)は、共有結合を形成するための反応官能性の標的であり得る。分子タグは、連結基の化学、およびポリペプチド結合部分上の官能性の利用可能性に応じて結合する。例えば、ポリペプチドに特異的な抗体およびそのフラグメント(Fab’フラグメント等)について上記したように、チオエーテル形成のために活性オレフィン(例えば、マレイミド)を使用するのにチオール基が利用可能できる。リジンが利用可能な場合、水中で反応できる活性化エステル(ニトロフェニルエステルもしくはペンタフルオロフェニルエステル等)、またはカルボジイミドおよび半エステル炭酸については混合無水物が使用できる。コンジュゲーション用の化学は参考文献に豊富に載っており、それぞれ具体的な状況について、コンジュゲーションについての先例が参考文献に豊富に載っている。
【0127】
例示の合成では、ジオールを採用する。このようなジオールの例としては、アルキレンジオール、ポリアルキレンジオール(2〜3個の炭素原子のアルキレンを有する)、アルキレンアミンまたはポリ(アルキレンアミン)ジオール(アルキレンは2〜3個の炭素原子のもの)が挙げられ、窒素は、例えば1〜6個の炭素原子のブロッキング基またはアルキル基で置換され、ここで1つのジオールは従来の保護基(ジメチルトリチル基等)でブロックされる。この基は、質量改変領域として作用し、同時にアミノ基は電荷改変領域として作用できる。所望であれば、質量改変物質は、ホスホロアミダイト化学により連結される成分を使用してアセンブルされ得る。このようにして、電荷改変物質を質量改変物質の間に散らすことができる。例えば、1、2、3、nユニットを有する一連の酸化ポリエチレン分子を調製してもよい。多数の負電荷を導入するために、小さい酸化ポリエチレンユニットが採用できる。質量および電荷改変領域は、複数の酸化ポリエチレンユニットをリン酸ユニットで連結することにより構築できる。あるいはまた、より大きいスペーサーを採用すれば存在するリン酸基はより少なくなり、つまり、大きな質量差は無く質量対電荷比の差を大きくできる。
【0128】
採用する化学は、ヌクレオチド以外の成分が使用されるオリゴヌクレオチド合成で使用される従来の化学であるが、反応は従来のホスホロアミダイト化学で、ブロッキング基は従来のジメトキシトリチル基である。もちろん、自動化合成機に適合する他の化学も使用できる。しかし、プロセスの複雑性は最小限にすることが望ましい。
【0129】
上記したように、一実施形態では、中心核(hub nucleus)は親水性ポリマー(一般的に、複数の部分の付加を可能にする複数の官能性を有する付加または縮合ポリマー)である。本発明の試薬に有用なポリマーの1クラスは、デキストラン、セファロース、ポリリボース、ポリキシロース等の多糖ポリマーを含む。例えば、中心(hub)は、本発明に適した切断可能な様式で複数の分子タグが付加できるデキストランであり得る。デキストランの少数のアルデヒド部分が残り、これを使用して、還元的アミノ化によりデキストラン分子をオリゴヌクレオチド上のアミン基に付加できる。デキストランを中心核として使う別の例では、デキストランをコハク酸無水物でキャッピングして、得られた物質をアミド形成によりアミン含有オリゴヌクレオチドに結合してもよい。
【0130】
既に示したリンカーの性質および移動度改変部分の他に、蛍光剤の化学的および光学的特徴、エネルギー移動複合体の使用、移動度に影響を及ぼすリンカーの化学的性質の多様化(折畳み等)、溶剤および溶剤中のイオンとの相互作用等により多様性が実現できる。既に示唆されるように、一実施形態では、リンカーはオリゴマーであり、リンカーは支持体上で合成されるか、または適切な宿主中でのクローニングもしくは発現により生成され得る。末端基以外は1つのシステインもしくはセリン/スレオニン/チロシン、アスパラギン酸/グルタミン酸、またはリジン/アルギニン/ヒスチジンしかない場合には、ポリペプチドを生成して、異なって官能化し得る固有の官能性を得ることが都合がよい。保護基を使用することにより、側鎖官能性と末端アミノ酸官能性とを区別することができる。また、適切な設計により、連結基上の異なる部位に存在する同じ官能性の間の優先的な反応が得られる。オリゴペプチドを実質的な程度にまで調製するために合成またはクローニングを使用するかは、リンカーの長さに依存する。
【0131】
本発明の結合組成物の使用方法
一態様では、本発明は、生物学的供与源に由来する1つ以上の標的被分析物の検出または測定方法を提供する。従来の方法論を採用して、分析用のサンプルを調製する。例えば、サンプル調製におけるタンパク質被分析物の手引きは、Scopes, Protein Purification, 第2章(Springer-Verlag, New York)から知ることができ、これは、異なる供与源からタンパク質抽出物を調製する一連の手順を開示している。調製技術としては、細胞膜の浸透圧崩壊(osmotic disruption)による緩やかな細胞溶解、結合組織の酵素的消化とその後の浸透圧利用型溶解、機械的均質化、超音波処理が挙げられる。
【0132】
一部の実施形態では、目的の膜関連被分析物を含むサンプルを、上述したように親油性感受性物質で処理して、感受性物質で処理した膜を形成する。そのような調製の後、複数の結合化合物を含む試薬を添加する。結合化合物の量は、通常、経験的に決定する。このような成分を、結合条件下、通常は水性媒体中、一般的に約5〜約10の範囲にあるpHで、約10〜約200mMの範囲の濃度の緩衝液を用いて、一緒に混合する。これらの条件は慣習的で、リン酸、炭酸、HEPES、MOPS、Tris、ホウ酸等の従来の緩衝液、および塩、安定剤、有機溶剤等の他の慣習的な添加剤が使用できる。水性媒体は、水だけか、または0.01〜80容量%以上の副溶剤(co-solvent)を含み得る。
【0133】
試薬を、実質的な数の結合事象を生じさせる時間および温度にてインキュベートする。試薬を組み合わせた後のインキュベーションの時間は、(i)検出する被分析物の性質および予測される濃度、(ii)結合化合物が被分析物と複合体化するメカニズム、ならびに(iii)採用する具体的な試薬の親和性、に依存する。インキュベーションには適度の温度を採用し、通常一定の温度である。インキュベーション温度は、普通約5〜99℃、通常約15〜85℃、より通常には35〜75℃にわたる。
【0134】
一般的に、本発明のアッセイに関与する様々な剤の濃度は、分析するサンプル中の個々の被分析物の濃度範囲内(一般的に、約10nM〜約10mM)で変化し得る。緩衝液は、普通、約10〜約200mMの範囲の濃度で採用される。各被分析物の濃度は、一般的に約1pM〜約100μM、より通常には約100pM〜約10μMの範囲にある。特定の状況では、被分析物の性質、結合化合物の親和性、分子タグの放出の効率、分子タグが検出される感度、アッセイにおいて測定する被分析物の数、および他の考慮に応じて、濃度はより高いかまたはより低くなり得る。
【0135】
アッセイ混合物の成分がクロマトグラフィー分析を妨害する一部の実施形態では、クロマトグラフィー分析の前にアッセイ混合物から分子タグを分離する必要があるかもしれなく、またはアッセイ混合物の特定の成分(例えば、放出されていない分子タグを有する結合部分)がクロマトグラフィー分析から排除される必要があるかもしれない。分子タグの性質およびアッセイ混合物の成分に応じて、このような結合部分を、隔離、またはガードカラムを使用する等によって吸着もしくは排除してもよい。あるいはまた、混合物中のこのような妨害成分を除去するために、捕捉リガンドを結合化合物に結合させてもよい。
【0136】
分子タグを標識化する段階で、さらなる柔軟性をアッセイに付与することができる。分子タグは、サンプルとの反応が終了した後に標識に結合させる官能性を含み得る。この実施形態では、検出可能な標識に結合する官能性を含む分子タグを、サンプルと組み合わせる。結合反応が行われ、分子タグが放出された後、サンプル容器中で、追加の試薬を、第1の反応の生成物と組み合わせ、これは放出された分子タグと反応して検出可能な標識を付加する。
【0137】
定量のために、存在するかまたは導入される標的の量と関係したシグナルを提供する対照の使用が選択できる。相対的蛍光シグナルを絶対量に変換させるための対照は、分子タグを分離する前に、既知量の蛍光体を各サンプルに添加することにより実現できる。分子タグシグナルの検出を妨害しないあらゆる蛍光体が蛍光シグナルを標準化するために使用できる。このような標準は、サンプル中のどの分子タグのものとも異なる分離特性を有することが好ましく、同じまたは異なる発光波長を有し得る。標準用の蛍光分子の例としては、ROX、FAMおよびフルオレセイン、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。
【0138】
GPCR経路アッセイ
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、薬剤標的の最も重要なファミリーの1つである。Gタンパク質媒介型シグナル伝達系は、多様な生物(哺乳動物および酵母等)において同定されてきた。GPCRは、他の細胞外シグナルと比べてとりわけ、神経伝達物質、ホルモン、臭気物質(odorant)および光に対して応答する。GPCRは、7つの異なる疎水性領域(それぞれ約20〜30アミノ酸長)を特徴とし、膜貫通ドメインを形成するタンパク質の大きなスーパーファミリーであると考えられている。アミノ酸配列は、スーパーファミリー全体にわたっては保存されていないが、それぞれの系統発生的に関係するサブファミリーは、新規メンバーを同定および分類するのに使用できるいくつかの高度に保存されたアミノ酸モチーフを含んでいる。個々のGPCRは、特定のシグナル伝達経路を活性化するが、少なくとも10の異なるシグナル伝達経路がGPCRを介して活性化されることが知られている。例えば、β2アドレナリン受容体(βAR)は、プロトタイプの哺乳動物GPCRである。アゴニスト結合に応答して、βAR受容体はGタンパク質(G)を活性化し、次にこれが細胞中でのアデニル酸シクラーゼおよびサイクリックアデノシン一リン酸の生成を促進する。
【0139】
GPCRスーパーファミリーのメンバーは、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ(GRK)リン酸化、そしてその後のアレスチン結合が関与する一般的なメカニズムを介して脱感作すると仮定されている。タンパク質βアレスチンは、Gタンパク質受容体キナーゼによりリン酸化されたアゴニスト活性化受容体と結合することにより、GPCRシグナル伝達を調節する。βアレスチンタンパク質は、受容体内在化の間はGPCRに結合したままである。GPCRとαアレスチンとの相互作用は、いくつかの方法を用いて測定できる。一例では、βアレスチンタンパク質を、緑色蛍光タンパク質と融合させて、タンパク質融合体を作る(Barakら (1997) J. Biol. Chem. 272(44):27497-500)。βアレスチンとGPCRとのアゴニスト依存型結合は、蛍光顕微鏡検査により可視化できる。また、顕微鏡検査を使用して、その後のGPCR−βアレスチン複合体のクラスリン被覆ピットへの輸送を可視化できる。生存細胞中でβアレスチンとGPCRとの結合を測定する他の方法としては、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)、BRET(生物発光エネルギー移動)、または酵素補完(Rossiら (1997) Proc.Natl Acad. Sci.USA 94(16):8405-10)等の技術が挙げられる。
【0140】
現在、天然リガンドおよび機能が知られているGPCRはおよそ400である。これらの公知のGPCRは、それらの内因性リガンドに由来して、5つの主要カテゴリーに分類されている:すなわち、クラスA ロドプシン様;クラスB セクレチン様;クラスC 代謝調節型グルタミン酸/フェロモン;クラスD 真菌性フェロモン;クラスE cAMP(タマホコリカビ類)。クラスAの代表的なメンバーは、アミン受容体(例えば、ムスカリン性、ニコチン性、アドレナリン性、アデノシン、ドーパミン、ヒスタミンおよびセロトニン)、ペプチド受容体(例えば、アンギオテンシン、ブラジキニン、ケモカイン、エンドセリンおよびオピオイド)、ホルモン受容体(例えば、卵胞刺激、ルトロピンおよびチロトロピン)、ならびにロドプシン(光)、嗅神経(におい)および味覚(味)受容体を含む感覚受容体である。クラスBの代表としては、セクレチン、カルシトニン、ガストリンおよびグルカゴン受容体が挙げられる。
【0141】
今日使われている多数の利用可能な治療薬は、血管拡張、心拍、気管支拡張、内分泌および腸蠕動を含む生命に関わる生理学的反応を仲介するためGPCRを標的としている(WilsonおよびBergsma (2000) Pharm. News 7:105-114)。例えば、βアドレナリン受容体に対するリガンドは、アナフィラキシー、ショック、高血圧、低血圧、喘息および他の症状の治療に使用される。さらに、リガンドの不在下でGPCR細胞応答が生じるGPCRの自発的活性化の発生により疾患が引き起こされ得る。GPCRのアンタゴニストである薬剤は、この自発的活性を低減し(逆作動として知られるプロセス)、重要な治療薬である。
【0142】
GPCRの治療的重要性から、GPCRリガンド活性について化合物を高速スクリーニングする方法が望まれている。本発明は、GPCR経路をモジュレートする(活性化または阻害する、増強または低下する)能力について、試験化合物および試験条件をスクリーニングする方法を提供し、また、全般的な細胞におけるGPCR経路の機能(オーファンGPCRの機能等)を評価する方法を提供する。本発明の方法の別の態様では、親油性感光性物質を細胞膜に結合させる。候補リガンドまたは候補リガンドのライブラリーを分子に付加させた後、リガンドを受容体に結合させる。光源を用いて感光性物質を励起した後、切断可能なリンカーを切断し、分子タグを放出させる。放出された分子タグは、上述したように細胞外液中で検出することができ、これはGPCRのリガンドの構造についての情報を提供する。
【0143】
一態様では、本発明は、GPCR活性のモジュレーターをスクリーニングする方法であって:a)既知または未知のGPCRを発現している、親油性感光性物質で標識化された細胞を準備するステップ、b)細胞を、切断可能な結合により分子タグとコンジュゲートされた試験化合物に暴露するステップ;c)感光性物質を照射して、分子タグを切断する一重項酸素を生成するステップ、d)放出された分子タグからシグナルを検出するステップ、およびd)試験化合物の存在下で生成されるシグナルと、不在下で生成されるシグナルとを比較するステップ(シグナルの変化は化合物がGPCRのモジュレーターであることを示す)、を含む方法を提供する。
【0144】
従って、本発明は、オーファンGPCRのモジュレーターを同定する都合の良い方法を提供する。オーファンGPCRとは、配列比較を利用した方法により典型的に同定されるが、コグネイトリガンドは知られていない新規受容体である。400から5000ものオーファンGPCRがヒトゲノムにおいてコードされ得ると推定されており、新規薬剤の開発に対する大きい可能性を表している。
【0145】
GPCRを発現する細胞の調製
GPCRを発現する細胞の調製方法は記載されている。例えば、米国特許第6,051,386号、同第6,069,296号、同第6,111,076号および同第6,280,934号を参照のこと。一般的に、GPCRをコードする相補的DNAは、当該分野で周知の技術を用いて得ることおよび適切な細胞宿主において発現させることができる。典型的に、完全長GPCR cDNAを得れば、これを、官能性分析のために、哺乳動物細胞系、酵母細胞、両生類細胞または昆虫細胞において発現させることができる。細胞系は、GPCR発現について特性決定され、任意に幅広いレパートリーのGタンパク質を含んで下流エフェクターへ機能共役させる哺乳動物細胞系であることが好ましい。このような細胞系の例としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)またはヒト胎児腎臓293(HEK293)系が挙げられる。cDNAを発現させる細胞は、本明細書に開示する方法を用いてコードでき、従ってリガンドの多重スクリーニングを可能にする。次いで、発現された受容体を、上記開示したように、様々な官能性アッセイにおいてスクリーニングして活性化リガンドを同定できる。
【0146】
実施例
以下の合成および実施例により本発明をさらに明示する。部および%は、特に明記しない限り重量に基づく。温度は、特に明記しない限り摂氏(℃)で示す。以下の調製物および実施例は、本発明を例示するものであり、その範囲を限定することを意図したものではない。特に明記しない限り、以下の実施例で使用するペプチドは、自動合成機を使った合成により調製し、ゲル電気泳動またはHPLCにより精製した。
【0147】
以下の略語は、下記の意味を有する:
Tris HCl:BioWhittaker, Walkersville, MDから入手したトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−HCl(10×溶液)
TLC:薄膜クロマトグラフィー
BSA:例えばSigma Chemical Company(St. Louis, MO)または同様の試薬提供元から入手可能なウシ血清アルブミン
EDTA:Sigma Chemical Companyから入手したテトラ酢酸エチレンジアミン
FAM:カルボキシフルオレセイン
EMCS:N−ε−マレイミドカプロイルオキシ−スクシンイミドエステル
EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
NHS:N−ヒドロキシスクシンイミド
DCC:1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド
DMF:ジメチルホルムアミド
Fmoc:N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−。
【実施例1】
【0148】
分子タグのコンジュゲーションおよび放出
図7A〜Bは、分子タグ前駆体と抗体または他の結合化合物とを遊離アミノ基でコンジュゲートすること、および得られたコンジュゲートと一重項酸素とを反応させて放出された分子タグとしてスルフィン酸部分を生成することの方法論をまとめたものである。
【0149】
図8A〜Jは、いくつかの分子タグ試薬を示し、それらのほとんどは、5−または6−カルボキシフルオレセイン(FAM)を出発材料として利用する。
【実施例2】
【0150】
Pro2、Pro4およびPro6〜Pro13の調製
図9Aに概要を示すスキームは、カルボキシフルオレセイン誘導化分子タグ前駆体、すなわち、Pro2、Pro4、Pro6、Pro7、Pro8、Pro9、Pro10、Pro11、Pro12およびPro13を調製するための5ステップの手順を示す。第1のステップは、5−または6−FAMと、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)および1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)含有DMFとを反応させて、対応するエステルを得て、その後これを様々なジアミンで処理して、所望のアミドである化合物1を産生することを伴う。N−スクシンイミジルヨウ化酢酸で化合物1を処理することにより、予想のヨードアセトアミド誘導体を得、これを単離せずに、トリエチルアミンの存在下で3−メルカプトプロピオン酸とさらに反応させた。最後に、得られたβチオ酸(化合物2)を、上述したようにそのNHSエステルに変換した。5−または6−FAMおよび様々なジアミンの1つから出発して、様々なeタグ部分を合成した。ジアミンは、図9Aの第1の反応ではHN^X^NHとする。FAMの位置異性体およびジアミン中の「X」の化学実体を、合成した各分子タグ前駆体について以下の表に示す。明らかに、ジアミンXは、移動度改変物質部分の議論において上述したように幅広い追加形態を有し得る。
【0151】
前駆体 FAM
Pro2 5−FAM C(CH
Pro4 5−FAM 炭素無し
Pro6 5−FAM (CH
Pro7 5−FAM CHOCHCHOCH
Pro8 5−FAM CHCHOCHCHOCHCHOCHCH
Pro9 5−FAM 1,4−フェニル
Pro10 6−FAM C(CH
Pro11 6−FAM 炭素無し
Pro12 6−FAM CHOCHCHOCH
Pro13 6−FAM CHCHOCHCHOCHCHOCHCH
化合物1の合成
5−または6−カルボキシフルオレセイン(0.5mmol)含有乾燥DMF(5mL)の攪拌溶液に、N−ヒドロキシスクシンイミド(1.1等量)および1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.1等量)を添加した。約10分後、白い固体(ジシクロヘキシル尿素)が形成され始めた。反応混合物を窒素下で室温にて一晩攪拌した。TLC(9:1 CHCl−MeOH)は、出発材料が完全に失われたことを示した。
【0152】
上記混合物から得た上清を、ジアミン(2−5等量)含有DMF(10mL)の攪拌溶液に滴下した。TLC(40:9:1 CHCl−MeOH−HO)から分かるように、反応は即座に終了した。減圧下で溶媒留去した。得られた残渣を、医療ビーズ(Iatrobead)シリカ上でフラッシュクロマトグラフィーに供することにより、所望のアミン(化合物1)を58〜89%の収率で得た。化合物1のH NMR(300MHz、DMSO−d)は、指定の構造と一致した。
【0153】
化合物2の合成
アミン(化合物1)(0.3mmol)に、乾燥DMF(10mL)およびN−スクシンイミジルヨウ化酢酸(1.1等量)を順次添加した。得られた混合物を室温にて透明な溶液が得られるまで攪拌した。TLC(40:9:1 CHCl−MeOH−HO)は、反応の終了を示した。
【0154】
次いで、上記反応溶液をトリエチルアミン(1.2等量)および3−メルカプトプロピオン酸(3.2等量)で処理した。混合物を、室温にて一晩攪拌した。減圧下での溶媒留去、その後フラッシュクロマトグラフィーにより、β−チオ酸(化合物2)を62〜91%の収率で得た。化合物2の構造を、そのNMR(300MHz,DMSO−d)に基づいて指定した。
【0155】
Pro2、Pro4およびPro6〜Pro13の合成
βチオ酸(化合物2)(0.05mmol)含有乾燥DMF(2mL)の攪拌溶液に、N−ヒドロキシスクシンイミド(1.5等量)および1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.5等量)を添加した。混合物を、室温にて窒素下で24〜48時間(全ての出発材料が反応するまで)攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した後、フラッシュクロマトグラフィーで精製して、標的分子を41〜92%の収率で得た。
【0156】
Pro1の調製
この反応の化合物を図9Bに示す。5−ヨードアセトアミドフルオレセイン(化合物4)(24mg、0.047mmol)含有乾燥DMF(2mL)の攪拌溶液に、トリエチルアミン(8μL、0.057mmol)および3−メルカプトプロピオン酸(5μL、0.057mmol)を添加した。得られた溶液を、室温にて1.5時間攪拌した。TLC(40:9:1 CHCl−MeOH−HO)は、反応の終了を示した。その後、N−ヒドロキシスクシンイミド(9mg、0.078mmol)および1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(18mg、0.087mmol)を添加した。反応混合物を室温にて窒素下で19時間攪拌し、その頃TLCは出発材料が完全に失われたことを示した。減圧下での溶媒留去、その後の25:1および15:1 CHCl−MeOHを溶出剤として用いるフラッシュクロマトグラフィーにより、Pro1(23mg、83%)を得た。
【0157】
Pro3の調製
この反応の化合物は、図9Cに示す。6−ヨードアセトアミドフルオレセイン(化合物5)(26mg、0.050mmol)含有乾燥DMF(2mL)の攪拌溶液に、トリエチルアミン(8μL、0.057mmol)および3−メルカプトプロピオン酸(5μL、0.057mmol)を添加した。得られた溶液を、室温にて1.5時間攪拌した。TLC(40:9:1 CHCl−MeOH−HO)は、反応の終了を示した。その後、N−ヒドロキシスクシンイミド(11mg、0.096mmol)および1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(18mg、0.087mmol)を添加した。反応混合物を室温にて窒素下で19時間攪拌し、その頃にはTLCは出発材料が完全に失われたことを示した。減圧下での溶媒留去、およびその後の30:1および20:1 CHCl−MeOHを溶出剤として用いたフラッシュクロマトグラフィーにより、Pro3(18mg、61%)を得た。
【0158】
Pro5の調製
この反応の化合物を図9Dに示す。
【0159】
化合物7の合成
5−(ブロモメチル)フルオレセイン(化合物6)(40mg、0.095mmol)含有乾燥DMF(5mL)の攪拌溶液に、トリエチルアミン(15μL、0.108mmol)および3−メルカプトプロピオン酸(10μL、0.115mmol)を添加した。得られた溶液を室温にて2日間攪拌した。TLC(40:9:1 CHCl−MeOH−HO)は、反応の終了を示した。反応溶液を減圧下でエバポレートした。最後に、30:1および25:1 CHCl−MeOHを溶出剤として採用したフラッシュクロマトグラフィーによりβチオ酸(化合物7)(28mg、66%)を得た。
【0160】
Pro5の合成
酸(化合物7)(27mg、0.060mmol)含有乾燥DMF(2mL)の溶液に、N−ヒドロキシスクシンイミド(11mg、0.096mmol)および1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(20mg、0.097mmol)を添加した。反応混合物を、室温にて窒素下で2日間攪拌し、その頃にはTLC(9:1 CHCl−MeOH)は出発材料が完全に失われたことを示した。減圧下での溶媒留去、その後の30:1 CHCl−MeOHでのフラッシュクロマトグラフィーにより、Pro5(24mg、73%)を得た。
【0161】
Pro14の調製
この反応の化合物を図9Eに示す。
【0162】
化合物9の合成
5−アミノアセタミドフルオレセイン(化合物8)(49mg、0.121mmol)に、乾燥DMF(4mL)およびN−スクシンイミジルヨウ化酢酸(52mg、0.184)を順次添加した。透明な溶液が得られ、TLC(40:9:1 CHCl−MeOH−HO)は、出発材料が完全に無くなったことを示した。
【0163】
次いで、上記反応溶液をトリエチルアミン(30μL、0.215mmol)および3−メルカプトプロピオン酸(30μL、0.344mmol)で処理した。得られた混合物を2時間攪拌した。減圧下での溶媒留去、その後の20:1および15:1のCHCl−MeOHを溶出剤として用いるフラッシュクロマトグラフィーにより、βチオ酸(化合物9)(41mg、62%)を得た。構造指定を、NMR(300MHz,DMSO−d)に基づき行った。
【0164】
Prol4の合成
乾燥DMF(2mL)に入った化合物9(22mg、0.04mmol)の攪拌溶液に、N−ヒドロキシスクシンイミド(9mg、0.078mmol)および1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(16mg、0.078mmol)を添加した。得られた溶液を、室温にて窒素下で約24時間攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を、30:1および20:1 CHCl−MeOHを溶出剤として用いたフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、Prol4(18mg、70%)を得た。
【0165】
Prol5、Pro20、Pro22およびPro28の合成
分子タグPro15、Pro20、Pro22およびPro28のNHSエステルを生成するための合成スキームは、図16F〜Iにそれぞれ示す。試薬および反応条件は全て当該分野で慣習的なものであり、上述した反応と同様に進行させる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1A】分子タグを有するペプチドライブラリーが、オーファンGPCRを発現している細胞に適用された本発明の方法の一態様を示す。
【図1B】分子タグを有するペプチドライブラリーが、オーファンGPCRを発現している細胞に適用された本発明の方法の一態様を示す。
【図1C】ペプチド結合測定によってオーファンGPCRについての構造情報を決定するためのペプチドライブラリーの一実施形態を示す。
【図1D】感光性物質を、細胞の細胞表面膜に固定させる(anchoring)方法を示す。
【図1E】本発明の方法の一態様を示す。
【図1F】本発明の方法の一態様を示す。
【図1G】本発明の方法の一態様を示す。
【図1H−1K】本発明の方法の一態様を示す。
【図1L−1O】本発明の方法の一態様を示す。
【図1P】本発明の方法の一態様を示す。
【図1Q】本発明の方法の一態様を示す。
【図2】フェノールのヒドロキシル基が無水物を用いて保護されている市販の6−カルボキシフルオレセインで出発する合成手法の一例を示す。
【図3】アミノアルコールとして対称ビス−アミノアルコールリンカーを使用し、その後第2のアミンを多数のカルボン酸誘導体と共役させることを示す。
【図4】移動度改変物質(mobility modifier)として作用し得るいくつかの安息香酸誘導体の構造を示す。
【図5】5−アミノフルオレセインを出発材料とし、保護ホスホロアミダイトモノマーに変換するのに同じ一連のステップを使用する代替的手法の使用を示す。
【図6】分子タグの合成において移動度改変物質にアセンブリできるいくつかのアミノアルコールおよび二塩化二酸化物(diacid dichloride)を示す。
【図7A−7B】酸化に不安定な結合、および一重項酸素によって仲介されるそれらそれぞれの切断反応を示す。
【図7C−7D】酸化に不安定な結合、および一重項酸素によって仲介されるそれらそれぞれの切断反応を示す。
【図7E−7F】酸化に不安定な結合、および一重項酸素によって仲介されるそれらそれぞれの切断反応を示す。
【図8A】eタグ部分と抗体とをコンジュゲートさせてeタグプローブを形成し、および得られたプローブと一重項酸素とを反応させてスルフィン酸部分を放出分子タグとして生成する方法論の概要を示す。
【図8B】eタグ部分と抗体とをコンジュゲートさせてeタグプローブを形成し、および得られたプローブと一重項酸素とを反応させてスルフィン酸部分を放出分子タグとして生成する方法論の概要を示す。
【図9A】設計および合成されたeタグ部分の構造を示す(Pro1は、Molecular Probes, Inc.から市販されている)。
【図9B】設計および合成されたeタグ部分の構造を示す。
【図9C】設計および合成されたeタグ部分の構造を示す。
【図9D】設計および合成されたeタグ部分の構造を示す。
【図9E】設計および合成されたeタグ部分の構造を示す。
【図9F】設計および合成されたeタグ部分の構造を示す。
【図9G】設計および合成されたeタグ部分の構造を示す。
【図9H】設計および合成されたeタグ部分の構造を示す。
【図9I】設計および合成されたeタグ部分の構造を示す。
【図9J】設計および合成されたeタグ部分の構造を示す。
【図10A】図9に示すeタグ部分の合成の化学反応を示す。
【図10B】図9に示すeタグ部分の合成の化学反応を示す。
【図10C】図9に示すeタグ部分の合成の化学反応を示す。
【図10D】図9に示すeタグ部分の合成の化学反応を示す。
【図10E】図9に示すeタグ部分の合成の化学反応を示す。
【図10F】図9に示すeタグ部分の合成の化学反応を示す。
【図10G】図9に示すeタグ部分の合成の化学反応を示す。
【図10H】図9に示すeタグ部分の合成の化学反応を示す。
【図10I】図9に示すeタグ部分の合成の化学反応を示す。
【図11】本発明の方法の一態様を示す。
【図12】本発明の方法の一態様を示す。
【図13】本発明の方法の一態様を示す。
【図14】本発明の方法の一態様を示す。
【図15】本発明の方法の一態様を示す。
【図16】本発明の方法の一態様を示す。
【図17】本発明の方法の一態様を示す。
【図18】本発明の方法の一態様を示す。
【図19】本発明の方法の一態様を示す。
【図20】本発明の方法の一態様を示す。
【図21】本発明の方法の一態様を示す。
【図22】本発明の方法の一態様を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Gタンパク質共役型受容体のリガンドの構造を決定する方法であって、以下のステップ:
1以上のGタンパク質共役型受容体を含む、感受性物質で処理した膜を準備するステップ、
結合化合物の複数のライブラリーを準備するステップであって、結合化合物の各ライブラリーが1以上の分子タグを有し、各分子タグは切断可能な結合で付加されており、結合化合物の各ライブラリーの分子タグは、1以上の物理学的及び/又は光学的特性によって結合化合物の他の各ライブラリーの分子タグと区別することができる、上記ステップ、
上記感受性物質で処理した膜と、上記結合化合物の複数のライブラリーを、Gタンパク質共役型受容体の存在下にて、かかるGタンパク質共役型受容体と結合化合物のライブラリーのメンバーとの複合体が形成することができるように特異的に混合するステップ、
上記複合体を形成する結合化合物の切断可能な結合を切断する活性種が生成され、それにより分子タグが放出されるように、上記感受性物質で処理した膜を活性化するステップ、並びに
1以上の物理学的特性により上記放出された分子タグを分離及び同定し、Gタンパク質共役型受容体について各ライブラリーの相対結合強度を測定するステップ、
を含む、上記方法。
【請求項2】
分離ステップが放出された分子タグを電気泳動により分離することを含み、該分子タグの各々が100〜2500ダルトンの範囲内の分子量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(a)感受性物質で処理した膜が感光性物質で処理した膜であり、(b)活性種が一重項酸素であり、(c)結合化合物に付加された分子タグの各々が、下記式:
−L−(M,D)
〔式中、
Lは切断可能な結合であり、
Dは検出部分であり、
Mは、結合、又は水素を含まずに炭素、酸素、窒素、リン、ホウ素及び硫黄からなる群より選択される1〜100個の原子からなる水溶性有機化合物である。〕
により定義される群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
Dが蛍光標識、発色標識又は電気化学標識である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
Mが、ポリエーテル、ポリエステル、ポリペプチド、オリゴ糖、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルホンアミド、ポリスルホキシド、ポリホスホネート、及びこれらのブロックコポリマーのいずれか1つから選択されるポリマーである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
Dがフルオレセインである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
フルオレセインが、5−及びーカルボキシフルオレセイン、5−及び6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、2’,7’−ジメトキシ−5−及び6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−5−及び6−カルボキシフルオレセイン、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−5−及び6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、1’,2’,7’,8’−ジベンゾ−5−及び6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、1’,2’,7’,8’−ジベンゾ−4’、5’−ジクロロ−5−及び6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、2’,7’−ジクロロ−5−及び6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン、並びに2’,4’,5’,7’−テトラクロロ−5−及び6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセインからなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
Lが、オレフィン、チオエーテル、セレノエーテル、チアゾール、オキサゾール及びイミダゾールからなる群より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項9】
複数の分子タグが2〜50の範囲内であり、結合化合物の複数のライブラリーの各々がペプチドライブラリーである、請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図1J】
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【図1K】
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【図1L】
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【図1M】
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【図1N】
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【図1O】
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【図1P】
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【図1Q】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【図9H】
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【図9i】
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【図9J】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図10G】
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【図10H】
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【図10i】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【公表番号】特表2007−504482(P2007−504482A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536511(P2006−536511)
【出願日】平成16年1月9日(2004.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/000425
【国際公開番号】WO2004/068116
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(501014795)アクララ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】