説明

タック紙付隠蔽ハガキ

【課題】 他人に見られたくない個人情報等が含まれる通信文の部分をプリンターで印字した後に隠蔽することができ、定型用紙1枚への印字により複数枚のハガキに印字することができるタック紙付隠蔽ハガキを提供する。
【解決手段】 宛先等を印字して表示する宛先欄と通信文等を印字した後に隠蔽される通信欄とが含まれハガキとなる領域であるハガキ領域と、折り返すことにより前記通信欄を隠蔽するための隠蔽領域とを有する基材紙と、 前記ハガキ領域と前記隠蔽領域との境界に形成された前記折り返すときに折目となるミシン目と、 前記隠蔽領域の表面に形成された擬似接着層と、 グラシン紙と保護紙とを粘着層を介して貼り合せた構成であって、前記擬似接着層を介して前記隠蔽領域の表面に貼り合せたタック紙と、 を有するようにしたタック紙付隠蔽ハガキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特殊な形式の印刷物の技術分野に属する。特に、他人に見られたくない個人情報等が含まれる通信文の部分をプリンターで印刷した後に隠蔽することができる郵便ハガキに関する。
【背景技術】
【0002】
大学の図書館、民間の図書館、公共施設、レンタルショップ等においては、そこで借りた本、DVD、CD等を所定の期限を過ぎたのに返さない利用者に対して督促を行なう。督促の方法としては、手書き、又は官製ハガキにプリンターで督促内容を印字して利用者宛に郵送する方法が一般的である。この場合、借りた本・DVD・CD等の品名が官製ハガキに印字されているが、利用者が何を借りたのか、すぐに分かってしまう。家族・同僚など、個人の借りた商品を知られたくない場合もあり、個人情報保護の観点からもその部分は隠して郵送した方が望ましい。
また、ハガキを手書きするのは勿論、プリンターで印字するときでも一枚一枚のハガキに印字したのでは手間が掛かる。また、その借りた商品名を隠す方法においても、隠蔽ラベルを手で貼る作業を一枚一枚のハガキに行なっていては手間が掛かり過ぎる(特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−90325
【特許文献2】特開2006−178169
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものである。その目的は、他人に見られたくない個人情報等が含まれる通信文の部分をプリンターで印字した後に隠蔽することができ、しかも隠蔽を除くとその痕跡が残り不正を防止することができるタック紙付隠蔽ハガキを提供することにある。また、定型用紙1枚への印字により複数枚のハガキに印字することができ作業性の良いタック紙付隠蔽ハガキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1に係るタック紙付隠蔽ハガキは、宛先等を印字して表示する宛先欄と通信文等を印字した後に隠蔽される通信欄とが含まれハガキとなる領域であるハガキ領域と、折り返すことにより前記通信欄を隠蔽するための隠蔽領域とを有する基材紙と、 前記ハガキ領域と前記隠蔽領域との境界に形成された前記折り返すときに折目となるミシン目と、 前記隠蔽領域の表面に形成された擬似接着層と、 グラシン紙と保護紙とを粘着層を介して貼り合せた構成であって、前記擬似接着層を介して前記隠蔽領域の表面に貼り合せたタック紙と、 を有するようにしたものである。
また、本発明の請求項2に係るタック紙付隠蔽ハガキは、請求項1に係るカット紙隠蔽ハガキにおいて、前記基材紙は前記ハガキ領域と前記隠蔽領域との組が横向きに3行配列する縦A4サイズの基材紙であるようにしたものである。
また、本発明の請求項3に係るタック紙付隠蔽ハガキは、請求項2に係るタック紙付隠蔽ハガキにおいて、前記基材紙の3行配列における2つの境界に形成された切り離しを容易にするためのミシン目を有するようにしたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の請求項1に係るタック紙付隠蔽ハガキによれば、ハガキ領域に宛先等と通信文等を印字した後に、隠蔽領域の表面に形成された擬似接着層の表面に貼り合せたタック紙における保護紙を剥がし、ハガキ領域と隠蔽領域との境界に形成されたミシン目において隠蔽領域を折り返すことにより、隠蔽領域によって通信文等を印字した通信欄を擬似接着層で再剥離可能に隠蔽することができる。また、擬似接着層において隠蔽領域を再剥離することにより通信文等を表示することができ、そのときには再剥離した痕跡が残る。したがって、他人に見られたくない個人情報等が含まれる通信文の部分をプリンターで印字した後に隠蔽することができ、しかも隠蔽を除くとその痕跡が残り不正(盗み見)を防止することができるタック紙付隠蔽ハガキが提供される。
また、本発明の請求項2に係るタック紙付隠蔽ハガキによれば、基材紙はハガキ領域と隠蔽領域との組が横向きに3行配列する縦A4サイズとなっている。したがって、定型用紙1枚への印字により複数枚のハガキに印字することができ作業性の良いタック紙付隠蔽ハガキが提供される。
また、本発明の請求項3に係るタック紙付隠蔽ハガキによれば、基材紙の3行配列における2つの境界に形成された切り離しを容易にするためのミシン目を有する。したがって、印字し隠蔽した後に個別のハガキとなるように容易かつ正確に切り離すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。本発明のタック紙付隠蔽ハガキにおける構成の一例を図1に示す。図1において、1は基材紙、2は擬似接着層、3はグラシン紙、4は粘着層、5は保護紙、6、7a,7bはミシン目、11,11a,11b,11cはハガキ領域、12,12a,12b,12cは隠蔽領域、111a,111b,111cは宛先欄、112a,112b,112cは通信欄である。
基材紙1は宛先等を印字して表示する宛先欄と通信文等を印字した後に隠蔽される通信欄とが含まれハガキとなる領域であるハガキ領域と、折り返すことによりその通信欄を隠蔽するための隠蔽領域とを有する。個別のハガキとなるハガキ領域は、一般的には、ハガキの寸法となっている。たとえば、官製ハガキにおいては100mm×148mmとなっており、私製ハガキにおいては最小90mm×140mm、最大107mm×154mmとなっている。隠蔽領域は隠蔽される通信欄の寸法と同一の寸法またはそれよりも大きな寸法となる。
【0007】
図1に一例を示すように、A4サイズの定型用紙に3つのハガキ領域11a,11b,11cと3つの隠蔽領域12a,12b,12cとの各組を横向きに3行配列させるときには、A4サイズの寸法である297mm×210mmにハガキの寸法が制約される。したがって、ハガキ領域11a,11b,11cと隠蔽領域12a,12b,12cの1組の寸法は(297/3)mm×210mm=99mm×210となる。
図1に示すハガキ領域11と隠蔽領域12の境界、すなわちミシン目6の位置は、個別のタック紙付隠蔽ハガキが私製ハガキの寸法に収まる範囲において任意の位置とすることができる。たとえば、ハガキ領域11aを99mm×140mmとするときには、隠蔽領域12aは99mm×(210−140)mm=99mm×70mmとなる。すなわち、ハガキ領域11aの丁度半分である99mm×70mmが宛先欄になり、残りの半分99mm×70mmが通信欄になる。
【0008】
図1に示す一例においては、A4サイズの定型用紙にハガキ領域11a,11b,11cと隠蔽領域12a,12b,12cとの各組から構成された3つのタック紙付隠蔽ハガキとなる部分が存在することになる。
ミシン目6は基材紙1におけるハガキ領域11a,11b,11cと隠蔽領域12a,12b,12cとの境界に形成され、基材紙1を折り返すときに折目となるミシン目である。このミシン目6によって折り返し作業が容易になり折り返し位置が正確になる。
また、ミシン目7a,7bは基材紙1の3つのタック紙付隠蔽ハガキとなる部分の境界、すなわち3行配列における2つの境界に形成された切り離しを容易かつ正確にするためのミシン目である。このミシン目7a,7bによって切り離し作業が容易になり切り離し位置が正確になる。このミシン目7a,7bは基材紙1だけでなく、擬似接着層2と保護紙3にも形成される。通常、ミシン目7a,7bは基材紙1に擬似接着層2を形成し保護紙3で覆った後に加工が行われる。
【0009】
用紙の厚さは官製ハガキの場合は0.22mmである。本発明における基材紙1の厚さとしては、用紙の種類(剛性等の物性)によっても異なるが官製ハガキに準ずる厚さの紙を好適に使用することができる。本発明においては、上質紙であれば四六全判(788mm×1091mm)1000枚の質量で110〜135Kgのものを好適に使用することができる。たとえば、上質紙であれば四六全判(625mm×880mm、0.55m2)1000枚の重さで70Kgのものを使用することができる。基材紙1に使用することのできる用紙は、ハガキに向いた物性を有し、通信欄を隠蔽することができる光学特性(遮光性)を有する用紙である。そのような用紙であれば、用紙の種類は特に限定はない。上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、マット紙、インクジェット用紙、フォト用紙、等を使用することができる。本発明は、基材紙1の裏面すなわちタック紙付隠蔽ハガキの裏面の構成について特に限定されない。したがって、各種情報を提供する紙面、たとえば新規に貸し出しが可能な物品のお知らせ等を印刷する紙面として使用することができる。
【0010】
擬似接着層2は基材紙1における隠蔽領域12の表面に形成された擬似接着することができる層である。すなわち、接着して後に剥離することができ、剥離の再に隠蔽した紙面を損傷しないような剥離性と不用意に剥離しないような適度の接着力を有する層である。 このような擬似接着層2としては、たとえば、熱可塑性樹脂を用いたものや、感圧接着剤を用いたもの、再剥離再貼付する粘着剤を用いたもの、接着剤層/剥離層の層構成を用いたものなどを利用することができる。
【0011】
擬似接着層2には、接着した後に剥離したときには再び接着(貼付)することが困難な性質を有するものと、接着(貼付)と剥離を繰り返すことができる性質を有するものとが存在する。前者においては剥離したことを示す明確な痕跡を残すことができるが、後者においては剥離したことを示す明確な痕跡を残すことができない。したがって、本発明においては、隠蔽した通信文が盗み見されたか否かを判別することができ、高いセキュリティ性が得られる後者の性質を有するものが好ましい。
【0012】
グラシン紙3は紙に透明な物質、たとえばパラフィンを含浸させた紙であり、透明または半透明な光学的な物性を有する。グラシン紙3は透明または半透明であるから、グラシン紙3を通して反対側を見ることができる。グラシン紙3は、図1に示すように、一方の表面が擬似接着層2に接着し、他方の表面が粘着層4に接着している。したがって、基材紙1の隠蔽領域を折り返すことにより通信欄を隠蔽した後に、擬似接着層2において基材紙1を剥離すると、グラシン紙3を通して、通信欄を記載されている通信文を読取ることができる。したがって、いわゆるグラシン紙3に限らず、半透明または透明な光学的な物性を有するものであれば、プラスチックフィルム、その他のシートを本発明のタック紙付隠蔽ハガキに使用することができる。勿論、グラシン紙3と同様に、擬似接着層2と粘着層4に接着し両者を分離する性質は有するものとする。
【0013】
粘着層4はグラシン紙3の表面に形成され、グラシン紙3と同様に、半透明または透明な光学的な物性を有する粘着層である。粘着層4は透明または半透明であるから、粘着層4を通して反対側を見ることができる。粘着層4は基材紙1の隠蔽領域を折り返すことにより通信欄を隠蔽するときに、基材紙1の隠蔽領域を基材紙1の通信欄に接着させる役割を有する。粘着層4は基材紙1に対して強接着する。すなわち、基材紙1の隠蔽領域を剥離するときには、粘着層4においては剥離せず、擬似接着層2において剥離する。粘着層4は、周知の強粘着性を有する粘着剤を塗布することによりグラシン紙3の表面に形成される。
【0014】
保護紙5は、粘着層4を介してグラシン紙3の表面に貼り合せた、粘着層4の表面を保護するための用紙である。したがって、ハガキ領域11の通信欄を隠蔽領域12によって隠蔽するときには、まず、保護紙5が剥がされ、隠蔽領域12に形成された粘着層4の表面を露出する。次に、隠蔽領域12を折り返してその露出した粘着層4の表面と通信欄の表面とを合わせて貼り付け通信欄を隠蔽する。
保護紙5における、粘着層4の表面と接触する表面には目止層(図示せず)を設けることができる。目止層は保護紙5の用紙の表面に目止剤を塗布することによって形成される。目止剤としては、たとえば、紫外線硬化型インキや架橋アクリルのように架橋された樹脂等を使用することができる。粘着層4に強粘着性を持たせるときには、保護紙5が粘着層4から適度に剥がれ易くなるよう、目止剤として剥離性を有する、たとえばシリコン系の樹脂を適用することができる。
なお、ここでは、上述のグラシン紙3と保護紙5とを粘着層4を介して貼り合せた構成の部分をタック紙と呼ぶ。タック紙付隠蔽ハガキの製造方法として、たとえば、(1)あらかじめタック紙を製造しておき、(2)基材紙1における隠蔽領域12の表面に擬似接着層2を塗工した後に、(3)その製造しておいたタック紙におけるグラシン紙3の側の表面を擬似接着層2の表面に圧を加えて貼り合せる方法を適用することができる。
【0015】
以上、構成について説明した。次に、本発明のタック紙付隠蔽ハガキの使用方法と機能について説明する。本発明のタック紙付隠蔽ハガキの使用方法と機能についてフロー図として図2に示す。
まず、図2のステップS1(宛先・通信文を印刷)において、ハガキの発送人は、図1に示すA4サイズの基材紙1に3面付けしたタック紙付隠蔽ハガキに対して宛先と通信文の印刷を行う。
次に、ステップS2(粘着層を露出)において、ハガキの発送人は、隠蔽領域12の粘着層4を保護している保護紙5を剥がす。このとき、保護紙5は粘着層4との接触面(貼付面)において剥離し、粘着層4はグラシン紙3の表面に残る。すなわち、基材紙1の隠蔽領域12においては粘着層4の表面が露出した状態となる。
【0016】
次に、ステップS3(貼り合せて隠蔽)において、送信者は、ハガキ領域11と隠蔽領域12との境界に形成されたミシン目6において基材紙1を折り曲げ、隠蔽領域12をハガキ領域11の通信欄112a,112b,112cの側に折り返す。そして、隠蔽領域12の粘着層4の表面と、基材紙1の表面である通信欄112a,112b,112cの表面とを接触させ圧力を加える。これにより、隠蔽領域12が通信欄112a,112b,112cに貼り合わされて通信欄112a,112b,112cが隠蔽される。
次に、ステップS4(個別ハガキに分離)において、ハガキの発送人は、A4サイズの基材紙1に3面付けしたタック紙付隠蔽ハガキにおける2つの境界に形成されたミシン目7a,7bにおいて基材紙1、擬似接着層2、粘着層4の各々を切り離す。これにより、A4サイズの基材紙1に3面付けしたタック紙付隠蔽ハガキは分離して個別のタック紙付隠蔽ハガキになる。
【0017】
次に、ステップS5(郵送)において、ハガキの発送人は、分離して個別となったタック紙付隠蔽ハガキを郵送する。
次に、ステップS6(送達)において、ハガキの受取人は、分離して個別となったタック紙付隠蔽ハガキの中の1つ、たとえばハガキ領域11aを含むタック紙付隠蔽ハガキを受け取る。
次に、ステップS7(隠蔽部を剥離)において、ハガキの受取人は、ハガキ領域11aの通信欄5aを隠蔽している隠蔽領域12aを剥がす。このとき、基材紙1の隠蔽領域12aは擬似接着層2を貼付したまま基材紙1のハガキ領域11aから剥がれる。言い換えると、基材紙1のハガキ領域11aにおけるグラシン紙3の表面と、擬似接着層2との接触面(貼付面)において剥離し、擬似接着層2は基材紙1の隠蔽領域12に残る。
次に、ステップS8(通信文の読取)において、ハガキの受取人は、隠蔽領域12aが剥されグラシン紙3が露出する。グラシン紙3と粘着層3は半透明または透明であるから通信欄5aは透けて見えており、ハガキの受取人はそこに記載された通信文を読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のタック紙付隠蔽ハガキにおける構成の一例を示す図である。
【図2】本発明のタック紙付隠蔽ハガキの使用方法と機能について説明するフロー図である。
【符号の説明】
【0019】
1 基材紙
2 擬似接着層
5 保護紙
4 粘着層
5 保護紙
6,7a,7b ミシン目
11,11a,11b,11c ハガキ領域
12,12a,12b,12c 隠蔽領域
111a,111b,111c 宛先欄
112a,112b,112c 通信欄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
宛先等を印字して表示する宛先欄と通信文等を印字した後に隠蔽される通信欄とが含まれハガキとなる領域であるハガキ領域と、折り返すことにより前記通信欄を隠蔽するための隠蔽領域とを有する基材紙と、
前記ハガキ領域と前記隠蔽領域との境界に形成された前記折り返すときに折目となるミシン目と、
前記隠蔽領域の表面に形成された擬似接着層と、
グラシン紙と保護紙とを粘着層を介して貼り合せた構成であって、前記擬似接着層を介して前記隠蔽領域の表面に貼り合せたタック紙と、
を有することを特徴とするタック紙付隠蔽ハガキ。
【請求項2】
請求項1記載のタック紙付隠蔽ハガキにおいて、前記基材紙は前記ハガキ領域と前記隠蔽領域との組が横向きに3行配列する縦A4サイズの基材紙であることを特徴とするタック紙付隠蔽ハガキ。
【請求項3】
請求項2記載のタック紙付隠蔽ハガキにおいて、前記基材紙の3行配列における2つの境界に形成された切り離しを容易にするためのミシン目を有することを特徴とするタック紙付隠蔽ハガキ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−28925(P2009−28925A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192828(P2007−192828)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】