説明

タッチスイッチ

【課題】意識的に操作する際に妨げとなることなく、意図しない接触による誤った入力を防止することができる、新規な構造のタッチスイッチを提供する。
【解決手段】導電部材16に対して複数箇所から電圧が印加されており、導電部材16における通電状態に基づいて被検出導電体48の導電部材16への接触の有無と接触位置を検出するタッチスイッチ10において、被検出導電体48が接触する導電部材16の操作面18に、絶縁性材料で形成されて操作面18を区画する区画用凸部40が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の指先等でのタッチを検出するためのタッチスイッチに係り、特に、誤動作を防止することができるタッチスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両や建築物等には、室内灯の点灯/消灯の切り替えや電動パワーウインドウの開閉等といった所定の動作(機能)に対応付けられるスイッチが設けられており、必要に応じてスイッチを選択的に操作することで、目的とする動作が実行されるようになっている。
【0003】
ところで、近年では、使用者の操作を機械的に検出するメカニカルスイッチに変えて、使用者の画面への接触を電気的に検出するタッチスイッチ(タッチパネル)が急速に普及してきており、例えば、自動車におけるエアーコンディショナの操作等への適用が検討されている。このタッチスイッチは、導電体である使用者の指が、フラットな画面上に表示されたボタンに接触する際の電気的な変化を検出するものであって、例えば、特開2009−75656号公報(特許文献1)等に示されている。
【0004】
ところが、特許文献1では、指の大きさに対して充分に大きな画面上にタッチスイッチのボタンが表示されることから、使用者が他の作業をしている際に不用意に触れてしまう等して、意図しない操作をしてしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−75656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、使用者の意識的な操作を妨げることなく、不用意な接触による誤操作を防止することができる、新規な構造のタッチスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、導電部材に対して複数箇所から電圧が印加されており、該導電部材における通電状態に基づいて被検出導電体の該導電部材への接触の有無と接触位置を検出するタッチスイッチにおいて、前記被検出導電体が接触する前記導電部材の操作面に、絶縁性材料で形成されて該操作面を区画する区画用凸部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
このような第1の態様に従う構造のタッチスイッチによれば、導電体の操作面に対する意図しない接触が、絶縁性材料で形成された区画用凸部によって防止されて、意図しない接触による操作面への誤入力が回避される。その結果、使用者の意図的な操作だけを選択的に受け付けて、操作に対応する動作を実行させることができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載されたタッチスイッチにおいて、前記導電部材に対して交流電圧が印加されていると共に、該導電部材の表面に誘電体層が設けられており、前記被検出導電体の該導電部材に対する該誘電体層を介した接触の有無と接触位置が検出されるものである。
【0010】
第2の態様によれば、被検出導電体が導電部材に対して誘電体層を介して間接的に接触することから、導電部材の磨耗や劣化が防止されて、耐久性の向上が図られる。また、交流電圧が印加されることによって、誘電体層が導電部材と被検出導電体の間に介在しても、静電容量に基づいて導電部材と被検出導電体の間で実質的に電流が流れて、接触の有無と接触位置が有効に検出される。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載されたタッチスイッチにおいて、前記導電部材に対して直流電圧が印加されており、前記被検出導電体の該導電部材に対する直接的な接触の有無と接触位置が検出されるものである。
【0012】
第3の態様によれば、被検出導電体が導電部材に対して直接的に接触することにより、直流電圧を用いることができて、電源の構造を簡易なものとすることができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか1つの態様に記載されたタッチスイッチにおいて、前記導電部材が導電性樹脂で形成されているものである。
【0014】
第4の態様に示されているように、導電部材を導電性樹脂で形成すれば、型成形によって導電部材の形状の自由度を高めることができる。従って、導電部材に立体的な形状が要求される場合にも、導電部材を所定の形状に容易に成形することが可能となる。
【0015】
本発明の第5の態様は、第1〜第3の何れか1つの態様に記載されたタッチスイッチにおいて、前記前記導電部材が導電性塗料で形成されているものである。
【0016】
第5の態様によれば、成形性に優れた樹脂製部材等の表面に導電性塗料を塗布することで、要求される形状の導電部材を容易に形成することができる。
【0017】
本発明の第6の態様は、第1〜第5の何れか1つの態様に記載されたタッチスイッチにおいて、前記被検出導電体の前記導電部材上での接触変位の変位量と変位方向が、接触の有無と接触位置を連続的に検出することで特定されるものである。
【0018】
第6の態様によれば、被検出導電体の導電部材上での移動が検出されることから、接触の有無と接触した位置だけでなく、接触位置の変化に動作を対応付けることにより、1つのタッチスイッチにおいてより多くの操作を実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被検出導電体が接触する導電部材の操作面に対して、電気絶縁性を有する区画用凸部が設けられており、操作面が区画用凸部で区画されている。これにより、本発明に係るタッチスイッチでは、操作面に対する導電体の意図しない接触が回避されて、意図的な操作(入力)が選択的に受け付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の1実施形態としてのタッチスイッチが自動車のドアアームレストに設けられた状態を示す図。
【図2】図1に示されたタッチスイッチを示す図であって、図3のII−II断面に相当する図。
【図3】図2のIII−III断面図。
【図4】図2に示されたタッチスイッチにおける検出機構を説明するための図。
【図5】図4に示されたタッチスイッチ操作時の電気回路を示す回路図。
【図6】本発明の別の実施形態としてのタッチスイッチを示す図。
【図7】本発明のまた別の実施形態としてのタッチスイッチを示す図。
【図8】本発明の更に別の実施形態としてのタッチスイッチを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1には、本発明の1実施形態としてのタッチスイッチ10が示されている。タッチスイッチ10は、自動車のドア部に設けられるアームレスト12の上面に設けられており、車窓開閉用の入力インターフェイスとされている。
【0023】
より詳細には、タッチスイッチ10は、図2,図3に示されているように、絶縁性材料で形成された基体14と、その表面に重ね合わされた導電部材16を有している。基体14は、合成樹脂等の電気絶縁性を有する材料で形成されている。なお、図中では、基体14が平板形状で示されているが、形状は特に限定されるものではない。
【0024】
導電部材16は、電気伝導率の大きい導電性材料で形成されており、本実施形態では、合成樹脂材料にカーボンブラック等の導電性フィラーを混合した導電性樹脂材料で形成されている。そして、導電部材16は、基体14の上面に重ね合わされて固着されている。なお、導電部材16は、調製されたゴムコンパウンドに有機溶剤を添加したものに導電性フィラーとしてのカーボンブラックを混合し、更に印刷用溶剤を添加したゴム系の導電性塗料が、スクリーン印刷やインクジェット印刷,フレキソ印刷,グラビア印刷,パッド印刷,リソグラフィー等の方法で、基体14の上面に所定の形状で印刷されることによって形成されていても良い。更に、金属板等の導電体によって導電部材16を形成することも可能である。
【0025】
また、導電部材16は、下面が基体14の上面に重ね合わされて固着されていると共に、上面が操作面18とされており、後述する被検出導電体の接触が検出されるようになっている。なお、本実施形態の操作面18は凹凸のほとんどない平面とされているが、操作面の形状は特に限定されるものではなく、例えば、水平面や鉛直面に対して傾斜していても良いし、湾曲して凹状に凹んでいる等であっても良い。
【0026】
また、導電部材16の一端には、第1の交流電源20が接続されており、第1の交流電源20から導電部材16の一端に交流電圧が印加されている。一方、導電部材16の他端には、第2の交流電源22が接続されており、第2の交流電源22から導電部材16の他端に交流電圧が印加されている。これら第1,第2の交流電源20,22によって、導電部材16には、同相且つ同電位の電圧が2箇所から印加されており、後述する手指48の非接触状態では導電部材16には電流が流れない。
【0027】
また、導電部材16の一端には、第1の検出用抵抗体24が接続されている。第1の検出用抵抗体24は、導電部材16の一端と第1の交流電源20との接続経路上に配設されて、それら導電部材16および第1の交流電源20と電気的に接続されている。一方、導電部材16の他端には、第2の検出用抵抗体26が接続されている。第2の検出用抵抗体26は、導電部材16の他端と第2の交流電源22との接続経路上に配設されて、それら導電部材16および第2の交流電源22と電気的に接続されている。なお、第1,第2の検出用抵抗体24,26は、抵抗値が同じ(r)とされている。
【0028】
また、第1の検出用抵抗体24への印加電圧を計測するための第1の電圧計28が設けられていると共に、第2の検出用抵抗体26への印加電圧を計測するための第2の電圧計30が設けられている。そして、第1,第2の電圧計28,30の計測値に基づいて導電部材16における通電状態を確認することにより、後述する被検出導電体の導電部材16への接触の有無や接触位置等が検出されるようになっている。
【0029】
さらに、第1,第2の電圧計28,30は、有線乃至は無線によって、処理装置32に接続されている。処理装置32は、第1,第2の電圧計28,30の計測結果に基づいて後述する被検出導電体の導電部材16への接触の有無を判定する接触確認手段34と、接触確認手段34によって被検出導電体の導電部材16への接触が確認された場合に接触位置および接触位置の変化(操作)を特定する操作特定手段36と、操作特定手段36によって特定された操作に応じた制御信号を図示しない車窓の開閉装置に出力する制御信号出力手段38とを有している。
【0030】
また、導電部材16の操作面18上には、区画用凸部40が設けられている。区画用凸部40は、電気絶縁性を有する材料で形成されており、導電部材16の操作面18に重ね合わされて、操作面18から上方に突出するように設けられている。更に、区画用凸部40は、後述する誘電体層46に比して充分に大きな厚さ寸法を有しており、区画用凸部40の設けられた部分における導電部材16の操作面18から誘電体層46の表面までの距離:d1 が、区画用凸部40の設けられない部分(後述するスリット42の形成部分)における導電部材16の操作面18から誘電体層46の表面までの距離:d2 に比して、充分に大きくされている(d1 >d2 )。
【0031】
さらに、区画用凸部40には、スリット42が貫通形成されている。このスリット42は、矩形状の孔であって、区画用凸部40を上下方向に貫通していると共に、下方に行くにつれて次第に縮小している。換言すれば、本実施形態の区画用凸部40は、矩形の中央孔を有する環板形状とされており、その中央孔がスリット42とされている。そして、導電部材16の操作面18が区画用凸部40によって区画されており、操作面18において区画用凸部40に覆われることなくスリット42を通じて露出している部分が検出面44とされて、スリット42に手指48を挿入することにより、手指48が区画用凸部40を介することなく検出面44に接触可能とされている。なお、スリット42の幅寸法は、特に限定されるものではないが、手指48が挿入可能であると共に、掌や腕等の人体の他の部位が挿入され得ない大きさとされていることが望ましく、好適には、例えば、最も狭幅となる下側開口部において1cm以上且つ3cm以下とされている。
【0032】
また、区画用凸部40の上面および導電部材16の検出面44は、誘電体層46で覆われている。誘電体層46は、誘電性を有する合成樹脂材料等で形成された薄肉の層状であって、好適には摩耗や雰囲気下での侵食等に対する耐性を備えている。このような誘電体層46が設けられていることにより、手指48が検出面44に対して誘電体層46を介して間接的に接触するようになっている。なお、誘電体層46は、導電部材16の検出面44上にのみ設けられていても良く、必ずしも区画用凸部40上にまで延び出して設けられている必要はない。また、誘電体層46は区画用凸部40と一体形成されていても良く、その場合には厚さ寸法の違いによって厚肉部分が区画用凸部として機能すると共に、薄肉部分が誘電体層として機能する。
【0033】
そして、図4に示されているように、手指48がスリット42に挿入されて誘電体層46を介して導電部材16の検出面44に接触すると、導電部材16が手指48を含む人体を通じて接地されることから、導電部材16および第1,第2の検出用抵抗体24,26に電流:I1 ,I2 が流れる。なお、本実施形態では、手指48と導電部材16の間に誘電体層46が設けられているが、導電部材16に交流電圧が印加されていることから、導電部材16と手指48を電極とするコンデンサが構成されて、それら導電部材16と手指48の間で電流が流れるようになっている。要するに、本実施形態のタッチスイッチ10は、静電容量結合型とされている。
【0034】
第1,第2の検出用抵抗体24,26に電流:I1 ,I2 が流れると、第1,第2の電圧計28,30において第1,第2の検出用抵抗体24,26に流れる電流に応じた電圧値:Vm1 ,Vm2 が計測される。そして、処理装置32の接触確認手段34は、第1,第2の電圧計28,30の各計測値:Vm1 ,Vm2 が所定の数値以上である場合に、導電部材16に対する手指48(被検出導電体)の接触を検出する。なお、接触確認手段34は、例えば第1,第2の電圧計28,30の計測値が予め設定された閾値以上であるか否かを判定するものであって、計測値が閾値以上であると判定された場合に導電部材16の検出面44に対する手指48の接触が検知される。
【0035】
そして、導電部材16の検出面44に対する手指48の接触が検知されると、処理装置32の操作特定手段36が、第1,第2の電圧計28,30の計測値に基づいて手指48の検出面44に対する当接位置を特定する。即ち、図4に示されているように、全体の抵抗値をRとされた導電部材16の中間部分に手指48が接触すると、抵抗体としての導電部材16は、一方の端(図4中、左端)から手指48の接触位置までの第1の抵抗体50(抵抗値はR1 )と、他方の端(図4中、右端)から手指48の接触位置までの第2の抵抗体52(抵抗値はR2 )とに実質的に分割される。これら第1の抵抗体50の抵抗値:R1 と、第2の抵抗体52の抵抗値:R2 の比は、導電部材16の一方の端から手指48の接触位置までの距離と、導電部材16の他方の端から手指48の接触位置までの距離との比と略同じになることから、R1 とR2 の比を求めることによって、手指48の導電部材16に対する接触位置が特定される。なお、導電部材16に手指48が接触した状態を電気回路図として示したのが、図5である。
【0036】
なお、第1,第2の電圧計28,30による電圧値の計測は所定の時間間隔で繰り返されており、操作特定手段36が手指48の導電部材16に対する接触位置の変化を連続的に検出している。これにより、手指48を導電部材16の表面(検出面44)に接触させながら移動させた場合に、手指48の変位方向と変位量が特定されるようになっている。
【0037】
操作特定手段36によって手指48の接触位置や接触しながらの移動が検知されると、処理装置32の制御信号出力手段38は、手指48の検出面44に対する接触位置や検出面44に接触しながらの移動量および移動方向等に応じた制御信号を、車両の装置に出力する。タッチスイッチ10の操作によって制御される装置は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、例えば、図示しない車窓の開閉装置が制御されるようになっており、タッチスイッチ10への入力操作に応じて車窓の開閉動作が実行される。なお、本実施形態では、手指48を検出面44に接触させながらスリット42の長手方向で移動させることにより、移動方向(図2中、左方向又は右方向)に応じて開作動と閉作動が識別されると共に、移動量に応じて車窓の開閉動作量が設定されて、制御信号出力手段38から車窓の開閉装置に制御信号として出力される。
【0038】
一方、手指48を含む人体が区画用凸部40の上面に触れると、スリット42に手指48が挿入された場合と同様に、導電部材16と手指48を電極とするコンデンサが構成されるが、それら導電部材16と手指48の距離は、区画用凸部40を介することから、手指48が検出面44に接触した場合よりも大きくなる。それ故、手指48が検出面44に接触した場合に比して、電気容量が小さくなって、第1,第2の検出用抵抗体24,26に流れる電流が小さくなる。その結果、第1,第2の電圧計28,30の計測値が予め設定された閾値未満となって、接触確認手段34が導電部材16に対する手指48の接触ではないと判定する。以上によって、タッチスイッチ10では、手指48と導電部材16の検出面44とのスリット42を通じた接触だけが選択的に検出されるようになっている。
【0039】
これにより、タッチスイッチ10では、操作面18への意図しない接触による車窓の誤った開閉動作が防止されている。即ち、操作面18上に区画用凸部40が設けられていることにより、操作面18への意図しない接触が区画用凸部40によって防がれて、誤動作が防止されている。特に本実施形態では、操作面18の露出が手指48が挿入される程度の狭幅なスリット42内に限定されるように区画用凸部40が設けられていることから、不用意な接触がより効果的に回避される。
【0040】
一方、意図的に車窓の開閉を操作する際には、常時開放されたスリット42に手指48を差し入れて、操作面18(検出面44)に接触させながら手指48をスライドさせることによって、誤接触防止用カバーを開ける等の余分な作業を要することなく、簡単に操作することができる。しかも、検出面44がスリット42によって凹所状とされた部分の底面に設けられていることから、スリット42の上側開口部を指先の触感で探ることにより、検出面44の位置を目で確認することなく把握することができる。
【0041】
また、本実施形態では、静電容量結合型のタッチスイッチ10において、手指48と導電部材16を電極として構成されるコンデンサの電極間距離を区画用凸部40の有無によって変化させて、手指48の接触によって流れる電流の大きさを異ならせることにより、操作部分への接触であるか否かが判別されるようになっている。このように、絶縁性材料で形成された区画用凸部40を操作面18上に設けることにより、検出面44への接触か否かを簡単な構造で正確に判別可能となる。
【0042】
また、導電部材16を導電性樹脂で形成すれば、導電部材16自体を型成形することによって成形自由度が大きくなって、目的とする形状の導電部材16を容易に得ることができる。一方、導電部材16を導電性塗料で形成すれば、基体14の形状に沿った導電部材16が形成されることから、基体14を形状自由度の大きい一般的な合成樹脂等で形成することにより、目的とする形状の導電部材16を容易に得ることができる。
【0043】
また、検出面44が誘電体層46で被覆されていることから、手指48が繰返し接触および摺動することによる導電部材16の劣化や磨耗が防止されて、導電部材16の耐久性が向上する。しかも、第1,第2の交流電源20,22から導電部材16に対して交流電圧が印加されることから、静電容量に基づいて手指48の導電部材16に対する誘電体層46を介した接触が有効に検出される。
【0044】
なお、本実施形態では、タッチスイッチ10の検出面44に対して手指48を摺動させることで車窓が開閉される例を示したが、例えば、検出面44の長手方向一方の端部に手指48が接触することで車窓が開作動されると共に、検出面44の長手方向他方の端部に手指48が接触することで車窓が閉作動されるようになっていても良い。要するに、タッチスイッチは、操作面上での被検出導電体の摺動を検出して、摺動の方向や量に応じた制御信号を出力するものであっても良いし、操作面に対する被検出導電体の接触位置を検出して、接触位置に応じた制御信号を出力するものであっても良い。
【0045】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、静電容量結合型のタッチスイッチ10が示されているが、本発明の適用範囲は静電容量結合型のタッチスイッチに限定されるものではなく、例えば抵抗結合型のタッチスイッチにも適用可能である。具体的には、抵抗結合型のタッチスイッチ60は、図6に示されているように、前記実施形態に示されたタッチスイッチ10から誘電体層46が取り除かれると共に、第1,第2の直流電源62,64が第1,第2の交流電源20,22に代えて採用されて、導電部材16に導電位の直流電圧が印加された構造を有している。このような抵抗結合型のタッチスイッチ60では、手指48がスリット42に挿入されて導電部材16に直接的に接触させられて、導電部材16が人体を通じて接地されることにより、導電部材16に電流が流れて、手指48の導電部材16への接触と接触位置が検出される。一方、手指48が区画用凸部40を介して導電部材16に接触した場合には、直流電圧が印加されていることから、区画用凸部40によって絶縁されて電流が流れず、接触が検知されない。これらのようにして、抵抗結合型のタッチスイッチ60によっても、被検出導電体(手指48)の導電部材16への接触の有無が検知される。また、直流電圧を印加する電源62,64を採用できることから、電源回路を簡単なものとすることも可能となる。なお、接触位置の検出方法は、前記実施形態に示された静電容量結合型のタッチスイッチ10と同様であることから、ここでは説明を省略する。また、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことで説明を省略する。
【0046】
また、区画用凸部の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、図7に示されたタッチスイッチ70のような区画用凸部72も採用され得る。即ち、タッチスイッチ70では、導電部材16の操作面18上に、直線的な凸条形状を有する複数の区画用凸部72が所定の間隔で並列に配設されており、隣り合う区画用凸部72,72の間に手指48の接触を検出する検出面74がそれぞれ設けられている。このような構造を有するタッチスイッチ70においても、手指48の操作面18への意図しない接触が区画用凸部72によって防止される。更に、本実施形態のタッチスイッチ70では、操作面18が区画用凸部72で区切られて複数の検出面74が設けられていることから、何れの検出面74に接触したかによって対応する動作を異ならせることができる。しかも、操作面18が区画用凸部72で区切られて複数の検出面74に区画されていることから、目視を要することなく触感によって容易に目的とする操作を行うことができる。なお、区画用凸部72の形状を異ならせる等して、触感によって検出面74の位置をより把握し易くすることもできる。なお、図7,図8では、電源や検出用抵抗体、電圧計等の図示が省略されている。
【0047】
さらに、区画用凸部は、板状や凸条状の他に、例えば半球形状等の凸起状等も採用され得る。要するに、区画用凸部は、電気絶縁性材料で形成されて、操作面18から突出することで操作面18への意図しない接触を防止するようになっていれば、その形状は特に限定されない。
【0048】
更にまた、区画用凸部としては、例えば、図8に示されたタッチスイッチ80のような区画用凸部82も採用され得る。即ち、タッチスイッチ80では、2つのスリットを相互に直交するように組み合わせた上下方向視で十字形状を呈する窓部84を備えた区画用凸部82が採用されており、導電部材16の操作面18において窓部84を通じて露出する部分が検出面86とされている。更に、導電部材16に対して4箇所から電圧が印加されており、検出面86への入力が互いに直交する2方向において検出されるようになっている。このような窓部84を有する区画用凸部82と、導電部材16に対する4箇所からの電圧の印加を組み合わせて採用すれば、互いに直交する2方向において検出面86への入力を検出することができる。以上より明らかなように、導電部材16に印加される電圧は必ずしも2箇所からに限定されるものではなく、例えば、上記のタッチスイッチ80の如く4箇所から印加して2次元(平面上)で接触位置を特定可能としても良い。なお、窓部の形状は特に限定されるものではなく、T字状や王字状等であっても良い。
【0049】
また、検出面44に接触する被検出導電体は、必ずしも手指48ではなくても良く、導電部材16の通電状態が被検出導電体の接触によって変化して、被検出導電体の導電部材16への接触が検知されるようになっていれば良い。具体的には、例えば、被検出導電体として導電性材料で形成されたタッチペン等を採用することもできる。
【0050】
また、タッチスイッチの操作によって制御される装置としては、車窓の開閉装置に限定されるものではなく、例えば、エアーコンディショナやオーディオシステム、ドアロックの開閉装置、車室灯の制御装置等がタッチスイッチの操作によって制御されるようになっていても良い。
【0051】
さらに、前記実施形態では、タッチスイッチ10が自動車のドア部のアームレスト12に設けられていたが、タッチスイッチは、例えば、自動車のルーフの車内側壁面に設けられて車室灯を点灯/消灯するためのスイッチとされていても良いし、インストルメントパネルに設けられて、エアーコンディショナやオーディオシステムを操作するための入力インターフェイスとされていても良い。更にまた、本発明のタッチスイッチは、必ずしも自動車にのみ用いられるものではなく、例えば、家屋の照明用スイッチ等にも適用され得る。
【符号の説明】
【0052】
10,60,70,80:タッチスイッチ、16:導電部材、18:操作面、20:第1の交流電源、22:第2の交流電源、40,72,82:区画用凸部、44,74:検出面、46:誘電体層、48:手指(被検出導電体)、62:第1の直流電源、64:第2の直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部材に対して複数箇所から電圧が印加されており、該導電部材における通電状態に基づいて被検出導電体の該導電部材への接触の有無と接触位置を検出するタッチスイッチにおいて、
前記被検出導電体が接触する前記導電部材の操作面に、絶縁性材料で形成されて該操作面を区画する区画用凸部が設けられていることを特徴とするタッチスイッチ。
【請求項2】
前記導電部材に対して交流電圧が印加されていると共に、該導電部材の表面に誘電体層が設けられており、前記被検出導電体の該導電部材に対する該誘電体層を介した接触の有無と接触位置が検出される請求項1に記載のタッチスイッチ。
【請求項3】
前記導電部材に対して直流電圧が印加されており、前記被検出導電体の該導電部材に対する直接的な接触の有無と接触位置が検出される請求項1に記載のタッチスイッチ。
【請求項4】
前記導電部材が導電性樹脂で形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載のタッチスイッチ。
【請求項5】
前記前記導電部材が導電性塗料で形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載のタッチスイッチ。
【請求項6】
前記被検出導電体の前記導電部材上での接触変位の変位量と変位方向が、接触の有無と接触位置を連続的に検出することで特定される請求項1〜5の何れか1項に記載のタッチスイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−178233(P2012−178233A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39360(P2011−39360)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】