説明

タッピングねじ及びその製造方法

【課題】本発明の課題は部品組付け等のコストダウンを図ることにある。
【解決手段】タッピングねじ1のねじ山形成部4の表面に粘着層5を形成し、該粘着層5の表面に非粘着性皮膜6を形成する。該タッピングねじ1を部材7の下穴8に螺入して行くと、該下穴8周壁が切削されて雌ねじ9が形成されるが、同時に該非粘着性皮膜6が破れて該粘着層5が露出し、切削によって発生した成形物Pを該粘着層5に捕捉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部材に雌ねじ穴を形成する時に使用されるタッピングねじに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば電子機器の組立てにはねじを使用して部品を基板やハウジング等に取付けることが多くなっている。特に軽量化、コンパクト化が要求されるパソコン、携帯電話、デジタルカメラ等のデジタル用品、薄型テレビ、自動車用部品等ではコンパクト化の為にねじと雌ねじ穴による締結方式が多用されている。
リサイクルが比較的容易なアルミニウム合金やマグネシウム合金等を材料とした部材に部品をねじによって取付けるには、部材の部品取付け位置に電気ドリル等によって下穴をあけておき、該下穴にタッピングねじを螺入して雌ねじを形成する方法がコストダウン、軽量化、環境問題等の点から推奨される。
【0003】
【特許文献1】特開平7−15155号公報
【特許文献2】特開平8−94772号公報
【特許文献3】特開2005−299859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パソコン、携帯電話、デジタルカメラ等のデジタル用品や薄型テレビでは多くの電子基板が配置されているので、下穴にタッピングねじを螺入して雌ねじを形成する際に切削粉や摩擦粉等の成形物が発生し、該成形粉が飛散して基板上に付着し、基板のショート等の製品不良が発生する。
このような不具合を解消するには、部材の部品取付け位置に予め雌ねじ穴を設けておいて、部品をビス等で締結しなければならないが、そうすると上記したようなコストダウン等の利点のあるタッピングねじが使用出来なくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の問題点を解決し、部品の締結に支障なく使用出来るタッピングねじを提供することを目的とするものであって、タッピングねじのねじ山形成部に表面に非粘着性皮膜を形成した粘着層を設けたタッピングねじを提供するものである。
更に本発明では、タッピングねじのねじ山形成部に樹脂分濃度が10〜50質量%のアクリル系粘着剤溶液を塗布し、常温〜90℃の温度で加熱乾燥せしめて該アクリル系粘着剤溶液塗布層の表面に非粘着性皮膜を形成し該非粘着性皮膜の下側には粘着層を形成する上記タッピングねじの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
部材7の所定個所に下穴8を設け、該下穴8にタッピングねじ1を螺入して行くと、該下穴8の周壁が切削されて雌ねじ9が形成される。この際、切削粉や摩擦粉等の成形粉が発生する。
【0007】
本発明のタッピングねじ1のねじ山形成部4には粘着層5が形成されているが、該粘着層5の表面には非粘着性皮膜6によって被覆されているので、ストック中、あるいは下穴8に螺入する前段の取扱い中には該粘着層5は器物、工具、作業者の手等が粘着しないので、通常のタッピングねじと同様に取扱うことが出来る。しかし該タッピングねじ1を下穴8に螺入する時には該非粘着性皮膜6が破れて粘着層5が露出し、該タッピングねじ1の螺入によって発生した成形粉が該粘着層5に粘着し捕捉される。
【0008】
〔効果〕
したがって本発明では部品取付け等にタッピングねじを使用しても成形粉が飛散しないから、電子基板が多く配置されているデジタル用品や薄型テレビ等の組立てにも、タッピングねじを使用してコストダウンや軽量化を図ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を図1〜図5に示す一実施例によって説明すれば、タッピングねじ1は頭部2を根端に形成した軸本体部3は先尖り形状を有しており、先端から中間部にかけてはねじ山形成部4が形成されている。
図2に示すように該ねじ山形成部4の表面には粘着層5が形成されており、該粘着層5の表面には非粘着性皮膜6が形成されている。
【0010】
上記非粘着性皮膜6を表面に形成した粘着層5を該タッピングねじ1のねじ山形成部4に形成するには、粘着剤エマルジョン液、粘着剤有機溶剤溶液等の粘着剤液を該タッピングねじ1のねじ山形成部4にスプレー、ディッピング等の方法によって塗布し、該粘着剤液塗布層を乾燥せしめて粘着層5を形成し、更に非粘着性樹脂のエマルジョン液または溶液をその上から塗布し乾燥させて非粘着性皮膜6を形成する方法、熱硬化性アクリル樹脂粘着剤エマルジョン、熱硬化性アクリル樹脂粘着剤溶液等の硬化性樹脂溶液を該タッピングねじ1のねじ山形成部4に塗布して粘着層5を形成し、該粘着層5の表面を加熱硬化、空気接触硬化、電子線照射硬化、紫外線照射硬化等で選択的に硬化せしめて非粘着性皮膜6を形成する方法がある。
【0011】
例えば熱硬化性アクリル樹脂粘着剤の場合、溶液の樹脂分濃度を10〜50質量%に設定し、塗布後は常温〜90℃の温度で加熱して粘着層5の表面のみ選択的に硬化せしめて非粘着性皮膜6を形成する。
【0012】
上記タッピングねじ1は図1に示すように下穴8を設けた部材7の下穴8に螺入される。該下穴8の径dは該タッピングねじ1の軸径dより小さく(d<d)設定されているので、該タッピングねじ1のねじ山形成部4は該下穴8の周壁を切削して雌ねじ9を形成しつつ該下穴8に螺入して行く。その時切削粉や摩擦粉等の成形物Pが発生する。
一方図4に示すように該タッピングねじ1のねじ山形成部4の表面の粘着層5の非粘着性皮膜6は、該タッピングねじ1の下穴8への螺入につれ破れて粘着層5が露出し、該成形粉Pは該粘着層5に粘着し捕捉される。
したがって該成形粉Pは周りに飛散あるいは落下することを該粘着層5によって防止される。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明では部品等の組付けをタッピングねじを使用して行なうことが出来るから、部品等の組付けのコストダウンが出来、併せて軽量化、環境汚染防止等を図ることが出来るから産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1〜図5は本発明の一実施例の説明図である。
【図1】タッピングねじの側面図と、部材下穴部分の側断面図
【図2】図1における点線円囲い部分の拡大図
【図3】タッピングねじ螺入過程の説明図
【図4】タッピングねじ螺入過程の図1における点線丸囲い部分の拡大図
【図5】タッピングねじ螺入状態説明図
【符号の説明】
【0015】
1 タッピングねじ
5 粘着層
6 非粘着性皮膜
8 下穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッピングねじのねじ山形成部に表面に非粘着性皮膜を形成した粘着層を設けたことを特徴とするタッピングねじ。
【請求項2】
タッピングねじのねじ山形成部に樹脂分濃度が10〜50質量%のアクリル系粘着剤溶液を塗布し、常温〜90℃の温度で加熱乾燥せしめて該アクリル系粘着剤溶液塗布層の表面に非粘着性皮膜を形成し該非粘着性皮膜の下側には粘着層を形成することを特徴とする請求項1に記載のタッピングねじの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−69857(P2008−69857A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248811(P2006−248811)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(393009596)株式会社南部製作所 (5)