説明

タップ切替装置

【課題】装置の簡略化及び小型化を実現する。
【解決手段】タップ切替装置1は、回転可能な回転軸3と、その回転軸3を回転させる回転駆動部4と、回転軸3を中心とする円周上に一定間隔で設けられた円柱状の複数の固定電極5と、回転軸3の回転により各固定電極5に順次接触しながら回転軸3を中心として回転する可動電極体6とを備えている。各固定電極5は、隣接する二つの固定電極が一組とされ、両端に位置する二組の固定電極では一組の固定電極の両方が直接同じタップに接続され、その他の組の固定電極では一組の固定電極の一方が直接、その他方が抵抗を介して同じタップに接続され、複数のタップに電気的に接続されている。また、可動電極体6は、隣接する二組の固定電極5に接触し、互いに電気的に接続された円盤状の二個の可動電極6aと、隣接する二組の固定電極5に対して二個の可動電極6aを押し付ける押圧部材とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タップ切替装置に関し、例えば、変圧器のタップを切り替えるタップ切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、柱上変圧器の一次側は高圧配電線に接続され、その二次側は単相三線式の低圧配電線に接続される。単相三線式の低圧配電線はさらに低圧引込線を介して一般家庭や事業所などの低圧需要家に接続される。柱上変圧器は高圧配電線から6600Vの高圧で供給された電力を例えば105V(あるいは210V)という供給電圧まで降圧して単相三線式の低圧配電線を介して低圧需要家に供給している。
【0003】
前述の高圧配電線では、線路の電圧降下が生じるため、線路上に設置された柱上変圧器の入力電圧はその設置位置によって異なることになる。高圧側の電圧が異なれば低圧需要家への供給電圧も異なり、一般家庭や事業所などの電気機器に悪影響を与える恐れがある。特に、一般家庭のように対策機器が無い低圧需要家の受電端において、供給電圧が電気事業法に規定する電圧範囲101V±6Vを超えることは問題となるため、電力会社が自ら調相機器や降圧機器を設置する必要がある。
【0004】
このため、柱上変圧器の高圧巻線には変圧比調整用のタップが複数設けられており、それらのタップ間の接続を切り替えることによって低圧側の電圧を規定範囲内に保つようにしている。このとき、柱上変圧器の電源を遮断して停電状態でタップ切替を行うことは需要家に多大の迷惑をかけるため、無停電でタップ切替を行う必要がある。この無停電でタップ切替を行うタップ切替装置としては、ソレノイドを駆動源として自動的にタップを切り替えるタップ切替装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−93050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のタップ切替装置では、タップ間の接続を保持する接点保持機構が必要となるため、タップ切替装置が複雑化してしまい、さらに、大型化してしまう。
【0007】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、その目的は、装置の簡略化及び小型化を実現することができるタップ切替装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るタップ切替装置は、変圧器の巻線に沿う複数のタップ間の接続を切り替えるタップ切替装置であって、軸心を中心として回転可能に設けられた回転軸と、回転軸を回転させる回転駆動部と、回転軸を中心とする円周上に一定間隔で設けられた円柱状の複数の固定電極と、回転軸の回転により複数の固定電極に順次接触しながら回転軸を中心として回転する可動電極体とを備え、複数の固定電極は、隣接する二つの固定電極が一組とされ、両端に位置する二組の固定電極では一組の固定電極の両方が直接同じタップに電気的に接続され、その他の組の固定電極では一組の固定電極の一方が直接、その他方が抵抗を介して同じタップに電気的に接続され、複数のタップに電気的に接続されており、可動電極体は、隣接する二組の固定電極に接触し、互いに電気的に接続された円盤状の二個の可動電極と、隣接する二組の固定電極に対して二個の可動電極を押し付ける押圧部材とを有している。
【0009】
また、前述の本発明に係るタップ切替装置において、複数の固定電極は、固定軸と、その固定軸を中心として回転可能に設けられ、可動電極と接触する回転管とをそれぞれ有していることが望ましい。
【0010】
また、前述の本発明に係るタップ切替装置において、固定電極は、固定軸と回転管との間に介在し、可動電極が固定電極に接触するときの衝撃を緩和する油を有していることが望ましい。
【0011】
また、前述の本発明に係るタップ切替装置において、二個の可動電極は、固定軸と、その固定軸を中心として回転可能に設けられ、固定電極と接触する回転体とをそれぞれ有していることが望ましい。
【0012】
また、前述の本発明に係るタップ切替装置において、可動電極は、固定軸と回転体との間に介在し、可動電極が固定電極に接触するときの衝撃を緩和する油を有していることが望ましい。
【0013】
また、前述の本発明に係るタップ切替装置において、可動電極体は、二個の可動電極を回転可能に挟持して電気的に接続する一対の支持板を有しており、二個の可動電極は、回転体に対して一対の支持板の一方を付勢する付勢部材をそれぞれ有していることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るタップ切替装置によれば、可動電極体の二個の可動電極は押圧部材による押圧力によって、隣接する二組の固定電極に接触しており、可動電極体が回転軸の回転に応じて回転すると、二個の可動電極は円周上に並ぶ複数の固定電極に順次接触しながら移動する。その後、可動電極体の回転が停止すると、二個の可動電極は、隣接する固定電極間の凹部に嵌まって静止し、その静止状態が押圧部材による押圧力により維持される。これにより、タップ間の接続状態を保持する複雑な接点保持機構が無くても、タップ間の接続状態を保持することが可能となるので、装置の簡略化及び小型化を実現することができる。さらに、可動電極は押圧部材による押圧力により固定電極に当接しており、可動電極体の静止中及び回転中に、可動電極と固定電極との電気的な接続状態を良好に維持することができる。
【0015】
また、複数の固定電極が、固定軸と、その固定軸を中心として回転可能に設けられ、可動電極と接触する回転管とをそれぞれ有している場合には、可動電極と接触する回転管が回転するため、可動電極と回転管との接触箇所の摩耗を低減することができる。
【0016】
また、固定電極は、固定軸と回転管との間に介在し、可動電極が固定電極に接触するときの衝撃を緩和する油を有している場合には、可動電極体の回転が滑らかになるので、タップ切替動作時のリバウンド発生を抑止することができ、さらに、動作音を小さくすることができる。
【0017】
また、二個の可動電極が、固定軸と、その固定軸を中心として回転可能に設けられ、固定電極と接触する回転体とをそれぞれ有している場合には、固定電極と接触する回転体が回転するため、固定電極と回転体との接触箇所の摩耗を低減することができる。
【0018】
また、可動電極は、固定軸と回転体との間に介在し、可動電極が固定電極に接触するときの衝撃を緩和する油を有している場合には、可動電極体の回転が滑らかになるので、タップ切替動作時のリバウンド発生を抑止することができ、さらに、動作音を小さくすることができる。
【0019】
また、可動電極体が、二個の可動電極を回転可能に挟持して電気的に接続する一対の支持板を有しており、二個の可動電極が、回転体に対して一対の支持板の一方を付勢する付勢部材をそれぞれ有している場合には、二個の可動電極は付勢部材による付勢力により一対の支持板により挟持されている。これにより、二個の可動電極を回転可能に保持しながら、それらの可動電極の電気的な接続を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るタップ切替装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1に示すタップ切替装置の概略構成を示す側面図である。
【図3】図1及び図2に示すタップ切替装置が備える回転駆動部を示す平面図である。
【図4】図1及び図2に示すタップ切替装置が備える可動電極体及び複数の固定電極を示す平面図である。
【図5】図1及び図2に示すタップ切替装置が備える複数の固定電極と変圧器のタップとの接続を説明するための説明図である。
【図6】図1及び図2に示すタップ切替装置が行うタップ切替動作に係るタップ間の接続状態の変化を説明するための説明図である。
【図7】図3に示す定常状態の位置から引込動作を行う回転駆動部を示す平面図である。
【図8】図7に示すフック位置に対応する可動電極体の位置を示す平面図である。
【図9】図7に続く引込動作を行う回転駆動部を示す平面図である。
【図10】図9に示すフック位置に対応する可動電極体の位置を示す平面図である。
【図11】図9に続く引込動作を行う回転駆動部を示す平面図である。
【図12】図11に示すフック位置に対応する可動電極体の位置を示す平面図である。
【図13】図11に続く引込動作を行う回転駆動部を示す平面図である。
【図14】図13に示すフック位置に対応する可動電極体の位置を示す平面図である。
【図15】図13に続く復帰動作を行う回転駆動部を示す平面図である。
【図16】図15に続く復帰動作を行う回転駆動部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るタップ切替装置1は、構造体である本体2と、その本体2の内部に軸心を中心として回転可能に設けられた回転軸3、その回転軸3を回転させる回転駆動部4と、本体2の内部であって回転軸3を中心とする円周上に設けられた複数の固定電極5と、回転軸3の回転により各固定電極5に順次接触しながら移動する可動電極体6とを備えている。なお、図1及び図2では、可動電極体6を視認可能にするため、固定電極5の一部を切り欠いている。
【0023】
本体2は、上端に位置する天板2aと、下端に位置する底板2bと、それら天板2a及び底板2bの間に位置して各固定電極5を支持する上支持板2c及び下支持板2dと、それら各種の板2a〜2dを支持する複数の支柱2eとにより構成されている。天板2a、底板2b、上支持板2c及び下支持板2dは、複数(例えば、四本)の支柱2eに固定されて設けられている。この固定部材としては、例えば、ナットなどが用いられる。
【0024】
回転軸3は、長尺のシャフトであり、天板2aと底板2bとの間に軸心を中心として回転可能(回転自在)に設けられている。この回転軸3は、上支持板2c及び下支持板2dを貫通しており、天板2aに設けられた軸受部3a及び底板2bに設けられた軸受部3bにより回転可能に構成されている。なお、上支持板2c及び下支持板2dには、貫通する回転軸3が回転可能に、例えば、回転軸3の直径よりも大きい直径を有する貫通孔(図示せず)がそれぞれ形成されている。
【0025】
回転駆動部4は、図3に示すように、回転軸3に設けられた歯車4aと、その歯車4aを反時計回りに回転させる第1の駆動部4bと、歯車4aを時計回りに回転させる第2の駆動部4cとを備えている。これらの第1の駆動部4bと第2の駆動部4cは、回転軸3に設けられた歯車4aを間にして配置されている。なお、第1の駆動部4b及び第2の駆動部4cは基本的に同じ構造であるため、第1の駆動部4bの説明を行って第2の駆動部4cの説明を省略する。ただし、第1の駆動部4bと同一部分は同一符号で示す。
【0026】
歯車4aは、複数の歯(凸部)11を有する円環状に形成されており、回転軸3に嵌められてその回転軸3の上部に固定されている(図1参照)。各歯11は、歯車4aの円周方向に並ぶようにその外周面に形成されている。この歯車4aに外力が加わると、回転軸3が反時計回りあるいは時計回りに回転することになる。歯車4aの外周面に存在する各歯11は、タップ上げ用又はタップ下げ用として分けられており、タップ上げ用の歯11の個数とタップ下げ用の歯11の個数は互いにタップ数からマイナス二個の数である。例えば、図3では、タップ上げ用の歯11の個数とタップ下げ用の歯11の個数は互いに四個であり、タップ上げ用の四個の歯11とタップ下げ用の四個の歯11は、歯車4aの円中心を通る中心線に対して左右対象の位置に設けられている。なお、歯11の間隔は、タップ切替に必要な可動電極体6の回転量に応じて決定されている。
【0027】
第1の駆動部4bは、歯車4aの歯11に引っかかるフック21と、そのフック21を支持する支持リンク22と、その支持リンク22に連結されたプランジャ23と、そのプランジャ23を定常状態の位置(ホームポジション)から引き込んで移動させるソレノイド24と、プランジャ23を元の定常状態の位置に戻すバネなどの復帰部材25と、バネ受けなどの受け部材26と、支持リンク22の端部に設けられたストッパプレート27とを有している。
【0028】
フック21は、支持リンク22に支持ピン21aにより回転可能に設けられており、支持リンク22に設けられた規制ピン21bに対し、フック21に設けられた固定ピン21cに留められたねじりバネなどの付勢部材21dにより付勢されている。このフック21は、プランジャ23のソレノイド24側への移動に応じ、支持リンク22と共にソレノイド24側に移動する。これにより、フック21の先端が歯車4aの歯11に当接してその歯11をソレノイド24側に押し、歯車4aを反時計回りに回転させることになる。
【0029】
支持リンク22は、プランジャ23に連結された補助板22aと、その補助板22aに連結された棒材22bにより構成されている。この支持リンク22は、回転軸3の延伸方向に直交するように配置されており、天板2aにネジ止めされた板状の支持部材28により支持されている(図1及び図2参照)。補助板22aは、支持部材28に対して摺動可能であり、プランジャ23と共に定常状態の位置に待機している。この補助板22aにはフック21が取り付けられており、棒材22bは復帰部材25の内部を通過しており、その端部にはストッパプレート27が設けられている。
【0030】
プランジャ23は、支持リンク22とつながっており、その支持リンク22と同様、回転軸3の延伸方向に直交するように配置されている。このプランジャ23は、ソレノイド24により支持され、回転軸3の延伸方向に直交する方向に往復移動可能に構成されている。
【0031】
ソレノイド24は、天板2aにネジ止めされており(図1及び図2参照)、外部からの電力供給により駆動し、回転軸3の延伸方向に直交する方向にプランジャ23を引き込んで移動させる。なお、電力供給が停止されると、ソレノイド24の駆動も停止し、プランジャ23は支持リンク22と共に復帰部材25による復帰力により元の定常状態の位置に戻る。
【0032】
復帰部材25は、板状の支持部材28に対してソレノイド24の反対側に位置付けられており、板状の支持部材28に設けられた受け部材26と、支持リンク22の棒材22bの端部に設けられたストッパプレート27との間に設けられている。この復帰部材25がプランジャ23及び支持リンク22を元の定常状態の位置に戻す復帰力を生み出す。なお、復帰部材25としては、例えば、コイルスプリングなどが用いられる。
【0033】
図1及び図2に戻り、各固定電極5は、上支持板2c及び下支持板2dを略垂直に貫通する固定軸5aと、その固定軸5aを中心として回転可能な回転管5bと、その回転管5bを下支持板2d側に付勢するバネなどの付勢部材5cとをそれぞれ備えている。これらの固定電極5は、回転軸3を中心とする円周上に、例えば扇状に一定の間隔で配置されている(図4参照)。
【0034】
固定軸5aは、上支持板2c及び下支持板2dを貫通して回転管5b及び付勢部材5cの内部を通り、上支持板2c及び下支持板2dに固定されて立設されている。この固定部材としては、例えば、ナットなどが用いられる。
【0035】
回転管5bは、円柱状、すなわち円筒状に形成されており、その内部の固定軸5aを中心として回転可能に上支持板2c及び下支持板2dの間に設けられている。この回転管5bは、固定軸5aの延伸方向に沿って付勢部材5cにより下支持板2d側に付勢されている。この付勢部材5cとしては、例えば、コイルスプリングなどが用いられる。この回転管5aの回転により、固定電極5と可動電極体6との接触箇所の摩耗を低減することができる。
【0036】
なお、前述の固定軸5aと回転管5bとの隙間には、油が供給されているため、固定軸5aと回転管5bとの間には、油が介在している。この油は、回転管5bの回転抵抗を小さくするものである。これにより、回転管5bの回転抵抗が小さくなり、その回転管5bに接触しながら回転する可動電極体6の回転が滑らかになるので、タップ切替動作時にリバウンドの発生を抑止することができ、さらに、動作音を小さくすることができる。
【0037】
また、固定軸5a及び回転管5bは、導電性を有する材料、例えば、金属材料により形成されており、一例として、固定軸5aは金属製の丸棒であり、回転管5bは金属製の円筒管である。ただし、上支持板2c及び下支持板2dは、絶縁性を有する材料により形成されている。このような固定軸5a及び回転管5bは、固定軸5aの受け部分と回転管5bの下端とが密接して電気的に接続されており、固定軸5aの下端がタップ接続用の端子として機能する。このとき、回転管5bは付勢部材5cにより付勢され、その下端が固定軸5aの受け部分に密接されている。このため、回転管5bを回転可能に保持しながら、固定軸5aと回転管5bとの電気的な接続を良好に維持することができる。
【0038】
可動電極体6は、図4に示すように、固定電極5に接触する二個の可動電極6a、6bと、それらの可動電極6a、6bを回転可能に挟持する一対の支持板6c、6d(図1及び図2参照)と、それらの支持板6c、6dを保持する保持部材6eと、その保持部材6eを固定電極5側に押す押圧部材6fと、その押圧部材6fを収容する筐体6gとを備えている。
【0039】
二個の可動電極6a、6bは、図1及び図2に示すように、一対の支持板6c、6dを略垂直に貫通する固定軸31と、その固定軸31を中心として回転可能な回転体32と、その回転体32に対して支持板6cを付勢するバネなどの付勢部材33とをそれぞれ有している。
【0040】
固定軸31は、一対の支持板6c、6dを貫通して回転体32及び付勢部材33の内部を通り、一対の支持板6c、6dに固定されて立設されている。この固定部材としては、例えば、ナットなどが用いられる。なお、固定軸31の上端部は、付勢部材33用のストッパプレートとして機能する。
【0041】
回転体32は、円盤状に形成されており、その内部の固定軸31を中心として回転可能に一対の支持板6c、6dの間に設けられている。この回転体32は、固定軸31の延伸方向に沿って付勢部材33により支持板6cと共に下方に付勢されている。この付勢部材33としては、例えば、コイルスプリングなどが用いられる。この回転体32の回転により、固定電極5と可動電極体6との接触箇所の摩耗を低減することができる。
【0042】
なお、前述の固定軸31と回転体32との隙間には、油が供給されているため、固定軸31と回転体32との間には、油が介在している。この油は、回転体32の回転抵抗を小さくするものである。これにより、前述の固定電極5における回転管5bの回転抵抗の減少に加え、回転体32の回転抵抗も小さくなり、固定電極5に接触しながら回転する可動電極体6の回転が滑らかになるので、タップ切替動作時にリバウンドの発生を確実に抑止することができ、さらに、動作音を確実に小さくすることができる。
【0043】
また、固定軸31及び回転体32は、導電性を有する材料、例えば、金属材料により形成されており、一例として、固定軸31は金属製の丸棒であり、回転体32は金属製の円板である。この回転体32は、その直径が固定電極5の直径よりも大きくなるように形成されているが、これに限られるものではない。
【0044】
一対の支持板6c、6dは、一角の先端がカットされた略三角形状にそれぞれ形成されている(図4参照)。これらの支持板6c、6dは、導電性を有する材料、例えば、金属材料により形成されており、一例として、二枚の支持板6c、6dは金属製の平板である。このような一対の支持板6c、6dは各付勢部材33の付勢力により二個の可動電極6a、6bを挟持してそれらに接触しており、第1の可動電極6aと第2の可動電極6bとを電気的に接続している。
【0045】
保持部材6eは、図4に示すように、筐体6g内に摺動可能に設けられおり、押圧部材6fにより固定電極5側に付勢されている。このため、保持部材6eは各固定電極5に一対の支持板6c、6dを介して二個の可動電極6a、6bを押し付けることになる。この保持部材6eとしては、例えば、丸棒などが用いられる。また、押圧部材6fとしては、例えば、コイルスプリングなどが用いられる。
【0046】
筐体6gは、管状の筐体であってその末端が閉じられたものであり、その筐体6gの内部には、押圧部材6f及び保持部材6eがその順番で入れられている。この筐体6gは、回転軸3に貫通させて設けられており、各可動電極6a、6bが隣接する固定電極5間の凹部に嵌まる位置で固定されている。このように筐体6gが回転軸3に設けられるため、可動電極体6は回転軸3の回転と共に同じ方向に回転することになる。例えば、可動電極体6はタップ上げを行う場合に反時計周りに回転し、タップ下げを行う場合には時計周りに回転する。
【0047】
次に、各固定電極5と変圧器のタップとの接続について説明する。なお、タップは、変圧器の一次巻線に沿う接続ポイント(接点)のことである。このタップの切り替えにより巻数比が可変となり、出力電圧を調整することができる。
【0048】
図5に示すように、各固定電極5は、二つの固定電極5を一組とし、一組の固定電極5を同じ一つのタップに配線により電気的に接続することで、複数のタップT1〜T6に電気的に接続されている。なお、図5では、変圧器41の一次側の巻線42に沿う6個のタップT1〜T6が存在している。これらのタップT1〜T6間の接続がタップ切替装置1の可動電極体6により切り替えられる。
【0049】
ここで、一つのタップに対して一組の二つの固定電極5が接続されているが、両端に位置する二組の固定電極5では、一組の固定電極5の両方が直接同じタップに電気的に接続されており、その他の組の固定電極5では、一組の固定電極5の一方は直接、その他方は抵抗(抵抗器)Rを介して同じタップに電気的に接続されている。ここで、両端の二組以外の組において、一組の固定電極5の一方を第1の固定電極5とし、その他方を第2の固定電極5とすると、第1の固定電極5はそのまま一つのタップに接続されており、第2の固定電極5は抵抗Rを介して同じタップに接続されている。これは各タップT2〜T5で共通である。さらに、第1の固定電極5と第2の固定電極5は各組にわたって交互に並ぶように設けられている。
【0050】
次に、前述のタップ切替装置1が行うタップ切替動作について説明する。
【0051】
タップ切替を行う前には、図3に示すように、フック21は定常状態の位置であるホームポジションに位置している。このとき、図4に示すように、可動電極体6は、第1の可動電極6aが、タップT1に接続された一組の固定電極5の両方に当接しており、さらに、第2の可動電極6bが、タップT2に接続された一組の固定電極5の両方に当接している状態である。このときのタップ間の接続状態は、図6(a)に示すように、タップT1とタップT2とが接続されており、さらに、一つの抵抗Rを介して接続されている状態である。
【0052】
この状態で、図7に示すように、第1の駆動部4bのソレノイド24に電力が供給されると、ソレノイド24が駆動し、プランジャ23がソレノイド24側に引き込まれ、支持リンク22がソレノイド24側に移動していく。このとき、支持リンク22上のフック21が歯車4aの歯11に当接してその歯11をソレノイド24側に押し、回転軸3が反時計周りに回転し始める。これに応じて、回転軸3に連結された可動電極体6は、図4に示す状態から、反時計周りに回転し、図8に示すように、第1の可動電極6aが、タップT1に接続された一組の固定電極5の片方に当接しており、さらに、第2の可動電極6bが、タップT2に接続された一組の固定電極5の片方に当接している状態となる。このときのタップ間の接続状態は、図6(b)に示すように、タップT1とタップT2とが抵抗Rを介さずに接続されている状態である。
【0053】
図7に示す状態から、さらに、図9に示すように、支持リンク22がソレノイド24側に移動すると、支持リンク22上のフック21が歯車4aの歯11をソレノイド24側に押し、回転軸3が反時計周りにさらに回転する。これに応じて、可動電極体6は、図8に示す状態から、反時計周りに回転し、図10に示すように、第1の可動電極6aが、タップT1に接続された一組の固定電極5の片方及びタップT2に接続された一組の固定電極5の片方に当接しており、第2の可動電極6bが、タップT2に接続された一組の固定電極5のもう片方及びタップT3に接続された一組の固定電極5の片方に当接している状態となる。このときタップ間の接続状態は、図6(c)に示すように、タップT1とタップT2とが接続されており、さらに、一つの抵抗Rを介して接続されている状態であって、タップT2とタップT3とが一つの抵抗Rを介して接続されている状態である。
【0054】
図9に示す状態から、さらに、図11に示すように、支持リンク22がソレノイド24側に移動すると、支持リンク22上のフック21が歯車4aの歯11をソレノイド24側に押し、回転軸3が反時計周りにさらに回転する。これに応じて、可動電極体6は、図10に示す状態から、反時計周りに回転し、図12に示すように、第1の可動電極6aが、タップT2に接続された一組の固定電極5の片方に当接しており、第2の可動電極6bが、タップT3に接続された一組の固定電極5の片方に当接している状態となる。このときのタップ間の接続状態は、図6(d)に示すように、タップT2とタップT3とが二つの抵抗Rを介して接続されている状態である。
【0055】
図11に示す状態から、さらに、図13に示すように、支持リンク22の移動が進み、その支持リンク22上のフック21が所定位置まで到達すると、支持リンク22の移動が停止し、それに伴って回転軸3の回転も停止する。このとき、可動電極体6は、図12に示す状態から、反時計周りに回転し、図14に示すように、第1の可動電極6a、がタップT2に接続された一組の固定電極5の両方に当接しており、第2の可動電極6bが、タップT3に接続された一組の固定電極5の両方に当接している状態となる。このときのタップ間の接続状態は、図6(e)に示すように、タップT2とタップT3とが接続されており、さらに、二つの抵抗Rを介して接続されている状態である。
【0056】
その後、第1の駆動部4bのソレノイド24に対する電力供給が停止されると、ソレノイド24の駆動が停止し、図15に示すように、プランジャ23及び支持リンク22が復帰部材25により元の定常状態の位置に移動していく。これに応じて、支持リンク22上のフック21は歯車4aの歯11から離れ、その歯11に隣接する歯11に当接する。この状態でも、支持リンク22の移動は進行し、フック21はその歯11を避けるようにして逃げ、その後、歯車4aから離れ、付勢部材21dにより規制ピン21bに当接して元の位置に復帰する。このように、フック21はプランジャ23及び支持リンク22の移動を妨げないため、プランジャ23及び支持リンク22は元の定常位置まで復帰することが可能である。
【0057】
最後に、図16に示すように、プランジャ23及び支持リンク22が元の定常状態の位置まで到達すると、支持リンク22上のフック21も元の位置に戻る。この復帰動作では(図15及び図16参照)、フック21は歯車4aの歯11に引っかかることがないため、回転軸3が回転することはなく、もちろん可動電極体6も回転することはない。
【0058】
このようなタップ切替動作により、可動電極体6は、回転軸3の回転に応じて、図3に示す初期位置、すなわちタップT1とタップT2が接続された位置から、図14に示す所定角度だけ回転した位置、すなわちタップT2とタップT3が接続された位置で停止することになる(タップ上げの切替動作)。このようにして、タップT1とタップT2との接続が、タップT2とタップT3との接続に切り替えられる。このタップ切替動作では、抵抗Rが限流抵抗となるため、切替時に急激な電圧変化の発生を抑止し、大電流が流れることを防止することができる。なお、他のタップT4〜T6の切替動作も前述と同じであり、また、第2の駆動部4cにより時計回りに可動電極体6が移動する場合にも(タップ下げの切替動作)、タップ間の接続の流れが逆になるが、同様なタップ切替動作が行われる。
【0059】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、可動電極体6の二個の可動電極6a、6bは、隣接する固定電極5間の凹部に嵌まって静止し、その静止状態が押圧部材6fによる押圧力により保持される。このとき、可動電極6aは押圧部材6fによる押圧力により、隣接する固定電極5間の凹部に押されている。これにより、タップ間の接続状態を保持する複雑な接点保持機構が無くても、タップ間の接続状態を保持することが可能になるので、タップ切替装置1の簡略化及び小型化を実現することができる。また、タップ切替動作中、二個の可動電極6a、6bは固定電極5に押圧部材6fによる押圧力により当接しており、可動電極体6の静止中及び回転中に、可動電極6a、6bと固定電極5との電気的な接続状態を良好に維持することができる。さらに、第1の駆動部4bや第2の駆動部4cにモータを用いないでソレノイド24を用いることによって、モータを用いた場合に比べ、駆動機構を減少させて簡易な構成を実現しつつ、高速かつ静かにタップ切替を行うことができる。
【0060】
また、万一、タップ切替動作途中に操作電源が喪失しても、可動電極体6の二個の可動電極6a、6bが固定電極5の外周突端で静止することはなく、必ず固定電極5間の凹部に挟まった状態で静止することになる。この静止状態では(例えば、図6(a)、図6(c)、図6(d)参照)、タップ間の接続は、そのタップ間が抵抗Rを介さずにそのまま接続されている状態を含んでいるため、電流が抵抗Rに長時間流れ続けることはなく、短時間定格の容量を有する抵抗Rを用いることができる。
【0061】
また、抵抗Rが一つのタップT2〜T5に対して一個ずつ設けられており、タップ切替時に直列使用となるため、抵抗Rの劣化を抑止することができる。さらに、二個の可動電極6a、6bは二個の付勢部材33による付勢力により一対の支持板6c、6dにより挟持されている。これにより、二個の可動電極6a、6bを回転可能に保持しながら、それらの可動電極6a、6bの電気的な接続を良好に維持することができる。
【0062】
また、固定電極5の回転管5bが回転し、さらに、その回転管5と接触する回転体32も回転するため、回転管5bと回転体32との接触箇所の摩耗、すなわち固定電極5と可動電極6a、6bとの接触箇所の摩耗を低減することができる。
【0063】
さらに、固定電極5に存在する油及び可動電極6a、6bに存在する油は、可動電極6a、6bが固定電極5に接触するときの衝撃を緩和する油として機能する。これにより、可動電極体6の回転が滑らかになるので、タップ切替動作時のリバウンド発生を抑止することができ、さらに、動作音を小さくすることができる。
【0064】
このようなタップ切替装置1の簡略化及び小型化により、低コストで省スペースなタップ切替装置1を得ることができる。したがって、前述のタップ切替装置1を採用することで、柱上に設置しやすい柱上変圧器を形成することが可能となり、さらに、安価で静音性が高く、省スペースの柱上変圧器を得ることができる。
【0065】
なお、本発明に係る前述の実施形態は例示であり、発明の範囲はそれらに限定されない。前述の実施形態は種々変更可能であり、例えば、前述の実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素が削除されても良く、さらに、異なる実施形態に係る構成要素が適宜組み合わされても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 タップ切替装置
2 本体
2a 天板
2b 底板
2c 上支持板
2d 下支持板
2e 支柱
3 回転軸
3a 軸受部
3b 軸受部
4 回転駆動部
4a 歯車
4b 第1の駆動部
4c 第2の駆動部
5 固定電極
5a 固定軸
5b 回転管
5c 付勢部材
6 可動電極体
6a 可動電極
6b 可動電極
6c 支持板
6d 支持板
6e 保持部材
6f 押圧部材
6g 筐体
11 歯
21 フック
21a 支持ピン
21b 規制ピン
21c 固定ピン
21d 付勢部材
22 支持リンク
22a 補助板
22b 棒材
23 プランジャ
24 ソレノイド
25 復帰部材
26 受け部材
27 ストッパプレート
28 支持部材
31 固定軸
32 回転体
33 付勢部材
41 変圧器
42 巻線
R 抵抗
T1 タップ
T2 タップ
T3 タップ
T4 タップ
T5 タップ
T6 タップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器の巻線に沿う複数のタップ間の接続を切り替えるタップ切替装置であって、
軸心を中心として回転可能に設けられた回転軸と、
前記回転軸を回転させる回転駆動部と、
前記回転軸を中心とする円周上に一定間隔で設けられた円柱状の複数の固定電極と、
前記回転軸の回転により前記複数の固定電極に順次接触しながら前記回転軸を中心として回転する可動電極体と、
を備え、
前記複数の固定電極は、
隣接する二つの固定電極が一組とされ、両端に位置する二組の固定電極では一組の固定電極の両方が直接同じタップに電気的に接続され、その他の組の固定電極では一組の固定電極の一方が直接、その他方が抵抗を介して同じタップに電気的に接続され、前記複数のタップに電気的に接続されており、
前記可動電極体は、
隣接する二組の前記固定電極に接触し、互いに電気的に接続された円盤状の二個の可動電極と、
隣接する二組の前記固定電極に対して前記二個の可動電極を押し付ける押圧部材と、
を有していることを特徴とするタップ切替装置。
【請求項2】
前記複数の固定電極は、
固定軸と、
前記固定軸を中心として回転可能に設けられ、前記可動電極と接触する回転管と、
をそれぞれ有していることを特徴とする請求項1記載のタップ切替装置。
【請求項3】
前記固定電極は、
前記固定軸と前記回転管との間に介在し、前記可動電極が前記固定電極に接触するときの衝撃を緩和する油を有していることを特徴とする請求項2記載のタップ切替装置。
【請求項4】
前記二個の可動電極は、
固定軸と、
前記固定軸を中心として回転可能に設けられ、前記固定電極と接触する回転体と、
をそれぞれ有していることを特徴とする請求項1、2又は3記載のタップ切替装置。
【請求項5】
前記可動電極は、
前記固定軸と前記回転体との間に介在し、前記可動電極が前記固定電極に接触するときの衝撃を緩和する油を有していることを特徴とする請求項4記載のタップ切替装置。
【請求項6】
前記可動電極体は、前記二個の可動電極を回転可能に挟持して電気的に接続する一対の支持板を有しており、
前記二個の可動電極は、前記回転体に対して前記一対の支持板の一方を付勢する付勢部材をそれぞれ有していることを特徴とする請求項4又は5記載のタップ切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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