説明

タワシ

【課題】不織布部分の表面に印刷される画像を保護しながら、清掃性能に優れたタワシを提供する。
【解決手段】合成繊維を立体的に集合した不織布部が備えられたタワシにおいて、前記不織布部の表面に画像をインクジェット式プリンタによりプリントし、更にこの画像がプリントされた前記不織布部の表面にコーティング剤を噴霧して、前記画像を保護コーティングすると共に、前記コーティング剤が固化してなる粒状体を前記不織布部の表面側に多数突設させ、清掃性能を向上させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも清掃面の一つが不織布から形成されているタワシに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、この種のタワシは、プラスチックなどの合成繊維を立体的に集合した不織布から構成されるか、若しくはスポンジ体の一側面に前述の不織布を貼り付けて、不織布部とスポンジ部から構成されたものが一般的である。(特許文献1参照)
ところで、本願の出願人は、以上のタワシの外観を向上させるために、不織布部分の清掃面となる表面に所望の画像を印刷したタワシを開発しているのであるが、以上のタワシの不織布部分の表面に単に画像を印刷しただけでは、タワシの使用に伴い、その印刷が剥げるなどの不具合があるし、場合によっては清掃効果が低下する不具合も考えられる。
【特許文献1】特開2002−127252
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上の実情に鑑みて開発したもので、目的とするところは、不織布部分の表面に印刷される画像を保護しながら、清掃性能に優れたタワシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、合成繊維を立体的に集合した不織布部が備えられたタワシにおいて、前記不織布部の表面に画像をプリントし、更にこの画像がプリントされた前記不織布部の表面にコーティング剤を噴霧して、前記画像を保護コーティングすると共に、前記コーティング剤が固化してなる粒状体を前記不織布部の表面側に多数突設していることを特徴とする。
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のタワシにおいて、画像がインクジェット式プリンタによりプリントされていることを特徴とする。
また請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のタワシにおいて、粒状体の粒径が、0.6ミクロン以上で200ミクロン以下の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明によれば、不織布部の表面側にプリントされた画像をコーティング剤によりコーティングしたことにより、タワシの使用に伴い前述の画像が不用意に剥げ落ちるのを抑制することが出来、しかも前記コーティング剤が固化してなる粒状体を前記不織布部の表面側に多数突設したことにより、不織布部の表面側にプリントされている画像がタワシの使用に伴い不用意に剥げ落ちるのを確実に抑制することが出来るのは勿論のこと、タワシの使用に際しては、不織布部自体による一般的な汚れ落とし作用に加えて、この不織布部の表面に形成されている多数の粒状体によっても汚れ落とし作用が促進されるので、全体としてスムーズにしかも効率よく汚れを落とすことが出来る。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、画像毎に小ロットのタワシを安価に提供することが出来る。
【0006】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、汚れを落とす性能がより良好である。即ち、例えば粒状体の粒径が例えば500ミクロン以上となると粒状体が目立って、画像に悪影響を及ぼし、逆に0.5ミクロン以下であると、汚れを落とす性能が低下するのに対して、0.6〜200ミクロンであると汚れを落とす性能が良くてしかも粒状体が目立つこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のタワシを説明する。
【0008】
先ず図1は、本発明にかかるタワシの概略斜視図、図2は、同、要部を拡大して示す斜視図。 図3は、同じく要部を拡大して示す説明図である。
そして図において符号1で示すタワシ本体は、基本的には、ナイロン製の合成繊維20を立体的に集合してなる板状の不織布部2と、合成樹脂材料より形成された発砲材を板状にカットしてなるスポンジ部3から構成されて、スポンジ部3の一側面に不織部2の一側面を接着することで直方体に形成されている。
図に示す実施形態の不織布部2は、極細の合成樹脂繊維20から形成されており、この不織布部2の厚さはスポンジ部3の厚さの約5分の1としている。
以上の構成からなるタワシ1において、図に示す実施形態では、不織布部3の表面に、先ずインクジェット式のプリンタを用いて、水性顔料により所望の画像4をプリントする。
続いて、この画像4が印刷された不織布部3の表面に液状のコーティング剤5を噴霧装置により所定量噴霧して、画像4をコーティング剤5でコーティングすると共に、前述のコーティング剤5の噴霧により、不織布部3の表面、詳しくは不織布部2の表面を構成している合成繊維20に粒状に付着させ、この粒状に付着したコーティング剤の硬化によって、10ミクロン程度の粒径の多数の粒状体50を前記合成繊維20の表面に突出させている。
【0009】
実施形態では、コーティング剤5として、エマルジョンタイプのアクリル系コーティング液、具体的には、コニシ株式会社製の商品名「アクアリンカーSU710」を用い、このコーティング剤5を噴霧装置により1平方メートル当たり100g噴霧して、不織布部2の表面、換言すれば不織布部2の表面を形成している合成繊維20にプリントされている画像4をコーティング剤5でコーティングすると共に、この合成繊維20に、平均粒径が10ミクロン程度の大きさの粒状体50を多数突設させている。
斯くして以上のタワシ1では、不織布部3の表面側にプリントされている画像4がコーティング剤5により保護されていることから、前述の画像5がタワシの使用に伴って不用意に剥げ落ちるのが抑制される。
また以上のタワシ1の使用に際しては、不織布部2自体による一般的な汚れ落とし作用に加えて、この不織布部2の表面に形成されている多数の粒状体50によっても汚れ落とし作用が促進されるので、全体としてスムーズにしかも効率よく汚れを落とすことが出来る。
次にコーティング剤の塗布量(噴霧量)が異なるタワシを形成して、タワシの使用に伴う画像4の耐摩耗性能とタワシの研磨性能を試験した結果を表1に示す。
試験に用いるタワシは、コーティング剤の噴霧量が、0のもの(以下、タワシAと云う。)、1平方メートル当たり40g(以下、タワシBと云う。)、1平方メートル当たり60g(以下、タワシCと云う。)、1平方メートル当たり80g(以下、タワシDと云う。)、1平方メートル当たり100g(以下、タワシEと云う。)とした5種類のものを用意した。
そして画像4の耐摩耗性能の試験は、マーチンデール型試験装置を用い、JIS規格800番手のサンドペーパーに対して用意した各タワシに所定圧力(9キロパスカル)を加えた状態で周期的な平面運動により100回擦り合わせて行い、またタワシの研磨性能の試験は、同じくマーチンデール型試験装置を用い、黒色のケント紙に対して用意した各タワシに同じく所定圧力(9キロパスカル)を加えた状態で周期的な平面運動により100回擦り合わせて行なったものである。
表1では、画像4の耐摩耗性能の試験を行なった各タワシの画像4の磨耗を目視した結果と、各タワシの研磨性能試験を行なった後のケント紙の表面を目視した結果を、4種類の評価即ち、評価×、評価△、評価○、評価◎で示したものである。
【0010】
【表1】

表1からも明らかなように、コーティングが施されていないタワシAでは、画像4の耐磨耗性能の試験後、画像4を形成する顔料の合成繊維20からの剥離が激しくて、画像4が崩れてしまっていた。(評価×)
また研磨性能の試験では、研磨性能が悪く、目視からではケント紙の表面に研磨された痕跡をほとんど見ることが出来なかった。(評価×)

次にコーティング剤の噴霧量が1平方メートル当たり40gのタワシBでは、画像4の耐磨耗性能の試験後、画像4を形成する顔料の合成繊維20からの剥離が見られ、画像4の崩れも結構見られた。(評価×)
また研磨性能の試験後、ケント紙の表面には研磨された痕跡をわずか見ることが出来た。(評価△)

コーティング剤の噴霧量が1平方メートル当たり60gのタワシCでは、画像4の耐磨耗性能の試験後、画像4を形成する顔料の合成繊維20からの剥離は少なくて、画像4の崩れが小さかった。(評価○)
また研磨性能の試験後、ケント紙の表面には研磨された痕跡を見ることが出来た。(評価△)

コーティング剤の噴霧量が1平方メートル当たり80gのタワシDでは、画像4の耐磨耗性能の試験後、画像4を形成する顔料の合成繊維20からの剥離は少なく、画像4の崩れも小さかった。(評価◎)
また研磨性能の試験後、ケント紙の表面には研磨された痕跡をかなり見ることが出来た。(評価○)

コーティング剤の噴霧量が1平方メートル当たり100gのタワシEでは、画像4の耐磨耗性能の試験後、画像4を形成する顔料の合成繊維20からの剥離は少なく、画像4の崩れも小さかった。(評価◎)
また研磨性能の試験後、ケント紙の表面には研磨された痕跡をかなり見ることが出来た。(評価◎)
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかるタワシの一実施形態を示す概略斜視図。
【図2】同、要部を拡大して示す斜視図。
【図3】同、要部を拡大して示す説明図。
【符号の説明】
【0012】
1 タワシ本体
2 不織布部
20 合成繊維
3 スポンジ部
4 画像
5 コーティング剤
50 粒状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維を立体的に集合した不織布部が備えられたタワシにおいて、前記不織布部の表面に画像をプリントし、更にこの画像がプリントされた前記不織布部の表面にコーティング剤を噴霧して、前記画像を保護コーティングすると共に、前記コーティング剤が固化してなる粒状体を前記不織布部の表面側に多数突設していることを特徴とするタワシ。
【請求項2】
画像がインクジェット式プリンタによりプリントされていることを特徴とする請求項1に記載のタワシ。
【請求項3】
粒状体の粒径が、0.6ミクロン以上で200ミクロン以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のタワシ。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−165526(P2009−165526A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4106(P2008−4106)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(391007758)キクロン株式会社 (7)
【Fターム(参考)】