説明

タンク形真空遮断器

【課題】接地タンク内の真空インタラプタ両端部の冷却特性を向上し、通電容量の増加を可能にしたタンク形真空遮断器を提供する。
【解決手段】接地タンク1内に、真空インタラプタ2と、可動側導体23及び固定側導体24と、可動側コンタクトケース9及び固定側コンタクトケース13と、可動側ブッシング端子25及び固定側ブッシング端子26と、絶縁支持筒11及び絶縁支持体14と、可動側支持板28及び固定側支持板29を備えた真空遮断器において、可動側導体23、可動側コンタクトケース9を中空に形成して連通させ、さらに可動側ブッシング端子25及び可動側支持板28に接地タンク1外部への通気口部25a、28aを設け、可動側支持板の通気口部28aから絶縁支持筒11内、可動側コンタクトケース9内、可動側導体23内、可動側ブッシング端子の通気口部25aを経て大気に至る通気路を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力設備の保護用として、変電所内で使用されている屋外用等のタンク形真空遮断器に関し、特にタンク内の冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、タンク形真空遮断器においては、絶縁媒体が密閉された接地タンク内に、遮断部を構成する真空インタラプタが収納されている。例えば特許文献1に記載のタンク形真空遮断器は、真空インタラプタの両端に設けられたコンタクトケースにそれぞれ絶縁性の支持物を接続することで、真空インタラプタを接地タンクに固定している。
【0003】
しかしながら上記特許文献1中の図1に記載のタンク形真空遮断器の構成においては、通電時において真空インタラプタの両端に設けられたコンタクトケースの温度上昇が厳しくなるため、真空遮断器の通電容量増加の妨げとなっていた。また、コンタクトケースは絶縁ガスが密閉されたタンク内に配置されているため、タンク内の絶縁ガスが温度平衡状態では絶縁ガスの対流等も期待できず、コンタクトケースを効果的に冷却することができない構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−306701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の課題を解決するために、接地タンク内の真空インタラプタ両端部の冷却効果が高く、真空遮断器の通電容量の増加を可能にしたタンク形真空遮断器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、絶縁媒体を密封した接地タンクと、前記接地タンク内に絶縁支持され、一対の電極を備えた真空インタラプタと、前記タンクの上方に延びた1対のブッシング内に配置された可動側及び固定側導体と、前記可動側導体の下端を前記真空インタラプタの可動側電極に電気的に接続する可動側コンタクトケースと、前記固定側導体の下端を前記真空インタラプタの固定側電極に電気的に接続する固定側コンタクトケースと、前記可動側及び固定側導体の上端とそれぞれ接続する可動側及び固定側ブッシング端子と、前記真空インタラプタの可動側電極を操作するために前記接地タンク外の操作器に接続された絶縁ロッドと、前記真空インタラプタの可動側及び固定側コンタクトケースを前記接地タンクに絶縁支持する絶縁支持筒及び絶縁支持体と、前記接地タンクの一部を形成すると共に、前記絶縁支持筒及び前記絶縁支持体を前記接地タンクに固定するための可動側及び固定側支持板を備えた真空遮断器において、前記可動側導体と前記可動側コンタクトケースを中空に形成して連通させ、さらに前記可動側ブッシング端子及び前記可動側支持板に前記接地タンク外部への通気口部を設け、前記可動側支持板の通気口部から前記絶縁支持筒内、前記可動側コンタクトケース内、前記可動側導体内、前記可動側ブッシング端子の通気口部を経て大気に至る通気路を形成したことを特徴とする。
【0007】
好ましくは、前記可動側ブッシング端子及び前記可動側支持板の通気口部に水滴の侵入を阻止するフィルタを設けたことを特徴とする。
【0008】
また、前記固定側導体、前記固定側コンタクトケース及び前記絶縁支持体を中空に形成して連通させ、さらに前記固定側ブッシング端子及び前記固定側支持板に前記接地タンク外部への通気口部を設け、前記固定側支持板の通気口部から前記固定側絶縁支持体内、前記固定側コンタクトケース内、前記固定側導体内、前記固定側ブッシング端子の通気口部を経て大気に至る通気路を形成したことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記固定側ブッシング端子及び前記固定側支持板の通気口部に水滴の侵入を阻止するフィルタを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のタンク形真空遮断器の請求項1によれば、絶縁支持筒内から可動側コンタクトケース内を介して可動側ブッシング端子に至るまでに接地タンク外部の大気が通る通気路を形成し、該大気を自然対流させることで、高温部となる真空インタラプタの端部を効率よく冷却することができ、ひいては遮断器の通電容量の増加を図ることができる。
【0011】
また、請求項2によれば、可動側ブッシング端子及び可動側支持板の大気と連通する通気口部にフィルタを設けたので、雨水等が接地タンク内の可動側に形成した通気路に浸入することを防止できる。
【0012】
また、請求項3によれば、固定側導体及び絶縁支持体を中空に形成して連通し、絶縁支持体内から前記固定側コンタクトケース内を介して固定側ブッシング端子に至るまでに接地タンク外部の大気が通る通気路を形成し、該大気を自然対流させることで、真空インタラプタの両端部における冷却効果が期待でき、よりいっそう遮断器の通電容量の増加を図ることができる。
【0013】
さらに、請求項4によれば、固定側導体及び絶縁支持体の大気と連通する通気口部にフィルタを設けたので、雨水等が接地タンク内の固定側に形成した通気路に浸入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るタンク形真空遮断器を示す正面断面図である。
【図2】図1の可動側導体部分の拡大縦断面図である。
【図3】図1の取り付け板周辺の拡大縦断面図である。
【図4】本発明に係るタンク形真空遮断器の他の実施例を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
以下、本発明を適用した実施例につき適宜図面を用いて説明する。図1において、接地タンク1内には0.15〜0.5MPa程度の絶縁性の高圧ガスが封入されている。接地タンク1の水平方向の両端には可動側支持板28、固定側支持板29が取り付けられており、接地タンク1内を気密に保持している。なお高圧ガスには、例えば乾燥空気、SFガス等を用いることが出来る。
【0016】
接地タンク1内には真空インタラプタ2が収納されている。真空インタラプタ2の内部には、可動側電極3及び固定側電極4が対向配置されている。さらに、これら可動側及び固定側電極にはそれぞれ、可動リード5、固定リード6が固着されている。
【0017】
真空インタラプタ2はその両端を可動側端板7及び固定側端板12によって封止されると共に、可動側端板7と可動リード5との間に、外周側が真空となるベローズ8を設けることで、内部が真空状態に保たれている。
【0018】
可動側端板7は、中空の可動側コンタクトケース9に支持されている。さらに、可動側コンタクトケース9は中空の金属性のサポート10及び絶縁支持筒11を介して可動側支持板28に支持されている。
【0019】
一方、真空インタラプタ2の固定側端板12は、固定側コンタクトケース13及び絶縁支持体14を介して固定側支持板29に支持されている。
【0020】
可動リード5は、可動側コンタクトケース9に挿通され、リングコンタクト15を介して可動側コンタクトケース9と電気的に接続される。さらに、可動リード5はサポート10内および絶縁支持筒内11を挿通した絶縁ロッド16と連結されている。絶縁ロッド16は接地タンク1外部に配置された操作器に接続され、可動側電極3を操作する。なお、リングコンタクト15にはスリットが切られているため、可動側コンタクトケース9内とサポート10内は通気状態にある。
【0021】
接地タンク1内の上面には、2つの円筒状のブッシング取付台17、18が一体に形成され、ブッシング取付台17、18上にブッシング19、20がそれぞれ接地タンク1の外方向に傾斜した状態で取り付けられている。また、ブッシング取付台17、18の外周にはそれぞれ変流器21、22が配置されている。
【0022】
ブッシング19、20の内部には可動側導体23及び固定側導体24がそれぞれ配置されている。可動側導体23は中空状となっている。また、ブッシング19、20と可動側導体23、固定側導体24の間の空間には、接地タンク1内と同等の圧力の絶縁性ガスが封入されている。
【0023】
可動側導体23の下端は可動側コンタクトケース9に、上端は可動側ブッシング端子25にそれぞれ電気的に接続されている。一方、固定側導体24の下端は固定側コンタクトケース13に、上端は固定側ブッシング端子26にそれぞれ電気的に接続されている。また、図2に示すように、可動側ブッシング端子25の大気と連通する通気口部25aにはフィルタ27を設けている。
【0024】
このような構成において、真空遮断器の投入時には、可動側ブッシング端子25、可動側導体23、可動側コンタクトケース9、リングコンタクト15、可動リード5、可動側電極3の順に通電経路が形成される。さらに、真空インタラプタ2の固定側の通電経路は、固定側電極4、固定リード6、固定側コンタクトケース13、固定側導体24、固定側ブッシング端子26の順に通電される。
【0025】
可動側導体23内、ベローズ8の内周側、可動側コンタクトケース9内、サポート10内、及び絶縁支持筒11内は互いに連通されている。さらに絶縁支持筒11内は、可動側支持板28の通気口部28aに設けられたフィルタ30を介して、ハウジング(図示せず)内と連通されている。ハウジング内は可動側電極3をはじめとする可動部の操作器系統が配置されるとともに、外部空気が流入可能な大気圧空間となっている。このため、絶縁支持筒11内より可動側ブッシング端子25に至る連通部は、接地タンク1外部の大気が流れる通気路となっている。
【0026】
具体的には、接地タンク1内部の絶縁性ガスに比べて冷たい、接地タンク1外部の大気が、ハウジング内よりフィルター30を介して絶縁支持筒11内に流入し、サポート10内、可動側コンタクトケース9内を経てベローズ8の内周側の順に流れる。
【0027】
可動側コンタクトケース9周辺は温度上昇が厳しく、熱せられた状態にあるので、タンク外部から流入した大気は、可動側コンタクトケース9周囲の熱によって温められる。温められた大気は、可動側導体23内部を通って上方へと流れ、可動側ブッシング端子25に設けられた通気口部25aより放出される。このときに生じる上昇風により、可動側コンタクトケース9及びその周囲をスムーズに冷却する構成としている。
【0028】
以上述べたように、本実施例に係るタンク形真空遮断器によれば、絶縁支持筒11から可動側コンタクトケース9を介して可動側ブッシング端子25に至るまでに接地タンク1外部の大気が通る通気路を形成し、該大気を自然対流させることで、高温部となる真空インタラプタ2の端部を効率よく冷却することができ、ひいては遮断器の通電容量の増加を図ることができる。
【0029】
また、可動側ブッシング端子25の通気口部25aにフィルタ27を、可動側支持板28の通気口部28aにフィルタ30をそれぞれ設けたので、雨水等が接地タンク1内の可動側に形成した通気路に浸入することを防止できる。
【実施例2】
【0030】
次に本発明の他の実施例につき図4に基づき説明する。なお、実施例1と同様の構成については、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0031】
本実施例では、図4に示すように、固定側導体24、固定側コンタクトケース13及び絶縁支持体14内を中空形成し、互いに大気を連通させた構成としている。さらに絶縁支持体14は固定側支持板29に直接取り付けられるとともに、絶縁支持体14内は取付板29の通気口部29aに設けられたフィルタ31を介して、接地タンク1外部と連通されている。こうすることで、可動側と同様に、接地タンク1内の絶縁性ガスよりも比較的冷たい、接地タンク1外部の大気が絶縁支持体14側からも流入する。
【0032】
流入した大気は高温部となる固定側コンタクトケース13の周囲で温められて上昇気流となり、固定側導体24内を通過した後、固定側ブッシング端子26に設けられた通気口部(図示せず)より接地タンク1外部に放出される。このような上昇気流により、固定側コンタクトケース13の周囲が効率よく冷却される。なお、固定側ブッシング端子26の通気口部は、可動側ブッシング端子の通気口部25aと同様の構造のため図示を省略する。
【0033】
以上述べたように本実施例によれば、固定側導体24及び絶縁支持体14を中空に形成して連通し、絶縁支持体14内から固定側コンタクトケース13内を介して固定側ブッシング端子26に至るまでに接地タンク1外部の大気が通る通気路を形成し、該大気を自然対流させることで、真空インタラプタ2両端における冷却効果が期待でき、実施例1に比べてよりいっそう遮断器の通電容量の増加を図ることができる。
【0034】
また、固定側ブッシング端子26の通気口部(図示せず)及び固定側支持板29の通気口部29aにフィルタ31を設けたので、雨水等が接地タンク1内の固定側に形成した通気路に浸入することを防止できる。
【符号の説明】
【0035】
1 接地タンク
2 真空インタラプタ
8 ベローズ
9 可動側コンタクトケース
10 サポート
11 絶縁支持筒
13 固定側コンタクトケース
14 絶縁支持体
16 絶縁ロッド
23 可動側導体
24 固定側導体
25 可動側ブッシング端子
26 固定側ブッシング端子
25a、28a、29a 通気口部
27、30、31 フィルタ
28 可動側支持板
29 固定側支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁媒体を密封した接地タンクと、
前記接地タンク内に絶縁支持され、一対の電極を備えた真空インタラプタと、
前記タンクの上方に延びた1対のブッシング内に配置された可動側及び固定側導体と、
前記可動側導体の下端を前記真空インタラプタの可動側電極に電気的に接続する可動側コンタクトケースと、
前記固定側導体の下端を前記真空インタラプタの固定側電極に電気的に接続する固定側コンタクトケースと、
前記可動側及び固定側導体の上端とそれぞれ接続する可動側及び固定側ブッシング端子と、
前記真空インタラプタの可動側電極を操作するために前記接地タンク外の操作器に接続された絶縁ロッドと、
前記真空インタラプタの可動側及び固定側コンタクトケースを前記接地タンクに絶縁支持する絶縁支持筒及び絶縁支持体と、
前記接地タンクの一部を形成すると共に、前記絶縁支持筒及び前記絶縁支持体を前記接地タンクに固定するための可動側及び固定側支持板を備えた真空遮断器において、
前記可動側導体と前記可動側コンタクトケースを中空に形成して連通させ、
さらに前記可動側ブッシング端子及び前記可動側支持板に前記接地タンク外部への通気口部を設け、
前記可動側支持板の通気口部から前記絶縁支持筒内、前記可動側コンタクトケース内、前記可動側導体内、前記可動側ブッシング端子の通気口部を経て大気に至る通気路を形成したことを特徴とするタンク形真空遮断器。
【請求項2】
前記可動側ブッシング端子及び前記可動側支持板の通気口部に水滴の侵入を阻止するフィルタを設けたことを特徴とする請求項1に記載のタンク形真空遮断器。
【請求項3】
前記固定側導体、前記固定側コンタクトケース及び前記絶縁支持体を中空に形成して連通させ、
さらに前記固定側ブッシング端子及び前記固定側支持板に前記接地タンク外部への通気口部を設け、
前記固定側支持板の通気口部から前記固定側絶縁支持体内、前記固定側コンタクトケース内、前記固定側導体内、前記固定側ブッシング端子の通気口部を経て大気に至る通気路を形成したことを特徴とする請求項1に記載のタンク形真空遮断器。
【請求項4】
前記固定側ブッシング端子及び前記固定側支持板の通気口部に水滴の侵入を阻止するフィルタを設けたことを特徴とする請求項3に記載のタンク形真空遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−58312(P2013−58312A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194539(P2011−194539)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(512217570)明電T&D株式会社 (6)
【Fターム(参考)】