説明

タンク形真空遮断器

【課題】多大な手間を要していたCTの交換作業を大幅に簡素化できる新規なタンク形真空遮断器の提供。
【解決手段】環状の変成器40が取り付けられるタンク10のCT取付部11にフランジ51を介して碍管50を取り付けた真空遮断器100であって、前記碍管50のフランジ51の外径を前記変成器40の内径よりも小さく形成すると共に前記フランジ51の外周面に環状のカバー取付金具60を着脱自在に取り付け、当該カバー取付金具60に前記CT取付部11の変成器40を覆うCTカバー41を着脱自在に取り付ける。これによって、碍管50を取り外さなくとも変成器40の交換ができるため、従来多大な手間を要していた変成器40の交換作業を大幅に簡素化できる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変電所の屋外などに設置されるタンク形真空遮断器に係り、特に計器用変成器(以下、適宜「CT」と称す)の取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、変電所の配電盤などで使用されている真空遮断器(VCB)としては、例えば以下の特許文献1に示すような構造をしたタンク形真空遮断器がある。この種のタンク形真空遮断器は、図6に示すように、絶縁性を確保するための高圧の乾燥空気が封入された接地タンク10内に、遮断部である真空インタラプラ20を収容し、この真空インタラプラ20の両端にパイプ状の導体30、30を接続した構造となっている。
【0003】
そして、この導体30、30が通過する接地タンク10のCT取付部11,11に、それぞれ環状の計器用変成器であるCT(Current Transformer)40を上下多段(図の例では3段)に取り付けると共に、そのCT取付部11,11の端面に碍管50、50をそれぞれ取り付けることでこの導体30,30を絶縁しつつその全体を覆う構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−306701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記のような従来のタンク形真空遮断器にあっては、CT40が故障した場合や老朽化した場合には、これを新たなものに交換する必要があるが、その作業時には碍管50を一旦タンク10のCT取付部11から取り外さなければならないため、その交換作業は容易でない。
【0006】
すなわち、CT40を交換するためには、先ずCT40を風雨や飛来物から保護しているCTカバー41を碍管50のフランジから取り外してから、この碍管50をタンク10のCT取付部11から取り外した後、古いCT40をCT取付部11から取り外す。その後、このCT取付部11に新しいCT40を取り付けてから再度碍管50をCT取付部11の端面に取り付けた後、CTカバー41を碍管50に組み付けることになる。
【0007】
この際、碍管50をCT取付部11から取り外すとタンク10内が大気開放される状態となるため、予めタンク10内に充填された高圧の乾燥空気を放出しておき、CT交換後に再充填することになるが、その前に碍管50のシール面などからのガス漏れが無いことを確認するためにリーク試験を行う必要がある。リーク試験には、通常He(ヘリウム)ガスを使用し、タンク10内を真空引きしてからHeガスを封入して漏れが無いか確認することによって行う。この際、漏れがあればその部分を再度分解し、検査を行ったり、シールを新たなものに交換するなどの作業が行われる。そして、このリーク試験に合格したならば、タンク10内のHeガスを放出し、再度真空引きを行ってからそのタンク10内に新たな高圧の乾燥空気を封入することでCTの交換作業が終了する。
【0008】
このように従来のCTの交換作業は、(1)高圧の乾燥空気の放出、(2)古いCT40の取外し作業、(3)新しいCT40の取付け作業、(4)リーク試験、(5)Heガスの放出、(6)高圧の乾燥空気の封入、といった多くの手間を要している。
【0009】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、多大な手間を要するCTの交換作業を大幅に簡素化できる新規なタンク形真空遮断器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために第1の発明は、環状の変成器が取り付けられるタンクのCT取付部に、フランジを介して碍管を取り付けた真空遮断器であって、前記碍管のフランジ外径を前記変成器の内径よりも小さく形成すると共に前記フランジの外周面に環状のカバー取付金具を着脱自在に取り付け、当該カバー取付金具に前記CT取付部のCTを覆うCTカバーを着脱自在に取り付けたことを特徴とするタンク形真空遮断器である。
【0011】
このような構成によれば、CTの交換に際して碍管をCT取付部から取り外す必要がなくなるため、多大な手間を要していたCTの交換作業を大幅に簡素化できる。具体的には、前記の(1)乃至(6)の工程のうち、(2)古いCT40の取外し作業と(3)新しいCT40の取付け作業のみで終了し、(1)高圧の乾燥空気の放出や(4)リーク試験、(5)Heガスの放出、(6)高圧の乾燥空気の封入などの作業を省略できる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記環状のカバー取付金具は、その周方向に2つ以上に分割可能であることを特徴とするタンク形真空遮断器である。このような構成によれば、環状のカバー取付金具の着脱作業を容易に行える。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記フランジの外周面と前記環状のカバー取付金具の内周面との間にシール部材を設けたことを特徴とするタンク形真空遮断器である。このような構成によれば、カバー取付金具の取り付け部の水密性が向上するため、その部分からCTへの雨漏りなどを確実に防止できる。
【0014】
第4の発明は、第1乃至第3の発明において、前記カバー取付金具を金具用ボルトで前記フランジの外周面に固定すると共に、前記CTカバーを当該カバー取付金具の上面にカバー用ボルトで固定し、当該カバー取付金具のボルト固定部の径方向幅を前記CTカバーのボルト固定部の径方向幅よりも狭くしたことを特徴とするタンク形真空遮断器である。
【0015】
このような構成によれば、CTカバーをカバー用ボルトによってカバー取付金具の上面に確実に取り付けることができると共に、金具用ボルトが貫通する部分の肉厚を薄くできるため、カバー取付金具全体を小型・軽量化できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のタンク形真空遮断器によれば、CTの交換に際して碍管をCT取付部から取り外す必要がなくなるため、多大な手間を要していたCTの交換作業を大幅に簡素化できる。これによって、作業時間の大幅な削減によるコストダウンが可能となると共に、碍管をCT取付部のシール部を開放しないことによる、交換作業の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るタンク形真空遮断器100の実施の一形態を示す断面図である。
【図2】図1中A部を示す部分拡大図である。
【図3】図1中B−B線矢視図である。
【図4】カバー取付金具60の変形例を示す平面図である。
【図5】従来のCT取付部11の構造を示す部分拡大図である。
【図6】従来のタンク形真空遮断器を示す全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の一形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るタンク形真空遮断器100のCT取付部11,11を示したものである。図示するようにこのCT取付部11,11は、タンク10の上部からそれぞれV字状に突出するように延びる筒状に形成されている。なお、これら一対のCT取付部11,11は、入力用の導体(図示せず)を対象とするか、出力用の導体(図示せず)を対象とするか以外は基本的に同じ構造となっているため、以下では出力用の導体(図示せず)が配置される一方のCT取付部11(図中左側)について詳述する。
【0019】
このCT取付部11の外周には、環状のCT40が上下多段(図の例では2段)に設けられており、そのCT取付部11内の軸心部に位置する図示しない導体の電流値などを計測して出力するようになっている。なお、CT取付部11の外周下部(タンク10側)には、これより径方向外方に延びる鍔部12が形成されており、CT40がこの鍔部12上に載置されるようにして上下多段に配置されている。
【0020】
このCT取付部11の端面(上端部)には、磁器や樹脂などの高絶縁性材料からなる碍管50がフランジ51を介してこれより上方に延長するように取り付けられている。このフランジ51は、その外径がCT取付部11の端面の外径と略同じか、これよりやや小さく形成されており、図2に示すように複数の締結ボルト52,52…によってCT取付部11の端面に取り付けられている。
【0021】
また、このCT取付部11の内径は、その端面側が縮径しており、碍管50の内径と略一致してそれらの内面が連続するようになっている。そして、この碍管50の端面とCT取付部11の縮径した端面内周側には、シール溝53とこのシール溝53に嵌るシール部材(Oリング)54が設けられており、このシール部材54によってその部分の気密性を確保している。
【0022】
このフランジ51の外周面には、環状のカバー取付金具60が水密性のシール部材61を介して着脱自在に取り付けられている。このカバー取付金具60は、図3に示すように周方向に2つに分割可能な半割り部材60a、60aとなっており、複数の金具用ボルト62,62…(図の例では6個)によってフランジ51の外周面に固定されている。
【0023】
また、図2に示すようにこのカバー取付金具60には、CT取付部11のCT40,40全体をその上方から側面に亘って覆い隠すようにCTカバー41が着脱自在に取り付けられている。このCTカバー41は、バケツを逆さにし、その中央を円形にくりぬいたような形状をしており、その円形のくりぬき穴の縁部に相当する部分を環状のカバー取付金具60の上面に重ね合わせ、その上方から複数のカバー用ボルト42,42…(本実施の形態では6個)によって固定されている。なお、図1に示すように、このCTカバー41の下端は、CT取付部11の外周下部の鍔部12から延びる弾性部材13と密着しており、CTカバー41と鍔部12との間からの風雨や埃などの侵入を防止している。
【0024】
そして、このような構成をした本発明のCT取付部11にあっては、CTを交換する際には、先ず、このCTカバー41を取り外してCT40,40を露出させた状態にする。CTカバー41は、カバー用ボルト42,42…を取り外した後、そのまま碍管50に沿ってその上端まで持ち上げることで容易に取り外すことができる。
【0025】
CTカバー41を取り外したならば、次に金具用ボルト62,62…を取り外してフランジ51からカバー取付金具60を取り外す。このカバー取付金具60は前述したように分割可能(2つ割り)となっているため、その取り外し作業は極めて容易である。
【0026】
このようにしてカバー取付金具60を取り外したならば、CT40の上方にはこれと干渉する部材はなくなるため、これをそのまま碍管50に沿ってその上端まで持ち上げることでCT40を簡単に取り外すことができる。すなわち、碍管50のフランジ51の外径は、CT取付部11の外径とほぼ同じであって少なくともCT40の内径よりも小さくなっているため、取り外す際にこのフランジ51が邪魔になることはない。なお、この作業に際しては、碍管50の上端の端子に接続されている電線などは予め取り外しておくことは勿論である。また、CT40を取り外す際にもそのCT40に接続されているケーブル類も同様に予め取り外しておく。
【0027】
そして、このようにして古いCT40を取り外したならば、これとは逆の作業を行うことで新たなCT40をCT取付部11に簡単に取り付けることができる。なお、このカバー取付金具60とフランジ51間にシール部材61を設けることによって、この隙間からの水の浸入を確実に防止することが可能となるが、このシール部材61は、このCT交換作業に際してそのまま利用しても良いし、新たなものに交換しても良い。
【0028】
このような構成によれば、CT40の交換に際して碍管50をCT取付部11から取り外す必要がなくなるため、従来、多大な手間を要していたCT40の交換作業を大幅に簡素化できる。具体的には、古いCT40の取外し作業と新しいCT40の取付け作業のみで終了するため、従来の交換作業ごとに必要となっていた、高圧の乾燥空気の放出やリーク試験、Heガスの放出、高圧の乾燥空気の封入などの作業を全て省略することが可能となる。これによって、作業時間の大幅削減によるコストダウンが可能となると共に、碍管50とCT取付部11とのシール部を開放しないことによる、交換作業の信頼性が向上する。
【0029】
一方、図5は、従来のCT取付部11を示したものであり、CTカバー41を直接取り付けるために碍管50のフランジ51aの外径がCT40の内径よりも大幅に大きくなっている。このため、CT40の交換作業時には、必ず碍管50も同時に取り外さなければならず、前述したような多大な手間を要することになる。
【0030】
なお、本実施の形態では、カバー取付金具60を円環状の形成した例で説明したが、図4に示すように、その外周面を六角形(多角形)に削り取り、その径方向の幅の狭い部分(薄肉部分)を金具用ボルト62,62…でフランジ51側に固定し、その径方向の幅の広い部分(肉厚部分)の上面にカバー用ボルト42,42…でCTカバー41を取り付けるようにしても良い。このようにすれば、CTカバー41をカバー用ボルト42,42…によってカバー取付金具60の上面に確実に取り付けることができると共に、金具用ボルト62,62…が貫通する部分の肉厚を薄くできるため、カバー取付金具60全体を小型・軽量化することが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
100…タンク形真空遮断器
10…タンク
11…CT取付部
40…CT(変成器)
41…CTカバー
42…カバー用ボルト
50…碍管
51…フランジ
60…カバー取付金具
61…シール部材
62…金具用ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の変成器が取り付けられるタンクのCT取付部に、フランジを介して碍管を取り付けた真空遮断器であって、
前記碍管のフランジ外径を前記変成器の内径よりも小さく形成すると共に前記フランジの外周面に環状のカバー取付金具を着脱自在に取り付け、当該カバー取付金具に前記CT取付部のCTを覆うCTカバーを着脱自在に取り付けたことを特徴とするタンク形真空遮断器。
【請求項2】
前記環状のカバー取付金具は、その周方向に2つ以上に分割可能であることを特徴とする請求項1に記載のタンク形真空遮断器。
【請求項3】
前記フランジの外周面と前記環状のカバー取付金具の内周面との間にシール部材を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のタンク形真空遮断器。
【請求項4】
前記カバー取付金具を金具用ボルトで前記フランジの外周面に固定すると共に、前記CTカバーを当該カバー取付金具の上面にカバー用ボルトで固定し、当該カバー取付金具のボルト固定部の径方向幅を前記CTカバーのボルト固定部の径方向幅よりも狭くしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のタンク形真空遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−85414(P2013−85414A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224612(P2011−224612)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(512217570)明電T&D株式会社 (6)
【Fターム(参考)】