説明

タンク

【課題】空気の巻き込みを防止して、液体を短時間で払い出すことができるタンクを提供する。
【解決手段】内部に貯留した液体をポンプにより払い出すタンクであって、前記液体を払い出すための払出口を有し、コニカル形状の底部と、前記底部において、前記液体を払い出す際に発生する渦巻きの旋回方向に対面するように起立して配置され、前記渦巻きの発生を低減する防止板とを有することを特徴とするタンクを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素などの添加物を添加するために液体を貯留すると共に、かかる添加物が添加された液体をポンプにより払い出すタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
ビール、発泡酒、雑酒等を製造する工程は、製麦工程と、仕込工程と、発酵・貯酒工程と、ろ過工程と、パッケージング工程とを含む。このうち工程中に酵素添加を行う場合、必要時に必要量の添加を行うために、液体を貯留する酵素添加タンクが使用されている。酵素添加タンクは、例えば、仕込工程において仕込釜や仕込槽内のマイシェ(もろみ)にアミラーゼやグルカナーゼを添加する場合などに使用される。
【0003】
酵素添加タンクは、一般には、コニカル(円錐)形状の底部を有し、かかる底部に設けられた液体を払い出すための払出口及び配管を介して、払出ポンプに接続されている。従って、払出ポンプを駆動することによって、酵素添加タンクから酵素液を払い出し、後工程のタンク等に引き渡すことができる。この際、酵素添加タンクに収納された液体の流れを整えて、短時間で払い出しを完了させることが要求されている。なお、液体の流れを整える技術については、従来から幾つか提案されている(特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開平7−256075号公報
【特許文献2】特開平5−39891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の酵素添加タンクは、液体を払い出す際に、底部において渦巻き現象を生じてしまっていた。渦巻き現象が生じると、液体中に空気を巻き込んでしまうため、液体の払出時間に長時間を要してしまう。また、酵素添加タンクの底部に設けられた払出口と払出ポンプとを接続する配管に空気が混入してしまうため、払出ポンプにキャビテーションによる負担(故障の要因)をかけてしまう。更に、液体中に空気が巻き込まれることによって、酵素添加タンクに貯留された液体である酵素液が酸化してしまう。
【0005】
なお、特許文献1は、一定流路内に整流板を配置して液体を均一に攪拌することができる技術を開示しているが、渦巻き現象(即ち、空気の巻き込み)を防止する技術を開示していない。従って、従来の酵素添加タンクに特許文献1に開示された技術(整流板)を適用したとしても、酵素添加タンクの底部における渦巻き現象の発生を防止することができない。同様に、特許文献2は、配管内の急激な圧力低下によるキャビテーションを防止する技術を開示しているが、渦巻き現象の発生を防止する技術を開示していない。
【0006】
そこで、本発明は、空気の巻き込みを防止して、液体を短時間で払い出すことができるタンクを提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのタンクは、内部に貯留した液体をポンプにより払い出すタンクであって、前記液体を払い出すための払出口を有し、コニカル形状の底部と、前記底部において、前記液体を払い出す際に発生する渦巻きの旋回方向に対面するように起立して配置され、前記渦巻きの発生を低減する防止板とを有することを特徴とする。かかるタンクによれば、渦巻きの旋回方向に対面するように起立して配置された防止板によって渦巻きの発生を低減することができるため、貯留した液体に空気が巻き込まれることを防止することができる。前記防止板は、前記底部に対して着脱可能に設けられていることを特徴とする。これにより、防止板に汚れ等が付着した場合に、取り外して洗浄することができる。前記防止板は、前記払出口に対して十字形状を有することが好ましい。前記防止板は、前記コニカル形状に沿った斜辺を有する台形形状の2つの板部材を含み、前記2つの板部材を互いに交差させて構成されていることが好ましい。
【0008】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空気の巻き込みを防止して、液体を短時間で払い出すことができるタンクを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の一側面としてのタンク1の構成を示す概略断面図である。タンク1は、内部に貯留した液体をポンプにより払い出すタンクである。タンク1は、本実施形態では、酵素を添加するために、酵素液を貯留する酵素添加タンクとして具現化される。タンク1は、図示しない支持機構を介して床等に支持され、図1に示すように、タンク部10と、蓋部20と、防止板30とを有する。
【0012】
タンク部10は、略円筒形状を有し、酵素液を貯留する。タンク部10は、酵素液を注入するための開口部12と、コニカル形状の底部14とを有する。コニカル形状の底部14には、酵素液を払い出すための払出口16が設けられている。払出口16は、本実施形態では、円形形状を有し、配管LPに接続する。配管LPは、払出口16と払出ポンプPPとを接続する機能を有する。換言すれば、タンク部10は、払出口16及び配管LPを介して、払出ポンプPPと接続する。従って、払出ポンプPPを駆動することによって、払出口16を介して、タンク部10から酵素液を払い出すことができる。
【0013】
蓋部20は、タンク部10の開口部12に対して開閉自在に設けられる。蓋部20は、開口部12を塞ぐ機能を有し、タンク部10に貯留した酵素液の蒸発を防止すると共に、かかる酵素液と外部(空気)との接触を防止する。蓋部20には、例えば、タンク部10の内部の温度(又は酵素液の温度)を計測するための図示しない温度計やタンク部10の内部の圧力を計測するための図示しない圧力計も取り付けられている。
【0014】
防止板30は、タンク部10の底部14において、図2に示すように、払出口16の一部を覆うように配置され、タンク部10に貯留した酵素液を払い出す際の酵素液の流れを整える整流機能を有する。また、防止板30は、例えば、板状部材で構成され、タンク部10から払出口16を介して酵素液を払い出す際に発生する渦巻きの旋回方向(例えば、図2に示す矢印A方向)に対面するように起立して配置される。これにより、防止板30は、酵素液を払い出す際に発生する渦巻きを打ち消すことができ、結果として、渦巻きの発生を低減させる(防止する)ことができる。従って、払い出す酵素液に空気が巻き込まれることが低減され、タンク部10に貯留した酵素液を短時間で払い出すことが可能となる。また、タンク部10の底部14に設けられた払出口16と払出ポンプPPとを接続する配管LPに空気が混入することを防止して、キャビテーションによる払出ポンプPPの故障を防止することが可能となる。更に、タンク部10に貯留された酵素液の酸化を防止することが可能となる。ここで、図2は、タンク部10の底部14に防止板30を配置した状態を示す概略上視図である。
【0015】
防止板30は、本実施形態では、払出口16に対して十字形状を有する。防止板30は、図3に示すように、コニカル形状の底部16に沿った斜辺32aを有する台形形状の第1の板部材32と、コニカル形状の底部16に沿った斜辺34aを有する台形形状の第2の板部材34とを含む。防止板30は、第1の板部材32及び第2の板部材34の中央部近傍において、第1の板部材32と第2の板部材34とを互いに交差(接続)させて構成されている。本実施形態においては、防止板30を構成する第1の板部材32及び第2の板部材34の台形形状の面が、酵素液を払い出す際に発生する渦巻きの旋回方向に対面するように起立して配置する。なお、第1の板部材32及び第2の板部材34(の台形形状の面)は、コストを最小限に抑えるために、渦巻きを防止する(即ち、渦巻きを打ち消す)ために必要な最小限の寸法を有することが好ましい。また、防止板30は、図2及び図3に示す構成(形状)に限定するものではない。例えば、防止板30は、4つの板状部材を互いに交差させて構成してもよく、渦巻きの発生を低減させる(防止する)効果が得られる様々な構成を適用することが可能である。ここで、図3は、防止板30の構成を示す概略図であって、図3(a)は、防止板30の斜視図、図3(b)は、防止板30の側面図、図3(c)は、防止板30の下視図である。
【0016】
また、防止板30は、十字形状の接続部30aを介して、タンク部10の底部16に着脱可能に設けられる。防止板30は、例えば、ボルトやネジを用いて、接続部30aを介して、底部16に取り付けられる。これにより、防止板30は、タンク部10に貯留した酵素液を払い出す際には底部16に固定されて渦巻きの発生を確実に低減(防止)すると共に、例えば、汚れ等が付着した場合には、取り外して洗浄することができる。
【0017】
タンク1の使用において、酵素液が開口部12を介してタンク部10に注入される。酵素液の注入が完了すると、払出ポンプPPが駆動され、底部16に設けられた払出口16及び配管LPを介して、タンク部10から酵素液が払い出される。この際、タンク部10の底部16には防止板30が配置されているため、酵素液を払い出す際に発生する渦巻きを低減させることができ、タンク部10に貯留した酵素液を短時間で払い出すことができる。また、タンク部10の底部14に設けられた払出口16と払出ポンプPPとを接続する配管LPに空気が混入することを防止して、キャビテーションによる払出ポンプPPの故障を防止することができる。更に、酵素液に空気が巻き込まれることを防止して、酵素液の酸化を防止することができる。
【0018】
このように、タンク1によれば、タンク部10に貯留した酵素液の払出時における空気の巻き込みを防止して、かかる酵素液を短時間で払い出すことができる。
【0019】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一側面としてのタンクの構成を示す概略断面図である。
【図2】図1に示すタンクのタンク部の底部に防止板を配置した状態を示す概略上視図である。
【図3】図1に示すタンクの防止板の構成を示す概略図であって、図3(a)は、防止板の斜視図、図3(b)は、防止板の側面図、図3(c)は、防止板の下視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 タンク
10 タンク部
12 開口部
14 底部
16 吐出口
20 蓋部
30 防止板
30a 接続部
32 第1の板部材
32a 斜辺
34 第2の板部材
34a 斜辺
LP 配管
PP 払出ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に貯留した液体をポンプにより払い出すタンクであって、
前記液体を払い出すための払出口を有し、コニカル形状の底部と、
前記底部において、前記液体を払い出す際に発生する渦巻きの旋回方向に対面するように起立して配置され、前記渦巻きの発生を低減する防止板とを有することを特徴とするタンク。
【請求項2】
前記防止板は、前記底部に対して着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載のタンク。
【請求項3】
前記防止板は、前記払出口に対して十字形状を有することを特徴とする請求項1記載のタンク。
【請求項4】
前記防止板は、前記コニカル形状に沿った斜辺を有する台形形状の2つの板部材を含み、
前記2つの板部材を互いに交差させて構成されていることを特徴とする請求項3記載のタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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