説明

タングステン合金製フィードスルーを有するセラミック放電容器

【課題】先行技術の欠点を回避して、セラミック製発光管におけるニオブ製フィードスルーの代替を提供する。
【解決手段】従来のフィードスルーの代替としてセラミック放電容器のためにタングステン合金製、タングステンとチタン、バナジウム又はそれらの組合せから選択される金属のフィードスルーを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タングステン合金製フィードスルーを有するセラミック放電容器に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック放電容器は、一般に高輝度放電(HID)ランプ、例えば高圧ナトリウム(HPS)ランプ、高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプのために使用される。半透明のセラミック容器は、HIDランプ作動時に呈される高温条件と高圧条件とに耐えることができ、かつ腐蝕性の化学的封入物に抵抗性を示さねばならない。HIDランプに使用するのに有利なセラミックは、多結晶アルミナ(PCA)であるが、サファイア、イットリウムアルミニウムガーネット、窒化アルミニウム及び酸窒化アルミニウムのような他のセラミックも使用することができる。
【0003】
慣用のセラミック放電容器において、セラミック容器と金属製の電気的フィードスルーとの間に気密封止を作成することが困難なのは、これらの材料が、特に熱膨張率に関して非常に様々な特性を有するからである。多結晶アルミナの場合に、そのシールが一般にアルミナセラミックとニオブ製のフィードスルーとの間に作成されるのは、これらの材料の熱膨張が非常に類似しているためである。ニオブ製のフィードスルーは少なくとも1つのタングステン製電極と接続され、その非常に高い融点のため、これがアーク用の接触点の形成に使用される。
【0004】
しかしながら、フィードスルー材料としてのニオブは2つの重大な欠点を有する。第一の欠点は、ニオブは、酸化されて封止が弱るため空気に暴露できないことである。この欠点により、放電容器を真空中又は不活性ガス雰囲気において作動させることが必要となり、それにより費用が増加し、かつランプの全体のサイズが大きくなる。第二の欠点は、ニオブは、メタルハライドランプ用の殆どの化学的封入物と反応することである。この問題により、メタルハライド用途のためにより複雑な電極集合体の開発がもたらされた。例えば、セラミック製のメタルハライドランプ用の電極集合体の一先行技術は共に溶接された4つの部分:セラミック製発光管に対する封止用のニオブ製フィードスルー;モリブデンロッド;Mo−アルミナサーメット;及びタングステン製電極からなる。米国特許第6,774,547号に記載される別の電極集合体は、セラミックコアを有し、その外部長に沿って複数の溝を有し、それらの溝中にワイヤが挿入されているマルチワイヤフィードスルーを使用する。それらのワイヤはタングステン製又はモリブデン製のいずれかであり、フィードスルーの少なくとも一端と一緒に撚り合わされている。撚り合わされたワイヤはランプ内の電極として使用でき、又は別途の電極チップを撚り合わされたワイヤ束に接続してもよい。
【特許文献1】米国特許第6,774,547号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、先行技術の欠点を回避することである。
【0006】
本発明のもう一つの課題は、セラミック製発光管におけるニオブ製フィードスルーの代替を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記の課題及び他の課題に応じて、セラミック放電容器のためにタングステン合金製のフィードスルーを提供する。本願で使用する場合に、タングステン合金という用語は、50質量%より多いタングステンを含んで成る合金を意味する。特に、本発明のタングステン合金は、タングステンとチタン、バナジウム又はそれらの組合せから選択される金属との合金を含む。有利には、タングステン合金は、Ti、V又はそれらの組合せから選択される金属約10〜約35質量%を含有する。
【0008】
本発明を、別の及び更なる課題、その利点及び性能と共により良く理解するために、図面に関連して採用される以下の開示及び付属の特許請求の範囲が参照される。
【0009】
タングステン−チタン系とタングステン−バナジウム系は、これらが完全な固溶体を形成するという利点を有する。更に、個々の金属成分の熱膨張率は、HIDランプで使用される又はその使用のために提案されている慣用のセラミック材料についての熱膨張率の範囲と同等である。特に、チタンとバナジウムは、多結晶アルミナ、酸窒化アルミニウム及びイットリウムアルミニウムガーネットのような重要なセラミック材料よりも膨張率が高く、そしてタングステンの膨張率はそれより低い。これらの特性は、典型的なランプ封止法と高温ランプ動作で用いられる温度範囲に及んで、WとTi又はVとの間の膨張係数を有する事実上全てのセラミック材料の熱膨張挙動に厳密に適合する単相タングステン合金の製造を可能にする。
【0010】
第1表は、HIDランプ用の3種の主要なセラミック材料と一緒に使用するのに有利なタングステン合金の組成について、好適な合金組成を質量割合(質量%)で提供するものである。選択されたセラミックの熱膨張に適合する組成物を配合する。W−V合金は、より化学的に反応性の環境においてW−Ti合金よりも僅かに有利であることが予想される。これらの合金は、線引き技術、粉末冶金又は鋳造及び機械加工によって最終的な形状に成形することができる。線引きは、かかる費用がより少ないので好ましい成形法である。W−Ti−V合金について一般化された組成範囲を、合金中のチタンとバナジウムの質量割合の合計として示す。
【0011】
第1表
【0012】
【表1】

【0013】
図1に関して、そこではメタルハライドランプ用のセラミック放電容器1の断面図が示されており、図中、放電容器1は、多結晶アルミナ、酸窒化アルミニウム(AlON)又はイットリウムアルミニウムガーネットを含んで成ることが好ましい半透明のセラミック体3を有する。セラミック体3は対向型キャピラリー管5を有し、これらの管は両側から外側に延びている。キャピラリー5は、電極集合体20を収容するための中央内腔9を有する。この実施態様では、電極集合体20は、本発明によるタングステン合金を含んで成るフィードスルー22とタングステン電極26から構成されている。有利な実施態様では、電極集合体20はその全体が本発明のタングステン合金から、有利にはコスト削減のために単一構造として形成されている。タングステン製コイル又は他の類似の構造物をタングステン製電極26の端部に付けて、アーク放電用の接触点を提供することができる。
【0014】
放電室12は、一般的に水銀とメタルハライド塩、例えばNaI、CaI、DyI、HoI、TmI及びTlIの混合物とを含有してよいメタルハライド封入材料を含有している。また放電室12はバッファガス、例えばXe又はArを含有する。フリット材料17は、キャピラリー5と電極集合体のフィードスルー22との間に気密封止を作成する。有利なフリット材料は、ハライド抵抗性のDy−Al−SiOガラス−セラミック系である。メタルハライドランプでは、フリット材料17のキャピラリー5中への溶け込みを最小限にして、腐蝕性メタルハライド封入物との不利な反応を妨げることが望ましい。例えば、モリブデンコイル24をタングステン製電極26の軸部周りに巻いて、メタルハライド塩凝縮物とフリット材料17とがランプ動作中に接触しないようにすることができる。
【0015】
また本発明のタングステン合金製フィードスルーは他のフィードスルー構造においても使用することができる。例えば、本発明のタングステン合金製フィードスルーは、マルチワイヤフィードスルーにおいて、又は慣用の高圧ナトリウムランプにおけるニオブ管の代替として使用することができる。
【0016】
目下、本発明の好ましい実施態様であると考えられるものについて示し、記載してきたが、付属の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲を逸脱することなく多様な変更及び改良がなされてよいことは、当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明によるタングステン合金製のフィードスルーを有するセラミック放電容器の断面図である
【符号の説明】
【0018】
1 放電容器、 3 セラミック体、 5 キャピラリー、 9 中央内腔、 12 放電室、 17 フリット材料、 20 電極集合体、 22 フィードスルー、 24 モリブデンコイル、 26 タングステン製電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック放電容器であって、少なくとも1つの電極集合体を有するセラミック体を有し、該電極集合体が前記セラミック体に対して封止されたフィードスルー部を有し、該フィードスルーがタングステン合金を含んで成り、その合金では、タングステンとチタン、バナジウム又はそれらの組合せから選択される金属とが合金化されているセラミック放電容器。
【請求項2】
セラミック体が、多結晶アルミナ、サファイア、酸窒化アルミニウム又はイットリウムアルミニウムガーネットを含んで成る、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項3】
セラミック体が、少なくとも1つのキャピラリー管を有し、かつフィードスルーがそのキャピラリーに対して封止されている、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項4】
フィードスルーがセラミック体に対してフリット材料で封止されている、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項5】
タングステン合金が、約10〜約35質量%のチタン、バナジウム又はそれらの組合せを含有する、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項6】
セラミック体が酸化アルミニウムを含んで成り、かつタングステン合金が20〜30質量%のチタン、バナジウム又はそれらの組合せを含有する、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項7】
タングステン合金が25質量%のチタンを含有する、請求項6記載のセラミック放電容器。
【請求項8】
タングステン合金が22.5質量%のバナジウムを含有する、請求項6記載のセラミック放電容器。
【請求項9】
セラミック体が酸窒化アルミニウムを含んで成り、かつタングステン合金が10〜20質量%のチタン、バナジウム又はそれらの組合せを含有する、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項10】
タングステン合金が16.5質量%のチタンを含有する、請求項9記載のセラミック放電容器。
【請求項11】
タングステン合金が17質量%のバナジウムを含有する、請求項9記載のセラミック放電容器。
【請求項12】
セラミック体がイットリウムアルミニウムガーネットを含んで成り、かつタングステン合金が約20〜約30質量%のチタン、バナジウム又はそれらの組合せを含有する、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項13】
タングステン合金が26質量%のチタンを含有する、請求項12記載のセラミック放電容器。
【請求項14】
タングステン合金が25質量%のバナジウムを含有する、請求項12記載のセラミック放電容器。

【図1】
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【公開番号】特開2006−210346(P2006−210346A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17795(P2006−17795)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(596104131)オスラム シルヴェニア インコーポレイテッド (72)
【氏名又は名称原語表記】OSRAM SYLVANIA Inc.
【住所又は居所原語表記】100 Endicott Street, Danvers, Massachusetts 01923, USA
【Fターム(参考)】