説明

タンタル混合粉末及びその製造方法、並びにタンタルペレット及びその製造方法。

【課題】ペレット成形上の問題が少なく、アノードに固体電解質を充分に含浸させることができ、単位体積あたりの静電容量を高めることが可能なタンタル凝集粒子及びペレットを提供する。
【解決手段】下記タンタル凝集粒子(X)とタンタル凝集粒子(Y)とが混合されていることを特徴とするタンタル混合粉末タンタル凝集粒子(X):25Wの超音波を10分照射した後に、粒子径3μm以下の累積粒子割合が5質量%以下となるタンタル凝集粒子。タンタル凝集粒子(Y):25Wの超音波を10分照射した後に、粒子径3μm以下の累積粒子割合が10質量%以上となるタンタル凝集粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンタル混合粉末及びその製造方法、並びにタンタルペレット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンタル電解キャパシタは、小型化が容易であることから、電子機器に広く使用されている。タンタル電解キャパシタのアノードは、タンタル凝集粒子を成形して多孔質状のタンタルペレットにし、そのタンタルペレットの表面を酸化し、誘電体酸化膜を形成することにより得られる。そして、このアノードに固体電解質を充填し、充填した固定電解質にカソードを接続することで、タンタル電解キャパシタが得られる。
タンタル電解キャパシタ用のタンタル凝集粒子は、タンタル塩の還元により得られるタンタル二次粒子(タンタル一次粒子が凝集したタンタル二次粒子)を、別の工程でさらに凝集させたタンタル三次粒子である。キャパシタに使用されるタンタル凝集粒子としては、近年のキャパシタの小型化に対応するように、粒子径が小さいものが求められている。
【0003】
タンタル二次粒子から、タンタル凝集粒子を得る方法としては、例えば、特許文献1に、粒度325メッシュ以下を50質量%以上含むタンタル微粉体に水を含ませた後、水分2〜30質量%まで脱水し、静止状態で乾燥し、真空中で熱処理する方法が開示されている。
特許文献2には、造粒機にて、メディアン径(D50)が50μm以下になるまで粉砕したタンタル粒子に揮発性の液体を湿潤させ、造粒して、予備造粒粒子を形成し、その予備造粒粒子を静止状態で乾燥させた後、熱処理し、篩分する方法が開示されている。
特許文献3には、タンタル粒子を湿潤させ、得られた湿潤粒子を圧密し、乾燥してケーキを形成し、そのケーキを熱処理した後、粉砕、破砕、摩砕等を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2089652号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0068341号明細書
【特許文献3】特表2002−516385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1〜3に記載のタンタル凝集粒子の製造方法では、平均粒子径を小さくしようとすると、数μm以下の微細粒子が発生した。そのため、流動性が低く、型の中に充填することが困難であった。また、雌型と雄型の側面との隙間に、製造工程時に生じた、または剥離等によって後から生じた微細粒子が入り込んで雄型が雌型から抜けなくなることがあった。したがって、タンタル焼結体を作製する際のペレット化にて不具合が生じやすかった。さらに、得られたタンタル凝集粒子から製造されるペレットの空孔が少なくなるため、アノードに固体電解質を充分に含浸させてアノード抵抗を低下させることが難しかった。
【0006】
そこで、本出願人は、先に、造粒装置を用い、水を添加しながら撹拌する工程の後に水を添加せずに撹拌する工程を組み合わせて造粒粉を得、これを乾燥、焼結する方法を提案した(特願2007−273684号)。
この方法では、粒子強度が高いため、数μm以下の微細粒子が発生しにくい。そのため、流動性が高く、型の中に充填することが容易であり、雄型が雌型から抜けなくなるという問題も生じにくい。さらに、得られたタンタル凝集粒子から製造されるペレットの空孔が充分得られるため、アノードに固体電解質を充分に含浸させやすく、アノード抵抗を低下させやすい。
しかしながら、本発明者らが、さらに検討したところ、この製造方法により得られるタンタル凝集粒子から製造されるペレットでは、単位体積あたりの静電容量が、必ずしも充分でないことが分かった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ペレット成形上の問題が少なく、アノードに固体電解質を充分に含浸させることができ、単位体積あたりの静電容量を高めることが可能なタンタル凝集粒子及びペレットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、特許文献4の製造方法で得られるタンタル凝集粒子から製造されるペレットでは、単位体積あたりの静電容量が必ずしも充分でない理由を検討したところ、粒子強度が高すぎ、ペレット成形時に、静電容量に寄与しない余分な空間が残ってしまうためであることを見いだした。
そして、本発明者らはさらに検討した結果、特許文献4の製造方法で得られるような粒子強度が高いタンタル凝集粒子に、ある程度粒子強度が低いタンタル凝集粒子を混合することに想到した。
すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
【0009】
[1]下記の製造方法(a)によりタンタル凝集粒子(X)を得る工程と、下記の製造方法(b)〜(d)の何れかの製造方法によりタンタル凝集粒子(Y)を得る工程と、得られたタンタル凝集粒子(X)とタンタル凝集粒子(Y)とを混合する工程を備えることを特徴とするタンタル混合粉末の製造方法。
製造方法(a):
タンタル塩を還元して得られたタンタル二次粒子を、水を添加しながら、低速翼及び該低速翼の10倍以上の回転数で回転する高速翼を備えた造粒装置により攪拌して含水塊状物を得る工程と、
前記造粒装置により、前記含水塊状物を、水を添加せずにさらに攪拌する工程と、
その後、前記含水塊状物を乾燥させて乾燥塊状物を得る工程と、
該乾燥塊状物を焼結させる工程を有するタンタル凝集粒子の製造方法。
製造方法(b):
タンタル塩を還元して得られたタンタル二次粒子に、水を添加して、低速翼及び該低速翼の10倍以上の回転数で回転する高速翼を備えた造粒装置により攪拌し、含水塊状物を得る工程と、
その後、前記含水塊状物を乾燥させて乾燥塊状物を得る工程と、
該乾燥塊状物を篩に通して球形化する工程と、
前記球形化した乾燥塊状物を焼結させる工程を有するタンタル凝集粒子の製造方法。
製造方法(c):
タンタル塩を還元して得られたタンタル二次粒子に、水を添加して、粉砕機(但し、前記造粒装置に該当するものを除く。)により粉砕し、含水塊状物を得る工程と、
その後、前記含水塊状物を乾燥させて乾燥塊状物を得る工程と、
該乾燥塊状物を篩に通して球形化する工程と、
前記球形化した乾燥塊状物を焼結させる工程を有するタンタル凝集粒子の製造方法。
製造方法(d):
タンタル塩を還元して得られたタンタル二次粒子に、水を添加して、含水塊状物を得る工程と、
その後、前記含水塊状物を乾燥させて乾燥塊状物を得る工程と、
前記乾燥塊状物を焼結させて焼結塊状物を得る工程と、
該焼結塊状物を微細化する工程を有するタンタル凝集粒子の製造方法。
【0010】
[2]前記タンタル凝集粒子(Y)を得る工程が、前記製造方法(b)であり、かつ該製造方法(b)における含水塊状物を得る工程が、水を添加しながら前記造粒装置により攪拌する工程を有する[1]に記載のタンタル混合粉末の製造方法。
[3]タンタル凝集粒子(X)とタンタル凝集粒子(Y)とを混合する工程の後、脱酸素処理を行う工程を有する[1]または[2]に記載のタンタル混合粉末の製造方法。
[4]さらに、タンタル凝集粒子(X)を脱酸素処理する工程及び/又はタンタル凝集粒子(Y)を脱酸素処理する工程を、タンタル凝集粒子(X)とタンタル凝集粒子(Y)とを混合する工程の前に備える、[1]〜[3]の何れかに記載のタンタル混合粉末の製造方法。
【0011】
[5]下記タンタル凝集粒子(X)とタンタル凝集粒子(Y)とが混合されていることを特徴とするタンタル混合粉末
タンタル凝集粒子(X):
25Wの超音波を10分照射した後に、粒子径3μm以下の累積粒子割合が5質量%以下となるタンタル凝集粒子。
タンタル凝集粒子(Y):
25Wの超音波を10分照射した後に、粒子径3μm以下の累積粒子割合が10質量%以上となるタンタル凝集粒子。
【0012】
[6][1]〜[4]の何れかの製造方法で得られたタンタル混合粉末を成形することを特徴とするタンタルペレットの製造方法。
[7][5]のタンタル混合粉末を成形したことを特徴とするタンタルペレット。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ペレット成形上の問題が少なく、アノードに固体電解質を充分に含浸させることができ、単位体積あたりの静電容量を高めることが可能なタンタル凝集粒子及びペレットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】溶融反応装置を示す概略図である。
【図2】気相反応装置を示す概略図である。
【図3】造粒装置の一例を示す概略図である。
【図4】造粒装置の他の例を示す概略図である。
【図5】造粒装置の他の例を示す概略図である。
【図6】実験例1の粉末の粒子径分布曲線を示す図である。
【図7】実験例5の粉末の粒子径分布曲線を示す図である。
【図8】実験例1〜5のタンタルペレットの空孔径分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のタンタル混合粉末の製造方法は、記の製造方法(a)によりタンタル凝集粒子(X)を得る工程と、下記の製造方法(b)〜(d)の何れかの製造方法によりタンタル凝集粒子(Y)を得る工程と、得られたタンタル凝集粒子(X)とタンタル凝集粒子(Y)とを混合する工程を備えることを特徴とする。
また、本発明のタンタル混合粉末は、タンタル凝集粒子(X)とタンタル凝集粒子(Y)とが混合されていることを特徴とする。
【0016】
<タンタル凝集粒子(X)の製造方法>
タンタル凝集粒子(X)を得るための製造方法(a)は、タンタル二次粒子を、水を添加しながら造粒装置により攪拌して含水塊状物を得る工程(以下「(a1)工程」という。)、前記造粒装置により、前記含水塊状物を、水を添加せずにさらに攪拌する工程(以下「(a2)工程」という。)と、(a2)工程の後に、前記含水塊状物を乾燥させて乾燥塊状物を得る工程(以下「(a3)工程」という。)と、該乾燥粉を焼結させる工程(以下「(a4)工程」という。)を有する。
また、製造方法(a)では、タンタル二次粒子をあらかじめ均一化する目的で、(a1)工程の前にタンタル二次粒子を予備混合する工程(以下「予備混合工程」という。)を備えることが好ましい。
また、製造方法(a)では、(a4)工程の後に、脱酸素処理を行う工程(以下「脱酸素工程」という。)を備えることが好ましい。
以下、製造方法(a)において原料となるタンタル二次粒子、及び製造方法(a)の各工程について説明する。
【0017】
[タンタル二次粒子]
(a1)工程で使用するタンタル二次粒子は、タンタル塩を還元して得られたタンタル二次粒子(タンタル塩還元直後の一次粒子が凝集した粒子)である。
タンタル二次粒子の製造方法としては、フッ化タンタル酸カリウム(KTaF)を溶融塩中でナトリウム還元する方法(以下「溶融還元法」といい、これにより得られるタンタル二次粒子を「溶融還元タンタル二次粒子」という。)、及び塩化タンタルを気相中でナトリウム還元する還元する方法(以下「気相還元法」といい、これにより得られるタンタル二次粒子を「気相還元タンタル二次粒子」という。)が好ましい。特に、溶融還元タンタル二次粒子が、造粒性に優れることから好ましい。
【0018】
溶融還元タンタル二次粒子を得るためには、例えば、図1に示す溶融反応装置30が用いられる。
この溶融反応装置30は、反応器31と、反応器31の上端31aに設けられたフッ化タンタル酸カリウム供給管32およびナトリウム供給管33と、反応器31の内部を攪拌する攪拌機34と、反応器31を加熱する加熱体35とを備える。
【0019】
上記溶融反応装置30を用いた溶融還元タンタル二次粒子の製造方法では、まず、反応器31内に、溶融塩の原料成分を充填する。溶融塩の原料成分としては、塩化カリウム(KCl)とフッ化カリウム(KF)との共晶塩、塩化カリウム(KCl)と塩化ナトリウム(NaCl)との共晶塩等が挙げられる。
次いで、反応器31を加熱体35により、好ましくは800〜900℃に加熱し、上記溶融塩の原料成分を溶融させて溶融塩を得る。その後、攪拌機34で溶融塩を攪拌しながら、フッ化タンタル酸カリウム供給管32を介して、固体のフッ化タンタル酸カリウムを反応器31内に供給し、ナトリウム供給管33を介して固体のナトリウムを反応器31内に供給する。
フッ化タンタル酸カリウムおよびナトリウムは、溶融還元タンタル二次粒子を容易に製造できることから、それぞれ連続的に添加することが好ましい。とりわけ、フッ化タンタル酸カリウムとナトリウムとをそれぞれ溶融塩中に少量ずつ交互に分割して投入し、互いに反応させることがより好ましい。
また、ナトリウム添加直前における溶融塩量は、常に溶融塩中のフッ化タンタル酸カリウムの40〜1000倍であることが好ましく、200〜400倍であることがさらに好ましい。溶融塩量がフッ化タンタル酸カリウムの40倍未満であると、タンタル一次粒子を微細化させることが困難になる傾向にあり、1000倍を超えると、収率および生産効率が低くなる傾向にある。
【0020】
フッ化タンタル酸カリウムとナトリウムとを反応させた後、溶融塩を冷却し、これにより得た集塊を反応器31から取り出し、水洗し、酸洗して、溶融塩および不純物を除去し、乾燥させて、タンタル二次粒子を得る。酸洗の際に使用する酸としては、例えば、硝酸、塩酸、フッ酸等の鉱酸や過酸化水素水が挙げられる。
乾燥の際の乾燥温度は80〜150℃であることが好ましい。乾燥温度が80℃以上であれば、短時間で充分に乾燥させることができ、150℃以下であれば、乾燥時のエネルギー消費量を少なくできる。
【0021】
溶融還元タンタル二次粒子は、通常、嵩密度が0.4〜0.9g/cmであり、BET比表面積が4.0〜6.5m/gである。ここで、BET比表面積は、窒素ガスを吸着させて測定した値である。
嵩密度が0.4g/cm以上またはBET比表面積が6.5m/g以下のタンタル二次粒子を用いることで、得られるタンタル凝集粒子の粒子径を容易に小さくできる。また、嵩密度が0.9g/cm以下またはBET比表面積が4.0m/g以上のタンタル二次粒子を用いることで、得られるタンタル凝集粒子の嵩密度を容易に小さくできる。
【0022】
溶融還元タンタル二次粒子の粉砕後の粒子径はモード径(最大頻度径)が0.7〜1.3μmであることが好ましく、メディアン径が1〜3μmであることが好ましい。ここで、粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定した体積基準の粒子径である。
溶融還元タンタル二次粒子のモード径が0.7μm以上またはメディアン径が1μm以上であれば、得られるタンタル凝集粒子の嵩密度を低くでき、モード径が1.3μm以下またはメディアン径が3μm以下であれば、得られるタンタル凝集粒子の粒子径を容易に小さくできる。
なお、タンタル一次粒子の粒子径は、例えば、溶融還元タンタル二次粒子を得る際の溶融塩量、反応温度によって調整できる。溶融塩量を多くする程、または、反応温度を低くする程、得られるタンタル一次粒子の粒子径が小さくなる。
【0023】
気相還元タンタル二次粒子を得るためには、例えば、図2に示す気相反応装置40が用いられる。
この気相反応装置40は、反応器41と、反応器41の上端41aに設けられた塩化タンタル供給管42、ナトリウム供給管43および不活性ガス供給管44と、反応器41の下端に接続された取出管45と、反応器41の全体を加熱する加熱体46と、反応器41の内部の下端41b側から加熱体46の外部に排気ガスを排出させる排気ガス管47とを備える。
反応器41は、直胴部41cと、直胴部41cより下に位置するテーパー部41dとを有する漏斗状の容器である。このような形状の反応器41では、直胴部41cにて生成した気相還元タンタル二次粒子をテーパー部41dにて集められるようになっている。
塩化タンタル供給管42、ナトリウム供給管43および不活性ガス供給管44は同心円状の三重管になっており、塩化タンタル供給管41が最も内側に配置され、塩化タンタル供給管41の外側に不活性ガス供給管44が配置され、最も外側にナトリウム供給管43が配置されている。このような配置により、不活性ガスを塩化タンタルとナトリウムとの間に供給して、塩化タンタルとナトリウムとの急激な反応を抑制している。
【0024】
上記気相反応装置40を用いた気相還元タンタル二次粒子の製造方法では、塩化タンタル(沸点:242℃)を加熱して気化させ、気化させた塩化タンタルを塩化タンタル供給管42により反応器41に供給する。また、ナトリウム(沸点:883℃)を加熱して気化させ、気化させたナトリウムをナトリウム供給管43により反応器41に供給する。また、アルゴン等の不活性ガスを不活性ガス供給管44により反応器41に供給する。
その際、塩化タンタルとナトリウムとの質量比(塩化タンタル:ナトリウム)は、量論比相当(3.1:1)とされるが、ナトリウムを少し多くすることが好ましい。
また、塩化タンタル供給管42で供給する塩化タンタルは不活性ガスで希釈してもよく、ナトリウム供給管43で供給するナトリウムは不活性ガスで希釈してもよい。希釈用の不活性ガスは、不活性ガス供給管44によって供給する不活性ガスと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
次いで、反応器41に供給した塩化タンタルとナトリウムとを、気化させた状態のまま、加熱体46により加熱した反応器41の直胴部41c内で、例えば700〜900℃で反応させる。
この反応では、まず、タンタル一次粒子が形成され、そのタンタル一次粒子の複数個が、塩化タンタルとナトリウムとの反応によって生成した塩化ナトリウムによって包まれて、気相還元タンタル二次粒子が形成される。
形成された気相還元タンタル二次粒子は、反応器41のテーパー部41dに落下して集められ、取出管45を介して取り出される。また、未反応の塩化タンタル、未反応のナトリウムおよび不活性ガスは、排気ガス管47を介して反応器41の外部に排出される。
【0026】
気相還元タンタル二次粒子は、通常、嵩密度が0.5〜1.2g/cmであり、BET比表面積が6〜18m/gである。
気相還元タンタル二次粒子の粉砕後の粒子径はモード径(最大頻度径)が0.5〜1.3μmであることが好ましく、メディアン径が0.4〜1.2μmであることが好ましい。
【0027】
気相還元タンタル二次粒子の粒子物性(粒子径、嵩密度、比表面積)は、上記製造方法における塩化タンタルの流量、ナトリウムの流量、不活性ガスの流量、反応器の温度などによって調整できる。例えば、塩化タンタルの流量およびナトリウムの流量を増やすことによって、比表面積を小さく調整することができる。
【0028】
[造粒装置]
(a1)工程及び(a2)工程に用いる造粒装置とは、一つ以上の低速翼と、該低速翼よりも10倍以上高い回転数で回転する一つ以上の高速翼とを備える装置のことである。高速翼の回転数は、実用上の観点からは、低速翼の回転数の30倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがさらに好ましい。また、低速翼の回転数の1000倍以下であることが好ましい。具体的には、6000回転前後とされる。
【0029】
造粒装置としては、例えば、図3に示すような、円筒状の容器11と、該容器11の内周壁に沿って回転する低速翼12と、容器11の中心にて低速翼12よりも高い回転数で回転する高速翼13と、容器11内に水を噴霧する噴霧機14を備えた不二パウダル社製スパルタン・リューザーが挙げられる。
【0030】
また、造粒装置としては、図4に示すような、円筒状の容器21と、該容器21の底面近傍にて設置され、鉛直方向に沿った回転軸22aに複数の回転羽根22aが取り付けられた低速翼22と、低速翼22の上方に設置され、容器21の直径方向に沿った回転軸23aに複数の攪拌羽根23bが取り付けられ、低速翼22よりも高い回転数で回転する高速翼23と、容器21内に水を噴霧する噴霧機24を備えた深江パウテック社製ハイフレックスグラルが挙げられる。
さらに、造粒装置としては、図5に示すような、円筒状の容器51と、該容器51の中心軸を回転中心として内周壁に沿って回転する低速翼52と、容器51の周壁に、容器51の中心軸に向けて立設されて低速翼52よりも高い回転数で回転する高速翼53と、容器51内に水を噴霧する噴霧機54を備えたマツボー社製レディゲ・ミキサーが挙げられる。
【0031】
[予備混合工程]
造粒装置として不二パウダル社製スパルタン・リューザーを用いる場合、予備混合工程における低速翼12の回転数は13〜27回転/分であることが好ましい。低速翼12の回転数は13回転/分以上であれば、造粒粉を攪拌すると共にこれを高速翼へと供給するのに充分であり、27回転/分以下であれば、造粒粉が徒に散乱することがない。
高速翼13の回転数は750〜6200回転/分であることが好ましい。高速翼13の回転数は750回転/分以上であれば、タンタル二次粒子を充分に粉砕できる。しかし、6200回転/分より回転数を上げても、粉砕の程度が変わらなくなるため無益である。
【0032】
造粒装置として深江パウテック社製ハイフレックスグラルを用いる場合、予備混合工程における低速翼22の回転数は100〜300回転/分であることが好ましい。低速翼22の回転数が100回転/分以上であれば、造粒粉を攪拌すると共にこれを高速翼へと供給するのに充分であり、300回転/分以下であれば、造粒粉が徒に散乱することがない。
高速翼23の回転数は1500〜6000回転/分であることが好ましい。高速翼23の回転数が1500回転/分以上であれば、タンタル二次粒子を充分に粉砕できる。しかし、6000回転/分より回転数を上げても、粉砕の程度が変わらなくなるため無益である。
造粒装置としてマツボー社製レディゲ・ミキサーを用いる場合、予備混合工程における低速翼52の回転数は36〜300回転/分であることが好ましい。低速翼52の回転数が36回転/分以上であれば、造粒粉を攪拌すると共にこれを高速翼へと供給するのに充分であり、300回転/分以下であれば、造粒粉が徒に散乱することがない。
高速翼53の回転数は3000〜6000回転/分であることが好ましい。高速翼53の回転数が3000回転/分以上であれば、タンタル二次粒子を充分に粉砕できる。しかし、6000回転/分より回転数を上げても、粉砕の程度が変わらなくなるため無益である。
【0033】
予備混合の時間は2〜10分であることが好ましい。予備混合時間が2分以上であれば、充分に均一化できる。ただし、10分を超えて混合しても混合時間に応じた効果が生じにくくなるため、無益である。
【0034】
[(a1)工程]
(a1)工程では、添加した水がバインダーとして働いてタンタル二次粒子同士が結合すると共に、一部の水はタンタル二次粒子内に含浸される。この段階での粒子の結合は乾燥によって分解してしまう程度に弱く、この段階で高速翼を使用して攪拌しないと部分的に凝集が進んで粗大粒子が生成してしまうことがある。
【0035】
造粒装置として不二パウダル社製スパルタン・リューザーを用いる場合、(a1)工程における低速翼12の回転数は13〜27回転/分であることが好ましい。低速翼12の回転数が13回転/分以上であれば、容器11内のタンタル二次粒子を充分に均一化でき、27回転/分以下であれば過剰な破砕を抑制できる。
また、高速翼13の回転数は3000〜6000回転/分であることが好ましい。高速翼13の回転数が3000回転/分以上であれば、容器11内のタンタル二次粒子を充分に均一化でき、6000回転/分以下であれば、過剰な破砕を抑制できる。
【0036】
造粒装置として深江パウテック社製ハイフレックスグラルを用いる場合、(a1)工程における低速翼22の回転数は100〜300回転/分であることが好ましい。低速翼22の回転数が100回転/分以上であれば、容器21内のタンタル二次粒子を充分に均一化でき、300回転/分以下であれば過剰な破砕を抑制できる。
また、高速翼23の回転数は1500〜6000回転/分であることが好ましい。(a1)工程における高速翼23の回転数が1500回転/分以上であれば、容器21内のタンタル二次粒子を充分に均一化でき、6000回転/分以下であれば、過剰な破砕を抑制できる。
【0037】
造粒装置としてマツボー社製レディゲ・ミキサーを用いる場合、(a1)工程における低速翼52の回転数は36〜300回転/分であることが好ましい。低速翼52の回転数が36回転/分以上であれば、容器21内のタンタル二次粒子を充分に均一化でき、300回転/分以下であれば過剰な破砕を抑制できる。
また、高速翼23の回転数は3000〜6000回転/分(rpm)であることが好ましい。(a1)工程における高速翼23の回転数が3000回転/分以上であれば、容器21内のタンタル二次粒子を充分に均一化でき、6000回転/分以下であれば、過剰な破砕を抑制できる。
【0038】
(a1)工程における水の添加速度は、目的の粒子径分布を得やすいことから、一定であることが好ましい。また、水の添加速度は、容器内のタンタル二次粒子の量、目的とする造粒粉の大きさ等により適宜選択される。通常、タンタル二次粒子の単位質量あたりの水の量が多くなる速度になる程、粒子径が大きくなる傾向にある。
水の添加量はタンタル二次粒子の100質量部に対して10〜20質量部であることが好ましい。水の添加量を10質量部以上かつ20質量部以下とすれば、適切な粒子径分布のタンタル凝集粒子を容易に得ることができる。なお、水の添加量が多い程、平均粒子径が大きくなる傾向にある。
【0039】
水の添加量は、タンタル二次粒子の嵩密度によって調整する必要がある。例えば平均粒子径を30〜40μmにする場合、嵩密度が0.47g/cmのタンタル二次粒子を用いる場合は水の添加量を18〜19質量部、嵩密度が0.71g/cmのタンタル二次粒子を用いる場合は水の添加量を16.5〜17.5質量部、嵩密度が0.92g/cmのタンタル二次粒子を用いる場合は水の添加量を14.5〜15.5質量部とすることが好ましい。
嵩密度が大きいほど、水の添加量が多くなるにつれて平均粒子径が大きくなる傾向が顕著となるため、粒子径の調整が難しい。例えば、嵩密度が0.47g/cmのタンタル二次粒子を用いる場合は水の添加量が20質量部、嵩密度が0.71g/cmのタンタル二次粒子を用いる場合は水の添加量18質量部、嵩密度が0.92g/cmのタンタル二次粒子を用いる場合は水の添加量16質量部で急激に粗大化する。そのため、粒子径の制御が困難になる。
【0040】
(a1)工程で添加する水には、後の(a4)工程で高表面積を維持しながら熱凝集させることができることから、リンを添加することが好ましい。ここで加えるリンの形態としては、リン酸、六フッ化リン酸アンモニウム等が挙げられる。
リンの添加濃度は、使用したタンタル二次粒子を100質量%として、リン原子換算で、0.01〜0.03質量%(100〜300ppm)であることが好ましい。
(a1)工程の時間は1〜6分であることが好ましい。(a1)工程の時間が1分以上であれば、タンタル二次粒子を充分に造粒できる。ただし、6分を超えても攪拌時間に応じた造粒効果が生じにくくなるため、無益である。
【0041】
[(a2)工程]
(a2)工程では、水を添加せずに低速翼と高速翼によって攪拌する。この工程により、(a1)工程により得た含水粉の内部に含まれた水が表面に染み出し、この水がバインダーとなってタンタル二次粒子同士がさらに結合する。
ここで、高速翼を作用させないと、水のバインダー効果が強く現れて粗大化する粒子と、バインダー効果が不充分で微細なまま残存する粉末とに分かれ易く、粒子径分布が広くなる。さらに、高速翼を作用させた場合には適切であった水の量でも造粒が進行しない場合がある。高速翼を作用させずに水を多く含浸させた後に途中から高速翼を作用させると造粒が急激に進行して巨大な粒子に凝集してしまう。
【0042】
(a2)工程の時間は5〜30分であることが好ましく、5〜15分であることがより好ましい。(a2)工程の時間が5分以上であれば、充分に造粒させることができる。ただし、30分を超えて攪拌しても時間に応じた効果が生じにくくなるため、無益であるだけでなく、凝集が進む粒子と破砕される粒子とに分かれ易く、粒子径分布が広くなる傾向にある。
【0043】
(a2)工程において、造粒装置として不二パウダル社製スパルタン・リューザーを用いた場合の低速翼12及び高速翼13の回転数は(a1)工程と同様である。また、造粒装置として深江パウテック社製ハイフレックスグラルを用いた場合の低速翼22の回転数、高速翼23の回転数は(a1)工程と同様である。
必要に応じて、(a1)工程と(a2)工程を繰り返すことも可能であるが、各々一回であることが好ましい。
【0044】
[(a3)工程]
(a3)工程における造粒粉の乾燥方法としては、例えば、加熱乾燥法、真空乾燥法、真空加熱乾燥法、水蒸気乾燥法等を適用することができる。水蒸気乾燥法における加熱温度は110〜150℃であることが好ましい。加熱温度が110℃であれば、短時間で充分に乾燥できるが、150℃を超えると、必要以上に加熱するため、エネルギーの浪費になる。
【0045】
乾燥により、粒子径250μm以上の粗大粒子が形成されてしまった場合には、その粗大粒子を粉砕し嵩密度0.2〜1.0g/cmのものを篩い分けて、(a1)工程におけるタンタル二次粒子に混ぜて再利用してもよい。
また、(a3)工程(乾燥)前であれば、予備混合工程(水を添加する前)に投入することで、二次粒子を凝集させている水分を、水分を含まない他の粒子に分散させて、解砕させて再利用してもよい。
【0046】
[(a4)工程]
(a4)工程では、(a3)工程により得た乾燥塊状物を加熱し、焼結させる。
焼結温度は800〜1250℃であることが好ましい。焼結温度が800℃であれば、短時間で充分に焼結できるが、1250℃を超えると、必要以上に加熱するため、一次粒子の好ましくない粗大化が生じると共にエネルギーの浪費になる。
焼結時間は10分〜2時間であることが好ましい。焼結時間が10分以上であれば、充分に焼結させることができるが、2時間で焼結はほぼ完結しているため、それ以上の焼結するのは無益である。
【0047】
[脱酸素工程]
タンタル凝集粒子としては酸素が含まれないことが求められるため、上記製造方法では、脱酸素処理を適宜行うことが好ましい。脱酸素処理の方法としては、例えば、マグネシウム等の還元剤を添加し、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中あるいは真空中で、還元剤の融点以上沸点以下の温度で加熱する方法などが挙げられる。
脱酸素処理は1回であってもよいが、複数回繰り返すことが好ましく、2回繰り返すことがより好ましい。
脱酸素処理は、タンタル凝集粒子(Y)と混合した後に、タンタル凝集粒子(Y)と共に行ってもよい。
【0048】
<タンタル凝集粒子(Y)の製造方法(b)>
タンタル凝集粒子(Y)を得るための製造方法(b)は、タンタル二次粒子に、水を添加して、造粒装置により攪拌し、含水塊状物を得る工程(以下「(b1)工程」という。)と、その後、前記含水塊状物を乾燥させて乾燥塊状物を得る工程(以下「(b2)工程」という。)と、該乾燥塊状物を篩に通して球形化する工程(以下「(b3)工程」という。)と、前記球形化した乾燥塊状物を焼結させる工程(以下「(b4)工程」という。)を有する。
また、製造方法(b)では、(b4)工程の後に脱酸素工程を備えることが好ましい。
【0049】
[(b1)工程]
(b1)工程で使用するタンタル二次粒子は、(a1)工程で使用するタンタル二次粒子と同様に、溶融還元タンタル二次粒子、気相還元タンタル二次粒子が好ましい。特に、溶融還元タンタル二次粒子であることが、造粒が容易であることから好ましい。
(b1)工程で使用する造粒装置は、製造方法(a)について説明したものと同じである。
【0050】
(b1)工程では、撹拌前、撹拌の最中、撹拌した後のいずれかで、水を添加する。添加した水はバインダーとして機能する。このときに添加する水の量によって、得られるタンタル凝集粒子の嵩密度を調整できる。嵩密度をより低くできる好ましい水の添加量は、使用するタンタル二次粒子や造粒装置の種類によって異なる。
(a1)工程で説明したのと同様の理由で、添加する水には、リンやホウ素等が添加されていることが好ましく、特にリンが添加されていることがより好ましい。リンの形態、リンまたはホウ素の添加量は、(a1)工程で説明したのと同様である。
【0051】
水の添加方法としては、上記造粒装置を用いて攪拌しながら水を添加する方法、撹拌前又は後に水中で沈降させた後に、余剰の上澄み液を除去する方法、撹拌前又は後に水を混合する方法、又はこれらを組み合わせた方法などが挙げられる。
中でも、上記造粒装置を用いて攪拌しながら水を添加することが好ましい。攪拌の効果により、添加した水による部分的な凝集が回避出来ると共に凝集が均一になる上に、処理時間が短くて済むからである。
すなわち、(b1)工程は、水を添加しながら造粒装置により攪拌する工程を有することが好ましい。その場合、タンタル二次粒子をあらかじめ均一化する目的で、水を添加しながら造粒装置により攪拌する工程の前にタンタル二次粒子を予備混合する工程を備えることが好ましい。また、水を添加しながら造粒装置により攪拌する工程の後に、含水塊状物を、水を添加せずにさらに攪拌する工程を行ってもよい。
【0052】
(b1)工程が、水を添加しながら造粒装置により攪拌する工程を有する場合、当該工程はタンタル凝集粒子(X)を得るための製造方法(a)の(a1)工程(水を添加しながら、造粒装置により攪拌して含水塊状物を得る工程)と共通するので、同時に行うことが可能である。
また、(b1)工程が、予備混合する工程を有する場合、この工程を、前記(a1)工程における予備混合工程と同時に行うこともできる。
また、(b1)工程が、含水塊状物を、水を添加せずにさらに攪拌する工程を有する場合、この工程を、前記(a2)工程と同時に行うことができる。
(b1)工程が、予備混合する工程と、その後水を添加しながら造粒装置により攪拌する工程と、水を添加せずにさらに攪拌する工程を有する場合、タンタル凝集粒子(X)を得るための予備混合工程、(a1)工程、及び(a2)工程を行い、(a2)工程後に得られた含水塊状物の一部を、タンタル凝集粒子(Y)製造用としてとりわけ、次の(b2)工程に供することができる。
【0053】
造粒装置を用いると、水を添加することによって、含水塊状物が1個〜数十個形成される。具体的な数は使用したタンタル二次粒子の粉砕物の量によって異なるが、粉砕物のほぼ全量を含水塊状物にする。含水塊状物にならなかった装置の壁等に付着した粉砕物については、回収して再度そのまま粉砕物に混ぜて使用できる。
得られた含水塊状物は、粒子径が2〜10cmの粗大粒子である。粒子径が2cm未満の粒子では、目的のタンタル凝集粒子を得ることが困難であり、10cmを超える粗大粒子は実質的に得られない。
【0054】
[(b2)工程]
(b2)工程では、含水塊状物を乾燥して、乾燥塊状物を得る。(b2)工程では、目的のタンタル凝集粒子を容易に製造できることから、乾燥塊状物の水分量を1.0質量%以下にすることが好ましい。また、乾燥時間を短くする点では、0.3質量%以上にすることが好ましい。また、単位表面積あたりの水分量の観点では、0.5〜1.5mg/mの含水率に調整することが好ましい。
乾燥方法としては、加熱乾燥法、真空乾燥法、真空加熱乾燥法等を適用することができる。これらの中でも、充分に乾燥できることから、真空乾燥法、真空加熱乾燥法が好ましい。
加熱する場合の乾燥温度は80〜120℃であることが好ましい。乾燥温度が80℃以上であれば、短時間で充分に乾燥でき、120℃以下であれば、得られる乾燥塊状物を容易に解砕できるようになる。
【0055】
[(b3)工程]
(b3)工程では、乾燥工程で得た乾燥塊状物を篩に通して、解砕して、球形化粒子を得る。篩としてはバッチ式のものが用いられる。通常、篩は、水平方向または鉛直方向に振動させたり、円運動させたりすることにより、乾燥塊状物を下方に落下させる。
篩としては、例えば、メッシュ、パンチングメタルなどを用いることができる。篩は一段で使用してもよいし、多段に重ねて使用してもよい。
篩の上には通過促進用ボールを配置することが好ましい。篩の上に通過促進用ボールを配置すると、ボールが篩上で跳ねて篩の振動を大きくできるため、乾燥塊状物が篩を通過する時間を短くできる。
【0056】
(b3)工程では、目的とする粒子径分布に応じて選択した開口面積の篩を用いる。キャパシタ用のタンタル凝集粒子としては、体積基準の粒子径が20〜100μmであることが好ましい。全タンタル凝集粒子の体積基準の粒子径を100μm以下にする場合には、目開きが75μm以下のメッシュを用いることが好ましい。また、全タンタル凝集粒子の体積基準の粒子径を20μm以上にする場合には、目開きが33μm以上のメッシュを用いることが好ましい。
(b3)工程で解砕しなかった乾燥塊状物が残った場合には、(b1)工程のタンタル二次粒子として再利用できる。
【0057】
また、(b3)工程において篩を多段にする場合には、選択する篩の開口面積によって、乾燥塊状物の全部の篩の通過時間が異なる。したがって、使用する篩を適切に組み合わせることにより、乾燥塊状物の篩の通過時間を短くすることができる。乾燥塊状物の篩の通過時間を短くできる篩の組み合わせとしては、例えば、60メッシュ、100メッシュ、160メッシュおよび200メッシュの組み合わせなどが挙げられる。
【0058】
(b3)工程では、より球形化した粒子が得られることから、球形化粒子を熱処理する前に、篩を通過した粉体を板上で振動または転動させることが好ましい。
篩を通過した粉体を板上で振動させる方法としては、板を水平方向または鉛直方向に振動させる方法が挙げられる。
篩を通過した粉体を板上で転動させる方法としては、板をその重心を軸として回転させる方法、板を円運動させる方法などが挙げられる。平板の板を回転させる場合には、板を水平に配置してもよいし、水平方向に対して斜めに配置してもよいが、篩を通過した粉体の相互接触による破砕を少なくできることから水平が好ましい。
このときに使用する板としては、例えば、平板、球面状に凹んだ板、湾曲した板などを用いることができるが、篩を通過した粉体の相互接触による破砕を少なくできることから平板が好ましい。板の縁部には、振動時または転動時に、篩を通過した粉体がこぼれ出ないようにするために、側板が立設されていてもよい。
また、板として、篩を通過した粉体を受けるための受け容器の底面を利用しても構わない。受け容器の底面を板として利用する場合には、乾燥塊状物を篩に通して解砕すると同時に、篩の振動や円運動を利用して、篩を通過した粉体を受け容器の底面にて球形化することができる。
【0059】
(b3)工程では、篩を通過した粉体が粉砕されにくく、篩を通過した時点での粒子径をほぼそのまま維持することができる。特に粒子径10μm未満の微粉が過剰に発生することがない。これは、振動や転動では、攪拌のように篩を通過した粉体に強い剪断力を付与することがないためと考えられる。さらに、篩を通過した粉体同士の結合も生じにくい。これは、振動や転動では、篩を通過した粉体同士が強い衝撃力で衝突することがなく、しかも篩を通過した粉体が乾燥状態にあるためと考えられる。このように、球形化工程では、粒子径が大きく変化することなく、かどが消失するように篩を通過した粉体が変形するため、篩の開口面積に応じて粒子径が揃った球形化粒子を形成させることができる。
【0060】
上記篩の通過と板上での振動または転動とは、交互に複数回行ってもよいし、各々1回のみであっても構わない。
篩の通過と板上での振動または転動とを交互に複数回行う場合には、例えば、各解砕工程にて、受け容器上に配置した一段の篩に、乾燥塊状物または前段の篩を通過した粉体を通過させ、受け容器にて該受け容器上の篩を通過した粉体を転動または振動させる方法が採用される。各解砕工程で用いる篩を一段にする場合には、効率的に粒子径を小さくできる点で、1回目の解砕工程で用いる篩の開口面積を最も広くし、2回目以降の解砕工程で用いる篩の開口面積を順次小さくすることが好ましい。
篩の通過と板上での振動または転動とを1回のみ行う場合には、例えば、受け容器上に多段に配置した篩に、乾燥塊状物を通過させ、受け容器にて該受け容器上の篩を通過した粉体を転動または振動させる方法が採用される。篩を多段にする場合には、粒子径を効率的に小さくする点で、下段になるにつれて開口面積が小さくなるように配置することが好ましい。
【0061】
[(b4)工程]
(b4)工程では、(b3)工程により得た球形化粒子を加熱し、焼結させる。
焼結温度は800〜1250℃であることが好ましい。焼結温度が800℃以上であれば、短時間で充分に焼結できるが、1250℃を超えると、必要以上に加熱するため、粗大化が生じると共にエネルギーの浪費になる。
焼結時間は10分〜2時間であることが好ましい。焼結時間が10分以上であれば、充分に焼結させることができるが、2時間で焼結はほぼ完結しているため、それ以上の時間をかけるのは無益である。
【0062】
[脱酸素工程]
タンタル凝集粒子としては酸素が含まれないことが求められるため、製造方法(b)でも、脱酸素処理を適宜行うことが好ましい。脱酸素処理の方法、及び好ましい回数は、製造方法(a)で説明したのと同様である。脱酸素処理は、タンタル凝集粒子(X)と混合した後に、タンタル凝集粒子(X)と共に行ってもよい。
【0063】
<タンタル凝集粒子(Y)の製造方法(c)>
タンタル凝集粒子(Y)を得るための製造方法(c)は、タンタル二次粒子に、水を添加して、粉砕器により粉砕し、含水塊状物を得る工程(以下「(c1)工程」という。)と、その後、前記含水塊状物を乾燥させて乾燥塊状物を得る工程(以下「(c2)工程」という。)と、該乾燥塊状物を篩に通して球形化する工程(以下「(c3)工程」という。)と、前記球形化した乾燥塊状物を焼結させる工程(以下「(c4)工程」という。)を有する。
また、製造方法(c)では、(c4)工程の後に、脱酸素工程を備えることが好ましい。
【0064】
(c1)工程で使用するタンタル二次粒子は、(a1)工程で使用するタンタル二次粒子と同様に、溶融還元タンタル二次粒子、気相還元タンタル二次粒子が好ましい。特に、溶融還元タンタル二次粒子であることが、造粒が容易であることから好ましい。
(c1)工程で使用する粉砕装置とは、粉砕機能を有する装置であって、前記造粒装置を除くものである。粉砕機としては、例えば、ボールミル、チョッパーミル、スピードミル、ジョークラッシャー、カッターミル、スクリーンミル、ジェットミルなどが挙げられる。
【0065】
(c1)工程では、粉砕前、粉砕の最中、粉砕した後のいずれかで、水を添加する。添加した水はバインダーとして機能する。このときに添加する水の量によって、得られるタンタル凝集粒子の嵩密度を調整できる。嵩密度をより低くできる好ましい水の添加量は、使用するタンタル二次粒子や造粒装置の種類によって異なる。
(a1)工程で説明したのと同様の理由で、添加する水には、リンやホウ素等が添加されていることが好ましく、特にリンが添加されていることがより好ましい。リンの形態、リンまたはホウ素の添加量は、(a1)工程で説明したのと同様である。
水の添加方法としては、上記粉砕装置を用いて粉砕しながら水を添加する方法、粉砕前又は後に水中で沈降させた後に、余剰の上澄み液を除去する方法、粉砕前又は後に水を混合する方法、又はこれらを組み合わせた方法などが挙げられる。
【0066】
(c2)工程では、含水塊状物を乾燥して、乾燥塊状物を得る。(c2)工程は、製造方法(b)における(b2)工程と同様である。
(b3)工程では、乾燥工程で得た乾燥塊状物を篩に通して、解砕して、球形化粒子を得る。(c3)工程は、製造方法(b)における(b3)工程と同様である。
(c3)工程で解砕しなかった乾燥塊状物が残った場合には、(c1)工程のタンタル二次粒子として再利用できる。
(c4)工程では、(c3)工程により得た球形化粒子を加熱し、焼結させる。(c4)工程は、製造方法(b)における(b4)工程と同様である。
製造方法(c)でも、脱酸素処理を適宜行うことが好ましい。脱酸素処理の方法、及び好ましい回数は、製造方法(a)で説明したのと同様である。脱酸素処理は、タンタル凝集粒子(X)と混合した後に、タンタル凝集粒子(X)と共に行ってもよい。
【0067】
<タンタル凝集粒子(Y)の製造方法(d)>
タンタル凝集粒子(Y)を得るための製造方法(d)は、タンタル二次粒子に、水を添加して含水塊状物を得る工程(以下「(d1)工程」という。)と、その後、前記含水塊状物を乾燥させて乾燥塊状物を得る工程(以下「(d2)工程」という。)と、該乾燥塊状物を焼結させて焼結塊状物を得る工程(以下「(d3)工程」という。)と、該焼結塊状物を微細化する工程(以下「(d4)工程」という。)を有する。
また、製造方法(d)では、(d4)工程の後に脱酸素工程を備えることが好ましい。
【0068】
(d1)工程で使用するタンタル二次粒子は、(a1)工程で使用するタンタル二次粒子と同様に、溶融還元タンタル二次粒子、気相還元タンタル二次粒子が好ましい。特に、溶融還元タンタル二次粒子であることが、造粒が容易であり、本発明に適した強度の粒子を得易いことから好ましい。
(a1)工程で説明したのと同様の理由で、添加する水には、リンやホウ素等が添加されていることが好ましく、特にリンが添加されていることがより好ましい。リンの形態、リンまたはホウ素の添加量は、(a1)工程で説明したのと同様である。
水の添加方法としては、タンタル二次粒子を水中で沈降させた後に、余剰の上澄み液を除去する方法、タンタル二次粒子に水を混合する方法などが挙げられる。
(d2)工程では、含水塊状物を乾燥して、乾燥塊状物を得る。(d2)工程は、製造方法(b)における(b2)工程と同様である。
(d3)工程では、(d2)工程により得た乾燥塊状物を加熱し、焼結させて焼結塊状物を得る。(d3)工程は、製造方法(b)における(b4)工程と同様である。
【0069】
(d4)工程では、焼結塊状物を微細化する。微細化の方法としては、特開2006−336042号公報に記載の方法を用いることが好ましい。すなわち、焼結塊状物を、差動ロールを備えた解砕機により解砕することが好ましい。差動ロール21とは、凹凸が同一の周期で形成されている2本のロールが、互いの凹凸が対向するように間隔を有して配置され、これらが互いに逆回転し、その回転数が異なるものである。
この場合、解砕前に、凝集粉を予備粉砕することが好ましい。予備粉砕には、例えば、チョッパーミル、スピードミル、ジョークラッシャー、カッターミル、スクリーンミルなどの粗砕用粉砕機を使用できる。
微細化の方法としては、特開平4−362101号公報に記載のように、チョッパーミル等の粉砕機により粉砕する方法も採用できる。
微細化後には、篩い分けを行い、所定の粒径範囲の粉末を回収することが好ましい。
製造方法(d)でも、脱酸素処理を適宜行うことが好ましい。脱酸素処理の方法、及び好ましい回数は、製造方法(a)で説明したのと同様である。脱酸素処理は、タンタル凝集粒子(X)と混合した後に、タンタル凝集粒子(X)と共に行ってもよい。
【0070】
<混合工程>
混合工程では、製造方法(a)によりタンタル凝集粒子(X)と、製造方法(b)〜(d)の何れかの製造方法により得られたタンタル凝集粒子(Y)とを混合する。混合は、衝撃が生じない混合機、例えば、V型ブレンダーやコニカルブレンダー等、により、行うことが好ましい。
混合比率を適宜変更することにより、微細粒子の存在量や、ペレットにおける空孔分布を調整することができる。
【0071】
<タンタル凝集粒子(X)の特性>
タンタル凝集粒子(X)は、粒子強度が高く、微細粒子を実質的に含まず、衝撃を受けても微細粒子が発生しにくいという特徴を有する。衝撃を受けた際の微細粒子の発生しやすさは、超音波処理後の微細粒子の割合により評価することができる。
具体的には、25Wの超音波を10分照射した後の、3μm以下の累積粒子割合(%)により評価する。3μm以下の累積粒子割合(%)としたのは、3μm以下の累積粒子割合(%)で評価した粒子強度と、その粒子を用いたペレットにおける空孔径1μm前後の空孔量との間に相関関係が見られたからである。また、超音波処理の時間を10分としたのは、10分の処理で、タンタル凝集粒子(Y)との相違が鮮明に得られるからである。
タンタル凝集粒子(X)は、25Wの超音波を10分照射した後に、粒子径3μmの累積粒子割合(%)が5質量%以下となる。当該割合は、1〜4質量%であることがより好ましい。当該割合が低い程、タンタル凝集粒子(Y)と混合することによる効果が得やすい。
【0072】
タンタル凝集粒子(X)のモード径は、5〜120μmであることが好ましく、
20〜90μmであることが、より好ましい。タンタル凝集粒子(X)のモード径が20μm以上であれば、凝集粒子の流動性が向上し、型の中に充填することが容易であり、雄型が雌型から抜けなくなるという問題も生じにくい。また、90μm以下であれば、小型や薄型のタンタルペレットの成型が可能となる。
また、タンタル凝集粒子(X)のメディアン径は、5〜100μmであることが好ましく、20〜90μmであることが、より好ましい。タンタル凝集粒子(X)のメディアン径が20μm以上であれば、凝集粒子の流動性が向上し、型の中に充填することが容易であり、雄型が雌型から抜けなくなるという問題も生じにくい。また、90μm以下であれば、小型や薄型のタンタルペレットの成型が可能となる。
モード径とメディアン径を好ましい範囲に調整するためには、(a1)工程時に添加する水の量、及び(a2)工程の攪拌時間を制御すればよい。
また、タンタル凝集粒子(X)の嵩密度は1.2〜2.5g/cmであることが好ましい。タンタル凝集粒子の嵩密度が1.2g/cm以上であれば、タンタルペレット成形時に充分な充填量を確保できる。また、2.5g/cm以下であれば、タンタルペレット成形時に充分な潰し代を確保できる。
嵩密度を好ましい範囲に調整するためには、(a1)工程時に添加する水の量、及び(a2)工程の攪拌時間を制御すればよい。
なお、タンタル凝集粒子(X)はタンタル二次粒子内部の結合性が強いものの、タンタル二次粒子間の結合力は、比較的弱い傾向がある。
【0073】
<タンタル凝集粒子(Y)の特性>
タンタル凝集粒子(Y)は、粒子強度が比較的低く、衝撃を受けなくとも若干の微細粒子を含み、衝撃を受けると、さらに微細粒子が発生しやすいという特徴を有する。衝撃を受けた際の微細粒子の発生しやすさは、前記のように、超音波処理後の微細粒子の割合により評価することができる。
タンタル凝集粒子(Y)は、25Wの超音波を10分照射した後に、粒子径3μmの累積粒子割合(%)が10質量%以上となる。当該割合は、10〜60%であることが好ましく、10〜50%であることがより好ましい。当該割合が低すぎると、タンタル凝集粒子(X)と混合することによる効果が充分に得られない。一方、当該割合が高すぎると、特許文献1〜3に記載の発明と同様に、微粉による弊害が大きくなる。
【0074】
タンタル凝集粒子(Y)のモード径は、10〜150μmであることが好ましく、20〜100μmであることが、より好ましい。タンタル凝集粒子(Y)のモード径が20μm以上であれば、凝集粒子の流動性が向上し、型の中に充填することが容易であり、雄型が雌型から抜けなくなるという問題も生じにくい。また、100μm以下であれば、小型や薄型のタンタルペレットの成型が可能となる。
また、タンタル凝集粒子(Y)のメディアン径は、10〜120μmであることが好ましく、20〜100μmであることが、より好ましい。タンタル凝集粒子(Y)のメディアン径が20μm以上であれば、凝集粒子の流動性が向上し、型の中に充填することが容易であり、雄型が雌型から抜けなくなるという問題も生じにくい。また、100μm以下であれば、小型や薄型のタンタルペレットの成型が可能となる。
モード径とメディアン径を好ましい範囲に調整するためには、(b1)、(c1)、(d1)工程時に添加する水の量、及び(b3)、(c3)工程時に使用する篩いの開口面積を制御すればよい。
また、タンタル凝集粒子(Y)嵩密度は1.2〜2.5g/cmであることが好ましい。タンタル凝集粒子の嵩密度が1.2g/cm以上であれば、タンタルペレット成形時に充分な充填量を確保できる。また、2.5g/cm以下であれば、タンタルペレット成形時に充分な潰し代を確保できる。
嵩密度を好ましい範囲に調整するためには、(b1)、(c1)、(d1)工程時に添加する水の量、及び(b3)、(c3)工程時に使用する篩いの開口面積を制御すればよい。
【0075】
<タンタル混合粉末の特性>
本発明のタンタル混合粉末は、タンタル凝集粒子(X)とタンタル凝集粒子(Y)とを混合したものである。したがって、タンタル凝集粒子(X)とタンタル凝集粒子(Y)との混合比率に応じて、両者の特性を併せ持つことになる。
タンタル凝集粒子(X)とタンタル凝集粒子(Y)の混合比率(質量比)は、両凝集粒子を単独で使用する場合の欠点を除く観点で、10:90〜90:10の範囲で調整することが好ましく、25:75〜75:25の範囲で調整することがより好ましい。
具体的なタンタル凝集粒子(X)とタンタル凝集粒子(Y)との混合比率は、タンタル凝集粒子(Y)の粒子強度、タンタル凝集粒子(X)、(Y)及び混合粉末の粉体特性、タンタル混合粉末を用いて製造するペレットの好ましい特性等に応じて、適宜決定すればよい。タンタル凝集粒子(Y)の粒子強度が低い程、タンタル凝集粒子(Y)の混合比率を低くすべきである。
【0076】
<タンタルペレット>
本発明のタンタルペレットは本発明のタンタル混合粉末を成形したものである。また、本発明のタンタルペレットの製造方法は、上記タンタル混合粉末の製造方法により製造されたタンタル混合粉末を成形して、タンタルペレットを得る方法である。
タンタルペレットの成形方法としては、例えば、タンタル混合粉末に、必要に応じて、ショウノウ(C1016O)等のバインダーを、タンタル混合粉末100質量%に対して3〜5質量%を添加し、型枠内に充填し、圧縮成形し、圧縮状態を保ったまま、1000〜1400℃で0.3〜1時間、加熱して焼結する方法が挙げられる。このような成形方法により、多孔質焼結体からなるタンタルペレットを得ることができる。
上記成形方法により得たタンタルペレットをキャパシタのアノードとして使用する場合には、タンタル混合粉末を圧縮成形する前に、タンタル混合粉末中にリード線を埋め込んでおき、タンタルペレットとリード線とを一体化させることが好ましい。
【0077】
本発明のタンタルペレットは、粒子強度が高く、数μm以下の微細粒子が発生しにくいタンタル凝集粒子(X)を混合するので、タンタル凝集粒子(Y)のみを用いたときより、流動性が高く、型の中に充填することが容易であり、雄型が雌型から抜けなくなるという問題も生じにくい。また、得られたタンタル凝集粒子から製造されるペレットの空孔が充分得られるため、アノードに固体電解質を充分に含浸させやすく、アノード抵抗を低下させやすい。
一方、粒子強度が比較的低く、数μm以下の微細粒子が発生しやすいタンタル凝集粒子(Y)を混合するので、タンタル凝集粒子(X)のみを用いたときより、静電容量に寄与しない余分な空間が残りにくい。そのため、単位体積あたりの静電容量を充分に高めることができる。また、タンタル凝集粒子(X)はタンタル二次粒子間の結合力を充分に得られない傾向があるが、タンタル凝集粒子(Y)によってもたらされる微細粒子がバインダーとなり、タンタル凝集粒子(X)のタンタル二次粒子間の結合力を高めているとも推測される。
【0078】
<キャパシタ>
上記タンタルペレットを用いたキャパシタの一例としては、タンタルペレットの表面が酸化されて得られたアノード、アノードに対向するカソード、アノードとカソードとの間に配置されからなる固体電解質層とを備えるものが挙げられる。
カソードには、陰極端子が半田付け等によって接続されている。また、アノード、カソードおよび固体電解質層で構成される部材の周囲には、樹脂外皮が形成されている。
カソードの材質としては、例えば、グラファイト、銀などが用いられる。
固体電解質層の材質としては、例えば、二酸化マンガン、酸化鉛、導電性高分子などが用いられる。
タンタルペレットの表面を酸化する際には、例えば、温度30〜90℃、濃度0.1質量%程度のリン酸、硝酸等の電解溶液中で、40〜80mA/gの電流密度で20〜60Vまで昇圧して1〜3時間処理する方法などが挙げられる。このときに酸化された部分は誘電体酸化膜になる。
上記タンタルペレットを用いることにより、誘電体酸化膜の面積が大きく、また、固体電解質が充分に充填されているため、高い電気容量を有するキャパシタを得ることができる。
【実施例】
【0079】
以下の各実験例において、特に断りのない限り、%は質量%を示す。
<タンタル二次粒子の製造>
図1に示す50Lニッケル反応器にフッ化カリウム20kgと塩化カリウム20kgを投入し、200℃で1時間水分除去した後、800℃で溶融し、攪拌機34を150回転/分で回転させ、攪拌した。この反応器内に窒素ガスを3L/分で導入しながら、フッ化タンタル酸カリウム196.4gを溶解させ、その1分後にナトリウム59.0gを添加した。このフッ化タンタル酸カリウムとナトリウムとの添加を28回繰り返した後、水洗し、フッ酸水溶液を用いて酸洗し、120℃で乾燥して、タンタル二次粒子(A1)を得た。このタンタル二次粒子(A1)の嵩密度は0.40g/cm、BET比表面積は4.13m/gであった。
【0080】
<実験例1〜5>
[凝集粒子(X1)の製造]
図3に示した不二パウダル社製スパルタン・リューザーに、タンタル二次粒子(A1)800gを入れた。
次いで、容器内のタンタル二次粒子(A1)を低速翼12および高速翼13により2分間攪拌して予備混合した。その際、低速翼の回転数を27回転/分(周速;17m/秒)、高速翼13の回転数を5400回転/分とした。
次いで、噴霧機により10質量%リン酸水溶液3.8gと純水148.6gを一定速度で噴霧しながら容器内のタンタル2次粒子を4分間攪拌した。その後、水を添加せずに10分間攪拌した。この間、低速翼の回転数を27回転/分に、高速翼13の回転数数を5400回転/分に維持した。
得られた含水塊状物を、70℃で11時間真空乾燥させて、乾燥塊状物を得た。そして、その乾燥塊状物を900℃、1時間更に1150℃、30分間、真空中で焼結させて、その熱処理物100質量%に対して4質量%のマグネシウムを添加し、750℃で加熱して脱酸素処理した。この脱酸素処理をもう1回繰り返して、嵩密度1.50g/cm、BET比表面積3.09m/gの凝集粒子(X1)を得た。
【0081】
[凝集粒子(Y1)の製造]
図3に示した不二パウダル社製スパルタン・リューザーに、タンタル二次粒子(A1)800gを入れた。
次いで、容器内のタンタル2次粒子を低速翼12および高速翼13により2分間攪拌して予備混合した。その際、低速翼の回転数を27回転/分(周速;17m/秒)、高速翼13の回転数を3000回転/分とした。
次いで、噴霧機により10質量%リン酸水溶液3.8gと純水148.6gを一定速度で噴霧しながら容器内のタンタル2次粒子を3分間攪拌した。その後、リン酸水溶液も水も添加せずに3分間攪拌した。この間、低速翼の回転数を27回転/分に、高速翼13の回転数数を3000回転/分に維持した。
【0082】
得られた含水塊状物を、120℃で16時間真空乾燥させて、乾燥塊状物を得た。そして、その乾燥塊状物の1kgを、60メッシュ(250μm開き)の篩の上に載せ、篩およびその受け容器を垂直に振動させ、20分間かけて全量篩を通過させた。
次いで、60メッシュの篩を通過した粉体の全量を、100メッシュ(150μm開き)の篩の上に載せ、篩およびその受け容器を垂直に振動させ、5分間かけて全量篩を通過させた。
さらに、100メッシュを通過した粉体100gを200メッシュ(75μm開き)の篩の上に載せ、篩およびその受け容器を垂直に振動させ、30分間かけて全量篩を通過させた。そして、200メッシュの篩を通過した粉体の全量を、330メッシュ(45μm開き)の篩の上に載せ、篩およびその受け容器を垂直に振動させて、60分間かけて全量篩を通過させて、球形化粒子を得た。
このように、順次目が細かい篩に乾燥塊状物を通過させることで、細かい粒子に解砕し、また、受け容器上で振動させることで、球形化して、球形化粒子を得た。
次いで、球形化粒子を1150℃で30分間熱処理し、その熱処理物100質量%に対して4質量%のマグネシウムを添加し、750℃で加熱して脱酸素処理した。この脱酸素処理をもう1回繰り返して、嵩密度1.29g/cm、BET比表面積2.80m/gの凝集粒子(Y1)を得た。
【0083】
[混合]
凝集粒子(X1)と凝集粒子(Y1)とを、表1に示す質量比率で混合し、実験例1〜5の粉末を得た。混合は、X1とY1を所定の割合で秤量し、非帯電袋に入れてアルゴン雰囲気中で混合することにより、行った。
なお、実験例1の粉末は凝集粒子(Y1)そのものであり、実験例5の粉末は凝集粒子(X1)そのものである。
【0084】
【表1】

【0085】
[粒子径分布]
実験例1の粉末(凝集粒子(Y1))及び実験例5の粉末(凝集粒子(X1))について、体積基準の粒子径の分布曲線を、日機装社製粒度分布測定装置マイクロトラックMT3000(検出部:Microtrac HRA 9320−x100(optical system))を用い、レーザー回折・散乱法により求めた。
図6に実験例1の粉末の粒子径分布を、図7に実験例5の粉末の粒子径分布を、各々示す。実験例1の粉末のモード径は29.8μm、メディアン径は31.7μmであった。実験例5の粉末のモード径は37.0μm、メディアン径は34.6μmであった。
【0086】
[粒子強度]
実験例1の粉末(凝集粒子(Y1))及び実験例5の粉末(凝集粒子(X1))について、日機装社製粒度分布測定装置マイクロトラックMT3000(検出部:Microtrac HRA 9320−x100(optical system)、循環超音波付加装置:Microtrac AVSR(circulation system))に内蔵された超音波照射装置により超音波を照射し、所定の処理時間経過後の粒子径を測定し、3μm以下の累積粒子割合(%)を求めた。その際、超音波の強度は25Wとした。0分後、5分後、10分後、20分後における3μm以下の累積粒子割合(%)を表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
[タンタルペレット]
実験例1〜5の粉末の各0.15gを、3.0mm径、密度4.5g/cmの円盤状に成形し、1200℃で20分間焼結することにより、タンタルペレットを製造した。
得られたタンタルペレットの空孔分布を、島津製作所社製オートポアIV 9500により測定した。結果を図8に示す。また、空孔径区分毎の質量比率を表3に示す。なお、図8の空孔径分布は、空孔径が大きい側からの累積表示としている。
【0089】
【表3】

【0090】
<実験例6〜10>
[SP粒子とSV粒子の調製]
図3に示した不二パウダル社製スパルタン・リューザーに、タンタル二次粒子(A1)800gを入れた。
次いで、容器内のタンタル二次粒子(A1)を低速翼12および高速翼23により2分間攪拌して予備混合した。その際、低速翼の回転数を27回転/分(周速;17m/秒)、高速翼23の回転数を3000回転/分とした。
次いで、噴霧機により10質量%リン酸水溶液3.8gと純水156.2gを、順次一定速度で噴霧しながら容器内のタンタル2次粒子を3分間攪拌した。その後、リン酸水溶液も水も添加せずに3分間攪拌した。この間、低速翼の回転数を27回転/分に、高速翼23の回転数数を3000回転/分に維持した。得られた含水塊状物を、120℃で16時間真空乾燥させて、乾燥塊状物を得た。
得られた乾燥塊状物の0.5kgを、60メッシュ(250μm開き)の篩の上に載せ、篩およびその受け容器を垂直に振動させ、10分間かけて篩分し篩上粉体をSV粒子とし、篩通過粒子をSP粒子とした。
【0091】
[凝集粒子(X2)の製造]
SP粒子の全量(約450g)を1150℃で30分間熱処理し、その熱処理物100質量%に対して5質量%のマグネシウムを添加し、750℃で加熱して脱酸素処理した。この脱酸素処理をもう1回繰り返して、嵩密度1.84g/cm、BET比表面積2.89m/gの凝集粒子(X2)を得た。
【0092】
[凝集粒子(Y2)の製造]
SV粒子の全量(約350g)を、100メッシュ(150μm開き)の篩の上に載せ、篩およびその受け容器を垂直に振動させ、5分間かけて全量篩を通過させた。
さらに、100メッシュを通過した粉体100gを200メッシュ(75μm開き)の篩の上に載せ、篩およびその受け容器を垂直に振動させ、25分間かけて全量篩を通過させた。
このように、順次目が細かい篩に乾燥塊状物を通過させることで、細かい粒子に解砕し、また、受け容器上で振動させることで、球形化して、球形化粒子を得た。
次いで、球形化粒子を1150℃で30分間熱処理し、その熱処理物100質量%に対して5質量%のマグネシウムを添加し、750℃で加熱して脱酸素処理した。この脱酸素処理をもう1回繰り返して、嵩密度1.63g/cm、BET比表面積3.04m/gの凝集粒子(Y2)を得た。
【0093】
[混合]
凝集粒子(X2)と凝集粒子(Y2)とを、表4に示す質量比率で混合し、実験例6〜10の粉末を得た。混合は、X2とY2を所定の割合で秤量し、非帯電袋に入れてアルゴン雰囲気中で混合することにより、行った。
なお、実験例6の粉末は凝集粒子(Y2)そのものであり、実験例10の粉末は凝集粒子(X2)そのものである。
【0094】
【表4】

【0095】
[粒子強度]
実験例6の粉末(凝集粒子(Y2))及び実験例10の粉末(凝集粒子(X2))について、実験例1、実験例5の粒子強度評価と同様にして、超音波を照射し、所定の処理時間経過後の3μm以下の累積粒子割合(%)を求めた。0分後、5分後、10分後、20分後における3μm以下の累積粒子割合(%)を表5に示す。
【0096】
【表5】

【0097】
[タンタルペレット]
実験例6〜10の粉末の各0.15gを、3.0mm径、密度4.5g/cmの円盤状に成形し、1200℃で20分間焼結することにより、タンタルペレットを製造した。
得られたタンタルペレットの空孔分布を、実験例1〜5と同様にして測定した。空孔径区分毎の質量比率を表6に示す。
【0098】
【表6】

【0099】
図8、表3、表6から明らかなように、本発明の実施例に該当する実験例2〜4、7〜9では、ペレットにおける空孔径0.7μm以上1μm未満の空孔比率が高かった。したがって、本発明によれば、アノードに固体電解質を充分に含浸させやすく、アノード抵抗を低下させやすいと考えられる。
これに対して、実験例1、6では、ペレットにおいて空孔径0.7μm以上の空孔が実質的に存在せず、アノードに固体電解質を含浸させにくく、アノード抵抗が高くなりやすいと考えられる。
また、実験例1、6では、空孔径0.7μm以上1μm未満の空孔比率は高いものの、空孔径1μm以上の空孔比率も高かった。そのため、静電容量に寄与しない余分な空間が多く、充分な静電容量が得られないものと考えられる。
【符号の説明】
【0100】
11,21 容器
12,22 低速翼
13,23 高速翼
14,24 噴霧機
30 溶融反応装置
31 反応器
32 フッ化タンタル酸カリウム供給管
33 ナトリウム供給管
34 攪拌翼
35 加熱体
40 気相反応装置
41 反応器
42 塩化タンタル供給管
43 ナトリウム供給管
44 不活性ガス供給管
45 取出管
46 加熱体
47 排気ガス管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の製造方法(a)によりタンタル凝集粒子(X)を得る工程と、下記の製造方法(b)〜(d)の何れかの製造方法によりタンタル凝集粒子(Y)を得る工程と、得られたタンタル凝集粒子(X)とタンタル凝集粒子(Y)とを混合する工程を備えることを特徴とするタンタル混合粉末の製造方法。
製造方法(a):
タンタル塩を還元して得られたタンタル二次粒子を、水を添加しながら、低速翼及び該低速翼の10倍以上の回転数で回転する高速翼を備えた造粒装置により攪拌して含水塊状物を得る工程と、
前記造粒装置により、前記含水塊状物を、水を添加せずにさらに攪拌する工程と、
その後、前記含水塊状物を乾燥させて乾燥塊状物を得る工程と、
該乾燥塊状物を焼結させる工程を有するタンタル凝集粒子の製造方法。
製造方法(b):
タンタル塩を還元して得られたタンタル二次粒子に、水を添加して、低速翼及び該低速翼の10倍以上の回転数で回転する高速翼を備えた造粒装置により攪拌し、含水塊状物を得る工程と、
その後、前記含水塊状物を乾燥させて乾燥塊状物を得る工程と、
該乾燥塊状物を篩に通して球形化する工程と、
前記球形化した乾燥塊状物を焼結させる工程を有するタンタル凝集粒子の製造方法。
製造方法(c):
タンタル塩を還元して得られたタンタル二次粒子に、水を添加して、粉砕機(但し、前記造粒装置に該当するものを除く。)により粉砕し、含水塊状物を得る工程と、
その後、前記含水塊状物を乾燥させて乾燥塊状物を得る工程と、
該乾燥塊状物を篩に通して球形化する工程と、
前記球形化した乾燥塊状物を焼結させる工程を有するタンタル凝集粒子の製造方法。
製造方法(d):
タンタル塩を還元して得られたタンタル二次粒子に、水を添加して、含水塊状物を得る工程と、
その後、前記含水塊状物を乾燥させて乾燥塊状物を得る工程と、
前記乾燥塊状物を焼結させて焼結塊状物を得る工程と、
該焼結塊状物を微細化する工程を有するタンタル凝集粒子の製造方法。
【請求項2】
前記タンタル凝集粒子(Y)を得る工程が、前記製造方法(b)であり、かつ該製造方法(b)における含水塊状物を得る工程が、水を添加しながら前記造粒装置により攪拌する工程を有する請求項1に記載のタンタル混合粉末の製造方法。
【請求項3】
タンタル凝集粒子(X)とタンタル凝集粒子(Y)とを混合する工程の後、脱酸素処理を行う工程を有する請求項1または2に記載のタンタル混合粉末の製造方法。
【請求項4】
さらに、タンタル凝集粒子(X)を脱酸素処理する工程及び/又はタンタル凝集粒子(Y)を脱酸素処理する工程を、タンタル凝集粒子(X)とタンタル凝集粒子(Y)とを混合する工程の前に備える、請求項1〜3の何れかに記載のタンタル混合粉末の製造方法。
【請求項5】
下記タンタル凝集粒子(X)とタンタル凝集粒子(Y)とが混合されていることを特徴とするタンタル混合粉末
タンタル凝集粒子(X):
25Wの超音波を10分照射した後に、粒子径3μm以下の累積粒子割合が5質量%以下となるタンタル凝集粒子。
タンタル凝集粒子(Y):
25Wの超音波を10分照射した後に、粒子径3μm以下の累積粒子割合が10質量%以上となるタンタル凝集粒子。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかの製造方法で得られたタンタル混合粉末を成形することを特徴とするタンタルペレットの製造方法。
【請求項7】
請求項5のタンタル混合粉末を成形したことを特徴とするタンタルペレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−265520(P2010−265520A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119001(P2009−119001)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000186887)キャボットスーパーメタル株式会社 (18)
【Fターム(参考)】