説明

タンデム弾頭用子弾頭

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ホーミング装置を有する誘導弾等、弾頭の前方に機器を設けた弾体に搭載されるタンデム弾頭用子弾頭に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、戦車の対戦車兵器に対する防護策の一つとして、反応装甲(Explosive Reactive Armor:ERA)が注目されている。ERAは、主にモンロー効果(弾殻の内部にさく薬を漏斗状に充填し、弾着時漏斗孔の中心線上に爆発のエネルギーを集中させること。)を有する対戦車榴弾(High Explosive Anti−Tank:HEAT)に対し抑止力を発揮するものであり、一例ではHEATの貫徹力の80%を減殺させ得るという結果も報告されている。
【0003】ERAの基本的な構造は、2枚の鋼板の間に爆薬を挟み込んだものであり、戦車の主装甲の表面に所要の距離をおいて装着できるように設けられている。ERAのHEATに対する貫徹力阻害は、弾頭の爆発によって生成されたジェットをERAの爆薬の爆発と鋼板の飛しょうとによって散乱させることにより行われる。戦車にERA装着による防護力向上に対し、HEAT側としては、ERAに対処することが最重要課題となっており、その一対抗策として、タンデム弾頭(子弾頭と主弾頭の2つの弾頭で構成される。)の開発が進められている。
【0004】タンデム弾頭は、2段攻撃には対処できないというERAの欠点を利用したもので、ERA起爆方式の場合、子弾頭のジェットによってERAを起爆させてその鋼板が軸線を離脱(ERAが無力化)した後、主弾頭のジェットが阻害を受けずに進行して主装甲を貫徹する一方、ERA無反応方式の場合、子弾頭のジェットによってERAの爆薬を飛散させ、爆薬の無くなった部分を主弾頭のジェットが通過するため、ERAは起爆せず(ERAが無力化し)主弾頭のジェットは阻害を受けずに主装甲を貫徹するものである。従来、この種のタンデム弾頭用子弾頭としては、図4に示すように、円筒状の弾殻21内にさく薬22を漏斗状に充填すると共に、その表面をライナ23で覆い、かつ弾殻21の後端部に伝爆薬24を取り付けた円筒状子弾頭25が知られている。
【0005】この円筒状子弾頭25は、図5に示すように、ATM26の弾体27内の前方に搭載された誘導装置等の搭載物28の適宜後方に搭載されている。そして、円筒状子弾頭25は、ATM26が戦車の反応装甲31に接近又は接触すると伝爆薬24の起爆によりさく薬22が爆発され、この爆発のエネルギーのモンロー効果によるジェットによってERA31を無力化し、しかる後に信管32によって主弾頭29のさく薬30が爆発され、そのジェットにより主装甲33が貫徹されるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この従来のタンデム弾頭用子弾頭では、ATMにタンデム弾頭を搭載する場合、子弾頭の前方に誘導装置等の搭載物が存在することがあるので、子弾頭のジェットを、誘導装置等の阻害を受けながらもERAを無力化し得る威力を有するものとする必要があり、子弾頭には、必然的に口径の大きなものが要求される。このように、口径の大きな子弾頭をATMに搭載する場合、子弾頭の大型化の他、図6に示すように、ATM26の弾体27内におけるレイアウトの効率が悪くなり、デッドスペース34の増加につながる。これは、ATMのみならず全ての飛しょう体に恒常的に要求される小型軽量化に対して悪影響を与える結果となる。そこで、本発明は、弾体内でのレイアウトの効率を高め、かつ小型化を可能とするタンデム弾頭用子弾頭の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の第1のタンデム弾頭用子弾頭は、弾頭の前方に機器を設けた弾体に搭載されるタンデム弾頭用子弾頭であって、弾体の内周又は外周に沿った円弧状又はリング状に形成されているものである。又、第2のタンデム弾頭用子弾頭は、弾頭の前方に機器を設けた弾体に搭載されるンデム弾頭用子弾頭であって、弾体の内周又は外周に沿った円弧状又はリング状に形成され、かつ上記弾体内に搭載された誘導装置等の搭載物の外周に配置されているものである。ここで、リング状とは、弾体の内周又は外周の全周に沿うリングと、複数の円弧状のものを内周又は外周に沿って適宜に離隔して配置したものとの双方をいう。
【0008】
【作用】上記第1の手段においては、弾体内に配置された子弾頭によって生ずるデットスペースが減少する。又、第2の手段においては、第1の手段と同様の作用の他に、子弾頭のジェットが搭載物の阻害を受けることがない。
【0009】
【実施例】次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1,図2は本発明の一実施例のタンデム弾頭用子弾頭の斜視図、その子弾頭を備えたATMの要部の概略図である。この子弾頭1は、対戦車誘導弾(ATM)2の弾体3の内周に沿った円弧状にして、かつATM2の前方(図1,図2においては先方)へ開口したチャンネル状に形成され、ATM2の弾体3内に搭載された誘導装置等の搭載物4の周囲に配置された弾殻5を有している。弾殻5内には、その幅方向の中間部を最深部とするV字状のさく薬6が、弾着時に幅方向の中間部を通る曲面C.Sに曲面ジェットを生成させ、かつATM2の適宜前方におけるその中心線L上のジェット焦点Oに収斂するように充填され、このさく薬6の表面は、ライナ7によって覆われている。そして、弾殻5の底部外側における幅方向の中間部には、伝爆薬8が取付けられている。
【0010】上記構成の子弾頭1を備えたATM2においては、伝爆薬8の起爆によりさく薬6が爆発され、その爆轟波を曲面C.S上に集中させると共にジェット焦点Oに収斂させるモンロー効果によって、ジェット焦点O上に位置する図示しない戦車のERAに衝突させてERAを無力化させ、その後、ATM2の図示しない主弾頭が起爆し、主弾頭のジェットがERAの阻害を受けずに主装甲を貫徹するものである。従って、このタンデム弾頭用子弾頭1によれば、図3に示すようにATM2の弾体3内におけるデッドスペース9が極めて小さくなり、ATM2内でのレイアウトの効率が非常に高くなる。ジェットをジェット焦点Oに収斂させるに際し、ジェットが搭載物4によって阻害されることがなく、子弾頭1を小型化することができる。
【0011】なお、上述した実施例においては、子弾頭1をATM2の弾体3の内周に沿う円弧状とする場合について説明したが、これに限定されるものではなく、弾体3の内周又は外周の全周に沿うリングとしたり、あるいは複数の円弧状のものを円周方へ適宜に離隔して配置してリング状としてもよく、単一の円弧状のものとほぼ同様の作用効果が得られる。
【0012】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の第1のタンデム弾頭用子弾頭によれば、弾体内に配置された弾頭によって生ずるデットスペースが従来に比して大幅に減少するので、ATM内でのレイアウトの効率を格段に高めることができる。又、第2のタンデム弾頭用子弾頭によれば、第1のものと同様の作用効果の他、子弾頭のジェットが搭載物の阻害を受けることがないので、比較的小型のものでERAを無力化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のタンデム弾頭用子弾頭の斜視図である。
【図2】図1の子弾頭を備えた対戦車誘導弾の要部の概略図である。
【図3】図2におけるIII −III 線に沿った断面図である。
【図4】従来のタンデム弾頭用子弾頭の断面図である。
【図5】図4の子弾頭を備えた対戦車誘導弾の一部を省略した断面図である。
【図6】図5におけるVI−VI線に沿った拡大断面図である。
【符号の説明】
1 子弾頭
2 対戦車誘導弾(ATM)
3 弾体
4 搭載物
5 弾殻
6 さく薬
7 ライナ
8 伝爆薬
L 中心線
O ジェット焦点
C.S 曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】 弾頭の前方に機器を設けた弾体に搭載されるタンデム弾頭用子弾頭であって、弾体の内周又は外周に沿った円弧状又はリング状に形成されていることを特徴とするタンデム弾頭用子弾頭。
【請求項2】 弾頭の前方に機器を設けた弾体に搭載されるタンデム弾頭用子弾頭であって、弾体の内周又は外周に沿った円弧状又はリング状に形成され、かつ上記弾体内に搭載された誘導装置等の搭載物の外周に配置されていることを特徴とするタンデム弾頭用子弾頭。

【図1】
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【図4】
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【図3】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】第2603176号
【登録日】平成9年(1997)1月29日
【発行日】平成9年(1997)4月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−276611
【出願日】平成4年(1992)9月21日
【公開番号】特開平6−102000
【公開日】平成6年(1994)4月12日
【出願人】(390014306)防衛庁技術研究本部長 (169)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【参考文献】
【文献】特開 平4−3900(JP,A)
【文献】特開 昭63−259400(JP,A)
【文献】特開 平3−55500(JP,A)