説明

タンニン及び非タンニン物質の天然抽出物の使用による地力改善並びに栽培の根付肥効果の提供、並びにそのためのタンニン及び非タンニン植物組成物

【課題】栽培土壌の地力改善並びに栽培の根付肥効果
を持つ組成物を提供する。
【解決手段】タンニン及び非タンニン物質の植物組成物を、稚苗用種子若しくは稚苗用無性増殖メンバー又は移植された稚苗に適用し、稚苗の初期生育を大きく促進することが出来る。その植物組成物は、カスタネア属植物、クルミ属植物、ユーカリ属植物、カシ属植物、ヤナギ属植物、ブドウ属植物、ミモザ属植物、ケブラチョ属植物、オリーブ、セインフォイン、ラムヌス属植物、ヨモギ属植物、ヘンナ、の中の一種以上の単一型又はあらゆる比率の混合物のいずれかであるバイオマスの抽出によって作製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンニン及び非タンニン物質の天然抽出物の使用による地力改善並びに栽培の根付肥効果(starter effect) の提供、並びにそのためのタンニン及び非タンニン植物組成物又は植物複合体に関する。
【0002】
本発明では、「タンニン及び非タンニン植物組成物又は植物複合体」は、好適な植物の野菜由来バイオマスの水性抽出物を意味するものとする。
【背景技術】
【0003】
本発明は、農業分野に関連し、特に地力及び栽培の根付肥効果の改善に関する。
【0004】
本明細書においては、「根付肥効果」は、播種種子から生まれた、又は移植操作による導入又は移植された稚苗の生育を促進すること意味し、その結果、稚苗が環境及び生育時期を有効に利用し、かつ悪条件に対してより機能的に応答することによって、稚苗ができるだけ短期に生育し、かつ比較的高い栽培収率が達成できるようになる。
【0005】
根付肥効果は、迅速な同化又は吸収に適するように栄養素の利用性を高め、結果として、植物の生理学的感応を誘導し、又は比較的低温下及び地力が劣った条件下における幼植物の生育を高めることは公知である。
【0006】
実際に多くの場合で、土壌の物理化学的状況及び生物学的状況は、稚苗の生育及び根の吸収機能の減少をもたらす可能性があり、同様に、土壌中にもともと存在するか又は土壌施肥作業中に事前添加された無水リン酸及び多数の微量元素の溶解性を低下させる可能性がある。
【0007】
したがって、植物の近くにある土壌の負帯電特性は、栄養素の取込みに良い影響を与え、そのことは、農学的観点から(適用される施肥(成分)効率の向上)、経済的観点から(より少ない施肥費用)及び環境保護的観点から(地盤効果に関連する不溶化効果を相殺するための過剰な施肥は、栄養素が環境へ分散されるために環境汚染リスクを増加させる)重要な利点を有することができる。
【0008】
特許文献1では、塩度を調整する方法及び酸性化有機溶液、並びに窒素系及び/又は微量元素系の肥料が開示され、それらの肥料はタンニン及び非タンニン物質を富化した野菜由来抽出物を素原料として調製される。
【0009】
特許文献2では、天然リン灰土、血液及びタンニンが原料となっているバイオ農業用の有機ミネラル肥料が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願1464635号公報
【特許文献2】欧州特許出願1097912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目標は上記の先行技術の欠点を克服することである。
【0012】
上記目標中の本発明の主目的は、タンニン及び非タンニン物質の植物組成物を含有する肥料の事前調製の必要性を解消することである。
【0013】
本発明の別の目的は、上記生成物の溶液を土壌に適用する必要性をなくすことである。
【0014】
本発明の一態様によれば、上記の目標及び目的だけでなく、以下において明らかになるその他の目的は、タンニン及び非タンニン物質の植物組成物を乾燥形態又は液体形態で無性増殖メンバーに、又は移植稚苗に適用し、根付肥効果を推進する、すなわち稚苗の初期生育を大きく促進することである。
【0015】
上記の目標及び目的、並びに以下において明らかになるその他の目的は、更に、タンニン及び非タンニン物質の植物組成物によって達成され、根付肥効果が促進される。すなわち、種子又は無性増殖メンバーでの又は移植された稚苗での初期生育を大きく促進させる前記植物組成物は、次の種:カスタネア属植物、クルミ属植物、ユーカリ属植物、カシ属植物、ヤナギ属植物、ブドウ属植物、ミモザ属植物、ケブラチョ属植物、オリーブ、セインフォイン、ラムヌス属植物、ヨモギ属植物、ヘンナ、の中の一種以上の単一型又はあらゆる比率の混合物のいずれかであるバイオマスの抽出物で作製されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による植物組成物によってリン酸三カルシウム物質を処理した際の、水溶性P及び中性クエン酸アンモニウムの全Pに対する出現比のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の更なる特徴及び利点は、排他的ではないが、以下に述べる本発明の好適な実施形態の詳細な開示により、更に明らかになるであろう。以下の実施形態は例示するためのものであって、限定的な実施例ではない。
【0018】
詳細には、本発明は、液体形態(溶液若しくは懸濁液)又は固体形態(粉末、ペレット若しくは顆粒)のタンニン及び非タンニンの植物組成物若しくは植物複合体の利用を提供することであり、それら組成物又は複合体は、野菜由来のバイオマス、及び特に木質バイオマスを水で抽出し、得られた抽出物を物理的方式で濃縮して作製される。
【0019】
意外なことに、タンニン及び非タンニン物質の植物組成物を、比較的低い適用量(1〜1000kg/ヘクタール、特に5〜250kg/ヘクタールの乾燥植物組成物)で、かつ稚苗又は播種物に対して局所施肥で適用した場合、植物の生育速度、種子及び無性増殖メンバーからの発芽または移植稚苗の生育速度が大幅に改善されることが分かった。
【0020】
本発明によるタンニン及び非タンニン物質の植物組成物は、播種栽培作業又は移植作業の間に若しくはそれらの前のどちらかで、それらの畝に沿って及び畝の下方の両方に適用するのが好ましく、或いはその植物組成物は、播種畝に又は移植畝を橋渡しする土壌帯の上に均等に分布させて、育苗植物のバイオ農産物(bioagronomic)の根圏(rhizoshere)効果を最大化することができる。
【0021】
植物が、畝に播種又は移植されていない場合には、タンニンなめしと呼ばれる作業によって、タンニン及び非タンニン植物組成物を、乾燥粉末と湿潤形態又はスラリー形態との両方で、種子又は無性増殖メンバー(根茎、球根、むかご等)と好適な濃度で混合してもよい。
【0022】
植物の種子が「砂糖漬け」(candied)されている場合、すなわち、種子が、複合体材料で被覆され、均一な粒径にされ、均一な球形状で提供されている場合には、種子を空気圧式又は機械式播種機によって容易に土壌の上に播くことが可能であり、最終的には、その植物組成物を、「コンパウンド」と呼ばれる製剤化被覆材料として使用できる。
【0023】
発芽時において開封される被覆種子によって、本発明によるタンニン及び非タンニン植物組成物は、局所的な方式で、種子が挿入されるミクロレベルの位置に運搬されるであろう。
【0024】
本発明を更によく理解するために、非限定的な実施例の幾つかを以下に開示する。その実施例は、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【実施例1】
【0025】
3.5及び5dS/cmの電気伝導度に事前に人工的に塩分調整した土壌に、「低」適用量(移植前に100L/ヘクタール、さらに移植後に施肥灌漑で3×10L/ヘクタール)、並びに「高」適用量(移植前に140L/ヘクタール、さらに移植後に施肥灌漑で3×20L/ヘクタール)で、本発明による液体形態の植物組成物を適用した農場で、レタスを試験栽培した。
【0026】
未処理試料及び好適な耐塩分性産物について比較した。
【0027】
平均的及び高塩分性の両方において、植物組成物の「低」適用量では新鮮及び乾燥物質のより多い収穫量がもたらされ、収穫量の増加率は、耐塩分性産物に対して45.8%であり、かつ試料又は試験体に対して100%より大であった。
【実施例2】
【0028】
13重量%(w/w)のタンニン量を有した産物である、本発明によるタンニン及び非タンニン物質の植物組成物を、従来の混練又は混合した土壌に、スリーブ灌漑(sleeve irrigation) 方法によって約75L/ヘクタールの適用量で使用した。
【0029】
それら土壌の湿った領域における土壌分析の結果、植物にとって非常に重要な幾つかの栄養素、特に、リン、カリウム、カルシウム、硫黄、ホウ素、鉄、銅、マンガン及び亜鉛の吸収率の増加が見出された。
【実施例3】
【0030】
30Lの本発明による植物組成物を各m3の水に分散させたものを、局所的マイクロ灌漑を介して、移植後40〜80日の期間で3回の灌漑作業の実施によりタバコ葉に対して散布した。
【0031】
処理によって、タバコ植物は、約1週間単位で開花期を早め、タバコ葉を3%増加し、かつ評価試験に関連して約1.5の評価点(10点満点で)の増加を有した。
【0032】
タバコ葉では、還元糖が2の変化量単位で増加し、かつニコチン、リン及びカリウムの比率の顕著な増加が達成された。
【実施例4】
【0033】
本発明の植物組成物による土壌中の無水リン酸の吸収に及ぼす影響について、無水リン酸が三リン酸カルシウム無水物、すなわち沈降性リン酸三カルシウムの形態で、30〜32重量%の全P比率又は量で存在し、アルカリ性石灰質土、例えば南欧州及び特にイタリーで一般的なものである土壌の中で実験的に試験した。
【0034】
その試験には、異なる濃度の液体形態の植物組成物(13重量%(w/w)のタンニン)を含有する溶液180mLでリン酸三カルシウム(100g)を処理し、続いて混合し空気乾燥する工程が含まれる。この処理から1週間後にその結果を評価した。
【0035】
特に、pH値及び水溶性P並びに中性クエン酸アンモニウムの量は、抽出工程では公式の国定標準計測法(Official National measurement method)によって測定したが、測定工程ではそれによらないで測定した。
【0036】
この試験操作では、タンニン色による相互作用を回避するためにジオネックス(Dionex)のイオンクロマトグラフ分析を(分光光度法の代わりに)使用した。
【0037】
結果を以下の表1に示す。
表1−種々の濃度における植物組成物溶液添加がpH及びリン酸三カルシウムの吸収に及ぼす影響



検出せず(n.r.)は、分析法の検出限界(0.01%)未満を示す。
【0038】
上記のデータから、本発明の植物組成物のリン酸三カルシウムpHに対する影響は非常に顕著であると見なすことが可能であり、このことは水溶性無水リン酸及び中性クエン酸アンモニウムの比率又は量の漸進的増加と関連している。特に、植物組成物の濃度が増加するにつれて、水溶性無水リン酸量及びクエン酸塩量は全リン酸三カルシウム含量中で0から約12%まで変化する(図1参照)。
【0039】
図1−本発明の植物組成物によるリン酸三カルシウム処理における、全Pに対する水溶性P及び中性クエン酸アンモニウムの比率の変化。
【0040】
上記の結果は、肥料によって適用される無水リン酸を急速に無効化させる傾向があるアルカリ性石灰質土での生育栽培に関連して非常に興味深い。従って、以前には吸収することができなかったリン量を適切に活用することができる。
【実施例5】
【0041】
小麦、トウモロコシ、大豆、ムラサキウマゴヤシ及びジャガイモ塊茎について、発芽及びえい果の初期生育及び播種の広範な研究を実施する。粉末形態の本発明の植物組成物を用いた以下の事前処理によって加工処理する:1)濃度1%、5%、及び10%の水分散体で「播種」前の種子/塊茎をスプレイする(スプレイ液量はまだ規定されない)。2)処理された種子/塊茎が1重量%、2.5重量%、5重量%、7.5重量%、10重量%濃度である種子/塊茎を乾燥なめし(dry tanning)する(ここでは100が、1ヘクタール当たり通常に使用される種子/塊茎の量である)。
【実施例6】
【0042】
本実施例では、タバコ種子の被覆に使用されるコンパウンドの添加に関する研究を実施し、本発明のタンニン及び非タンニン植物組成物の濃度中心は1.5%で、量は10重量%に相当する。
【0043】
本発明により意図した目標および目的が完全に達成されることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥形態又は液体形態のどちらかで、種子若しくは無性増殖メンバー又は移植された稚苗に適用し、それらの初期生育を強力に促進させることから成る、根付肥効果を促進させるためのタンニン及び非タンニン物質の植物組成物の使用。
【請求項2】
種子若しくは無性増殖メンバー又は移植された稚苗において、初期生育を強力に促進させることから成る根付肥効果を促進するためのタンニンまたは非タンニン物質の植物組成物であって、当該植物組成物が、次の種:カスタネア属植物、クルミ属植物、ユーカリ属植物、カシ属植物、ヤナギ属植物、ブドウ属植物、ミモザ属植物、ケブラチョ属植物、オリーブ、セインフォイン、ラムヌス属植物、ヨモギ属植物、ヘンナ、の種の中の一種以上の、単一型又はあらゆる比率の混合物のいずれかであるバイオマスの水抽出によって作製されることを特徴とする、タンニンまたは非タンニン物質の植物組成物。
【請求項3】
前記植物組成物が、播種前/移植前の局所的適用、播種時/移植時の局所的適用、播種後/移植後の局所的適用、移植前/移植後の局所的灌漑、種子/無性増殖メンバーのなめし、種子の被覆、栽培基体中若しくは移植植物の生育容器中への混入、の適用方法の中の一種以上によって、種子若しくは無性増殖メンバー又は移植された稚苗に適用されることを特徴とする、請求項2に記載の植物組成物。
【請求項4】
前記植物組成物が、1〜1000kg/ヘクタール、好ましくは5〜250kg/ヘクタールの乾燥植物組成物の適用量で適用されることを特徴とする、請求項1に記載の植物組成物。
【請求項5】
前記植物組成物が、栽培土壌中又は培地中に存在する栄養素の吸収を増加させるために使用されることを特徴とする、請求項1に記載の植物組成物。
【請求項6】
前記植物組成物が、栽培土壌中又は培地中に存在する栄養素の植物による取込み量を増加させるために使用されることを特徴とする、請求項1に記載の植物組成物。
【請求項7】
前記植物組成物が、6.5より高い水性pH値を有する栽培土壌又は培地に適用されることを特徴とする、請求項1に記載の植物組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−144175(P2011−144175A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6450(P2011−6450)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(511064395)グルッポ マウロ サヴィオラ エス.アール.エル. (1)
【Fターム(参考)】