タンパク質アレイおよびその使用
本明細書で開示されている例示的な実施形態は、特に、タンパク質アレイ、該アレイを作製する方法およびこれらを使用する方法に関する。一部の実施形態では、ヒトゲノムにおける遺伝子座の少なくとも50%に相当する既知のタンパク質が、担体上の既知の位置にアレイ化される。一部の実施形態では、アレイは、担体へのアフィニティー結合により細胞溶解物から精製されたタンパク質から作製される。一部の実施形態では、タンパク質アレイは、抗体の結合特異性を解読するために使用される。一部の実施形態では、タンパク質アレイは、自己免疫疾患を診断するために使用される。多くの他の実施形態および一般的特徴が本明細書で開示されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年9月25日に出願された米国仮出願第61/245,852号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる。)の優先権の利益を主張する。
【0002】
本明細書で開示されている実施形態は、タンパク質アレイ、タンパク質アレイを作製する方法、ならびに研究用および特に疾患を診断するためのこれらのアレイの使用の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
I
タンパク質アレイは、多くのタンパク質に基づくアッセイが、並行して行われることを可能にする。タンパク質アレイは、個別のアッセイと比較して処理量の著しい増加をもたらす。タンパク質アレイは典型的には、1回のアッセイ当たりの使用する試薬はより少なく、同様に1回のアッセイ当たりの必要とする時間はより少ない。結果として、アレイは一般に、アレイを製作する費用が考慮される場合でさえ、1回のアッセイ当たりの費用の大きな減少をもたらす。さらに、アレイにおける複数のアッセイの同時の遂行により、個別のアッセイの冗長性、および複数の方法で同じパラメータをアッセイする能力がもたらされ、個別のアッセイと比較して、結果の精度および正確度の向上につながる。さらに、全ゲノムのタンパク質アレイは、プロテオームワイドなタンパク質−分子相互作用を検出する可能性を与える。このようなゲノムワイドな調査は、いくつかの主要な用途を挙げると、タンパク質−タンパク質相互作用の理解、抗体結合特異性および交差反応の解読、ならびに診断および患者層別化のためのバイオマーカーの同定のための強力な手段となる。
【0004】
タンパク質アレイのいくつかの主要なフォーマットが報告されている。順相タンパク質マイクロアレイにおいて、特定の標的に対する明確に定義された特異性を有する捕捉タンパク質が、アレイ中の定められた箇所で固定化され、標的化合物は、試料のアレイへの結合の位置および強度によって同定および定量化される。順相アレイの主な使用は、個々の試料を調べて、多数の異なる成分の存在および量を同時に決定することである。順相アレイの1つの典型的なタイプでは、アレイは、特定の抗原に対して特異的な一揃い(panoply)の抗体からできており、アレイは、試料中のこれらの抗原の存在および量を測定するために使用される。
【0005】
逆相アレイでは、一揃いの試料が配列され、次いで、同定試薬、典型的には単一特異的試薬、例えば、特定の抗原に対して特異的な抗体で精査される。逆相アレイの主な使用は、多くの試料を1つの、または多くても数個の、成分の存在および量について特徴付けすることである。逆相アレイの例証的な使用は、一連の単一特異的試薬、例えば、特定の抗原に対して特異的な抗体を、異なる細胞タイプの集合に対して選別することである。
【0006】
JoosおよびBachmann(2009年);「Protein microarrays:potentials and limitations」、Frontiers in Biosciences 14:4376−4385頁;Chanら(2004年);「Protein microarrays for multiplex analysis of signal transduction pathways」、Nature Medicine 10(12):1390−1396頁;Hartmannら(2009年);「Protein microarrays for diagnostic assays」、Anal.Bioanal.Chem.393:1407−1416頁;およびCaronら(2007年);「Cancer Immunomics Using Autoantibody Signature for Biomarker Discovery」、Molecular & Cellular Proteomocis 6.7:1115−1122頁のものを含めて、現行のタンパク質アレイ技術のタイプ、使用法、利点および不利点について記載する、タンパク質アレイについてのいくつかの総説が発表されている。さらなる参考文献は、以下のVIIで提供される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】JoosおよびBachmann(2009年);「Protein microarrays:potentials and limitations」、Frontiers in Biosciences 14:4376−4385頁
【非特許文献2】Chanら(2004年);「Protein microarrays for multiplex analysis of signal transduction pathways」、Nature Medicine 10(12):1390−1396頁
【非特許文献3】Hartmannら(2009年);「Protein microarrays for diagnostic assays」、Anal.Bioanal.Chem.393:1407−1416頁
【非特許文献4】Caronら(2007年);「Cancer Immunomics Using Autoantibody Signature for Biomarker Discovery」、Molecular & Cellular Proteomocis 6.7:1115−1122頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以前のタンパク質アレイは典型的には、比較的少数の精製タンパク質から構成された、または増殖およびトランスフェクトされたDNAの発現後に、インサイチュで溶解された宿主細胞中への多数のあらかじめアレイ化されたDNAの逆トランスフェクションによって作製された。前者の分類のアレイは、実際に得ることができるタンパク質の数によって、すなわち、アレイ中の各タンパク質について克服されなければならないタンパク質精製の困難さによって制限された。後者の分類のアレイは、トランスフェクションおよび発現の結果における不均質性によって、ならびにインサイチュで表面において溶解されるコンフルエント細胞から得ることができるタンパク質密度の制限よって制限された。これらの理由および様々な他の理由のために、現在利用可能なタンパク質アレイは、様々な制限および不利点を問題としており、改善されたタンパク質アレイおよび現在の技術では利用できない機能性を与えるアレイが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
II
以下の番号を付けたパラグラフは、例証として提供され、本明細書で開示される本発明の多くの態様および実施形態のうちのいくつかを説明する。他の多くが本明細書で説明され、それらが属する技術分野の当業者に容易に明らかとなる。番号を付けたバラグラフにおける「上記または下記のいずれか」という表現の使用は、番号を付けたパラグラフ中に示される様々な要素が、任意の方法で組み合わせられ得ることを示し、任意のこのような組合せに対する明示的な支持を与えるために使用される。本出願人は、本出願またはいずれかの承継人出願もしくは関連出願における補正によって全体的または部分的に、このような省略された組合せのいずれか1つまたは複数を明示的に提示および/または請求する権利を留保する。
【0010】
1.01 対応する複数のタンパク質を含む複数の細胞溶解物を、担体上の対応する複数の位置に適用する段階を含み、前記複数のタンパク質が、対応する複数の外因性DNAを介して前記対応する複数の細胞中で発現されている、タンパク質アレイを作製する方法。
【0011】
1.02 タンパク質P1からPnを含む溶解物L1からLnを、担体上の位置S1からSnに適用する段階を含み、
各溶解物Lxが、外因性DNA Dxを介してその中で発現されているタンパク質Pxを含む細胞Cxの溶解物であり、位置Sxに適用され、
ここで、
P1からPnは、すべて互いに異なり、
S1からSnは、すべて互いに異なり、
nは、1より大きい整数であり、
xは、1からnまでの整数である、
タンパク質アレイを作製する方法。
【0012】
実施形態では、本明細書で示されるように、xは、特に本明細書で他の場所に示されている場合、ゲノム中の遺伝子、遺伝子座またはタンパク質コード領域の部分である。実施形態では、本明細書で以下に示されるように、xは、生物の遺伝子、遺伝子座またはタンパク質コード遺伝子のセット番号である。
【0013】
1.03 タンパク質P1からPnを、担体上の位置S1からSnに適用する段階を含み、各タンパク質Pxが、外因性DNA Dxを介して細胞Cx中で発現されて、位置Sxに適用され、
ここで、
P1からPnは、すべて互いに異なり、
S1からSnは、すべて互いに異なり、
nは、1より大きい整数であり、
xは、1からnまでの整数である、
タンパク質アレイを作製する方法。
【0014】
1.04 対応する複数のタンパク質を含む複数の溶解物を、担体上の対応する複数の位置に適用し、それにより、前記複数のタンパク質のアレイを作る段階を含み、
前記溶解物が、対応する複数の細胞コロニーまたは培養物中で前記コロニーまたは培養物の細胞中の対応する複数の外因性DNAを介して複数のタンパク質を発現させ、前記複数の細胞コロニーまたは培養物のそれぞれを溶解し、それにより、前記対応する複数のタンパク質を含む対応する複数の溶解物を生成させる段階を含む方法によって生成される、タンパク質のアレイを作製する方法。
【0015】
1.05 2以上の複数のタンパク質を、対応する複数の細胞コロニーまたは培養物中で前記コロニーまたは培養物の細胞中の対応する複数の外因性DNAを介して発現させる段階;
前記複数の細胞コロニーまたは培養物のそれぞれを溶解し、それにより、前記対応する複数のタンパク質を含む対応する複数の溶解物を生成させる段階;
前記対応する複数のタンパク質を含む前記複数の溶解物を担体上の対応する複数の位置に適用する段階;
それにより、前記複数のタンパク質のアレイを作る段階
を含む、タンパク質のアレイを作製する方法。
【0016】
2.01 前記タンパク質が、前記細胞中で前記DNAを介して過剰発現される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0017】
2.02 前記タンパク質が、前記溶解物中に高濃度で存在する、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0018】
2.03 対照以外の前記タンパク質の50、60、75、80、85、90、95、99または100%の少なくともいずれかが、前記細胞中の全タンパク質の0.01、0.025、0.05、0.10、0.15、0.25、0.35、0.50、0.75、1.00、1.25、1.50、1.75、2.00、2.25、2.50、2.75、3.00、3.50、4.00、4.50、5.00、5.50、6.00、7.50、10.0、15.0または20パーセントの少なくともいずれかである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0019】
2.04 対照以外の前記タンパク質の50、60、75、80、85、90、95、99または100%の少なくともいずれかが、前記細胞中の前記タンパク質のいずれの外因性発現よりも実質的に多い量で前記外因性DNAを介して前記細胞中で発現される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0020】
2.05 対照以外の前記タンパク質の50、60、75、80、85、90、95、99または100%の少なくともいずれかが、前記細胞中の前記タンパク質のいずれかの外因性発現の1.5、2.0、2.5、3.0、4.0、5.0、7.5、10、15、20、25、30、40、50、75、100、125、150、200、250、300、400、500、750、1,000、1,500倍またはそれを超える少なくともいずれかの量で前記細胞中で前記DNAを介して発現される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0021】
2.06 対照以外の前記タンパク質の50、60、75、80、85、90、95、99または100%の少なくともいずれかが、前記溶解物中の全タンパク質の0.01、0.025、0.05、0.10、0.15、0.25、0.35、0.50、0.75、1.00、1.25、1.50、1.75、2.00、2.25、2.50、2.75、3.00、3.50、4.00、4.50、5.00、5.50、6.00、7.50、10.0、15.0または20パーセントの少なくともいずれかである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0022】
2.07 対照以外の前記溶解物の50、60、75、80、85、90、95、99または100%の少なくともいずれかで、各溶解物中の各タンパク質の濃度が、1、2、3、5、10、15、20、25、35、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800または900μg/mlの少なくともいずれか、または1、2、3、5、10、15、20、25、35、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800または900mg/mlの少なくともいずれかである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0023】
3.01 タンパク質が、生物のゲノムによりコードされているタンパク質の20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または98パーセントの少なくともいずれかを集合的に含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。実施形態では、生物は哺乳動物である。実施形態では、生物は、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、イヌまたは霊長類のいずれか1つである。
【0024】
3.02 タンパク質が、ヒトゲノムによりコードされているタンパク質の20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または98パーセントの少なくともいずれかを集合的に含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0025】
3.03 アレイが、生物の1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、21,000、22,000、23,000、24,000、25,000、26,000、27,000、28,000、29,000または30,000の異なる遺伝子座の少なくともいずれかのタンパク質を含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0026】
3.04 アレイが、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、21,000、22,000、23,000、24,000、25,000、26,000、27,000、28,000、29,000または30,000の異なるタンパク質の少なくともいずれかを含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0027】
3.05 アレイが、前記タンパク質が適用された1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、21,000、22,000、23,000、24,000、25,000、26,000、27,000、28,000、29,000または30,000の位置の少なくともいずれかを含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0028】
3.06 1cm2当たり10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000または20,000の位置の少なくともいずれかが存在する、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0029】
3.07 1cm2当たり適用された10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000または20,000の溶解物の少なくともいずれかが存在する、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0030】
3.08 1cm2当たり適用された10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000または20,000の前記タンパク質の少なくともいずれかが存在する、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0031】
3.09 1cm2当たり10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000または20,000の位置の少なくともいずれかが存在し、前記位置の50、60、70、80、90または95%の少なくともいずれかに前記タンパク質が適用されている、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0032】
3.10 スポットが、直径10−50、25−75、50−100、75−150、100−200、150−250、200−300、250−350、300−400、400−500、500−750、400−800、750−1,000μmのいずれかである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0033】
3.11 フィーチャの面積が、10−50、25−75、50−100、75−150、100−200、150−250、200−300、250−350、300−400、400−500、500−750、400−800、750−1,250、1,000−2,000、1,500−3,000、2,500−5,000μm2のいずれかである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0034】
3.12 フィーチャ(スポット)の中心と中心の間隔が、5−15、10−20、15−25、20−40、25−50、25−75、50−100、75−150、100−150、125−175、150−225、200−250、225−275、250−350、300−400または400−500μmのいずれかである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0035】
4.01 各溶解物中のタンパク質の濃度が、1、2、3、5、10、15、20、25、35、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800または900マイクログラム/milの少なくともいずれか、または1、2、3、5、10、15、20、25、35、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800または900mg/mlの少なくともいずれかである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0036】
4.02 対照以外の前記溶解物の50、60、75、80、85、90、95、99または100%の少なくともいずれかについて、溶解物タンパク質の量が、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1,000、1,500、2,000または2,500個の少なくともいずれかの細胞の溶解物における全タンパク質の量である、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0037】
4.03 対照以外の前記タンパク質の50、60、75、80、85、90、95、99または100%の少なくともいずれかについて、外因性DNAを介して発現された前記タンパク質の量が、タンパク質が発現された100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1,000、1,500、2,000または2,500個の細胞中で前記外因性DNAを介して発現された前記タンパク質の量の少なくともいずれかである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0038】
5.01 前記細胞が、真核細胞である、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0039】
5.02 前記細胞が、原核細胞である、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0040】
5.03 細胞が、HEK293、COS、CV1、BHK、CHO、HeLa、LTKまたはNIH 3T3細胞のいずれか1種または複数である、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0041】
5.04 細胞が、HEK293T細胞である、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0042】
6.01 1種または複数の前記外因性DNAがそれぞれ、前記タンパク質の1つをコードしている、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0043】
6.02 1種または複数の前記外因性DNAがそれぞれ、前記タンパク質の1つをコードし、それぞれこのような外因性DNAにおけるそれぞれこのようなタンパク質が、cDNA、ゲノムDNA、または合成DNAによってコードされている、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0044】
6.03 1種または複数の前記外因性DNAが、前記タンパク質の1つをコードしているDNAに作動可能に結合された、前記細胞における転写に有効なシス作用エレメントを含む発現コンストラクトである、上記または下記のいずれかに記載の方法。実施形態では、シス作用エレメントはプロモーターを含む。
【0045】
6.04 1種または複数の前記外因性DNAが、前記タンパク質の1つをコードしているDNAに作動可能に連結された、前記細胞における転写に有効なプロモーター(および、場合によって、他のシス作用遺伝エレメント)を含む発現コンストラクトであり、前記1種または複数の外因性DNAのそれぞれにおいて前記タンパク質をコードしている前記DNAが、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0046】
6.05 前記プロモーターが、CMV、SV40またはMMTVプロモーターのいずれか1種または複数である、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0047】
6.06 1種または複数の前記外因性DNAが、付着、固定化、捕捉、精製、検出および/または定量化のいずれか1つまたは複数のために有効なタグ配列に正しい読取り枠で融合した前記アレイのためのタンパク質のアミノ酸配列を実質的に含むキメラタンパク質をコードしている、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0048】
6.07 前記タグが、GST、HA、V5、HIS、DDK(またはFLAG)またはmycタグのいずれか1種または複数である、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0049】
6.08 前記タグが、myc/FLAGタグである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0050】
6.09 前記発現コンストラクトが、pCMV6−エントリー発現ベクターである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0051】
6.10 前記外因性DNAが、前記タンパク質アレイのためのタンパク質をコードしている内因性遺伝子の発現の非相同組み換え活性化のためのコンストラクトを含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0052】
6.11 前記外因性DNAが、前記アレイのためのタンパク質をコードしている内因性遺伝子の発現の相同組み換え活性化のためのコンストラクトを含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0053】
7.01 担体が、本明細書で他に記載または列挙されている任意の担体である、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0054】
7.02 担体が、ニトロセルロースを含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0055】
7.03 前記担体が、ニトロセルロースコーティングスライドガラスを含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0056】
8.01 タンパク質が、担体への適用前に溶解物から精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0057】
8.02 タンパク質が、担体への適用前に、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%純度の少なくともいずれかまで精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0058】
8.03 タンパク質が、担体への適用前に、担体に適用される全タンパク質の50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の少なくともいずれかであるように精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0059】
8.04 タンパク質が、担体への適用前にアフィニティークロマトグラフィーにより精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0060】
8.05 タンパク質が、アフィニティータグを含み、担体への適用前にアフィニティータグに特異的なアフィニティークロマトグラフィーにより精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0061】
8.06 タンパク質が、ペプチドアフィニティータグを含み、担体への適用前にペプチドアフィニティータグに特異的なアフィニティークロマトグラフィーにより精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0062】
8.07 タンパク質が、DDKアフィニティータグを含み、担体への適用前にDDKタグに特異的な抗体を用いてイムノアフィニティークロマトグラフィーにより精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0063】
9.01 タンパク質が、担体への適用後に溶解物から精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0064】
9.02 タンパク質が、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%またはそれを超える均質な純度の少なくともいずれかまで、担体への適用後に精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0065】
9.03 タンパク質が、担体上に固定化された全タンパク質の50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の少なくともいずれかであるように、担体への適用後に精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0066】
9.04 タンパク質が、外因性DNAを介して発現されるタンパク質に特異的な担体上のアフィニティー部分へ結合させ、未結合物質を除去することによって、担体への適用後に精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0067】
9.05 タンパク質が、アフィニティータグを含み、該タグに特異的な担体上のアフィニティー部分へ結合させ、未結合物質を除去することによって、担体への適用後に精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0068】
9.06 タンパク質が、ペプチドアフィニティータグを含み、該ペプチドタグに特異的なアフィティー部分に結合させ、未結合物質を除去することによって、担体への適用後に精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0069】
9.07 タンパク質が、DDKアフィニティータグを含み、DDKアフィニティータグに特異的なアフィニティー部分に結合させ、未結合物質を除去することによって、担体への適用後に精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。実施形態では、DDK特異的アフィニティータグは、DDK−特異的抗体である。
【0070】
10.01 上記方法のいずれかにより作製された、上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【0071】
10.02 1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、21,000、22,000、23,000、24,000、25,000、26,000、27,000、28,000、29,000または30,000の異なるタンパク質の少なくともいずれかを含む、上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【0072】
10.03 生物のゲノムの1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、21,000、22,000、23,000、24,000、25,000、26,000、27,000、28,000、29,000または30,000の異なる遺伝子座の少なくともいずれかを含む、上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【0073】
10.04 生物のゲノムによりコードされているタンパク質の20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または98パーセントの少なくともいずれかを含む、上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【0074】
10.05 1cm2当たり適用される10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000または20,000の溶解物の少なくともいずれかが存在する、上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【0075】
10.06 1cm2当たり前記外因性DNAを介して発現された10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000または20,000の前記タンパク質の少なくともいずれかが存在する、上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【0076】
10.07 前記タンパク質が適用される位置の25、50、60、75、80、85、90、95、99または100%の少なくともいずれかについて、前記外因性DNAを介して発現された前記タンパク質の量が、それぞれの前記タンパク質が発現された100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1,000、1,500、2,000または2,500個の細胞中で前記外因性DNAを介して発現された前記タンパク質の量の少なくともいずれかである、上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【0077】
10.08 アラインメントマーカーを含む、上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【0078】
11.01 抗体を上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイと接触させ、それへの抗体の結合を決定する段階を含む、1種または複数の抗体のタンパク質への抗体特異性および/または交差反応を決定する方法。実施形態では、タンパク質アレイは、上記または下記のいずれかに記載のゲノムによりコードされているタンパク質すべての実質的な部分を含む。
【0079】
11.02 抗体調製物を上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイと接触させ、それへの該調製物中の抗体の結合を決定する段階を含む、抗体調製物の1つもしくは複数の特異性および/または1つもしくは複数の交差反応性を決定する方法。実施形態では、抗体調製物は、全細胞抗血清である。実施形態では、タンパク質アレイは、上記または下記のいずれかに記載のゲノムによりコードされているタンパク質の実質的な部分を含む。
【0080】
11.03 抗体または抗体調製物の上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、このように決定したアレイへの結合から、それにより特異的に結合したタンパク質を同定する段階を含む、抗体または抗体調製物の結合特異性を決定する方法。実施形態では、タンパク質アレイは、上記または下記のいずれかに記載のゲノムによりコードされているタンパク質の実質的な部分を含む。
【0081】
11.04 1または複数の健常個体および疾患に罹っている1または複数の疾患個体由来の試料の上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、健常および疾患個体由来の試料における結合の差から該疾患のタンパク質バイオマーカーを決定する段階を含む、疾患のタンパク質バイオマーカーを決定する方法。実施形態では、タンパク質アレイは、上記または下記のいずれかに記載のゲノムによりコードされているタンパク質の実質的な部分を含む。
【0082】
11.05 1または複数の健常対象および自己免疫疾患に罹っている1または複数の対象由来の抗体含有試料の上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、健常対象および自己免疫疾患に罹っている対象由来の試料における抗体の結合の差から該自己免疫疾患のタンパク質バイオマーカーを決定する段階を含む、自己免疫疾患のバイオマーカーを決定する方法。実施形態では、タンパク質アレイは、上記または下記のいずれかに記載のゲノムによりコードされているタンパク質の実質的な部分を含む。
【0083】
11.06 1または複数の健常対象および健常個体に存在しない抗体の存在を特徴とする疾患に罹っている1または複数の対象由来の試料の上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、健常対象および該疾患に罹っている対象由来の試料における抗体の結合の差から該疾患のタンパク質バイオマーカーを決定する段階を含む、健常個体に存在しない抗体の存在を特徴とする疾患のバイオマーカーを決定する方法。実施形態では、タンパク質アレイは、上記または下記のいずれかに記載のゲノムによりコードされているタンパク質の実質的な部分を含む。
【0084】
11.07 疾患に罹っている可能性がある対象由来の抗体含有試料の上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、該アレイへの該試料中の抗体の結合から該疾患の非存在または存在を決定する段階を含む、健常個体に存在しない抗体の存在を特徴とする疾患を診断する方法。実施形態では、タンパク質アレイは、上記または下記のいずれかに記載のゲノムによりコードされているタンパク質の実質的な部分を含む。
【0085】
11.08 シグナル伝達経路タンパク質のタンパク質を含む試料の上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、それにより、前記結合が、前記タンパク質の非存在、存在および/または量を示す、シグナル伝達経路をモニターする方法。実施形態では、試料は、全細胞溶解物である。実施例では、試料は、外因性DNAを介するタンパク質発現が、前記シグナル伝達経路のタンパク質を変更し得る細胞を含む。実施形態では、前記タンパク質の豊富さ、翻訳後修飾、または安定性のいずれか1つまたは複数における変化がモニターされる。実施形態では、タンパク質の結合は、1種または複数のタンパク質特異的抗体を用いて検出される。実施形態では、タンパク質アレイへの結合は、外因性DNAを介して発現されたタンパク質と1つまたは複数のシグナル伝達経路の内因性タンパク質との間の機能的関係を解読するために用いられる。実施形態では、いくつかの決定は連続して行われ、もう1つのシグナル伝達経路におけるタンパク質の状態の変化がモニターされる。
【0086】
11.09 小分子を含む試料の上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定する段階を含む、前記小分子とタンパク質の間の相互作用を決定する方法。実施形態では、小分子は、小有機分子、脂肪、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂質、糖、グリカン、核酸、ポリヌクレオチド、アミノ酸、ペプチドもしくはポリペプチド、または任意の他の小分子のいずれか1つまたは複数である。実施形態では、小分子は、検出可能な標識で検出可能に標識される。実施形態では、小分子の結合は、アレイに結合した小分子に結合する二次作用物質を用いて検出される。
【0087】
III
語、用語および句は一般に、本明細書で別に定義され得る場合を除いて、それらが属する当業者に対するそれらの通常の意味に従って本明細書で使用される。明確にするために、特定の用語および句の例示的説明が以下に示される。これらの例示的説明は、本明細書で記載される本発明を理解する助けとしてのみ示されるものであって、それらは、本発明を限定するものではなく、本発明を過度に限定すると決して理解されるべきでない。
【0088】
溶解物L1からLnは、1からn(ここで、nは少なくとも2である。)まで連続的に番号を付けた、複数のn個の溶解物を示す。溶解物の一部は、同じであってもよく、すべて異なっていてもよい。
【0089】
C1からCnの細胞(一般に、細胞の個体群)は、1からn(ここで、nは少なくとも2である。)まで連続的に番号を付けた、複数のn個の細胞(一般に、nの細胞個体群)を示す。細胞の一部は同じであってもよく、すべて異なっていてもよい。
【0090】
タンパク質P1からPnは、1からn(ここで、nは少なくとも2である。)まで連続的に番号を付けた、複数のnのタンパク質を示す。タンパク質の一部は、同じであってもよく、すべて異なっていてもよい。
【0091】
位置S1からSnは、1からn(ここで、nは少なくとも2である。)まで連続的に番号を付けた、複数のn個の位置(一般に、アレイにおける)を示す。タンパク質の一部は、同じであってもよく、それらはすべて異なっていてもよい。タンパク質の一部またはすべてのアイデンティティは知られていても、知られていなくてもよい。
【0092】
DNA D1からDnは、1からn(ここで、nは少なくとも2である。)まで連続的に番号を付けた、複数のn個のDNAを示す。DNAの一部は、同じであってもよく、すべて異なっていてもよい。DNAの一部またはすべてのアイデンティティは知られていても、知られていなくてもよい。
【0093】
これらの指定とともに用いられる「それぞれ」(および「対応する」)という用語は、それらの間の対応を意味する。例えば、位置S1からSnでDNA D1からDnを介してタンパク質P1からPnを発現する細胞C1からCnの溶解物L1からLnはそれぞれ、位置S1でDNA D1を介してタンパク質P1を発現する細胞C1の溶解物L1、位置S2でDNA D2を介してタンパク質P2を発現する細胞C2の溶解物L2など、位置SnでDNA Dnを介してタンパク質Pnを発現する細胞Cnの溶解物Lnまでを意味する。
【0094】
本明細書で用いられる抗体には、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体ならびにそれらの誘導体が含まれ、限定されるものではないが、以下:例えば、Winterら(1991年)Nature349:293−299頁および米国特許第4,816,567号に記載されているハイブリッド(キメラ)抗体分子のフラグメントを含むF(ab)2およびF(ab)フラグメント;例えば、Inbarら(1972年)Proc Natl Acad Sci USA 69:2659−2662頁およびEhrlichら(1980年)Biochem 19:4901−4096頁に記載されているFv分子(非共有ヘテロ二量体);例えば、Hustonら(1988年)Proc Natl Acad Sci USA 85:5879−5883頁に記載されている単鎖Fv分子(sFv);二量体および三量体の抗体フラグメントコンストラクト;例えば、Packら(1992年)Biochem 31:1579−1584頁およびCumberら(1992年)J.Immunology 149B:120−126頁に記載されているミニボディ(minibody);例えば、Riechmannら(1988年)Nature 332:323−327頁;Verhoeyanら(1988年)Science 239:1534−1536頁;および1994年9月21日に発行された英国特許公開第GB2,276,169号に記載されているヒト化抗体分子;ならびに、このような分子から得られる任意の機能性フラグメント、例えば、抗原結合特性を保持するフラグメントが挙げられる。
【0095】
抗原は、典型的には抗体T細胞または他の抗原結合抗体、T細胞受容体または他の抗原結合免疫系分子に結合することによって体内で免疫応答を誘発する任意の作用物質を示すために、本明細書で広く用いられる。抗原は典型的には、1つまたは複数のエピトープを有する。
【0096】
本明細書で用いられるアレイは一般に、別々の位置の規則的な配列を指す。タンパク質アレイは典型的には、別々の位置におけるタンパク質の規則的な配列である。しばしば、タンパク質アレイは、1つまたは複数の位置に配置されたタンパク質を有する表面上の一組の別々の位置を含む。典型的には、位置、特に、その中に配置されたタンパク質を有するものは、アレイ中の既知の箇所にあり、位置は典型的には、空間的アドレス、例えば、二次元デカルト座標系におけるx、y座標に類似の、2次元の単位名称を有する。明らかに、アレイは、任意の所望の幾何学で作製することができ、他のアドレスを指定する体系を用いて、アレイ中の位置および/またはタンパク質の固有の箇所を示すことができる。実施形態では、アレイ中のタンパク質の一部またはすべては、既知のタンパク質である。
【0097】
DNAは、天然起源のDNA、例えば、標識を組み入れている、異常塩基を有するDNA、または化学的に修飾されたDNAの修飾形態を含む、ポリデオキシリボヌクレオチドを意味するために本明細書で用いられる。本明細書で多くの実施例および例証がDNAという用語を用いて書かれるが、他のポリヌクレオチド、例えば、RNAもほぼ同じように用いることができる。さらに、RNAが宿主細胞に導入される場合、典型的にはそれはDNAに変換され、したがって、外因性DNAを介して表されるその表現には、RNAの導入から生じる表現が含まれる。
【0098】
DDKは、FLAGとして商業的に知られているペプチドタグを示すために本明細書で用いられる。DDKおよびFLAGという用語は、本明細書で同義的に用いられる。
【0099】
エピトープは、抗体によって認識される(結合される)抗原の個別の特異的な特徴(構造的特徴)である。抗原は、1つまたは複数のエピトープを含む。異なる抗体は、所与の抗原上の同じまたは異なるエピトープに結合し得る。タンパク質抗原上のエピトープは、アミノ酸配列の連続的または非連続的部分によって規定され得る。
【0100】
組換えタンパク質は、分子的なクローニング技術を用いて生成されるタンパク質、例えば、外因性ポリヌクレオチド(外因性DNAなど)を介して発現されるタンパク質を意味するために本明細書で用いられる。本明細書で別により詳細に検討されるように、外因性ポリヌクレオチドを介するタンパク質の発現は、そのタンパク質をコードしているポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入するまたはプロモーター活性化または他の方法などによって外因性遺伝子の発現増加を生じさせるポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入することによって生じさせ得る。
【0101】
本明細書で用いられる特異的結合パートナーは、標的に特異的に結合する作用物質を示す。特異的結合は、その作用物質が、抗原、または抗原内のエピトープなどの標的を、他の非標的物質と区別し得ることを示す。抗原に特異的な抗体およびその抗原は、特異的結合パートナーの一例である。特異的結合パートナーは、バックグラウンドノイズ、典型的には非特異的結合の作用を超えて標的を検出するために使用され得るという意味で特異的である。例えば、タンパク質の特異的結合パートナーは、そのタンパク質の配列またはトポロジカルな構造などの特異的特徴を検出し得る。特異的特徴は、例えば、アミノ酸の規定された順序または規定された化学的部分であり得る。例えば、タンパク質に特異的に結合する抗体は、タンパク質の短いアミノ酸配列に特異的であってもよく、特異的アミノ酸修飾、例えば、チロシンのリン酸化(ホスホチロシン)に特異的であってもよく、または、特に、タンパク質における特定の炭水化物立体配置(グリカン構造)に特異的であってもよい。
【0102】
担体は、タンパク質が適用されてアレイを形成することができる表面を提供する構造を意味するために本明細書で広く用いられる。典型的には、担体は固体であり、アレイを作製し、およびそれを使用するために必要とされる取り扱いに対して構造的に安定である。担体は、1つまたは複数の構成要素、例えば、堅さのためにスライドガラス、およびアレイ中のタンパク質を固定化するためのニトロセルロース「パッド」を有し得る。
【0103】
IV
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】モジュラーアレイ配置を示す概略図であり、サブアレイの拡大図は、二通りの試料および対照の配置を示す。
【図2A】Schottニトロセルロースコーティングガラス製担体スライド上に二通りでスポットした(全部で7500スポット)3720の溶解物のタンパク質アレイを示す図である。全タンパク質を視覚化するためにコロイド状金で染色した後のアレイを示す。
【図2B】Schottニトロセルロースコーティングガラス製担体スライド上に二通りでスポットした(全部で7500スポット)3720の溶解物のタンパク質アレイを示す図である。各溶解物中で外因性DNAを介して発現されたタンパク質を視覚化するために抗FLAG抗体を免疫染色した後のアレイを示す。
【図3】外因性DNAを介して細胞中でタンパク質を発現するpCMV6−エントリー発現ベクターの概略図である。この図は、真核細胞中の強い転写のためのCMVプロモーター、真核細胞中の複製のSV40起点、DDK−mycタグコード領域、クローニングのための複数の制限部位を有する領域、それぞれ、原核生物および真核生物における抗生物質耐性を与えるカナマイシン/ネオマイシン耐性遺伝子、真核生物における転写ポリアデニル化のためのポリアデニル化シグナル、および原核生物におけるDNA複製のための複製のfi細菌起点を含む、このベクターの主要な機能性を示す。
【図4A】Schottニトロセルロースコーティングガラス製担体スライド上に二通りにスポットした3720の溶解物のタンパク質アレイへの特徴付け抗p53抗体の結合の特異性を示す図である。各溶解物中で外因性DNAを介して発現されるタンパク質を視覚化するために抗FLAG抗体で免疫染色した後のアレイを示す。
【図4B】Schottニトロセルロースコーティングガラス製担体スライド上に二通りにスポットした3720の溶解物のタンパク質アレイへの特徴付け抗p53抗体の結合の特異性を示す図である。この図は、抗p53抗体で免疫染色した後のアレイを示す。矢印で強調された陽性溶解物が1つある。交差反応は検出されなかった。
【図4C】Schottニトロセルロースコーティングガラス製担体スライド上に二通りにスポットした3720の溶解物のタンパク質アレイへの特徴付け抗p53抗体の結合の特異性を示す図である。p53抗体に結合するスポットを有するアレイの断面の拡大図を示す。(C)中の上側パネルは、対照タンパク質の連続希釈液を含めて、拡大領域における抗FLAG免疫染色を示す。(C)中の下側パネルは、p53抗体(矢印で強調)に結合する二通りのスポットの反応を示す。
【図5A】全細胞免疫化により生成したモノクローナル抗体を解読するためのタンパク質アレイの使用を例証する図である。モノクローナル抗体によるアレイの免疫染色を示す。陽性シグナルは、破線の四角および矢印で示される。差し込み図は、高倍率での陽性領域を示し、二通りのE−カドヘリンI陽性シグナルは、矢印で強調されている。
【図5B】全細胞免疫化により生成したモノクローナル抗体を解読するためのタンパク質アレイの使用を例証する図である。E−カドヘリンIに対するモノクローナル抗体の特異性を確認するウェスタンブロット分析の結果を示す。
【図6】タンパク質溶解物アレイを用いる乳癌バイオマーカーの同定を例証する図である。 左側パネルは、乳癌患者からの血清によるアレイの免疫染色の結果を示す。陽性反応領域は、矢印で強調されて、破線の四角内で強調されており、拡大領域A、BおよびCで拡大して示される。 右側パネルは、正常対照血清で免疫染色する対照を示す。拡大領域A、BおよびCは、左側パネルで示される拡大領域A、BおよびCに対応する。対照血清は、乳癌患者由来の血清により免疫染色される位置を免疫染色しないが、対照血清中の自己抗体の反応は、アレイの様々な位置でCにおいて見ることができる。
【図7】抗DDK抗体を用いるハイスループットイムノアフィニティ精製により10の無作為に選択された全細胞溶解物から精製された10のmyc−FLAG(DDK)タグ付きタンパク質のSDS−PAGEによる均質性を示す図である。
【図8】その中でFLAG−タグ付きタンパク質が抗FLAGコーティング担体上に固定化され、他のタンパク質は洗い流されて、精製タンパク質のアレイを作る、担体上精製の工程を用いてアレイを作製する実施形態の概略図である。
【図9A】抗FLAG抗体コーティングニトロセルロース担体上の溶解物由来のFLAGタグ付きタンパク質の担体上イムノアフィニティー精製を示す図である。抗−FLAG抗体コーティング担体上で作製されたアレイの小領域を示す。(A)および(B)の両方で、上側挿入図は、アレイのこの部分でスポットされたmycを視覚化する抗myc抗体による免疫染色を示し;下側挿入図は、FLAGタグを含まないタンパク質の(非特異的)結合を示す抗ベータアクチン抗体による免疫染色を示す。
【図9B】抗FLAG抗体コーティングニトロセルロース担体上の溶解物由来のFLAGタグ付きタンパク質の担体上イムノアフィニティー精製を示す図である。抗FLAG抗体コーティングなしで作製されたアレイに一致する小領域を示す。(A)および(B)の両方で、上側挿入図は、アレイのこの部分でスポットされたmycを視覚化する抗myc抗体による免疫染色を示し;下側挿入図は、FLAGタグを含まないタンパク質の(非特異的)結合を示す抗ベータアクチン抗体による免疫染色を示す。
【0105】
表1は、本明細書で記載される本発明の様々な実施形態によってアレイを作製する一般的な方法を示す概略図である。
【0106】
【表1】
【0107】
表2は、溶解物から精製したタンパク質を用いてアレイを作製する実施形態の概略図である。実施形態では、タンパク質は、DDKエピトープでタグが付けられて、抗DDK抗体を用いるイムノアフィニティーにより精製される。
【0108】
【表2】
【0109】
表3は、担体上のタンパク質のインサイチュ精製を用いてアレイを作製する実施形態の概略図である。
【0110】
【表3】
【発明を実施するための形態】
【0111】
V
本明細書で記載される本発明の実施形態により、特に、タンパク質アレイ、タンパク質アレイを作製する方法、タンパク質アレイを使用する方法およびタンパク質アレイを組み込む装置が提供される。特定の実施形態では、特に、タンパク質−タンパク質相互作用を決定する、抗体特異性を検証し、および交差反応性種を同定する、抗体特異性を解読し、およびバイオマーカーを同定する、疾患を診断する、ならびに患者個体群を層別化する方法が提供される。
【0112】
本明細書で実施形態においてさらに例証されるように、アレイ中のタンパク質は、細胞溶解物中に含まれる。実施形態では、溶解物は、タンパク質が外因性DNAを介して発現される細胞から作られる。実施形態では、溶解物は、外因性DNAを介してタンパク質を過剰発現する細胞から作られる。実施形態では、異なる過剰発現タンパク質を含む溶解物は、タンパク質の同定がアレイ中のそれらの位置により知られるように、アレイ中の特定の位置に適用される。様々な実施形態では、過剰発現されたタンパク質の構造および/または機能は、知られていても、いなくてもよい。実施形態では、外因性DNAは、外因性遺伝子の過剰発現を活性化する。実施形態では、外因性DNAは、タンパク質をコードしている。実施形態では、外因性DNAは、cDNAを含み、cDNAがコードしているタンパク質の過剰産生を引き起こす。実施形態では、細胞は哺乳動物細胞である。実施形態では、細胞はヒト細胞である。実施形態では、タンパク質は哺乳動物タンパク質である。実施形態では、タンパク質はヒトタンパク質である。実施形態では、アレイは、規定数の遺伝子を含む。実施形態では、アレイは、ヒトゲノムなどのゲノムによりコードされているタンパク質の規定部分を含む。
【0113】
実施形態では、タンパク質は、固定化前に溶解物から精製される。実施形態では、タンパク質は、アフィニティータグを含む融合タンパク質であり、イムノアフィニティー精製により精製され、次いで、アレイにおいて固定化される。実施形態では、タンパク質は、FLAGアフィニティータグを含み、抗FLAG抗体を用いてイムノアフィニティーにより精製される。
【0114】
実施形態では、タンパク質は、アフィニティー試薬コーティング担体への結合による適用後にインサイチュで溶解物から精製される。実施形態では、タンパク質は、アフィニティー試薬に結合するアフィニティータグを含む融合タンパク質であり、該タンパク質は、アフィニティータグとアフィニティー試薬の間の相互作用によって、アフィニティー試薬でコーティングされた担体に特異的に結合しており、溶解物中の非結合タンパク質は該担体から除去される。実施形態では、アフィニティータグはFLAGタグであり、アフィニティー試薬は抗FLAG抗体である。
【0115】
実施形態では、タンパク質アレイは、タンパク質−タンパク質相互作用を決定するために使用される。実施形態では、アレイは、タンパク質が特異的に結合するおよび/またはそれが交差反応するタンパク質を同定する、決定するおよび/または定量化するために使用される。
【0116】
実施形態では、タンパク質アレイは、特に、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ならびに抗体誘導体を含む、抗体の特異性および/または交差反応性を決定するために使用される。実施形態では、アレイは、抗体を解読する、すなわち、抗体が結合するタンパク質を、例えば、特に、そのタンパク質が知られていない場合に、同定するために使用される。
【0117】
実施形態では、タンパク質アレイは、自己免疫血清中の抗体が結合するタンパク質を決定するために使用される。実施形態では、自己免疫疾患は、いずれか1種または複数のLupus、RAまたはMSである。
【0118】
実施形態では、タンパク質アレイは、健常および/または疾患の自己免疫マーカーを同定するために使用される。実施形態では、タンパク質アレイは、健常および/または疾患の自己免疫マーカーを決定するために使用される。実施形態では、自己免疫マーカーは、自己免疫疾患または癌に対するマーカーである。実施形態では、自己免疫疾患は、いずれか1種または複数のLupus、RAまたはMSである。
【0119】
実施形態では、タンパク質アレイは、非タンパク質物質のタンパク質への結合を決定するために使用される。実施形態では、タンパク質アレイは、非タンパク質物質のタンパク質結合パートナーを同定するために使用される。
【0120】
アレイ作製方法
実施形態では、アレイは、タンパク質の集団の各タンパク質について、該タンパク質を含む細胞溶解物を調製し、該溶解物を担体上の1つの位置に適用することによって形成され、ここで、各タンパク質についての溶解物は、異なる位置に適用され、該溶解物の適用は担体上に該タンパク質のアレイを形成し、該タンパク質は、該溶解物が作られる細胞中で外因性DNAを介して発現されている。図1は、本発明の実施形態によって細胞溶解物からアレイを作製する一般的なスキームを示す。図1は、表1に示される実施形態の一般的方法によって作製された2次元タンパク質アレイを示す。表2は、タンパク質が、アレイを形成する前に溶解物から精製される実施形態によってアレイを作製する方法を示す。表3は、タンパク質が、インサイチュアフィニティー法によってアレイを形成した後に精製される実施形態によってアレイを作製する方法を示す。
【0121】
本明細書で記載される本発明の態様では、実施形態は、生物のゲノム中の遺伝子により発現されるタンパク質の実質的な部分を包含するアレイに関する。特定の実施形態はさらに、タンパク質が、担体への適用前に宿主細胞中の外因性DNAを介して過剰発現されるアレイに関する。特定のさらなる実施形態は、アレイ中のタンパク質の濃度が、それが発現される宿主細胞におけるよりも高いアレイに関し、実施形態では、アレイ中のタンパク質の濃度が、それが外因性DNAを介して発現される宿主細胞中にあるよりも高いアレイに関する。
【0122】
本明細書で例証されるように、実施形態においてアレイを作製する方法は、外因性DNA(または他のポリヌクレオチド)を介して細胞中でタンパク質を発現させ、該細胞を溶解し、および該溶解物(またはそれから精製されたタンパク質)を担体に適用してアレイを形成する任意の適切な方法を用い得る。様々な例証的な実施形態によって、タンパク質を発現させ、溶解物を作製し、および溶解物(または精製タンパク質)を担体に適用してアレイを形成する方法は、以下により詳細に説明され、実施例でさらに例証される。
【0123】
アレイのためのタンパク質
本明細書で記載される本発明の実施形態におけるアレイのためのタンパク質は、宿主細胞中の外因性ポリヌクレオチド、しばしばDNAを介して得られる。実施形態では、宿主細胞は真核細胞である。実施形態では、細胞は哺乳動物である。実施形態では、本明細書で別にさらに検討されるように、それらはヒト細胞である。ポリヌクレオチド、例えば、実施形態において宿主細胞中でタンパク質を発現するDNAは、ライブラリーのメンバーである。この点に関して、ライブラリーという用語は、ポリヌクレオチド、例えば、DNAの1つの集合または組を意味する。実施形態では、ライブラリーは、哺乳動物のゲノム、例えば、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、サル、ゴリラまたはヒトのゲノムなどのゲノムの固有の遺伝子座、遺伝子、タンパク質コード遺伝子または領域、オープンリーディングフレームなどの規定した数を含み得る。
【0124】
この点に関して、「遺伝子座」(「locus」または「gene locus」)は、染色体上の別個の位置を指す。遺伝子座は、一緒にスプライスされ得るすべての可能なエクソンを含む、ゲノム内の規定された染色体領域に対するヌクレオチド配列によって正確に地図化される。代替エクソンの利用および/または示差的スプライシングのために、2以上の転写が単一のゲノム遺伝子座から始まり得る。したがって、各固有の遺伝子座は、それぞれ同じ固有の遺伝子座から始まる異なる転写のためのポリヌクレオチドを含む複数の発現クローンで表され得る。本明細書で用いられるとおりの遺伝子座を含むタンパク質によって、タンパク質が、それらがそこでコードされている遺伝子座に対応することが意味される。
【0125】
ヒトゲノム中の遺伝子、タンパク質コード遺伝子、固有の遺伝子座などの全数は、進行中の研究の問題である。例えば、Nature 431、931−945頁(2004年10月21日)およびヒトゲノムの数が記載されているその刊行物中の他の論文を参照されたい。NCBIは、本明細書でReference Sequence Collection(「RefSeq」)と称されるヒトゲノム由来のヌクレオチド配列の総合的で、統合的な非冗長性セットを維持する。この集合は、細心の注意を払ってキュレートされ(curated)、継続して更新されており、例えば、Pruitt KD、Katz KS、Sicotte H、Maglott DR、Trends Genet. 2000年1月;16(1):44−47頁;Pruitt KD、Maglott DR、Nucleic Acids Res 2001年1月1日;29(1):137−140頁;The NCBIハンドブック[インターネット]、Bethesda(MD):National Library of Medicine(米国)、National Center for Biotechnology Information、2002年10月、第17章、The Reference Sequence(RefSeq)Project(http://ncbi.nlm.nih.gov/entrezを介して入手できる)に記載されている。タンパク質を発現するポリヌクレオチドの配列、並びに多数の遺伝子座および遺伝子は、RefSeqおよび他のデータベース、例えば、GenBank、SwissProt、GenSeq、EMBL、UniProt、ASD、IMGT、IPD、IPIで確認され得る。
【0126】
実施形態では、このようなライブラリーは、ゲノムにおける固有の遺伝子座の実質的な部分、例えば、ヒトゲノムなどのゲノムにおける固有の遺伝子座の5、10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、99%(および間の値)の少なくともいずれかを含む。実施形態では、このようなライブラリーは、ゲノムにおける遺伝子の実質的な部分、例えば、ヒトゲノムなどのゲノムにおける遺伝子の20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、99%以上(および間の値)の少なくともいずれかを含み得る。実施形態では、このようなライブラリーは、ゲノムにおける遺伝子の実質的な部分、例えば、ヒトゲノムなどのゲノムにおけるタンパク質コード遺伝子の5、10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、99%以上(および間の値)の少なくともいずれかを含み得る。
【0127】
実施形態では、このようなライブラリーは、ポリヌクレオチド、例えば、DNAを、固有の遺伝子座、遺伝子、タンパク質コード遺伝子、オープンリーディングフレームなどの特定の数について、例えば、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、21,000、22,000、24,000、26,000、28,000、30,000、35,000、40,000の遺伝子座、遺伝子、タンパク質コード遺伝子、オープンリーディングフレームなどの少なくともいずれかを含む。
【0128】
サブアレイ
実施形態では、タンパク質アレイは、特に、タンパク質が細胞周期の間にもしくは発生の間に発現される場合、一般的なタンパク質の特徴、例えば、機能的または構造的特徴、またはそれが生物において発現される場合、もしくはそれが細胞にある場合に、その所与の代謝経路への関与、その疾患への関係などに基づいてサブアレイに構成される。実施形態では、アレイおよび/またはサブアレイは、特定の疾患への関与によって関係づけられるタンパク質をグループ化し得る。実施形態では、アレイおよび/またはサブアレイは、膜内外(原形質膜);Gタンパク質共役受容体;Gタンパク質共役受容体、非嗅覚;Gタンパク質共役受容体、嗅覚;ホルモン受容体;ステロイドホルモン受容体;神経伝達受容体;酵素;キナーゼ;細胞質;オルガネラ、細胞核;核膜;小胞体;ミトコンドリア;リソソーム;細胞骨格;免疫系;組織型(例えば、胸部、前立腺、脳、心臓など);イオンチャネル;核ホルモン受容体、シトクロムp450;ホスホターゼ;プロテアーゼ;ホスホジエステラーゼ;タンパク質輸送;ATP結合カセット(ANC);サイトカイン;ホメオボックスおよびHOX遺伝子;インテグリン;トランスポータ;DexH/Dタンパク質ファミリー(RNA代謝)などのタンパク質をグループ化し得る。
【0129】
外因性DNAを介するタンパク質産生
実施形態では、タンパク質は、溶解物が外因性DNAを介して作製される細胞中で発現される、すなわち、細胞中の、およびそれによる溶解物中の、タンパク質の量が、実質的に外因性DNAによって生じる。実施形態では、タンパク質は、外因性DNAを介して細胞中で過剰発現され、それにより、タンパク質が、外因性DNAの存在および作用がない場合に細胞が産生する量を超えて細胞中で産生されることが意味される。実施形態では、タンパク質は、細胞中で内生的に生成されるが、これは、外因性DNAを介する細胞を介して顕著により高いレベルで生成される。実施形態では、タンパク質は、外因性DNAを介して、その非存在で産生される量を実質的に超える量で過剰産生される。実施形態では、タンパク質は、外因性DNAなしで細胞中で産生される量の1.2、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、750、1,000、2,000、3,000、5,000、7,500、10,000倍またはそれを超える少なくともいずれかの量で産生される。
【0130】
タンパク質を発現するための外因性DNA
外因性DNAによって、ゲノムにおけるその天然設定における天然起源のDNAでない;すなわち、その非改変外因性設定における非改変外因性遺伝子でないDNAが意味される。典型的には、外因性DNAは、周知の組換えDNA技術を介して細胞中に導入されるDNAである。しばしば、外因性DNAは、その天然形態において、突然変異タンパク質としておよび/または融合タンパク質としてのいずれかで、発現されるタンパク質をコードしている。この点に関して実施形態では、外因性DNAは、以下により詳細に検討されるように、発現ベクターまたはコンストラクトの形態で細胞中に導入される。外因性DNAはまた、発現されるタンパク質、例えば、非相同的組換えで作用するRAGEコンストラクトをコードしない活性化因子DNAであり得る。それは、発現されるタンパク質に対する遺伝子の一部のみを含む活性化因子DNA、例えば、相同的組換えによる遺伝子活性化のためのコンストラクトであり得る。それは、タンパク質をコードしているコンストラクト、例えば、発現コンストラクトであり得、この場合に、そのコード領域は、中断されていなくても、中断されていてもよい。また、それは、アレイのための1種または複数のタンパク質の所望の量の、細胞における産生を生じさせる他の外因性DNAであってもよい。
【0131】
発現ベクター
実施形態では、アレイのためのタンパク質は、そのタンパク質をコードし、そのタンパク質のコード配列が、所望の転写および最終的には、宿主細胞におけるタンパク質の産生をもたらす発現調節配列(シス作用調節配列とも呼ばれる)に作動可能に結合される発現ベクター(発現コンストラクトとも呼ばれる)である外因性DNAを介して細胞中で発現される。実施形態では、細胞中でエピソーム要素として存続するものなどの発現ベクターは、自発的に複製する。実施形態では、宿主細胞DNAとともに複製するものなどの発現ベクターは、宿主細胞DNA中に一体化する。任意の適切な発現調節配列は、細胞中でタンパク質を産生するために用いることができる。このような発現調節配列には、限定されるものではないが、プロモーター、エンハンサー、リボソーム相互作用部位(リボソーム結合部位など)、ポリアデニル化部位、転写スライス配列、転写終結配列、mRNAを安定化させる配列、ならびに宿主細胞における外因性DNAを介するタンパク質の産生に所望の効果を生じさせ、制御し、促進し、増加させおよび/または達成する他の配列が含まれる。このような調節配列は、宿主適合性、誘導発現、高mRNAコピー数、および他の望ましい効果について選択され得る。実施形態では、この点に関して有用なプロモーターには、細菌宿主のためのtrp、lac、tac、またはT7プロモーター;酵母のためのアルファ因子、アルコールオキシダーゼ、またはPGHプロモーター、ならびに真核細胞、例えば、哺乳動物細胞のためのMMTV;SV40;CMV、およびRSV「プロモーター」が含まれる。
【0132】
本発明の特定の実施形態で有用な具体的な発現ベクターである、pCMV6−エントリーが、図3で概略を示している。
【0133】
外因性DNAの細胞中への導入
任意の適切な系または方法を使用して、本発明の実施形態においてアレイを作製するためのタンパク質の発現のために細胞中にDNAまたは他のポリヌクレオチドを導入することができる。この点に関して使用され得るDNAおよび他のポリヌクレオチドを導入するための、以下にさらに列挙される参考文献に記載されたもののような多くの周知の方法がある。本明細書で記載される本発明の実施形態で使用され得る、それらにおよび別に記載される適切な方法の中で、リン酸カルシウム沈殿、電気せん孔、注入、DEAE−デキストラン−仲介トランスフェクション、リポソームとの融合、細胞中へのその吸収を増強させる作用物質との結合、およびウイルス形質導入がある。細胞へ入った後に、DNA(または他のポリヌクレオチド)が、染色体外でまたは宿主細胞の染色体(複数可)中に統合されて存続する細胞中へDNAおよび他のポリヌクレオチドを導入する方法が使用され得る。DNA、または他のポリヌクレオチドは、周知の方法に従って、一時的に、構造的におよび/または誘導的に発現され得る。細胞中に導入されるポリヌクレオチドがDNAでない場合、それは、DNAにコピーされ、そのDNAは最終的に、目的のタンパク質を発現するためのテンプレートである場合がしばしばである。
【0134】
細胞
上記のように、目的のタンパク質を発現する細胞は、外因性DNA(または他のポリヌクレオチド)を宿主細胞中に導入し、そのDNAを受け入れた細胞を選択し、細胞をクローン的に繁殖させ、それらが目的のタンパク質を発現することを確認し、次いで、保存する、および/または所望のアレイを作製するのに十分な溶解物を作るために細胞の十分な個体群を生成させるために細胞をさらに展開することによって作られ得る。例えば、以下にさらに列挙される分子クローニングについての参考文献に示された方法などの適切な方法が当技術分野で周知であり常法である。
【0135】
実施形態では、アレイを作製するためのタンパク質は、任意の適切な細胞型、例えば、限定されるものではないが、細菌、植物または動物細胞、酵母または哺乳動物細胞、ならびにヒト細胞、たとえば、COS、CV1、BHK、CHO、HeLa、LTK、NIH3T3、293、およびHEK293細胞(HEK293T細胞など)を含む、原核細胞または真核細胞で作製され得る。
【0136】
溶解物
溶解物は、任意の適切な方法を用いて細胞から作製され得る。実施形態では、この溶解物法は、タンパク質の所望の構造的および/または機能的特徴を保存する。多くのこのような方法は当業者に周知である。例えば、溶解物は、例えば、RIPA緩衝液、SDSを含有する溶解緩衝液、低張性溶解緩衝液などを含めて、洗浄剤を含まない緩衝液および洗浄剤を含む緩衝液を用いて作製され得る。細胞を溶解する方法は、当技術分野で周知であり、限定されるものではないが、それらには、洗浄剤溶解、超音波溶解、および圧力下溶解(フレンチプレス)などが含まれる。
【0137】
実施形態では、アレイ中溶解物の少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、95または100%における各溶解物中のタンパク質の濃度は、1、2、3、5、10、15、20、25、35、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800もしくは900マイクログラム/ml、1、2、3、5、10、15、20、25、35、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800もしくは900mg/ml、または1、2、3、4、もしくは5グラム/mlの少なくともいずれかである。
【0138】
実施形態では、アレイ中の溶解物の少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、95または100%において組換えDNAを介して発現されるタンパク質の濃度は、溶解物中全タンパク質の0.01、0.05、0.10、0.20、0.50、0.75、1.00、2.00、3.00、4.00、5.00、10.0、15.0、20.0パーセントの少なくともいずれかである。
【0139】
実施形態では、溶解物濃度は、0.2−4mg/mlであり、外因性DNAを介して発現されるタンパク質は、全タンパク質の0.1から2%である。
【0140】
組換えタンパク質がアレイへの適用前に精製される実施形態では、アレイに適用されるタンパク質の少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、95または100%について適用緩衝液中組換えタンパク質の濃度は、1、2、3、5、10、15、20、25、35、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800もしくは900マイクログラム/ml、1、2、3、5、10、15、20、25、35、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800もしくは900mg/ml、または1、2、3、4、もしくは5グラム/mlの少なくともいずれかである。
【0141】
担体
アレイは、1つのパーツまたはいくつかのパーツのいずれにおいても、任意の適切な担体上で作製され得る。実施形態では、固体担体は、不溶性マトリックスである任意の材料であることができ、硬質または半硬質の表面を有することができる。実施形態では、担体は、アレイを作製するために、タンパク質を適用する担体として機能するために適切な数ある膜材料の中でも、ニトロセルロース、ナイロンなどの膜である。このような膜担体は、独立して立っていることができても、またはそれら自体支持されていてもよい(例えば、スライドガラス上のニトロセルロース膜材料)。実施形態では、担体は、ガラス(スライドガラスなど)、シリコン(集積回路およびMEMデバイスにおける元素の表面を含む)、およびプラスチック(プラスチックプレート、例えば、マイクロタイタープレート(例えば、96−ウェル、384−ウェルのマイクロタイタープレート)を含む)、ならびに他の受容力をもつものであり得る。
【0142】
例示的な固体担体には、限定されるものではないが、ニトロセルロースなどの基板(例えば、スライドガラス上の膜におけるまたはマイクロタイターウェル形態における);ポリ塩化ビニル(例えば、ガラス上またはマイクロタイターウェル中のシート);ポリスチレンラテックス(例えば、ガラス上またはマイクロタイタープレート中のビーズ);ポリフッ化ビニリデン;ジアゾ化紙;ナイロン膜;活性化ビーズ、磁気応答性ビーズなどが含まれる。特定の担体には、プレート、ペレット、ディスク、キャピラリー、中空繊維、ニードル、ピン、固体繊維、セルロースビーズ、細孔ガラスビーズ、シリカゲル、場合によってジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンビーズ、グラフト化コポリビーズ、ポリアクリルアミドビーズ、ラテックスビーズ、場合によってN,N’−ビス−アクリロイルエチレンジアミンで架橋されたジメチルアクリルアミドビーズ、および疎水性ポリマーでコーティングされたガラス粒子が含まれる。
【0143】
実施形態では、タンパク質は、共有および/または非共有結合を介して担体上に結合される。実施形態では、タンパク質は、非修飾形態で結合され得る、またはそれらは修飾されて結合もしくは結合後の除去を促進し得る、または両方であり得る。実施形態では、タンパク質は修飾されて、ガラス、ポリリシン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリビニル、ポリジアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリペプチド、多糖類、ポリスルホン、ポリピロール、ポリイミダゾール、ポリチオフェン、ポリエーテル、エポキシド、シリカガラス、シリカゲル、シロキサン、ポリホスフェート、ヒドロゲル、アガロース、セルロース、および/または他の担体、コーティングもしくはフィルムへの結合を促進または可能にし得る。
【0144】
これらの中で、Schott Nexterionニトロセルローススライドなどのニトロセルロースでコーティングされたスライドガラスがある。
【0145】
溶解物の担体への適用
タンパク質、例えば、外因性遺伝子を介して発現される溶解物中のタンパク質は、様々な方法でアレイに適用され得る。実施形態では、それらは、マイクロアレイプリンターを用いて適用される。マイクロアレイプリンターは、試料をスポットするためのプリンティングチップアーキテクチャ(printing tip architecture)および機構によって3グループ:クイルピン(quill pin)(スプリットピン)、圧電(インクジェット)スポッター、およびソリッドピンに区別され得る(BarbulovicNadら、2006年)。Aushonによって開発されたソリッドピンアレイヤー(solid pin arrayer)は、細胞溶解物などの複雑な混合物をプリントするために特別に設計されており、粘性タンパク質溶液で十分機能して、スライド上に均一なスポットを生成する(Spurrierら、2008年)。このスポッターによる均一性は、コロイド金で染色されたアレイを示す図2Aで示されるように、非常に良好である。スポットにおける全タンパク質は、アレイにわたって均一であり、各サブアレイにおける濃度シリーズは、適切なスケーリングを示し、これは同様に、アレイにわたって均一である。
【0146】
アレイ幾何学およびスポット密度
アレイは、多種多様なフォーマット、寸法、モジュール性で作製することができ、多種多様な、特に、位置、タンパク質、フィーチャ、フィーチャサイズ、フィーチャ間隔、フィーチャ占有率、対照、アラインメントマーカーおよび基準によって作製することができる。
【0147】
実施形態では、アレイ中1cm2当たり10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000、または20,000の位置の少なくともいずれかが存在する。
【0148】
実施形態では、1cm2当たりアレイ上の異なる位置に適用される10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000、または20,000の溶解物の少なくともいずれかが存在する。
【0149】
実施形態では、1cm2当たりアレイ上の異なる位置に適用される、外因性DNAを介して発現される10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000、または20,000のタンパク質の少なくともいずれかが存在する。
【0150】
実施形態では、前記位置の50、60、70、80、90または95%の少なくともいずれかに適用される前記タンパク質を有するアレイ上1cm2当たり10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000、または20,000の位置の少なくともいずれかが存在する。
【0151】
実施形態では、溶解物および/またはタンパク質は、直径10−50、25−75、50−100、75−150、100−200、150−250、200−300、250−350、300−400、400−500、500−750、400−800、750−1,000μmのいずれかであるスポット(フィーチャ)に適用される。
【0152】
実施形態では、アレイ中溶解物またはタンパク質を含むフィーチャの面積は、10−50、25−75、50−100、75−150、100−200、150−250、200−300、250−350、300−400、400−500、500−750、400−800、750−1,250、1,000−2,000、1,500−3,000、2,500−5,000μm2のいずれかである。
【0153】
実施形態では、アレイ中のフィーチャ(スポット)の中心と中心の間隔が、5−15、10−20、15−25、20−40、25−50、25−75、50−100、75−150、100−150、125−175、150−225、200−250、225−275、250−350、300−400または400−500μmのいずれかである。
【0154】
実施形態では、タンパク質スポットサイズは、直径110から300μmである。実施形態では、アレイ上の中心と中心の間隔または位置および/もしくはタンパク質は、150−250μmである。
【0155】
結合を検出するアレイの使用
タンパク質アレイ中のタンパク質への作用物質の結合を検出および/または測定するために任意の適切な方法論が使用され得る。実施形態では、固相アッセイが使用される。実施形態では、サンドイッチアッセイが使用される。実施形態では、放射測定、熱量測定、化学発光および/または蛍光定量に基づくアッセイが使用される。抗体結合アッセイに関連する特定の実施形態では、例えば、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(酵素結合免疫吸着法)、EIA(酵素免疫アッセイ)、免疫蛍光アッセイ、および免疫沈澱アッセイなどを含む、任意の適切な免疫アッセイが使用され得る。実施形態では、直接標識法も使用され、ここで、作用物質は直接標識されて、アレイ中のタンパク質への結合は、直接結合した標識を検出および/または測定することによって決定される。実施形態では、間接標識法が使用され、ここで、作用物質の結合は、作用物質の部分ではなく、およびアレイ上のタンパク質の部分でない検出部分との相互作用によって検出される。例えば、間接ELISAでは、アレイ中のタンパク質への抗体の結合は、一次抗体に結合する標識二次抗体によって検出される。実施形態で有用である、熱量測定、放射測定および蛍光定量の検出可能マーカーには、限定されるものではないが、ローダミンまたはローダミン誘導体、ビオチン、アビジン、ストレパビジン、蛍光化合物(Cy3、Cy5、Alexa−555、Alexa−647、Dylight−549またはDylight−649aなど)、化学発光化合物(ジメチルアクリジニウムエステルなど)などが含まれる。
【0156】
実施形態では、酵素免疫アッセイが検出のために使用され得る。タンパク質アレイに容易に適用され得る様々なこのようなアッセイが周知であるとともに、当技術分野で日常的に用いられており、例えば、Voller,A.、「The Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA)」、1978年、Diagnostic Horizons 2、1−7、Microbiological Associates Quarterly Publication、Walkersville、Md.;Voller,A.ら、1978年、J.Clin.Pathol.31、507−520頁;Butler,J.E.、1981年、Meth.Enzymol.73、482−523頁;およびMaggio,E(編)、1980年、Enzyme Immunoassay、CRC Press、Boca Raton、Fla.に記載されたものなどがある。
【0157】
ELISAは、酵素反応を用いて、熱産生もしくは蛍光発生基質から着色(吸収性)もしくは蛍光生成物、または化学発光基質から発光を生じさせる。1種または複数の酵素が用いられ得る。単純な実施では、発色基質に作用する酵素が、抗体に結合している。この結合体は、例えば、マイクロタイターディッシュウェルに固定化されたタンパク質とインキュベートされる。インキュベーション後、アレイ中のタンパク質に結合しなかった結合体は、洗い流される。シグナル生成性、例えば、発色基質が添加され、一定期間ウェル中でインキュベートされて、マイクロタイタープレートウェル中のタンパク質に結合したいずれの酵素結合体も着色生成物を生成し得るようにする。反応の直線領域では、生じた色の量は、結合した結合体の量に比例する。タンパク質アレイについて、反応の生成物は一般に、表面上に沈殿するまたは表面に結合し、そのため、それは、抗体が結合している場所から拡散しない。酵素反応の使用は、各結合事象からのシグナルを大きく増幅する。ELISAは、さらなる増幅のために2種以上の酵素を用い得る。非常に多種多様なELISAが、当技術分野に知られており、本明細書で記載されているタンパク質アレイとともに使用するために容易に適合させ得る。
【0158】
多くの酵素が、実施形態で用いられ得るELISAで成功裏に使用されてきており、限定されるものではないが、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコール脱水素酵素、アルファ−グリセロホスフェート、脱水素酵素、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。
【0159】
これらの酵素(および他の酵素)のための任意の適切な基質および標識、例えば、限定されるものではないが、それぞれ、着色、蛍光および化学発光生成物を生じさせる、(上記のとおりの)熱産生、蛍光発生、生物発光および化学発光基質が、ELISAで使用され得る。放射性標識もまた使用することができる。実施形態で有用な蛍光標識には、限定されるものではないが、以下が含まれる:フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒドおよびフルオレサミン。実施形態で有用な化学発光標識には、限定されるものではないが、ルミノール、イソルミノール、セロマティックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルが含まれる。実施形態で有用な生物発光標識には、限定されるものではないが、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびイクオリンが含まれる。任意の適切な標識を用いることができ、上記は、ELISAおよびこの点に関して有効であり得る他の結合アッセイで開発され、用いられてきた、よく知られているより有効な標識のほんの一部である。
【0160】
結合パートナーを選別するタンパク質アレイの使用
アレイ中でポリペプチド(タンパク質)と反応するまたはそれに結合する任意の種類の試料または物質(本明細書で作用物質と呼ばれる)の相互作用が、特定され得る。実施形態では、アレイは、アレイ中のタンパク質への結合、例えば、試料(およびその成分)または作用物質(候補結合性化合物または抗体など)の結合を検出するために使用される。この点に関して具体的な使用が、以下に説明される。
【0161】
実施形態では、作用物質は、アレイ中のタンパク質の特異的結合パートナー、例えば、抗体、受容体リガンド、アプタマー、ポリペプチド、および他の結合性分子である。作用物質は、ポリペプチドを修飾する酵素または他の物質、例えば、キナーゼ(タンパク質をリン酸化する)であり得る。作用物質は、タンパク質(ポリペプチド)に結合し得る任意の物質または部分を含むことができ、限定されるものではないが、単独でまたは組み合せて、化合物;生物分子、例えば、ポリペプチド(アミノ酸)、脂質、核酸(ヌクレオチドおよびポリヌクレオチド)、および炭水化物;無機分子;有機分子などが挙げられる。
【0162】
抗体が結合するタンパク質を同定するタンパク質アレイの使用
実施形態では、本明細書で記載されるタンパク質アレイは、抗体が結合するタンパク質を選別および同定するために使用され得る。抗体は、それらの特異性のために、診断および治療目的に広範に用いられる。現行のアッセイ法における制限のために、これらの抗体が相互作用する抗原は、すべてが知られているわけではない。
【0163】
抗体が抗原に対して生成する場合、得られる抗体は一般に、その抗原に対して特異的であると特徴付けられる。タンパク質抗原の場合、タンパク質は典型的には、個々の抗体が特異的に結合する1つまたは複数のエピトームを含む。タンパク質中のエピトームは、タンパク質の連続的部分によってだけでなく、タンパク質の三次元配座の近傍に折り畳まれているタンパク質の非連続領域によっても形成され得る。抗体の、例えば、タンパク質への結合特異性は、同じまたは類似のエピトープを有する他のタンパク質への交差反応によって複雑にされ得る。交差反応性は、抗体が分析および治療の目的に使用される場合の両方で、重要な問題であり得る。
【0164】
エピトープを規定するアミノ酸配列が、異なるタンパク質中で生じるために、このような交差反応が起こることもある。これは、同じ一次転写の、示差的にスプライスされた変異体で、または単に、その配列が2つのタンパク質で独立して生じるために起こり得る。交差反応性タンパク質は、同じ細胞および組織型で、ならびにスプライス変化が組織特異的な仕方で生じる場合に生じるように、異なる型で生じ得る。
【0165】
一般に、診断アッセイなどの検出アッセイまたは治療における使用のために抗体の特異性を理解することは重要である。多くの目的にとって、その特異的標的との抗体の相互作用およびその交差反応性を特徴付けることは重要である。抗体とプロテオーム全部との相互作用を決定する方法はなかったので、抗体交差反応性の全体的な理解は、現行の技術を用いて容易に得ることができなかった。ほぼ同じことが、タンパク質パートナーに結合する他のタンパク質(および非タンパク質作用物質)の相互作用について当てはまる。
【0166】
本明細書で記載される実施形態では、タンパク質アレイは、一次抗原以外のタンパク質への交差反応について抗体を選別するために、特に、所与のゲノムでコードされているタンパク質の実質的な部分との相互作用の理解を得るために使用され得る。この点に関して実施形態では、本明細書で記載される全ゲノムアレイは特に有用である。ほぼ同じことが、タンパク質に結合する他の種類の作用物質に当てはまる。
【0167】
疾患のバイオマーカーを同定するタンパク質アレイの使用
特定の実施形態では、本明細書で記載されるタンパク質アレイは、自己免疫疾患および他の疾患、例えば、癌によって産生される抗体を検出するために使用され得る。自己免疫状態では、対象は、自己抗原に対して免疫応答を引き起こし、これらの抗体はしばしば、疾患の診断および予後のために有用なマーカーである。このような自己抗体に対するコグネイト抗原が知られていないこともあり、この場合、実施形態では、本明細書で記載されるタンパク質アレイは、このようなタンパク質結合自己抗体が結合するタンパク質を決定するために使用され得る。他の場合、コグネイト抗体は少なくとも部分的に知られており、本明細書で記載されるタンパク質アレイは、自己抗体を決定、特徴付けおよび/または測定するために使用され得る。
【0168】
既知または未知のタンパク質に結合する抗体について、実施形態では、本明細書で記載されるタンパク質アレイは、このような自己抗体の非存在、存在および/または量を決定するために使用され得る。例えば、この点に関して本発明の特定の実施形態によれば、自己免疫状態のリスクがあるまたはそれに実際に罹っている対象などの、対象由来の抗血清、血液成分、体液、および/または細胞(いくつかを挙げると)は、試料中の自己免疫抗体を特徴付けし、それにより、対象における健康、リスクまたは実際の疾患などを診断するために、本明細書で記載されるタンパク質アレイに適用されて、それらが結合する標的抗原(タンパク質)を決定し、および/またはアレイ中の特定のタンパク質に結合する試料中の自己抗体の非存在、存在および/または量を決定することができる。
【0169】
同様に、この点に関して本発明の特定の実施形態によれば、疾患の非存在下で一般に見られない抗体の産生を引き起こす疾患のリスクがあるまたは実際に罹っている対象などの、対象由来の抗血清、血液成分、体液、および/または細胞(いくつかを挙げると)は、試料中の抗体を特徴付けし、それにより、対象における健康、リスクまたは実際の疾患などを診断するために、本明細書で記載されるタンパク質アレイに適用されて、それらが結合する標的抗原(タンパク質)を決定し、および/またはアレイ中の特定のタンパク質に結合する試料中の自己抗体の非存在、存在および/または量を決定することができる。
【0170】
上記の説明および下記の実施例は、本明細書で開示される本発明の様々な実施形態を例証する。多種多様なさらなる態様、特徴および実施形態が、それに関係する当業者への本開示を読むことから明らかであり、それらはすべて、本明細書で開示される本発明の範囲内にあることが理解されるべきである。
【実施例】
【0171】
V
以下の実施例により、本明細書で記載される本発明の様々な態様によるタンパク質マイクロアレイの例証的な実施形態およびこれらのいくつかの具体的な利用が記載される。これらの実施例は、本明細書で記載される本発明を限定するものでは決してない。
【0172】
[実施例1]
ヒトタンパク質遺伝子の約50%の適用範囲を有するタンパク質マイクロアレイ
本発明の実施形態により、ゲノム中タンパク質コード遺伝子のすべての実質的な部分を有するアレイが提供される。国際ヒトゲノムシークエンシングコンソーシアム(International Human Genome Sequencing Consortium)は、ヒトゲノム中に約20,000−25,000のタンパク質コード遺伝子があると推定している(Stein、2004年)。以下の実施例は、約3,500−10,000の個人のヒトゲノムから約10,000−20,000のスポットを有するタンパク質アレイの製造および使用を例証する。アレイは、以下に記載されるように哺乳動物発現ベクターpCMV6−エントリー中にクローン化した確認されたヒトcDNAのOriGene,Inc.ライブラリーを用いて製造した。
【0173】
[実施例2]
ヒトタンパク質を発現させるためのpCMV−エントリーベクター
アレイのためのタンパク質は、pCMV−エントリー発現ベクターを介して発現させた(図3に概略を示している)。ベクターは、それを、タンパク質アレイを作製するために哺乳動物宿主細胞中で哺乳動物タンパク質を過剰発現するために特に有効にさせるいくつかの特徴を有する。それは、真核細胞における効率的なエピソーム複製に有効な複製の起点(SV40Ori)、および細菌における複製のための起点を含む。それは、CMVプロモーター、マルチクローニング領域、およびポリアデニル化シグナルを含む、哺乳動物細胞における都合のよいクローニングおよび効率的な発現のための発現カセットを含む。発現カセットは、C−末端myc−DDKタグ付きタンパク質を発現するためにポリアデニル化シグナルの直ぐ上流にmycおよびDDKエピトープも含む。タグは、組換え技術によって発現されたタンパク質を検出および精製するために有効で、都合のよい部分である。ベクターは、細菌宿主における(およびインビトロでの)効率的な転写のためのマルチクローニング領域の上流にT7プロモーターを含む。それは、哺乳動物および細菌の宿主細胞(それぞれ、カナマイシンおよびネオマイシン耐性遺伝子)における選択のための薬剤耐性マーカーを発現するための第2の発現カセットを含む。またそれは、タグ付き融合タンパク質のCMV発現の3’領域におけるC−末端mycおよびDDKタグ配列を含む。それは、同様に細菌細胞における繁殖のための複製の起点を含む。(FLAGは、DDKの商標名である。)
【0174】
[実施例3]
過剰発現溶解物
12,000を超える過剰発現溶解物を、pCMV−エントリーベクター中にクローン化したヒトcDNAを用いて作製し、HEK293T細胞中で過剰発現させ、それらを抗Flag免疫ブロット分析により確認した。発現プロファイル分析物も、適切な翻訳後修飾がこの発現系で生じることを示した。溶解物すべてについての発現プロファイルを調べ、個別に注釈付けした。図2は、8つの無作為に選択した溶解物の発現プロファイルを示す。
【0175】
大部分の組換えタンパク質の発現レベルは、その内因性対応パートナーよりも少なくとも100倍高く、図2に示す。この過剰発現のレベルは、宿主細胞それ自体由来のバックグラウンドに対して非常に高いシグナル対ノイズ比を与える。
【0176】
抗Flag免疫ブロットの全体の成功率は約95%である。
【0177】
[実施例4]
ニトロセルローススライド上への過剰発現溶解物のプリント
過剰発現溶解物をSchottニトロセルローススライド上にプリントした。図1は、全体の配置およびサブアレイの仕様を示す。図に示されるように、各スライドをサブアレイ、典型的にはスライド当たり40サブアレイに分割した。図における拡大領域は、各サブアレイの配置を示す。図に示されるように、各サブアレイは、以下の対照およびマーカーを有した:精製BSA−cy3およびBSA−cy5方向マーカー;精製マウスおよびウサギIgG(陽性対照);空pCMV−エントリーベクターDNAでトランスフェクトしたHEK293T細胞の溶解物(陰性対照)、精製GST−myc−Flag融合タンパク質の参照希釈シリーズ(サブアレイ溶解物中外因性組換えタンパク質発現を定量化するための参照濃度曲線を確立する。)。GST−myc−FLAG濃度シリーズからのシグナルは、mys−FLAGタグ付きタンパク質発現を決定するためのシグナル強度対濃度の標準曲線を確立するために役立った。
【0178】
ピンスポッター、特にAushon 2470アレイスポッターを用いて、Schottニトロセルロース標準マイクロアレイスライド上にアレイを作製した。9,000スポット(フィーチャ)(各200−300ピコリットル)を、110μmピンを用いて標準スライド上21mm×51mmニトロセルロースパッド上にプリントした。16,000スポットを85μmピンでプリントした。22,000と同数の150−200ピコリットルのスポットを、いくらか大きいニトロセルロースパッド(21mm×60mm)上に85μmピンを用いてスライド上にプリントした。周囲の分析物理論(ambient analyte theory)と一致して、検出感度はスポットサイズの減少とともに増加した(Ekins、1989年)。シグナルの均一性は、110μmスポットより85μmスポットについてより大きかったが、シグナル強度は、ほぼ同じであった。アレイ製作の詳細を以下に示す。
【0179】
スライド種類: Shott NCスライド
Aushonアレイヤーピンサイズ 85μm
Slide NCパッド寸法: 21mm×60mm
全サブアレイ: 48(4列×12行)
サブアレイサイズ: 4200μm×4400μm
サブアレイ寸法: 21列(水平)×22行(垂直)
メジアンスポット直径: 約150μm
スポットの中心と中心の間隔: 200μm
サブアレイ間の距離: 200μm
試料当たり複製物: 2
【0180】
これらの仕様に作製したスライドは、22,176のフィーチャ(スポット)、例えば、二通りの10,464の固有のタンパク質スポット(溶解物など)および1,248の対照フィーチャを含み得る。
【0181】
1%NP−40を含有するRIPA緩衝液中溶解物を、ソリッドピンスポッターを用いてニトロセルローススライド上にスポットした。例えば、Chanら、2004年およびNishizukaら、2003年に記載された溶液などの、他の洗浄剤またはカオトロピック試薬を含有する溶液などの他の溶液をプリンティングに使用し得る。溶解物をソースプレートから直接スポットし、スポッティングのすべては、試料濃縮物への蒸発作用を最小化するために調整環境において70%相対湿度で行った。これは、約9,000のスポットのアレイをプリントするために十分機能した。
【0182】
より大きいアレイについて、製作時間は、1つのプレートから、連続的にまたは並行して行う代わりに、いくつかのソースプレートからスポットすることによって同じに保つことができる。アレイ製作中の濃縮への蒸発作用をさらに最小化するために、溶解物をいくつかのソースプレートに分配し、並行してスポットすることができ、したがって、試料のいずれも、悪影響を及ぼすほど長時間曝露されない。代替または追加として、4%グリセロール(または他の安定剤および抗蒸発剤)をスポットする緩衝液に添加することができる。
【0183】
[実施例5]
チップ品質の評価
タンパク質アレイの品質を、全タンパク質を評価するためにコロイド金で染色することによって評価し、組換えタンパク質を評価する抗Flag免疫染色によって、コロイド金による染色は、アレイにわたって全タンパク質についてスポット形態の高い均一性を示す(図3に示される。)。図3Bおよび図5Aに見られるように、抗FLAG抗体による免疫染色は、アレイにわたってFLAG−myc融合タンパク質の結合を示した。抗FLAG結合の量の変動性は、宿主細胞における融合タンパク質発現の差に伴う溶解物中の濃度の差を反映する。精製GST−myc−Flag融合タンパク質を、溶解物中の融合タンパク質の濃度を決定する参照標準として役立つようにアレイに適用した。希釈シリーズは、図1のアレイの拡大領域においてグラフで示し、希釈シリーズの均一性は、図4Cの右上パネルに見ることができる。
【0184】
[実施例6]
溶解物アレイを用いる抗体特異性の同定
抗体特異性はしばしば、抗体の診断および治療の用途に重要な特徴であると同様に、分子生物学研究および治療抗体開発に重要である。交差反応性は、例えば、Tabriziら、(2009年)に記載されるように、生物学的研究に対して偽陽性および治療抗体処置に対して副作用を引き起こし得る。本明細書で開示される本発明の実施形態は、抗体の一次特異性および交差反応性の同定および/または特徴付けを含む、抗体特異性の同定および確認のための過剰発現溶解物マイクロアレイの使用を含む。アレイはさらに、他の種類の分子のみならず、他のタンパク質の結合特異性および交差反応性を調査、同定および確認するために使用され得る。
【0185】
この点に関して例証として、前に特徴付けしたp53に対するポリクローナル抗体を、3700の別個のmyc−FLAGヒト融合タンパク質を含む3700を超える過剰発現溶解物を含む溶解物アレイに対して選別した。p53抗体は、p53発現溶解物およびHEK293T宿主細胞の内因性p53の両方と反応した。過剰発現溶解物からのシグナルは、バックグラウンドのHEK293T発現からのシグナルより10倍を超えて大きい。
【0186】
さらに、抗体は、バックグラウンドを明らかに超えるが、p53溶解物への結合よりは小さいレベルでいくつかの他の溶解物に結合した。さらなる調査により、これらの溶解物のいくつかにおけるより高いp53シグナルは、抗p53抗体への外因性タンパク質の交差反応性ではなく外因性タンパク質によるp53発現の促進によることが示された。同様の結果が、マウスモノクローナル抗p53抗体を使用して得られた。
【0187】
図4に示した結果は、過剰発現溶解物アレイは、タンパク質の相互作用特異性および交差反応性を研究するためにおよび他のタンパク質、例えば、特に外因性タンパク質の発現に対する多数のタンパク質の過剰発現の効果(別個におよび/または互いに協調して)を決定するために使用され得ることを示す。
【0188】
[実施例7]
全細胞免疫化により生成したモノクローナル抗体の解読
全細胞免疫化は、モノクローナル抗体、例えば、バイオマーカーアッセイおよび癌治療のための高度に特異的なモノクローナル抗体を生成させるために使用され得る。しかし、全細胞免疫化技術のより広範な使用は、初期に得られるモノクローナル抗体の標的を決定する困難さによって妨げられる。しばしばこの作業は、非常に費用がかかり、実施するために数年を必要とする。
【0189】
実施形態では、過剰発現溶解物マイクロアレイチップを使用して、タンパク質結合作用物質のタンパク質結合標的、例えば、全細胞免疫化技術によって生成したモノクローナル抗体の細胞タンパク質結合特異性を迅速に決定することができる。結合特異性または結合パートナー(抗体など)の特異性の決定は、本明細書で解読と呼ばれる。
【0190】
この点に関して実施形態は、マウスをMCF−7乳癌細胞で免疫することによって最初に得られた市販の抗E−カドヘリン抗体の標的の同定によって例証される(Shimoyamaら、1989年)。免疫染色データは、その標的が3700を超える異なる遺伝子から明らかに際立つことを示す(図5A)。この結論は、ウェスタンブロット分析によってさらに支持される(図5B)。
【0191】
[実施例8]
腫瘍バイオマーカーの発見
様々なタンパク質が、疾患の指標として働き、治療法を開発するための目標点の代わりとなる。腫瘍に対する癌患者によって産生された自己抗体は、疾患の価値ある診断および予後指標となり得る一クラスのタンパク質を示す。このようなタンパク質が示す可能性は、一部はヒト血清における自己抗体を特徴付けることの困難さのために、実現されてこなかった。
【0192】
この困難さを克服することを期待して、SEREX(組換え発現クローニングによる抗原の血清学的同定)およびSERPA(血清学的プロテオーム分析)(GunawardanaおよびDiamandis、2007年)などの様々な方法が開発されてきたが、これらはすべて、かなりの不利点を有する。
【0193】
SEREXは、各クローンについて明確な注釈をもつ幅広い適用範囲をもたらし得るが;しかし、それは、原核生物のcDNA発現ライブラリー選別に基づく。結果として、選別のために使用される組換えタンパク質は、翻訳後修飾をまったく有さない。さらに、この技術は、発見段階で多数の患者の血清試料を試験することを困難にする。
【0194】
SERPAは、免疫ブロッティングおよびMSによって自己抗体標的を同定する。本質的に、自己抗体を含有する血清は、2−D IEF/SDS PAGEを受けたヒト組織溶解物中のコグネイト抗原を検出するプローブとして使用される。次いで、血清中で自己抗体に結合するゲル中のタンパク質抗原は、質量分析によって同定される。この手法は、タンパク質を過酷に変性する状態に置き、検出無感度および非再生可能性の不利を招く。さらに、典型的にはウェスタンブロットおよび検出工程の実施に関与する他のタンパク質が混入して、この手法が提供する限られたデータ−IEP、サイズおよび質量スペクトルから抗原を同定することは困難である可能性がある。
【0195】
本明細書で記載される実施形態は、自己抗体のタンパク質抗原を同定および特徴付けするためのSEREXおよびSERPAなどの方法の限界を克服する。実施形態では、タンパク質アレイは、各遺伝子に対する明確な注釈を有し、その結果、タンパク質は、アレイ中の各箇所で知られる。さらに、実施形態では、アレイ中のタンパク質は、HEK293T発現系で産生され、翻訳後に十分処理される。
【0196】
このような実施形態は、乳癌患者における自己抗体の同定によって示される。マイクロアレイスライドは、乳癌患者または年齢の一致した健常患者からの血清とともにインキュベートし、次いで、免疫染色して、患者血清中の自己抗体がマイクロアレイ中のタンパク質に結合した場所を視覚化する。結果により、異なるヒト血清に対する別個の自己抗体免疫反応パターンが明らかとなる(図6に示される。)。
【0197】
[実施例9]
精製タンパク質アレイ−ワンステップ免疫精製
以前の研究は、抗Flagイムノアフィニティー精製技術が、自然条件下で過剰発現溶解物からFlagタグ付き複数サブユニットタンパク質複合体を単離するために使用され得ることを示した(Chiangら、1993年;Gloecknerら、2009年)。本発明者らは、この手法を適用して、HEK2093T細胞中pCMV6−エントリーベクターを用いて発現されたFLAG−mycタグ付きタンパク質を単離した。この一般的な手法を、表2および表3に概略的に示し、10の無作為に選択した溶解物についての結果を図7に示す。この手法は、限定されるものではないが、His、myc、FLAG、V5、GST、T7、HSV、VSV−g、Glu−Glu、HA、E−タグなどを含む、任意のエピトープタグとともに使用され得る。
【0198】
[実施例10]
オンチップ精製
オンチップ精製は、本明細書で記載されるマイクロアレイを製造するために使用され得る。オンチップ精製を用いてタンパク質アレイを作製する一般的なスキームを表3および図8に示している。
【0199】
この実施例では、DDKエピトープおよび抗DDK抗体(FLAGエピトープおよび抗FLAG抗体)を用いる10,464の精製ヒト組換えタンパク質を有するタンパク質アレイの製造が記載されている。Flagは、高度に免疫原性ペプチドである。Flagエピトープタグと抗Flag抗体との相互作用は、例外的に強く、特異的である(ChiangおよびRoeder、1993年)。高品質抗Flag抗体は、マウス、ウサギ、ヤギおよびさらにニワトリを含む、異なる種で生産した。このような抗体は、市販されており(OriGene,Inc.製の抗体など)、しばしば免疫沈澱分析に使用されて、高品質の抗Flagマウスモノクローナル抗体およびウサギポリクローナル抗体を与える。
【0200】
オンチップ精製の有効性を、図9に示す。pCMV6−エントリーベクターを介してHEK293T細胞中で発現されたFLAG−mycタグ付きタンパク質を含むHEK293T細胞溶解物、または空pCMV6−エントリーベクター形質転換細胞の溶解物(陰性対照)を、コーティングしていないニトロセルローススライド(陰性対照)および抗FLAG抗体でコーティングしたニトロセルローススライド上にスポットした。次いで、スライドを、固定化FLAG−mycタグ付きタンパク質を視覚化するために抗myc抗体によってまたは非タグ付き細胞タンパク質に相当するアクチンを視覚化するために抗ベータ−アクチン抗体によって精査した。
【0201】
図9に示すように、抗myc抗体結合は、myc−FLAGタグ付きタンパク質が、緊密で、比較的均一な濃く染色するスポットにおいて抗FLAGでコーティングしたニトロセルローススライドに結合する一方、それは、より広く拡散し、あまり濃くないスポットにおいてコーティングしていないスライドに結合することを明らかにした。スライドのいずれかのタイプにおいても抗mcy抗体による陰性対照の染色はなかった。抗FLAGでコーティングしたスライド上のスポットの抗ベータアクチン免疫染色はなく、ブロッキング工程が非特異的結合を防止するために有効であること、および大部分の細胞タンパク質が、スライド上に溶解物をスポットした後に効率的に洗い流されることを示した。コーティングしていないスライドに結合する抗myc抗体は、暗色の環を有する拡散したスポット中において大部分の細胞タンパク質の結合を示した。
【0202】
オンチップのワンステップイムノアフィニティー精製は、任意のタグ付きタンパク質とともに使用することができ、したがって、タグ付き融合タンパク質を発現するベクターを用いて外因性DNAを介して産生されるタンパク質に広く適用され得る。様々なタグが、この目的にDDK(FLAG)と同様に使用され得る。
【0203】
VII
以下の参考文献および本明細書で別に引用した参考文献は、特に、それらが本明細書で参照される特定の主題に関して、それらの全体が本明細書で明示的に組み込まれる。
【0204】
本発明の実施形態の実施に有用であり得る、ポリヌクレオチド、外因性遺伝子の発現、発現ベクター、形質転換細胞におけるタンパク質産生についての情報は、実施形態が属する当技術分野で周知であり、広く利用できる。このような情報は、例えば、以下の参考文献に見出すことができる。
【0205】
【表4】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年9月25日に出願された米国仮出願第61/245,852号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる。)の優先権の利益を主張する。
【0002】
本明細書で開示されている実施形態は、タンパク質アレイ、タンパク質アレイを作製する方法、ならびに研究用および特に疾患を診断するためのこれらのアレイの使用の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
I
タンパク質アレイは、多くのタンパク質に基づくアッセイが、並行して行われることを可能にする。タンパク質アレイは、個別のアッセイと比較して処理量の著しい増加をもたらす。タンパク質アレイは典型的には、1回のアッセイ当たりの使用する試薬はより少なく、同様に1回のアッセイ当たりの必要とする時間はより少ない。結果として、アレイは一般に、アレイを製作する費用が考慮される場合でさえ、1回のアッセイ当たりの費用の大きな減少をもたらす。さらに、アレイにおける複数のアッセイの同時の遂行により、個別のアッセイの冗長性、および複数の方法で同じパラメータをアッセイする能力がもたらされ、個別のアッセイと比較して、結果の精度および正確度の向上につながる。さらに、全ゲノムのタンパク質アレイは、プロテオームワイドなタンパク質−分子相互作用を検出する可能性を与える。このようなゲノムワイドな調査は、いくつかの主要な用途を挙げると、タンパク質−タンパク質相互作用の理解、抗体結合特異性および交差反応の解読、ならびに診断および患者層別化のためのバイオマーカーの同定のための強力な手段となる。
【0004】
タンパク質アレイのいくつかの主要なフォーマットが報告されている。順相タンパク質マイクロアレイにおいて、特定の標的に対する明確に定義された特異性を有する捕捉タンパク質が、アレイ中の定められた箇所で固定化され、標的化合物は、試料のアレイへの結合の位置および強度によって同定および定量化される。順相アレイの主な使用は、個々の試料を調べて、多数の異なる成分の存在および量を同時に決定することである。順相アレイの1つの典型的なタイプでは、アレイは、特定の抗原に対して特異的な一揃い(panoply)の抗体からできており、アレイは、試料中のこれらの抗原の存在および量を測定するために使用される。
【0005】
逆相アレイでは、一揃いの試料が配列され、次いで、同定試薬、典型的には単一特異的試薬、例えば、特定の抗原に対して特異的な抗体で精査される。逆相アレイの主な使用は、多くの試料を1つの、または多くても数個の、成分の存在および量について特徴付けすることである。逆相アレイの例証的な使用は、一連の単一特異的試薬、例えば、特定の抗原に対して特異的な抗体を、異なる細胞タイプの集合に対して選別することである。
【0006】
JoosおよびBachmann(2009年);「Protein microarrays:potentials and limitations」、Frontiers in Biosciences 14:4376−4385頁;Chanら(2004年);「Protein microarrays for multiplex analysis of signal transduction pathways」、Nature Medicine 10(12):1390−1396頁;Hartmannら(2009年);「Protein microarrays for diagnostic assays」、Anal.Bioanal.Chem.393:1407−1416頁;およびCaronら(2007年);「Cancer Immunomics Using Autoantibody Signature for Biomarker Discovery」、Molecular & Cellular Proteomocis 6.7:1115−1122頁のものを含めて、現行のタンパク質アレイ技術のタイプ、使用法、利点および不利点について記載する、タンパク質アレイについてのいくつかの総説が発表されている。さらなる参考文献は、以下のVIIで提供される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】JoosおよびBachmann(2009年);「Protein microarrays:potentials and limitations」、Frontiers in Biosciences 14:4376−4385頁
【非特許文献2】Chanら(2004年);「Protein microarrays for multiplex analysis of signal transduction pathways」、Nature Medicine 10(12):1390−1396頁
【非特許文献3】Hartmannら(2009年);「Protein microarrays for diagnostic assays」、Anal.Bioanal.Chem.393:1407−1416頁
【非特許文献4】Caronら(2007年);「Cancer Immunomics Using Autoantibody Signature for Biomarker Discovery」、Molecular & Cellular Proteomocis 6.7:1115−1122頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以前のタンパク質アレイは典型的には、比較的少数の精製タンパク質から構成された、または増殖およびトランスフェクトされたDNAの発現後に、インサイチュで溶解された宿主細胞中への多数のあらかじめアレイ化されたDNAの逆トランスフェクションによって作製された。前者の分類のアレイは、実際に得ることができるタンパク質の数によって、すなわち、アレイ中の各タンパク質について克服されなければならないタンパク質精製の困難さによって制限された。後者の分類のアレイは、トランスフェクションおよび発現の結果における不均質性によって、ならびにインサイチュで表面において溶解されるコンフルエント細胞から得ることができるタンパク質密度の制限よって制限された。これらの理由および様々な他の理由のために、現在利用可能なタンパク質アレイは、様々な制限および不利点を問題としており、改善されたタンパク質アレイおよび現在の技術では利用できない機能性を与えるアレイが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
II
以下の番号を付けたパラグラフは、例証として提供され、本明細書で開示される本発明の多くの態様および実施形態のうちのいくつかを説明する。他の多くが本明細書で説明され、それらが属する技術分野の当業者に容易に明らかとなる。番号を付けたバラグラフにおける「上記または下記のいずれか」という表現の使用は、番号を付けたパラグラフ中に示される様々な要素が、任意の方法で組み合わせられ得ることを示し、任意のこのような組合せに対する明示的な支持を与えるために使用される。本出願人は、本出願またはいずれかの承継人出願もしくは関連出願における補正によって全体的または部分的に、このような省略された組合せのいずれか1つまたは複数を明示的に提示および/または請求する権利を留保する。
【0010】
1.01 対応する複数のタンパク質を含む複数の細胞溶解物を、担体上の対応する複数の位置に適用する段階を含み、前記複数のタンパク質が、対応する複数の外因性DNAを介して前記対応する複数の細胞中で発現されている、タンパク質アレイを作製する方法。
【0011】
1.02 タンパク質P1からPnを含む溶解物L1からLnを、担体上の位置S1からSnに適用する段階を含み、
各溶解物Lxが、外因性DNA Dxを介してその中で発現されているタンパク質Pxを含む細胞Cxの溶解物であり、位置Sxに適用され、
ここで、
P1からPnは、すべて互いに異なり、
S1からSnは、すべて互いに異なり、
nは、1より大きい整数であり、
xは、1からnまでの整数である、
タンパク質アレイを作製する方法。
【0012】
実施形態では、本明細書で示されるように、xは、特に本明細書で他の場所に示されている場合、ゲノム中の遺伝子、遺伝子座またはタンパク質コード領域の部分である。実施形態では、本明細書で以下に示されるように、xは、生物の遺伝子、遺伝子座またはタンパク質コード遺伝子のセット番号である。
【0013】
1.03 タンパク質P1からPnを、担体上の位置S1からSnに適用する段階を含み、各タンパク質Pxが、外因性DNA Dxを介して細胞Cx中で発現されて、位置Sxに適用され、
ここで、
P1からPnは、すべて互いに異なり、
S1からSnは、すべて互いに異なり、
nは、1より大きい整数であり、
xは、1からnまでの整数である、
タンパク質アレイを作製する方法。
【0014】
1.04 対応する複数のタンパク質を含む複数の溶解物を、担体上の対応する複数の位置に適用し、それにより、前記複数のタンパク質のアレイを作る段階を含み、
前記溶解物が、対応する複数の細胞コロニーまたは培養物中で前記コロニーまたは培養物の細胞中の対応する複数の外因性DNAを介して複数のタンパク質を発現させ、前記複数の細胞コロニーまたは培養物のそれぞれを溶解し、それにより、前記対応する複数のタンパク質を含む対応する複数の溶解物を生成させる段階を含む方法によって生成される、タンパク質のアレイを作製する方法。
【0015】
1.05 2以上の複数のタンパク質を、対応する複数の細胞コロニーまたは培養物中で前記コロニーまたは培養物の細胞中の対応する複数の外因性DNAを介して発現させる段階;
前記複数の細胞コロニーまたは培養物のそれぞれを溶解し、それにより、前記対応する複数のタンパク質を含む対応する複数の溶解物を生成させる段階;
前記対応する複数のタンパク質を含む前記複数の溶解物を担体上の対応する複数の位置に適用する段階;
それにより、前記複数のタンパク質のアレイを作る段階
を含む、タンパク質のアレイを作製する方法。
【0016】
2.01 前記タンパク質が、前記細胞中で前記DNAを介して過剰発現される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0017】
2.02 前記タンパク質が、前記溶解物中に高濃度で存在する、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0018】
2.03 対照以外の前記タンパク質の50、60、75、80、85、90、95、99または100%の少なくともいずれかが、前記細胞中の全タンパク質の0.01、0.025、0.05、0.10、0.15、0.25、0.35、0.50、0.75、1.00、1.25、1.50、1.75、2.00、2.25、2.50、2.75、3.00、3.50、4.00、4.50、5.00、5.50、6.00、7.50、10.0、15.0または20パーセントの少なくともいずれかである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0019】
2.04 対照以外の前記タンパク質の50、60、75、80、85、90、95、99または100%の少なくともいずれかが、前記細胞中の前記タンパク質のいずれの外因性発現よりも実質的に多い量で前記外因性DNAを介して前記細胞中で発現される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0020】
2.05 対照以外の前記タンパク質の50、60、75、80、85、90、95、99または100%の少なくともいずれかが、前記細胞中の前記タンパク質のいずれかの外因性発現の1.5、2.0、2.5、3.0、4.0、5.0、7.5、10、15、20、25、30、40、50、75、100、125、150、200、250、300、400、500、750、1,000、1,500倍またはそれを超える少なくともいずれかの量で前記細胞中で前記DNAを介して発現される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0021】
2.06 対照以外の前記タンパク質の50、60、75、80、85、90、95、99または100%の少なくともいずれかが、前記溶解物中の全タンパク質の0.01、0.025、0.05、0.10、0.15、0.25、0.35、0.50、0.75、1.00、1.25、1.50、1.75、2.00、2.25、2.50、2.75、3.00、3.50、4.00、4.50、5.00、5.50、6.00、7.50、10.0、15.0または20パーセントの少なくともいずれかである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0022】
2.07 対照以外の前記溶解物の50、60、75、80、85、90、95、99または100%の少なくともいずれかで、各溶解物中の各タンパク質の濃度が、1、2、3、5、10、15、20、25、35、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800または900μg/mlの少なくともいずれか、または1、2、3、5、10、15、20、25、35、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800または900mg/mlの少なくともいずれかである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0023】
3.01 タンパク質が、生物のゲノムによりコードされているタンパク質の20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または98パーセントの少なくともいずれかを集合的に含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。実施形態では、生物は哺乳動物である。実施形態では、生物は、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、イヌまたは霊長類のいずれか1つである。
【0024】
3.02 タンパク質が、ヒトゲノムによりコードされているタンパク質の20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または98パーセントの少なくともいずれかを集合的に含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0025】
3.03 アレイが、生物の1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、21,000、22,000、23,000、24,000、25,000、26,000、27,000、28,000、29,000または30,000の異なる遺伝子座の少なくともいずれかのタンパク質を含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0026】
3.04 アレイが、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、21,000、22,000、23,000、24,000、25,000、26,000、27,000、28,000、29,000または30,000の異なるタンパク質の少なくともいずれかを含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0027】
3.05 アレイが、前記タンパク質が適用された1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、21,000、22,000、23,000、24,000、25,000、26,000、27,000、28,000、29,000または30,000の位置の少なくともいずれかを含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0028】
3.06 1cm2当たり10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000または20,000の位置の少なくともいずれかが存在する、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0029】
3.07 1cm2当たり適用された10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000または20,000の溶解物の少なくともいずれかが存在する、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0030】
3.08 1cm2当たり適用された10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000または20,000の前記タンパク質の少なくともいずれかが存在する、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0031】
3.09 1cm2当たり10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000または20,000の位置の少なくともいずれかが存在し、前記位置の50、60、70、80、90または95%の少なくともいずれかに前記タンパク質が適用されている、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0032】
3.10 スポットが、直径10−50、25−75、50−100、75−150、100−200、150−250、200−300、250−350、300−400、400−500、500−750、400−800、750−1,000μmのいずれかである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0033】
3.11 フィーチャの面積が、10−50、25−75、50−100、75−150、100−200、150−250、200−300、250−350、300−400、400−500、500−750、400−800、750−1,250、1,000−2,000、1,500−3,000、2,500−5,000μm2のいずれかである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0034】
3.12 フィーチャ(スポット)の中心と中心の間隔が、5−15、10−20、15−25、20−40、25−50、25−75、50−100、75−150、100−150、125−175、150−225、200−250、225−275、250−350、300−400または400−500μmのいずれかである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0035】
4.01 各溶解物中のタンパク質の濃度が、1、2、3、5、10、15、20、25、35、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800または900マイクログラム/milの少なくともいずれか、または1、2、3、5、10、15、20、25、35、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800または900mg/mlの少なくともいずれかである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0036】
4.02 対照以外の前記溶解物の50、60、75、80、85、90、95、99または100%の少なくともいずれかについて、溶解物タンパク質の量が、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1,000、1,500、2,000または2,500個の少なくともいずれかの細胞の溶解物における全タンパク質の量である、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0037】
4.03 対照以外の前記タンパク質の50、60、75、80、85、90、95、99または100%の少なくともいずれかについて、外因性DNAを介して発現された前記タンパク質の量が、タンパク質が発現された100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1,000、1,500、2,000または2,500個の細胞中で前記外因性DNAを介して発現された前記タンパク質の量の少なくともいずれかである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0038】
5.01 前記細胞が、真核細胞である、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0039】
5.02 前記細胞が、原核細胞である、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0040】
5.03 細胞が、HEK293、COS、CV1、BHK、CHO、HeLa、LTKまたはNIH 3T3細胞のいずれか1種または複数である、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0041】
5.04 細胞が、HEK293T細胞である、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0042】
6.01 1種または複数の前記外因性DNAがそれぞれ、前記タンパク質の1つをコードしている、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0043】
6.02 1種または複数の前記外因性DNAがそれぞれ、前記タンパク質の1つをコードし、それぞれこのような外因性DNAにおけるそれぞれこのようなタンパク質が、cDNA、ゲノムDNA、または合成DNAによってコードされている、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0044】
6.03 1種または複数の前記外因性DNAが、前記タンパク質の1つをコードしているDNAに作動可能に結合された、前記細胞における転写に有効なシス作用エレメントを含む発現コンストラクトである、上記または下記のいずれかに記載の方法。実施形態では、シス作用エレメントはプロモーターを含む。
【0045】
6.04 1種または複数の前記外因性DNAが、前記タンパク質の1つをコードしているDNAに作動可能に連結された、前記細胞における転写に有効なプロモーター(および、場合によって、他のシス作用遺伝エレメント)を含む発現コンストラクトであり、前記1種または複数の外因性DNAのそれぞれにおいて前記タンパク質をコードしている前記DNAが、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0046】
6.05 前記プロモーターが、CMV、SV40またはMMTVプロモーターのいずれか1種または複数である、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0047】
6.06 1種または複数の前記外因性DNAが、付着、固定化、捕捉、精製、検出および/または定量化のいずれか1つまたは複数のために有効なタグ配列に正しい読取り枠で融合した前記アレイのためのタンパク質のアミノ酸配列を実質的に含むキメラタンパク質をコードしている、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0048】
6.07 前記タグが、GST、HA、V5、HIS、DDK(またはFLAG)またはmycタグのいずれか1種または複数である、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0049】
6.08 前記タグが、myc/FLAGタグである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0050】
6.09 前記発現コンストラクトが、pCMV6−エントリー発現ベクターである、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0051】
6.10 前記外因性DNAが、前記タンパク質アレイのためのタンパク質をコードしている内因性遺伝子の発現の非相同組み換え活性化のためのコンストラクトを含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0052】
6.11 前記外因性DNAが、前記アレイのためのタンパク質をコードしている内因性遺伝子の発現の相同組み換え活性化のためのコンストラクトを含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0053】
7.01 担体が、本明細書で他に記載または列挙されている任意の担体である、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0054】
7.02 担体が、ニトロセルロースを含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0055】
7.03 前記担体が、ニトロセルロースコーティングスライドガラスを含む、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0056】
8.01 タンパク質が、担体への適用前に溶解物から精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0057】
8.02 タンパク質が、担体への適用前に、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%純度の少なくともいずれかまで精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0058】
8.03 タンパク質が、担体への適用前に、担体に適用される全タンパク質の50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の少なくともいずれかであるように精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0059】
8.04 タンパク質が、担体への適用前にアフィニティークロマトグラフィーにより精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0060】
8.05 タンパク質が、アフィニティータグを含み、担体への適用前にアフィニティータグに特異的なアフィニティークロマトグラフィーにより精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0061】
8.06 タンパク質が、ペプチドアフィニティータグを含み、担体への適用前にペプチドアフィニティータグに特異的なアフィニティークロマトグラフィーにより精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0062】
8.07 タンパク質が、DDKアフィニティータグを含み、担体への適用前にDDKタグに特異的な抗体を用いてイムノアフィニティークロマトグラフィーにより精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0063】
9.01 タンパク質が、担体への適用後に溶解物から精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0064】
9.02 タンパク質が、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%またはそれを超える均質な純度の少なくともいずれかまで、担体への適用後に精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0065】
9.03 タンパク質が、担体上に固定化された全タンパク質の50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の少なくともいずれかであるように、担体への適用後に精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0066】
9.04 タンパク質が、外因性DNAを介して発現されるタンパク質に特異的な担体上のアフィニティー部分へ結合させ、未結合物質を除去することによって、担体への適用後に精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0067】
9.05 タンパク質が、アフィニティータグを含み、該タグに特異的な担体上のアフィニティー部分へ結合させ、未結合物質を除去することによって、担体への適用後に精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0068】
9.06 タンパク質が、ペプチドアフィニティータグを含み、該ペプチドタグに特異的なアフィティー部分に結合させ、未結合物質を除去することによって、担体への適用後に精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。
【0069】
9.07 タンパク質が、DDKアフィニティータグを含み、DDKアフィニティータグに特異的なアフィニティー部分に結合させ、未結合物質を除去することによって、担体への適用後に精製される、上記または下記のいずれかに記載の方法。実施形態では、DDK特異的アフィニティータグは、DDK−特異的抗体である。
【0070】
10.01 上記方法のいずれかにより作製された、上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【0071】
10.02 1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、21,000、22,000、23,000、24,000、25,000、26,000、27,000、28,000、29,000または30,000の異なるタンパク質の少なくともいずれかを含む、上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【0072】
10.03 生物のゲノムの1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、21,000、22,000、23,000、24,000、25,000、26,000、27,000、28,000、29,000または30,000の異なる遺伝子座の少なくともいずれかを含む、上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【0073】
10.04 生物のゲノムによりコードされているタンパク質の20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または98パーセントの少なくともいずれかを含む、上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【0074】
10.05 1cm2当たり適用される10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000または20,000の溶解物の少なくともいずれかが存在する、上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【0075】
10.06 1cm2当たり前記外因性DNAを介して発現された10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000または20,000の前記タンパク質の少なくともいずれかが存在する、上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【0076】
10.07 前記タンパク質が適用される位置の25、50、60、75、80、85、90、95、99または100%の少なくともいずれかについて、前記外因性DNAを介して発現された前記タンパク質の量が、それぞれの前記タンパク質が発現された100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1,000、1,500、2,000または2,500個の細胞中で前記外因性DNAを介して発現された前記タンパク質の量の少なくともいずれかである、上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【0077】
10.08 アラインメントマーカーを含む、上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【0078】
11.01 抗体を上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイと接触させ、それへの抗体の結合を決定する段階を含む、1種または複数の抗体のタンパク質への抗体特異性および/または交差反応を決定する方法。実施形態では、タンパク質アレイは、上記または下記のいずれかに記載のゲノムによりコードされているタンパク質すべての実質的な部分を含む。
【0079】
11.02 抗体調製物を上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイと接触させ、それへの該調製物中の抗体の結合を決定する段階を含む、抗体調製物の1つもしくは複数の特異性および/または1つもしくは複数の交差反応性を決定する方法。実施形態では、抗体調製物は、全細胞抗血清である。実施形態では、タンパク質アレイは、上記または下記のいずれかに記載のゲノムによりコードされているタンパク質の実質的な部分を含む。
【0080】
11.03 抗体または抗体調製物の上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、このように決定したアレイへの結合から、それにより特異的に結合したタンパク質を同定する段階を含む、抗体または抗体調製物の結合特異性を決定する方法。実施形態では、タンパク質アレイは、上記または下記のいずれかに記載のゲノムによりコードされているタンパク質の実質的な部分を含む。
【0081】
11.04 1または複数の健常個体および疾患に罹っている1または複数の疾患個体由来の試料の上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、健常および疾患個体由来の試料における結合の差から該疾患のタンパク質バイオマーカーを決定する段階を含む、疾患のタンパク質バイオマーカーを決定する方法。実施形態では、タンパク質アレイは、上記または下記のいずれかに記載のゲノムによりコードされているタンパク質の実質的な部分を含む。
【0082】
11.05 1または複数の健常対象および自己免疫疾患に罹っている1または複数の対象由来の抗体含有試料の上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、健常対象および自己免疫疾患に罹っている対象由来の試料における抗体の結合の差から該自己免疫疾患のタンパク質バイオマーカーを決定する段階を含む、自己免疫疾患のバイオマーカーを決定する方法。実施形態では、タンパク質アレイは、上記または下記のいずれかに記載のゲノムによりコードされているタンパク質の実質的な部分を含む。
【0083】
11.06 1または複数の健常対象および健常個体に存在しない抗体の存在を特徴とする疾患に罹っている1または複数の対象由来の試料の上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、健常対象および該疾患に罹っている対象由来の試料における抗体の結合の差から該疾患のタンパク質バイオマーカーを決定する段階を含む、健常個体に存在しない抗体の存在を特徴とする疾患のバイオマーカーを決定する方法。実施形態では、タンパク質アレイは、上記または下記のいずれかに記載のゲノムによりコードされているタンパク質の実質的な部分を含む。
【0084】
11.07 疾患に罹っている可能性がある対象由来の抗体含有試料の上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、該アレイへの該試料中の抗体の結合から該疾患の非存在または存在を決定する段階を含む、健常個体に存在しない抗体の存在を特徴とする疾患を診断する方法。実施形態では、タンパク質アレイは、上記または下記のいずれかに記載のゲノムによりコードされているタンパク質の実質的な部分を含む。
【0085】
11.08 シグナル伝達経路タンパク質のタンパク質を含む試料の上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、それにより、前記結合が、前記タンパク質の非存在、存在および/または量を示す、シグナル伝達経路をモニターする方法。実施形態では、試料は、全細胞溶解物である。実施例では、試料は、外因性DNAを介するタンパク質発現が、前記シグナル伝達経路のタンパク質を変更し得る細胞を含む。実施形態では、前記タンパク質の豊富さ、翻訳後修飾、または安定性のいずれか1つまたは複数における変化がモニターされる。実施形態では、タンパク質の結合は、1種または複数のタンパク質特異的抗体を用いて検出される。実施形態では、タンパク質アレイへの結合は、外因性DNAを介して発現されたタンパク質と1つまたは複数のシグナル伝達経路の内因性タンパク質との間の機能的関係を解読するために用いられる。実施形態では、いくつかの決定は連続して行われ、もう1つのシグナル伝達経路におけるタンパク質の状態の変化がモニターされる。
【0086】
11.09 小分子を含む試料の上記または下記のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定する段階を含む、前記小分子とタンパク質の間の相互作用を決定する方法。実施形態では、小分子は、小有機分子、脂肪、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂質、糖、グリカン、核酸、ポリヌクレオチド、アミノ酸、ペプチドもしくはポリペプチド、または任意の他の小分子のいずれか1つまたは複数である。実施形態では、小分子は、検出可能な標識で検出可能に標識される。実施形態では、小分子の結合は、アレイに結合した小分子に結合する二次作用物質を用いて検出される。
【0087】
III
語、用語および句は一般に、本明細書で別に定義され得る場合を除いて、それらが属する当業者に対するそれらの通常の意味に従って本明細書で使用される。明確にするために、特定の用語および句の例示的説明が以下に示される。これらの例示的説明は、本明細書で記載される本発明を理解する助けとしてのみ示されるものであって、それらは、本発明を限定するものではなく、本発明を過度に限定すると決して理解されるべきでない。
【0088】
溶解物L1からLnは、1からn(ここで、nは少なくとも2である。)まで連続的に番号を付けた、複数のn個の溶解物を示す。溶解物の一部は、同じであってもよく、すべて異なっていてもよい。
【0089】
C1からCnの細胞(一般に、細胞の個体群)は、1からn(ここで、nは少なくとも2である。)まで連続的に番号を付けた、複数のn個の細胞(一般に、nの細胞個体群)を示す。細胞の一部は同じであってもよく、すべて異なっていてもよい。
【0090】
タンパク質P1からPnは、1からn(ここで、nは少なくとも2である。)まで連続的に番号を付けた、複数のnのタンパク質を示す。タンパク質の一部は、同じであってもよく、すべて異なっていてもよい。
【0091】
位置S1からSnは、1からn(ここで、nは少なくとも2である。)まで連続的に番号を付けた、複数のn個の位置(一般に、アレイにおける)を示す。タンパク質の一部は、同じであってもよく、それらはすべて異なっていてもよい。タンパク質の一部またはすべてのアイデンティティは知られていても、知られていなくてもよい。
【0092】
DNA D1からDnは、1からn(ここで、nは少なくとも2である。)まで連続的に番号を付けた、複数のn個のDNAを示す。DNAの一部は、同じであってもよく、すべて異なっていてもよい。DNAの一部またはすべてのアイデンティティは知られていても、知られていなくてもよい。
【0093】
これらの指定とともに用いられる「それぞれ」(および「対応する」)という用語は、それらの間の対応を意味する。例えば、位置S1からSnでDNA D1からDnを介してタンパク質P1からPnを発現する細胞C1からCnの溶解物L1からLnはそれぞれ、位置S1でDNA D1を介してタンパク質P1を発現する細胞C1の溶解物L1、位置S2でDNA D2を介してタンパク質P2を発現する細胞C2の溶解物L2など、位置SnでDNA Dnを介してタンパク質Pnを発現する細胞Cnの溶解物Lnまでを意味する。
【0094】
本明細書で用いられる抗体には、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体ならびにそれらの誘導体が含まれ、限定されるものではないが、以下:例えば、Winterら(1991年)Nature349:293−299頁および米国特許第4,816,567号に記載されているハイブリッド(キメラ)抗体分子のフラグメントを含むF(ab)2およびF(ab)フラグメント;例えば、Inbarら(1972年)Proc Natl Acad Sci USA 69:2659−2662頁およびEhrlichら(1980年)Biochem 19:4901−4096頁に記載されているFv分子(非共有ヘテロ二量体);例えば、Hustonら(1988年)Proc Natl Acad Sci USA 85:5879−5883頁に記載されている単鎖Fv分子(sFv);二量体および三量体の抗体フラグメントコンストラクト;例えば、Packら(1992年)Biochem 31:1579−1584頁およびCumberら(1992年)J.Immunology 149B:120−126頁に記載されているミニボディ(minibody);例えば、Riechmannら(1988年)Nature 332:323−327頁;Verhoeyanら(1988年)Science 239:1534−1536頁;および1994年9月21日に発行された英国特許公開第GB2,276,169号に記載されているヒト化抗体分子;ならびに、このような分子から得られる任意の機能性フラグメント、例えば、抗原結合特性を保持するフラグメントが挙げられる。
【0095】
抗原は、典型的には抗体T細胞または他の抗原結合抗体、T細胞受容体または他の抗原結合免疫系分子に結合することによって体内で免疫応答を誘発する任意の作用物質を示すために、本明細書で広く用いられる。抗原は典型的には、1つまたは複数のエピトープを有する。
【0096】
本明細書で用いられるアレイは一般に、別々の位置の規則的な配列を指す。タンパク質アレイは典型的には、別々の位置におけるタンパク質の規則的な配列である。しばしば、タンパク質アレイは、1つまたは複数の位置に配置されたタンパク質を有する表面上の一組の別々の位置を含む。典型的には、位置、特に、その中に配置されたタンパク質を有するものは、アレイ中の既知の箇所にあり、位置は典型的には、空間的アドレス、例えば、二次元デカルト座標系におけるx、y座標に類似の、2次元の単位名称を有する。明らかに、アレイは、任意の所望の幾何学で作製することができ、他のアドレスを指定する体系を用いて、アレイ中の位置および/またはタンパク質の固有の箇所を示すことができる。実施形態では、アレイ中のタンパク質の一部またはすべては、既知のタンパク質である。
【0097】
DNAは、天然起源のDNA、例えば、標識を組み入れている、異常塩基を有するDNA、または化学的に修飾されたDNAの修飾形態を含む、ポリデオキシリボヌクレオチドを意味するために本明細書で用いられる。本明細書で多くの実施例および例証がDNAという用語を用いて書かれるが、他のポリヌクレオチド、例えば、RNAもほぼ同じように用いることができる。さらに、RNAが宿主細胞に導入される場合、典型的にはそれはDNAに変換され、したがって、外因性DNAを介して表されるその表現には、RNAの導入から生じる表現が含まれる。
【0098】
DDKは、FLAGとして商業的に知られているペプチドタグを示すために本明細書で用いられる。DDKおよびFLAGという用語は、本明細書で同義的に用いられる。
【0099】
エピトープは、抗体によって認識される(結合される)抗原の個別の特異的な特徴(構造的特徴)である。抗原は、1つまたは複数のエピトープを含む。異なる抗体は、所与の抗原上の同じまたは異なるエピトープに結合し得る。タンパク質抗原上のエピトープは、アミノ酸配列の連続的または非連続的部分によって規定され得る。
【0100】
組換えタンパク質は、分子的なクローニング技術を用いて生成されるタンパク質、例えば、外因性ポリヌクレオチド(外因性DNAなど)を介して発現されるタンパク質を意味するために本明細書で用いられる。本明細書で別により詳細に検討されるように、外因性ポリヌクレオチドを介するタンパク質の発現は、そのタンパク質をコードしているポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入するまたはプロモーター活性化または他の方法などによって外因性遺伝子の発現増加を生じさせるポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入することによって生じさせ得る。
【0101】
本明細書で用いられる特異的結合パートナーは、標的に特異的に結合する作用物質を示す。特異的結合は、その作用物質が、抗原、または抗原内のエピトープなどの標的を、他の非標的物質と区別し得ることを示す。抗原に特異的な抗体およびその抗原は、特異的結合パートナーの一例である。特異的結合パートナーは、バックグラウンドノイズ、典型的には非特異的結合の作用を超えて標的を検出するために使用され得るという意味で特異的である。例えば、タンパク質の特異的結合パートナーは、そのタンパク質の配列またはトポロジカルな構造などの特異的特徴を検出し得る。特異的特徴は、例えば、アミノ酸の規定された順序または規定された化学的部分であり得る。例えば、タンパク質に特異的に結合する抗体は、タンパク質の短いアミノ酸配列に特異的であってもよく、特異的アミノ酸修飾、例えば、チロシンのリン酸化(ホスホチロシン)に特異的であってもよく、または、特に、タンパク質における特定の炭水化物立体配置(グリカン構造)に特異的であってもよい。
【0102】
担体は、タンパク質が適用されてアレイを形成することができる表面を提供する構造を意味するために本明細書で広く用いられる。典型的には、担体は固体であり、アレイを作製し、およびそれを使用するために必要とされる取り扱いに対して構造的に安定である。担体は、1つまたは複数の構成要素、例えば、堅さのためにスライドガラス、およびアレイ中のタンパク質を固定化するためのニトロセルロース「パッド」を有し得る。
【0103】
IV
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】モジュラーアレイ配置を示す概略図であり、サブアレイの拡大図は、二通りの試料および対照の配置を示す。
【図2A】Schottニトロセルロースコーティングガラス製担体スライド上に二通りでスポットした(全部で7500スポット)3720の溶解物のタンパク質アレイを示す図である。全タンパク質を視覚化するためにコロイド状金で染色した後のアレイを示す。
【図2B】Schottニトロセルロースコーティングガラス製担体スライド上に二通りでスポットした(全部で7500スポット)3720の溶解物のタンパク質アレイを示す図である。各溶解物中で外因性DNAを介して発現されたタンパク質を視覚化するために抗FLAG抗体を免疫染色した後のアレイを示す。
【図3】外因性DNAを介して細胞中でタンパク質を発現するpCMV6−エントリー発現ベクターの概略図である。この図は、真核細胞中の強い転写のためのCMVプロモーター、真核細胞中の複製のSV40起点、DDK−mycタグコード領域、クローニングのための複数の制限部位を有する領域、それぞれ、原核生物および真核生物における抗生物質耐性を与えるカナマイシン/ネオマイシン耐性遺伝子、真核生物における転写ポリアデニル化のためのポリアデニル化シグナル、および原核生物におけるDNA複製のための複製のfi細菌起点を含む、このベクターの主要な機能性を示す。
【図4A】Schottニトロセルロースコーティングガラス製担体スライド上に二通りにスポットした3720の溶解物のタンパク質アレイへの特徴付け抗p53抗体の結合の特異性を示す図である。各溶解物中で外因性DNAを介して発現されるタンパク質を視覚化するために抗FLAG抗体で免疫染色した後のアレイを示す。
【図4B】Schottニトロセルロースコーティングガラス製担体スライド上に二通りにスポットした3720の溶解物のタンパク質アレイへの特徴付け抗p53抗体の結合の特異性を示す図である。この図は、抗p53抗体で免疫染色した後のアレイを示す。矢印で強調された陽性溶解物が1つある。交差反応は検出されなかった。
【図4C】Schottニトロセルロースコーティングガラス製担体スライド上に二通りにスポットした3720の溶解物のタンパク質アレイへの特徴付け抗p53抗体の結合の特異性を示す図である。p53抗体に結合するスポットを有するアレイの断面の拡大図を示す。(C)中の上側パネルは、対照タンパク質の連続希釈液を含めて、拡大領域における抗FLAG免疫染色を示す。(C)中の下側パネルは、p53抗体(矢印で強調)に結合する二通りのスポットの反応を示す。
【図5A】全細胞免疫化により生成したモノクローナル抗体を解読するためのタンパク質アレイの使用を例証する図である。モノクローナル抗体によるアレイの免疫染色を示す。陽性シグナルは、破線の四角および矢印で示される。差し込み図は、高倍率での陽性領域を示し、二通りのE−カドヘリンI陽性シグナルは、矢印で強調されている。
【図5B】全細胞免疫化により生成したモノクローナル抗体を解読するためのタンパク質アレイの使用を例証する図である。E−カドヘリンIに対するモノクローナル抗体の特異性を確認するウェスタンブロット分析の結果を示す。
【図6】タンパク質溶解物アレイを用いる乳癌バイオマーカーの同定を例証する図である。 左側パネルは、乳癌患者からの血清によるアレイの免疫染色の結果を示す。陽性反応領域は、矢印で強調されて、破線の四角内で強調されており、拡大領域A、BおよびCで拡大して示される。 右側パネルは、正常対照血清で免疫染色する対照を示す。拡大領域A、BおよびCは、左側パネルで示される拡大領域A、BおよびCに対応する。対照血清は、乳癌患者由来の血清により免疫染色される位置を免疫染色しないが、対照血清中の自己抗体の反応は、アレイの様々な位置でCにおいて見ることができる。
【図7】抗DDK抗体を用いるハイスループットイムノアフィニティ精製により10の無作為に選択された全細胞溶解物から精製された10のmyc−FLAG(DDK)タグ付きタンパク質のSDS−PAGEによる均質性を示す図である。
【図8】その中でFLAG−タグ付きタンパク質が抗FLAGコーティング担体上に固定化され、他のタンパク質は洗い流されて、精製タンパク質のアレイを作る、担体上精製の工程を用いてアレイを作製する実施形態の概略図である。
【図9A】抗FLAG抗体コーティングニトロセルロース担体上の溶解物由来のFLAGタグ付きタンパク質の担体上イムノアフィニティー精製を示す図である。抗−FLAG抗体コーティング担体上で作製されたアレイの小領域を示す。(A)および(B)の両方で、上側挿入図は、アレイのこの部分でスポットされたmycを視覚化する抗myc抗体による免疫染色を示し;下側挿入図は、FLAGタグを含まないタンパク質の(非特異的)結合を示す抗ベータアクチン抗体による免疫染色を示す。
【図9B】抗FLAG抗体コーティングニトロセルロース担体上の溶解物由来のFLAGタグ付きタンパク質の担体上イムノアフィニティー精製を示す図である。抗FLAG抗体コーティングなしで作製されたアレイに一致する小領域を示す。(A)および(B)の両方で、上側挿入図は、アレイのこの部分でスポットされたmycを視覚化する抗myc抗体による免疫染色を示し;下側挿入図は、FLAGタグを含まないタンパク質の(非特異的)結合を示す抗ベータアクチン抗体による免疫染色を示す。
【0105】
表1は、本明細書で記載される本発明の様々な実施形態によってアレイを作製する一般的な方法を示す概略図である。
【0106】
【表1】
【0107】
表2は、溶解物から精製したタンパク質を用いてアレイを作製する実施形態の概略図である。実施形態では、タンパク質は、DDKエピトープでタグが付けられて、抗DDK抗体を用いるイムノアフィニティーにより精製される。
【0108】
【表2】
【0109】
表3は、担体上のタンパク質のインサイチュ精製を用いてアレイを作製する実施形態の概略図である。
【0110】
【表3】
【発明を実施するための形態】
【0111】
V
本明細書で記載される本発明の実施形態により、特に、タンパク質アレイ、タンパク質アレイを作製する方法、タンパク質アレイを使用する方法およびタンパク質アレイを組み込む装置が提供される。特定の実施形態では、特に、タンパク質−タンパク質相互作用を決定する、抗体特異性を検証し、および交差反応性種を同定する、抗体特異性を解読し、およびバイオマーカーを同定する、疾患を診断する、ならびに患者個体群を層別化する方法が提供される。
【0112】
本明細書で実施形態においてさらに例証されるように、アレイ中のタンパク質は、細胞溶解物中に含まれる。実施形態では、溶解物は、タンパク質が外因性DNAを介して発現される細胞から作られる。実施形態では、溶解物は、外因性DNAを介してタンパク質を過剰発現する細胞から作られる。実施形態では、異なる過剰発現タンパク質を含む溶解物は、タンパク質の同定がアレイ中のそれらの位置により知られるように、アレイ中の特定の位置に適用される。様々な実施形態では、過剰発現されたタンパク質の構造および/または機能は、知られていても、いなくてもよい。実施形態では、外因性DNAは、外因性遺伝子の過剰発現を活性化する。実施形態では、外因性DNAは、タンパク質をコードしている。実施形態では、外因性DNAは、cDNAを含み、cDNAがコードしているタンパク質の過剰産生を引き起こす。実施形態では、細胞は哺乳動物細胞である。実施形態では、細胞はヒト細胞である。実施形態では、タンパク質は哺乳動物タンパク質である。実施形態では、タンパク質はヒトタンパク質である。実施形態では、アレイは、規定数の遺伝子を含む。実施形態では、アレイは、ヒトゲノムなどのゲノムによりコードされているタンパク質の規定部分を含む。
【0113】
実施形態では、タンパク質は、固定化前に溶解物から精製される。実施形態では、タンパク質は、アフィニティータグを含む融合タンパク質であり、イムノアフィニティー精製により精製され、次いで、アレイにおいて固定化される。実施形態では、タンパク質は、FLAGアフィニティータグを含み、抗FLAG抗体を用いてイムノアフィニティーにより精製される。
【0114】
実施形態では、タンパク質は、アフィニティー試薬コーティング担体への結合による適用後にインサイチュで溶解物から精製される。実施形態では、タンパク質は、アフィニティー試薬に結合するアフィニティータグを含む融合タンパク質であり、該タンパク質は、アフィニティータグとアフィニティー試薬の間の相互作用によって、アフィニティー試薬でコーティングされた担体に特異的に結合しており、溶解物中の非結合タンパク質は該担体から除去される。実施形態では、アフィニティータグはFLAGタグであり、アフィニティー試薬は抗FLAG抗体である。
【0115】
実施形態では、タンパク質アレイは、タンパク質−タンパク質相互作用を決定するために使用される。実施形態では、アレイは、タンパク質が特異的に結合するおよび/またはそれが交差反応するタンパク質を同定する、決定するおよび/または定量化するために使用される。
【0116】
実施形態では、タンパク質アレイは、特に、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ならびに抗体誘導体を含む、抗体の特異性および/または交差反応性を決定するために使用される。実施形態では、アレイは、抗体を解読する、すなわち、抗体が結合するタンパク質を、例えば、特に、そのタンパク質が知られていない場合に、同定するために使用される。
【0117】
実施形態では、タンパク質アレイは、自己免疫血清中の抗体が結合するタンパク質を決定するために使用される。実施形態では、自己免疫疾患は、いずれか1種または複数のLupus、RAまたはMSである。
【0118】
実施形態では、タンパク質アレイは、健常および/または疾患の自己免疫マーカーを同定するために使用される。実施形態では、タンパク質アレイは、健常および/または疾患の自己免疫マーカーを決定するために使用される。実施形態では、自己免疫マーカーは、自己免疫疾患または癌に対するマーカーである。実施形態では、自己免疫疾患は、いずれか1種または複数のLupus、RAまたはMSである。
【0119】
実施形態では、タンパク質アレイは、非タンパク質物質のタンパク質への結合を決定するために使用される。実施形態では、タンパク質アレイは、非タンパク質物質のタンパク質結合パートナーを同定するために使用される。
【0120】
アレイ作製方法
実施形態では、アレイは、タンパク質の集団の各タンパク質について、該タンパク質を含む細胞溶解物を調製し、該溶解物を担体上の1つの位置に適用することによって形成され、ここで、各タンパク質についての溶解物は、異なる位置に適用され、該溶解物の適用は担体上に該タンパク質のアレイを形成し、該タンパク質は、該溶解物が作られる細胞中で外因性DNAを介して発現されている。図1は、本発明の実施形態によって細胞溶解物からアレイを作製する一般的なスキームを示す。図1は、表1に示される実施形態の一般的方法によって作製された2次元タンパク質アレイを示す。表2は、タンパク質が、アレイを形成する前に溶解物から精製される実施形態によってアレイを作製する方法を示す。表3は、タンパク質が、インサイチュアフィニティー法によってアレイを形成した後に精製される実施形態によってアレイを作製する方法を示す。
【0121】
本明細書で記載される本発明の態様では、実施形態は、生物のゲノム中の遺伝子により発現されるタンパク質の実質的な部分を包含するアレイに関する。特定の実施形態はさらに、タンパク質が、担体への適用前に宿主細胞中の外因性DNAを介して過剰発現されるアレイに関する。特定のさらなる実施形態は、アレイ中のタンパク質の濃度が、それが発現される宿主細胞におけるよりも高いアレイに関し、実施形態では、アレイ中のタンパク質の濃度が、それが外因性DNAを介して発現される宿主細胞中にあるよりも高いアレイに関する。
【0122】
本明細書で例証されるように、実施形態においてアレイを作製する方法は、外因性DNA(または他のポリヌクレオチド)を介して細胞中でタンパク質を発現させ、該細胞を溶解し、および該溶解物(またはそれから精製されたタンパク質)を担体に適用してアレイを形成する任意の適切な方法を用い得る。様々な例証的な実施形態によって、タンパク質を発現させ、溶解物を作製し、および溶解物(または精製タンパク質)を担体に適用してアレイを形成する方法は、以下により詳細に説明され、実施例でさらに例証される。
【0123】
アレイのためのタンパク質
本明細書で記載される本発明の実施形態におけるアレイのためのタンパク質は、宿主細胞中の外因性ポリヌクレオチド、しばしばDNAを介して得られる。実施形態では、宿主細胞は真核細胞である。実施形態では、細胞は哺乳動物である。実施形態では、本明細書で別にさらに検討されるように、それらはヒト細胞である。ポリヌクレオチド、例えば、実施形態において宿主細胞中でタンパク質を発現するDNAは、ライブラリーのメンバーである。この点に関して、ライブラリーという用語は、ポリヌクレオチド、例えば、DNAの1つの集合または組を意味する。実施形態では、ライブラリーは、哺乳動物のゲノム、例えば、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、サル、ゴリラまたはヒトのゲノムなどのゲノムの固有の遺伝子座、遺伝子、タンパク質コード遺伝子または領域、オープンリーディングフレームなどの規定した数を含み得る。
【0124】
この点に関して、「遺伝子座」(「locus」または「gene locus」)は、染色体上の別個の位置を指す。遺伝子座は、一緒にスプライスされ得るすべての可能なエクソンを含む、ゲノム内の規定された染色体領域に対するヌクレオチド配列によって正確に地図化される。代替エクソンの利用および/または示差的スプライシングのために、2以上の転写が単一のゲノム遺伝子座から始まり得る。したがって、各固有の遺伝子座は、それぞれ同じ固有の遺伝子座から始まる異なる転写のためのポリヌクレオチドを含む複数の発現クローンで表され得る。本明細書で用いられるとおりの遺伝子座を含むタンパク質によって、タンパク質が、それらがそこでコードされている遺伝子座に対応することが意味される。
【0125】
ヒトゲノム中の遺伝子、タンパク質コード遺伝子、固有の遺伝子座などの全数は、進行中の研究の問題である。例えば、Nature 431、931−945頁(2004年10月21日)およびヒトゲノムの数が記載されているその刊行物中の他の論文を参照されたい。NCBIは、本明細書でReference Sequence Collection(「RefSeq」)と称されるヒトゲノム由来のヌクレオチド配列の総合的で、統合的な非冗長性セットを維持する。この集合は、細心の注意を払ってキュレートされ(curated)、継続して更新されており、例えば、Pruitt KD、Katz KS、Sicotte H、Maglott DR、Trends Genet. 2000年1月;16(1):44−47頁;Pruitt KD、Maglott DR、Nucleic Acids Res 2001年1月1日;29(1):137−140頁;The NCBIハンドブック[インターネット]、Bethesda(MD):National Library of Medicine(米国)、National Center for Biotechnology Information、2002年10月、第17章、The Reference Sequence(RefSeq)Project(http://ncbi.nlm.nih.gov/entrezを介して入手できる)に記載されている。タンパク質を発現するポリヌクレオチドの配列、並びに多数の遺伝子座および遺伝子は、RefSeqおよび他のデータベース、例えば、GenBank、SwissProt、GenSeq、EMBL、UniProt、ASD、IMGT、IPD、IPIで確認され得る。
【0126】
実施形態では、このようなライブラリーは、ゲノムにおける固有の遺伝子座の実質的な部分、例えば、ヒトゲノムなどのゲノムにおける固有の遺伝子座の5、10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、99%(および間の値)の少なくともいずれかを含む。実施形態では、このようなライブラリーは、ゲノムにおける遺伝子の実質的な部分、例えば、ヒトゲノムなどのゲノムにおける遺伝子の20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、99%以上(および間の値)の少なくともいずれかを含み得る。実施形態では、このようなライブラリーは、ゲノムにおける遺伝子の実質的な部分、例えば、ヒトゲノムなどのゲノムにおけるタンパク質コード遺伝子の5、10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、99%以上(および間の値)の少なくともいずれかを含み得る。
【0127】
実施形態では、このようなライブラリーは、ポリヌクレオチド、例えば、DNAを、固有の遺伝子座、遺伝子、タンパク質コード遺伝子、オープンリーディングフレームなどの特定の数について、例えば、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、21,000、22,000、24,000、26,000、28,000、30,000、35,000、40,000の遺伝子座、遺伝子、タンパク質コード遺伝子、オープンリーディングフレームなどの少なくともいずれかを含む。
【0128】
サブアレイ
実施形態では、タンパク質アレイは、特に、タンパク質が細胞周期の間にもしくは発生の間に発現される場合、一般的なタンパク質の特徴、例えば、機能的または構造的特徴、またはそれが生物において発現される場合、もしくはそれが細胞にある場合に、その所与の代謝経路への関与、その疾患への関係などに基づいてサブアレイに構成される。実施形態では、アレイおよび/またはサブアレイは、特定の疾患への関与によって関係づけられるタンパク質をグループ化し得る。実施形態では、アレイおよび/またはサブアレイは、膜内外(原形質膜);Gタンパク質共役受容体;Gタンパク質共役受容体、非嗅覚;Gタンパク質共役受容体、嗅覚;ホルモン受容体;ステロイドホルモン受容体;神経伝達受容体;酵素;キナーゼ;細胞質;オルガネラ、細胞核;核膜;小胞体;ミトコンドリア;リソソーム;細胞骨格;免疫系;組織型(例えば、胸部、前立腺、脳、心臓など);イオンチャネル;核ホルモン受容体、シトクロムp450;ホスホターゼ;プロテアーゼ;ホスホジエステラーゼ;タンパク質輸送;ATP結合カセット(ANC);サイトカイン;ホメオボックスおよびHOX遺伝子;インテグリン;トランスポータ;DexH/Dタンパク質ファミリー(RNA代謝)などのタンパク質をグループ化し得る。
【0129】
外因性DNAを介するタンパク質産生
実施形態では、タンパク質は、溶解物が外因性DNAを介して作製される細胞中で発現される、すなわち、細胞中の、およびそれによる溶解物中の、タンパク質の量が、実質的に外因性DNAによって生じる。実施形態では、タンパク質は、外因性DNAを介して細胞中で過剰発現され、それにより、タンパク質が、外因性DNAの存在および作用がない場合に細胞が産生する量を超えて細胞中で産生されることが意味される。実施形態では、タンパク質は、細胞中で内生的に生成されるが、これは、外因性DNAを介する細胞を介して顕著により高いレベルで生成される。実施形態では、タンパク質は、外因性DNAを介して、その非存在で産生される量を実質的に超える量で過剰産生される。実施形態では、タンパク質は、外因性DNAなしで細胞中で産生される量の1.2、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、750、1,000、2,000、3,000、5,000、7,500、10,000倍またはそれを超える少なくともいずれかの量で産生される。
【0130】
タンパク質を発現するための外因性DNA
外因性DNAによって、ゲノムにおけるその天然設定における天然起源のDNAでない;すなわち、その非改変外因性設定における非改変外因性遺伝子でないDNAが意味される。典型的には、外因性DNAは、周知の組換えDNA技術を介して細胞中に導入されるDNAである。しばしば、外因性DNAは、その天然形態において、突然変異タンパク質としておよび/または融合タンパク質としてのいずれかで、発現されるタンパク質をコードしている。この点に関して実施形態では、外因性DNAは、以下により詳細に検討されるように、発現ベクターまたはコンストラクトの形態で細胞中に導入される。外因性DNAはまた、発現されるタンパク質、例えば、非相同的組換えで作用するRAGEコンストラクトをコードしない活性化因子DNAであり得る。それは、発現されるタンパク質に対する遺伝子の一部のみを含む活性化因子DNA、例えば、相同的組換えによる遺伝子活性化のためのコンストラクトであり得る。それは、タンパク質をコードしているコンストラクト、例えば、発現コンストラクトであり得、この場合に、そのコード領域は、中断されていなくても、中断されていてもよい。また、それは、アレイのための1種または複数のタンパク質の所望の量の、細胞における産生を生じさせる他の外因性DNAであってもよい。
【0131】
発現ベクター
実施形態では、アレイのためのタンパク質は、そのタンパク質をコードし、そのタンパク質のコード配列が、所望の転写および最終的には、宿主細胞におけるタンパク質の産生をもたらす発現調節配列(シス作用調節配列とも呼ばれる)に作動可能に結合される発現ベクター(発現コンストラクトとも呼ばれる)である外因性DNAを介して細胞中で発現される。実施形態では、細胞中でエピソーム要素として存続するものなどの発現ベクターは、自発的に複製する。実施形態では、宿主細胞DNAとともに複製するものなどの発現ベクターは、宿主細胞DNA中に一体化する。任意の適切な発現調節配列は、細胞中でタンパク質を産生するために用いることができる。このような発現調節配列には、限定されるものではないが、プロモーター、エンハンサー、リボソーム相互作用部位(リボソーム結合部位など)、ポリアデニル化部位、転写スライス配列、転写終結配列、mRNAを安定化させる配列、ならびに宿主細胞における外因性DNAを介するタンパク質の産生に所望の効果を生じさせ、制御し、促進し、増加させおよび/または達成する他の配列が含まれる。このような調節配列は、宿主適合性、誘導発現、高mRNAコピー数、および他の望ましい効果について選択され得る。実施形態では、この点に関して有用なプロモーターには、細菌宿主のためのtrp、lac、tac、またはT7プロモーター;酵母のためのアルファ因子、アルコールオキシダーゼ、またはPGHプロモーター、ならびに真核細胞、例えば、哺乳動物細胞のためのMMTV;SV40;CMV、およびRSV「プロモーター」が含まれる。
【0132】
本発明の特定の実施形態で有用な具体的な発現ベクターである、pCMV6−エントリーが、図3で概略を示している。
【0133】
外因性DNAの細胞中への導入
任意の適切な系または方法を使用して、本発明の実施形態においてアレイを作製するためのタンパク質の発現のために細胞中にDNAまたは他のポリヌクレオチドを導入することができる。この点に関して使用され得るDNAおよび他のポリヌクレオチドを導入するための、以下にさらに列挙される参考文献に記載されたもののような多くの周知の方法がある。本明細書で記載される本発明の実施形態で使用され得る、それらにおよび別に記載される適切な方法の中で、リン酸カルシウム沈殿、電気せん孔、注入、DEAE−デキストラン−仲介トランスフェクション、リポソームとの融合、細胞中へのその吸収を増強させる作用物質との結合、およびウイルス形質導入がある。細胞へ入った後に、DNA(または他のポリヌクレオチド)が、染色体外でまたは宿主細胞の染色体(複数可)中に統合されて存続する細胞中へDNAおよび他のポリヌクレオチドを導入する方法が使用され得る。DNA、または他のポリヌクレオチドは、周知の方法に従って、一時的に、構造的におよび/または誘導的に発現され得る。細胞中に導入されるポリヌクレオチドがDNAでない場合、それは、DNAにコピーされ、そのDNAは最終的に、目的のタンパク質を発現するためのテンプレートである場合がしばしばである。
【0134】
細胞
上記のように、目的のタンパク質を発現する細胞は、外因性DNA(または他のポリヌクレオチド)を宿主細胞中に導入し、そのDNAを受け入れた細胞を選択し、細胞をクローン的に繁殖させ、それらが目的のタンパク質を発現することを確認し、次いで、保存する、および/または所望のアレイを作製するのに十分な溶解物を作るために細胞の十分な個体群を生成させるために細胞をさらに展開することによって作られ得る。例えば、以下にさらに列挙される分子クローニングについての参考文献に示された方法などの適切な方法が当技術分野で周知であり常法である。
【0135】
実施形態では、アレイを作製するためのタンパク質は、任意の適切な細胞型、例えば、限定されるものではないが、細菌、植物または動物細胞、酵母または哺乳動物細胞、ならびにヒト細胞、たとえば、COS、CV1、BHK、CHO、HeLa、LTK、NIH3T3、293、およびHEK293細胞(HEK293T細胞など)を含む、原核細胞または真核細胞で作製され得る。
【0136】
溶解物
溶解物は、任意の適切な方法を用いて細胞から作製され得る。実施形態では、この溶解物法は、タンパク質の所望の構造的および/または機能的特徴を保存する。多くのこのような方法は当業者に周知である。例えば、溶解物は、例えば、RIPA緩衝液、SDSを含有する溶解緩衝液、低張性溶解緩衝液などを含めて、洗浄剤を含まない緩衝液および洗浄剤を含む緩衝液を用いて作製され得る。細胞を溶解する方法は、当技術分野で周知であり、限定されるものではないが、それらには、洗浄剤溶解、超音波溶解、および圧力下溶解(フレンチプレス)などが含まれる。
【0137】
実施形態では、アレイ中溶解物の少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、95または100%における各溶解物中のタンパク質の濃度は、1、2、3、5、10、15、20、25、35、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800もしくは900マイクログラム/ml、1、2、3、5、10、15、20、25、35、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800もしくは900mg/ml、または1、2、3、4、もしくは5グラム/mlの少なくともいずれかである。
【0138】
実施形態では、アレイ中の溶解物の少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、95または100%において組換えDNAを介して発現されるタンパク質の濃度は、溶解物中全タンパク質の0.01、0.05、0.10、0.20、0.50、0.75、1.00、2.00、3.00、4.00、5.00、10.0、15.0、20.0パーセントの少なくともいずれかである。
【0139】
実施形態では、溶解物濃度は、0.2−4mg/mlであり、外因性DNAを介して発現されるタンパク質は、全タンパク質の0.1から2%である。
【0140】
組換えタンパク質がアレイへの適用前に精製される実施形態では、アレイに適用されるタンパク質の少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、95または100%について適用緩衝液中組換えタンパク質の濃度は、1、2、3、5、10、15、20、25、35、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800もしくは900マイクログラム/ml、1、2、3、5、10、15、20、25、35、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800もしくは900mg/ml、または1、2、3、4、もしくは5グラム/mlの少なくともいずれかである。
【0141】
担体
アレイは、1つのパーツまたはいくつかのパーツのいずれにおいても、任意の適切な担体上で作製され得る。実施形態では、固体担体は、不溶性マトリックスである任意の材料であることができ、硬質または半硬質の表面を有することができる。実施形態では、担体は、アレイを作製するために、タンパク質を適用する担体として機能するために適切な数ある膜材料の中でも、ニトロセルロース、ナイロンなどの膜である。このような膜担体は、独立して立っていることができても、またはそれら自体支持されていてもよい(例えば、スライドガラス上のニトロセルロース膜材料)。実施形態では、担体は、ガラス(スライドガラスなど)、シリコン(集積回路およびMEMデバイスにおける元素の表面を含む)、およびプラスチック(プラスチックプレート、例えば、マイクロタイタープレート(例えば、96−ウェル、384−ウェルのマイクロタイタープレート)を含む)、ならびに他の受容力をもつものであり得る。
【0142】
例示的な固体担体には、限定されるものではないが、ニトロセルロースなどの基板(例えば、スライドガラス上の膜におけるまたはマイクロタイターウェル形態における);ポリ塩化ビニル(例えば、ガラス上またはマイクロタイターウェル中のシート);ポリスチレンラテックス(例えば、ガラス上またはマイクロタイタープレート中のビーズ);ポリフッ化ビニリデン;ジアゾ化紙;ナイロン膜;活性化ビーズ、磁気応答性ビーズなどが含まれる。特定の担体には、プレート、ペレット、ディスク、キャピラリー、中空繊維、ニードル、ピン、固体繊維、セルロースビーズ、細孔ガラスビーズ、シリカゲル、場合によってジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンビーズ、グラフト化コポリビーズ、ポリアクリルアミドビーズ、ラテックスビーズ、場合によってN,N’−ビス−アクリロイルエチレンジアミンで架橋されたジメチルアクリルアミドビーズ、および疎水性ポリマーでコーティングされたガラス粒子が含まれる。
【0143】
実施形態では、タンパク質は、共有および/または非共有結合を介して担体上に結合される。実施形態では、タンパク質は、非修飾形態で結合され得る、またはそれらは修飾されて結合もしくは結合後の除去を促進し得る、または両方であり得る。実施形態では、タンパク質は修飾されて、ガラス、ポリリシン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリビニル、ポリジアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリペプチド、多糖類、ポリスルホン、ポリピロール、ポリイミダゾール、ポリチオフェン、ポリエーテル、エポキシド、シリカガラス、シリカゲル、シロキサン、ポリホスフェート、ヒドロゲル、アガロース、セルロース、および/または他の担体、コーティングもしくはフィルムへの結合を促進または可能にし得る。
【0144】
これらの中で、Schott Nexterionニトロセルローススライドなどのニトロセルロースでコーティングされたスライドガラスがある。
【0145】
溶解物の担体への適用
タンパク質、例えば、外因性遺伝子を介して発現される溶解物中のタンパク質は、様々な方法でアレイに適用され得る。実施形態では、それらは、マイクロアレイプリンターを用いて適用される。マイクロアレイプリンターは、試料をスポットするためのプリンティングチップアーキテクチャ(printing tip architecture)および機構によって3グループ:クイルピン(quill pin)(スプリットピン)、圧電(インクジェット)スポッター、およびソリッドピンに区別され得る(BarbulovicNadら、2006年)。Aushonによって開発されたソリッドピンアレイヤー(solid pin arrayer)は、細胞溶解物などの複雑な混合物をプリントするために特別に設計されており、粘性タンパク質溶液で十分機能して、スライド上に均一なスポットを生成する(Spurrierら、2008年)。このスポッターによる均一性は、コロイド金で染色されたアレイを示す図2Aで示されるように、非常に良好である。スポットにおける全タンパク質は、アレイにわたって均一であり、各サブアレイにおける濃度シリーズは、適切なスケーリングを示し、これは同様に、アレイにわたって均一である。
【0146】
アレイ幾何学およびスポット密度
アレイは、多種多様なフォーマット、寸法、モジュール性で作製することができ、多種多様な、特に、位置、タンパク質、フィーチャ、フィーチャサイズ、フィーチャ間隔、フィーチャ占有率、対照、アラインメントマーカーおよび基準によって作製することができる。
【0147】
実施形態では、アレイ中1cm2当たり10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000、または20,000の位置の少なくともいずれかが存在する。
【0148】
実施形態では、1cm2当たりアレイ上の異なる位置に適用される10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000、または20,000の溶解物の少なくともいずれかが存在する。
【0149】
実施形態では、1cm2当たりアレイ上の異なる位置に適用される、外因性DNAを介して発現される10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000、または20,000のタンパク質の少なくともいずれかが存在する。
【0150】
実施形態では、前記位置の50、60、70、80、90または95%の少なくともいずれかに適用される前記タンパク質を有するアレイ上1cm2当たり10、25、50、75、100、150、200、250、350、500、750、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,500、10,000、15,000、または20,000の位置の少なくともいずれかが存在する。
【0151】
実施形態では、溶解物および/またはタンパク質は、直径10−50、25−75、50−100、75−150、100−200、150−250、200−300、250−350、300−400、400−500、500−750、400−800、750−1,000μmのいずれかであるスポット(フィーチャ)に適用される。
【0152】
実施形態では、アレイ中溶解物またはタンパク質を含むフィーチャの面積は、10−50、25−75、50−100、75−150、100−200、150−250、200−300、250−350、300−400、400−500、500−750、400−800、750−1,250、1,000−2,000、1,500−3,000、2,500−5,000μm2のいずれかである。
【0153】
実施形態では、アレイ中のフィーチャ(スポット)の中心と中心の間隔が、5−15、10−20、15−25、20−40、25−50、25−75、50−100、75−150、100−150、125−175、150−225、200−250、225−275、250−350、300−400または400−500μmのいずれかである。
【0154】
実施形態では、タンパク質スポットサイズは、直径110から300μmである。実施形態では、アレイ上の中心と中心の間隔または位置および/もしくはタンパク質は、150−250μmである。
【0155】
結合を検出するアレイの使用
タンパク質アレイ中のタンパク質への作用物質の結合を検出および/または測定するために任意の適切な方法論が使用され得る。実施形態では、固相アッセイが使用される。実施形態では、サンドイッチアッセイが使用される。実施形態では、放射測定、熱量測定、化学発光および/または蛍光定量に基づくアッセイが使用される。抗体結合アッセイに関連する特定の実施形態では、例えば、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(酵素結合免疫吸着法)、EIA(酵素免疫アッセイ)、免疫蛍光アッセイ、および免疫沈澱アッセイなどを含む、任意の適切な免疫アッセイが使用され得る。実施形態では、直接標識法も使用され、ここで、作用物質は直接標識されて、アレイ中のタンパク質への結合は、直接結合した標識を検出および/または測定することによって決定される。実施形態では、間接標識法が使用され、ここで、作用物質の結合は、作用物質の部分ではなく、およびアレイ上のタンパク質の部分でない検出部分との相互作用によって検出される。例えば、間接ELISAでは、アレイ中のタンパク質への抗体の結合は、一次抗体に結合する標識二次抗体によって検出される。実施形態で有用である、熱量測定、放射測定および蛍光定量の検出可能マーカーには、限定されるものではないが、ローダミンまたはローダミン誘導体、ビオチン、アビジン、ストレパビジン、蛍光化合物(Cy3、Cy5、Alexa−555、Alexa−647、Dylight−549またはDylight−649aなど)、化学発光化合物(ジメチルアクリジニウムエステルなど)などが含まれる。
【0156】
実施形態では、酵素免疫アッセイが検出のために使用され得る。タンパク質アレイに容易に適用され得る様々なこのようなアッセイが周知であるとともに、当技術分野で日常的に用いられており、例えば、Voller,A.、「The Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA)」、1978年、Diagnostic Horizons 2、1−7、Microbiological Associates Quarterly Publication、Walkersville、Md.;Voller,A.ら、1978年、J.Clin.Pathol.31、507−520頁;Butler,J.E.、1981年、Meth.Enzymol.73、482−523頁;およびMaggio,E(編)、1980年、Enzyme Immunoassay、CRC Press、Boca Raton、Fla.に記載されたものなどがある。
【0157】
ELISAは、酵素反応を用いて、熱産生もしくは蛍光発生基質から着色(吸収性)もしくは蛍光生成物、または化学発光基質から発光を生じさせる。1種または複数の酵素が用いられ得る。単純な実施では、発色基質に作用する酵素が、抗体に結合している。この結合体は、例えば、マイクロタイターディッシュウェルに固定化されたタンパク質とインキュベートされる。インキュベーション後、アレイ中のタンパク質に結合しなかった結合体は、洗い流される。シグナル生成性、例えば、発色基質が添加され、一定期間ウェル中でインキュベートされて、マイクロタイタープレートウェル中のタンパク質に結合したいずれの酵素結合体も着色生成物を生成し得るようにする。反応の直線領域では、生じた色の量は、結合した結合体の量に比例する。タンパク質アレイについて、反応の生成物は一般に、表面上に沈殿するまたは表面に結合し、そのため、それは、抗体が結合している場所から拡散しない。酵素反応の使用は、各結合事象からのシグナルを大きく増幅する。ELISAは、さらなる増幅のために2種以上の酵素を用い得る。非常に多種多様なELISAが、当技術分野に知られており、本明細書で記載されているタンパク質アレイとともに使用するために容易に適合させ得る。
【0158】
多くの酵素が、実施形態で用いられ得るELISAで成功裏に使用されてきており、限定されるものではないが、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコール脱水素酵素、アルファ−グリセロホスフェート、脱水素酵素、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。
【0159】
これらの酵素(および他の酵素)のための任意の適切な基質および標識、例えば、限定されるものではないが、それぞれ、着色、蛍光および化学発光生成物を生じさせる、(上記のとおりの)熱産生、蛍光発生、生物発光および化学発光基質が、ELISAで使用され得る。放射性標識もまた使用することができる。実施形態で有用な蛍光標識には、限定されるものではないが、以下が含まれる:フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒドおよびフルオレサミン。実施形態で有用な化学発光標識には、限定されるものではないが、ルミノール、イソルミノール、セロマティックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルが含まれる。実施形態で有用な生物発光標識には、限定されるものではないが、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびイクオリンが含まれる。任意の適切な標識を用いることができ、上記は、ELISAおよびこの点に関して有効であり得る他の結合アッセイで開発され、用いられてきた、よく知られているより有効な標識のほんの一部である。
【0160】
結合パートナーを選別するタンパク質アレイの使用
アレイ中でポリペプチド(タンパク質)と反応するまたはそれに結合する任意の種類の試料または物質(本明細書で作用物質と呼ばれる)の相互作用が、特定され得る。実施形態では、アレイは、アレイ中のタンパク質への結合、例えば、試料(およびその成分)または作用物質(候補結合性化合物または抗体など)の結合を検出するために使用される。この点に関して具体的な使用が、以下に説明される。
【0161】
実施形態では、作用物質は、アレイ中のタンパク質の特異的結合パートナー、例えば、抗体、受容体リガンド、アプタマー、ポリペプチド、および他の結合性分子である。作用物質は、ポリペプチドを修飾する酵素または他の物質、例えば、キナーゼ(タンパク質をリン酸化する)であり得る。作用物質は、タンパク質(ポリペプチド)に結合し得る任意の物質または部分を含むことができ、限定されるものではないが、単独でまたは組み合せて、化合物;生物分子、例えば、ポリペプチド(アミノ酸)、脂質、核酸(ヌクレオチドおよびポリヌクレオチド)、および炭水化物;無機分子;有機分子などが挙げられる。
【0162】
抗体が結合するタンパク質を同定するタンパク質アレイの使用
実施形態では、本明細書で記載されるタンパク質アレイは、抗体が結合するタンパク質を選別および同定するために使用され得る。抗体は、それらの特異性のために、診断および治療目的に広範に用いられる。現行のアッセイ法における制限のために、これらの抗体が相互作用する抗原は、すべてが知られているわけではない。
【0163】
抗体が抗原に対して生成する場合、得られる抗体は一般に、その抗原に対して特異的であると特徴付けられる。タンパク質抗原の場合、タンパク質は典型的には、個々の抗体が特異的に結合する1つまたは複数のエピトームを含む。タンパク質中のエピトームは、タンパク質の連続的部分によってだけでなく、タンパク質の三次元配座の近傍に折り畳まれているタンパク質の非連続領域によっても形成され得る。抗体の、例えば、タンパク質への結合特異性は、同じまたは類似のエピトープを有する他のタンパク質への交差反応によって複雑にされ得る。交差反応性は、抗体が分析および治療の目的に使用される場合の両方で、重要な問題であり得る。
【0164】
エピトープを規定するアミノ酸配列が、異なるタンパク質中で生じるために、このような交差反応が起こることもある。これは、同じ一次転写の、示差的にスプライスされた変異体で、または単に、その配列が2つのタンパク質で独立して生じるために起こり得る。交差反応性タンパク質は、同じ細胞および組織型で、ならびにスプライス変化が組織特異的な仕方で生じる場合に生じるように、異なる型で生じ得る。
【0165】
一般に、診断アッセイなどの検出アッセイまたは治療における使用のために抗体の特異性を理解することは重要である。多くの目的にとって、その特異的標的との抗体の相互作用およびその交差反応性を特徴付けることは重要である。抗体とプロテオーム全部との相互作用を決定する方法はなかったので、抗体交差反応性の全体的な理解は、現行の技術を用いて容易に得ることができなかった。ほぼ同じことが、タンパク質パートナーに結合する他のタンパク質(および非タンパク質作用物質)の相互作用について当てはまる。
【0166】
本明細書で記載される実施形態では、タンパク質アレイは、一次抗原以外のタンパク質への交差反応について抗体を選別するために、特に、所与のゲノムでコードされているタンパク質の実質的な部分との相互作用の理解を得るために使用され得る。この点に関して実施形態では、本明細書で記載される全ゲノムアレイは特に有用である。ほぼ同じことが、タンパク質に結合する他の種類の作用物質に当てはまる。
【0167】
疾患のバイオマーカーを同定するタンパク質アレイの使用
特定の実施形態では、本明細書で記載されるタンパク質アレイは、自己免疫疾患および他の疾患、例えば、癌によって産生される抗体を検出するために使用され得る。自己免疫状態では、対象は、自己抗原に対して免疫応答を引き起こし、これらの抗体はしばしば、疾患の診断および予後のために有用なマーカーである。このような自己抗体に対するコグネイト抗原が知られていないこともあり、この場合、実施形態では、本明細書で記載されるタンパク質アレイは、このようなタンパク質結合自己抗体が結合するタンパク質を決定するために使用され得る。他の場合、コグネイト抗体は少なくとも部分的に知られており、本明細書で記載されるタンパク質アレイは、自己抗体を決定、特徴付けおよび/または測定するために使用され得る。
【0168】
既知または未知のタンパク質に結合する抗体について、実施形態では、本明細書で記載されるタンパク質アレイは、このような自己抗体の非存在、存在および/または量を決定するために使用され得る。例えば、この点に関して本発明の特定の実施形態によれば、自己免疫状態のリスクがあるまたはそれに実際に罹っている対象などの、対象由来の抗血清、血液成分、体液、および/または細胞(いくつかを挙げると)は、試料中の自己免疫抗体を特徴付けし、それにより、対象における健康、リスクまたは実際の疾患などを診断するために、本明細書で記載されるタンパク質アレイに適用されて、それらが結合する標的抗原(タンパク質)を決定し、および/またはアレイ中の特定のタンパク質に結合する試料中の自己抗体の非存在、存在および/または量を決定することができる。
【0169】
同様に、この点に関して本発明の特定の実施形態によれば、疾患の非存在下で一般に見られない抗体の産生を引き起こす疾患のリスクがあるまたは実際に罹っている対象などの、対象由来の抗血清、血液成分、体液、および/または細胞(いくつかを挙げると)は、試料中の抗体を特徴付けし、それにより、対象における健康、リスクまたは実際の疾患などを診断するために、本明細書で記載されるタンパク質アレイに適用されて、それらが結合する標的抗原(タンパク質)を決定し、および/またはアレイ中の特定のタンパク質に結合する試料中の自己抗体の非存在、存在および/または量を決定することができる。
【0170】
上記の説明および下記の実施例は、本明細書で開示される本発明の様々な実施形態を例証する。多種多様なさらなる態様、特徴および実施形態が、それに関係する当業者への本開示を読むことから明らかであり、それらはすべて、本明細書で開示される本発明の範囲内にあることが理解されるべきである。
【実施例】
【0171】
V
以下の実施例により、本明細書で記載される本発明の様々な態様によるタンパク質マイクロアレイの例証的な実施形態およびこれらのいくつかの具体的な利用が記載される。これらの実施例は、本明細書で記載される本発明を限定するものでは決してない。
【0172】
[実施例1]
ヒトタンパク質遺伝子の約50%の適用範囲を有するタンパク質マイクロアレイ
本発明の実施形態により、ゲノム中タンパク質コード遺伝子のすべての実質的な部分を有するアレイが提供される。国際ヒトゲノムシークエンシングコンソーシアム(International Human Genome Sequencing Consortium)は、ヒトゲノム中に約20,000−25,000のタンパク質コード遺伝子があると推定している(Stein、2004年)。以下の実施例は、約3,500−10,000の個人のヒトゲノムから約10,000−20,000のスポットを有するタンパク質アレイの製造および使用を例証する。アレイは、以下に記載されるように哺乳動物発現ベクターpCMV6−エントリー中にクローン化した確認されたヒトcDNAのOriGene,Inc.ライブラリーを用いて製造した。
【0173】
[実施例2]
ヒトタンパク質を発現させるためのpCMV−エントリーベクター
アレイのためのタンパク質は、pCMV−エントリー発現ベクターを介して発現させた(図3に概略を示している)。ベクターは、それを、タンパク質アレイを作製するために哺乳動物宿主細胞中で哺乳動物タンパク質を過剰発現するために特に有効にさせるいくつかの特徴を有する。それは、真核細胞における効率的なエピソーム複製に有効な複製の起点(SV40Ori)、および細菌における複製のための起点を含む。それは、CMVプロモーター、マルチクローニング領域、およびポリアデニル化シグナルを含む、哺乳動物細胞における都合のよいクローニングおよび効率的な発現のための発現カセットを含む。発現カセットは、C−末端myc−DDKタグ付きタンパク質を発現するためにポリアデニル化シグナルの直ぐ上流にmycおよびDDKエピトープも含む。タグは、組換え技術によって発現されたタンパク質を検出および精製するために有効で、都合のよい部分である。ベクターは、細菌宿主における(およびインビトロでの)効率的な転写のためのマルチクローニング領域の上流にT7プロモーターを含む。それは、哺乳動物および細菌の宿主細胞(それぞれ、カナマイシンおよびネオマイシン耐性遺伝子)における選択のための薬剤耐性マーカーを発現するための第2の発現カセットを含む。またそれは、タグ付き融合タンパク質のCMV発現の3’領域におけるC−末端mycおよびDDKタグ配列を含む。それは、同様に細菌細胞における繁殖のための複製の起点を含む。(FLAGは、DDKの商標名である。)
【0174】
[実施例3]
過剰発現溶解物
12,000を超える過剰発現溶解物を、pCMV−エントリーベクター中にクローン化したヒトcDNAを用いて作製し、HEK293T細胞中で過剰発現させ、それらを抗Flag免疫ブロット分析により確認した。発現プロファイル分析物も、適切な翻訳後修飾がこの発現系で生じることを示した。溶解物すべてについての発現プロファイルを調べ、個別に注釈付けした。図2は、8つの無作為に選択した溶解物の発現プロファイルを示す。
【0175】
大部分の組換えタンパク質の発現レベルは、その内因性対応パートナーよりも少なくとも100倍高く、図2に示す。この過剰発現のレベルは、宿主細胞それ自体由来のバックグラウンドに対して非常に高いシグナル対ノイズ比を与える。
【0176】
抗Flag免疫ブロットの全体の成功率は約95%である。
【0177】
[実施例4]
ニトロセルローススライド上への過剰発現溶解物のプリント
過剰発現溶解物をSchottニトロセルローススライド上にプリントした。図1は、全体の配置およびサブアレイの仕様を示す。図に示されるように、各スライドをサブアレイ、典型的にはスライド当たり40サブアレイに分割した。図における拡大領域は、各サブアレイの配置を示す。図に示されるように、各サブアレイは、以下の対照およびマーカーを有した:精製BSA−cy3およびBSA−cy5方向マーカー;精製マウスおよびウサギIgG(陽性対照);空pCMV−エントリーベクターDNAでトランスフェクトしたHEK293T細胞の溶解物(陰性対照)、精製GST−myc−Flag融合タンパク質の参照希釈シリーズ(サブアレイ溶解物中外因性組換えタンパク質発現を定量化するための参照濃度曲線を確立する。)。GST−myc−FLAG濃度シリーズからのシグナルは、mys−FLAGタグ付きタンパク質発現を決定するためのシグナル強度対濃度の標準曲線を確立するために役立った。
【0178】
ピンスポッター、特にAushon 2470アレイスポッターを用いて、Schottニトロセルロース標準マイクロアレイスライド上にアレイを作製した。9,000スポット(フィーチャ)(各200−300ピコリットル)を、110μmピンを用いて標準スライド上21mm×51mmニトロセルロースパッド上にプリントした。16,000スポットを85μmピンでプリントした。22,000と同数の150−200ピコリットルのスポットを、いくらか大きいニトロセルロースパッド(21mm×60mm)上に85μmピンを用いてスライド上にプリントした。周囲の分析物理論(ambient analyte theory)と一致して、検出感度はスポットサイズの減少とともに増加した(Ekins、1989年)。シグナルの均一性は、110μmスポットより85μmスポットについてより大きかったが、シグナル強度は、ほぼ同じであった。アレイ製作の詳細を以下に示す。
【0179】
スライド種類: Shott NCスライド
Aushonアレイヤーピンサイズ 85μm
Slide NCパッド寸法: 21mm×60mm
全サブアレイ: 48(4列×12行)
サブアレイサイズ: 4200μm×4400μm
サブアレイ寸法: 21列(水平)×22行(垂直)
メジアンスポット直径: 約150μm
スポットの中心と中心の間隔: 200μm
サブアレイ間の距離: 200μm
試料当たり複製物: 2
【0180】
これらの仕様に作製したスライドは、22,176のフィーチャ(スポット)、例えば、二通りの10,464の固有のタンパク質スポット(溶解物など)および1,248の対照フィーチャを含み得る。
【0181】
1%NP−40を含有するRIPA緩衝液中溶解物を、ソリッドピンスポッターを用いてニトロセルローススライド上にスポットした。例えば、Chanら、2004年およびNishizukaら、2003年に記載された溶液などの、他の洗浄剤またはカオトロピック試薬を含有する溶液などの他の溶液をプリンティングに使用し得る。溶解物をソースプレートから直接スポットし、スポッティングのすべては、試料濃縮物への蒸発作用を最小化するために調整環境において70%相対湿度で行った。これは、約9,000のスポットのアレイをプリントするために十分機能した。
【0182】
より大きいアレイについて、製作時間は、1つのプレートから、連続的にまたは並行して行う代わりに、いくつかのソースプレートからスポットすることによって同じに保つことができる。アレイ製作中の濃縮への蒸発作用をさらに最小化するために、溶解物をいくつかのソースプレートに分配し、並行してスポットすることができ、したがって、試料のいずれも、悪影響を及ぼすほど長時間曝露されない。代替または追加として、4%グリセロール(または他の安定剤および抗蒸発剤)をスポットする緩衝液に添加することができる。
【0183】
[実施例5]
チップ品質の評価
タンパク質アレイの品質を、全タンパク質を評価するためにコロイド金で染色することによって評価し、組換えタンパク質を評価する抗Flag免疫染色によって、コロイド金による染色は、アレイにわたって全タンパク質についてスポット形態の高い均一性を示す(図3に示される。)。図3Bおよび図5Aに見られるように、抗FLAG抗体による免疫染色は、アレイにわたってFLAG−myc融合タンパク質の結合を示した。抗FLAG結合の量の変動性は、宿主細胞における融合タンパク質発現の差に伴う溶解物中の濃度の差を反映する。精製GST−myc−Flag融合タンパク質を、溶解物中の融合タンパク質の濃度を決定する参照標準として役立つようにアレイに適用した。希釈シリーズは、図1のアレイの拡大領域においてグラフで示し、希釈シリーズの均一性は、図4Cの右上パネルに見ることができる。
【0184】
[実施例6]
溶解物アレイを用いる抗体特異性の同定
抗体特異性はしばしば、抗体の診断および治療の用途に重要な特徴であると同様に、分子生物学研究および治療抗体開発に重要である。交差反応性は、例えば、Tabriziら、(2009年)に記載されるように、生物学的研究に対して偽陽性および治療抗体処置に対して副作用を引き起こし得る。本明細書で開示される本発明の実施形態は、抗体の一次特異性および交差反応性の同定および/または特徴付けを含む、抗体特異性の同定および確認のための過剰発現溶解物マイクロアレイの使用を含む。アレイはさらに、他の種類の分子のみならず、他のタンパク質の結合特異性および交差反応性を調査、同定および確認するために使用され得る。
【0185】
この点に関して例証として、前に特徴付けしたp53に対するポリクローナル抗体を、3700の別個のmyc−FLAGヒト融合タンパク質を含む3700を超える過剰発現溶解物を含む溶解物アレイに対して選別した。p53抗体は、p53発現溶解物およびHEK293T宿主細胞の内因性p53の両方と反応した。過剰発現溶解物からのシグナルは、バックグラウンドのHEK293T発現からのシグナルより10倍を超えて大きい。
【0186】
さらに、抗体は、バックグラウンドを明らかに超えるが、p53溶解物への結合よりは小さいレベルでいくつかの他の溶解物に結合した。さらなる調査により、これらの溶解物のいくつかにおけるより高いp53シグナルは、抗p53抗体への外因性タンパク質の交差反応性ではなく外因性タンパク質によるp53発現の促進によることが示された。同様の結果が、マウスモノクローナル抗p53抗体を使用して得られた。
【0187】
図4に示した結果は、過剰発現溶解物アレイは、タンパク質の相互作用特異性および交差反応性を研究するためにおよび他のタンパク質、例えば、特に外因性タンパク質の発現に対する多数のタンパク質の過剰発現の効果(別個におよび/または互いに協調して)を決定するために使用され得ることを示す。
【0188】
[実施例7]
全細胞免疫化により生成したモノクローナル抗体の解読
全細胞免疫化は、モノクローナル抗体、例えば、バイオマーカーアッセイおよび癌治療のための高度に特異的なモノクローナル抗体を生成させるために使用され得る。しかし、全細胞免疫化技術のより広範な使用は、初期に得られるモノクローナル抗体の標的を決定する困難さによって妨げられる。しばしばこの作業は、非常に費用がかかり、実施するために数年を必要とする。
【0189】
実施形態では、過剰発現溶解物マイクロアレイチップを使用して、タンパク質結合作用物質のタンパク質結合標的、例えば、全細胞免疫化技術によって生成したモノクローナル抗体の細胞タンパク質結合特異性を迅速に決定することができる。結合特異性または結合パートナー(抗体など)の特異性の決定は、本明細書で解読と呼ばれる。
【0190】
この点に関して実施形態は、マウスをMCF−7乳癌細胞で免疫することによって最初に得られた市販の抗E−カドヘリン抗体の標的の同定によって例証される(Shimoyamaら、1989年)。免疫染色データは、その標的が3700を超える異なる遺伝子から明らかに際立つことを示す(図5A)。この結論は、ウェスタンブロット分析によってさらに支持される(図5B)。
【0191】
[実施例8]
腫瘍バイオマーカーの発見
様々なタンパク質が、疾患の指標として働き、治療法を開発するための目標点の代わりとなる。腫瘍に対する癌患者によって産生された自己抗体は、疾患の価値ある診断および予後指標となり得る一クラスのタンパク質を示す。このようなタンパク質が示す可能性は、一部はヒト血清における自己抗体を特徴付けることの困難さのために、実現されてこなかった。
【0192】
この困難さを克服することを期待して、SEREX(組換え発現クローニングによる抗原の血清学的同定)およびSERPA(血清学的プロテオーム分析)(GunawardanaおよびDiamandis、2007年)などの様々な方法が開発されてきたが、これらはすべて、かなりの不利点を有する。
【0193】
SEREXは、各クローンについて明確な注釈をもつ幅広い適用範囲をもたらし得るが;しかし、それは、原核生物のcDNA発現ライブラリー選別に基づく。結果として、選別のために使用される組換えタンパク質は、翻訳後修飾をまったく有さない。さらに、この技術は、発見段階で多数の患者の血清試料を試験することを困難にする。
【0194】
SERPAは、免疫ブロッティングおよびMSによって自己抗体標的を同定する。本質的に、自己抗体を含有する血清は、2−D IEF/SDS PAGEを受けたヒト組織溶解物中のコグネイト抗原を検出するプローブとして使用される。次いで、血清中で自己抗体に結合するゲル中のタンパク質抗原は、質量分析によって同定される。この手法は、タンパク質を過酷に変性する状態に置き、検出無感度および非再生可能性の不利を招く。さらに、典型的にはウェスタンブロットおよび検出工程の実施に関与する他のタンパク質が混入して、この手法が提供する限られたデータ−IEP、サイズおよび質量スペクトルから抗原を同定することは困難である可能性がある。
【0195】
本明細書で記載される実施形態は、自己抗体のタンパク質抗原を同定および特徴付けするためのSEREXおよびSERPAなどの方法の限界を克服する。実施形態では、タンパク質アレイは、各遺伝子に対する明確な注釈を有し、その結果、タンパク質は、アレイ中の各箇所で知られる。さらに、実施形態では、アレイ中のタンパク質は、HEK293T発現系で産生され、翻訳後に十分処理される。
【0196】
このような実施形態は、乳癌患者における自己抗体の同定によって示される。マイクロアレイスライドは、乳癌患者または年齢の一致した健常患者からの血清とともにインキュベートし、次いで、免疫染色して、患者血清中の自己抗体がマイクロアレイ中のタンパク質に結合した場所を視覚化する。結果により、異なるヒト血清に対する別個の自己抗体免疫反応パターンが明らかとなる(図6に示される。)。
【0197】
[実施例9]
精製タンパク質アレイ−ワンステップ免疫精製
以前の研究は、抗Flagイムノアフィニティー精製技術が、自然条件下で過剰発現溶解物からFlagタグ付き複数サブユニットタンパク質複合体を単離するために使用され得ることを示した(Chiangら、1993年;Gloecknerら、2009年)。本発明者らは、この手法を適用して、HEK2093T細胞中pCMV6−エントリーベクターを用いて発現されたFLAG−mycタグ付きタンパク質を単離した。この一般的な手法を、表2および表3に概略的に示し、10の無作為に選択した溶解物についての結果を図7に示す。この手法は、限定されるものではないが、His、myc、FLAG、V5、GST、T7、HSV、VSV−g、Glu−Glu、HA、E−タグなどを含む、任意のエピトープタグとともに使用され得る。
【0198】
[実施例10]
オンチップ精製
オンチップ精製は、本明細書で記載されるマイクロアレイを製造するために使用され得る。オンチップ精製を用いてタンパク質アレイを作製する一般的なスキームを表3および図8に示している。
【0199】
この実施例では、DDKエピトープおよび抗DDK抗体(FLAGエピトープおよび抗FLAG抗体)を用いる10,464の精製ヒト組換えタンパク質を有するタンパク質アレイの製造が記載されている。Flagは、高度に免疫原性ペプチドである。Flagエピトープタグと抗Flag抗体との相互作用は、例外的に強く、特異的である(ChiangおよびRoeder、1993年)。高品質抗Flag抗体は、マウス、ウサギ、ヤギおよびさらにニワトリを含む、異なる種で生産した。このような抗体は、市販されており(OriGene,Inc.製の抗体など)、しばしば免疫沈澱分析に使用されて、高品質の抗Flagマウスモノクローナル抗体およびウサギポリクローナル抗体を与える。
【0200】
オンチップ精製の有効性を、図9に示す。pCMV6−エントリーベクターを介してHEK293T細胞中で発現されたFLAG−mycタグ付きタンパク質を含むHEK293T細胞溶解物、または空pCMV6−エントリーベクター形質転換細胞の溶解物(陰性対照)を、コーティングしていないニトロセルローススライド(陰性対照)および抗FLAG抗体でコーティングしたニトロセルローススライド上にスポットした。次いで、スライドを、固定化FLAG−mycタグ付きタンパク質を視覚化するために抗myc抗体によってまたは非タグ付き細胞タンパク質に相当するアクチンを視覚化するために抗ベータ−アクチン抗体によって精査した。
【0201】
図9に示すように、抗myc抗体結合は、myc−FLAGタグ付きタンパク質が、緊密で、比較的均一な濃く染色するスポットにおいて抗FLAGでコーティングしたニトロセルローススライドに結合する一方、それは、より広く拡散し、あまり濃くないスポットにおいてコーティングしていないスライドに結合することを明らかにした。スライドのいずれかのタイプにおいても抗mcy抗体による陰性対照の染色はなかった。抗FLAGでコーティングしたスライド上のスポットの抗ベータアクチン免疫染色はなく、ブロッキング工程が非特異的結合を防止するために有効であること、および大部分の細胞タンパク質が、スライド上に溶解物をスポットした後に効率的に洗い流されることを示した。コーティングしていないスライドに結合する抗myc抗体は、暗色の環を有する拡散したスポット中において大部分の細胞タンパク質の結合を示した。
【0202】
オンチップのワンステップイムノアフィニティー精製は、任意のタグ付きタンパク質とともに使用することができ、したがって、タグ付き融合タンパク質を発現するベクターを用いて外因性DNAを介して産生されるタンパク質に広く適用され得る。様々なタグが、この目的にDDK(FLAG)と同様に使用され得る。
【0203】
VII
以下の参考文献および本明細書で別に引用した参考文献は、特に、それらが本明細書で参照される特定の主題に関して、それらの全体が本明細書で明示的に組み込まれる。
【0204】
本発明の実施形態の実施に有用であり得る、ポリヌクレオチド、外因性遺伝子の発現、発現ベクター、形質転換細胞におけるタンパク質産生についての情報は、実施形態が属する当技術分野で周知であり、広く利用できる。このような情報は、例えば、以下の参考文献に見出すことができる。
【0205】
【表4】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質P1からPnを含む溶解物L1からLnを、担体上の位置S1からSnに適用する段階を含み、
各溶解物Lxは、外因性DNA Dxを介してその中で発現されているタンパク質Pxを含む細胞Cxの溶解物であり、位置Sxに適用され、
ここで、
P1からPnはすべて、互いに異なり、
S1からSnはすべて、互いに異なり、
nは、1より大きい整数であり、
xは、1からnまでの整数である、
タンパク質アレイを作製する方法。
【請求項2】
タンパク質P1からPnを担体上の位置S1からSnに適用する段階を含み、
各タンパク質Pxは、外因性DNA Dxを介して細胞Cx中で発現され、位置Sxに適用され、
ここで、
P1からPnはすべて、互いに異なり、
S1からSnはすべて、互いに異なり、
nは、1より大きい整数であり、
xは、1からnまでの整数である、
タンパク質アレイを作製する方法。
【請求項3】
タンパク質が、生物の少なくとも1,000の異なる遺伝子座を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
タンパク質が、生物のゲノムによりコードされているタンパク質の少なくとも20パーセントを集合的に含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ゲノムがヒトゲノムである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記溶解物の少なくとも50パーセントについて、アレイ中の各位置に適用される溶解物タンパク質の量が、少なくとも100個の細胞の溶解物における全タンパク質の量である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
タンパク質または溶解物が、スライドガラス上のニトロセルロースに適用される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
担体が、アフィニティータグに特異的な捕捉試薬でコーティングされており、タンパク質が前記タグを含み、捕捉試薬に結合することによって精製される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
タンパク質P1からPnを含む溶解物L1からLnを、担体上の位置S1からSnにおいて含み、
各溶解物Lxは、外因性DNA Dxを介してその中で発現されているタンパク質Pxを含む細胞Cxの溶解物であり、位置Sxに適用され、
ここで、
P1からPnはすべて、互いに異なり、
S1からSnはすべて、互いに異なり、
nは、1より大きい整数であり、
xは、1からnまでの整数である、タンパク質アレイ。
【請求項10】
タンパク質P1からPnを担体上の位置S1からSnにおいて含み、
各タンパク質Pxは、外因性DNA Dxを介して細胞Cx中で発現され、位置Sxに適用され、
ここで、
P1からPnはすべて、互いに異なり、
S1からSnはすべて、互いに異なり、
nは、1より大きい整数であり、
xは、1からnまでの整数である、タンパク質アレイ。
【請求項11】
タンパク質が、生物の少なくとも1,000の異なる遺伝子座を含む、請求項9または10に記載のタンパク質アレイ。
【請求項12】
タンパク質が、生物のゲノムによりコードされているタンパク質の少なくとも20パーセントを集合的に含む、請求項9から11のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【請求項13】
ゲノムがヒトゲノムである、請求項9から12のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【請求項14】
前記溶解物の少なくとも50パーセントについて、アレイ中の各位置に適用される溶解物タンパク質の量が、少なくとも100個の細胞の溶解物中の全タンパク質の量である、請求項9から13のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【請求項15】
タンパク質または溶解物が、スライドガラス上のニトロセルロースに適用される、請求項9から14のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【請求項16】
タンパク質が、アフィニティータグを含み、担体中に固定化された前記アフィニティータグに特異的な捕捉試薬により担体に結合される、請求項9から15のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【請求項17】
抗体または抗体調製物の結合特異性を決定する方法であって、請求項9から16のいずれかに記載のタンパク質アレイへの前記抗体または前記抗体調製物の結合を決定し、前記決定から、前記アレイ中のタンパク質に対する前記抗体または前記抗体調製物の結合特異性を同定する段階を含む、方法。
【請求項18】
疾患のタンパク質バイオマーカーを決定する方法であって、1または複数の健常個体および疾患に罹っている1または複数の疾患個体由来の試料の、請求項9から16のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、前記健常および疾患個体由来の試料の結合の差から、前記疾患のタンパク質バイオマーカーを決定する段階を含む、方法。
【請求項19】
自己免疫疾患のバイオマーカーを決定する方法であって、1または複数の健常対象および自己免疫疾患に罹っている1または複数の対象由来の抗体含有試料の、請求項9から16のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、前記健常対象および前記自己免疫疾患に罹っている対象由来の試料における前記抗体の結合の差から、前記自己免疫疾患のタンパク質バイオマーカーを決定する段階を含む、方法。
【請求項20】
健常個体に存在しない抗体の存在を特徴とする疾患のバイオマーカーを決定する方法であって、1または複数の健常対象および前記健常個体に存在しない抗体の存在を特徴とする疾患に罹っている1または複数の対象由来の試料の、請求項9から16のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、前記健常対象および前記疾患に罹っている対象由来の試料における前記抗体の結合の差から、前記疾患のタンパク質バイオマーカーを決定する段階を含む、方法。
【請求項21】
疾患を診断する方法であって、健常個体に存在しない抗体の存在を特徴とする疾患に罹っている可能性がある対象由来の抗体含有試料の、請求項9から16のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、前記アレイへの前記試料中の抗体の結合から、前記疾患の非存在または存在を決定する段階を含む、方法。
【請求項22】
シグナル伝達経路をモニターする方法であって、シグナル伝達経路タンパク質のタンパク質を含む試料の、請求項9から16のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、それにより、前記アレイ中のタンパク質への結合が、前記タンパク質の非存在、存在および/または量を示す段階を含む、方法。
【請求項23】
請求項9から16のいずれかに記載のタンパク質アレイへの小分子を含む試料の結合を決定する段階を含む、前記小分子とタンパク質の間の相互作用を決定する方法。
【請求項1】
タンパク質P1からPnを含む溶解物L1からLnを、担体上の位置S1からSnに適用する段階を含み、
各溶解物Lxは、外因性DNA Dxを介してその中で発現されているタンパク質Pxを含む細胞Cxの溶解物であり、位置Sxに適用され、
ここで、
P1からPnはすべて、互いに異なり、
S1からSnはすべて、互いに異なり、
nは、1より大きい整数であり、
xは、1からnまでの整数である、
タンパク質アレイを作製する方法。
【請求項2】
タンパク質P1からPnを担体上の位置S1からSnに適用する段階を含み、
各タンパク質Pxは、外因性DNA Dxを介して細胞Cx中で発現され、位置Sxに適用され、
ここで、
P1からPnはすべて、互いに異なり、
S1からSnはすべて、互いに異なり、
nは、1より大きい整数であり、
xは、1からnまでの整数である、
タンパク質アレイを作製する方法。
【請求項3】
タンパク質が、生物の少なくとも1,000の異なる遺伝子座を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
タンパク質が、生物のゲノムによりコードされているタンパク質の少なくとも20パーセントを集合的に含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ゲノムがヒトゲノムである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記溶解物の少なくとも50パーセントについて、アレイ中の各位置に適用される溶解物タンパク質の量が、少なくとも100個の細胞の溶解物における全タンパク質の量である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
タンパク質または溶解物が、スライドガラス上のニトロセルロースに適用される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
担体が、アフィニティータグに特異的な捕捉試薬でコーティングされており、タンパク質が前記タグを含み、捕捉試薬に結合することによって精製される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
タンパク質P1からPnを含む溶解物L1からLnを、担体上の位置S1からSnにおいて含み、
各溶解物Lxは、外因性DNA Dxを介してその中で発現されているタンパク質Pxを含む細胞Cxの溶解物であり、位置Sxに適用され、
ここで、
P1からPnはすべて、互いに異なり、
S1からSnはすべて、互いに異なり、
nは、1より大きい整数であり、
xは、1からnまでの整数である、タンパク質アレイ。
【請求項10】
タンパク質P1からPnを担体上の位置S1からSnにおいて含み、
各タンパク質Pxは、外因性DNA Dxを介して細胞Cx中で発現され、位置Sxに適用され、
ここで、
P1からPnはすべて、互いに異なり、
S1からSnはすべて、互いに異なり、
nは、1より大きい整数であり、
xは、1からnまでの整数である、タンパク質アレイ。
【請求項11】
タンパク質が、生物の少なくとも1,000の異なる遺伝子座を含む、請求項9または10に記載のタンパク質アレイ。
【請求項12】
タンパク質が、生物のゲノムによりコードされているタンパク質の少なくとも20パーセントを集合的に含む、請求項9から11のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【請求項13】
ゲノムがヒトゲノムである、請求項9から12のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【請求項14】
前記溶解物の少なくとも50パーセントについて、アレイ中の各位置に適用される溶解物タンパク質の量が、少なくとも100個の細胞の溶解物中の全タンパク質の量である、請求項9から13のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【請求項15】
タンパク質または溶解物が、スライドガラス上のニトロセルロースに適用される、請求項9から14のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【請求項16】
タンパク質が、アフィニティータグを含み、担体中に固定化された前記アフィニティータグに特異的な捕捉試薬により担体に結合される、請求項9から15のいずれかに記載のタンパク質アレイ。
【請求項17】
抗体または抗体調製物の結合特異性を決定する方法であって、請求項9から16のいずれかに記載のタンパク質アレイへの前記抗体または前記抗体調製物の結合を決定し、前記決定から、前記アレイ中のタンパク質に対する前記抗体または前記抗体調製物の結合特異性を同定する段階を含む、方法。
【請求項18】
疾患のタンパク質バイオマーカーを決定する方法であって、1または複数の健常個体および疾患に罹っている1または複数の疾患個体由来の試料の、請求項9から16のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、前記健常および疾患個体由来の試料の結合の差から、前記疾患のタンパク質バイオマーカーを決定する段階を含む、方法。
【請求項19】
自己免疫疾患のバイオマーカーを決定する方法であって、1または複数の健常対象および自己免疫疾患に罹っている1または複数の対象由来の抗体含有試料の、請求項9から16のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、前記健常対象および前記自己免疫疾患に罹っている対象由来の試料における前記抗体の結合の差から、前記自己免疫疾患のタンパク質バイオマーカーを決定する段階を含む、方法。
【請求項20】
健常個体に存在しない抗体の存在を特徴とする疾患のバイオマーカーを決定する方法であって、1または複数の健常対象および前記健常個体に存在しない抗体の存在を特徴とする疾患に罹っている1または複数の対象由来の試料の、請求項9から16のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、前記健常対象および前記疾患に罹っている対象由来の試料における前記抗体の結合の差から、前記疾患のタンパク質バイオマーカーを決定する段階を含む、方法。
【請求項21】
疾患を診断する方法であって、健常個体に存在しない抗体の存在を特徴とする疾患に罹っている可能性がある対象由来の抗体含有試料の、請求項9から16のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、前記アレイへの前記試料中の抗体の結合から、前記疾患の非存在または存在を決定する段階を含む、方法。
【請求項22】
シグナル伝達経路をモニターする方法であって、シグナル伝達経路タンパク質のタンパク質を含む試料の、請求項9から16のいずれかに記載のタンパク質アレイへの結合を決定し、それにより、前記アレイ中のタンパク質への結合が、前記タンパク質の非存在、存在および/または量を示す段階を含む、方法。
【請求項23】
請求項9から16のいずれかに記載のタンパク質アレイへの小分子を含む試料の結合を決定する段階を含む、前記小分子とタンパク質の間の相互作用を決定する方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【公表番号】特表2013−506138(P2013−506138A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531032(P2012−531032)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/050031
【国際公開番号】WO2011/038138
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512075534)オリジーン・テクノロジーズ・インコーポレイテツド (1)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/050031
【国際公開番号】WO2011/038138
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512075534)オリジーン・テクノロジーズ・インコーポレイテツド (1)
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