説明

タンパク質断片の相補性アッセイのための蛍光タンパク質断片

【課題】蛍光タンパク質に基づくタンパク質断片の相補性アッセイ(PCA)に適した性質を有する変異蛍光タンパク質を提供する。
【解決手段】蛍光タンパク質を切断するための方法、およびPCAに望ましいスペクトル特性を有する突然変異断片を発生させるための方法。エクオレア、アネモニアおよびアントゾア種からの蛍光タンパク質に基づくアッセイおよび組成物。野生型タンパク質に比べて改善されたスペクトル的性質を有する突然変異の蛍光タンパク質の断片。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条に基づき、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2003年4月9日に出願した「タンパク質断片の相補性アッセイのための蛍光タンパク質断片」という標題の米国特許仮出願第60/461133号の優先権の利益を主張するものである。本出願は、2003年1月29日に出願した係続中の米国特許出願第10/353090号の一部継続出願でもあり、同出願は2002年5月24日に出願した係続中の米国出願第10/154758号の継続出願であり、同出願は2000年2月7日に出願した米国特許出願第09/499464号(現在の米国特許第6428951号)の継続出願であり、同出願は1998年2月2日に出願した米国特許出願第09/017412号(現在の米国特許第6270964号)の継続出願である。
【0002】
本発明は、一般に生物学、分子生物学、化学および生化学の分野に関する。具体的には本発明は、蛍光タンパク質に基づくタンパク質断片の相補性アッセイ(protein−fragment complementation assays:PCA)に関する。本発明は、適当な断片対の設計および創製のための方法、その断片の組成物、ならびにPCAに適した組合せに関する。好ましい実施形態は、バイオテクノロジー応用に適した性質を有する突然変異の蛍光タンパク質断片を含む。
【背景技術】
【0003】
天然蛍光タンパク質、生物発光タンパク質または燐光タンパク質の大きくなりつつあるリストには、エクオレア・ビクトリア(オワンクラゲ)(Aequorea Victoria)由来GFPおよびますます数が増えている有用な性質を有するGFPの配列変異体が含まれる。そのリストには、ディスコソマ(Discosoma)由来赤色蛍光タンパク質(RFP)およびアネモニア(Anemonia)由来キンドリング(kindling)蛍光タンパク質(KFP1)も含まれる。これらのタンパク質は、コア・アミノ酸残基のエンド環化の結果としてすべてが高可視性の効率的に発光する内部蛍光団を発生できる自己触媒酵素である。蛍光タンパク質の別の共通特性は、シグナルが安定で、種に依存せず、シグナルの発生に基質または補因子(cofactor)を何も必要としないことである。これらの蛍光タンパク質は構造が著しく類似しており、類似したタンパク質工学の原理を複数の種に応用することが可能である。
【0004】
GFPの一アイソタイプ(「野生型GFP」)の全長DNA配列および対応するアミノ酸配列を表1に示す。これらの配列は完全に記載されキャラクタリゼーションされた(例えばTsienら、1998、Ann.Rev.Biochem.67:509〜544頁参照)。無傷タンパク質(図1および2B)はp−ヒドロキシベンジリデンイミダゾロン発色団から強い可視吸光および蛍光を発生し、その発色団はそのタンパク質自体の位置65から67のSer−Tyr−Gly配列の環化および酸化によって発生する。新たに合成された蛍光タンパク質ポリペプチドは、蛍光を発する前に正しく成熟する必要がある。成熟プロセスは2つのステップ、すなわち折りたたみ(folding)および発色団の形成を伴う。まず、タンパク質は天然立体配座にフォールドし、次に内部トリペプチドが環化し酸化する。これに関して、蛍光タンパク質は環化反応を自己触媒し、反応の完了に分子状酸素のみを必要とする酵素である。
【0005】
多様な有用突然変異体版の全長、野生型GFPが生み出され、「エクオレア蛍光タンパク質(AFP)変異体」またはAFPと名付けられた。これらの「突然変異の蛍光タンパク質」のスペクトル的性質の改良の結果として、これらのタンパク質は生物学およびバイオテクノロジー応用に広い応用性を有することが分かった。報告されたGFP変異体のいくつかを表2に示す。従来の慣例によって、(表2および本発明全体におけるような)突然変異の位置は野生型GFPの配列(表1)に対して表示される。これらのAFPの多くは本来の野生型タンパク質よりもシグナル強度の点ではるかに改善した性質を示し、野生型タンパク質の5から30倍の蛍光シグナルを発生する。ほぼすべての生物学応用および突然変異の蛍光タンパク質の基礎である強化(enhanced)GFP(EGFP)は、哺乳動物細胞に対して向上したコドン使用頻度を有する。
【0006】
GFPから始まり、種々の色変異体をもたらす発色団部位での突然変異が創製された。発色団と接触している側鎖の突然変異はタンパク質の折りたたみ(folding)および明るさをさらに強化することが示された。スペクトル偏移を有し、37℃でさらに迅速にフォールドする突然変異の組合せが創製され、細胞生物学応用のためにさらに明るいシグナルを生成した。最も一般的なスペクトル変異体には広く使われている黄色(YFP/EYFP)変異体、シアン(CFP/ECFP)変異体およびBFP変異体がある(R.Y.Tsien、1998、「緑色蛍光タンパク質」、Annual Reviews of Biochemistry 67:509〜544頁)。
【0007】
独特の性質を有するGFPの追加の突然変異体が創製された。これらには、CFPとEGFPとの中間の励起波長および発光波長を有する「CGFP」変異体がある(J.Zhangら、2000、「細胞生物学のための新規な蛍光プローブの創製」、Nature Reviews 3:906〜918頁)。YFP(YFP−Q69M)の「シトリン(citrine)」変異体は、以前のYFPよりも低いpKa、塩素陰イオンに対する無差別、以前のYFPの2倍の光安定性、ならびに37℃およびオルガネラにおけるずっと良好な発現を与える(O.Griesbeckら、2001、「黄色蛍光タンパク質の環境感度の減少」、J.Biol.Chem 276:29188〜29194頁)。
【0008】
いくつかの種類のYFPがランダム突然変異誘発を用いて創製された。これらの突然変異タンパク質はEYFPよりも3〜30倍高い傾向強度を有す。これらにはいわゆるスーパーEYFP(SEYFP)(EYFP−F64L/M153T/V163A/S175G)および「Venus」(SEYFP−F46L)(T.Nagaiら、2002、「細胞生物学的応用のための早く効率的な成熟を有する種々の黄色蛍光タンパク質」、Nature Biotech.20:87〜90頁)。Venusは新規な突然変異F46Lを含み、その突然変異は37℃で突然変異の律速段階である発色団の酸化を大きく促進する。追加のSEYFP突然変異の結果として、Venus SEYFP−F46Lは折りたたみ(folding)も十分であり、酸または高塩素陰イオン濃度の曝露に対して相対的に耐性である。
【0009】
PA−GFP(GFP−V163A/T203H)と名付けられたGFPの光励起型は、413nm光の強光照射後に488nm光で励起した場合に蛍光が100倍に増加し、好気条件で数日間安定であると報告された(G.H.Patterson & J.L.Schwartz、「タンパク質と細胞の選択的な光標識のための光活性なGFP」、Science 297:1873〜1877頁、2002)。
【0010】
【表1】

【0011】
【表2】

【0012】
【表3】

【0013】
エクオレア・ビクトリア(オワンクラゲ)以外の種からの蛍光タンパク質も単離されキャラクタリゼーションされた。増加中のリストには、レニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis)からの緑色蛍光タンパク質およびサンゴである花虫類からの多数の蛍光タンパク質が含まれる。これらにはディスコソマからの赤色蛍光タンパク質(DsRed)が含まれ(M.V.Matzら、1999、Nature Biotech.17:969〜973頁)、そのタンパク質は結晶化され(Yarbroughら、2001、Proc.Natl.Acad.Sci.98:462〜467頁)、生物学のツールとして広い応用性が見出された。サンゴ蛍光タンパク質はエクオレアGFPとわずか26〜30%の配列同一性しか有さないが、それらは構造的に著しく類似している。具体的には、サンゴ蛍光タンパク質はGFPに最初に観察されたのと同じβカン(β−can)フォールドを共に有する。GFPで観察された主要な二次構造エレメントのすべてを、同一配置でサンゴタンパク質から容易に検出でき、カンの「キャップ」を形成するストレッチに著しい類似性が観察された。GFPにおける発色団形成に関与すると考えられる主要残基はサンゴタンパク質においても保存され、残基96にアルギニン、残基66にチロシンおよび残基67にグリシンを含む。
【0014】
様々な種間で蛍光タンパク質の構造が相同(homology)であることは、以前にGFPに応用された遺伝子工学およびタンパク質工学の原理の多くをこれらの蛍光タンパク質にも応用して生物学的応用およびバイオテクノロジーのための望みの性質を有する変異体を創製できることを意味している。
【0015】
以前に記載されたGFPの緑色、黄色およびシアン変異体とスペクトルが別個であることから、高い量子収量を有する明るい橙赤色蛍光タンパク質を入手できることは生物学の研究に特に有用であろう。DsRedとして一般的に知られているDrFP583はGFPと本質的に同一の発色団を有する28kDaのポリペプチドであり、その発色団は内部Gln−Tyr−Gly(残基66〜68)トリペプチドから自己触媒的に形成する。DsRedはA.ビクトリアGFPと構造的に著しく類似している。実際に、DsRedの全体的なフォールドはGFPと事実上同一であり、中心に同軸のヘリックスとバレル末端にアルファ・ヘリックスのキャップとを有するストランド11本のわずかに不規則なベータ・バレル(βカンと記載)からなる。エクオレアGFPとのサンゴ蛍光タンパク質の配列アラインメントを表4に示す。
【0016】
多数の突然変異体版のDsRedは野生型タンパク質よりも発色団成熟が高速であることが今回記載されていた(B.J.BevisおよびB.S.Glick、Nature Biotech.20:83〜86頁、2002)。重要なことに、DsRedは最近単量体型に操作された(mRFP)(R.E.Campbellら、2002年6月11日、「単量体型赤色蛍光タンパク質(A monomeric red fluorescent protein)」、Proc.Natl.Acad.Sci.99(12):7877〜7882頁)。この単量体型はレポーターとして多量体タンパク質よりも有用である。mRFP1は単量体であり、シグナルはDsRedよりも10倍を超えて速く成熟し、単量体タンパク質はGFPの励起に適した波長で最小の発光しか有さない。
【0017】
独特のGFP様色素タンパク質asCPがイソギンチャクであるアネモニア・スルカータ(Anemonia sulcata)から最近発見された(Chudakov,D.M.ら、2003、「精密なin vivo光標識用の蛍光タンパク質のキンドリング」、Nat.Biotechnol.21、191〜194頁)。asCPは初め非蛍光であるが、強い緑色光の照射に反応して595nmで発光を有する明るい蛍光を発する(キンドル(kindle)する)ようになる。キンドルしたasCPは、10秒未満の半減期で緩和して最初の非蛍光状態に戻る。あるいは、青色光の短時間照射によって蛍光を直ちに完全に「消光」できる。非蛍光形から、キンドルしていないタンパク質よりも30倍大きい蛍光強度を有する安定な明るい赤色蛍光形への独特な不可逆の光転換(photoconversion)可能な突然変異体(asCP A148GまたはKFP1)が生み出された。細胞、オルガネラおよびタンパク質の移動を追跡するための精密なin vivo光標識(photolabel)に、この「キンドリング蛍光タンパク質」を使用できる。
【0018】
蛍光タンパク質はin vivoおよびリアル・タイムで遺伝子発現およびタンパク質局在を監視するための有用なレポーターであることが証明された(J.M.Tavareら、2001、J.Endocrinol.170:297〜306頁;Thastrupら、米国特許第6518021号)。そのようなアッセイは、二元または高次のイベントに比べて個々のタンパク質に結びついている細胞イベントを測定する。生細胞におけるタンパク質動力学を分析するための生化学センサーの構築および革新的な融合構築体の創製を含めた、蛍光タンパク質の他の有用な応用が多数記載されている。二分子イベントの測定のために、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)アッセイまたはBRET(生物発光共鳴エネルギー移動)アッセイが十分に記載された(A.Miyawaki & R.Tsien、2000、Methods in Enzymology 327:472〜500頁;G.W.Gordonら、1998、Biophys.J.74:2702〜2713頁)。GFP、BFP、CFPおよびRFPは、他の使用からとりわけタンパク質−タンパク質相互作用を検出し、プロテアーゼ活性を監視し、かつカルシウム指示薬を創製するためのFRETまたはBRETアッセイに使用された。
【0019】
上に言及したすべての応用が、機能的な全長(または実質的に全長)蛍光タンパク質(発光団)を目的タンパク質にタグ付けするのに頼っていることに留意することが重要である。上に引用した参照のいずれもが蛍光タンパク質の断片の組成物についても使用についても記載していない。
【0020】
タンパク質断片の相補性アッセイ(PCA)は生体分子および薬物相互作用の検出および定量のためのアッセイを構築するための一般法に相当する(J.N.Pelletier、J.N.、Remy,I.およびMichnick、S.W.1998、タンパク質断片の相補性アッセイ:タンパク質−タンパク質相互作用のin vivo検出のための一般戦略、J.Biomolecular Techniques 10:32〜19頁;Remy,I.、Pelletier,J.N.、Galarneau,A.& Michnick,S.W.2002、タンパク質断片相補戦略を用いたタンパク質相互作用およびライブラリー・スクリーニング:A Molecular Cloning Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第25章、449〜475頁;Michnick,S.W.、Remy,I.、C.−Valois,F.X.、Vallee−Belisle,A.、Galarneau,A.& Pelletier,J.N.、2000、タンパク質断片相補戦略によるタンパク質−タンパク質相互作用の検出、第A部および第B部、Methods in Enzymology 328:208〜230頁;J.N.Pelletier & S.W.Michnick.、1997、タンパク質断片相補に基づくin vivoタンパク質−タンパク質相互作用の検出戦略」、Protein Engineering、10(別冊):89頁)。
【0021】
PCAは、単量体酵素、蛍光タンパク質、発光タンパク質または燐光タンパク質のようなレポータータンパク質の断片のオリゴマー化介助性相補を伴う。二量体および多量体酵素もPCAに使用できるが、単量体タンパク質が好ましい。Michnickら(米国特許第6270964号)が記載したように、PCAに適するタンパク質の理想的な性質は、1)相対的に低分子量の単量体のタンパク質または酵素であり、2)それについての構造および機能の情報に関する大規模な資料があり、3)そのタンパク質の再構成またはその酵素の活性に対する簡便なアッセイが存在し、かつ4)それについて真核細胞および原核細胞における過剰発現が実証されたものである。
【0022】
米国特許第6270964号の図1はPCAの概要を示している。タンパク質または酵素の遺伝子を2つ以上の断片に合理的に解体する。分子生物学の手法を用いて、選択された断片をサブクローニングし、相互作用することが公知であるか、またはそう考えられるどちらかのタンパク質をそれぞれの5’末端に融合させる。次に、細胞へのこれらのDNA構築体の同時トランスフェクション(co−transfection)または形質転換(transformation)を行う。断片相互に対する試験タンパク質(test protein)の結合によって、断片からのプローブタンパク質または酵素の再集合が触媒され、一部のアッセイは再構築を観察する。融合した相互作用性タンパク質がタンパク質または酵素の再集合を触媒する場合にのみこれらのアッセイがうまく進むことを理解するのが重要である。すなわち、再構成したタンパク質または酵素活性の観察が融合タンパク質の相互作用の尺度でなければならない。
【0023】
米国特許第6270964号は、蛍光シグナルを発することができる多数の有用レポーターについてPCAの原理、方法および応用を教示している(表1参照)。この特許の実施例3はPCAに適した多数の特異的レポーターを含むPCAの様々な実施形態を記載している。グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、蛍ルシフェラーゼ、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XPRT)、ジアホラーゼ、アデノシンデアミナーゼ、ブレオマイシン結合タンパク質、ヒグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ、ヒスチジノールNAD+オキシドレダクターゼおよびエクオレア緑色蛍光タンパク質(GFP)について詳細が記載された。米国特許第6270964号の表1はPCAの基準に合致する他のレポーターの一層大きなリストを記載している。
【0024】
米国特許第6270964号の実施例3にGFPに基づくPCAがその性質および利点を含めて記載された:「エクオレア・ビクトリア(オワンクラゲ)からのGFPは遺伝子発現のための最も普及したタンパク質マーカーの1つになりつつある。これは低分子量、単量体のアミノ酸238個のタンパク質は、残基Ser65とGly67との間のポリペプチド主鎖の自己触媒性環化およびTyr66の結合の酸化から生じる内部発色団の存在が原因で本来蛍光性であることを理由とする。GFP発色団は395nmで最適に光を吸収し、470nmで第2の最大吸収も有する。この二特異性吸収は、相対分布数が発色団の局所環境に依存している発色団の低エネルギー配座異性体が2つ存在することを示唆している。異性体化を排除する突然変異体Ser65Thrは野生型よりも4から6倍強い蛍光をもたらす。近年、GFPの構造が2つのグループによって解明され、GFPが構造に基づくPCA設計の候補となり、そのPCAの開発を本発明者らは開始した。GSTアッセイと同様に、オリゴマー化ドメインとしてGCN4ロイシン・ジッパー形成配列を有する大腸菌を用いて本発明者らは初期の開発のすべてを行っている。広域スペクトルUV光下で可視光観察を行うことによる蛍光の直接検出を用いる。本発明者らはCOS細胞において蛍光活性化セルソーティング」を用いた同時トランスフェクタントも選択してこの系を試験する。米国特許第6270964号、米国特許第6294330号および米国特許第6428951号の発行された請求項は、蛍光タンパク質以外に他のレポーターのクラスを含んでいる。PCAは多様なペプチド・ライブラリー(J.N.Pelletierら、2000、Nature Biotech.17:683〜690頁)およびcDNAまたは抗体ライブラリー(E.Moessnerら、2001、J.Mol.Biol.308:115〜122頁;I.Remyら、公表のために投稿中)をスクリーニングするために、平行および逆平行ロイシン・ジッパー形成配列のようなタンパク質ドメインの会合定数を定量するために(K.M.Arndtら、2000、J.Mol.Biol.295:627〜639頁;I.Ghoshら、2000、J.Am.Chem.Soc122:5658〜5659頁)、薬物によって誘発されるタンパク質複合体の会合および解離を検出するために(I.RemyおよびS.W.Michnick、1999、Proc Natl Acad Sci USA 96:5394〜5399頁)、リガンドが誘発する細胞受容体の活性化を測定するために(I.Remyら、1999、Science 283:990〜993頁)、生細胞における転写因子複合体を研究するために(R.Subramaniamら、2001、Nature Biotech.19:769〜772頁、2001)、リアルタイムでシグナル伝達経路のエレメントを定量するために(I.RemyおよびS.W.Michnick、2001、Proc Natl Acad Sci USA、98:7678〜7683頁、2001;A.Galarneauら、2002、Nature Biotech.20:619〜622頁)、ならびにタンパク質−タンパク質複合体の細胞内位置を正確に決定するために(I.RemyおよびS.W.Michnick、2001、Proc Natl Acad Sci USA 98:7678〜7683頁;R.Subramaniamら、2001、Nature Biotech.、19:769〜772頁;C.−D.Huら、Molecular Cell 9:789〜798頁、2002;H.Yuら、公表のために投稿中)使用された。
【0025】
PCAへのGFPの使用を記載している本発明者らの発明の後に、Ghoshら(J.Am.Chem.Soc 122:5658〜5659頁、2000;米国特許出願第2002/0146701号)は、本来Michnickらによって提案された方法でGCN4ロイシン・ジッパーのオリゴマー化を研究するためにGFP PCAを使用した。彼らは細菌において逆平行ロイシン・ジッパー特異的にGFP断片が再集合することを示した。これらの研究には単一GFP変異体が選択され、単一の切断部位が使用された。著者らは、Michnickら(例えば、米国特許第6270964号)に最初に記載された原理を超えた合理的設計に基づいて蛍光タンパク質を切断するための追加の原理または方法を開示しなかった。さらに、ロイシン・ジッパーの研究に使用された断片対以外にGhoshおよび共同研究者らはPCAに有用な特定のアッセイ組成物を開示しなかった。
【0026】
Huら(Molecular Cell 9:789〜798頁、2002)は、GFPの黄色変異体に基づくPCAを記載し、そのアッセイではYFPの断片が平行ロイシン・ジッパーまたはRelファミリー・タンパク質のどちらかに融合された。しかし、蛍光タンパク質および断片組成物を操作する追加の原理および方法は、Huおよび共同研究者らによって記載されなかった。さらに、従来技術は無傷蛍光タンパク質の性質に影響することが知られている突然変異がPCAに使用されたポリペプチド断片に類似の性質を与えるかどうかの話題について記載していない。
【0027】
蛍光タンパク質PCAはシグナルの発生を外部の補因子または基質に依存しないことから、これらのPCAは細胞に基づくアッセイの構築に特に有用である。1組の蛍光タンパク質PCAは様々なスペクトル的性質を有する多数の有用なアッセイを可能にするであろう。例えば、高量子収量の蛍光タンパク質をPCA断片に操作することができ、それによって非常に低レベル発現するタンパク質間の複合体、または酵素とその基質との低親和性複合体のような細胞内の稀少イベントの検出が可能になる。さらに、赤色偏移した発光を有するPCAは、緑色チャネルでしばしば起こる細胞の自己蛍光に関連する雑音に対して改良されたシグナルをもたらすと思われる。重要なことには異なる色を発生する断片を用いたPCAを組み合わせることができ、それによって2、3、またはそれを超える細胞イベントの同時監視が可能になる(多色PCA)。最後に迅速診断のための多色アレイを創製するために、蛍光タンパク質PCAを使用できる。例えば、異なる抗原に結合する抗体に基づく多色アレイは生物戦用物質の迅速同時検出を可能にするであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】米国特許出願第60/461133号
【特許文献2】米国特許出願第10/353090号
【特許文献3】米国特許出願第10/154758号
【特許文献4】米国特許出願第09/499464号
【特許文献5】米国特許第6428951号
【特許文献6】米国特許出願第09/017412号
【特許文献7】米国特許第6270964号
【特許文献8】米国特許第6518021号
【特許文献9】米国特許第6294330号
【特許文献10】米国特許出願第2002/0146701号
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】R.Y.Tsien、1998、「The Green Fluorescent Protein」、Annual Reviews of Biochemistry 67:509〜544頁
【非特許文献2】J.Zhangら、2000、「Creating new fluorescent probes for cell biology」、Nature Reviews 3:906〜918頁
【非特許文献3】O.Griesbeckら、2001、「Reducing the Environmental Sensitivity of Yellow Fluorescent Protein」、J.Biol.Chem 276:29188〜29194頁
【非特許文献4】T.Nagaiら、2002、「A variant of yellow fluorescent protein with fast and efficient maturation for cell−biological applications」、Nature Biotech.20:87〜90頁
【非特許文献5】G.H.Patterson & J.L.Schwartz、「A photoactivatable GFP for selective photolabeling of proteins and cells」、Science 297:1873〜1877頁、2002
【非特許文献6】Sawano & Miyawaki、Nucleic Acid Res.28:E78(2000)
【非特許文献7】M.V.Matzら、1999、Nature Biotech.17:969〜973頁
【非特許文献8】Yarbroughら、2001、Proc.Natl.Acad.Sci.98:462〜467頁
【非特許文献9】B.J.BevisおよびB.S.Glick、Nature Biotech.20:83〜86頁、2002
【非特許文献10】R.E.Campbellら、2002年6月11日、「A monomeric red fluorescent protein」、Proc.Natl.Acad.Sci.99(12):7877〜7882頁
【非特許文献11】Chudakov,D.M.ら、2003、Kindling fluorescent proteins for precise in vivo photolabeling」、Nat.Biotechnol.21、191〜194頁
【非特許文献12】J.M.Tavareら、2001、J.Endocrinol.170:297〜306頁
【非特許文献13】A.Miyawaki & R.Tsien、2000、Methods in Enzymology 327:472〜500頁
【非特許文献14】G.W.Gordonら、1998、Biophys.J.74:2702〜2713頁
【非特許文献15】J.N.Pelletier、J.N.、Remy,I.およびMichnick、S.W.1998、Protein−Fragment complementation Assays:a general strategy for the in vivo detection of Protein−Protein Interactions、J.Biomolecular Techniques 10:32〜19頁
【非特許文献16】Remy,I.、Pelletier,J.N.、Galarneau,A.& Michnick,S.W.2002、Protein Interactions and Library Screening with Protein Fragment Complementation Strategies、Protein−Protein Interactions:A Molecular Cloning Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press第25章、449〜475頁
【非特許文献17】Michnick,S.W.、Remy,I.、C.−Valois,F.X.、Vallee−Belisle,A.、Galarneau,A.& Pelletier,J.N.、2000、Detection of Protein−Protein Interactions by Protein Fragment Complementation Strategies、第A部および第B部、Methods in Enzymology 328:208〜230頁
【非特許文献18】J.N.Pelletier & S.W.Michnick.、1997、A Strategy for Detecting Protein−Protein Interactions in vivo Based on Protein Fragment Complementation、Protein Engineering、10(別冊):89頁)
【非特許文献19】J.N.Pelletierら、2000、Nature Biotech.17:683〜690頁
【非特許文献20】E.Moessnerら、2001、J.Mol.Biol.308:115〜122頁
【非特許文献21】I.Remyら、公表のために投稿中
【非特許文献22】K.M.Arndtら、2000、J.Mol.Biol.295:627〜639頁
【非特許文献23】I.Ghoshら、2000、J.Am.Chem.Soc122:5658〜5659頁
【非特許文献24】I.RemyおよびS.W.Michnick、1999、Proc Natl Acad Sci USA 96:5394〜5399頁
【非特許文献25】I.Remyら、1999、Science 283:990〜993頁
【非特許文献26】R.Subramaniamら、2001、Nature Biotech.19:769〜772頁、2001
【非特許文献27】I.RemyおよびS.W.Michnick、2001、Proc Natl Acad Sci USA、98:7678〜7683頁、2001
【非特許文献28】A.Galarneauら、2002、Nature Biotech.20:619〜622頁
【非特許文献29】C.−D.Huら、Molecular Cell 9:789〜798頁、2002
【非特許文献30】H.Yuら、公表のために投稿中
【非特許文献31】Ghoshら、J.Am.Chem.Soc 122:5658〜5659頁、2000
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【非特許文献44】Wall,M.A.ら、The structural basis for red fluorescence in the tetrameric GFP homolog DsRed、Nat Struct Biol 7、1133〜1138頁(2000)
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【非特許文献49】J.M.Huibregtse、M.Scheffher & P.M.Howley、Mol.Cell.Biol.13:775〜784頁、1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明の目的は、PCAのための蛍光タンパク質断片および突然変異断片を設計および操作する(designing and engineering)ための方法を提供することである。
【0031】
本発明のさらなる目的は、PCAに有用な多数の断片対および組成物を記載することである。
【0032】
本発明の別の目的は、無傷蛍光タンパク質の任意の有用な配列変異体を操作してPCA断片にして多様なスペクトル的性質および物理的性質を有するアッセイを生み出すことができると教示することである。
【0033】
本発明のさらなる目的は、有用な性質を与える広範囲の突然変異を導入されたPCA断片の組成物を提供することである。
【0034】
本発明のなおさらなる目的は、多色PCAを提供することである。
【0035】
本発明の利点は、多様な応用のために有用な一連の性質を有する「デザイナー」PCAを創製できることである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明はタンパク質の相補的断片を含む組成物に関し、前記断片が会合した場合に光学的に検出できるシグナルを発生する。
【0037】
本発明は蛍光タンパク質および突然変異の蛍光タンパク質から得られた断片にも関する。
【0038】
本発明は、野生型タンパク質の対応する断片と少なくとも1アミノ酸異なる、突然変異の蛍光タンパク質の相補的断片も記載する。
【0039】
本発明はさらに、配列番号20から配列番号1067で構成される群から選択される相補的断片に関する。
【0040】
本発明は、別個の分子にさらに融合している配列番号20から配列番号1067から選択される組成物も記載する。
【0041】
本発明は突然変異タンパク質の相補的断片を含む組成物も提供し、会合した場合に前記断片は光学的に検出できるシグナルを発生し、各断片は別個の分子に融合している。
【0042】
本発明はさらに、光学的に検出できるタンパク質からの分離した断片の再集合を含む、分子相互作用の検出のためのタンパク質断片の相補性アッセイに関し、断片の再集合は各断片に融合している分子ドメインの相互作用によって作動され、断片の再集合は他の分子プロセスから独立しており、前記再集合は前記光学的に検出できるタンパク質の活性の再構成によって検出される。
【0043】
本発明は生体分子相互作用を検出するための方法も提供し、前記方法は、(a)光学的に検出できる適切なタンパク質を選択する工程と、(b)前記光学的に検出できるタンパク質がタンパク質機能を可逆的に喪失するように効果的に切断化する工程と、(c)前記光学的に検出できるタンパク質の断片を別々に他の分子に融合または付着させる工程と、(d)前記タンパク質の断片に融合または付着している分子の相互作用を通じて前記タンパク質断片を再会合させる工程と、(e)結果として生じる光学シグナルを検出する工程とを含む。
【0044】
本発明は、蛍光タンパク質に基づくタンパク質断片の相補性アッセイの設計および操作にも関する。エクオレア、アントゾア(Anthozoa)およびアネモニア種から得られた蛍光タンパク質に基づいて、蛍光タンパク質を切断するための方法および特異的性質を有する突然変異断片を創製するための方法を記載する。最後に、緑色、黄色、シアン、青色または赤色シグナルを発生する有用な性質を有する突然変異を導入された多数の断片組成物および断片対を提供する。エクオレア蛍光タンパク質の非常に多数の突然変異体を用いて蛍光タンパク質PCAの詳細な実施例を示し、操作原理を実証し、全長タンパク質に有用な性質を与える突然変異が断片にも付与されうることを示す。本発明は多色PCAの構築のための方法および組成物も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1A】エクオレア蛍光タンパク質を切断できる領域を示す図であり、直鎖配列に対して切断を行うことができる6つの代替ループ(星印)を示す図である。
【図1B】エクオレア蛍光タンパク質を切断できる領域を示す図であり、タンパク質の三次元構造に対する部位(矢印)の特異的アミノ酸残基を示し、切断部位でのアミノ酸残基を野生型GFPに対して付番した図である。
【図2】蛍光タンパク質断片の相補性アッセイの設計および創製のための戦略を描いた図である。
【図3】A.ビクトリアの2つの変異体(GFP PCAおよびYFP PCA)に基づくPCAで達成された相対蛍光強度を描写する、生細胞におけるPCAの結果の顕微鏡写真を示す図であり、いくつかの異なるタンパク質−タンパク質複合体が一過性トランスフェクションの24時間後に蛍光顕微鏡で評価されたことを示す図である。
【図4】図1aおよび1bに描くようないくつかの代替断片化部位から発生した断片対に基づくPCAを示す図である。
【図5】2つのアミノ酸だけ異なるYFP PCAの2つの配列変異体を比較して特異的突然変異が再集合した断片の蛍光強度を増強することを示す図であり、相補的断片に融合しているタンパク質はプロテインキナーゼであるMEKおよびERKであることを示す図である。
【図6】YFP断片の折りたたみ(folding)を増強する突然変異を有するスーパー強化PCA(a欄)によって発生する明るいシグナルを非強化PCA(b欄)と比較して示した図であり、タンパク質−タンパク質複合体の細胞内位置も蛍光顕微鏡で観察でき、個別のYFP断片は蛍光を発することができない(cおよびd)ことを示す図である。
【図7A】最終PCAの蛍光強度を増強し、強烈蛍光PCA(IFP PCA)を創製し、かつ少量(ナノグラムからサブナノグラム)のDNAでタンパク質−タンパク質相互作用の検出を可能にするために断片に追加の突然変異を操作して導入する作用を示す図である。
【図7B】最終PCAの蛍光強度を増強し、強烈蛍光PCA(IFP PCA)を創製し、かつ少量(ナノグラムからサブナノグラム)のDNAでタンパク質−タンパク質相互作用の検出を可能にするために断片に追加の突然変異を操作して導入する作用を示す図である。
【図8】例えばp65/p50について本明細書に示すようなサイトカインによる生細胞の刺激に応答したタンパク質−タンパク質複合体の細胞内位置における変化を検出するために、蛍光タンパク質の突然変異断片に基づくPCAをハイコンテント・アッセイにおいて使用できることを示す図である。
【図9】突然変異の蛍光タンパク質断片に基づくスペクトル偏移PCAがタンパク質−タンパク質相互作用の存在下で青色シグナルを発生することを実証する図である。
【図10】蛍光タンパク質のC末端に対応する断片をタグ付けした単一融合タンパク質(この例ではp65)が第一タンパク質と相互作用するタンパク質に融合しているレポーター断片のアミノ酸配列に応じて同一細胞において2つの異なる蛍光PCAを生み出すことができる多色PCAを実証する図であり、多色PCAは同一細胞内の異なるタンパク質−タンパク質複合体の検出および定量を可能にする図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
蛍光タンパク質は蛍光シグナルの発生に外部の基質またはプローブを必要としないことから、PCAに特に魅力的である。しかし、蛍光タンパク質の独特な構造、および蛍光シグナルの発生に活性発色団の内部形成を必要とすることから、蛍光タンパク質は設計にある種の難題を提起する。本発明は、以下に記載する蛍光タンパク質の切断のための設計基準を包含する。
【0047】
図2に、蛍光タンパク質に基づくPCAの創製に含まれるステップを記載する。第1ステップは蛍光タンパク質およびそれに対応するDNA配列の選択である。本発明の主題である設計原理に基づいて任意の蛍光タンパク質をPCAに使用できる。蛍光タンパク質の選択は望みの波長、計装、および目的のアッセイに必要な感度に依存する。第1の実施例において、本発明者らは蛍光タンパク質をどの位置で切断するかを決定するために合理的設計を使用することを記載する。蛍光タンパク質は類似した構造を有するため、本発明者らはまずA.ビクトリアGFPを例に設計原理を説明する。
【0048】
GFPはαヘリックスを有する極めて珍しい特性をもつ、ストランド11本のβバレル(樽)であり、αヘリックスはβバレルの中心軸を通るスレッドである(Ormoら、Science 273:1392〜95頁、1996;F.Yangら、Nat.Biotechnol.14:1246〜5121頁、1996;R.Heimら、Nature 373:663〜64頁、1995)。図1Aはタンパク質の二次元像を示し、中心アルファ・ヘリックスに対してバレルのストランド11本を示し、バレル末端のアミノ酸位置に番号を付けている。図1Bはフォールドしたタンパク質の三次元構造を示し、ループの特異的残基の位置を付記する(すべての番号は野生型GFPに対するものである)。発色団はαヘリックスに付着しβバレルの円筒の中心にほぼ完全に埋まっている。βバレルおよび軸ヘリックスを築くために一次配列のほぼすべてが使用されている。発色団は天然タンパク質ではSer(Thr)−Tyr−Glyである残基65〜67から形成されたp−ヒドロキシベンジリデン−イミダゾリノンである(1、2)。発色団は環の1−および2−の位置を介してペプチド主鎖に付着している4−(p−ヒドロキシベンジリデン)イミダゾリジン−5−オンである。まず、GFPがほぼ天然の立体配座にフォールドし、次に残基65のカルボニルにGly67のアミドが求核攻撃した後に脱水することによってイミダゾリノンが形成する。最後に、分子状酸素が残基66のCα−Cβ結合を脱水素し、その芳香族基をイミダゾリノンと結合させる(3)。
【0049】
破壊されてはならない構造の明白な特性があることから、デフォルトでそのような領域の代替となるものを切断のために選択する。蛍光タンパク質PCAのための設計基準には以下がある。
【0050】
(1)バレル構造を破壊しないように個別のストランドの最末端にあるβターンまたはループに切断を作る。切断に好ましい領域を図1Aに示し、その領域に対応する特異的アミノ酸を図1Bの三次元構造に示す。
【0051】
(2)発色団はβバレル深くに埋もれている。発色団の効率的な形成を保証し、かつ剛性の立体配座と独特のスペクトル特性を有するGFPをもたらす他のアミノ酸の側鎖への配位との両方を維持するために発色団のコード配列を孤立させるのにこれが必要であると思われる。溶媒からの発色団の孤立は、βバレルに包埋することによって、そしてバレルの両端のバレル「キャッピング」構造によっても維持されている。これらのキャップには、(a)内部ヘリックスのN末端にあるキャップ:残基19〜30のストランド、残基133〜143のヘアピン、残基50〜57(これは内部ヘリックスのN末端である)、および(b)内部ヘリックスのC末端にあるキャップ:残基1〜10のヘリックス;残基77〜98のヘリックス;残基191〜197のストランドがある。これらの領域のいずれも破壊してはならない。
【0052】
これらの基準に基づいて、GFP構造の一次モデルに対して最適の切断領域を図1Aに示す。アミノ酸残基38〜40(領域1)、アミノ酸101〜103(領域2)、アミノ酸114〜118(領域3)、アミノ酸154〜160(領域4)、アミノ酸171〜175(領域5)、またはアミノ酸188〜190(領域6)を含むループの1つに切断を行うことができる。これらの領域内のアミノ酸の1つに切断を行うことができる。上記および米国特許第6270964号に記載の設計基準に従う限り、切断が行われる正確な残基は、断片がフォールドし活性構造を再構成する能力に重大な影響を及ぼさずに指名されたループ内で変動しうることが当業者に明白である。設計原理を証明するために、上に挙げた領域から選択された3つの異なるアミノ酸でのYFPの切断に基づくPCA構築の成功例(図4)を本発明者らは紹介する。
【0053】
PCAのためのタンパク質の切断は、本発明に記載したようなポリペプチド鎖の合理的解体に一般に基づくが、当業者に周知である多数の他の操作アプローチを使用できる。例えば、最適な対を検索するために断片のライブラリーを生み出すために5’エキソヌクレアーゼの使用に基づく代替アプローチを本発明者らは以前に提案した(Michnickら、米国特許第6270964号)。
【0054】
本発明において本発明者らは、目的の断片を増幅するためのPCRを用いてGFPについての全長cDNAの断片を生み出した。あるいは、標準的なオリゴヌクレオチド合成法を用いて、断片をコードするオリゴヌクレオチドを単純に合成できる。このアプローチはシアン蛍光タンパク質に基づくPCA(図9)を生み出すために採用された。好ましい実施形態において、生物学的応用および使用する計装に合った性質を有する蛍光タンパク質の突然変異断片が使用される。以下に詳細に記載するような突然変異断片を生み出すために、本発明者らは、再構成された場合に改変された蛍光性質または優れた折りたたみ(folding)もしくは成熟速度および安定性を有する断片を得る目的でGFPの部位特異的突然変異誘発を利用した。当業者に周知である多数のアプローチのうち任意のものによって部位特異的突然変異誘発を達成する(MM Ling & BH Robinson、1997、Approaches to DNA mutagenesis:an overview.Anal Biochem 254:157〜78頁)。そのような方法の選択された実施例が本明細書にもたらされているが、これらの実施例は本発明の実施を制限する意図はない。適当な方法には、ランダム突然変異誘発と定方向進化またはDNAシャッフリングのスキームとの組合せ(A.L.Kurtzmanら、2001、Advances in directed protein evolution by recursive genetic recombination:applications to therapeutic proteins、Curr Opin Biotechnol 2001年8月;12(4):361〜70頁;SW Santoroら、2002、Directed evolution of the site specificity of Cre recombinase、Proc Natl Acad Sci USA 2002 99:4185〜90頁;Z.Shaoら、1996、Engineering new functions and altering existing functions、Curr Opin Struct Biol 6:513〜8頁;S.Harayarna、1998、Artificial evolution by DNA shuffling、Trends Biotechnol 1998、16:76〜82頁)、アセンブリーPCRまたは遺伝子合成アプローチ(WP Stemmerら、1995、Single−step assembly of a gene and entire plasmid from large numbers of oligodeoxyribonucleotides、Gene 164(1):49〜53頁;RM Hortonら、1993、Gene splicing by overlap extension、Methods Enzymol.217:270〜9頁)、またはエキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼ分解消化による切断(M.KitabatakeおよびH.Inokuchi、1993、A simplified method for generating step−wise deletions using PCR、Gene 123:59〜61頁;S.Henikoff、1990、Ordered deletions for DNA sequencing and in vitro mutagenesis by polymerase extension and exonuclease III gapping of circular templates、Nucleic Acids Res 18(10):2961〜6頁)がありうる。特に強力な方法は多数の市販の突然変異誘発キット、例えばQuickChange(商標)システム(Stratagene)に例示されるような5’テンプレート介助長距離プラスミド重合に基づく。さらに、DNAシャフリングに基づく様々な形の定方向進化も完全に新規なPCAを生み出すために使用できる。
【0055】
蛍光タンパク質をコードする遺伝子のDNA断片F1およびF2がいったん発生すると、適当な発現ベクター中で、目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子と、それぞれの断片をフレーム内で個別に融合する。多様な標準発現ベクターまたは新規な発現ベクターを細胞の種類および望みの発現レベルに基づいて選択できる。そのようなベクターおよびそれらの特性は当業者に周知であろう。最適には、下の実施例1に記載するようなフレキシブル・リンカーを、蛍光タンパク質断片と目的遺伝子との間に融合して断片の相補を促進する。したがって、各発現ベクターは作動連結した目的遺伝子、フレキシブル・リンカー、および選択された蛍光タンパク質のF1またはF2のどちらかからなる融合タンパク質をコードする。図2に示すようにF1またはF2の一方を目的遺伝子に融合でき、融合の方向は目的遺伝子に対して5’または3’のどちらかでありうることから、4つの異なるDNA構築体が目的の任意の単一遺伝子に対して可能である。(蛍光タンパク質断片が構築体の5’末端に存在するならば開始メチオニン(atgコドン)が先頭になり、一方でその断片が構築体の3’末端に存在するならば、開始メチオニン(atgコドン)が目的遺伝子の先頭にくることに留意するべきである)。したがって、本発明は天然開始メチオニンを有するF1フラグメントだけではなく、構築体の3’末端にF1断片が存在すべき場合は開始メチオニンを除去するように修飾された同一F1断片にも及んでいる。同様に、本発明は自然には開始メチオニンで始まらないF2断片だけではなく、F2断片が構築体の5’末端に存在すべきである場合開始メチオニンを含むように修飾された同一のF2断片にも及ぶ。
【0056】
タンパク質AおよびBの対についてのPCAを生み出すために、相補性蛍光タンパク質断片F1およびF2に別々に融合しているAおよびBをコードする構築体を細胞に同時トランスフェクトする。タンパク質AおよびBが相互作用するならば、断片F1およびF2は極めて近接し、その状態でそれらの断片はフォールドして活性発色団を再構成できる。次に蛍光シグナルを、蛍光スペクトロスコピー、フロー・サイトメトリー(FACS)、または顕微鏡観察を含めた多様な標準法によって測定できる。当業者に周知の計装を用いてこれらの方法のすべてを自動、ハイスループット形式で使用することができる。下に記載するように、2つ以上の構築体対を同時に使用することによって、新規の多色蛍光PCAを生み出すこともできる。最後に、DNAレベルでPCAの操作および構築を実施した後、そのうえ細胞に融合タンパク質を生成させるのは得策であるが、必須ではない。例えば融合タンパク質を当業者に周知のin vitro発現法を用いてin vitroで作製できる。さらに、in vitroのPCAについては融合ポリペプチドをペプチド合成によって、または目的分子をコードするペプチド断片の連結によって合成的に生成させて蛍光タンパク質断片とのペプチド融合体を創製することが可能である。
【0057】
様々な海洋生物由来蛍光タンパク質の間の構造相同性は、GFPについて記載されたのと同じ設計基準を最近記載されたディスコソマおよびアネモニアから蛍光タンパク質のような他の蛍光タンパク質に応用するのを可能にする。したがって、GFP変異体以外に単量体化赤色蛍光タンパク質(mRFP1、DsRed由来)の断片および蛍光タンパク質KFP1の断片に基づく追加のPCAを提示する。KFP1は、アネモニア・スルカータ(Anemonia sulcata)からの蛍光タンパク質「asCP」に基づいて特定波長で発色団に照射することによって一時的に活性化(キンドル)されうる。(Chudakov,D.M.,Belousovら、2003、Nat Biotechnol 21、191〜194頁)。両方の場合で蛍光タンパク質はアミノ酸レベルでGFPのホモログである。
【0058】
本発明の主題である赤色偏移蛍光PCAは、緑色チャネルにおいて重大な自己蛍光が存在する生物学応用に特に有用である。例えば、赤色偏移PCAはフロー・ソーティングを用いたcDNAライブラリー・スクリーニングへの応用に特に有用であろう。この場合RFPのPCAによって検出されるタンパク質−タンパク質複合体を発現する陽性細胞集団はバックグラウンド集団から転移し、陽性細胞のフロー・ソーティングが容易にできるようになる。
【0059】
ディスコソマ由来DsRedはGFPの構造ホモログであることが実証された。DsRedはGFPと本質的に同一の発色団を有する28kDaのポリペプチドであり、発色団は内部Gln−Tyr−Gly(残基66〜68)トリペプチドから自己触媒的に形成する。DsRedはA.ビクトリアGFPに構造的に著しく類似している。実際、DsRedの全体的なフォールドはGFPと事実上同一であり、中心に同軸のヘリックスとバレル末端にアルファ・ヘリックスのキャップとを有する、ストランド11本のわずかに不規則な(ベータ・カンとして記載される)ベータ・バレルからなる。本発明の主題である新規な断片は、RFPの構造の調査(Wall,M.A.ら、「4分割GFP相同DsRedにおける赤色蛍光のための構造的基礎」、Nat Struct Biol 7、1133〜1138頁(2000))およびGFPの切断のために上記の合理的設計基準を用いることに直接基づく。A.ビクトリアGFPの配列とアラインメントを作成したmRFP1のアミノ酸配列を表5に示し、その表に代替切断部位のアラインメントを示す。本発明は、以下の代替切断部位でのmRFP1の切断によって発生した核酸配列およびポリペプチド断片を包含する:アミノ酸38〜40(領域1);アミノ酸100〜102(領域2);アミノ酸113〜117(領域3);アミノ酸152〜156(領域4);アミノ酸167〜171(領域5);アミノ酸182〜184(領域6)。グルタミン酸39(E39)、アスパラギン酸101(D101)、アスパラギン酸115(D115)、グルタミン酸153(B153)、アスパラギン酸169(D169)、またはリジン184(K184)について特異的アミノ酸残基の位置を示す。全長mRFP1ポリペプチドをコードする核酸配列に対する切断部位を表6に示す。
【0060】
【表4】


【0061】
【表5】

【0062】
【表6】

【0063】
キンドリング蛍光タンパク質(KFP1)に基づくPCAも本発明の主題である。アネモニア・スルカータから得られた蛍光タンパク質の変異体であるKFP1の場合、代替切断部位は表7に示すようにGFPに対するKFP1のアラインメントに基づく。表8はKFP1の全長ヌクレオチドおよびアミノ酸配列に対する切断部位を示す。
【0064】
【表7】

【0065】
【表8】

【0066】
再集合した断片が、その断片が由来する無傷レポーターの活性を再創製できることがPCAの特性である。例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)に基づくPCAについては、再集合した断片は全長タンパク質に類似したやり方でメトトレキサートと結合でき(I.Remy & S.W.Michnick、1999、Proc Natl Acad Sci USA、96:5394〜5399頁)、さらにPCAに使用した場合、無傷DHFRタンパク質の性質に影響する突然変異はDHFR断片に対して類似した性質を与える(J.N.Pelletier、F.−X.C.−Valois & S.W.Michnick、1998、Proc Natl Acad Sci USA 95:12141〜12146頁)。同様に、PCAに使用されたβ−ラクタマーゼ断片は無傷β−ラクタマーゼタンパク質に類似した反応速度でセファロスポリン基質を開裂でき、無傷タンパク質のモルテン・グロビュール(molten globule)構造を破壊する突然変異は再集合した断片の酵素的性質を向上させる(A.Galarneau、M.Primeau、L.−E.Trudeau & S.W.Michnick、2000、Nature Biotechnol.20:619〜622頁)。
【0067】
蛍光タンパク質のスペクトル的性質がコア発色団に対するアミノ酸の方向および近接に決定的に依存することから、無傷蛍光タンパク質のスペクトル的性質に影響する突然変異が、タンパク質断片に操作されて導入された場合に同一の作用を有することは明白ではない。蛍光タンパク質のスペクトル的性質に影響する突然変異を、タンパク質断片の相補性アッセイに操作して導入できるならば、様々なスペクトル的性質を有する幅広い種類のPCAを生み出すことが可能であろうと本発明者らは推論した。さらに、異なる色のPCAを入手できることは生物学およびバイオテクノロジーにおける多様な応用のためのデザイナーPCAの操作を可能にするであろう。
【0068】
この原理を実証するために本発明者らはA.ビクトリア緑色蛍光タンパク質の数多くの変異体に基づくPCAを創製し、哺乳動物細胞においてタンパク質−タンパク質相互作用に関与することが知られているいくつかの異なるヒト遺伝子との融合構築体を創製することによってそれらのPCAを試験した。最初の実施例において、緑色蛍光PCA(GFP PCA)を創製するために強化緑色蛍光タンパク質(表3の「EGFP」)を切断することによってPCA用の断片を発生させた。次に、GFP断片をさらに突然変異させて、表2において「10C」と名付けた黄色蛍光タンパク質(YFP)変異体に対応する突然変異S65G/V68L/S72A/T203Yを有する新規な断片を創製した。これは表3にあるように強化黄色蛍光タンパク質(「EYFP」)とも称される。無傷GFPではS65G/V68L/S72A/T203Y突然変異の導入によってそれぞれ514nmおよび527nmの最大励起および最大発光を有するタンパク質が生じ、そのタンパク質では発光団は野生型GFPよりも4倍速く成熟し、細胞生物学応用のための明るいシグナルを発生する。本発明者らはこのGFP変異体をPCAに使用できるかどうかを決定しようと努め、ヒト細胞において相互作用することが以前に報告された全長タンパク質に融合している断片を一過性に同時トランスフェクトした細胞における、GFP PCAに対するこのYFP PCAの相対強度を評価しようと努めた。この分析を下の実施例1に詳細に記載する。
【0069】
本発明の主題である多様な断片対の有用性を実証するために、本発明者らは図1Bに示した切断部位のうち3つを選択し、様々な遺伝子/断片方向(NN、NC、CNおよびCC)で公知の相互作用性タンパク質に融合しているYFP断片に基づいたPCAを構築した。下に記載する実施例2において、異なる切断部位がバックグラウンドに対して良好なシグナルを有する代替PCAの構築に実際に使用できることを結果は示した。
【0070】
突然変異断片に基づくPCAの操作の2つのさらなる実施例において、生理学的温度で全長YFPの明るさを増強することが示された突然変異がPCA用の断片に操作されて導入された場合に類似した性質を与えるかを決定するために、本発明者らはYFP断片をさらに突然変異させた。まず、本発明者らは2つの追加の突然変異S64LおよびM153TをYFP[1]に操作して導入した。S64LおよびM153T突然変異の両方は全長緑色蛍光タンパク質(Tsien、Ann.Rev.Biochem.)の折りたたみ(folding)を改善し、無傷全長タンパク質に強化した蛍光を与えた(B.P.Cormackら、Gene173:33〜38頁)。これらの突然変異はSEYFPとして公知であるYFP変異体の構成要素である(表3参照)。下に詳細に示す実施例3において、本発明者らはYFP PCAと新規なSEYFP PCAとを直接比較した。
【0071】
PCA用の突然変異断片を操作する、なお別の実施例において、本発明者らはSEYFPの断片1に突然変異F46Lを導入し、本発明者らがIFP[1]と称した新規な断片を発生させた。本発明者らはYFPの断片2に突然変異VI63AおよびS175Gを導入し、新規な断片IFP[2]を生み出した。これらの突然変異は、表3においてSEYFP−F46L(「Venus」)として知られているYFP変異体の構成要素である。結果は、蛍光タンパク質の突然変異断片を操作することによって高度強烈蛍光PCA(highly intense fluorescent PCA)(IFP PCA)を操作できることを実証している。
【0072】
本発明の4番目の実施例において、本発明者らは突然変異ポリペプチド断片を創製することによって特定の望みのスペクトル的性質を有するPCAを創製することが可能であることを実証した。青色領域へのスペクトル偏移を与える突然変異を有する断片を合成することによって、本発明者らはシアン蛍光PCA(CFP PCA)を創製した。本発明は、遺伝子工学によって様々な強度およびシグナル成熟の特徴を有する緑色、黄色、青緑色、青色、シアン、橙赤色および赤色変異体を含めた広域スペクトルのPCAを生み出すための断片を提供する。
【0073】
本発明の最終実施例において、本発明者らは蛍光レポーターの単一断片が、その断片が対になる断片のアミノ酸配列に応じて同一細胞内で異なる蛍光色を発生する多色PCAを実証した。
【0074】
[実施例1]
蛍光タンパク質断片の相補性アッセイの創製およびPCA用突然変異断片の発生
本発明者らは、A.ビクトリアGFPから開始し異なるスペクトル的性質を有する2つのPCAを創製しようとした。まず、哺乳動物におけるコドン最適化版のGFP(pCMS−EGFP、Clontech)からのPCRによってGFP断片を発生させた。GFP[1]はGFPのアミノ酸1から158に対応し、GFP[2]はGFPのアミノ酸159から239に対応する。次に、PCRによりGFPの断片1にEYFP特異的突然変異S65G、S72Aを、かつGFPの断片2に突然変異T203Yを導入し、それぞれ断片YFP[1]およびYFP[2]をもたらすことによってGFPの黄色変異体(YFP PCA)をコードする断片を創製した。
【0075】
断片GFP[1]、GFP[2]、YFP[1]、およびYFP[2]を、エプスタイン・バーウイルス(EBV)の複製起点(oriP)を組み入れるように予め修飾された哺乳動物発現ベクター(pcDNA3.1Z、Invitrogen)にサブクローニングした。oriPはHEK293E細胞(293−EBNA、Invitrogen)のようなEBNA1遺伝子を発現する細胞系中でこれらの修飾ベクターのエピソーム複製を可能にする。追加的に、これらのベクターはSV40の起点を依然保持し、SV40ラージT抗原を発現する細胞系(例えばHEK293T、JurkatまたはCOS)中でも同じくエピソームの発現が可能である。
【0076】
GFP PCAに対する操作されたYFP PCAの活性および相対シグナル強度を試験するために、以前に哺乳動物細胞において相互作用することが示された3対のタンパク質についてPCAが創製された。これらには腫瘍抑制タンパク質p53の自己相互作用(N.D.Lakin & S.P.Jackson、Oncogene 18:7644〜7655頁、1999)、パピローマウイルスE6タンパク質とp53との相互作用(B.A.Werness、A.J.Levine & P,M.Howley、Science 248:76〜79頁、1990)、およびE6タンパク質と、E6およびp53の相互作用を仲介するタンパク質であるE6APとの相互作用がある(J.M.Huibregtse、M.Scheffner & P.M.Howley、Mol.Cell.Biol.13:775〜784頁、1993)。p53、E6およびE6APに対する完全コード配列を、配列が検証された全長cDNAからのPCRによって増幅した。生じたPCR産物を吸引ろ過(MultiScreen PCR、Amicon)によって清浄にし、適当な制限酵素で分解消化して特異的クローニングを可能にし、アミノ酸10個のペプチド(Gly.Gly.Gly.Gly.Ser)2(配列番号19)をコードするフレキシブル・リンカーを介してGFP[1]、YFP[1]、GFP[2]またはYFP[2]の5’または3’末端の一方にフレーム内融合した。目的遺伝子とレポーター断片との間にフレキシブル・リンカーを使用することによって、融合の方向および配置が蛍光タンパク質断片を極めて近接させるのに最適であることが確実となる(J.N.Pelletier、F.−X.C.−Valois & S.W.Michnick、1998、Proc Natl Acad Sci USA 95:12141〜12146頁)。対になった構築体の方向は以下のとおり:F1−リンカー−p53とF2−リンカー−p53、F1−リンカー−E6とE6AP−リンカー−F2、およびF1−リンカー−E6とF2−リンカー−p53のとおりであり、ここでF1およびF2はGFPまたはYFPどちらかの断片であった。組換え構築体からのDNAを、Beckman FXロボット・ワークステーション(Beckman Coulter、フラートン、カリフォルニア州)で作動するQiagen Turbo BioRobot Prepキット(Qiagen、チャッツワース、カリフォルニア州)を用いて単離した。単離したDNAを定量し、次に濃度50ng/μlに対して基準化した。
【0077】
トランスフェクションの24時間前にHEK293E細胞を、ポリリジンでコートした24穴平板に蒔き(1穴あたり細胞20000個)、次にFugeneトランスフェクション試薬(Roche Diagnostics、インディアナポリス、インディアナ州)を製造業者の勧めに従って用いてDNA0.5マイクログラムを同時トランスフェクトした。24時間発現させた後に、細胞をPBSで1回洗浄し、HYQ−FITCフィルター・キューブを備えるニコンTE−2000顕微鏡で観察した(励起:460〜500nm、発光:505〜560nm、ダイクロイック・ミラー:505LP)。CoolSnap HQ CCDカメラで画像を獲得した。図3は、p53/p53、E6/E6APおよびE6/p53の相互作用についてのGFP PCAに対するYFP PCAの蛍光顕微鏡観察結果を示す。再構成されたGFPまたはYFPシグナルを明瞭に見ることができ、複合体の細胞内位置がそれらの公知の位置に一致することを決定できた。しかし、YFP PCAのシグナルは3つのタンパク質−タンパク質複合体すべてについてGFP PCAシグナルよりも視覚的に明るく、全長タンパク質のシグナル強度を増強することが以前に示されたYFP突然変異が再集合した断片の強度の増強にも有効であったことが実証された。さらに、YFP PCAの最大励起および最大発光は無傷蛍光タンパク質YFP 10cとほぼ同等であり(表2)、これは相補的断片が折りたたみ(folding)でき、無傷タンパク質から発生するのと同じ性質を実質的に有する発色団を発生できることを示唆している。
【0078】
[実施例2]
蛍光タンパク質における代替切断部位
代替切断部位から発生する蛍光タンパク質断片(本発明の主題である)がPCAで使用できることを実証するために、基本となる蛍光タンパク質PCAを黄色(YFP)蛍光タンパク質について創製した(図4参照)。全長タンパク質(Pdk2、14−3−3σ、ならびにNFκBヘテロ二量体の構成要素であるp50およびp65)をコードするcDNAを、相補性YFP断片であるYFP[1]およびYFP[2]のNまたはC末端の一方に融合させた。これらの断片は、図1aおよび図1bにGln157、Lys158またはAsp173と示す位置での全長タンパク質の切断に対応する。ここで、表示されたアミノ酸残基はYFP[1]と称されるN末端レポーター断片のC末端を表す。14−3−3/14−3−3二量体の形成を、各PCA断片対がタンパク質−タンパク質複合体の検出を可能にする能力を評価するために使用した。Pdk2−YFP[1]/Pdk2−YFP[2]をPCA陰性対照として使用した。HEK293E細胞に各構築体対100ngを一過性トランスフェクトし、その48時間後にMolecular Devices Gemini XSプレートリーダーを用いて総蛍光を評価した。各棒線は3回の測定の平均蛍光を表し、誤差の棒線は95%信頼限界を表す。モックトランスフェクトされた細胞(DNAおよび単一DNA構築体を含まない)を黄色で示す。様々な断片の方向および組合せを試験した。それは、複合体形成の最適な検出が方向に依存するおそれがあるからである。この実施例において、Lys158およびAsp173の切断部位はすべての可能性のある断片の組合せからの14−3−3/14−3−3複合体の検出を可能にした。Gln156切断部位はNCおよびCC方向の両方で14−3−3/14−3−3複合体の検出を可能にした。断片/遺伝子方向は以下のとおりであった:
NN=14−3−3−YFP[1]/14−3−3−YFP[2]、
NC=14−3−3−YFP[1]/YFP[2]−14−3−3、
CN=YFP[1]−14−3−3/14−3−3−YFP[2]、
CC=YFP[1]−14−3−3/YFP[2]−14−3−3)。
これらの結果は、本発明に組み込まれているタンパク質工学原理の有用性を実証し、様々な断片がPCAに有用であることを示した。本発明の主題である組成物にはPCAに有用な広範囲の突然変異を組み込まれた様々な断片対がある。
【0079】
[実施例3]
生物学応用のためにYFP PCAよりも明るいシグナルを有するスーパー強化YFP PCA(SEYFP−PCA)および強烈蛍光PCA(IFP PCA)を発生する突然変異断片
PCAのスペクトル的性質が突然変異断片を操作することによって影響されうることをさらに実証するために、本発明者らはまずPCRで操作してYFP[1]にSEYFPのF64LおよびM153T突然変異を導入し、新規な断片SEYFP[1]を創製した。実施例1に記載したようにサブクローニングを行った。プロテインキナーゼMEKおよびERKと相互作用させるために融合構築体を上に記載するように調製した。配列決定により確認された各レポーター断片における特異的突然変異を付記し、表2および3のようにwtGFPに対して示した。
【0080】
蛍光強度の定量測定のために、トランスフェクションの24時間前に96穴ポリリジンコート平板の各穴にHEK293E細胞15000個を蒔いた。FuGeneトランスフェクション試薬を用い、製造業者の勧める条件で各穴あたり総量100ngのDNAを細胞にトランスフェクトした。各融合構築体の量は各構築体50ngから各構築体わずか0.1ngまで変動し、残りのDNAを空の「担体」ベクターで供給した(例えば融合構築体DNAの総量2ngに対して担体DNA98ngまで)。すべてのトランスフェクションを3回実施した。トランスフェクションの24時間または48時間後に細胞を1:300に希釈したHoescht33342(Molecular Probes、ユージーン、オレゴン州)で10分間染色してからダルベッコリン酸緩衝生理食塩水で数回洗浄し、次に少量のハンクス緩衝塩類溶液少量を重層した。90分間37℃で温置した後に、各穴についての平均蛍光強度のデータをSpectraMax Gemini XSプレートリーダー(Molecular Devices)で励起波長485nm、発光527nmおよびカットオフ515nmを用いて獲得した。各試料PCAについて、平均蛍光強度を3回の測定から計算した。蛍光の相対増加倍率を試験PCAの平均蛍光強度を陰性対照の平均蛍光強度に対して基準化することによって決定した。
【0081】
図5に示すようにMEK/ERKタンパク質−タンパク質複合体を2つの蛍光PCAのどちらでも検出できた。しかし、YFP[1]の代わりにSEYFP[1](F64LおよびM153T)を使用すると、シグナル強度は2から4倍増強した。この特定の突然変異YFP PCA(ヒストグラムの左側)で、わずか合計2ngの「試験」DNAでバックグラウンドを超えるシグナルを容易に検出できた。さらに、YFP PCA(ヒストグラムの右側)用のDNA10ngはほとんど検出できるシグナルを与えなかったが、同量のSEYFP PCA用のDNAはバックグラウンドのほぼ4倍のシグナルを与えた(ヒストグラムの左側)。この実施例は、無傷タンパク質の強度を増強することが知られている突然変異が再集合した断片に類似した性質を与えることを実証している。
【0082】
図6は、図5と同じPCAの蛍光顕微鏡像を示し、SEYFP[1]の追加の突然変異(a欄)が蛍光顕微鏡によって検出されるシグナル強度を増強し、タンパク質−タンパク質複合体の細胞内位置の識別を改善できることを実証している。HEK293E細胞に(担体DNA90ngを加えた)各融合構築体5ngをトランスフェクトした。露出時間20msおよびFITCフィルターセットを用いたDiscovery−1自動画像獲得システムを用いて48時間後に画像を獲得した。YFP PCA(b欄)でもタンパク質−タンパク質複合体を容易に視覚化できたが、強度は低かった。
【0083】
これらの構築体の断片1は無傷蛍光タンパク質において発色団を形成するアミノ酸の3つすべてを含むことから、本発明者らは単一突然変異断片YFP[1]およびYFP[2]も試験し個別の断片が蛍光シグナルを発生できないことを確認した。図6のc欄およびd欄については、表示された突然変異を有する単一融合構築体からのDNA50ngをトランスフェクトした。左側の欄は蛍光像を、右側の欄は細胞のDAPI染色を示し、撮像された視野に細胞が存在することを実証している。タンパク質Pdk2との融合体として発現された断片単独のどちらも蛍光シグナルを与えなかった。6000を超えるアッセイのその後の分析において、本発明者らが採用した実験条件では蛍光PCAシグナルの発生は相互作用する分子に依存することが分かった。本発明者らが蛍光分子をタンパク質にタグ付けしているのではないことを実証していることから、これは本発明の重要な特徴である。それどころか、本発明者らはそれ自体が蛍光を発しないポリペプチド断片でタンパク質をタグ付けしている。蛍光シグナルはレポーター断片が融合している分子の相互作用に反応した場合にのみ発生する。目的分子の相互作用によってレポーター断片は極めて近接し、断片が一緒にフォールドし蛍光シグナルを発生することのできる活性構造になることが可能になる。
【0084】
図7aおよび7bに、生物学応用にいっそう高い感度が可能になるさらに別の新規な突然変異の蛍光タンパク質PCAの創製を示す。表3においてSEYFP−F46L(Venus)と称するYFP変異体に基づいて突然変異を選択した。これらの突然変異は無傷タンパク質において蛍光シグナルの成熟を促進することが示されている(T.Nagaiら、2002、「A variant of yellow fulorescent protein with fast and efficient maturation for cell−biological applications」、Nature Biotech.20:87〜90頁)。PCR突然変異誘発がSEYFP[1]に追加の突然変異F46Lを、かつYFP[2]にV163AおよびS175Gを組み入れるために採用され、本発明者らがIFP[1]およびIFP[2]と称した新規な断片が生じた。
【0085】
MAPキナーゼ・シグナル伝達タンパク質であるMEKおよびERKの間でのタンパク質−タンパク質複合体の形成を、IFP[1]のN末端にMEK1を融合させIFP[2]のC末端にERKを融合させることによる新規なIFP PCAで評価した。図7aおよび7bに示すように、1穴あたり総DNA100ngをトランスフェクトし、PCAに提供されるDNAの量を100ngから100pgまで変動し、残りのDNAを空の「担体」ベクターによって供するタイトレーション系列を実施した。48時間後に蛍光画像をHYQ−FITCフィルター・キューブを用いたSPニコン蛍光顕微鏡で獲得した(励起:460〜500nm、発光:505〜560nm、ダイクロイック・ミラー:505LP)。CoolSnap HQ CCDカメラで、表示された露出時間(ms)で画像を獲得した。MEK/ERK PCAの各希釈についての総蛍光も蛍光プレートリーダーで定量した。各希釈について3回の測定を行い、平均蛍光値を陰性対照PCAの平均蛍光に対して基準化し、図7bに示すように陰性対照からの増加倍率を決定した。YFP断片への追加の突然変異の導入は、蛍光シグナルを大きく増強し、その蛍光シグナルは0.1ng(100pg)のDNAでも視覚化でき(図7a)、定量できた(図7b)。IFP PCAについてのDNAレベルは陰性対照に比べて有意なシグナルを生成した(1.5倍の増加)。対照的に、同じ蛍光強度をYFP PCAで生成するには10ngのDNAが必要であった。
【0086】
タンパク質−タンパク質相互作用の細胞内位置を同定できることから、ハイコンテント・スクリーニング(high−content screening)が可能になる。例えばシグナル伝達経路内のタンパク質の輸送を観察できる。例えば、本発明者らはp65/p50のNFκB転写複合体のサイトカイン誘導性移行を研究するために、上に記載したIFP PCAを用いたこのアプローチを使用した(図8)。このタンパク質−タンパク質複合体は腫瘍壊死因子に反応して生細胞の細胞質から核に移行する。一過性トランスフェクトした細胞においてp65およびp50を相補性突然変異断片IFP[1]およびIFP[2]でそれぞれタグづけした場合、トランスフェクションの48時間後に未刺激細胞の細胞質に主として蛍光シグナルを観察できる。TNF反応性HEK細胞をTNF−アルファで処理後30分以内に蛍光タンパク質−タンパク質複合体は核に専ら移動する。
【0087】
上の実施例は、PCAに特定の望みの性質を与えるために操作して突然変異を蛍光タンパク質断片に導入できることを実証している。従って、本発明者らは緑色蛍光タンパク質の以前に記載された突然変異を組み入れて、蛍光タンパク質の新規な断片を多数生み出した(表2および表3参照)。これらの突然変異は操作され、図1に示し上の明細に記載した部位で蛍光タンパク質が切断することによって発生した断片に導入された。追加的に、本発明者らはサンゴ蛍光タンパク質(表4)、DsRedから得られた単量体赤色蛍光タンパク質(mRFP1)(表5および表6)およびアネモニア・スルカータから得られたキンドリング蛍光タンパク質(KFP1)(表7および表8)の相同切断部位で新規な断片を生み出した。新規な断片の配列を本発明の請求項の前の付表に示し、配列リストの配列番号20〜1067として表す。これらの配列は請求された本発明の主題である。一般的な用語では本発明者らはこれらを「突然変異断片」と呼ぶ。本発明のために、「突然変異断片」は野生型cDNAまたはタンパク質に対して1つまたは複数のヌクレオチドまたはアミノ酸変化を有する蛍光タンパク質の断片である。
【0088】
[実施例4]
スペクトル偏移PCA
緑色蛍光シグナルおよび黄色蛍光シグナルを発生するPCAの多数の例が上に記載され実証された。本明細書に記載された本発明は突然変異断片のアミノ酸配列に応じて多様なスペクトル的性質を発生するPCAを可能にする。この原理をさらに実証するために、シアン蛍光タンパク質の断片に基づくPCAを創製してタンパク質−タンパク質相互作用によって発生した青色蛍光を実証した(図9)。CFPの断片に対応する2つのオリゴヌクレオチドをBlue Heron Biotechnology(ボセル、ワシントン州)で合成した。結果として生じた断片をPCRで増幅して、pcDNA3に基づく発現ベクターにクローニングするために制限部位および10aaのフレキシブル・リンカーを付着させ(ECFPのaa1〜158とコードする)CFP[1]または(ECFPのaa159〜239をコードする)CFP[2]を含むベクターをもたらす。ここでCFPは表3にECFPとして示したアミノ酸配列を有する。タンパク質Pdk2および14−3−3aをそれぞれCFP[1]およびCFP[2]のN末端に融合させ、一方でNFκBヘテロ二量体のp50サブユニットおよびp65サブユニットをCFP断片のC末端に融合させた。構築体対14−3−3σ/14−3−3σ、p65/p50およびPdk2/Pdk2陰性対照をHEK293T細胞に一過性トランスフェクトし、48時間後に蛍光顕微鏡観察を行った。蛍光画像を、Chroma CFPフィルター(励起:426〜446nm、発光:460〜500nm、ダイクロイックミラー:455LP)を用いたSPニコン蛍光顕微鏡で獲得した。画像を図8に示すようにCoolSnap HQ CCDカメラで露出時間1〜5秒で獲得した。結果は、無傷蛍光タンパク質においてスペクトル偏移を引き起こす突然変異を操作してPCA用の断片に導入して、生物学応用への有用性を有する青色蛍光シグナルを発生するPCAを生じることができることを示す。
【0089】
[実施例5]
多色PCA
1組の蛍光タンパク質PCAを入手できることは、多様な生物学、バイオテクノロジー、創薬および診断応用のための多色PCAの構築を可能にする。そのような多色PCA本発明の別の態様である。
【0090】
例えば、2、3、4またはそれを超える二分子イベントを同時に検出するために「一般的」F2ポリペプチド断片を多数の異なるF1突然変異断片と組み合わせることができよう。F2によって相補された場合にF1が発色団の形成に必要なすべてのアミノ酸残基を含むというやり方で蛍光タンパク質を切断することによってこれを達成できる。次にF1の2つ以上の突然変異断片を創製する。例えば緑色、黄色、シアン、青色または赤色シグナルのいずれかを再構成できる突然変異F1断片を生み出すことができる。F2が分子Aに融合しており、突然変異F1断片はそれぞれ分子B、C、D、EおよびFに別々に融合しているならば、AとB、AとC、AとD、AとEおよびAとFの相互作用を、断片の相補によって発生する蛍光シグナルを5つの異なる波長で試験することによってすべて同時に試験できる。
【0091】
本発明者らは、モデル系としてNFκBのp65サブユニットがp50サブユニットと、およびタンパク質IkBαとも複合体を形成できることを用いて生細胞における多色PCAの原理を実証した。休止細胞においてIkBαはNFkBに結合し細胞質にその複合体を保有する。このように、p65はp50およびIκBαとも細胞質タンパク質−タンパク質複合体を形成する。本発明者らはHEK293T細胞に3つのPCA構築体CFP[1]−p50、CFP[2]−p65およびIκBα−YFP[1]を同時トランスフェクトした。Chroma CFPフィルター(励起:426〜446nm、発光:460〜500nm、ダイクロイックミラー:455LP)およびFITCフィルター(励起:460〜500nm、発光:505〜560nm、ダイクロイックミラー:505LP)を用いたSPニコン蛍光顕微鏡で蛍光画像を獲得した。CoolSnap HQ CCDカメラで16ビットモノクロ画像を獲得した。各PCAについてのCFPおよびFITC画像を次に疑似着色し、Metamorphソフトウェア(Molecular Devices)を用いてオーバーレイした。p50とp65との間にタンパク質−タンパク質複合体が形成するならば、CFP[1]断片はCFP[2]断片と相補して青色蛍光を生成するはずである。あるいは、IkBαとp65との間にタンパク質−タンパク質複合体が形成するならば、YFP[1]断片はCFP[2]断片と相補して黄色蛍光を生成するはずである。図10に示すように、p65/p50(青色)複合体およびIkBα/p65(黄色)複合体の両方を予想の通り細胞質から検出できた。明るい黄色(ほぼ白色)の細胞質染色パターンを示す細胞はp65/p50複合体およびIkBα/p65複合体の両方を発現している。多色PCAを構築できることによって、同一細胞内で多数の別個のタンパク質−タンパク質複合体を検出および定量することが可能になる。
【0092】
蛍光タンパク質PCAの追加の応用
本発明の多数の実際的な応用には、生細胞、細胞溶解物、またはin vitro形式におけるハイコンテント・アッセイおよびハイスループット・アッセイがある。本発明の応用にはアゴニスト、アンタゴニストおよび阻害剤による生細胞での経路活性化および経路「スイッチング」の検出がある。ある細胞内区画から別の区画へのタンパク質の移行または輸送を追跡できる。もしもタンパク質Aが当初細胞膜にあるタンパク質Bに結合し黄色蛍光シグナルを発し、次に細胞核に移動してタンパク質Cに結合しシアン蛍光シグナルを発するならば、黄色対シアンの比を移行イベントの活性化の検出器として使用できる。さらに、診断およびナノテクノロジーにおいて蛍光タンパク質PCAの多数の応用がある。例えば、各突然変異F1断片を、異なる抗体との融合体として固相表面アレイに結合させることができ、これを試料中の特異的抗原の存在を検出するために使用できよう。多色PCAの応用には、生物戦物質の迅速多色診断がある。そのような多色PCAは本発明の主題である新規な突然変異断片によって可能となる。
【0093】
組織培養平板、マイクロタイター平板、またはスライド形式を含めた多様な形式で細胞をin vitro研究できる。PCA構築体を保有する細胞をin vivoでも研究できる。例えば特定のPCAを安定発現する適当な培養細胞を生動物中の腹水として増殖させるか、またはヌード・マウスに導入して腫瘍を形成させることができる。あるいは、PCA構築体を保有するトランスジェニック・マウスを作製することができる。動物内のタンパク質−タンパク質複合体を次に例えばXenogen(アラミダ、カリフォルニア州)またはAnti−Cancer(サンディエゴ、カリフォルニア州)によって供給されるような動物全身画像化システムによって研究できる。本明細書に提示したすべてのPCA、ならびに様々な強烈黄色蛍光および赤色蛍光PCAはin vivoのPCAに特に有用であろう。in vivoのPCA応用には、動物による薬物の消費または注射に対してin vivoで反応するPCAを生み出す能力がある。前臨床薬物開発への応用には、血液または尿を採取せずに生動物においてADME研究(薬物の吸収、分布、代謝または排泄)を実施する能力がある。例えば、薬物が生動物の細胞内で特異的タンパク質−タンパク質複合体の増加または減少を引き起こすならば、薬物投与後の様々な時間に蛍光シグナルを獲得でき、それによって動物全身における薬物の薬物動態および薬物動力学的性質の推定が可能になる。
【0094】
最後に、蛍光タンパク質の広範囲の相補性突然変異断片が入手できることから、PCAに特に有用な突然変異断片の組合せを経験的に試験することが可能になる。組合せに関するPCAのこの特徴によって、薬物スクリーニング、ターゲット・バリデーション、ADME、および診断応用に使用するための多様な色、強度、組合せおよび物理的性質を有する多数の新規なアッセイを生み出すことが可能になる。
【0095】
以下の特許および刊行物のすべての内容は、そこに引用されている参照を含めて、すべての目的に対してその全体が参照により組み込まれ、それはそれぞれ個別の特許、特許出願または公報がそのように個別に表示されているのと同程度である。
【0096】
米国特許第6270964号 Michnickら
米国特許第6294330号 Michnickら
米国特許第6428951号 Michnickら
米国特許第5804387号 Cormackら
米国特許第5625048号 Tsienら
米国特許第6054321号 Tsienら
米国特許第6027881号 Pavlakisら
米国特許第6469154号 Tsienら
米国特許第6066476号 Tsienら
米国特許第6172188号 Thastrupら
米国特許第6968738号 Andersonら
米国特許第6090919号 Cormackら
米国特許第6124128号 Tsienら
米国特許第6518021号 Thastrupら
【0097】
Pelletier, J.N.、Remy, I.およびMichnick, S.W. 1998(タンパク質断片の相補性アッセイ:タンパク質−タンパク質相互作用のin vivo検出のための一般戦略)J. Biomolecular Techniques 10: 32〜19頁
Remy, I.、Pelletier, J.N.、Galarneau, A.およびMichnick, S.W.、2002(タンパク質断片相補戦略を用いたタンパク質相互作用およびライブラリー・スクリーニング)Protein-protein Interactions: A Molecular Cloning Manual、E.A. Golemis編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第25章、449〜475頁
Michnick, S.W.、Remy, I.、C.-Valois, F.X.、Vallee-Belisle, A.、Galarneau, A.およびPelletier, J.N.、2000(タンパク質断片相補戦略によるタンパク質−タンパク質相互作用の検出、第A部および第B部)(John N. Abelson、Scott D. EmrおよびJeremy Thorner編)Methods in Enzymology、328: 208〜230頁
J. N. PelletierおよびS. W. Michnick.、1997(タンパク質断片相補に基づくin vivoタンパク質−タンパク質相互作用の検出戦略)Protein Engineering、10(増刊): 89
I. Ghosh、A.D. HamiltonおよびL. Regan、2000、(逆平行ロイシン・ジッパー特異的タンパク質再集合:緑色蛍光タンパク質への応用)J. Am. Chem. Soc 122: 5658〜5659頁、2000
C.-D. Huら、2002(二分子蛍光相補を用いた生細胞におけるbZIPおよびRelファミリー・タンパク質間の相互作用の視覚化)Molecular Cell 9: 789〜798頁
Tsien, R.Y.、1998(緑色蛍光タンパク質)Annual Reviews of Biochemistry 67: 509〜544頁
Zhang J.、Campbell R.E.、Ting A.Y.およびTsien, R.T. (2000)(細胞生物学のための新しい蛍光プローブの創製)Nature Reviews 3: 906〜918頁
【0098】
新規な断片の配列を以下の付表に示し、配列リストの配列番号20〜1067として表し、これらの配列は請求された本発明の主題である。
【0099】

【0100】

【0101】

【0102】

【0103】

【0104】

【0105】

【0106】

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【0499】

【0500】

【0501】

【0502】

【0503】

【0504】

【0505】
本発明の一部を形成する突然変異していない断片
[aaはアミノ酸である]
GFP F1:wt GFP(配列番号2)のaa残基1−39
GFP F2:wt GFP(配列番号2)のaa残基40−238

YFP F1A:wt EYFP(配列番号4)のaa残基1−40
YFP F2A:wt EYFP(配列番号4)のaa残基41−239
YFP F1B:wt EYFP(配列番号4)のaa残基1−103
YFP F2B:wt EYFP(配列番号4)のaa残基104−239
YFP F1C:wt EYFP(配列番号4)のaa残基1−117
YFP F2C:wt EYFP(配列番号4)のaa残基118−239
YFP F1DX:wt EYFP(配列番号4)のaa残基1−158
YFP F2DX:wt EYFP(配列番号4)のaa残基159−239
YFP F1D:wt EYFP(配列番号4)のaa残基1−159
YFP F2D:wt EYFP(配列番号4)のaa残基160−239
YFP F1E:wt EYFP(配列番号4)のaa残基1−174
YFP F2E:wt EYFP(配列番号4)のaa残基175−239
YFP F1F:wt EYFP(配列番号4)のaa残基1−191
YFP F2F:wt EYFP(配列番号4)のaa残基192−239

EGFPFA:wt EGFP(配列番号3)のaa残基41−239

RFP F1A:wt mRFP(配列番号15,16)のaa残基1−39
RFP F2A:wt mRFP(配列番号15,16)のaa残基40−225
RFP F1B:wt mRFP(配列番号15,16)のaa残基1−101
RFP F2B:wt mRFP(配列番号15,16)のaa残基102−225
RFP F1C:wt mRFP(配列番号15,16)のaa残基1−115
RFP F2C:wt mRFP(配列番号15,16)のaa残基116−225
RFP F1D:wt mRFP(配列番号15,16)のaa残基1−153
RFP F2D:wt mRFP(配列番号15,16)のaa残基154−225
RFP F1E:wt mRFP(配列番号15,16)のaa残基1−169
RFP F2E:wt mRFP(配列番号15,16)のaa残基170−225
RFP F1F:wt mRFP(配列番号15,16)のaa残基1−184
RFP F2F:wt mRFP(配列番号15,16)のaa残基185−225

KFP F1A:wt KFP1(配列番号17,18)のaa残基1−36
KFP F2A:wt KFP1(配列番号17,18)のaa残基37−232
KFP F1B:wt KFP1(配列番号17,18)のaa残基1−98
KFP F2B:wt KFP1(配列番号17,18)のaa残基99−232
KFP F1C:wt KFP1(配列番号17,18)のaa残基1−153
KFP F2C:wt KFP1(配列番号17,18)のaa残基154−232
KFP F1D:wt KFP1(配列番号17,18)のaa残基1−112
KFP F2D:wt KFP1(配列番号17,18)のaa残基113−232
KFP F1E:wt KFP1(配列番号17,18)のaa残基1−169
KFP F2E:wt KFP1(配列番号17,18)のaa残基170−232
KFP F1F:wt KFP1(配列番号17,18)のaa残基1−186
KFP F2F:wt KFP1(配列番号17,18)のaa残基187−232
【0506】
本明細書に開示された本発明の多数の形態が目下の好ましい実施形態を構成するが、他の多くの実施形態が可能であり、好ましい実施形態および他の可能性のある実施形態のさらなる詳細は限定として解釈すべきではない。本明細書に使用された用語は限定よりも記述に過ぎず、請求された本発明の精神または範囲から逸脱せずに様々な変更、多くの等価物を行えることが了承されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質の相補的断片を含む組成物であって、
前記断片が会合した(associated)場合に光学的に検出できるシグナルを発生することを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記断片が会合した場合に蛍光シグナルを発生することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記断片が会合した場合に発光シグナルを発生することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記断片が会合した場合に燐光シグナルを発生することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記断片が蛍光タンパク質に由来することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記断片が突然変異の蛍光タンパク質に由来することを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記相補的断片が野生型タンパク質の対応する断片と少なくとも1アミノ酸異なることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記相補的断片が配列番号20から配列番号1067で構成される群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記配列番号20から配列番号1067が別個の分子にさらに融合していることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
突然変異タンパク質の相補的断片を含む組成物であって、
前記断片が会合した場合に光学的に検出できるシグナルを発生し、
各断片が別個の分子に融合していることを特徴とする組成物。
【請求項11】
前記断片が会合した場合に蛍光シグナル、発光シグナルまたは燐光シグナルを発生することを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記相補的断片が野生型タンパク質の対応する断片と少なくとも1アミノ酸異なることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
光学的に検出できるタンパク質からの分離した断片の再集合を含む、分子相互作用の検出のためのタンパク質断片の相補性アッセイであって、
前記断片の再集合が各断片に融合している分子ドメインの相互作用によって作動され、
前記断片の再集合が他の分子プロセスから独立しており、
前記再集合が前記光学的に検出できるタンパク質の活性の再構成によって検出される、ことを特徴とするタンパク質断片の相補性アッセイ。
【請求項14】
前記断片が会合した場合に蛍光シグナルを発生することを特徴とする請求項13に記載の相補性アッセイ。
【請求項15】
前記断片が突然変異の蛍光タンパク質に由来することを特徴とする請求項13に記載の相補性アッセイ。
【請求項16】
(a)光学的に検出できる適切なタンパク質を選択する工程と、
(b)前記光学的に検出できるタンパク質がタンパク質機能を可逆的に喪失するように効果的に断片化する工程と、
(c)前記光学的に検出できるタンパク質の断片を別々に他の分子に融合または付着させる工程と、
(d)前記タンパク質の断片に融合または付着している分子の相互作用を通じて前記断片を再会合させる工程と、
(e)結果として生じる光学シグナルを検出する工程と、
を含むことを特徴とする生体分子相互作用を検出するための方法。
【請求項17】
前記光学的に検出できるレポーター・タンパク質が突然変異の蛍光タンパク質であることを特徴とする請求項16に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−182796(P2011−182796A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−92442(P2011−92442)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【分割の表示】特願2006−509857(P2006−509857)の分割
【原出願日】平成16年4月9日(2004.4.9)
【出願人】(505298364)オデッセイ セラ, インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】ODYSSEY THERA, INC.
【住所又は居所原語表記】4550 Norris Canyon Road, Suite 140, San Ramon, CA 94583 U. S. A.
【Fターム(参考)】