説明

タンパク質立体配座を検出するためのエピトープ保護アッセイおよび方法

【課題】例えばプリオン感染などのポリペプチド凝集と関係がある疾患の診断、予後および治療介入において使用するためのエピトープ保護アッセイに関するポリペプチドおよび抗体を提供する。
【解決手段】遮断剤を用いて接触可能なポリペプチド標的エピトープを最初に遮断する。ポリペプチドの変性後、検出剤を使用して、遮断剤との接触中に接触不能であった標的エピトープを有するタンパク質を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は疾患、例えばプリオン感染などのポリペプチド凝集と関係がある疾患の診断、予後および治療介入において使用するためのエピトープ保護アッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質のミスフォールディングおよび凝集
タンパク質は、複雑かつ最密な構造にフォールディングする可能性がある。フォールディングは生物活性に重要であるだけでなく、タンパク質が正確にフォールディングすることの失敗、またはタンパク質がフォールディングされた状態であることによって疾患が生じる可能性がある(Dobson CM、Methods (2004) 34 : 4〜14)。幾つかの場合、ミスフォールディングがタンパク質凝集を引き起こす可能性があり、それがさらに細胞外(例えばプラーク)または細胞内(例えばサイトゾルまたは核中の封入)の不連続な堆積を生じさせる可能性がある。
【0003】
アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチングトン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびプリオン病などの神経変性病は、ミスフォールディングした凝集タンパク質の神経中への堆積によって特徴付けられる。II型糖尿病および癌もタンパク質のミスフォールディングと関連してきており、タンパク質のフォールディングの誤りから生じ幾つかの場合凝集などの結果をもたらす、まだ同定されていない疾患が存在する可能性がある。このような疾患におけるミスフォールディングの性質およびいかなる凝集も、典型的には充分特徴付けられていない。
【0004】
プリオン病
プリオン病はBSEすなわち「狂牛病」の発生以来、重大な健康上の関心事となっている(前に総説された、40、41)。BSEは英国で最初に発見されたが、現在はヨーロッパ中の多くの他の国々および日本に広がっている。英国内だけで約180,000例のBSEが存在しており、これが蓄牛の全滅およびおそらく推定3〜5百万頭の感染をもたらした。英国に関して推定される全コストは25億ポンドを超えた。BSEは感染した蓄牛から与えられるプリオンを含む飼料を通じて、蓄牛間で伝播すると考えられており、感染した動物由来のビーフ製品または他の蓄牛製品を食べることによって、BSEはヒトに伝播すると考えられる。
【0005】
新生プリオン病
プリオン病は、海綿状の変化、神経細胞の消失、グリオーシス、および異常なアミロイドポリペプチドの脳内蓄積によって神経病理学的に特徴付けられる、急速に進行する治療不能な神経変性症候群の一群である。ヒトプリオン病は古典的なクロイツフェルトヤコブ病(CJD)を含み、これには散発性、医原性、および家族性の形がある。1996年以来、CJDの「新たな変形」(vCJD)が英国、フランス、アイルランド共和国、香港、イタリア、米国、およびカナダにおいて同定されている(40、41)。変形CJDは、未知の潜伏期間で14才という若い個体を殺傷することができる。vCJDがウシ海綿状脳症(BSE)のヒト形である疑いはほとんどない(42)。汚染した蓄牛組織を消費することからの第一次伝染は、このファイリングの時点で130を超える個体に影響を与えている。
【0006】
血液、血液製品、外科手術、歯科手術、ワクチン、および化粧品を介したvCJDの恐怖、「第二次伝染」は重大な関心事である(40、41)。マウスおよびヒツジの実験的BSE/vCJD感染(40)における血液のプリオン感染性の検出は、血液および血液製品を介したvCJDの伝播に関して特別な危険が存在することを示唆する。この疾患を発症したドナーの2人のレシピエントにおけるvCJDの最近の報告も厄介である(52、53)。カナダおよび米国は近年、vCJD血液ドナーの繰り延べを西ヨーロッパの全ての国々に広げている。
【0007】
ヒツジスクレーピーは数世紀知られてきているが、最も重要な動物のプリオン病は現在BSEである。主に英国由来の173,000頭を超える蓄牛が症候性BSEを発症しており、3百万もの多くが飼料供給において検出されていない。BSEは現在、肉および骨粉に関する食品供給の1996年の「禁止令後に生まれた」蓄牛においてますます報告されており、伝染が容易に消失することを妨げる他の経路が存在する可能性があることを示唆する。他の厄介な問題はヒツジへのBSEの考えられる伝播であり、これは他のヒト個体群をBSE/vCJDプリオン変種に曝す可能性がある。最近の報告はプリオンはヒツジ、実験動物およびヒトの幾つかの筋肉群中で複製する可能性があることを示し(54〜57)、以前はヒトの消費に関して安全であるとみなされていた組織の潜在的な危険性を示す。
【0008】
捕獲済みおよび野生のシカ科動物(シカおよびワビチ)の慢性消耗病(CWD)は、北アメリカにおける他の新たに新生した動物プリオン病であり、ヒトの健康に対するその影響はまだ知られていない。新たに認識されたプリオン病は食品、血液製品、および医学-外科治療の安全性に対して脅威を与えることは明らかである。
【0009】
プリオン:異型病原体
新たに新生したプリオン病、およびプリオンのポリペプチドのみの性質は、世界中で重大な医学的、獣医学的、および経済的課題を生み出している。今日まで、プリオン感染に関する唯一の商用の試験は死後の脳サンプルに基づくものである。実験的な伝播の研究による検出が存在するにもかかわらず、感染した動物の血液中のプリオンを検出するための生化学試験は存在しない。プリオン感染用の感度の良い特異的な診断試験の開発は、部分的にはプリオン感染物質の異常な性質のために骨の折れる作業である。プリオン病を伝播させる感染物質は、核酸要素が感染物質中で検出されていない点で他の病原体と異なる(41)。ノーベル賞受賞者のDr.Stanley Prusinerによって開発されたプリオン理論によれば、周辺に偏在する正常細胞プリオンポリペプチドPrPCのミスフォールディングした立体配座のイソ型である、PrPScに感染性が存在する。実際PrPScはプリオン感染性の調製における最も顕著な(またはおそらく唯一の)マクロ分子であり、ほとんどプリオン感染の確かな代用であるようには思われない。PrPScは、プロテアーゼ感受性、可溶性のモノマーイソ型であるPrPCとは対照的に、プロテアーゼによる消化に対して部分的に耐性があり、可溶性が低く、凝集した状態で存在する(29、31、43〜46)。
【0010】
PrPScは、立体配座の変化に関する翻訳後プロセスによってα-らせん構造が豊富である、その正常細胞のイソ型(PrPC)に由来する。PrPCの一次構造はPrPScのそれと同一であるが、二次構造および三次構造の変化は2つのイソ型の異なる物理化学的性質を担う。
【0011】
プリオンに感染した可能性があるヒト由来の食品または血液製品の安全性を評価する際の難点の1つは、血液または他の入手可能な生物サンプルに関する正確な診断試験の欠如である。現在、生きている動物、ヒト、血液または血液製品を初期段階でスクリーニングするために適用することができる診断試験は存在しない。これはさらに、臓器レシピエントに対する未知の危険性を加えた、臓器移植における他の問題をもたらす。したがって、予防策として、英国などの国々はその居住者由来の血漿をもはや調達していない。プリオン病が蔓延する危険性は、他の国々にも影響を与えている。例えば、米国およびカナダは、3〜6カ月より長く英国またはフランスに居住していた個体からの血液提供を認めていない。
【0012】
現在vCJDの診断は、剖検または生検における脳の病理試験の後でのみ確認することができる。初期CJD検出における幾つかの相補的戦略には脳波検査(EEG)、磁気共鳴映像法(MRI)スキャン、および脳脊髄液(CSF)試験があり、これらは有用な「代理」または「代用」マーカーである可能性がある。プリオン感染用の「直接的試験」の不在は、ウイルスおよび細菌などの従来の感染物質と非常に対照をなす。
【0013】
商業化の過程にある幾つかの試験は、実際の感染プリオンから「ひとたび除去された」感染の代理マーカーに基づく。
【0014】
PrPプロテアーゼ耐性は、プリオン病に関して最も多く市販されている診断試験の基盤となるものである。現在の方法では、脳のサンプルを除去し、PrPCは除去するがPrPScのプロテアーゼ耐性の中心部分はそのままの状態にすることができるプロテアーゼで消化する。次いでPrPScのプロテアーゼ耐性断片を、イムノブロッティングによって(Prionics試験中と同様に)、あるいは捕捉ELISAによって(BioRadおよびEnfer試験中、ならびにPrionics由来の新試験中と同様に)検出する。しかしながら、プロテアーゼによる消化は厄介で変動的であり、偽陰性および偽陽性をもたらす。さらに、感染性であり凝集するがプロテアーゼ耐性ではないPrPScを含むことが報告されている、幾つかのプリオン系統が存在する。プロテアーゼ感受性PrPScも、疾患の感染および種間伝播の初期に優位を占める(31)。
【0015】
プロテアーゼ耐性PrP断片の検出も、Prionicsによって商業用に開発されている尿診断試験(47)の基盤となるものである。しかしながら、尿中のプロテアーゼ耐性PrPの検出は死後脳の試験と同じ制約を受け、多量の尿からの沈殿を必要とすること、および低い感受性(例えば、前駆症状ではなく疾患の後期のPrPScのみを検出する)という他の欠点を有する。
【0016】
他の神経変性病
アルツハイマー病(AD)、ハンチングトン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびパーキンソン病/レビー小体型痴呆(PD、LBD)などの神経変性病も、我々の加齢群およびヘルスケアシステムに対する重大な課題を提起する(1に総説)。推定364,000人の65才を超えるカナダ人が現在、ADまたは関連痴呆に関する診断を受けている(http://www.alzheimer.ca/)。増大する寿命と共に、神経変性病の発生率は増大すると予想される。2025年までに、ADは百万人もの多くのカナダ人に影響を与え、2050年までにはこの数字は倍になるであろう。
【0017】
散発性AD、ALS、およびPD/LBDはいずれも、ADにおけるアミロイド前駆体タンパク質(APP)のアミロイド-β(Aβ)断片;ALSにおけるスーパーオキシドジスムターゼ-1(SOD1)、およびPDおよびLBDにおけるα-シヌクレイン(1)を含めた、ミスフォールディング状態のポリペプチドの病原性マルチマーの神経蓄積と関係がある(これらはおそらくフィブリル、原繊維、および無定形凝集体であると思われる)。さらに、家族性アミロイド多発性神経炎(FAP)は、トランスサイレチンが凝集してアミロイド堆積物を形成することから発生する。プリオン病と同様に、これらのポリペプチドをコードする遺伝子の突然変異は、常染色体優性の家族形のAD、ALS、およびPDと関係がある。
【0018】
アルツハイマー病
ADは、いずれもAPPのタンパク質分解生成物である(4中に総説)Aβ(1〜40)、Aβ(1〜42)およびAβ(1〜43)ペプチドから主に構成され細胞外プラークの脳内蓄積と関係がある、一般的な痴呆性(記憶障害および認知障害)の神経変性病である。さらに、異常にリン酸化したtauタンパク質(神経の微小管結合タンパク質)から主に構成される神経原繊維濃縮体は、瀕死のニューロンでは細胞内に蓄積する(4)。家族形のADは、APP遺伝子、またはプレセニリン1または2遺伝子の突然変異によって引き起こされる可能性があり(www.websiteformutations.com)、そのタンパク質生成物はAPPからAβへのプロセシングと関係がある。アポリポタンパク質E対立遺伝子変異体も、散発性および家族形のADの発症時の年齢に影響を与える(5中に総説)。AβはAD患者の血液およびCSF中、ならびに正常な対照中で検出されてきている(6)。Aβは、トリソミー21(ダウン症候群)、アミロイドーシス(HCHWA)-オランダ型遺伝性小脳出血、および正常な脳の老化においても血管およびプラークアミロイドフィラメント中に存在する(Mori、Hら、JBC (1992) 267 : 17082〜86)。Tauおよびリン酸化tauは、AD患者および他の神経疾患を有する患者の脳脊髄液(CSF)において検出されてきている(7;8中に総説)。
【0019】
筋萎縮性側索硬化症
ALSは致命的な神経筋疾患であり、1000人の成人中1人に発生し、進行性の衰弱、筋萎縮、および痙縮として現れ、これは脊髄および脳幹の500,000までの「下部運動ニューロン」、および大脳皮質中の無数の「上部運動ニューロン」の変性によるものである。ALSの病因に対する重要な手掛かりは、家族性ALS(fALS)の症例の約20%は、スーパーオキシドジスムターゼ-1(SOD1)(10,11)、フリーラジカル防御酵素の突然変異によるものであるという発見と共に出現した。100を超えるfALS SOD1のミスセンス、ナンセンス、およびイントロンスプライシング障害突然変異が今日まで分類されてきている(12;www.alsod.org)。突然変異ヒトSOD1(mtHuSOD1)を発現するトランスジェニックマウスは、ヒトALSと臨床的および病的類似性を有する運動ニューロン症状を発症し(13、14)、野生型ヒトSOD1(wtHuSOD1)を発現するマウスは疾患を発症しない(13)。SOD1含有細胞質封入体は、家族性および散発性ALS患者由来の多くの疾患状態運動ニューロンにおいて(15)、ならびに大部分のトランスジェニックマウス(16、17)およびこの疾患の組織培養(18)モデルにおいて検出することができる。
【0020】
パーキンソン病およびレビー小体病
PDは、罹患率がADに次いで第2位の(100,000の個体群当たり350まで;1)神経変性運動障害である。それは動きの硬さ、緩慢さ、および震えによって臨床上特徴付けられる(21中に総説)。パーキンソン病の大部分の症例は散発性であるが、散発形と家族形の両方の疾患が、PDにおいて選択的に殺傷される中脳ニューロン(60,000まで)の個体群である黒質の、瀕死のニューロン中の細胞内レビー小体によって特徴付けられる。レビー小体はα-シヌクレインから主に構成される(22)。α-シヌクレインをコードする遺伝子の突然変異は、家族性のパーキンソン病を有する患者において発見されてきている(23中に総説; www.parkinsonsmutation.com)。常染色体劣性PDと関係がある他の遺伝子は、α-シヌクレイン変性と関係があるパーキンである(22、23)。α-シヌクレインから構成されるびまん性皮質レビー小体は、パーキンソン状態の変化、幻覚、および迅速な症状の変動と関係がある痴呆症状であるレビー小体病(LBD)において観察される(24)。LBDは、60才を超える人間の間で20〜30パーセントの症例を占める、ADに次ぐ第二の最も一般的な形の神経変性痴呆である可能性がある(1、24)。
【0021】
ハンチングトン病および関連疾患
HDは、ハンチングチンタンパク質のN末端におけるポリグルタミンをコードするCAG反復単位の伸長によって特徴付けられる、進行性の神経変性障害である(48中に総説)。36以上のポリグルタミンの伸長部が疾患を引き起こし、さらに長い反復単位はさらに早い発症を引き起こす(49、50)。
【0022】
歯状核赤核淡そうルイ体萎縮症(DRPLA)および幾つかの形の洞-小脳性運動失調(ScA)などの他のポリグルタミン疾患も、ニューロン死の領域と大まかに関係がある細胞質封入体を有する。ScA-1遺伝子産物中の伸長ポリグルタミン反復単位の割り込みによって、疾患が存在しなくなる(51)。
【0023】
アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびパーキンソン病/レビー小体病(PD、LBD)などの神経変性病は、我々の加齢群およびヘルスケアシステムに対する重大な課題を提起する。グループとしての神経変性病に関する、特異的な生化学試験は存在しない(1、2)。神経変性病は「診断外」とみなされるので、これらの進行性で不治の、通常は致命的な状態に関して「臨床的に確実な」診断を実施するために、非常に広範囲の調査が必要とされる。神経画像化などの高価な代理試験を使用して、診断の確実性を高める(2)。この破壊的な疾患群用の特異的で感度が良く、安価な生化学試験が入手可能になることによって、過剰負担のヘルスケアシステムに関する財源がおそらく温存されると思われる。さらに、初期の症状段階におけるこれらの疾患の安全な診断は、疾患の病理性理学が一般に治療に対してさらに効果的であるとき、高い治療有効性に関する窓口を広げる(3)。
【0024】
ヒトの神経変性病の生前診断用の、効率の良い、有効かつ安価の診断およびスクリーニング戦略が、加齢群およびヘルスケアシステムに関する連続的な財政圧力を考慮して早急に必要とされる。
【0025】
糖尿病
タンパク質凝集は、II型糖尿病を有する患者においても観察される。脂肪細胞由来ペプチド、レジスチンの高い発現がII型糖尿病患者において観察されてきており(Youn BSら、J Clin Endocrinol Metab.(2004); 89 : 150〜6)、高いレジスチンレベルは肥満およびインシュリン耐性において役割を果たしている可能性があることを、研究は示唆している。さらに、膵島アミロイドポリペプチド(アミリンとしても知られる)の堆積は、II型糖尿病と病理学的に関係がある。これらの堆積物は膵島アミロイドポリペプチド、特有のアミロイド性ペプチドを含み、β細胞の死と関係がある。近年の研究は、膵島アミロイド誘導型のβ細胞死を担う種は膵島アミロイド形成の初期に形成され、そのとき膵島アミロイドポリペプチドの蓄積が始まることを示唆している(Hull RLら、J Clin Endocrinol Metab.(2004) 89 : 3629〜43)。病原性膵島アミロイドポリペプチドを同定することができる診断試験は、食事および治療介入が最も有効であるその初期段階で、II型糖尿病を検出するのに非常に有用であると思われる。
【0026】

多くの形の癌も、タンパク質立体配座関連の疾患であると考えられる(Ishimaru D.ら、Biochemistry (2003) 42 : 9022〜7)。神経芽細胞腫、癌腫およびメラノーマの部分集合は、腫瘍抑制因子p53タンパク質凝集体の異常な蓄積を示す(Butler JSら、Biochemistry (2003) 42 : 2396〜403 ; Ishimaru D.ら、Biochemistry (2003) 42 : 9022〜7)。この蓄積が幾つかの癌性細胞ではp53の機能の消失に貢献していると思われる(Ishimaru D.ら、Biochemistry (2003) 42 : 9022〜7)。蓄積したp53を検出することができるアッセイは診断上有用な検出システムをもたらすと思われ、治療介入を個別化することによって治療介入を高めると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】Cabillyら、米国特許第4,816,567号
【特許文献2】Bossら、米国特許第4,816,397号
【特許文献3】Tanaguchiら、欧州特許公開EP171496
【特許文献4】欧州特許公開0173494
【特許文献5】英国特許GB2177096B
【特許文献6】2003年8月20日に出願された米国出願第60/496,381号(表題Methods of Detecting Prion Protein (Cashman & Lehto)
【特許文献7】2003年8月21日に出願された米国出願第60/497,362号(表題Epitope Protection Assay (Cashman & Lehto)
【特許文献8】カナダ出願第2,437,675号
【特許文献9】カナダ出願第2,437,999号
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】Dobson CM、Methods (2004) 34 : 4〜14
【非特許文献2】http://www.alzheimer.ca/
【非特許文献3】www.websiteformutations.com
【非特許文献4】Mori、Hら、JBC (1992) 267 : 17082〜86
【非特許文献5】www.alsod.org
【非特許文献6】www.parkinsonsmutation.com
【非特許文献7】Youn BSら、J Clin Endocrinol Metab.(2004); 89 : 150〜6
【非特許文献8】Hull RLら、J Clin Endocrinol Metab.(2004) 89 : 3629〜43
【非特許文献9】Ishimaru D.ら、Biochemistry (2003) 42 : 9022〜7
【非特許文献10】Butler JSら、Biochemistry (2003) 42 : 2396〜403
【非特許文献11】KohlerおよびMilstein (Nature 256、495〜497 (1975)
【非特許文献12】Kozborら、Immunol.Today 4、72 (1983)
【非特許文献13】Coleら、Monoclonal Antibodies in Cancer Therapy (1985) Allen R. Bliss、Inc、77〜96ページ
【非特許文献14】Huseら、Science 246、1275 (1989)
【非特許文献15】Morrisonら、Proc.Natl Acad.Sci.U.S.A.81、6851 (1985)
【非特許文献16】Takedaら、Nature 314、452 (1985)
【非特許文献17】Wardら、Nature 341、544〜546 : (1989)
【非特許文献18】Huseら、Science 246、1275〜1281 (1989)
【非特許文献19】McCaffertyら、Nature 348、552〜554 (1990)
【非特許文献20】Cerchia Lら、FEBS Letters 528 (2002) 12〜12
【非特許文献21】Bianchiniら、Immunol Methods (2001) 252 : 191〜97
【非特許文献22】Crawford Mら、Brief Funct Genomic Proteomic.2003 Apr ; 2 : 72〜9
【非特許文献23】Pizzano Rら、J.Agric Food Chem (2004) 52 : 649〜54
【非特許文献24】Elan、Jら、Nature Structural Biology (2003) 10 : 461〜67
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明者らはエピトープ保護アッセイ(EPA)、血液および他の接触可能な組織および体液中の疾患関連タンパク質の感度の良い特異的な生前の検出をもたらす、新規な方法を最近開発した。本発明は、プリオン病などの疾患における凝集の役割を示し、従来技術の問題点を克服するアッセイを提供する。プリオン病では、正常細胞のモノマープリオンポリペプチドPrPCは、一般にPrPScと表される異常な凝集イソ型へのリフォールディングを経る。AD、PD、LBD、ALSおよびHDなどの疾患は、細胞タンパク質のミスフォールディングおよび/または凝集した立体配座によっても特徴付けられる。この性質を本発明の方法によって利用して、これらおよび他の疾患用の感度の良い特異的な診断試験を提供する。
【0030】
本発明によれば、標的エピトープが非野生型タンパク質(すなわち疾患関連タンパク質)または野生型タンパク質のいずれか1つにおいて接触可能であり、他のタンパク質において接触不能である場合に、これらの方法は有用である。接触不能性は、標的エピトープを接触不能にする凝集によるものであることが多い。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、標的エピトープを含む候補ポリペプチドが疾患(障害)関連ポリペプチドまたは野生型ポリペプチドであるかどうかを検出する方法であって、
候補ポリペプチドと遮断剤を接触させるステップと、
標的エピトープが遮断剤による化学的修飾と接触不能または接触可能であるかどうかを決定するステップとを含む方法を含む。
【0032】
標的エピトープの接触可能性または接触不能性は、候補ポリペプチドが疾患(障害)関連ポリペプチドまたは野生型ポリペプチドであるかどうかを示す。何故なら、疾患(障害)関連タンパク質および野生型タンパク質の1つにおいて、標的エピトープは接触可能だからである。他のポリペプチドでは、標的エピトープは接触不能である。
【0033】
一実施形態では本発明は、プリオン病を検出する方法であって、例えば標的エピトープを含む候補ポリペプチドが野生型立体配座またはそれが凝集している非野生型立体配座であるかどうかを決定する方法であって、
ポリペプチドのサンプル(サンプルはPrPScおよび/またはPrPC、ならびに多くの場合は多量の1つまたは他方を典型的には含む)と、典型的にはペルオキシ亜硝酸などのタンパク質と化学的に反応する物質であって、接触可能なエピトープ(標的エピトープ)をそれらが検出剤と結合することができないように修飾する、化学的修飾物質を反応させるステップと、
サンプル中のポリペプチドを脱凝集および/または変性させるステップと、
標的エピトープに対する抗体などの検出剤を用いてプローブ処理して、ポリペプチドが(脱凝集および/または変性の前などに)接触不能な標的エピトープを含んでいたかどうかを決定するステップとを含む方法を提供する。
【0034】
PrPCはアッセイ中「目に見えない状態」になる。何故なら、モノマー分子上のエピトープは化学的修飾物質によって抗体認識に対して遮断され、一方PrPScの分子は凝集体内に封鎖されること、あるいは他の場合は反応に利用できないことによって化学的修飾から「保護される」からである。あるいは、マルチマー分子上のエピトープは化学的修飾物質によって抗体認識に対して遮断され、一方PrPCの分子は接触可能なエピトープの違いによって化学的修飾から「保護される」。
【0035】
他の実施形態では、アルツハイマー病の検出法は、
ポリペプチドのサンプル(サンプルは典型的には疾患状態のアミロイド前駆体ポリペプチドまたはAβまたはtauおよび/または対応する野生型ポリペプチドの全体または一部分、および多くの場合は多量の1つまたは他方を含む)と、典型的にはペルオキシ亜硝酸などのタンパク質と化学的に反応する物質であって、露出したエピトープをそれらが検出剤と結合することができないように修飾する化学的修飾物質を反応させるステップと、
サンプル中のポリペプチドを脱凝集および/または変性させるステップと、
標的エピトープに対する抗体などの検出剤を用いてプローブ処理して、脱凝集および/または変性の前にポリペプチドが接触不能な標的エピトープを含んでいたかどうかを決定するステップとを含む。
【0036】
他の実施形態では本発明は、パーキンソン病(PD)、レビー小体病(LBD)、ハンチングトン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、糖尿病、および癌などの、例えばミスフォールディングおよび/または凝集タンパク質から生じる、差別的に接触可能な疾患および野生型立体配座の標的エピトープによって特徴付けられる他の疾患用の疾患検出法を提供する。これらの方法は、ポリペプチドのサンプル(例えば、本明細書に記載する疾患関連ポリペプチド)と、それらが検出剤と結合することができないように露出したエピトープを修飾する化学的修飾物質を反応させるステップ、次いでサンプル中のポリペプチドを脱凝集および/または変性させるステップ、および標的エピトープに対する抗体などの検出剤を用いてプローブ処理して、脱凝集および/または変性の前にポリペプチドが接触不能な標的エピトープを含んでいたかどうかを決定するステップなどのステップを同様に含む。これらのステップは、血液および血液製品のスクリーニングなどの他の目的、ならびに本明細書に記載する他の使用に同様に適合する。
【0037】
本発明の方法は、既存の技術に優る多くの利点を有する。前述のように、本発明は場合によっては「EPA」と呼ばれ、プリオンタンパク質の場合、疾患の検出は、プリオン病の感染粒子およびADと関係があるポリペプチドを構成すると考えられる病原体分子である、PrPScなどの凝集した疾患関連タンパク質を検出するための単純で効率の良い方法である。
【0038】
本発明は、高スループットロボット性プラットホームにおいて有用である。例えば、EPAはPrPプロテアーゼ耐性、プリオン病用の最も多く市販されている診断試験の基礎には依存しない。エピトープ保護技術はプロテーゼによる消化ステップを必要とせず、それによってエピトープ保護技術は初期感染に対してより感度の良いものとなる。確かに、プロテーゼによる消化ステップが存在しないことによって、EPAは高スループットロボットプラットホームにさらに適合する。
【0039】
さらに、本発明の方法を使用して、1つまたは複数の標的エピトープが少なくとも1つの立体配座に隠れている、2つ以上の立体配座で存在する任意のタンパク質を検出することができる。
【0040】
したがって本発明は、
ポリペプチドのサンプルを、典型的にはタンパク質と化学的に反応する物質であって、それらが検出剤と結合することができないように露出したエピトープを修飾すると定義される化学的修飾物質と反応させるステップと、
サンプル中のポリペプチドを脱凝集および/または変性させるステップと、
標的エピトープに対する抗体などの検出剤を用いてプローブ処理して、脱凝集および/または変性の前にポリペプチドが化学的修飾物質と接触不能な標的エピトープを含んでいたかどうかを決定するステップとを含む検出法に関する。
【0041】
この結果は、存在するポリペプチドの型(すなわち、野生型タンパク質または非野生型タンパク質)の指標である接触不能なエピトープを、ポリペプチドが含むかどうかを示す。
【0042】
一実施形態では本発明は、標的エピトープを含む候補ポリペプチドが野生型立体配座または非野生型立体配座であるかどうかを検出する方法であって(一実施形態では、非野生型立体配座で、候補ポリペプチドは凝集ポリペプチドと凝集する)、
接触可能な標的エピトープを選択的に遮断する遮断剤とポリペプチドを接触させるステップであって、非野生型立体配座または野生型立体配座の1つでは、標的エピトープが接触可能であり遮断剤と反応し、他の立体配座では、標的エピトープは接触不能であり遮断剤と反応せず、未反応遮断剤は、例えば遮断剤が消費または分解される時間を与えることによって、あるいは以下に記載する物理的または化学的方法によってそれを積極的に除去することによって、ポリペプチドとの接触から除くステップと;
候補ポリペプチドを修飾して任意の接触不能な標的エピトープを接触可能な標的エピトープに転換するステップと、
接触不能な標的エピトープから接触可能な標的エピトープに転換された標的エピトープと選択的に結合する検出剤とポリペプチドを接触させるステップであって、検出剤と転換型標的エピトープの間の結合が、転換前に候補ポリペプチドは標的エピトープが接触不能であった立体配座であったことを示し、検出剤と標的エピトープの間の結合の欠如が、ポリペプチドは標的エピトープが接触可能であった立体配座であったことを示し、したがってポリペプチドが野生型立体配座または非野生型立体配座であったこと示すステップとを含む方法を含む。
【0043】
本発明は、標的エピトープを含む候補ポリペプチドが野生型立体配座または非野生型立体配座であるかどうかを検出する方法であって、
接触可能な標的エピトープを選択的に遮断する遮断剤とポリペプチドを接触させるステップであって、野生型立体配座では、標的エピトープは接触可能であり遮断剤と反応し、非野生型立体配座では、標的エピトープは接触不能であり遮断剤と反応せず、未反応遮断剤は、例えば遮断剤が消費または分解される時間を与えることによって、あるいは以下に記載する物理的または化学的方法によってそれを積極的に除去することによって、ポリペプチドとの接触から除くステップと;
候補ポリペプチドを修飾して任意の接触不能な標的エピトープを接触可能な標的エピトープに転換するステップと、
接触不能な標的エピトープから接触可能な標的エピトープに転換された標的エピトープと選択的に結合する検出剤とポリペプチドを接触させるステップであって、検出剤と転換型標的エピトープの間の結合は候補ポリペプチドが非野生型立体配座であったことを示し、検出剤と標的エピトープの間の結合の欠如はポリペプチドが野生型立体配座であったことを示すステップとを含む方法も含む。
【0044】
本発明は、標的エピトープを含む候補ポリペプチドが野生型立体配座または非野生型立体配座であるかどうかを検出する方法であって、
接触可能な標的エピトープを選択的に遮断する遮断剤とポリペプチドを接触させるステップであって、非野生型立体配座では、標的エピトープが接触可能であり遮断剤と反応し、野生型立体配座では、標的エピトープは接触不能であり遮断剤と反応せず、未反応遮断剤は、例えば遮断剤が消費または分解される時間を与えることによって、あるいは以下に記載する物理的または化学的方法によってそれを積極的に除去することによって、ポリペプチドとの接触から除くステップと;
候補ポリペプチドを修飾して任意の接触不能な標的エピトープを接触可能な標的エピトープに転換するステップと、
接触不能な標的エピトープから接触可能な標的エピトープに転換された標的エピトープと選択的に結合する検出剤とポリペプチドを接触させるステップであって、検出剤と転換型標的エピトープの間の結合は候補ポリペプチドが野生型立体配座であったことを示し、検出剤と標的エピトープの間の結合の欠如が、ポリペプチドが非野生型立体配座であったことを示すステップとを含む方法も含む。
【0045】
本発明は、遮断剤と反応した標的エピトープを含む候補ポリペプチドが、野生型立体配座または非野生型立体配座であるかどうかを検出する方法であって、
候補ポリペプチドを修飾して任意の接触不能な標的エピトープを接触可能な標的エピトープに転換するステップと、
接触不能な標的エピトープから接触可能な標的エピトープに転換された標的エピトープと選択的に結合する検出剤とポリペプチドを接触させるステップであって、検出剤と転換型標的エピトープの間の結合が、候補ポリペプチドが非野生型立体配座であったことを示し、検出剤と標的エピトープの間の結合の欠如が、ポリペプチドが野生型立体配座であったことを示すステップとを含む方法も含む。
【0046】
本発明の方法では、エピトープは多くの場合、ミスフォールディングまたは非野生型立体配座において接触不能である。何故ならi)野生型フォールディングポリペプチドと比較したポリペプチドの異なるミスフォールディングが、遮断剤と標的エピトープの間の反応を妨げるかあるいは低下させる、ii)ミスフォールディング状態のポリペプチドは、それ自体が凝集するかあるいはミスフォールディング状態の立体配座の他のポリペプチドと凝集して、保護/遮断剤と標的エピトープの間の反応を妨げるかあるいは低下させる、および/またはiii)ポリペプチドの翻訳後修飾が、遮断剤と標的エピトープの間の反応を妨げるかあるいは低下させるからである。
【0047】
一例では、候補ポリペプチドはプリオンタンパク質を含み、野生型フォールディング状態の立体配座は野生型フォールディング状態のプリオンタンパク質の立体配座を含み、ミスフォールディング状態の立体配座はPrPScの立体配座を含む。あるいは、野生型フォールディング状態のタンパク質は、APPまたはその切断産物アミロイドβの立体配座を含み、ミスフォールディング状態の立体配座はアルツハイマー病APPまたはその切断産物アミロイドβの立体配座を含む。
【0048】
他の例では、候補ポリペプチドはSOD1、α-シヌクレイン、膵島アミロイドポリペプチド、レジスチンまたはp53タンパク質を含む。本出願中に記載する本発明の方法およびキットは、例えばポリペプチドのβ-シートが豊富な領域の相互作用によって1つに凝集したポリペプチドの多数のコピーを含む立体配座を有する、非野生型ポリペプチドに適用するのに有用である。一実施形態ではポリペプチドは、プリオンタンパク質凝集体に凝集するポリペプチドである。他の実施形態ではポリペプチドは、アミロイドプラークに凝集するポリペプチドである。
【0049】
本発明は、i)本明細書に列挙する遮断剤との反応によって修飾された本発明のポリペプチド、およびii)検出剤との反応によって修飾されたポリペプチドも含む。本発明は、これらの修飾ポリペプチドを含む本発明の組成物およびキットも含む。
【0050】
遮断剤は場合によってはペルオキシ亜硝酸、過酸化水素、二炭酸ジエチル(DEPC)、4-ヒドロキシノネナール(4HNE)、コンジュリトール-B-エポキシドおよび1,2-エポキシ-3-(p-ニトロフェノキシ)プロパンなどのエポキシド、メチレンまたはジアジリンおよび関連化合物である。本発明の方法では、例えば熱、界面活性剤および/またはカオトロピック剤によってポリペプチドを変性させることにより、ポリペプチドを場合によっては修飾する。ポリペプチドは、同型の他のポリペプチドから、および他の分子からポリペプチドを脱凝集させるための脱凝集剤を用いた処理によって場合によっては修飾し、脱凝集剤はカオトロピック剤(グアニジン塩、尿素またはチオ尿素を含む)、界面活性剤および熱からなる群の少なくとも1つから場合によっては選択される。
【0051】
遮断剤の除去に関してここに列挙する本発明の方法ステップは、物理的に、化学的に、あるいは他の場合は候補ポリペプチドから遮断剤を除去してさらなる反応を妨げることを典型的には含むことは、当業者には容易に明らかである。除去は場合によっては、消費または分解されることによって候補ポリペプチドから遮断剤が除去されるように(例えば、遮断剤が不活性または酸化状態になるように)、充分な時間を経過させることを含む。除去は場合によっては、化合物を加えて任意の過剰な遮断剤と反応させてそれを不活性化させることを含む。除去は場合によっては、従来の濾過技法による遮断剤の物理的濾過、または候補ポリペプチドと遮断剤を分離するための遠心分離、例えばカラム中での遮断剤または候補ポリペプチドと固定支持体との結合などによる、遮断剤を除去するのに有用な支持体との物理的結合も含む。
【0052】
除去とは、例えば物理的または化学的に遮断剤を不活性化させること、候補ポリペプチドを含むサンプルと遮断剤を接触させないこと、または遮断剤が消費または分解されるのに充分な量の時間を経過させることによって、遮断剤によるさらなる反応を妨げることを意味する。
【0053】
検出剤は、プリオンポリペプチドのエピトープ、アミロイドβのエピトープ、α-シヌクレインのエピトープ、またはSOD10エピトープを対象とする抗体を場合によっては含む。抗体は抗プリオン抗体6H4および3F4、および抗アミロイドβ抗体6E10および4G8の全体または一部分を場合によっては含む。
【0054】
本発明の方法は、ヒトなどの哺乳動物に関して使用することが好ましい。さらに本発明の方法は、家畜などの哺乳動物に関して使用することが好ましい。さらに本発明の方法は、食品、化粧品、歯科および外科手術道具、真空包装および薬剤製品に関して使用する。
【0055】
本発明は、本明細書に記載する本発明の方法を使用して、サンプル中の非野生型立体配座の候補ポリペプチドであって、標的エピトープを含む候補ポリペプチドの存在によって特徴付けられる疾患を動物が有するかどうかを判定する、動物由来のサンプルを試験する方法も含む。このような疾患は本明細書に記載する。一実施形態では、本発明の方法は、
候補ポリペプチド中の接触可能な標的エピトープを選択的に遮断する遮断剤とサンプルを接触させるステップであって、野生型立体配座では標的エピトープが接触可能であり遮断剤と反応し、非野生型立体配座では、候補ポリペプチドが凝集ポリペプチドと凝集し標的エピトープが遮断剤と反応することができないために、標的エピトープが接触不能であるステップと、
サンプルと転換剤を接触させて候補ポリペプチドを修飾してサンプル中の任意の接触不能な標的エピトープを接触可能な標的エピトープに転換するステップと、
接触不能な標的エピトープから接触可能な標的エピトープに転換された標的エピトープと選択的に結合する検出剤とポリペプチドを接触させるステップであって、検出剤と転換型標的エピトープの間の結合が候補ポリペプチドが非野生型立体配座であること、および動物が疾患を有することを示し、検出剤と標的エピトープの間の結合の欠如がポリペプチドが野生型立体配座であったことを示すステップとを含む方法によって、候補ポリペプチドがi)野生型立体配座またはii)非野生型立体配座であるかどうかを判定することを含む。
【0056】
本発明は、例えば血液または血液製品などのサンプル、および他のサンプルを試験することによってスクリーニングして、非野生型立体配座の候補ポリペプチドであって、標的エピトープを含む候補ポリペプチドをサンプルが含むかどうかを判定する、本明細書に記載する本発明の方法も含む。一実施形態では、本発明の方法は、
候補ポリペプチド中の接触可能な標的エピトープを選択的に遮断する遮断剤とサンプルを接触させるステップであって、野生型立体配座では標的エピトープが接触可能であり遮断剤と反応し、非野生型立体配座では、標的エピトープが接触不能であり遮断剤と反応することができないステップと、
サンプルと転換剤を接触させて候補ポリペプチドを修飾してサンプル中の任意の接触不能な標的エピトープを接触可能な標的エピトープに転換するステップと、
接触不能な標的エピトープから接触可能な標的エピトープに転換された標的エピトープと選択的に結合する検出剤とポリペプチドを接触させるステップであって、検出剤と転換型標的エピトープの間の結合が、候補ポリペプチドが非野生型立体配座であったこと、およびサンプルが非野生型立体配座の候補ポリペプチドを含むことを示し、検出剤と標的エピトープの間の結合の欠如が、ポリペプチドが野生型立体配座であったことを示すステップとを含む方法によって、候補ポリペプチドがi)野生型立体配座またはii)非野生型立体配座であるかどうかを判定することを含む。
【0057】
他の実施形態では本発明は、標的エピトープを含む候補ポリペプチドがi)野生型立体配座またはii)非野生型立体配座である(例えば、ポリペプチドが非野生型立体配座に凝集する)かどうかを検出する方法であって、
接触可能な標的エピトープを選択的に遮断する遮断剤とポリペプチドを接触させるステップであって、野生型立体配座では標的エピトープが接触可能であり遮断剤と反応し、非野生型立体配座では、(例えば、候補ポリペプチドが凝集するために)標的エピトープが接触不能であり、標的エピトープが遮断剤と反応することができないステップと、
候補ポリペプチドを修飾して接触不能な標的エピトープを接触可能な標的エピトープに転換するステップと、
接触不能な標的エピトープから接触可能な標的エピトープに転換された標的エピトープと選択的に結合する検出剤とポリペプチドを接触させるステップであって、検出剤と転換型標的エピトープの間の結合が、候補ポリペプチドが非野生型立体配座であったことを示し、検出剤と標的エピトープの間の結合の欠如が、ポリペプチドが野生型立体配座であったことを示すステップとを含む方法に関する。未反応遮断剤も、例えばそれを消費または分解させることによって、あるいはそれを物理的または化学的方法によりそれを反応から除去することによって、ポリペプチドとの接触から除く。
【0058】
候補ポリペプチドはプリオンタンパク質を場合によっては含み、野生型立体配座は野生型プリオンタンパク質の立体配座を含み、非野生型立体配座はPrPScの立体配座を含む。候補ポリペプチドはβ-アミロイドポリペプチド、tauタンパク質またはAPPタンパク質、SOD1、α-シヌクレイン、ハンチングチンタンパク質、p53または膵島アミロイドポリペプチドまたはレジスチンを場合によっては含む。遮断剤はペルオキシ亜硝酸、過酸化水素、メチレン化合物、無水コハク酸、エポキシド、二炭酸ジエチル、4-ヒドロキシノネナール(4HNE)およびジアジリンからなる群から場合によっては選択される。ポリペプチドを変性させることによって、ポリペプチドを場合によっては修飾する。熱および/または界面活性剤および/またはカオトロピック剤によって、ポリペプチドをさらに場合によっては変性させる。凝集ポリペプチドからポリペプチドを脱凝集させるための脱凝集剤を用いた処理によって、ポリペプチドを場合によっては修飾する。脱凝集剤はカオトロピック剤、界面活性剤および熱からなる群の少なくとも1つから場合によっては選択される。界面活性剤は場合によってはSDSを含む。検出剤は、例えばプリオンポリペプチドのエピトープを対象とするアプタマーまたは抗体を場合によっては含む。抗体は6H4または3F4を場合によっては含む。アプタマーまたは抗体は、アミロイドβのエピトープを場合によっては対象とする。抗体は6E10または4G8を場合によっては含む。非野生型立体配座は幾つかの実施形態では、プリオン病(例えばBSEまたはCJD)、アルツハイマー病、パーキンソン病またはレビー小体病、ハンチングトン病、筋萎縮性側索硬化症、癌または糖尿病などのタンパク質凝集によって引き起こされる疾患を示す。
【0059】
場合によっては、遮断剤と候補ポリペプチドを接触させる前に、以下の方法:吸着、沈殿、または遠心分離の1つまたは複数によって前処理したサンプル中に候補ポリペプチドが存在する。場合によっては、遮断剤と候補ポリペプチドを接触させる前に、標的エピトープをマッピングする(すなわち、例えば「標的エピトープ」の項で以下に記載したのと同様に、エピトープを同定する)。場合によっては、CSF、血清、血液、尿、バイオプシーサンプルまたは脳組織の群から選択される死後または生前サンプル中にポリペプチドが存在する。本発明の他の態様は、標的エピトープを含む候補ポリペプチドがi)野生型立体配座またはii)非野生型立体配座であるかどうかを検出するためのキットであって、標的エピトープを認識する検出剤、ならびにi)標的エピトープをマッピングすること、ii)候補ポリペプチドと遮断剤を接触させること、およびiii)候補ポリペプチドと検出剤を接触させることの少なくとも1つに関する指示書を含むキットに関する。このキットは、本明細書に記載する本発明の方法を実施するのに有用である。検出剤はアプタマーまたは抗体を場合によっては含む。抗体は6H4、3F4、6E10または4G8を場合によっては含み、場合によっては固相担体に固定されている。キットは例えばサンドウィッチELISA、蛍光ELISAなどのELISA用のバッファーおよび試薬を場合によってはさらに含む。キットは、遮断剤を場合によってはさらに含む。キットは、界面活性剤およびカオトロピック剤の群の少なくとも1つから選択される変性剤を場合によってはさらに含む。キットは、ポリペプチドスタンダードを場合によってはさらに含む。キットは、組換え疾患関連タンパク質、または疾患関連タンパク質を模倣した組換えタンパク質を場合によっては含む。他の実施形態では本発明は、遮断剤と接触している候補ポリペプチドがi)野生型立体配座またはii)非野生型立体配座であるかどうかを検出する方法であって、候補ポリペプチドが少なくとも1つ標的エピトープを含み、遮断剤との接触および遮断剤の除去の後、候補ポリペプチドを修飾して任意の接触不能な標的エピトープを接触可能な標的エピトープに転換し、この方法が、接触不能な標的エピトープから接触可能な標的エピトープに転換された標的エピトープと選択的に結合する検出剤とポリペ
プチドを接触させるステップであって、検出剤と転換型標的エピトープの間の結合は、候補ポリペプチドが非野生型立体配座(例えば凝集立体配座)であったことを示し、検出剤と標的エピトープの間の結合の欠如は、ポリペプチドが野生型立体配座であったことを示すステップを含む方法に関する。本明細書に記載する疾患、遮断剤、標的エピトープ、検出剤および他の態様は、この方法においても有用である。本明細書に記載する疾患、遮断剤、標的エピトープ、検出剤および他の態様は前章に記載する方法、例えば動物(例えばヒト、家畜など)由来のサンプルを試験してその動物が疾患を有するかどうか判定する方法、またはサンプルをスクリーニングするための方法などにも容易に適合する。
【0060】
前章の幾つかに記載した方法に対する逆の状況、例えば野生型立体配座が接触不能なエピトープを含み、非野生型立体配座が接触可能なエピトープを含む状況も有用に検出される。この状況も本明細書に記載する方法、疾患の診断またはサンプルのスクリーニングなどに容易に適合させる。
【0061】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な記載から明らかとなるであろう。しかしながら、詳細な記載および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しながら例示のみによって与えられることは理解されるはずである。何故なら、本発明の精神および範囲内のさまざまな変更および変更形態が、この詳細な記載から当業者に明らかとなるからである。
【0062】
本発明の幾つかの実施形態を、以下の図面に関して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】酸処理によってin vitroで凝集した脳PrPは、ペルオキシ亜硝酸による修飾から保護されることを示す図である。擬似または酸処理ヒト脳ホモジェネートは高いペルオキシ亜硝酸濃度(ONOO)で処理して、次いで3F4(パネルA)または6H4(パネルB)を用いるイムノブロッティングを施す。擬似(□)および酸処理(●)脳ホモジェネート中の3F4(C)および6H4(D)エピトープに対するペルオキシ亜硝酸の影響。イムノブロット写真をスキャニングし、バンド強度はUnscanitソフトウェアによって測定した。これらの結果は、3つの別個の実験を組み合わせた相対的な強度である。
【図2】スクレーピー感染したハムスター脳内のPrPは、ペルオキシ亜硝酸による修飾から保護されることを示す図である。(A)スクレーピー感染したハムスター脳内の6H4エピトープに対するペルオキシ亜硝酸の影響。(B)(A)のブロット写真をスキャニングし、相対的なバンド強度はUnscanitソフトウェアを使用して測定した。(●)スクレーピー感染したハムスター脳。(□)正常なハムスター脳。
【図3】ペルオキシ亜硝酸誘導型の修飾からの保護は、酸処理した脳内の凝集によるものであることを示す図である。(A)擬似または酸処理した脳ホモジェネート中のPrPの免疫沈降(IP)に対するペルオキシ亜硝酸の影響。脳ホモジェネートは10mMのペルオキシ亜硝酸、次に2.5Mの塩酸グアニジン(Gu)有り(+)または無し(-)での室温における2時間のインキュベーションで処理した。生成したサンプルは6H4または3F4を用いて免疫沈降させた。ペルオキシ亜硝酸+Guを用いた処理の後に酸処理サンプル中にさらなるPrPを沈降させ、一方擬似サンプル中では、Guは影響を有していない。これはGuが、ペルオキシ亜硝酸による破壊から保護される酸サンプル中の凝集したPrPを分解することができることを示唆する。(B)ELISAによって測定した、擬似および酸処理した脳ホモジェネート中のPrPに対するペルオキシ亜硝酸の影響。脳ホモジェネートは、高濃度のペルオキシ亜硝酸、次に2.5MのGuで処理した。10倍希釈の後、捕捉抗体として6H4および検出抗体として3F4を用いて、サンドウィッチELISAによってサンプルを分析した。イムノブロットおよびIPデータと同様に、これらの結果は、ミスフォールディング状態のPrPは、凝集のためペルオキシ亜硝酸による破壊から保護されることを示す。
【図4A−B】EPAを使用する、凝集したアミロイドβ(Aβ)の検出を示す図である。APPのAβ領域中の6E10エピトープは、正常な脳(パネルA)、およびタンパク質凝集を誘導するために低いpHで処理した脳ホモジェネート中(パネルB)と比較して、アルツハイマー病の脳内ではペルオキシ亜硝酸による修飾に対して影響を受けにくい。
【図4C−D】EPAを使用する、凝集したアミロイドβ(Aβ)の検出を示す図である。in vitroで凝集したAβ1〜42ペプチドは、可溶性非凝集Aβ1〜42と比較して、ペルオキシ亜硝酸修飾に対する6E10エピトープの顕著なエピトープ保護を示す(パネルC)。正常および高濃度のペルオキシ亜硝酸で処理し次いで6E10抗体でイムノブロッティングした凝集Aβ1〜42も、顕著なエピトープ保護を示す(パネルD)。
【図5】SOD1においてDEPCにより修飾され得るエピトープの検出を示す図である。(A)高濃度のDEPCで処理しヒツジ抗SOD1でイムノブロッティングした可溶性SOD1を示す、ウエスウタンブロット。(B)高いDEPC濃度でのSOD1との低い抗体結合のグラフ図。
【図6】EPAを使用する、凝集したα-シヌクレインの検出を示す図である。(A)可溶性および不溶性α-シヌクレインとの抗体結合に対する高濃度のDEPCの影響を示す、ウエスウタンブロット。(B)正常(-)および不溶性(π)α-シヌクレインとの抗体結合の程度を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明は、凝集体を形成するかあるいは他の場合は正常または野生型ポリペプチドにおいては隠蔽されていない1つまたは複数のエピトープの隠蔽をもたらす、正常細胞ポリペプチドの疾患関連ポリペプチド相当物を検出するのに有用な方法を提供する。本発明は、プリオン病などの疾患の病理学における凝集の重要性を認識している。本発明はこの凝集効果も利用し、従来技術の検出アッセイに関する問題点を克服するアッセイを提供する。一実施形態では、本発明の方法を血漿、血清、尿または他の生物サンプル中のPrPScの検出に適用する。本発明の方法は他に、2つ以上の立体配座で存在し、少なくとも1つの立体配座の1つまたは複数の標的エピトープが接触不能である、任意のポリペプチドを検出するのに有用である。一実施形態では本発明は、標的エピトープを含む候補ポリペプチドが、野生型または非野生型立体配座であるかどうか検出する方法を含む。
【0065】
「エピトープ」は、抗体などの検出剤によって認識され結合される、隣接または非隣接アミノ酸(抗原)の配列の一部分を指す。好ましくはエピトープは、検出剤によって認識され結合される3〜10個または6〜10個あるいはそれより多くの隣接アミノ酸を典型的には含む、ポリペプチド上の線状エピトープである。立体配座エピトープは非隣接アミノ酸を含む。立体配座エピトープは時折、例えばイムノブロット膜上での部分的なリフォールディングによって変性後に自力で回復することができる。抗体などの検出剤は3次元構造を認識する。タンパク質分子が三次元構造にフォールディングされるとき、エピトープを形成するアミノ酸は、検出剤がアミノ酸を認識しそれらと結合することができるような形式で位置する。アンフォールディング(変性)タンパク質では、線状エピトープのみが検出剤によって認識され結合される。タンパク質は検出剤と接触する前はアンフォールディング状態なので、接触不能なエピトープは典型的には線状エピトープである。
【0066】
「遮断剤」は、例えばエピトープと結合することによって、あるいは例えば線状エピトープ内のアミノ酸側鎖基において、エピトープが検出剤(常にではないが通常は抗体)と結合するのを妨げるように、エピトープの反応性を修飾し消失させることによって、エピトープの反応性を低下させる物質を指す。遮断剤の一例はペルオキシ亜硝酸である。他の例はメチレン、過酸化水素、二炭酸ジエチル、4-ヒドロキシノネナール(4HNE)、コンジュリトール-B-エポキシドおよび1,2-エポキシ-3-(p-ニトロフェノキシ)プロパンなどのエポキシド、およびジアジリンを含むと思われる。本来の状態のエピトープ認識に重要な接触可能なアミノ酸を飽和状態にする化学的修飾物質は、エピトープ保護技術を適用する際に最も有用である。さらに遮断剤は、標的エピトープをリン酸化、グリコシル化、あるいは他の場合は修飾することができる。遮断剤は、エピトープと結合するペプチド、抗体または抗体断片を含むこともできる。遮断剤は、接触可能なアミノ酸を効率良く修飾しなければならない(例えば、接触可能なアミノ酸の少なくとも50%、75%、90%、95%または99%を修飾する)。
【0067】
「接触可能なエピトープ」は、本発明の方法において遮断剤との反応に利用可能な標的エピトープである。例えば、遮断剤との反応に利用可能なエピトープが接触可能なエピトープである。遮断剤と反応した後、接触可能なエピトープは検出剤との結合を妨げられる(この反応ステップの後、反応したエピトープは遮断エピトープと呼ぶことができる)。
【0068】
「抗体」は、1つまたは複数のタンパク質のエピトープ、例えば疾患関連タンパク質のエピトープなどとも特異的に反応する、完全抗体およびその断片を含むものとする。抗体は従来の技法を使用して断片化することができ、それらの断片は以下に記載したのと同じ方法で有用性に関してスクリーニングする。例えば、ペプシンで抗体を処理することによって、F(ab')2断片を生成することができる。生成したF(ab')2断片を処理して、ジスルフィド結合を還元しFab'断片を生成することができる。
【0069】
「アプタマー」は、タンパク質またはペプチド標的と特異的に相互作用することができる、ペプチド、RNAまたはDNA分子などのマクロ分子を意味する。
【0070】
「接触不能なエピトープ」は、化学的遮断剤による標的エピトープの修飾が、例えば野生型ポリペプチドに対して異なるミスフォールディングによって、ミスフォールディング状態のポリペプチドの凝集によって、あるいはポリペプチドの翻訳後修飾によって、妨げられるかあるいは著しく低下する(例えば、少なくとも50%、75%、90%または95%低下する)ことを意味する。幾つかの場合、遮断剤による標的エピトープの修飾を妨げるかあるいは著しく低下させる障害(例えばミスフォールディングまたは凝集)を除去することによって、接触不能なエピトープを接触可能なエピトープに転換する。接触可能なエピトープに転換される接触不能なエピトープは、「露出エピトープ」と呼ぶこともできる。
【0071】
「検出剤」は、エピトープと結合し検出することができる物質、例えばポリペプチドを含むサンプルをプローブ処理するために使用することができるプリオンポリペプチドのエピトープに特異的な抗体などを指す。ポリペプチドがアンフォールディング状態になった後に、検出剤が非遮断、非修飾状態のエピトープと優先的に結合するように検出剤を使用する。
【0072】
「疾患関連タンパク質または疾患関連ポリペプチド」は、ポリペプチドの調節または高次立体配座が野生型または非疾患立体配座と異なり、突然変異体、変異体およびそれらの多形型を含む疾患または障害状態と関係があるポリペプチドを指す。疾患関連タンパク質または疾患関連ポリペプチドは、非野生型立体配座タンパク質またはポリペプチドと呼ぶこともできる。調節立体配座は、1つのタンパク質分子の三次元構造の立体配座の変化を指す。高次立体配座は、1つに凝集した多数のタンパク質分子の三次元構造の立体配座の変化を指す。凝集体は1つまたは複数の異なるタンパク質からなっていてよく、非タンパク質分子と結合してよい。疾患関連タンパク質またはポリペプチドを含めた野生型および非野生型候補ポリペプチドは、細胞で発現され(すなわちバキュロウイルス系などを使用して細菌で発現され)in vitroで翻訳されたポリペプチドなどの組換えタンパク質も含む。
【0073】
「野生型フォールディング状態の立体配座」は、非疾患または非障害状態のタンパク質の野生型のフォールディング状態の立体配座を指す。
【0074】
「ミスフォールディング状態の立体配座」は、その立体配座が野生型立体配座と異なる、疾患または障害状態のポリペプチドのフォールディング状態の立体配座を指す。立体配座の違いは差別的なフォールディングの結果である。差別的なフォールディングは、タンパク質の凝集を引き起こす可能性がある。
【0075】
「野生型立体配座」は、その通常または正常状態あるいは参照または所望状態のポリペプチドの立体配座を指し、非疾患または非障害状態のポリペプチドを含むことができる。
【0076】
「非野生型立体配座」は、野生型ポリペプチドの立体配座と異なるポリペプチドの立体配座を指し、野生型立体配座と異なる疾患または障害のポリペプチドの立体配座を含むことができる。立体配座の違いは、野生型ポリペプチドと比較して差別的なフォールディング、ポリペプチド凝集または差別的な翻訳後修飾の結果である可能性がある。ポリペプチド凝集の場合、凝集は立体配座の変化ではなくエピトープの接触しやすさを妨げる可能性がある。
【0077】
アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびパーキンソン病/レビー小体型痴呆(PD、LBD)などの神経変性病は、加齢群およびヘルスケアシステムに対する重大な課題を提起する。グループとしての神経変性病に関する、特異的な生化学試験は存在しない(1、2)。散発性AD、ALS、およびPD/LBDはいずれも、ADにおけるアミロイド前駆体タンパク質(APP)のAβ断片;ALSにおけるスーパーオキシドジスムターゼ-1(SOD1)、およびPDおよびLBDにおけるα-シヌクレイン(1)を含めた、ミスフォールディング状態のポリペプチドの病原性マルチマーの神経蓄積と関係がある(フィブリル、原繊維、および無定形凝集体など)。プリオン病と同様に、これらの凝集傾向があるポリペプチドをコードする遺伝子の突然変異は、常染色体優性の家族形のAD、ALS、およびPDと関係がある。疾患関連のミスフォールディング状態のポリペプチド凝集体の検出は、神経変性病用の特異的で感度の良い生前診断試験を可能にする。
【0078】
この目的のために本発明者は、「エピトープ保護アッセイ」(EPA)、瀕死のニューロンから放出された凝集体の「シンク」として働く組織、ならびに血液およびCSFなどの接触可能な生物体液中に凝集したポリペプチドを検出するための革新的技術を発明している。この方法は場合によっては、
サンプルと化学的修飾物質を反応させるステップと、
処理したポリペプチドを脱凝集および変性させるステップと、
化学的修飾物質によって遮断された特定のエピトープに対する抗体などの検出剤でサンプルをプローブ処理するステップと、
物質と結合したポリペプチドを(例えばELISAによって)検出するステップとからなる。
【0079】
サンプル中の正常な可溶性ポリペプチドは、アッセイ中「目に見えない状態」になる。何故なら、接触可能なエピトープは検出剤によって検出されず(例えば抗体認識に対して遮断される)、凝集体中のポリペプチドの一部分は、それらの内部封鎖による化学的修飾から「保護され」、脱凝集後に依然として検出剤によって(例えば抗体との結合によって)検出可能だからである。
【0080】
本発明の方法は、ポリペプチドのミスフォールディングおよび/または凝集によって特徴付けられる疾患、例えば前述の疾患、あるいは他の場合差別的に接触可能な疾患および野生型タンパク質立体配座の標的エピトープを有する、ポリペプチドによって特徴付けられる疾患または障害などを診断するのに有用である。
【0081】
本発明者は、低濃度の変性剤の存在下における低pHでの組換えマウスのプリオンポリペプチド(rmPrP)の治療は、ミスフォールディング状態の疾患関連プリオンポリペプチドのイソ型PrPScを暗示する、高いβ-シート含量をポリペプチドが得るのを誘導することも見出している。rmPrPのこの転換は、チロシン側鎖4の高い溶媒接触性と関係がある。本発明者は、酸および変性剤による正常な脳ホモジェネートの処理によって、PrPが界面活性剤不溶性になることを引き起こすことを見出している(29)。正常およびミスフォールディング状態のPrPCのチロシンおよび他の残基の表面接触性をプローブ処理するために、正常および酸処理したミスフォールディング状態のヒト脳組織を、化学硝酸化合物であるペルオキシ亜硝酸で処理した。脳組織のペルオキシ亜硝酸処理は、イムノブロッティング、免疫沈降およびELISAによって測定すると、抗PrP抗体3F4および6H4の結合の低下を引き起こした。ペルオキシ亜硝酸誘導型のエピトープ遮断は、ミスフォールディング状態のPrPより正常な脳のPrPにおいて顕著であり、凝集の保護効果が示された。スクレーピー感染した脳のPrPの3F4および6H4エピトープがペルオキシ亜硝酸誘導型の修飾から部分的に保護された、正常およびスクレーピー感染したハムスターの脳において、同様の発見を観察した。抗ニトロチロシン抗体を用いたペルオキシ亜硝酸処理した脳の免疫沈降は、PrPがチロシン残基において硝化されるか、あるいはPrP付近の他のポリペプチドが硝化され、PrPと同時免疫沈降することを示唆する。
【0082】
したがって本発明は、PrPScだけには限らないがこれを含めたポリペプチド凝集を測定する方法であって、
サンプルと化学的修飾物質を反応させるステップであって、この場合このような物質はペルオキシ亜硝酸だけには限らないが、ペルオキシ亜硝酸であってよいと思われるステップと、
熱、界面活性剤、またはカオトロピック剤によって化学的に修飾されたサンプルを脱凝集および/または変性させるステップと、
プリオンポリペプチドのエピトープに特異的な抗体を用いてプローブ処理するステップとを含む方法を含む。
【0083】
さらに本発明者は、本発明の方法はアルツハイマー病タンパク質を検出するのに有用であることを示している。
【0084】
一実施形態では、アルツハイマー病の検出法は、
ポリペプチドのサンプル(サンプルは典型的には、疾患関連タンパク質またはポリペプチド、例えばアミロイド前駆体ポリペプチドまたはアミロイドβまたはtauおよび/または対応する野生型ポリペプチドなどの全体または一部分、および多くの場合は多量の1つまたは他方を含む)と、それらが検出剤と結合することができないように露出したエピトープを修飾する化学的修飾物質、典型的にはペルオキシ亜硝酸などの遮断剤を反応させるステップと、
サンプル中のポリペプチドを脱凝集および/または変性させるステップと、
標的エピトープに対する抗体などの検出剤を用いてプローブ処理して、脱凝集および/または変性の前にポリペプチドが接触不能な標的エピトープを含んでいたかどうかを決定するステップを含む。
【0085】
Aβ含有血管またはプラークフィラメントは、トリソミー21(ダウン症候群)、遺伝性小脳出血およびアミロイドーシス(HCHWA)-オランダ型、および正常な脳の老化(Mori、Hら、JBC (1992) 267 : 17082〜86)などの状態とも関係がある。したがって、一実施形態ではAβ疾患関連タンパク質の検出は、疾患HCHWA-オランダ型または正常な脳の老化の徴候を示す。
【0086】
さらに本発明の方法は、磁気共鳴画像法(MRI)またはコンピュータ断層撮影(CT)スキャンなどの他の診断法と組み合わせて、診断を確認することができる。
【0087】
本発明の方法は、1つまたは複数の標的エピトープが少なくとも1つの立体配座に隠れている2つ以上の立体配座で存在する標的を含む、タンパク質またはポリペプチドを検出するのに有用である。
【0088】
したがって本発明は、
それらが検出剤と結合することができないように露出したエピトープを修飾すると定義される化学的修飾物質(典型的には遮断剤)とポリペプチドを反応させるステップと、
サンプル中のポリペプチドを脱凝集および/または変性させるステップと、
標的エピトープに対する抗体などの検出剤を用いてプローブ処理して、脱凝集および/または変性の前にポリペプチドが化学的修飾物質と接触不能な標的エピトープを含んでいたかどうかを決定するステップとを含む検出法に関する。
【0089】
この結果は、存在するポリペプチドの型(すなわち、野生型タンパク質または非野生型タンパク質)の指標である接触不能なエピトープを、ポリペプチドが含むかどうかを示す。
【0090】
本発明は、遮断剤と反応した標的エピトープを含む候補ポリペプチドが、野生型立体配座または非野生型立体配座であるかどうかを検出する方法であって、
候補ポリペプチドを修飾して任意の接触不能な標的エピトープを接触可能な標的エピトープに転換するステップと、
接触不能な標的エピトープから接触可能な標的エピトープに転換された標的エピトープと選択的に結合する検出剤とポリペプチドを接触させるステップであって、検出剤と転換型標的エピトープの間の結合が、候補ポリペプチドが非野生型立体配座であったことを示し、検出剤と標的エピトープの間の結合の欠如が、ポリペプチドが野生型立体配座であったことを示すステップとを含む方法も含む。
【0091】
他の適用例では本発明は、固有に修飾されたポリペプチドを検出する方法であって、その修飾が検出剤との反応から標的エピトープを保護し、
接触可能な標的エピトープを選択的に遮断する遮断剤とポリペプチドを接触させるステップであって、非野生型立体配座または野生型立体配座の1つでは、標的エピトープが接触可能であり遮断剤と反応し、他の立体配座では、標的エピトープは接触不能であり遮断剤と反応しないステップと、
固有に修飾されたポリペプチドの標的エピトープから固有の修飾を除去する物質とサンプルを反応させるステップと、
サンプル中のポリペプチドを脱凝集および/または変性させるステップと、
標的エピトープに対する抗体などの検出剤を用いてプローブ処理して、候補ポリペプチドが固有に修飾されたポリペプチドであるかどうかを決定するステップとを含む方法も含む。
【0092】
化学的修飾物質
本発明の化学的修飾物質は、本発明の方法によってエピトープが目に見えない状態になる(すなわち検出剤によって検出されない、あるいは検出が低下する)ように標的エピトープ残基を修飾する、任意の化学物質(生物物質を含む)を含む。例えばペルオキシ亜硝酸は、チロシン、セリン、メチオニン、ヒスチジンおよびトリプトファン、ならびにシステインおよび他のアミノ酸を優先的に修飾する(25、26)。DEPCはヒスチジンを優先的に修飾し(37)、無水コハク酸はアミンを含む残基を優先的に修飾する。コンジュリトール-B-エポキシドおよび1,2-エポキシ-3-(p-ニトロフェノキシ)プロパンを含めたエポキシドは、アスパルチルプロテアーゼの触媒残基などの、カルボキシル基側鎖の「自殺的阻害」用に広く使用されている反応基である(19、20)。過酸化水素およびメチレンも有用である。これらの化学物質はエピトープを酸化、硝化、還元、あるいは他の場合は修飾することによって標的エピトープを修飾することができる。さらにエピトープは、標的エピトープを覆い隠すリン酸基(リン酸化によって)、またはグリコシル基(グリコシル化によって)、および/または他の化学基である化学的修飾物質によって修飾することができる。
【0093】
したがって一実施形態では、化学的修飾物質はペルオキシ亜硝酸、DEPC、過酸化水素、無水コハク酸、メチレンおよびエポキシド(コンジュリトール-B-エポキシドおよび1,2-エポキシ-3-)p-ニトロフェノキシ)プロパンおよび/またはこれらの関連変形の群から選択される。
【0094】
候補ポリペプチドとの反応後、化学的修飾物質を除去する。遮断剤の除去に関してここに列挙する本発明の方法ステップは、物理的に、化学的に、あるいは他の場合は候補ポリペプチドから遮断剤を除去してさらなる反応を妨げることを典型的には含むことは、当業者には容易に明らかである。除去は場合によっては、消費または分解されることによって候補ポリペプチドから遮断剤が除去されるように(例えば、遮断剤が不活性または酸化状態になるように)、充分な時間を経過させることを含む。除去は場合によっては、化合物を加えて任意の過剰な遮断剤と反応させてそれを不活性化させることを含む。除去は場合によっては、従来の濾過技法による遮断剤の物理的濾過、または候補ポリペプチドと遮断剤を分離するための遠心分離、またはカラム中での遮断剤または候補ポリペプチドと固定支持体との結合などによる、遮断剤を除去するのに有用な支持体との物理的結合も含む。
【0095】
除去とは、例えば物理的または化学的に遮断剤を不活性化させること、候補ポリペプチドを含むサンプルと遮断剤を接触させないこと、または遮断剤が消費または分解されるのに充分な量の時間を経過させることによって、遮断剤によるさらなる反応を妨げることを意味する。
【0096】
標的エピトープの化学的修飾は、抗体認識に対するエピトープの隠蔽をもたらす。一実施形態では、ペルオキシ亜硝酸などの遮断剤を用いた処理は、非野生型ポリペプチドまたは疾患関連タンパク質などの凝集タンパク質上のエピトープではなく、モノマータンパク質上のエピトープの破壊をもたらす。
【0097】
前処理
本発明の方法は、サンプルを前処理してEPA検出を高めることも企図する。例えば、血液または尿中においてプリオンなどの凝集タンパク質の低い検出が観察される場合、事前に清澄化する戦略を容易に使用して、界面活性剤、沈殿剤、および吸着剤、例えば当業者に知られている市販のELISAアッセイにおいて典型的に使用されているものなどを用いて検出を高める。ポリペプチドサンプルは、界面活性剤またはクアニジンなどの物質あるいは熱を用いて前処理することもできる。最終的にはサンプルを、遠心分離などの方法によって濃縮または事前にことができる。したがって一実施形態では、本発明の方法を使用する前にサンプルを前処理する。
【0098】
ミスフォールディングまたは凝集タンパク質およびポリペプチドの検出
本発明者は、1つの立体配座が検出剤と接触可能であり他の立体配座は修飾剤による接触不能なエピトープの修飾により接触不能である標的エピトープを有する、ポリペプチドを検出する方法を発見している。本発明者は、本発明の方法において標的エピトープとして有用である、幾つかのエピトープを同定している。他の標的エピトープは、以下に記載したのと同様に同定する。
【0099】
標的エピトープ
2つ以上の立体配座で存在するポリペプチドの標的エピトープを同定し、抗体、アプタマーまたはペプチドなどの検出剤によって検出することができるエピトープは、1つの立体配座では接触可能であり他の立体配座では接触不能である。ポリペプチドの1つの立体配座でエピトープが遮断剤による検出から遮断されることが分かっている場合、そのエピトープが標的エピトープである。標的エピトープを同定するために、抗体などの検出剤を選択する。検出剤が抗体である場合、それはモノクローナル抗体であることが好ましいが、ポリクローナル抗体も使用可能である。線状または非線状エピトープであってよく、抗体によって特異的に認識されるエピトープは、場合によっては知られているエピトープである。ペルオキシ亜硝酸などの候補化学的修飾物質を選択する。検出剤によって認識されるエピトープが知られている場合、候補化学的修飾物質は、標的エピトープ中のアミノ酸残基を修飾するその能力に基づいて選択することが好ましい。例えば、ペルオキシ亜硝酸はチロシンおよびヒスチジン残基を優先的に修飾し、システインおよび他のアミノ酸をある程度修飾する。チロシンおよび/またはヒスチジンが標的エピトープ中に存在する場合、化学的修飾物質としてペルオキシ亜硝酸を場合によっては選択する。野生型ポリペプチドを含むサンプルの等分試料、および非野生型ポリペプチドを含むサンプルの等分試料を、高濃度の選択した化学的修飾物質と反応させる。それぞれのサンプルは、組換えポリペプチド、細胞抽出物または野生型または非野生型立体配座のいずれかのポリペプチドを発現することが知られている組織サンプルの1つまたは複数を含む。ポリペプチドのサンプルは、同様のポリペプチド濃度を有することが好ましい。あるいは非野生型立体配座のポリペプチドサンプルは、非野生型立体配座への転換を誘導する酸などの物質で、野生型立体配座のポリペプチドを処理することによって得る。
【0100】
ポリペプチドのそれぞれのサンプルを変性および/または脱凝集させて、任意の接触不能な推定標的エピトープを接触可能な標的エピトープに転換する。次いでポリペプチドのそれぞれのサンプルを、選択した検出剤と接触させる。ELISA、およびウエスタンブロッティングなどの当分野で知られている技法を使用して検出を行う。保護剤で処理した野生型立体配座のポリペプチドを含むサンプルに関して検出剤によって生成するシグナルの量と、保護剤で処理した非野生型立体配座のポリペプチドを含むサンプルに関して検出剤によって生成するシグナルの量を比較する。1つまたは複数の濃度の化学的修飾物質における検出の違いは、1つの立体配座のエピトープが保護されることを示し、そのエピトープが標的エピトープであることをさらに示す。一定範囲の化学的修飾物質濃度における違いは、標的エピトープがEPAに有用であることを示す。このプロセスは異なる遮断剤および/または検出剤を用いて繰り返し、標的エピトープを同定する。典型的には遮断剤を標準化および滴定して、メチレン24,25などの「共通の」化学的修飾物質を使用して実験を行い、これは場合によっては標的エピトープのより均一で完全な保護を生み出す。
【0101】
したがって一例では、2つ以上の立体配座を有するポリペプチド中の標的エピトープであって、1つの立体配座が検出剤と接触可能であり他の立体配座は接触不能である標的エピトープを同定する方法は、
野生型立体配座のポリペプチドを含むサンプルおよび非野生型立体配座のポリペプチドを含むサンプルと、典型的には1つまたは複数の濃度の化学的修飾物質を反応させるステップと、
それぞれのサンプルを変性および/または脱凝集させて、任意の接触不能な標的エピトープを接触可能な標的エピトープに転換するステップと、
サンプルを検出剤と接触させるステップと、
化学的修飾物質で処理した野生型立体配座のポリペプチドを含むサンプルに関して検出剤によって生成するシグナルと、化学的修飾物質で処理した非野生型立体配座のポリペプチドを含むサンプルに関して検出剤によって生成するシグナルを比較するステップであって、野生型ポリペプチドを含むサンプルと非野生型サンプルを含むサンプルの間の検出の違いが、1つの立体配座のエピトープが保護されることを示し、そのエピトープが標的エピトープであることをさらに示すステップとを含む。
【0102】
EPAに関する条件
ペルオキシ亜硝酸、過酸化水素およびメチレン(前駆体ジアジリンのUV光による光分解に基づく)または他の修飾物質を用いる滴定実験は、エピトープ保護に関する条件を改善するのに有用である。
【0103】
疾患関連タンパク質を含む2つ以上の立体配座のポリペプチドを含むことが知られているサンプルは、場合によってはイムノブロッティングおよびELISAを使用して反応させる。それぞれの場合、サンプルを調製し、高濃度の修飾物質と場合によっては混合させ、例えばイムノブロッティング、ELISAおよび/または時間解像蛍光によって処理する。これによって化学物質の型および濃度を定義し、疾患関連タンパク質を含めてモノマータンパク質と凝集タンパク質の間の最大の対比が可能になる。他の情報を与える実験は、組換え疾患関連(非野生型)タンパク質(本出願中に列挙した酸処理したプリオンタンパク質、または突然変異p53タンパク質、および他のタンパク質など)、および疾患関連タンパク質を含むサンプルの代わりに正常(野生型)タンパク質の使用を含むことができる。
【0104】
幾つかの場合、疾患関連タンパク質は、化学的修飾に関して組換え疾患関連タンパク質が有するのと異なる性質を有する可能性があり、1つのサンプル型(脳組織など)の疾患関連タンパク質は、血液中を循環する疾患関連タンパク質、または尿中で検出可能な疾患関連タンパク質とは異なる化学的修飾性を示す可能性がある。知られている技法を使用して、当業者は内因性プリオンに関する最適条件を容易に確認するであろう。
【0105】
EPAは、生物組織および体液中の疾患関連タンパク質を検出することによって優れた商業的有用性を達成し、そのための技術は現在存在しない。幾つかの疾患関連タンパク質は非常に少量である。例えばプリオンは非常に少量であり(バイオアッセイにより10〜100プリオン/mL)、尿中のプロテアーゼ耐性PrPは多量の体液を沈殿させることによって断続的/散発的にのみ検出可能である。さらに、有望な血液試験はいずれも、高濃度の野生型タンパク質(すなわち、(典型的にはPrPScの106倍を超える)PrPC)、および異種血漿タンパク質による「遮断」に対処しなければならない。最適化した化学修飾法およびDELFIA-TRF系を使用して、血液および尿中におけるEPAに関する感度の閾値は、以下のものを使用して場合によっては測定する。
1.疾患関連タンパク質の滴定で「汚染された」動物およびヒトの血漿および尿;
2.疾患関連タンパク質を発現するモデル疾患動物由来の血漿および尿。
【0106】
非侵襲経路によって臨床的に入手可能な生物体液は、ヒトおよび動物において凝集する疾患関連タンパク質と関係がある疾患を、診断およびスクリーニングするための実際的な生前試験用の基質となる。本発明の方法は、死後試験においても有用である。当業者は、正常血液および尿において「疾患関連タンパク質汚染」滴定を用いるEPAによって、EPAがこれらの生物体液中で「遮断因子」によって影響を受けないことを示す、バッファー中での同じ疾患関連タンパク質の滴定と同等のDELFIA-TRFシグナルが明らかとなるかどうかを容易に決定する。異種タンパク質による疾患関連タンパク質の優先的「遮断」は、化学的修飾物質に対するエピトープ保護を実際に高めることができる。血液または尿中の疾患関連タンパク質の低い検出が検出される場合、事前に清澄化戦略を容易に使用して、例えば当業者に知られている市販のELISAアッセイにおいて典型的に使用されている界面活性剤、沈殿剤、および吸着剤を用いて疾患関連タンパク質の検出を高める。
【0107】
一実施形態では、本発明の方法は、ミスフォールディングまたは凝集ポリペプチド中の標的エピトープの検出に関する。他の実施形態では本発明は、2つ以上の立体配座で存在することができるポリペプチドの検出を改善または最適化するための方法を提供する。他の実施形態では、ミスフォールディングおよび/または凝集ポリペプチドの検出は疾患(疾患関連タンパク質)を示す。他の実施形態では、化学的に修飾することができるポリペプチドのエピトープと特異的に結合する抗体、アプタマーまたはペプチドなどの検出剤を使用してポリペプチドを検出する。他の実施形態では、これらのポリペプチドは疾患関連タンパク質である。候補タンパク質のエピトープに対する抗体は市販の抗体であるか、あるいは当業者によって容易に調製され、かつ抗体断片、および単鎖抗体を含む。前述の方法はいずれも、本出願中に記載するステップを使用して容易に実施される。
【0108】
抗体
本発明は、プリオン疾患関連タンパク質を認識するビオチン3F4および3F4および6H4を含めた、知られている抗体の結合剤としての使用を企図する。3F4はMKHMエピトープに対して反応し、6H4はDYEDRYYREエピトープに対して反応する。さらに、Aβを認識する6E110は、EFRHDSエピトープ(残基3〜8)に対して反応する。
【0109】
本発明の方法と共に場合によっては使用する、他の抗体および(知られている場合)認識されるエピトープを以下の表に列挙する。
【0110】
【表1】

【0111】
疾患関連タンパク質のエピトープに対する抗体は、当分野で知られている技法を使用して調製する。例えば、推定標的エピトープを含む疾患関連タンパク質のペプチドを使用することによって、ポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体を標準的な方法を使用して作製する。哺乳動物(例えばマウス、ハムスター、またはウサギ)は、哺乳動物中での抗体応答を誘導する免疫原形のペプチドを用いて免疫処置することができる。免疫原性をペプチドに与えるための技法には、担体との結合または当分野でよく知られている他の技法がある。例えば、タンパク質またはペプチドをアジュバントの存在下で投与する。免疫処置の進行は、血漿または血清中の抗体力価を検出することによって調べることができる。標準的なELISAまたは他のイムノアッセイ手順を、抗原としての免疫原と共に場合によっては使用して、抗体のレベルを評価する。免疫処置の後、抗血清を得ることができ、望むならばポリクローナル抗体を血清から単離することができる。
【0112】
モノクローナル抗体を産生するために、抗体産生細胞(リンパ球)を免疫処置した動物から場合によっては採取し、標準的な体細胞融合手順によってミエローマ細胞と融合させ、これによってこれらの細胞を不死化させ、ハイブリドーマ細胞を生成させる。このような技法は当分野ではよく知られている、(例えば、KohlerおよびMilsteinによって本来開発されたハイブリドーマ技法(Nature 256、495〜497 (1975))、およびヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozborら、Immunol.Today 4、72 (1983))、ヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBV-ハイブリドーマ技法 (Coleら、Monoclonal Antibodies in Cancer Therapy (1985) Allen R. Bliss、Inc、77〜96ページ)、およびコンビナトリアル抗体ライブラリーのスクリーニング(Huseら、Science 246、1275 (1989))などの他の技法)。ハイブリドーマ細胞は、ペプチドと特異的に反応する抗体の産生に関して免疫化学的にスクリーニングすることができ、モノクローナル抗体は単離することができる。
【0113】
キメラ抗体誘導体、すなわち非ヒト動物可変領域とヒト定常領域を組み合わせた抗体分子も、本発明の範囲内であると企図される。キメラ抗体分子は、例えばマウス、ラット、または他種の抗体由来の抗原結合ドメイン、およびヒト定常領域を含む。本発明の疾患関連タンパク質のエピトープを認識する免疫グロブリン可変領域を含むキメラ抗体を作製するために使用される従来の方法(例えば、Morrisonら、Proc.Natl Acad.Sci.U.S.A.81、6851 (1985) ; Takedaら、Nature 314、452 (1985)、Cabillyら、米国特許第4,816,567号; Bossら、米国特許第4,816,397号; Tanaguchiら、欧州特許公開EP171496 ; 欧州特許公開0173494、英国特許GB2177096Bを参照)。
【0114】
疾患関連タンパク質のエピトープに対して反応性がある単鎖Fvモノクローナル抗体などだけには限られないが、これらの特異的抗体、または抗体断片は、疾患関連タンパク質の核酸分子から生成されたペプチドを有する細菌内で発現される免疫グロブリン遺伝子、またはその一部分をコードする発現ライブラリーをスクリーニングすることによって容易に生成される。例えば、完全Fab断片、VH領域およびFV領域は、ファージ発現ライブラリーを使用して細菌内で発現される(例えばWardら、Nature 341、544〜546 : (1989) ; Huseら、Science 246、1275〜1281 (1989) ;およびMcCaffertyら、Nature 348、552〜554 (1990)を参照)。あるいはScID-huマウス、例えばGenpharmによって開発されたモデルを使用して、抗体または抗体断片を産生する。
【0115】
疾患関連タンパク質のエピトープ、または誘導体、例えば酵素複合体または標識誘導体などと特異的に反応する抗体は、さまざまなサンプル(例えば生物物質)中の疾患関連タンパク質のエピトープを検出するのに有用である。これらは診断または予後用試薬として有用であり、タンパク質発現のレベルの異常、または構造の異常、および/または疾患関連タンパク質のエピトープの一過性、組織、細胞、または亜細胞位置を検出するために容易に使用される。in vitroイムノアッセイも、個々の療法の有効性を評価または調査するのに有用である。本発明の抗体をin vitroで使用して、疾患関連タンパク質を生成するように遺伝子工学によって処理した細胞中の疾患関連タンパク質などの、2つ以上の立体配座で存在するポリペプチドの遺伝子の発現レベルを測定することもできる。
【0116】
疾患関連タンパク質のエピトープの抗原決定基と抗体の間の結合相互作用に頼る、任意の知られているイムノアッセイにおいて抗体は有用である。このようなアッセイの例は、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(例えば、サンドウィッチELISAを含めたELISA)、免疫蛍光、免疫沈降、ラテックス凝集反応、赤血球凝集反応、および組織化学試験である。サンプル中の疾患関連タンパク質を検出および定量化して、その役割を測定し疾患関連タンパク質によって引き起こされる疾患を診断するのに、抗体は有用である。
【0117】
特に本発明の抗体は、疾患関連タンパク質を検出するため、それを個々の細胞および組織、および特定の亜細胞位置に局在させるため、ならびに発現のレベルを定量化するための、例えば細胞および亜細胞レベルでの免疫組織化学分析において有用である。
【0118】
疾患関連タンパク質などのポリペプチドを検出するために、光学および電子顕微鏡を使用して抗原を局在させるための当分野で知られている細胞化学技法。一般には、本発明の抗体は検出可能な物質で場合によっては標識して、認識したポリペプチドは検出可能な物質の存在に基づいて組織および細胞中に局在させる。検出可能な物質の例には以下の:放射性同位体(例えば、3H、14C、35S、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、ルミノールなどの発光標識;酵素標識(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ)、ビオチニル基(標識アビジン、例えば蛍光マーカーを含むストレプトアビジン、あるいは光学または比色法によって検出することができる酵素活性によって検出することができる)、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)があるがこれらだけには限られない。幾つかの実施形態では、さまざまな長さのスペーサーアームを介して標識を結合させて、考えられる立体障害を減らす。電子顕微鏡によって容易に目に見えるフェリチンまたは金コロイドなどの高電子密度の物質と、抗体を結合させることもできる。
【0119】
抗体またはサンプルは、細胞、抗体などを固定することができる、担体または固相担体に固定することができる。例えば担体または固相担体は、ニトロセルロース、またはガラス、ポリアクリルアミド、はんれい岩、および磁鉄鉱であってよい。担体物質は球形(例えばビーズ)、円筒形(例えば、試験管またはウエルの内側表面、あるいはロッドの外側表面)、またはフラット(例えばシート、試験片)を含めた任意の考えられる形状を有することができる。疾患関連タンパク質のエピトープに対して反応性がある抗体に関して特異性を有する二次抗体を導入することによって一次抗原-抗体反応を増幅させる、間接的な方法を使用することもできる。例えば、疾患関連タンパク質のエピトープなどのポリペプチドエピトープに対する特異性を有する抗体がウサギIgG抗体である場合、二次抗体は本明細書に記載したのと同様の検出可能な物質で標識したヤギ抗ウサギγグロブリンであってよい。
【0120】
放射性標識を検出可能な物質として使用するとき、オートラジオグラフィーによって疾患関連タンパク質を位置特定することができる。オートラジオグラフィーの結果は、さまざまな光学的方法により、あるいは粒子を計数することにより、オートラジオグラフ中の粒子の密度を測定することによって定量化することができる。
【0121】
アプタマー
アプタマーも、疾患関連タンパク質などのポリペプチドを検出するために本発明の方法において有用である。アプタマーは、高い特異性および感受性を有するタンパク質などの標的を認識することができるマクロ分子である。
【0122】
核酸アプタマーは、systemic evolution of ligands by exponential enrichment(SELEX)という名称の手順によってコンビナトリアルライブラリーから単離される小分子である(Cerchia Lら、FEBS Letters 528 (2002) 12〜12中に総説)。この技術を使用して、高い標的特異性および選択性でタンパク質と結合するアプタマーを同定することができる。その親和性は、抗体抗原相互作用と比較可能である。本来のタンパク質と変性タンパク質の間の違いが示されてきており(Bianchiniら、Immunol Methods (2001) 252 : 191〜97)、アプタマーは本発明の方法に有用な検出剤となる。
【0123】
パプタマーとしても知られるペプチドアプタマー、チオレドキシン挿入タンパク質またはペルチュバゲン(pertubagens)は、足場として働く構造的に安定したタンパク質の溶媒露出表面で挿入ペプチドが発現される人工タンパク質である(Crawford Mら、Brief Funct Genomic Proteomic.2003 Apr ; 2 : 72〜9)。ペプチドアプタマーは抗体と同様に働くことができ、抗体に匹敵する解離定数、時には抗体より良い解離定数を有する。それらを使用してニトロセルロース上に固定されたタンパク質をプローブ処理することができる(Crawford Mら、Brief Funct Genomic Proteomic.2003 Apr ; 2 : 72〜9)。ペプチドアプタマーは、1アミノ酸の違いなどの小さな変化に関する異なる親和性を示すことが示されてきており、ペプチドアプタマーは、異なるフォールディングまたは凝集立体配座を示す疾患関連タンパク質などの、2つ以上の立体配座で存在するポリペプチドを検出するのに有用となる。
【0124】
したがって本発明の一実施形態では、核酸および/またはペプチドアプタマーを本発明の方法と共に使用して、野生型タンパク質と疾患関連立体配座タンパク質を区別する。一実施形態では、疾患関連タンパク質はプリオンタンパク質である。他の実施形態では、疾患関連タンパク質はアミロイド-βである。他の実施形態では、疾患関連タンパク質はtauタンパク質である。他の実施形態では、疾患関連タンパク質はα-シヌクレインである。他の実施形態では、疾患関連タンパク質はSOD-1である。
【0125】
変性および脱凝集
本発明の方法では、例えば熱、界面活性剤および/またはカオトロピック剤を用いてポリペプチドを変性させることによって、ポリペプチドを場合によっては修飾する。同型の他のポリペプチドから、および他の分子からポリペプチドを脱凝集させるための脱凝集剤を用いた処理によって、ポリペプチドを場合によっては修飾し、脱凝集剤はカオトロピック剤、界面活性剤および熱からなる群の少なくとも1つから場合によっては選択される。カオトロピック剤はグアニジン塩、尿素、およびチオ尿素などだけには限られないがこれらを含むことができる。
【0126】
塩酸グアニジンでタンパク質を処理することによって、検出可能な保護タンパク質の量が増大することを本発明者らは示している。
【0127】
組み合わせ型脱凝集法は最適な脱凝集をもたらすことができる。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS;ラウリル硫酸ナトリウムとしても知られている)ローディングバッファー中でサンプルを煮沸することによって、疾患関連タンパク質などのポリペプチドの可溶性を増大させることができ、検出剤との相互作用に利用可能なエピトープを増大させることができる。例えば、SDSローディングバッファー中でサンプルを煮沸することは増大した可溶性をもたらし、サンドウィッチELISAによる保護エピトープの検出を可能にする。ペルオキシ亜硝酸処理後にサンプルをSDSローディングバッファー中で煮沸する場合、サンドウィッチELISAアッセイ系は、組織ホモジェネートサンプル中の凝集した疾患関連タンパク質を同定することができる。8mMを超えるペルオキシ亜硝酸濃度では、擬似処理サンプルと比較して、酸処理サンプル中に2.5〜3倍多くの検出済みPrPが存在する。したがって一実施形態では、修飾剤による処理後、および抗体などの検出剤による検出前に、サンプルをSDSローディング中で煮沸する。
【0128】
時間分解蛍光(TRF)2地点ELISAおよびDissociation Enhanced Lanthanide Fluorolmmunoassay(DELFIA)
前に述べたように、本発明の方法によってELISA技法を使用することができる。Dissociation Enhanced Lanthanide Fluorolmmunassay(DELFIA)技術を使用する時間分解蛍光2地点ELISAは、従来のELISA技法より1000倍感度が良く、本発明の方法と共に使用してin vitro、神経変性のトランスジェニックマウスモデルの神経組織中、およびヒトAD、ALS、PDおよびLBD患者の脳サンプル中に凝集するポリペプチドを検出することができる。
【0129】
DELFIAアッセイは、ユーロピウム(Eu)および時間分解蛍光体(TRF)などのキレート化ランタニド標識トレーサーを使用して、出力シグナルを測定する(33)。ランタニドキレートの利点は、それらの蛍光は強く、従来の蛍光体より200,000倍まで長く続き、非特異的な干渉蛍光が衰えた後にシグナル捕捉を可能にすることである(その発光は比較的寿命が短い非常に固有の蛍光を有する可能性がある生物サンプルには特に重要である)。DELFIA系システムは、わずか100fmol/Euウエルを測定することができる(33)。
【0130】
本発明の一実施形態では、化学的修飾物質および抗体を、感度の良い捕捉-検出「サンドウィッチ」96-ウエルプレートDELFIA TRF系において、Aβ、tau、SOD1、ハンチングチン、α-シヌクレイン、膵島アミロイドポリペプチド、レジスチンおよびp53などの本明細書に記載する凝集した疾患特異的タンパク質の検出で使用する。
【0131】
2地点EPAは、臨床サンプルの凝集体中に封鎖されたタンパク質の検出に関する特異性を増大させる。一実施形態では、2つ以上の化学的に修飾可能なエピトープがそれぞれの試験ポリペプチド中に存在し、この技術を使用する(例えば2地点ELISAにおける使用)診断試験の特異性を増大させると思われる。一実施形態では、化学的に修飾可能なエピトープは同じ化学物質によって修飾する。他の実施形態では、エピトープは2つ以上の異なる化学物質の1つによって修飾する。修飾されたエピトープは同じ抗体によって認識することができるか、あるいはそれらは2つ以上の異なる抗体によって認識することができる。臨床および商業用途に、EPAは感度が良く、in vitroおよびin vivo凝集するポリペプチドに特異的でなければならない。最適な抗体および化学修飾法を用いて、DELFIA-TRF系EPAは可溶性ポリペプチドの105〜106個の分子を検出することができる。これらの凝集体が疾患中のプリオンタンパク質凝集体と同様の大きさである場合、これは1つのポリペプチド凝集体に対応する可能性がある(35、36)。
【0132】
したがって一実施形態では、DELFIA-TRF系EPAを使用して、非常に少量である疾患関連タンパク質、1つのポリペプチド凝集体さえも同定することができる。
【0133】
診断およびスクリーニング適用例
ヒトの神経変性病の生前診断用の、効率の良い、有効かつ安価の診断およびスクリーニング戦略が、加齢群およびヘルスケアシステムに関する連続的な財政圧力を考慮して早急に必要とされる。EPAは関連および接触可能な生物組織および体液中のポリペプチド凝集体を検出することによって臨床的有用性を得るものであり、そのための技術は現在存在しない。一実施形態では、本発明の方法を使用して、疾患関連タンパク質関連疾患を有する個体を診断する。一実施形態では本発明を使用して、神経変性疾患を有する個体を診断する。他の実施形態では本発明を使用して、プリオン関連疾患、AD、HD、ALSおよびPDを含む群から選択される神経変性疾患を有する個体を診断する。他の実施形態では、本発明の方法を死後に使用して、個体が疾患関連タンパク質関連疾患を有していたかどうかを決定する。
【0134】
本発明の方法を使用して、ヒトが疾患関連タンパク質関連疾患を有するかどうかを検出する。他の実施形態では、本発明の方法を使用して、非ヒト動物が疾患関連タンパク質関連疾患を有するかどうかを検出する。他の実施形態では、非ヒト動物は蓄牛、ヒツジおよびシカを含む群の1つである。他の実施形態では、本発明の方法を使用して、家畜が疾患関連タンパク質関連疾患を有するかどうかを検出する。
【0135】
一実施形態では、本発明の方法を使用して生物試料中の疾患関連タンパク質を検出する。生物試料は生物体液、例えばCSF、血清、血液、涙、腹膜滲出液、または尿など、あるいは組織サンプル、例えばバイオプシーまたは脳組織などを含むことができる。一実施形態では、サンプルは生前サンプルである。他の実施形態では、サンプルは死後サンプルである。
【0136】
本発明の方法は、可溶形の疾患関連タンパク質、例えばAβ、tau、SOD1、ハンチングチン、α-シヌクレイン、膵島アミロイドポリペプチド、レジスチンおよびp53タンパク質などの検出を定量化するのに有用である。
【0137】
他の実施形態ではEPAを使用して、CRND8(ヒト突然変異体APP)、マウス脳およびCSF(34)、ならびにG93Aヒト突然変異体SOD1トランスジェニックマウス(13)由来のホモジェネート中の、凝集体検出の感度および特異性を測定する。
【0138】
他の実施形態では本発明を使用して、正常(処理および未処理、低pH)および疾患状態の凍結させたヒト脳(AD、ALS、PD、LBD)由来のホモジェネート中の、凝集体検出の感度および特異性を測定する。
【0139】
一実施形態では、本発明の方法を使用して、哺乳動物血液または組織に由来する調製物、または調製物と接触する哺乳動物血液または組織が疾患関連タンパク質を含まない関連プロセスを確保する。一実施形態では、調製物は薬剤製品である。他の実施形態では、調製物はワクチンである。他の実施形態では、調製物は化粧品である。一実施形態では、調製物をプリオンタンパク質に関して試験する。他の実施形態では、調製物をアミロイド-βに関して試験する。他の実施形態では、調製物をtauタンパク質に関して試験する。他の実施形態では、調製物をα-シヌクレインに関して試験する。他の実施形態では、調製物をSOD-1に関して試験する。
【0140】
他の実施形態では、本発明の方法を使用して、輸血または疾患関連タンパク質に関する他の医療手順に使用する、血液および血液製品(例えば血漿などの血液分画、血液から単離または製造した化合物)をスクリーニングする。他の実施形態では、本発明を使用して、疾患関連タンパク質に関する臓器移植をスクリーニングする。一実施形態では、調製物をプリオンタンパク質に関してスクリーニングする。他の実施形態では、調製物をアミロイド-βに関してスクリーニングする。一実施形態では、調製物をtauタンパク質に関してスクリーニングする。他の一実施形態では、調製物をα-シヌクレインに関してスクリーニングする。他の実施形態では、調製物をSOD-1に関してスクリーニングする。
【0141】
本発明は、食品源が疾患関連タンパク質を含まないことを確かにするためにも有用である。他の実施形態では、本発明の方法を使用して、肉および肉製品ならびに乳製品などの哺乳動物由来の食用品を試験する。神経組織が汚染されている可能性がある食品(「機械的に分けられた肉」、および後根神経節または他の神経組織を含む肉断片など)は、プリオン汚染に関してスクリーニングするために非常に重要である。
【0142】
侵襲手順用に使用される器具は、伝播する疾患の源である可能性もある。一実施形態では、医療および外科手術手順用に使用される器具は、本発明の方法を使用して疾患関連タンパク質の存在に関して試験する。他の実施形態では、歯科衛生用に使用される器具を、疾患関連タンパク質の存在に関して試験する。
【0143】
他の実施形態では本発明は、疾患関連タンパク質および疾患関連タンパク質含有組織を除去するための除染法が成功していることを確実にするための方法を提供する。一実施形態では、本発明の方法を使用して、肉処理プラント内の除染手順を評価する。他の実施形態では、本発明の方法を使用して、食品加工プラント内の除染を評価する。他の実施形態では、外科手術または歯科手術用に使用される器具を、疾患関連タンパク質の存在に関して試験する。
【0144】
予後判定適用例
プリオンタンパク質転換体、アルツハイマー病関連ポリペプチドまたは他の疾患/障害関連ポリペプチドは、経時的に被験体において定期的に調べて(例えば第一回目、および第一回目の少なくとも一週間または少なくとも一ヶ月後に第二回目)、例えば被験体中の高または低レベルのPrPCあるいは高または低レベルのPrPScを同定することができる。本発明の方法は、被験体のPrPCまたはPrPScレベルを測定して薬剤療法に対する被験体の応答性を決定するのにも有用である。経時的な被験体中のプリオンタンパク質の低レベルは、薬剤療法に対する陽性応答を示す。同じ方法を、他の疾患または障害関連タンパク質に関して使用する。
【0145】
多くの神経変性病は凝集タンパク質と関係があるので、同様の方法が筋萎縮性側索硬化症(スーパーオキシドジスムターゼ1)、アルツハイマー病(アミロイドβ)、パーキンソン病(α-シヌクレイン)、ハンチングトン病(ハンチングチン)、癌(p53)、糖尿病(例えば、膵島アミロイドポリペプチドおよびレジスチン)、ならびに異常なタンパク質のフォールディング、凝集または翻訳後修飾と関係がある他の疾患だけには限られないがこれらを含めた、これらの疾患およびそれらの凝集タンパク質に有用である。このような試験は、脊髄液および他の体液、ならびに末梢血において有用である。アルツハイマー病では、アミロイドβペプチドの凝集状態は、本出願中に記載した方法を使用して、例えば当分野で知られている抗6E10または抗4G8抗体(検出剤)を用いて、モノクローナル抗体6E10および4G8によって検出される2つのエピトープ、ならびに他のアミロイドβのエピトープの接触可能性を測定することによって場合によっては調べる。
【0146】
プリオン転換阻害剤の同定
本発明はポリペプチド間の違いを検出するのに有用であるので、本発明はさらに、候補化合物がプリオン転換または他の疾患または障害関連ポリペプチド、例えばアルツハイマー病におけるアミロイドβ、tauおよびAPP、筋萎縮性側索硬化症におけるSOD1、パーキンソン病およびレビー小体病におけるα-シヌクレイン、ハンチングトン病におけるハンチングチン、糖尿病における膵島アミロイドポリペプチドおよびレジスチン、ならびに癌におけるp53などの形成を阻害するかあるいは安定化させることができるかどうかを評価するためのアッセイを含む。本発明はさらに、本出願中に記載した方法によって同定されるプリオン転換(あるいは他の疾患または障害関連ポリペプチドの転換)を、阻害するかあるいは安定化させるための化合物を含む。中間体プリオンタンパク質基質またはPrPSc(あるいは他の疾患または障害関連ポリペプチド)への低いタンパク質転換は、候補化合物がプリオン病を治療するのに有用であることを示す。
【0147】
本発明のアッセイは、候補化合物をスクリーニングして、それらがPrPSc形成(または野生型タンパク質由来の他の疾患または障害関連ポリペプチドの形成)を阻害するかどうか判定するのに有用である。タンパク質は候補化合物とin vivoまたはin vitroで接触させ、次いで本発明の方法において使用して、野生型タンパク質がPrPScに転換されたかどうか、あるいはPrPScが野生型タンパク質に転換されたかどうか判定することができる。他の疾患または障害関連ポリペプチドに関して、同様の方法を使用する。組換えタンパク質は、凝集阻害剤を同定するのに有用である。
【0148】
したがって本発明は、PrPScへの転換(例えば、野生型タンパク質または中間体からPrPScへのプリオンタンパク質転換)を阻害する物質を同定するための方法であって、
ポリペプチドと候補物質を反応させるステップ、および
本発明の方法を使用して、タンパク質がPrPScに転換されたかどうか判定するステップを含む方法も提供する。
【0149】
同様の方法を場合によっては実施して、野生型プリオン状態を安定化させるか、PrPScと結合させて、補充可能なPrPイソ型の転換を遮断する化合物を同定する。
【0150】
本発明は、疾患または障害関連ポリペプチドへの転換(例えば、野生型タンパク質から、本出願中に記載するアルツハイマー病および他のタンパク質および疾患関連タンパク質におけるアミロイドβ、tauまたはAPPタンパク質への転換)を阻害する物質を同定するための方法であって、
ポリペプチドと候補物質を反応させるステップ、および
本発明の方法を使用して、タンパク質がアルツハイマー病におけるアミロイドβまたはAPPタンパク質に転換されたかどうか判定するステップを含む方法も提供する。
【0151】
本発明の他の態様は、PrPSc形成を逆行させる物質を同定する方法であって、
ポリペプチドと候補物質を反応させるステップ、および
本発明の方法を使用して、PrPScが野生型タンパク質に転換されたかどうか判定するステップを含む方法を提供する。
【0152】
本発明の他の態様は、アルツハイマー病におけるアミロイドβまたはAPPタンパク質形成を逆行させる物質を同定する方法であって、
ポリペプチドと候補物質を反応させるステップと、
本発明の方法を使用して、アルツハイマー病におけるアミロイドβまたはAPPタンパク質が野生型タンパク質に転換されたかどうか判定するステップとを含む方法を提供する。
【0153】
本出願中に記載する疾患および障害と関係がある他のポリペプチドに関して、同じ方法を使用する。
【0154】
生物サンプルおよび市販のライブラリーを、タンパク質などの物質またはタンパク質と結合する小さな有機分子に関して試験することができる。阻害剤は、プリオンタンパク質などの疾患関連タンパク質の特定のドメインを対象とすることが好ましい。特異性を得るために、阻害剤は疾患関連タンパク質の特有の配列およびまたは立体配座の特徴を標的としなければならない。
【0155】
タンパク質立体配座の検出
本発明は、標的エピトープを含む候補ポリペプチドが非野生型立体配座のポリペプチドであるか、あるいは野生型立体配座のポリペプチドであるかを検出する方法であって、
候補ポリペプチドと遮断剤を接触させるステップと、
標的エピトープが遮断剤による化学的修飾と接触不能であるか、あるいは接触可能であるかを判定するステップとを含む方法を含む。
【0156】
標的エピトープの接触可能性または接触不能性は、候補ポリペプチドが非野生型立体配座のポリペプチドであるか、あるいは野生型立体配座のポリペプチドであるかを示す。何故なら、非野生型タンパク質と野生型タンパク質の1つにおいて、標的エピトープが接触可能だからである。他のポリペプチドでは、標的エピトープは接触不能である。
【0157】
一実施形態では本発明は、標的エピトープを含む候補ポリペプチドが野生型立体配座、または非野生型立体配座であるかどうかを検出する方法であって、
接触可能な標的エピトープを選択的に遮断する遮断剤とポリペプチドを接触させるステップであって、非野生型立体配座または野生型立体配座の1つにおいては、標的エピトープが接触可能であり遮断剤と反応し、他の立体配座では、標的エピトープが接触不能であり遮断剤と反応することができないステップと、
未反応遮断剤をポリペプチドとの接触から除くステップと(例えば、候補ポリペプチドを含むサンプル中において遮断剤を消費または分解させることによって、あるいは物理的または化学的除去法によって)、
候補ポリペプチドを修飾して任意の接触不能な標的エピトープを接触可能な標的エピトープに転換するステップと、
接触不能な標的エピトープから接触可能な標的エピトープに転換された標的エピトープと選択的に結合する検出剤とポリペプチドを接触させるステップであって、検出剤と転換型標的エピトープの間の結合が、転換前に候補ポリペプチドは標的エピトープが接触不能であった立体配座であったことを示し、検出剤と標的エピトープの間の結合の欠如が、ポリペプチドは標的エピトープが接触不能であった立体配座であったことを示し、したがってポリペプチドが野生型立体配座または非野生型立体配座であったこと示すステップとを含む方法を含む。
【0158】
ポリペプチドは2つ以上の立体配座を有することができる。例えばポリペプチドは、疾患とは関係がない野生型立体配座、良性でミスフォールディング状態の凝集、あるいは他の場合は非野生型立体配座、および疾患関連立体配座(すなわち、高次構造で凝集する)で存在することができる。本発明の方法を適用して、1つまたは複数の化学的修飾物質および/または抗体などの1つまたは複数の検出剤を使用することによって、それぞれのこれらの状態を区別することができる。
【0159】
固有に修飾されたポリペプチドの検出
本発明は、立体配座の1つの標的エピトープが固有の機構によって修飾される、2つ以上の立体配座で存在するポリペプチドを検出する方法も提供する。固有の機構は、リン酸化および/またはグリコシル化などのポリペプチドの細胞内および/または翻訳後修飾、または方法中に使用される添加剤から生じる修飾を含むことができる。固有の修飾は、検出剤による検出から標的エピトープが隠れるのを妨げる。ポリペプチドのサンプルは、固有に修飾されないポリペプチド中の利用可能な標的エピトープと反応する遮断剤と反応させる。固有の修飾は次いで除去する。例えば固有の修飾がリン酸化である場合、リン酸化を除去し、以前に固有に修飾されたポリペプチド中の接触不能な標的エピトープを接触可能なエピトープに転換するホスファターゼによって、ポリペプチドを処理する。次いでポリペプチドは、抗体などの検出剤を用いて検出する。
【0160】
したがって、一実施形態では本発明は、2つ以上の立体配座を有するポリペプチド中の固有に修飾された標的エピトープを検出する方法であって、
接触可能な標的エピトープを選択的に遮断する遮断剤とポリペプチドを接触させるステップであって、非野生型立体配座または野生型立体配座の1つにおいては、標的エピトープが接触可能であり遮断剤と反応し、他の立体配座では、標的エピトープが接触不能であり遮断剤と反応することができないステップと、
固有に修飾されたポリペプチドの標的エピトープから固有の修飾を除去する物質とサンプルを反応させるステップと、
サンプル中のポリペプチドを脱凝集および/または変性させるステップと、
標的エピトープに対する抗体などの検出剤を用いてプローブ処理して、候補ポリペプチドが固有に修飾されたポリペプチドであるかどうかを決定するステップとを含む方法を提供する。
【0161】
一適用例では、本発明の方法を使用して、食品中に存在するポリペプチドが製造プロセスによって化学的に修飾されたかどうかを検出することができる。例えば乳製品は、静菌薬として使用されるホルムアルデヒドの存在に関して試験することができる。ホルムアルデヒドはガンマ(2)カゼインをホルミル化し(Pizzano Rら、J.Agric Food Chem (2004) 52 : 649〜54)、検出剤による後の検出から修飾エピトープを覆い隠す。
【0162】
キット
本明細書に記載する方法は、必要な試薬を含む予めパッケージ化された診断キットを使用することによって場合によっては実施して、本発明の方法のいずれかを行う。例えばキットは、少なくとも1つの本明細書に記載する特異的な核酸、ペプチドまたは抗体を典型的には含み、これらは例えば患者をスクリーニングおよび診断するため、疾患関連立体配座のタンパク質を発現する個体をスクリーニングおよび同定するための臨床設定において好都合に使用される。キット抗体は完全抗体、抗体断片、単鎖抗体、モノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体を含むことができる。キットは場合によっては、抗体またはアプタマーによって認識されるエピトープを修飾するための少なくとも1つの化学物質も含む。キットは場合によっては、サンドウィッチELISAおよびDELFIAなどのELISA技術に基づき、ELISA技術において典型的に使用され当業者に知られている、界面活性剤、沈殿剤(リンタングステン酸など)、および吸着剤を使用することができる。キットは、本発明の方法を実施するための詳細な指示書も含む。組換えタンパク質はキットの標準用に有用である。
【0163】
これらのアッセイはいずれも、単純な高スループット形式に適合させ最適化することができると思われる。
【0164】
以下の非制限的な実施例は、本発明を例示するものである。
【実施例】
【0165】
(実施例1)
ペルオキシ亜硝酸は、正常および酸処理またはスクレーピー脳ホモジェネート中でPrPと異なる反応をする
脳ホモジェネートをグアニジンの存在下においてpH3.5でインキュベートすると、PrPは界面活性剤不溶になり、PrPScの存在下においてPK耐性イソ型とのミスフォールディングに対してさらに影響を受けやすくなる(29)。この酸処理PrPは、PrPScの特性と類似して部分的にミスフォールディングおよび/または凝集した「モデルプリオン」である。擬似(□)および酸処理(●)脳ホモジェネートを高濃度のペルオキシ亜硝酸と共にインキュベートし、次いでイムノブロッティングに施すと、酸処理脳ホモジェネート中よりも擬似処理脳ホモジェネート中に、3F4(図1AおよびC)と6H4(図1BおよびD)の両方によって認識されるPrPが少量となる。酸処理脳ホモジェネート中のPrPは、ペルオキシ亜硝酸による修飾から保護される。
【0166】
(実施例2)
スクレーピー感染したハムスター脳内のPrPは、ペルオキシ亜硝酸による修飾から保護される
実施例1で観察したのと同様の「モデルプリオン」に関するエピトープ保護現象を、スクレーピー感染したハムスター(Ha)脳中の真正疾患関連-ミスフォールディングプリオンタンパク質に関しても観察した(図2AおよびB)。モデルプリオンと同様に、HaSc脳ホモジェネート中のPrPの3F4および6H4エピトープは、ペルオキシ亜硝酸による修飾から保護される。「モデルプリオン」とHaPrPScが、差別的なミスフォールディングまたは凝集などの、ペルオキシ亜硝酸による化学的修飾からの保護をもたらす特性を共有していることは明らかである。
【0167】
(実施例3)
凝集はミスフォールディングPrPのペルオキシ亜硝酸誘導型のエピトープ修飾の低下の原因である
酸処理およびスクレーピー脳のエピトープ保護が凝集によるものであったことを示すために、サンプルはペルオキシ亜硝酸で処理し、次いで免疫沈降前にグアニジン有りまたは無しでインキュベートした。グアニジンを用いたサンプルの処理は、ペルオキシ亜硝酸による修飾からポリペプチドを保護するPrP(43〜45)の凝集体を解離させる。ペルオキシ亜硝酸処理後に2.5Mのグアニジンと共に擬似治療脳をインキュベーションすることによって、免疫沈降によって明らかであったように、3F4および6H4エピトープの増大が示されることはなかった(図3Aレーン1〜4)。しかしながら、ペルオキシ亜硝酸処理した酸性の脳ホモジェネートをグアニジンと共にインキュベートすると、3F4および6H4イムノビーズを用いた免疫沈降によって検出することができると思われる、PrPの増大があった(図3A、レーン5〜8)。これは、グアニジンは酸処理した脳ホモジェネートの凝集体を解離させることができ、ペルオキシ亜硝酸による修飾から保護されるPrPを放出させることができることを示す。PrP凝集体を溶かす他の手段を使用し、SDSローディングバッファー中でサンプルを煮沸することによって、今日まで最も観察されている可溶化をもたらした。
【0168】
(実施例4)
EPAパラメータの最適化
ペルオキシ亜硝酸、過酸化水素およびメチレン(前駆体ジアジリンのUV光による光分解に基づく)または他の修飾物質を用いた滴定実験によって、以下のエピトープ保護に関する最適条件を同定する:
1.正常ハムスターおよびヒト脳「モデルプリオン」、イムノブロッティングおよび従来の蛍光ELISAを使用する。
2.ハムスターおよびヒト脳由来の感染プリオン、イムノブロッティング分析および時間分解蛍光を使用する。
【0169】
それぞれの場合、脳ホモジェネートを調製し、高濃度の修飾物質と混合させ、記載したように処理した(イムノブロッティング、および時間分解蛍光)。これによって化学物質の型および濃度を定義し、モノマータンパク質と凝集タンパク質の間の最大の対比が可能になる。他の情報を与える対照実験は、バッファーおよびPrP-/-ノックアウトマウス脳内、およびマウスの正常およびスクレーピー感染した脳周辺での組換えハムスターPrPCの使用を含む(ネズミPrPは6H4+および3F4-である)。
【0170】
幾つかの場合、感染プリオンは、化学的修飾に関して「モデルプリオン」が有するのと異なる性質を有する可能性があり、脳プリオンは、血液中を循環する内因性プリオン、または感染動物の尿中で検出可能なPrPScとは異なる化学的修飾性を示す可能性がある。当業者は知られている技法を使用して、真の内因性プリオンに関する最適条件を容易に同定するであろう。
【0171】
(実施例5)
蛍光ELISA系に適合させたEPA
凝集PrPに関するエピトープ保護アッセイを、捕捉抗体として6H4および検出抗体として3F4を使用する蛍光サンドウィッチELISA系に適合させた(図3B)。サンドウィッチELISAアッセイ系は、ペルオキシ亜硝酸処理後にサンプルをSDSローディングバッファー中で煮沸する場合のみ、酸処理した脳ホモジェネート中の凝集PrPを同定することができる。8mMを超えるペルオキシ亜硝酸濃度では、擬似処理サンプルと比較して、酸処理サンプル中に2.5〜3倍のPrPが検出される。
【0172】
(実施例6)
一種の脳プリオンの検出
一種の脳プリオンは、PrPScの105〜106個の分子を含むと推定されてきている。従来の蛍光ELISAを使用する、組換えPrPの108〜109個の分子の検出が実施されてきている。使用するこのアッセイは一種のプリオンの検出に関して約1000倍感度が良く、必要な感度はDissociation enhanced lanthanide fiuoroimmunoassay(DELFIA)によって与えられる。DELFIAは、ユーロピウム(Eu)および時間分解蛍光体(TRF)などのキレート化ランタニド標識トレーサーを使用して、出力シグナルを測定する。ランタニドキレートの利点は、それらの蛍光時間は従来の蛍光体より200,000倍まで長く続き、非特異的な干渉蛍光が衰えた後にシグナル捕捉を可能にすることである(非常に非特異的な蛍光を有する可能性がある生物サンプルには特に重要である)。DELFIA系システムは、わずか100fmol/Euウエルを測定することができ、これは従来のELISAアッセイの1000倍感度が良く、EPAによる一種のプリオンを検出する。DELFIA系用の最適なTRF96ウエルプレートリーダーはWallac-Victor(Perkin-Elmer)によって製造され、これを使用してサンプル分析を自動化する。
【0173】
最適な化学的修飾物質および最適条件を使用して、DELFIA TRF系を使用してハムスターおよびヒトプリオンを検出するための、感度の良い捕捉96ウエルプレートアッセイを与える。これを使用して:
1.TRFによる組換えプリオンタンパク質の検出を特徴付け、最適化、および定量化する。
2.ハムスターおよびヒト脳プリオンに関するDELFIA-TRFの感度を測定する。
【0174】
(実施例7)
生物体液中のプリオンタンパク質の検出
EPAは、生物組織および体液中のPrPScを検出することによって商業的有用性を達成し、そのための技術は現在存在しない。血中プリオンは非常に少量であり(バイオアッセイにより10〜100プリオン/mL)、尿中のプロテアーゼ耐性PrPは多量の体液を沈殿させることによって断続的/散発的にのみ検出可能である。さらに、有望な血液試験はいずれも、高濃度のPrPC(PrPScの106倍を超える)、および異種血漿タンパク質による「遮断」に対処しなければならない。最適化した化学修飾法およびDELFIA-TRF系を使用して、血液および尿中におけるEPAに関する感度の閾値は、以下のものを使用して測定する。
1.263Kハムスタープリオンの滴定によって「汚染された」ハムスターおよびヒトの血漿および尿;
2.263Kプリオン病に「内因」感染したシリアンハムスター由来の血漿および尿。
【0175】
非侵襲経路によって臨床的に入手可能な生物体液は、ヒトおよび動物におけるプリオン感染を診断およびスクリーニングするための実際的な生前試験用の基質となる。本発明の方法は、死後試験においても有用である。当業者は、正常血液および尿において「プリオン汚染」滴定を用いるEPAによって、EPAがこれらの生物体液中で「遮断因子」によって影響を受けないことを示す、バッファー中での同じプリオン滴定と同様のDELFIA-TRFシグナルが明らかとなるかどうかを容易に決定する。興味深いことに、異種タンパク質によるPrPScの優先的「遮断」は、化学的修飾物質に対するエピトープ保護を実際に高めることができる。血液または尿中のプリオンの低い検出が検出される場合、事前に清澄化した戦略を容易に使用して、当業者に知られている市販のELISAアッセイにおいて典型的に使用されている界面活性剤、沈殿剤、および吸着剤を用いてPrPScの検出を高める。
【0176】
ヒトおよびウシの血清および尿ならびに他の体液は、最適なEPA条件を使用して試験し、それぞれヒト変異体CJDおよびBSE由来のサンプルと比較する。モノクローナル抗体6H4はあらゆる関連種由来のPrPを認識するが、3F4エピトープを欠く(市販の)他の抗体を蓄牛、ヒツジおよびシカ用のDELFIA TRF系に使用する。本出願中に記載する方法において有用な他の抗体およびエピトープは、当業者には容易に明らかであろう。
【0177】
(実施例8)
EPAを使用する凝集したアミロイドβ(Aβ)の検出
アミロイドβペプチド(Aβ)は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)のタンパク質分解プロセシングの通常の切断産物である。Aβはアルツハイマー病の脳の感染領域中で不連続なプラークに蓄積し、この疾患で観察される神経死およびグリオーシスを誘発する。正常細胞によって発現されるAPPのAβ領域とは対照的に、プラークAβは凝集しβシート構造中で豊富である。エピトープ保護技術を使用して、APPのAβ領域中の6E10エピトープは、正常な脳と比較してアルツハイマー病の脳内ではペルオキシ亜硝酸による修飾に対して接触が少ないことを実証した(図4、パネルA)。同様に6E10エピトープは、タンパク質凝集を誘導するために低いpHで処理した脳ホモジェネート中で部分的に保護される(図4、パネルB)。水中における1mg/mlでの一晩のインキュベーションによって凝集したAβ1〜42ペプチドは、可溶性非凝集Aβ1〜42と比較して、ペルオキシ亜硝酸修飾に対する6E10エピトープの顕著なエピトープ保護を示す(図4、パネルC)。この現象の他の例は、6E10抗体を用いたイムノブロッティングを施し高濃度のペルオキシ亜硝酸で処理した、正常(○)および凝集(●)Aβ1〜42を示す図4パネルDに表す。
【0178】
APPの6E10エピトープは、低いpHによって凝集するAD脳ホモジェネート中および正常脳ホモジェネート中でのペルオキシ亜硝酸修飾に対して利用不可能であるが、正常な未治療脳はこの保護を示さず(図4、パネルAおよびB)、APPとAβ-ドメイン遮断分子(おそらくAβ自体;参照9)のin vivoでの分子間相互作用が示される。
【0179】
生物体液(血液および脊髄液など)中の凝集Aβの高感度かつ特異的なEPA検出、または細胞および組織内のAPP中のAβエピトープの保護は、アルツハイマー病用の生前診断試験をもたらす。本出願中に記載する本発明の方法は、この診断試験用に使用する。
【0180】
EPAによる凝集Tauタンパク質の検出
瀕死のニューロンは、tauなどの細胞内タンパク質をCSF中(39)およびおそらく最終的には血液中に放出する。Tau試験は、アルツハイマー患者サンプルおよび対照脳を含めた脳試料に直接行う。
【0181】
(実施例9)
EPAによる凝集スーパーオキシドジスムターゼ-1(SOD1)の検出
SOD1含有細胞質封入体は、家族性および散発性ALS患者由来の多くの疾患状態運動ニューロンにおいて(15)、ならびに大部分のトランスジェニックマウス(16、17)およびこの疾患の組織培養(18)モデルにおいて検出される。ヒトSOD1はin vitroで凝集することができる。他のSOD1は、無水コハク酸およびDEPCによって修飾可能である。EPA技術によってこの性質を利用して、凝集SOD1タンパク質と非凝集SOD1タンパク質を区別することができる。
【0182】
ヒト赤血球から精製したSOD1(Sigma)は、金属触媒酸化反応において凝集した。可溶性SOD1はさまざまな濃度のDEPCで処理し、熱で変性させ、抗SOD1抗体を用いてイムノブロッティングした。ウエスタンブロッティングは、高濃度のDEPCは可溶性SOD1中での抗体結合の低下と関係があることを示し(図5)、部位が遮断剤による修飾によって利用可能であることを示す。
【0183】
EPAの有用性を優先して選択したSOD1に対する抗体を使用して、疾患特異的な凝集SOD1と野生型SOD1を区別する。関連要因には以下のものがある:
1)本来の可溶状態で化学的修飾物質と接触可能な本来の二量体の分子表面上のエピトープを選択すること、
2)線状エピトープを同定して、イムノブロットおよびELISAでの変性状態における検出を最適化すること、
3)免疫原性、
4)SOD1に対する特異性、および
5)エポキシドによって容易に修飾される酸性アミノ酸(GluおよびAsp)の存在。
【0184】
これらの基準に見合う5つのSOD1配列は:22QKESNG27;51EDNTAGCTSA60;74PKDEERHV81;89ADKDG93;および127GKGGNEQSTK136(太字:溶媒和した側鎖)である。
【0185】
さらに、ヒトSOD1の静電性ループ配列および亜鉛結合ループは表面接触可能な配列であり、凝集体形成と関係がある(Elan、Jら、Nature Structural Biology (2003) 10 : 461〜67)。
【0186】
これらの配列は以下のものである:
ヒトSOD1の静電性ループ:Asp Leu Gly Lys Gly Gly Asn Glu Glu Ser Thr Lys Thr Gly Asn Ala Gly Ser
ヒトSOD1の亜鉛結合ループ:Asn Pro Leu Ser Arg Lys His Gly Gly Pro Lys Asp Glu Glu
【0187】
(実施例10)
EPAによる凝集α-シヌクレインの検出
パーキンソン病の大部分の症例は散発性であるが、散発形と家族形の両方の疾患が、PDにおいて選択的に殺傷される中脳ニューロン(60,000まで)の個体群である黒質の、瀕死のニューロン中の細胞内レビー小体によって特徴付けられる。レビー小体はα-シヌクレインから主に構成される(22)。α-シヌクレインをコードする遺伝子の突然変異は、家族性のパーキンソン病を有する患者において発見されてきている(23中に総説)。常染色体劣性PDと関係がある他の遺伝子は、α-シヌクレイン変性と関係があるパーキンである(22、23)。α-シヌクレインから構成されるびまん性皮質レビー小体は、パーキンソン状態の変化、幻覚、および迅速な症状の変動と関係がある痴呆症状であるレビー小体病(LBD)において観察される(24)。
【0188】
Syn-1エピトープは、DEPC(ヒスチジン反応性)を用いた組換えα-シヌクレインの化学的修飾によって場合によっては遮断され、in vitroで凝集したα-シヌクレインはDEPCエピトープ遮断から部分的に保護される(図6)。
【0189】
in vitroで凝集したα-シヌクレインはDEPCによる修飾から保護されるが、正常タンパク質は保護されない。3mg/mLの突然変異A53Tα-シヌクレインを、凝集させるために3日間37℃でインキュベートした。凝集反応混合物は超遠心分離した。凝集前の正常タンパク質(可溶性α-シヌクレインを含む)および超遠心分離由来のペレット再懸濁液(不溶性α-シヌクレインを含む)をさまざまな濃度のDEPCで処理し、熱で変性させ、BD BiosciencesからのSyn-1抗体を用いてブロッティングした。図6Aは、高濃度のDEPCは正常α-シヌクレインにおける抗体結合の段階的低下と関係があることを示す。不溶性α-シヌクレインは、DEPC濃度が1mMに達するまでDEPCの濃度の上昇による抗体結合の変化はほとんど示さない。これらの発見のグラフ図は図6Bに示す。DEPC処理した正常α-シヌクレイン(-)との抗体結合の程度は、全体的に徐々に低下するが、高濃度のDEPCではさらに急速に低下する。他方で不溶性α-シヌクレイン(π)は、抗体結合の程度の変化をほとんど示さない。不溶性α-シヌクレインに関する0.01MのDEPCの最後のデータ地点は、写真の不明瞭さのため上昇する。
【0190】
(実施例11)
CSF中の凝集タンパク質の検出
ADを有する患者のCSFおよび血液ならびに正常対照において、細胞外に堆積したAβを定量化した(6〜8)。α-シヌクレインなどの細胞内ニューロンタンパク質は、CSFおよび血液中で検出されている(37、38)。瀕死のニューロンは、細胞内タンパク質14-3-3、ニューロン特異的エノラーゼ、tau、およびα-シヌクレインをCSF中(39)およびおそらく最終的には血液中に放出する。疾患中に放出されるタンパク質の一部分は凝集形である。EPA技術を適用して、AD、ALS、PD、およびLBDを有する患者由来のCSFサンプル中のポリペプチド凝集体の比率を決定する。それぞれ「完全」および「保護」エピトープを表す、化学処理の前後の脱凝集ポリペプチドに関するシグナルを測定して、脱凝集状態のポリペプチドの比率を決定する。最適化mAbおよび化学的修飾法、ならびにDELFIA-TRF系を使用して、EPA感度を以下のものにおいて決定する:
1.in vitroで凝集したポリペプチドによって「汚染された」正常CSF。
2.AD、ALS、PD、およびLBDを有する患者由来のCSF。
【0191】
CSFサンプル中の凝集状態のポリペプチドの比率は、それがわずか105〜106個の分子で構成される場合でも決定する。関連種を増大させるために市販のELISAアッセイにおいて典型的に使用される、界面活性剤、沈殿剤(リンタングステン酸など)、および吸着剤を場合によっては使用する。非侵襲経路によって臨床的に入手可能な生物体液は、神経変性病を診断およびスクリーニングするための実際的な生前試験用の理想的な基質となる。
【0192】
物質および方法
物質
組換えハムスターPrP(rhaPrP)および6H4はPrionicsからのものであった。組換えヒトPrP(rhuPrP)はRoboscreenからのものであった。ビオチン-3F4および3F4はSignetからのものであった。3F4はMKHMに対して反応し、6H4はDYEDRYYREに対して反応する。(Signetからの)6E10抗Aβは、EFRHDS(残基3〜8)に対して反応する。
【0193】
他の抗体、および知られている場合は認識されるエピトープは前の表1に与える。
【0194】
酸処理したミスフォールディング状態のPrPおよびAPPの調製。
酸処理したミスフォールディング状態のPrPを、この試験において「モデルプリオン」として使用し、(29)中と同様に調製した。簡潔には、100μlの10%脳ホモジェネートを等体積の3.0MのGdnHCl(最終濃度1.5M)と、1NのHClで調節したpH7.4またはpH3.5のPBS中で混合させ、次に室温で攪拌した。5時間のインキュベーション後、サンプルは5倍体積の氷冷メタノールを用いてメタノール沈殿させ、ペレットは100μlの溶解バッファーに再懸濁した。pH7.4で処理したサンプルを、擬似処理サンプルとして表した。
【0195】
脳ホモジェネートのペルオキシ亜硝酸処理
正常またはミスフォールディング状態/疾患状態脳ホモジェネートの等分試料(18μl)は、2μlのペルオキシ亜硝酸を100mMのNaOH/60mMH2O2に溶かしたものを加えながら攪拌して、0〜15mMの最終ペルオキシ亜硝酸濃度を与えた。さらに15秒間攪拌した後、サンプルをウエスタンブロッティング、免疫沈降またはサンドウィッチELISAした。
【0196】
赤血球SOD1のDEPC処理
ヒト赤血球から精製したSOD1(Sigma)は、10mMのトリス-酢酸バッファー(pH7)中の40_MのSOD1、4mMのアスコルビン酸、および0.2mMのCuCl237℃3日間からなる金属触媒酸化反応において凝集する。(可溶性SOD1を含む)超遠心分離の上清および(不溶性SOD1を含む)ペレット再懸濁液を、さまざまな濃度のDEPC(100pM〜0.1M)で処理し、熱で変性させ、抗SOD1抗体を用いてイムノブロッティングする。
【0197】
ウエスタンブロッティング
サンプルはSDSローディングバッファー(62mMのトリス(pH6.8)、10%グリセロール、2%のSDS、5%のβ-メルカプトエタノールおよび0.01%のブロモフェノールブルー)中で5分間煮沸し、12%トリス-グリシンポリアクリルアミドゲル上に分離し、次にHybond-Pに移した。3F4(1:50000)6H4(1:10000)または6E10(1:1000)を一次抗体として、およびHRP結合ヤギ抗マウス(1:10000)を二次抗体として使用し、次にECL-Plusへの露光、およびKodak X-OMATフィルムへの露光により目に見える状態にすることによって、PrPを検出した。バンド強度はUnScan-ITソフトウェアを使用することによって定量化した。
【0198】
免疫沈降
サンプルは50μlの抗体結合(100μg/ml)Dynal M-280磁気ビーズと共に、1ml結合バッファー(3%のNP-40;3%のTween-20)の最終体積で3時間室温において攪拌しながらインキュベートした。ビーズは洗浄バッファー(2%のNP-40;2%のTween-20)で3回洗浄し、β-メルカプトエタノールを含まない30μlのSDSローディングバッファー中で5分間煮沸した。前に記載したのと同様にウエスタンブロッティングによって上清を分析した。
【0199】
サンドウィッチELISA
捕捉抗体(6H4;1:5000、50mM重炭酸結合バッファー、pH9.6中)を、4℃での一晩のインキュベーションによって不透明な96ウエルプレート(Nuns Maxisorp)と結合させた。2時間0.05%TBST中での1%BSAを用いた遮断後、プレートをTBST中で3回洗浄し、標準濃度のrhuPrPまたはrHaPrPならびに未知の脳ホモジェネートと共に4℃で一晩インキュベートした。プレートを3回洗浄し、検出抗体ビオチン-3F4(1:5000)と共に室温で1時間インキュベートした。3回洗浄した後、アビジン-HRP(1:5000)を加え、30分間室温でインキュベートした。最終洗浄ステップ(3回)の後、室温で10〜90分間Quantablu蛍光基質を用いてプレートを現像し、325nmの励起および420nmの発光で蛍光強度を測定した。
【0200】
好ましい実施例であると現在考えられているものを参照しながら本発明を記載してきたが、本発明は開示した実施例に限られないことは理解されよう。それとは反対に本発明は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれるさまざまな変更形態および均等物を含むものとする。
【0201】
2003年8月20日に出願された米国出願第60/496,381号(表題Methods of Detecting Prion Protein (Cashman & Lehto)、および2003年8月21日に出願された米国出願第60/497,362号(表題Epitope Protection Assay (Cashman & Lehto)、ならびに対応するカナダ出願第2,437,675号およびカナダ出願第2,437,999号を含めた全ての刊行物、特許および特許出願は、それぞれ個々の刊行物、特許または特許出願が、それらの全容が参照により組み込まれていることが詳細かつ個別に示される場合と同じ程度で、それらの全容が参照により本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Asp Leu Gly Lys Gly Gly Asn Glu Glu Ser Thr Lys Thr Gly Asn Ala Gly Serのアミノ酸配列からなる単離したポリペプチド。
【請求項2】
Asn Pro Leu Ser Arg Lys His Gly Gly Pro Lys Asp Glu Gluのアミノ酸配列からなる単離したポリペプチド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリペプチドと結合した担体を含む免疫原。
【請求項4】
ポリペプチド中に存在するエピトープに特異的な抗体であって、前記エピトープが
Asp Leu Gly Lys Gly Gly Asn Glu Glu Ser Thr Lys Thr Gly Asn Ala Gly Ser;及び
Asn Pro Leu Ser Arg Lys His Gly Gly Pro Lys Asp Glu Glu
からなる群から選択されるアミノ酸配列内に存在する、抗体。

【図4A−B】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4C−D】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−265290(P2010−265290A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153006(P2010−153006)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【分割の表示】特願2006−523496(P2006−523496)の分割
【原出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(506056930)アモールフィックス・ライフ・サイエンシィズ・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】