説明

タンパク質精製中に試料中の1または複数の不純物のレベルを低下させる方法

【課題】特定の型の炭素質材料を含み、所望のタンパク質生成物の収率に悪影響することなく、特定の望ましくない不純物の効果的で選択的な除去をもたらす新規で改良されたタンパク質精製プロセスを提供すること。
【解決手段】方法は、目的のタンパク質および1または複数の不純物を含む試料を、フロースルー様式において、(i)炭素質材料;(ii)炭素質材料とCEX媒体との組合せ;(iii)炭素質材料とAEX媒体との組合せ;(iv)炭素質材料と混合様式媒体との組合せ;(v)炭素質材料とHIC媒体との組合せ、ならびに(vi)炭素質材料とCEX、AEXおよび混合様式媒体との組合せと接触させた後、試料を、アフィニティ媒体、AEX媒体、CEX媒体、HIC媒体または混合様式媒体を含有する1または複数のクロマトグラフィーカラムと接触させ、それによって1または複数のクロマトグラフィーカラムの負担を減少させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる、2011年8月19日に出願された米国仮特許出願第61/575,349号および2012年6月29日に出願された米国仮特許出願第61/666,240号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、改良されたクロマトグラフィー方法およびタンパク質精製中に1または複数の不純物のレベルを低下させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
クロマトグラフィーは、生物材料、例えば、モノクローナル抗体の精製における主要な精製技術である。
【0004】
一般的に用いられるクロマトグラフィー方法としては、1または複数のアフィニティクロマトグラフィー媒体、イオン交換クロマトグラフィー媒体、疎水性相互作用、親水性相互作用、サイズ排除クロマトグラフィーおよび混合様式(すなわち、様々なクロマトグラフィー相互作用の組合せ)のクロマトグラフィーが挙げられる。例えば、モノクローナル抗体の精製について、典型的な精製プロセスは、最初にプロテインAアフィニティ捕捉ステップ、次いで、1または複数のイオン交換仕上げステップを含み、その目的は、例えば、宿主細胞タンパク質(HCP)などの1または複数の不純物のレベルを低下させることである。さらに、結合および溶出疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC);フロースルー疎水性相互作用クロマトグラフィー(FTHIC);フロースルー陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX);陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、または疎水性相互作用樹脂を用いる弱分配クロマトグラフィー;混合様式のクロマトグラフィー技術、例えば、結合および溶出弱陽イオンおよび陰イオン交換、結合および溶出疎水性およびイオン交換相互作用ならびにフロースルー疎水性およびイオン交換混合様式相互作用(FTMM)(両方ともCapto(商標)Adhere、Capto(商標)MMC、HEA Hypercel(商標)、PPA Hypercel(商標)などの樹脂を用いることができる。)などの他のクロマトグラフィー技術を用いることができる。さらに、他の様々な技術および様々な技術の組合せと一緒に、疎水性電荷誘導(HCI)クロマトグラフィーを、仕上げのために用いることができる。
【0005】
クロマトグラフィーは小規模のタンパク質精製に対して多くの利点を提供するが、大規模な場合クロマトグラフィーカラムの充填が労働集約的であり時間集約的であるだけでなく、費用も高い。さらに、クロマトグラフィーカラムの汚損は共通の問題であり、その結果、使用者はカラムを廃棄する必要があり、これは、特にクロマトグラフィー樹脂の費用が高いため望ましくない。
【0006】
最近当業界においては、タンパク質精製プロセスにおけるステップ数を減少させようとする傾向が顕著である。また、バイオリアクターを用いてより高い発現力価を得るための技術の使用が当業界において上昇傾向である。これらの2つの傾向の組合せにより、カラム上にはより多くの生成物がロードされるようになり、それによって、かなり高価なクロマトグラフィー媒体への負担増加ならびに生成物純度の低下をもたらしており、それらは両方とも望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、少なくとも部分的に予想外にも、特定の材料(例えば、活性化炭素などの炭素質材料)を、フロースルー様式でクロマトグラフィーカラムに基づくタンパク質精製プロセスに組み込むことができ、クロマトグラフィーカラムの負担が減少され、結果として、クロマトグラフィーカラムの寿命の増加をもたらすことができることを見出したことに基づく。
【0008】
さらに、本発明は、炭素質材料(例えば、活性化炭素)を、捕捉クロマトグラフィーステップの上流または下流で用いて、1または複数の不純物のレベルを低下させることができることを見出したことに基づく。特許請求される方法によるいくつかの実施形態において、試料は、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィーステップの前に炭素質材料と接触される。他の実施形態において、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィーステップは、試料を炭素質材料と接触させる前に用いられる。さらに他の実施形態において、試料はプロテインAアフィニティ捕捉ステップの後に炭素質材料と接触される。また、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーステップは、試料を炭素質材料と接触させた後に用いてもよい。特定の実施形態において、プロテインAアフィニティ捕捉ステップの後に、陰イオン交換(AEX)フロースルークロマトグラフィーステップをCEXクロマトグラフィー結合/溶出ステップと共にまたはそれを行わずに行ってもよい。さらに他の実施形態において、炭素質材料は、非アフィニティ捕捉ステップ(例えば、捕捉ステップとしてCEX結合および溶出クロマトグラフィーを用いる)の後に用いてもよく、その後、AEXクロマトグラフィーステップを行う。
【0009】
さらに、本発明は、従来のプロセスよりも少ないステップを含むクロマトグラフィーに基づくタンパク質精製プロセスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による一態様において、1または複数のクロマトグラフィーカラムの負担を減少させる方法が提供される。いくつかの実施形態において、そのような方法は、目的のタンパク質および1または複数の不純物を含む試料を、フロースルー様式において、(i)炭素質材料;(ii)炭素質材料とCEX媒体との組合せ;(iii)炭素質材料とAEX媒体との組合せ;(iv)炭素質材料と混合様式媒体との組合せ;(v)炭素質材料とHIC媒体との組合せ、ならびに(vi)炭素質材料とCEX、AEXおよび混合様式媒体との組合せと接触させた後、試料を、アフィニティ媒体、AEX媒体、CEX媒体、HIC媒体または混合様式媒体を含有する1または複数のクロマトグラフィーカラムと接触させ、それによって1または複数のクロマトグラフィーカラムの負担を減少させることを含む。
【0011】
特許請求される方法による別の態様において、(i)目的のタンパク質および1または複数の不純物を含む試料を、アフィニティ媒体、AEX媒体、CEX媒体、HIC媒体または混合様式媒体を含有する1または複数のクロマトグラフィーカラムと、目的のタンパク質がカラムに結合するような条件下で接触させるステップ;(ii)試料の第1の溶出液を得るステップ;(iii)第1の溶出液を、フロースルー様式において、(a)炭素質材料;および(b)炭素質材料と、1または複数のCEX媒体、AEX媒体、混合様式媒体およびHIC媒体との組合せのうちの1つと接触させるステップ;ならびに(iv)試料の第2の溶出液を得るステップを含み;第2の溶出液が第1の溶出液中の1または複数の不純物のレベルと比較して、より低いまたは低下したレベルの1または複数の不純物を含む、目的のタンパク質および1または複数の不純物を含有する試料中の1または複数の不純物のレベルを低下させる方法が提供される。
【0012】
さらに別の態様において、(i)目的のタンパク質および1または複数の不純物を含む試料を、アフィニティ媒体を含有するクロマトグラフィーカラムと接触させるステップ;(ii)試料の第1の溶出液を得るステップ;(iii)第1の溶出液を、フロースルー様式において、炭素質材料と接触させるステップ;(iv)試料の第2の溶出液を得るステップ;(v)第2の溶出液を、陰イオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させるステップ;ならびに(vi)試料の第3の溶出液を得るステップを含み、第3の溶出液が、第1の溶出液を炭素質材料と接触させない場合の1または複数の不純物のレベルと比較して、より低いまたは低下したレベルの1または複数の不純物を含む、目的のタンパク質および1または複数の不純物を含む試料中の1または複数の不純物のレベルを低下させる方法が提供される。
【0013】
いくつかの実施形態において、そのような方法は、アフィニティ捕捉ステップの後および試料を、いくつかの実施形態において、膜吸着剤である陰イオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させる前に、CEX結合および溶出クロマトグラフィーステップを含む。いくつかの実施形態において、特許請求される本発明による方法は、さらなるクロマトグラフィーステップ、例えば、アフィニティ捕捉ステップの後に用いられる結合および溶出CEXクロマトグラフィーステップの必要性を取り除く。市販の陰イオン交換クロマトグラフィー媒体の例は、ChromaSorb(商標)(MILLIPORE CORPORATION,Billerica,MA,USA)、Mustang Q(PALL CORPORATION,Port Washington,NY,USA)、Sartobind Q(SARTORIUS STEDIM,Germany)などの膜吸着剤、ならびにQ Sepharose FF(GE HEALTHCARE,Philadelphia,PA,USA)などのビーズ媒体である。
【0014】
いくつかの実施形態において、特許請求される本発明による方法は、非カラムに基づくクロマトグラフィーステップを用いる。
【0015】
さらに別の態様において、(i)目的のタンパク質を含むタンパク質相を得るステップ;(ii)好適なバッファーを用いて目的のタンパク質を含むタンパク質相を再構成させることによって、再構成されたタンパク質溶液を得る工程;(iii)再構成されたタンパク質溶液を、炭素質材料とフロースルー様式において接触させるステップ;(iv)目的のタンパク質を含む第1の溶出液を得るステップ;(v)第1の溶出液を、陰イオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させるステップ;および(vi)目的のタンパク質を含む第2の溶出液を得るステップを含み、第2の溶出液が、(iii)に由来する再構成されたタンパク質溶液を炭素質材料と接触させない場合の1または複数の不純物のレベルと比較して、より低いまたは低下したレベルの1または複数の不純物を含む、目的のタンパク質を含む試料中の1または複数の不純物のレベルを低下させる方法が提供される。
【0016】
いくつかの実施形態において、そのような方法は、任意の結合および溶出クロマトグラフィーステップ、例えば、結合および溶出アフィニティまたはCEXクロマトグラフィーステップの必要性を取り除く。
【0017】
本発明によるいくつかの方法において、タンパク質相は、沈降、軟凝集、結晶化、カラムクロマトグラフィー、可溶性小分子の使用、ポリマーリガンドの使用、または懸濁クロマトグラフィー媒体の使用からなる群より選択される1または複数の方法を用いて得られる。
【0018】
いくつかの実施形態において、炭素質材料と、1または複数のAEX媒体、CEX媒体、HIC媒体および混合媒体との組合せは、炭素質材料と1または複数のそのような媒体とを混合することを必要とする。他の実施形態において、炭素質材料と、1または複数のAEX媒体、CEX媒体、HIC媒体および混合媒体との組合せは、組合せ中の異なる材料を相前後して用いることを必要とする。
【0019】
本発明の方法による様々な実施形態において、アフィニティ媒体はプロテインAまたはプロテインGから選択される。
【0020】
いくつかの実施形態において、目的のタンパク質は抗体またはFc領域を含有するタンパク質である。いくつかの実施形態において、抗体はモノクローナル抗体である。他の実施形態においては、抗体はポリクローナル抗体である。
【0021】
いくつかの実施形態において、試料は細胞培養供給液を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、試料は清澄化された細胞培養供給液である。
【0023】
いくつかの実施形態において、清澄化された細胞培養供給液は深層濾過および/または遠心分離により得られる。
【0024】
いくつかの実施形態において、清澄化された細胞培養液は、塩、酸、ポリマー、または刺激原応答性ポリマーを用いる沈降により得られる。
【0025】
様々な実施形態において、特許請求される本発明による方法において用いられる炭素質材料は、活性化炭素である。いくつかの実施形態において、活性化炭素は、活性炭を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、炭素質材料と、1または複数のCEX媒体、AEX媒体、混合様式媒体およびHIC媒体との組合せは、活性化炭素と、1または複数のCEX樹脂、AEX樹脂、混合様式樹脂およびHIC樹脂との混合物を含む。いくつかの実施形態において、そのような混合物は、クロマトグラフィーカラム中に充填される。他の実施形態において、混合物はディスク中に充填される。さらに他の実施形態において、混合物はポッド、カートリッジまたはカプセル中に充填される。
【0027】
いくつかの実施形態において、活性化炭素はクロマトグラフィーカラム中に充填される。他の実施形態において、活性化炭素はMillistak+(登録商標)Podなどの密閉使い捨てデバイス中に充填される。さらに他の実施形態において、活性化炭素はカートリッジまたはカプセル中に充填される。
【0028】
いくつかの実施形態において、活性化炭素は、多孔性材料中に含浸される、例えば、活性化炭素は多孔性繊維性媒体中に組み込まれる。多孔性材料は、カラム、ディスク、Millistak+(登録商標)Pod、カートリッジまたはカプセル内に含有させることができる。いくつかの実施形態において、活性化炭素はセルロース媒体中に充填される。
【0029】
特定の実施形態において、AEX媒体は、1または複数のポリマー第一級アミンまたはそれらのコポリマーを含む表面コーティングを有する膜である。
【0030】
いくつかの実施形態において、目的のタンパク質および1または複数の不純物を含む試料は、試料をアフィニティ捕捉ステップにかける前に活性化炭素と接触される。他の実施形態において、試料はアフィニティ捕捉ステップの後に活性化炭素と接触される。
【0031】
特許請求される本発明による様々な方法において、活性化炭素を用いるプロセスを用いる目的のタンパク質の収率の損失は、タンパク質総量の20%未満である。換言すれば、特許請求される本発明によるプロセスは、100%がタンパク質総量である場合、80%以上の収率の目的のタンパク質をもたらす。さらなる実施形態において、活性化炭素を用いるプロセスを用いる目的のタンパク質の収率の損失は、10%未満である。換言すれば、特許請求される本発明によるプロセスは、100%がタンパク質総量である場合、90%以上の収率の目的のタンパク質をもたらす。
【0032】
特定の実施形態において、活性化炭素は、試料(例えば、フロースルー精製ステップの前に実施された結合および溶出クロマトグラフィー捕捉プロセスステップから回収されたプロテインA溶出液などの溶出液)から標的分子(例えば、Fc領域を含有するタンパク質または抗体)を精製するための方法におけるフロースルー精製プロセスステップまたは単位操作の一部として用いられる。そのようなフロースルー精製プロセスステップまたは単位操作において、結合および溶出クロマトグラフィーステップ(例えば、プロテインAアフィニティカラム)からの溶出液は、図19に記載のように、活性化炭素、次いで、AEX媒体、次いで、CEX媒体、次いでウイルスフィルターの順に流動する。いくつかの実施形態において、溶液交換(例えば、pH変化)はAEXステップとCEXステップの間に実施され、ここで溶液はインラインスタティックミキサーおよび/またはサージタンクを用いる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のような、活性化炭素を用いるフロースルー精製プロセスステップまたは単位操作は、標的分子を精製するための連続プロセスの一部であり、フロースルー精製ステップは、フロースルー精製プロセスステップの上流のプロセスステップ(例えば、結合および溶出クロマトグラフィー捕捉ステップ)および下流のプロセスステップ(例えば、製剤化ステップ)と流体連通しており、それによって液体試料がプロセスを連続的に流動することができる。
【0033】
特定の実施形態において、フロースループロセスステップまたは単位操作全体は、単一のスキッド(すなわち、制御/モニタリング装置)を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】評価された様々な市販の吸着媒体の各々、すなわち、活性化炭素(AC);アガロース陽イオン交換樹脂、SP Sepharose(商標)Fastflow(SPFF);ポリマー性陽イオン交換樹脂、ProRes(商標)−S;アガロース陰イオン交換樹脂、Q Sepharose(商標)(QFF);およびアガロースHIC樹脂、Phenyl Sepharose(商標)6 Fastflow(ph FF)に関する、ポリクローナルIgGを添加したヌルCHO−S供給液のフロースルー溶出液中のIgG収率を測定する実験の結果を示す棒グラフである。図1に示されるように、IgG収率の最大で約5%の損失を示すHIC樹脂に関して以外は、スクリーニングされた全ての他の媒体が検出可能な収率の損失を示さなかった。
【図2】評価された様々な市販の吸着媒体の各々、すなわち、活性化炭素、Nuchar(登録商標)RGC、(AC)、SPFF、ProRes(商標)−S、QFFおよびph FFならびに未処理の清澄化された供給液に関する、ポリクローナルIgGを添加したヌルCHO−S供給液のフロースルー溶出液中のUV 280nm活性種の量を測定する実験の結果を示す棒グラフである。図2に示されるように、活性化炭素は、他の吸着媒体と比較して、着色された種の量を有意に減少させた。
【図3】上記に列挙された市販の吸着媒体の各々、ならびに未処理の清澄化された供給液に関する、ポリクローナルIgGを添加したヌルCHO−S供給液のフロースルー溶出液中の宿主細胞タンパク質(HCP)の濃度を測定する実験の結果を示す棒グラフである。HCP濃度はCygnus CHO−CM HCP ELISAキットを用いてng/mLで測定された。図3に示されるように、活性化炭素を含む、スクリーニングされた全ての媒体が、ある程度までHCPを除去した。しかしながら、陽イオン樹脂SPFFおよびProRes(商標)−Sが、最も効率的にHCPを除去した。
【図4】上記に列挙された市販の吸着媒体の各々、ならびに未処理の清澄化された供給液に関する、ポリクローナルIgGを添加したヌルCHO−S供給液のフロースルー溶出液中のDNA濃度を測定する実験の結果を示す棒グラフである。DNA濃度(μg/mL)は、PicoGreenアッセイを用いて測定された。図4に示されるように、前記媒体の各々は、ある程度までDNAを除去する。しかしながら、陰イオン交換媒体が最も効率的に、次いで活性化炭素がDNAを除去する。
【図5】未処理の清澄化された供給液を含む、100CVまでロードされた供給液の10CV毎の上記に列挙された評価された媒体の各々に関する、ポリクローナルIgGおよびニシン精子DNAを添加したヌルCHO−S供給液のフロースルー溶出液中のIgGの濃度を測定する実験の結果を示すx−y散布図である。カラム容量(CV)をx軸上に示し、IgG濃度(mg/mL)をy軸に示す。AC、SPFF、ProRes(商標)−SおよびQFFを含む、評価された全ての媒体が、未処理の清澄化された供給液の最大で100CVの負荷に対してIgGの有意な損失を示さなかった。
【図6】未処理の清澄化された供給液を含む、100CVまでロードされた供給液の10CV毎の評価された媒体の各々に関する、ポリクローナルIgGおよびニシン精子DNAを添加したヌルCHO−S供給液のフロースルー溶出液中のUV活性種ピーク面積(UV活性種の量に対応する)を測定する実験の結果を示すx−y分散図である。カラム容量(CV)をx軸上に示し、プロテインA分析カラムのフロースルー中のUV活性種ピーク面積をy軸上に示す。評価された全ての材料のうち、ACは100CVにわたって70%を超えるUV活性種を除去した;QFFは100CVにわたって約10%のUV活性種を除去した;ならびに2つの陽イオン交換樹脂、SPFFおよびProRes(商標)−Sは最少量のUV活性種を除去した。
【図7】未処理の清澄化された供給液を含む、100CVまでロードされた供給液の10CV毎の評価および上記に列挙された媒体の各々に関する、ポリクローナルIgGおよびニシン精子DNAを添加したヌルCHO−S供給液のフロースルー溶出液中の宿主細胞タンパク質(HCP)濃度を測定する実験の結果を示すx−y分散図である。カラム容量(CV)をx軸上に示し、HCP濃度(ng/mL)をy軸上に示す。SPFFおよびProRes Sは100CVにわたって多くのHCPを除去した。QFFはいくらかのHCPを除去したが、迅速に漏出した。高濃度のDNAを有したこの特定の供給液について、活性化炭素は最少量のHCPを除去した。
【図8】未処理の清澄化された供給液を含む、100CVまでロードされた供給液の10CV毎の評価および上記に列挙された媒体の各々に関する、ポリクローナルIgGおよびニシン精子DNAを添加したヌルCHO−S供給液のフロースルー溶出液中のDNA濃度を測定する実験の結果を示すx−y分散図である。カラム容量(CV)をx軸上に示し、DNA濃度(μg/mL)をy軸上に示す。AC、SPFF、ProRes(商標)−SおよびQFFを含む、評価された媒体の各々は、100CVにわたってDNAを除去したが、しかしながら、異なる程度であった。
【図9】不純物除去に用いることができる操作の様々な様式例の概略図である。左側の流れ図は、未処理の清澄化された供給液が、ACを含有するカラム、次いで、SPFF、ProRes(商標)−SまたはQFF媒体を含有するカラム上にロードされる代表的な実験を示す。中央の流れ図は、未処理の清澄化された供給液が、ACを含有するカラム、次いで、SPFFまたはProRes(商標)−Sおよび次いでQFFを含有するカラム上にロードされる代表的な実験を示す。右側の流れ図は、未処理の清澄化された供給液が、ACとSPFFとの1:1(v/v)混合物;またはACとProRes(商標)−Sとの1:1(v/v)混合物;またはACとProRes(商標)−SとQFFとの1:1:1(v/v/v)混合物を含有するカラム上にロードされる代表的な実験を示す。
【図10】未処理の清澄化された供給液を含む、図9に示された材料の組合せの各々に関する、ポリクローナルIgGを添加したヌルCHO−S供給液のフロースルー溶出液中のUV活性種ピーク面積(UV活性種の量に対応する)を示す棒グラフである。活性化炭素および活性化炭素を含む混合物は、UV活性種を有意に減少させた。活性化炭素および陰イオン交換樹脂が両方ともプロセスにおいて用いられた場合、連続的にまたは混合物として用いた場合、より多くのUV活性種が除去されたが、これは異なる材料の相乗効果を示している。
【図11】未処理の清澄化された供給液を含む、図9に示された材料の組合せの各々に関する、ポリクローナルIgGを添加したヌルCHO−S供給液のフロースルー溶出液中の宿主細胞タンパク質(HCP)濃度を示す棒グラフである。全ての材料がHCPをある程度まで除去したが、活性化炭素が、SPFFもしくはProRes(商標)−Sなどの陽イオン樹脂と一緒にまたはQFFなどの陰イオン樹脂と一緒にプロセスにおいて用いられた場合、樹脂と共に連続的にまたは樹脂との混合物として用いられた場合、HCPを最も効率的に除去したが、これは異なる材料の相乗効果を示唆している。
【図12】未処理の清澄化された供給液を含む、図9に示された材料の組合せの各々に関する、ポリクローナルIgGを添加したヌルCHO−S供給液のフロースルー溶出液中のDNA濃度を示す棒グラフである。全ての材料がDNAをある程度まで除去したが、活性化炭素がQFFと共に連続的に用いられたまたはQFFとの混合物として用いられた場合、それは評価された他の材料および組合せと比較して、DNA除去において最も有効であった。
【図13】評価された材料の各々、すなわち、AC;SPFF;QFF;ph FF、ならびに2つの材料の組合せ、AC/SPFF/QFFの1:1:1(v/v/v)混合物およびPhFF/SPFF/QFFの1:1:1(v/v/v)混合物に関する、プロテインAカラム溶出プールのフロースルー溶出液中のIgG収率を測定する実験の結果を示す棒グラフである。評価された異なる材料のフロースルー溶出液のための供給液は、ポリクローナルIgGを添加したヌルCHO−S供給液からProsep Ultra PlusプロテインA樹脂を用いて作製されたプロテインAカラム溶出プールであった。スクリーニングされた全ての材料は80%を超える収率を示した。
【図14】評価された材料の各々、すなわち、AC;SPFF;QFF;ph FF、ならびに2つの材料の組合せ、AC/SPFF/QFFの1:1:1(v/v/v)混合物およびPhFF/SPFF/QFFの1:1:1(v/v/v)混合物に関する、プロテインAカラム溶出プールのフロースルー溶出液中の宿主細胞タンパク質(HCP)濃度を測定する実験の結果を示す棒グラフである。評価された異なる材料のフロースルー溶出液のための供給液は、ポリクローナルIgGを添加したヌルCHO−S供給液からProsep Ultra PlusプロテインA樹脂を用いて作製されたプロテインAカラム溶出プールであった。全ての材料または材料混合物がプロテインA溶出プールから特定量のHCPを除去したが、単独で用いた場合、活性化炭素および陽イオン交換樹脂がより有効であった。混合物として用いた場合、AC/SPFF/QFFおよびPhFF/SPFF/QFFは、単一成分のみよりも多くのHCPを除去した。QFFおよびPhFFは、単独で用いた場合、最少量のHCPを除去した。
【図15】評価された材料の各々、すなわち、AC;SPFF;QFF;ph FF、ならびに2つの材料の組合せ、AC/SPFF/QFFの1:1:1混合物およびPhFF/SPFF/QFFの1:1:1混合物に関する、プロテインAカラム溶出プールのフロースルー溶出液中のDNA濃度を測定する実験の結果を示す棒グラフである。評価された異なる材料のフロースルー溶出液のための供給液は、ポリクローナルIgGを添加したヌルCHO−S供給液からProsep Ultra PlusプロテインA樹脂を用いて作製されたプロテインAカラム溶出プールであった。全ての材料または材料混合物がプロテインA溶出プールから特定量のDNAを除去したが、樹脂混合物AC/SPFF/QFFおよびPhFF/SPFF/QFFは任意の単一成分を超えるわずかな利点を示す。
【図16】モノクローナル抗体溶液の個々の画分についての生成物(すなわち、モノクローナル抗体)の濃度(ppm)と比較したHCPの濃度を測定する実験の結果を示すグラフであり、ここで、溶液はプロテインAクロマトグラフィーを用いて清澄化された細胞培養液(プロテインA溶出液と呼ぶ)から捕捉され、その後、3回の個別のフロースルー精製トレインにかけられた。1番目のトレインは、5つの層から構成された0.2mLのChromaSorb(商標)陰イオン交換膜デバイスを用いた;2番目のトレインは、HD 1mLのNuchar活性化炭素が充填されたカラムを用いた;および3番目のトレインは、1mLの活性化炭素カラム、次いで、0.2mLのChromaSorb(商標)陰イオン交換膜を用いた。溶出液の10個の10mL画分がそれぞれの精製トレインから収集され、選択された画分が宿主細胞タンパク質(HCP)およびIgG濃度について分析された。グラフのX軸は、活性化炭素カラムからの溶出液のカラム容量(CV)中の10mL画分に関する収集の終点を示す。グラフのY軸は、活性化炭素溶出液の個々の画分についての生成物(すなわち、モノクローナル抗体)の濃度(ppm)と比較したHCPの濃度を示す。このグラフは、活性化炭素のみ、および陰イオン交換媒体と組合せた活性化炭素によるアフィニティ捕捉された溶出液のフロースルー処理が、モノクローナル抗体溶液からの不純物の除去にとって予想外に有効であったことを示している。
【図17】モノクローナル抗体溶液の個々の画分についての生成物(すなわち、モノクローナル抗体)の濃度(ppm)と比較したHCPの濃度を測定する実験の結果を示すグラフであり、ここで、溶液は陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィーを用いて清澄化された細胞培養液(CEX溶出液と呼ぶ)から捕捉され、その後、HD Nuchar活性化炭素の1mL充填されたカラムを用いる精製にかけられた。溶出液の7個の10mL画分が収集され、これらが宿主細胞タンパク質(HCP)およびIgG濃度について分析された。グラフのX軸は、活性化炭素カラムからの溶出液の溶出した容量(mL)中の10mL画分に関する収集の終点を示す。グラフのY軸は、個々の画分についての生成物(すなわち、モノクローナル抗体)の濃度(ppm)と比較したHCPの濃度を示す。このグラフは、活性化炭素を用いて、様々な異なるタンパク質溶液から不純物を除去することができることを示している。
【図18】モノクローナル抗体溶液の個々の画分についての生成物(すなわち、モノクローナル抗体、MAb II)の濃度(ppm)と比較したHCPの濃度を測定する実験の結果を示すグラフであり、ここで、溶液はプロテインAカラムを備えた3つのカラムの連続多クロマトグラフィークロマトグラフィー(CMC)系を用いて清澄化された細胞培養液から捕捉された後、カラム中に充填されたHD Nuchar活性化炭素、次いで、陰イオン交換クロマトグラフィーデバイス(例えば、ChromaSorb(商標))を用いて精製される。このグラフのX軸は、陰イオン交換デバイスの単位容量あたりにロードされる抗体の重量(kg/L)で測定された、画分収集の終点を示す。このグラフのY軸は、個々の画分についての生成物(すなわち、モノクローナル抗体)の濃度(ppm)と比較したHCPの濃度を示す。このグラフは、活性化炭素およびChromaSorb(商標)の両方が、単独で用いた場合にHCPの有意な部分を除去したが、組合せて用いた場合、それらは出発溶液の純度を1,370ppmのHCPから10ppm以下まで増加させることを示している。
【図19】本明細書に記載されたような、接続されたフロースルー精製プロセスステップの概略図である。活性化炭素含有デバイスは、陰イオン交換デバイスに直接接続される。陰イオン交換デバイスからの流出液はスタティックミキサーを通過し、そこで水性酸がpHを低下させるために添加され、次いで、陽イオン交換フロースルーデバイスおよびウイルスフィルターを通過する。
【図20】陰イオン交換クロマトグラフィーデバイス(すなわち、ChromaSorb(商標))後のHCP漏出を測定する実験の結果を示すグラフである。Y軸はHCP濃度(ppm)を示し、X軸はAEX負荷(kg/L)を示す。
【図21】フロースルー精製プロセスステップにおけるウイルス濾過デバイスの負荷の関数としてMAb凝集物の除去を測定する実験の結果を示すグラフである。X軸はウイルス濾過負荷(kg/m)を示し、Y軸はウイルス濾過後の試料中のMAb凝集物のパーセンテージを示す。
【図22】深層濾過、活性化炭素およびウイルス濾過後の圧力プロファイルを測定する実験の結果を示すグラフである。Y軸は圧力(psi)を示し、X軸は時間(h)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、目的のタンパク質および1または複数の不純物を含有する試料から目的のタンパク質を精製するための新規および改良されたプロセスを提供する。
【0036】
活性化炭素は、以前は水精製プロセスにおいて用いられていた。さらに、活性化炭素は、血清アルブミン(album)から、脂肪酸およびビリルビンなどの小分子不純物を除去するために用いられてきた(例えば、Chenら、J.Biol.Chem.,242:173−181(1967);Nakanoら、Anal Biochem.,129:64−71(1983);Nikolaevら、Int.J.Art.Org.,14:179−185(1991)を参照されたい)。活性化炭素はまた、植物ウイルスの精製中に色素ならびに宿主タンパク質、プロテアーゼ、およびリボヌクレアーゼを除去するためにも用いられてきた(例えば、Price,Am.J.Botany,33:45−54(1946);Corbett,Virology,15:8−15(1961);McLeanaら、Virology,31:585−591(1967)を参照されたい)。
【0037】
従って、一般的には、活性化炭素は溶液中の分子(例えば、水試料中の不純物)に非特異的に結合すると報告されてきた。
【0038】
本発明は、少なくとも部分的には、活性化炭素がタンパク質性不純物およびDNAの集団を選択的に除去し、それによって、それを細胞中での組換え発現により生成されたタンパク質の精製において有用にすることができるという予想外で驚くべき知見に基づくものである。
【0039】
本明細書の実施例に示されるように、活性化炭素を、標的タンパク質の収率に有意に影響することなく、タンパク質精製プロセス中の宿主細胞タンパク質(HCP)およびDNA不純物の選択的除去に用いることができる。さらに、本明細書に記載の実施例に示されるように、活性化炭素が、単独でまたは1もしくは複数の種々の型のクロマトグラフィー媒体との混合物中で、フロースルー様式におけるタンパク質精製プロセスにおいて用いられる場合、それはタンパク質含有試料中の1または複数の不純物のレベルの有意な低下をもたらし、ならびに下流のクロマトグラフィーカラムの負担を減少させる。さらに、特定の例において、活性化炭素は精製プロセスにおいて用いることができるステップ数を減少させ、それによって、全体の運転費用を減少させ、時間を節約することができる。さらに、本明細書に記載の実施例に示されるように、活性化炭素を捕捉ステップの前または後で用いることによって、目的のタンパク質を含有する試料中の1または複数の不純物のレベルを低下させることができる。
【0040】
本明細書に記載のいくつかの実施形態において、活性化炭素は、標的分子を精製するためのプロセス全体のフロースルー精製ステップにおいて用いられ、ここでプロセス全体ならびにフロースルー精製ステップは連続様式で実施される。
【0041】
本開示をより容易に理解できるように、特定の用語をまず定義する。さらなる定義は詳細な説明を通して記載される。
【0042】
I.定義
本明細書で用いられる用語「炭素質材料」とは、炭素から構成されたまたは炭素を含有する任意の物質を指す。いくつかの実施形態において、特許請求される本発明による方法において用いられる炭素質材料は、活性または活性化炭素である。いくつかの実施形態において、活性化炭素は活性炭を含む。いくつかの実施形態において、活性化炭素はセルロース媒体中に組み込まれる。
【0043】
本明細書で互換的に用いられる用語「活性炭素(active carbon)」または「活性化炭素(activated carbon)」とは、その孔構造を増強するためのプロセスにかけられた炭素質材料を指す。活性化炭素は非常に高い表面積を有する多孔性固体である。それらは、石炭、木材、やし殻、堅果殻および泥炭などの様々な起源から誘導することができる。活性化炭素を、制御された雰囲気下での加熱を含む物理的活性化または強酸、塩基もしくは酸化剤を用いる化学的活性化を用いてこれらの材料から製造することができる。活性化プロセスは、不純物除去のための高い能力を活性化炭素に与える高い表面積を有する多孔性構造をもたらす。活性化プロセスを改変して、表面の酸度を制御することができる。
【0044】
典型的な活性化プロセスは、樹脂廃棄物、石炭、石炭コークス、石油コークス、褐炭、ポリマー材料ならびにパルプおよび紙、パルプ生産に由来する残渣、木材(木材チップ、おがくずおよび木粉など)、堅果殻(アーモンド殻およびココナッツ殻など)、堅果仁および果実核(オリーブおよびサクランボ核など)などのリグノセルロース材料などの炭素源を、熱プロセス(例えば、酸化ガスを用いる)または化学的プロセス(例えば、リン酸もしくは塩化亜鉛などの金属塩を用いる)にかけることを含む。リン酸(HPO)を用いる木材ベースの炭素の化学的活性化の例は、炭素の脱色およびガス吸着能力の改善をもたらした米国特許第Re.31,093号に開示されている。また、米国特許第5,162,286号は、堅果殻、果実核および堅果仁などの、特に高密度であり、比較的高い(30%)リグニン含量を含む木材ベースの材料のリン酸活性化を教示している。リグノセルロース材料のリン酸活性化は、高い活性および高い密度の炭素を調製するステップとして、米国特許第5,204,310号にも考察されている。この段落に列挙されたそれぞれの特許の教示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
多くの他の吸着材料とは対照的に、活性化炭素は比較的弱いvan der WaalsまたはLondon分散力を用いて分子と相互作用すると考えられている。典型的な市販の活性化炭素製品は、当業界において周知の方法である窒素吸着に基づくBrunauer−Emmett−Teller(「BET」)法により測定されるように、少なくとも300m/gの表面積を示す。
【0046】
活性炭素または活性化炭素は以前は液体および気体を精製するためのプロセスにおいて用いられていたが、1または複数のタンパク質性不純物から組換え発現されたタンパク質を精製するためのプロセスにおいては以前は用いられていなかった。
【0047】
用語「免疫グロブリン」、「Ig」または「IgG」または「抗体」(本明細書では互換的に用いられる)とは、鎖が、例えば、鎖間ジスルフィド結合により安定化されており、抗原に特異的に結合する能力を有する、2個の重鎖および2個の軽鎖からなる基本的な4個のポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を指す。用語「一本鎖免疫グロブリン」または「一本鎖抗体」(本明細書では互換的に用いられる)とは、鎖が、例えば、鎖間ペプチドリンカーにより安定化されており、抗原に特異的に結合する能力を有する、重鎖および軽鎖からなる2個のポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を指す。用語「ドメイン」とは、例えば、β−プリーツシートおよび/または鎖内ジスルフィド結合により安定化されたペプチドループ(たとえば、3から4個のペプチドループを含む)を含む重鎖または軽鎖ポリペプチドの球形領域を指す。ドメインはさらに、本明細書では、「定常」ドメインの場合は様々なクラスのメンバーのドメイン内の配列変化の相対的欠如または「可変」ドメインの場合は様々なクラスのメンバーのドメイン内の有意な変化に基づいて、「定常」または「可変」と呼ばれる。抗体またはポリペプチド「ドメイン」は、抗体またはポリペプチド「領域」と当業界では互換的に呼ばれることも多い。抗体軽鎖の「定常」ドメインは、「軽鎖定常領域」、「軽鎖定常ドメイン」、「CL」領域または「CL」ドメインと互換的に呼ばれる。抗体重鎖の「定常」ドメインは、「重鎖定常領域」、「重鎖定常ドメイン」、「CH」領域または「CH」ドメインと互換的に呼ばれる。抗体軽鎖の「可変」ドメインは、「軽鎖可変領域」、「軽鎖可変ドメイン」、「VL」領域または「VL」ドメインと互換的に呼ばれる。抗体重鎖の「可変」ドメインは、「重鎖可変領域」、「重鎖可変ドメイン」、「VH」領域または「VH」ドメインと互換的に呼ばれる。
【0048】
免疫グロブリンまたは抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってよく、モノマーまたはポリマー形態で存在してもよく、例えば、IgM抗体はペンタマー形態で存在するおよび/またはIgA抗体はモノマー、ダイマーもしくはマルチマー形態で存在する。免疫グロブリンまたは抗体はまた、多特異的抗体(例えば、二特異的抗体)およびリガンド特異的結合ドメインを保持するまたはそれを含むように改変されている限り、抗体フラグメントを含んでもよい。抗体の用語「フラグメント」または「機能的フラグメント」とは、無傷のまたは完全な抗体または抗体鎖よりも少ないアミノ酸残基を含む抗体または抗体鎖の部分または一部を指す。フラグメントを、無傷のまたは完全な抗体または抗体鎖の化学的または酵素的処理により得ることができる。フラグメントを組換え手段により得ることもできる。組換え生産する場合、フラグメントを単独でまたは融合タンパク質と呼ばれるより大きいタンパク質の部分として発現させることができる。フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fcおよび/またはFvフラグメントが挙げられる。融合タンパク質の例としては、Fc融合タンパク質が挙げられる。
【0049】
特定の実施形態において、特許請求される本発明による方法は、Fc領域を含むフラグメントである抗体のフラグメントを精製するために用いられる。
【0050】
用語「Fc領域」および「Fc領域を含有するタンパク質」は、タンパク質が、免疫グロブリンの重鎖および/または軽鎖定常領域またはドメイン(前記で定義されたようなCHおよびCL領域)を含むことを意味する。「Fc領域」を含有するタンパク質は、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能を有してもよい。CH/CH領域などの「Fc領域」は、プロテインAまたはその機能的変異体などのアフィニティリガンドに選択的に結合することができる。いくつかの実施形態において、Fc領域を含有するタンパク質は、プロテインAまたはその機能的誘導体、変異体もしくは断片に特異的に結合する。他の実施形態において、Fc領域を含有するタンパク質は、プロテインGもしくはプロテインLまたはその機能的誘導体、変異体もしくは断片に特異的に結合する。
【0051】
上記で考察されたように、いくつかの実施形態において、標的タンパク質はFc領域を含有するタンパク質、例えば、免疫グロブリンである。いくつかの実施形態において、Fc領域を含有するタンパク質は、別のポリペプチドまたはその断片に融合された免疫グロブリンのFc領域を含む組換えタンパク質である。
【0052】
一般的には、免疫グロブリンまたは抗体は、目的の「抗原」を指向する。好ましくは、抗原は生物学的に重要なポリペプチドであり、疾患または障害に罹患している哺乳動物への抗体の投与はその哺乳動物において治療的利益をもたらすことができる。
【0053】
本明細書で互換的に用いられる用語「モノクローナル抗体」または「Mab」とは、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指す、すなわち、集団中の個々の抗体は、少量で存在してもよい可能な天然の突然変異について以外は同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原性部位を指向する。さらに、典型的には異なる決定基(エピトープ)を指向する異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基を指向する。修飾語句「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を要するものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って用いられるモノクローナル抗体を、Kohlerら、Nature 256:495(1975)により初めて記載されたハイブリドーマ方法により作製するまたは組換えDNA方法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)により作製することができる。「モノクローナル抗体」を、Clacksonら、Nature 352:624−628(1991)およびMarksら、J.Mol.Biol.222:581−597(1991)に記載の技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0054】
モノクローナル抗体はさらに、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種から誘導されたまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるまたは相同であるが、それらが所望の生物活性を示す限り、鎖の残りが、別の種から誘導されたまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体ならびにそのような抗体のフラグメント中に対応する配列と同一であるまたは相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含んでもよい(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984))。
【0055】
本明細書で用いられる場合の用語「超可変領域」とは、抗原結合の原因となる抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」もしくは「CDR」に由来するアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基24−34(L1)、50−56(L2)および89−97(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の31−35(H1)、50−65(H2)および95−102(H3);Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))および/または「超可変ループ」に由来する残基(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基26−32(L1)、50−52(L2)および91−96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の26−32(H1)、53−55(H2)および96−101(H3);ChothiaおよびLesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987))を含む。「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義された超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0056】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最少の配列を含むキメラ抗体である。多くの部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)に由来する超可変領域残基により置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基により置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体中には見出されない残基を含んでもよい。これらの改変は、抗体の性能をさらに改善するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1個、典型的には2個の可変ドメインの実質的に全部を含み、その中の超可変ループの全部または実質的に全部は非ヒト免疫グロブリンのものと一致し、FR領域の全部または実質的に全部はヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンの少なくとも一部を含んでもよい。さらなる詳細については、Jonesら、Nature 321:522−525(1986);Riechmannら、Nature 332:323−329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。
【0057】
本明細書で互換的に用いられる用語「ポリヌクレオチド」および「核酸分子」とは、任意の長さのヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのポリマー形態を指す。これらの用語は、一本鎖、二本鎖もしくは三本鎖DNA、ゲノムDNA、cDNA、RNA、DNA−RNAハイブリッドまたはプリンおよびピリミジン塩基を含むポリマーまたは他の天然の、化学的もしくは生化学的に改変された、非天然のもしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含む。ポリヌクレオチドの骨格は、糖およびリン酸基(典型的には、RNAもしくはDNA中に見出すことができる)または改変もしくは置換された糖もしくはリン酸基を含んでもよい。さらに、二本鎖ポリヌクレオチドを、相補鎖を合成し、好適な条件下で鎖とアニーリングさせることによりまたは好適なプライマーと共にDNAポリメラーゼを用いてデノボで相補鎖を合成することにより、化学的合成の一本鎖ポリヌクレオチド産物から得ることができる。核酸分子は多くの異なる形態をとってもよく、例えば、遺伝子または遺伝子断片、1または複数のエクソン、1または複数のイントロン、mRNA、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝状ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブおよびプライマーであってよい。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体、ウラシル、フルオロリボースおよびチオエートなどの他の糖および連結基ならびにヌクレオチド分枝などの改変ヌクレオチドを含んでもよい。本明細書で用いられる場合、「DNA」または「ヌクレオチド配列」は、塩基A、T、CおよびGを含むだけでなく、任意のそれらの類似体またはこれらの塩基の改変形態、例えば、メチル化ヌクレオチド、ヌクレオチド間改変、例えば、非荷電連結およびチオエート、糖類似体の使用、ならびに改変されたおよび/または選択的骨格構造、例えば、ポリアミドをも含む。
【0058】
本明細書で用いられる用語「溶液」、「組成物」または「試料」とは、目的のタンパク質または標的タンパク質(例えば、抗体などのFc領域を含有するタンパク質)および1または複数の不純物の混合物を指す。いくつかの実施形態において、試料は特許請求される本発明による方法にかけられる前に清澄化ステップにかけられる。いくつかの実施形態において、試料は細胞培養供給液、例えば、哺乳動物細胞培養(例えば、CHO細胞)からの供給液を含む。しかしながら、試料は目的のタンパク質を生成するのに用いられる非哺乳動物発現系をも包含する。
【0059】
本明細書で用いられる用語「非哺乳動物発現系」とは、宿主細胞または生物が非哺乳動物起源のものである、治療的タンパク質を作製するのに用いられる全ての宿主細胞または生物を指す。非哺乳動物発現系の非限定例は、E.コリ(E.coli)およびピチア・パストリス(Pichia pastoris)である。
【0060】
本明細書で用いられる用語「UV活性種」とは、UV分光光度計によりモニターされるように、培養液をプロテインA分析カラムにかけた後の清澄化された細胞培養液のフロースルー画分の組成物を指す。いくつかの実施形態において、UV分光光度計は、280nmの画分をモニターする。この画分は一般的に、染料(pH指示剤など)、宿主細胞タンパク質、DNA、および画分から除去する必要がある他の細胞培養培地成分などの不純物からなり、目的のタンパク質(例えば、抗体)をも含む。フロースルー不純物ピークは手動でまたはプリセットアルゴリズムによって統合され、総不純物レベルを定量するのに用いられる。
【0061】
本明細書で用いられる用語「ポリペプチド」とは、一般的に約10個より多いアミノ酸を有するペプチドおよびタンパク質を指す。本明細書で互換的に用いられる用語「目的のタンパク質」および「標的タンパク質」とは、限定されるものではないが、1または複数の不純物から、本発明の方法により精製されるべき抗体などのFc領域を含有するタンパク質などのタンパク質またはポリペプチドを指す。
【0062】
ポリペプチドの例としては、例えば、レニン;ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α−1−抗トリプシン;インスリンα鎖;インスリンβ鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;第VIIIC因子、第IX因子、組織因子およびvon Willebrands因子などの凝固因子;プロテインCなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;ウロキナーゼもしくはヒト尿もしくは組織型プラスミノゲン活性化因子(t−PA)などのプラスミノゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子αおよびβ;エンケファリナーゼ;RANTES(活性化の際に調節され、通常はT細胞で発現分泌される);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP−1−α);ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン;ミュラー管抑制物質;リラクシンα鎖;リラクシンβ鎖;プロリラクシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;β−ラクタマーゼなどの微生物タンパク質;DNase;IgE;細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)(例えば、CTLA−4);インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモンもしくは成長因子の受容体;プロテインAもしくはD;リウマチ因子;骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5もしくは−6(NT−3、NT−4、NT−5もしくはNT−6)などの神経栄養因子またはNGF−βなどの神経成長因子;血小板由来成長因子(PDGF);αFGFおよびβFGFなどの線維芽細胞成長因子;上皮成長因子(EGF);TGF−αおよびTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4もしくはTGF−β5を含むTGF−βなどのトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II);デス(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP);CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD34およびCD40などのCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;イムノトキシン;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン−α、−βおよび−γなどのインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−CSFおよびG−CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL−1からIL−10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;分解促進因子;例えば、AIDSエンベロープの一部などのウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA−4およびVCAMなどのインテグリン;HER2、HER3もしくはHER4受容体などの腫瘍関連抗原;ならびに上記に列挙されたポリペプチドのいずれかの断片および/もしくは変異体が挙げられる。さらに、本発明のタンパク質またはポリペプチドは、上記に列挙されたポリペプチドのいずれかに特異的に結合する抗体、そのフラグメントまたは変異体である。
【0063】
本明細書で互換的に用いられる用語「汚染物質」、「不純物」および「デブリ」とは、本発明のプロセスを用いて1または複数の外来または好ましくない分子から分離される標的タンパク質を含有する試料中に存在してもよいDNA、RNA、1または複数の宿主細胞タンパク質(HCP)、エンドトキシン、脂質および1または複数の添加物などの生体大分子を含む任意の外来または好ましくない分子を指す。さらに、そのような汚染物質は、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーステップを用いる場合の浸出したプロテインAなどの、精製プロセスの前に生じ得るステップにおいて用いられるまたは生成される任意の試薬を含んでもよい。
【0064】
用語「チャイニーズハムスター卵巣細胞タンパク質」および「CHOP」は、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞培養液から誘導された宿主細胞タンパク質(「HCP」)の混合物を指すように互換的に用いられる。HCPまたはCHOPは一般的には、CHO細胞中で発現された抗体またはイムノアドヘシンなどの目的のタンパク質を含む細胞培養培地または溶解物(例えば、収穫された細胞培養液(「HCCF」))中に不純物として存在する。目的のタンパク質を含む混合物中に存在するCHOPの量は、目的のタンパク質の純度の尺度を提供する。HCPまたはCHOPは、限定されるものではないが、CHO宿主細胞などの宿主細胞により発現された目的のタンパク質を含む。典型的には、タンパク質混合物中のCHOPの量は、混合物中の目的のタンパク質の量に対して、百万分の一で発現される。宿主細胞が別の細胞型、例えば、CHO以外の哺乳動物細胞、E.コリ、酵母、昆虫細胞または植物細胞である場合、HCPは標的タンパク質以外の、宿主細胞溶解物中に見出されるタンパク質を指すことが理解される。
【0065】
用語「百万分の一」または「ppm」は、本発明の方法により精製された標的タンパク質の純度の尺度を指すように本明細書で互換的に用いられる。単位ppmは、目的のタンパク質のナノグラム/ミリグラムでのまたはミリグラム/ミリリットルでのHCPもしくはCHOPの量を指す(すなわち、CHOP ppm=(CHOP ng/ml)/(目的のタンパク質mg/ml)(式中、タンパク質は溶液中にある。))。
【0066】
本明細書で互換的に用いられる用語「精製すること」、「分離すること」または「単離すること」とは、目的のタンパク質および1または複数の不純物を含む組成物または試料から目的のポリペプチドもしくはタンパク質または標的タンパク質の純度を増加させることを指す。典型的には、目的のタンパク質の純度は、組成物から少なくとも1つの不純物を除去する(完全にまたは部分的に)ことにより増加する。「精製ステップ」は、目的のタンパク質を含む組成物中に100ppm未満のHCP、または90ppm未満、80ppm未満、70ppm未満、60ppm未満、50ppm未満、40ppm未満、30ppm未満、20ppm未満、10ppm未満、5ppm未満もしくは3ppm未満のHCPを含む組成物または試料を指すように本明細書で用いられる「均質な」組成物または試料をもたらす、精製プロセス全体の一部であってもよい。
【0067】
本明細書で用いられる用語「タンパク質相」とは、標的タンパク質の濃度が試料中の標的タンパク質の初期濃度と比較して実質的に増加した試料の一部を指す。この濃縮プロセスは、固体多孔性もしくは非多孔性支持体上でのタンパク質吸着;液体−空気もしくは液体−気体境界面でのタンパク質吸着;2つの非混和性もしくは部分的に混和性の液体間の境界面でのタンパク質吸着;純粋な成分としてまたは1もしくは複数の他の分子もしくはポリマーとの複合体形成の結果としてのタンパク質沈降;またはタンパク質結晶化の使用を含んでもよい。
【0068】
本明細書で用いられる用語「液相」とは、標的タンパク質の濃度が試料中のタンパク質の初期濃度と比較して実質的に低下した試料の一部を指す。液相は上記で定義されたタンパク質相と同時に作製することができる。
【0069】
本明細書で互換的に用いられる用語「フロースループロセス」、「フロースルー様式」および「フロースルークロマトグラフィー」とは、試料中の少なくとも1つの生成物が、クロマトグラフィー樹脂または媒体を通って流動することを意図されるが、少なくとも1つの潜在的な成分がクロマトグラフィー樹脂または媒体に結合する生成物分離技術を指す。
【0070】
流動することが意図される試料とは、一般的には、「移動相」と呼ばれる。「フロースルー様式」は、一般的には、アイソクラチック操作(すなわち、移動相の組成が変化しないクロマトグラフィープロセス)である。フロースルーに用いられる媒体は通常、標的タンパク質分子を含有する同じバッファー溶液を用いて予め平衡化される。精製後、媒体をさらなる量の同じバッファーでフラッシュして、生成物の回収を増加させることができる。いくつかの実施形態において、「フロースルー様式」の移動相は、目的の生成物を含有する細胞培養供給液である。いくつかの例において、供給液のpHまたは伝導率を調整して、フロースループロセスを用いる不純物除去を最大化する。
【0071】
特許請求される方法に記載のおよび本明細書に記載の実施例に記載されるいくつかの実施形態において、前記方法はフロースルー様式で実施される陰イオン交換ステップを用いる。
【0072】
本明細書で互換的に用いられる用語「結合および溶出様式」ならびに「結合および溶出プロセス」とは、試料中に含まれる少なくとも1つの生成物がクロマトグラフィー樹脂または媒体に結合し、その後溶出される生成物分離技術を指す。
【0073】
用語「クロマトグラフィー」とは、目的の分析物(例えば、免疫グロブリンなどのFc領域を含有するタンパク質)が、混合物の個々の分子が移動相の影響下で、または結合および溶出プロセスにおいて固定された媒体を通って移動する速度の差異の結果として他の分子から分離される、混合物中に存在する他の分子から目的の分析物を分離する任意の種類の技術を指す。
【0074】
用語「クロマトグラフィー樹脂」または「クロマトグラフィー媒体」は本明細書で互換的に用いられ、混合物中に存在する他の分子から目的の分析物(例えば、免疫グロブリンなどのFc領域を含有するタンパク質)を分離する任意の種類の多孔性または非多孔性固相を指す。通常、目的の分析物は、混合物の個々の分子が移動相の影響下で、または結合および溶出プロセスにおいて固定された固相を通って移動する速度の差異の結果として、他の分子から分離される。非限定例としては、陽イオン、陰イオン、HICまたは混合様式の表面改変を有する樹脂;陽イオン、陰イオン、HICまたは混合様式の表面改変を有する膜;陽イオン、陰イオン、HICまたは混合様式の表面改変を有する織ったまたは織られていない繊維;および陽イオン、陰イオン、HICまたは混合様式の表面改変を有するモノリスが挙げられる。
【0075】
本明細書で用いられる用語「アフィニティ分離」または「アフィニティ精製」とは、標的分析物(例えば、免疫グロブリンなどのFc領域を含有するタンパク質)を含む試料を、標的分析物に結合することが知られたアフィニティ媒体(例えば、プロテインAまたはその変異体などの分析物に結合することが知られたアフィニティリガンドをその上に担持する固相支持体)と接触させることを含む任意の精製またはアッセイ技術を指す。
【0076】
本明細書で互換的に用いられる用語「アフィニティクロマトグラフィー」および「タンパク質アフィニティクロマトグラフィー」とは、標的タンパク質(例えば、目的のFc領域を含有するタンパク質または抗体)が、標的タンパク質に特異的なリガンドに特異的に結合されるタンパク質分離技術を指す。いくつかの実施形態において、そのようなリガンドは、プロテインAもしくはプロテインGまたはその機能的変異体であり、これはクロマトグラフィー固相材料に共有結合し、溶液がクロマトグラフィー固相材料と接触する時に溶液中の標的タンパク質に接近できる。標的タンパク質は一般的には、クロマトグラフィーステップ中にリガンドに対するその特異的結合親和性を保持するが、混合物中の他の溶質および/またはタンパク質はリガンドに感知できるほどにまたは特異的に結合しない。固定されたリガンドへの標的タンパク質の結合は、標的タンパク質が固相材料上の固定されたリガンドに特異的に結合したままにしながら、汚染しているタンパク質またはタンパク質不純物がクロマトグラフィー媒体を通過するのを可能にする。次いで、特異的に結合した標的タンパク質は好適な条件下(例えば、低いpH、高いpH、高い塩、競合リガンドなど)で固定されたリガンドから活性形態で除去され、より早くカラムを通過できるようになった汚染しているタンパク質またはタンパク質不純物を含まない溶出バッファーと共にクロマトグラフィーカラムを通過する。任意の成分を、その対応する特異的結合タンパク質、例えば、抗体を精製するためのリガンドとして用いることができる。しかしながら、本発明による様々な方法において、プロテインAが、Fc領域を含有する標的タンパク質または抗体のためのリガンドとして用いられる。標的タンパク質(例えば、Fc領域を含有するタンパク質)のリガンド(例えば、プロテインA)からの溶出のための条件は、当業者によって容易に決定することができる。いくつかの実施形態において、プロテインGまたはその機能的変異体をリガンドとして用いることができる。いくつかの実施形態において、プロテインAなどのリガンドは、Fc領域を含有するタンパク質への結合、洗浄またはリガンド/標的タンパク質コンジュゲートの再平衡化、次いで、約4以下のpHを有するバッファーを用いる溶出のために5−9のpH範囲で用いられる。
【0077】
アフィニティクロマトグラフィーは目的のタンパク質を結合させるのに特異的であるが、プロテインAおよびプロテインGなどのリガンドの使用を用いるアフィニティクロマトグラフィーは非常に高価である傾向があり、非特異的材料(例えば、1または複数の不純物)によるクロマトグラフィーカラムの急速な汚損が当業界で大きな問題をもたらしている。本発明による方法は、試料から1または複数のそのような非特異的材料を除去することによりクロマトグラフィーカラムの負担を減少させる材料(例えば、活性化炭素)の使用によってこの問題に対する解決法を提供し、それによって、全体の費用を減少させるならびにカラムの寿命を増加させる。さらに、特許請求される本発明による方法のいくつかはアフィニティクロマトグラフィーステップ後により少ないクロマトグラフィーステップの使用をもたらし、それによってプロセス全体の効率を増加させる。
【0078】
組換え生産されたタンパク質の複数ステップの精製において、通常は、プロセスの早期段階で細胞培養液中に存在する多種多様な可溶性不純物から標的タンパク質を単離することが有益である。この単離は、標的タンパク質のクロマトグラフィー捕捉または非クロマトグラフィー単離により達成することができる。
【0079】
本明細書で用いられるクロマトグラフィー「捕捉」ステップは、細菌発酵または細胞培養発現により産生された収穫された原料のすぐ下流に配置されたクロマトグラフィー媒体に標的タンパク質を結合させることからなる。典型的には、収穫された原料は清澄化されるが、捕捉は清澄化されていない原料からも同様に達成することができる。このステップの主な機能は、不純物を流動させながら、可能な最も少ない量の樹脂を用いて溶液から標的タンパク質を結合させることである。次いで、標的タンパク質はさらなる下流のプロセッシングのために有意により少ない容量のバッファー中に溶出される。力学的結合能力、質量回収、および標的の生物活性の保持の最良の組合せを有するクロマトグラフィー媒体が選択される。Fc結合領域を含有する抗体については、プロテインAまたはプロテインGに基づくものなどの、アフィニティクロマトグラフィー媒体の使用が一般的である。
【0080】
捕捉に用いられるクロマトグラフィー媒体は、多孔性樹脂、膜、モノリス、織ったまたは織られていない多孔性材料を含む群より選択される。
【0081】
標的タンパク質の非クロマトグラフィー単離は、1または複数の下記ステップにより達成され得る:固体多孔性もしくは非多孔性支持体上でのタンパク質吸着;液体−空気もしくは液体−気体境界面でのタンパク質吸着;2つの非混和性もしくは部分的に混和性の液体間の境界面でのタンパク質吸着;純粋な成分としてまたは1もしくは複数の他の分子もしくはポリマーとの複合体形成の結果としてのタンパク質沈降;またはタンパク質結晶化の使用。
【0082】
用語「イオン交換」および「イオン交換クロマトグラフィー」とは、混合物中の目的の溶質または分析物(例えば、Fc領域を含有する標的タンパク質)が、例えば、共有結合により固相イオン交換材料に連結された荷電化合物と相互作用し、目的の溶質または分析物が、ほぼ混合物中の溶質不純物または汚染物質である荷電化合物と非特異的に相互作用するクロマトグラフィープロセスを指す。混合物中の汚染している溶質は、目的の溶質よりも速くもしくは遅くイオン交換材料のカラムから溶出するまたは目的の溶質と比較して樹脂に結合するかもしくは樹脂から排除される。「イオン交換クロマトグラフィー」は、具体的には、陽イオン交換、陰イオン交換、および混合様式のイオン交換クロマトグラフィーを含む。例えば、陽イオン交換クロマトグラフィーは、標的分子(例えば、Fc領域を含有する標的タンパク質)に結合した後、溶出する(陽イオン交換結合および溶出クロマトグラフィーもしくは「CIEX」)または標的分子がカラムを「流動」しながら主に不純物に結合する(陽イオン交換フロースルークロマトグラフィーFT−CIEX)ことができる。陰イオン交換クロマトグラフィーは、標的分子(例えば、Fc領域を含有する標的タンパク質)に結合した後、溶出するまたは標的分子がカラムを「流動」しながら主に不純物に結合することができる。いくつかの実施形態においておよび本明細書に記載の実施例に示されるように、陰イオン交換クロマトグラフィーステップは、フロースルー様式で実施される。特定の実施形態において、陰イオン交換クロマトグラフィーステップは、コーティングが多孔性基質および1または複数のポリマー性第一級アミンまたはそのコポリマーを含む、基質上の多孔性コーティングを含む多孔性吸着媒体の使用を用いる。
【0083】
本明細書で用いられる用語「混合様式クロマトグラフィー」または「多様式クロマトグラフィー」とは、それぞれ目的の分子と相互作用することができる少なくとも2つの異なる型の官能基を担持するクロマトグラフィー固定相を用いるプロセスを指す。混合様式クロマトグラフィー媒体の例は、AEX混合様式樹脂であるCapto(商標)Adhere(GE Healthcare)である。混合様式クロマトグラフィーは、一般的に標的タンパク質および/または不純物と1より多い様式で相互作用するリガンドを用いる。このリガンドは、典型的には、結合させようとする物質と相互作用する少なくとも2つの異なるが協働する部位を含む。例えば、これらの部位の1つは、目的の物質との電荷−電荷型相互作用を有してもよいが、他の部位は目的の物質との電子受容体−供与体型相互作用ならびに/または疎水性および/もしくは親水性相互作用を有してもよい。電子供与体−受容体相互作用型としては、水素結合、π−π、陽イオン−π、電荷移動、双極子−双極子および誘導双極子相互作用が挙げられる。一般的には、相互作用の合計の差異に基づいて、標的タンパク質および1または複数の不純物を様々な条件下で分離することができる。
【0084】
本明細書で用いられる用語「疎水性相互作用クロマトグラフィー」または「HIC」とは、分子の疎水性、すなわち、水性溶液から疎水性表面に吸着する分子の能力に基づいて分子を分離するためのプロセスを指す。HICは通常、典型的にはRP(逆相)樹脂と比較して低い疎水性または疎水性リガンドの密度を有する特に命名されたHIC樹脂により逆相クロマトグラフィーと異なる。
【0085】
HICクロマトグラフィーは、典型的には、溶質分子の表面上の疎水性基の差異に依存する。これらの疎水性基は、不溶性マトリックスの表面上の疎水性基に結合する傾向を有する。HICは逆相液体クロマトグラフィーよりも極性が高く、変性が少ない環境を用いるため、しばしばイオン交換またはゲル濾過クロマトグラフィーとの組合せにおいてタンパク質精製にとってますます一般的になっている。
【0086】
用語「イオン交換樹脂」、「イオン交換媒体」および「イオン交換材料」とは、負に荷電した固相(すなわち、陽イオン交換樹脂)または正に荷電した固相(すなわち、陰イオン交換樹脂)を指す。電荷は、例えば、共有連結または非共有コーティングもしくは吸着により、固相に1または複数の荷電リガンドを結合させることにより提供され得る。または、もしくはさらに、電荷は固相の固有の特性であってもよい。
【0087】
本明細書で用いられる用語「CEX」、「陽イオン交換媒体」、「陽イオン交換樹脂」および「陽イオン交換材料」とは、負に荷電し、かくして、固相上を通過したまたは固相を通過した水性溶液中の陽イオンとの交換のための遊離陽イオンを有する固相を指す。固相に結合して陽イオン交換樹脂を形成する負に荷電したリガンドは、例えば、カルボキシレートまたはスルホナートであってよい。市販の陽イオン交換樹脂としては、カルボキシ−メチル−セルロース、アガロース上に固定されたスルホプロピル(SP)(例えば、PharmaciaからのSP−SEPHAROSE FAST FLOW(商標)またはSP−SEPHAROSE HIGH PERFORMANCE(商標))およびアガロース上に固定されたスルホニル(例えば、PharmaciaからのS−SEPHAROSE FAST FLOW(商標))が挙げられる。
【0088】
本明細書で用いられる用語「混合様式媒体」、「混合様式樹脂」および「混合様式イオン交換樹脂」とは、陽イオン、陰イオンおよび疎水性部分で共有改変された固相を指す。市販の混合様式イオン交換樹脂は、弱い陽イオン交換基、低濃度の陰イオン交換基およびシリカゲル固相支持体マトリックスに結合した疎水性リガンドを含有するBAKERBOND ABX(商標)(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)である。
【0089】
本明細書で用いられる用語「HIC媒体」または「HIC樹脂」または「HIC材料」とは、HIC分離に用いられるクロマトグラフィー材料を指す。HIC媒体は通常、短い脂肪族基または芳香族基などの疎水性リガンドで改変された多孔性クロマトグラフィー樹脂から誘導される。HIC媒体の例としては、Butyl Sepharose FFおよびPhenyl Sepharose FFが挙げられ、両方ともGE Healthcareから市販されている。市販のHIC樹脂のさらなる例としては、Fractogel(登録商標)PhenylおよびFractogel(登録商標)Propyl(MERCK KGA,Darmstadt,Germany)、Butyl Sepharose(登録商標)およびPhenyl Sepharose(登録商標)(GE HEALTHCARE)が挙げられる。
【0090】
本明細書で用いられる用語「AEX」、「陰イオン交換媒体」、「陰イオン交換樹脂」および「陰イオン交換材料」とは、例えば、固相に結合した、第一級、第二級、第三級または第四級アミノ基などの1または複数の正に荷電したリガンドを有する、正に荷電した固相を指す。市販の陰イオン交換樹脂としては、DEAEセルロース、QAE SEPHAROSE(商標)およびFAST Q SEPHAROSE(商標)(PHARMACIA)が挙げられる。
【0091】
用語「プロテインA」および「ProA」は本明細書では互換的に用いられ、天然起源から回収されたプロテインA、合成的に製造されたプロテインA(例えば、ペプチド合成または組換え技術による)およびFc領域などのCH/CH領域を有するタンパク質に結合する能力を保持するその変異体を包含する。プロテインAは、Repligen,GE Healthcare and Lonzaから商業的に購入することができる。プロテインAは、一般的には固相支持体材料上に固定される。用語「ProA」はまた、プロテインAに共有結合したクロマトグラフィー固相支持体マトリックスを含有するアフィニティクロマトグラフィー樹脂またはカラムをも指す。
【0092】
本発明による方法において用いられるプロテインAの機能的誘導体、断片または変異体は、マウスIgG2aまたはヒトIgG1のFc領域に関して、少なくともK=10−8M、好ましくはK=10−9Mの結合定数を特徴としてもよい。結合定数に関してそのような値に準拠する相互作用は、本文脈では「高親和性結合」と呼ばれる。好ましくは、プロテインAのそのような機能的誘導体または変異体は、天然ドメインE、D、A、B、CまたはIgG結合機能を保持したその遺伝子操作された突然変異体から選択される、野生型プロテインAの機能的IgG結合ドメインの少なくとも一部を含む。
【0093】
本発明による「汚染プロテインA」は、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーカラムから結合した抗体を溶出させる際に得られる上記で定義されたようなプロテインAまたはその機能的誘導体の任意の型の機能的なIgG結合子孫である。そのような汚染プロテインA種は、例えば、特に、工業生産において酵素作用により生じる可能性が非常に高いペプチド結合の加水分解の結果生じるものであってよい。プロテインAクロマトグラフィーは、粗く精製された新鮮な生成物溶液が依然としてかなりのプロテアーゼ活性を担持する場合、下流のプロセッシングにおける初期ステップとして適用される。細胞培養培地中の死んでいる細胞または初期の遠心分離もしくは濾過ステップにおいて破壊された細胞は、設定された遊離プロテアーゼを有する可能性が高い;調節のために、下流のプロセッシングの前またはその過程で細胞培養培地にプロテアーゼ阻害剤を補給することは、生化学研究実務とは対照的に、通常は達成されない。例はフェニル−メチル−スルホニル−クロリド(PMSF)またはe−カプロン酸である。そのような化学剤は生物医薬品の製造における添加剤として望ましくない。さらに、プロテインAの組換え機能的誘導体または断片は、タンパク質折畳みの三次構造に応じて、野生型プロテインAよりもプロテアーゼ耐性が低い可能性がある。一度結合ドメインの総数が減少したら、個々のIgG結合ドメインを連結するアミノ酸断片は曝露され得る。ドメイン間の接触はドメインの折畳みの安定性に寄与することもできる。また、プロテインAまたはその前記機能的誘導体による抗体の結合は、抗体の結合の際に誘導されたコンフォメーション変化のため、プロテアーゼ作用に対する感受性に影響するまたはそれを促進することもある。
【0094】
クロマトグラフィー樹脂への分子の「結合」は、分子がリガンド−タンパク質相互作用によってクロマトグラフィー樹脂中または上に可逆的に固定されるような好適な条件下(pH/伝導率)でクロマトグラフィー樹脂に分子を曝露することを意味する。非限定例としては、分子と、荷電した基またはイオン交換材料の荷電した基とのイオン相互作用およびプロテインAと免疫グロブリンとの二特異的相互作用が挙げられる。
【0095】
用語「洗浄バッファー」または「平衡化バッファー」は本明細書では互換的に用いられ、目的のポリペプチド分子を溶出させる前にクロマログラフィー樹脂を洗浄するまたは再平衡化させるのに用いられるバッファーを指す。いくつかの場合、洗浄バッファーおよび負荷バッファーは同じであってもよい。クロマトグラフィー媒体の「洗浄」は、好適なバッファーを媒体中に通過させるまたは媒体上を通過させることを包含することを意味する。
【0096】
「溶出バッファー」は、固相から標的タンパク質を溶出させるために用いられる。溶出バッファーの伝導率および/またはpHは通常、標的タンパク質がクロマトグラフィー樹脂から溶出されるようなものである。
【0097】
クロマトグラフィー樹脂から分子(例えば、目的のポリペプチドまたは不純物)を「溶出させる」こととは、バッファーがクロマトグラフィー樹脂への結合について目的の分子と競合するように溶液条件を変更することにより、そこから分子を除去することを意味する。非限定例は、イオン交換材料の周囲のバッファーのイオン強度を、該バッファーがイオン交換材料上の荷電部位について分子と競合するように変更することにより、イオン交換樹脂から分子を溶出させることである。
【0098】
本明細書で用いられる用語「溶出液」とは、溶出により得られた目的の分子を含有する溶液ならびにフロースルー精製の結果として得られた目的の標的タンパク質を含有するフロースルー画分を指す。いくつかの実施形態において、用語「溶出液」とは、結合および溶出クロマトグラフィーステップ(例えば、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーステップ)からの溶出プールを指す。いくつかの実施形態において、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーステップからの溶出液は、ウイルス不活化ステップを介入させてまたは介入させずに活性化炭素を用いるフロースルー精製プロセス中に流入する。
【0099】
用語「固相」または「多孔性基質」または「ベースマトリックス」とは、1または複数の荷電リガンドが付着することができる非水性材料を指す。固相は、精製カラム、多孔性もしくは非多孔性である個別の粒子の不連続相、膜、織ったもしくは織られていない繊維、モノリスまたはフィルターなどであってよい。固相を形成させるための材料の例としては、多糖類(アガロースおよびセルロースなど);ならびにシリカ(例えば、制御された孔のガラス)、ポリ(スチレンジビニル)ベンゼン、ポリアクリルアミド、ポリビニルエーテル、ナイロン、高分子量ポリエチレン(HDPE)、ポリエーテルスルホン、セラミック、および上記のいずれかの誘導体などの他の機械的に安定なマトリックスが挙げられる。
【0100】
「バッファー」は、その酸−塩基コンジュゲート成分の作用によりpHの変化に抵抗する溶液である。例えば、バッファーの望ましいpHに応じて用いることができる様々なバッファーが、Buffers.A Guide for the Preparation and Use of Buffers in Biological Systems,Gueffroy,D.(編)、Calbiochem Corporation(1975)に記載されている。特許請求される本発明の方法のいくつかのステップにおいて、バッファーは2.0から4.0または2.8から3.8の範囲のpHを有する。特許請求される本発明の他のステップにおいて、バッファーは5.0から9.0の範囲のpHを有する。特許請求される本発明の他のステップにおいて、バッファーは4.0から6.5の範囲のpHを有する。特許請求される本発明のさらに他のステップにおいて、バッファーは4.0より低いpHを有する。この範囲でpHを制御するバッファーの非限定例としては、MES、MOPS、MOPSO、Tris、HEPES、リン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸およびアンモニウムバッファーならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0101】
用語「伝導率」とは、2つの電極間に電流を伝導する水性溶液の能力を指す。溶液中で、電流はイオン輸送により流れる。従って、水性溶液中に存在するイオンの量が増加するにつれて、溶液はより高い伝導率を有する。伝導率の測定単位は、ミリシーメンス/センチメートル(mS/cmまたはmS)であり、市販の伝導率計(例えば、Orionにより販売されている)を用いて測定することができる。溶液の伝導率は、その中のイオンの濃度を変化させることにより変更することができる。例えば、溶液中の緩衝剤の濃度および/または塩(例えば、NaClもしくはKCl)の濃度を変更して、所望の伝導率を達成することができる。好ましくは、様々なバッファーの塩濃度を改変して、以下に記載の実施例のように所望の伝導率を達成する。
【0102】
ポリペプチドの「pI」または「等電点」とは、ポリペプチドの正電荷がその負電荷と釣り合うpHを指す。pIは、ポリペプチドの付着した炭水化物のアミノ酸残基もしくはシアル酸残基の正味の電荷から算出するまたは等電点電気泳動法により決定することができる。
【0103】
本明細書で用いられる「濾液」とは、媒体を通過する試料の一部を指す。
【0104】
本明細書で用いられる「保持物」とは、媒体により実質的に保持される試料の一部を指す。
【0105】
本明細書で用いられる用語「清澄化」とは、懸濁した粒子を除去することにより、タンパク質含有溶液の濁度(NTUで測定される)を低下させるためのプロセスを指す。清澄化は、バッチ式および連続的遠心分離、深層濾過、通常の濾過および接線流濾過ならびに小分子およびポリマー種との軟凝集などの沈降またはそれらの方法の任意の組合せなどの様々な手段により達成することができる。
【0106】
語句「クロマトグラフィーカラムの負担を減少させること」とは、タンパク質試料が後にロードされるクロマトグラフィーカラムの汚損の減少をもたらす、タンパク質含有試料の処理またはプロセッシングを指す。典型的なクロマトグラフィー実験において、固定相上に残された非溶出物質または不純物が存在し、それによってクロマトグラフィーカラムの汚損がもたらされ得る。この問題は、存在する不純物のレベルがより高いことに起因して、カラムの汚損の程度がより高くなる規模拡大の間にさらに大きくなる。カラムの汚損はまた、通常は非常に高価であるカラムの寿命の有意な減少をもたらす。本発明による方法は、クロマトグラフィーカラムの負担を有意に減少させる改良された方法を提供し、それによって、カラムの寿命を増加させならびにより高いタンパク質収率をもたらす。本発明による方法は、試料をクロマトグラフィーカラム上にロードする前に有意な量の不純物の除去をもたらし、それによって、カラムの負担を減少させる。典型的な不純物としては、宿主細胞タンパク質、DNA、脂肪酸(細胞デブリ由来)、染料分子、消泡剤などが挙げられる。
【0107】
本明細書で互換的に用いられる用語「プロセスステップ」または「単位操作」とは、精製プロセスにおいて特定の結果を達成するための1もしくは複数の方法またはデバイスの使用を指す。本明細書に記載のプロセスおよび系において用いることができるプロセスステップまたは単位操作の例としては、限定されるものではないが、清澄化、結合および溶出クロマトグラフィー捕捉、ウイルス不活化、フロースルー精製および製剤化が挙げられる。プロセスステップまたは単位操作のそれぞれはそのプロセスステップまたは単位操作の意図される結果を達成するために1より多いステップまたは方法またはデバイスを用いてもよいことが理解される。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のフロースルー精製ステップは、そのプロセスステップまたは単位操作を達成するために、少なくとも1のそのようなステップが活性化炭素を含む、1より多いステップまたは方法またはデバイスを用いてもよい。いくつかの実施形態において、プロセスステップまたは単位操作を実施するのに用いられる1または複数のデバイスは、単回使用または使い捨てであり、プロセス中に任意の他のデバイスを置換する必要なくまたはさらにはプロセスの実行を停止させる必要なく、除去および/または置換することができる。
【0108】
本明細書で用いられる用語「プールタンク」とは、プロセスステップ間で一般的に用いられ、プロセスステップからの出力の全容量の収集を可能にするサイズ/容量を有する任意のコンテナ、ベッセル、リザーバー、タンクまたはバッグを指す。プールタンクは、プロセスステップからの出力の全容量の溶液条件を保持または保存または操作するために用いることができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のプロセスは1または複数のプールタンクを使用する必要がない。
【0109】
本明細書で用いられる用語「サージタンク」とは、プロセスステップ間またはプロセスステップ内(例えば、単一のプロセスステップが1より多いステップを含む場合)で用いられる任意のコンテナまたはベッセルまたはバッグを指す;そこで、あるステップからの出力がサージタンクを通って次のステップに流動する。従って、サージタンクは、それがステップからの出力の全容量を保持または収集することを意図されないが、その代わりにあるステップからの出力の次のステップへの連続流動を可能にするという点で、プールタンクとは異なる。いくつかの実施形態において、2つのプロセスステップ間または本明細書に記載のプロセスもしくは系におけるプロセスステップ内で用いられるサージタンクの容量は、プロセスステップからの出力の全容量の25%以下である。別の実施形態において、サージタンクの容量は、プロセスステップからの出力の全容量の10%以下である。いくつかの他の実施形態において、サージタンクの容量は、精製しようとする標的分子に由来する出発物質を構成する、バイオリアクター中の細胞培養液の全容量の35%未満または30%未満または25%未満または20%未満または15%未満または10%未満である。いくつかの実施形態において、サージタンクは、活性化炭素、次いで、AEXクロマトグラフィー、次いで、CEXクロマトグラフィー、次いで、ウイルス濾過を用いるフロースルー精製プロセスの間に用いられ、そこでサージタンクはAEXクロマトグラフィーステップの後に溶液交換を実施するために用いられる。
【0110】
本明細書で用いられる用語「連続プロセス」とは、1つのプロセスステップからの出力が、介入なくプロセス中の次のプロセスステップに直接流動するような2つ以上のプロセスステップ(または単位操作)を含み、2つ以上のプロセスステップをその期間の少なくとも一部について同時に実施することができる、標的分子を精製するためのプロセスを指す。換言すれば、連続プロセスは、精製プロセスにおける次のプロセスステップを実施する前にプロセスステップを完了させる必要がない。用語「連続プロセス」はまた、プロセスステップ内の複数のステップにも適用され、その場合、複数のステップを含むプロセスステップの実施中に、試料がプロセスステップを実施するのに必要である様々なステップを連続的に流動する。従って、いくつかの実施形態において、活性化炭素を用いるフロースルー精製ステップは、フロースルー精製ステップの前の結合および溶出クロマトグラフィーステップ(例えば、プロテインAクロマトグラフィー捕捉ステップ)からの溶出液が、活性化炭素(セルロース媒体中に充填される)ステップ、次いで、AEXクロマトグラフィーステップ、次いで、CEXクロマトグラフィーステップ、次いで、ウイルス濾過ステップに流動する、連続様式で実施される。
【0111】
用語「スタティックミキサー」とは、2つの流体材料、典型的には、液体を混合するためのデバイスを指す。このデバイスは、一般的には、円筒状(管状)の筺体中に含まれるミキサーエレメント(非移動性エレメントとも呼ばれる)からなる。流れがスタティックミキサーを移動する時に、非移動性エレメントが材料を連続的に混合する。完全な混合は、流体の特性、管の内径、ミキサーエレメントの数およびそれらの設計などの多くの変数に依存する。本明細書に記載のいくつかの実施形態において、1または複数のスタティックミキサーが、例えば、AEXクロマトグラフィーステップとCEXクロマトグラフィーステップとの間に、本明細書に記載のプロセスにおいて用いられる。
【0112】
本発明を、限定と解釈されるべきではない以下の実施例によりさらに例示する。本出願を通して引用された全ての参考文献、特許および公開特許出願の内容ならびに図面は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
II.特許請求される方法における使用のための炭素質材料の例
本発明による方法において、活性化炭素などの特定の炭素質材料が、タンパク質の精製において用いられる。活性化炭素は、非常に高い表面積を有する多孔性固体と説明することができる。いくつかの実施形態において、活性化炭素は、活性炭を含む。活性化炭素は、限定されるものではないが、石炭、木材、堅果殻および泥炭などの様々な起源から誘導することができる。活性化炭素を、制御された雰囲気下での加熱を含む物理的活性化または強酸、塩基もしくは酸化剤を用いる化学的活性化によりこれらの材料から製造することができる。活性化プロセスは、不純物除去のための高い能力を活性化炭素に与える高い表面積を有する多孔性構造をもたらす。活性化プロセスを改変して、表面の酸度を制御することができる。
【0114】
活性化炭素は、様々な商業的起源から入手可能であり、いくつかの等級および形式で販売されている。活性化炭素のいくつかの商業的供給者としては、MeadWestVaco Corp.,Richmond,VA,USA;Norit Americas Inc.,Marshall,TX,USA;Calgon Carbon Corp.,Pittsburgh,PA,USAなどの会社が挙げられる。
【0115】
活性化炭素の2つの主な形式は、粉末状および顆粒状である。粉末状活性化炭素は小さく、通常は直径1mm未満の粒子を含み、最も一般的には液体の精製に用いられる。顆粒状活性化炭素は、より大きい粒径、その結果としてより小さい表面積を有し、従って拡散速度がより速い気体精製における使用が好ましい。
【0116】
消費者用途(水、食品、飲料および医薬精製など)における活性化炭素の使用に伴う安全性に関する重要な考慮は、抽出可能な化合物の減少および制御である。飲料水および食品接触適用を意図される活性化炭素は通常、水に対する全ての間接的な添加物を包含する安全基準ANSI/NSF Standard 61に従って作製される。また、ASTM標準試験法D6385は、灰化による活性化炭素中の酸により抽出可能な内容物の決定を記載し、これを用いて活性化炭素からの抽出可能物質のレベルを研究および最小化することができる。
【0117】
様々な活性化炭素型が様々な用途のために利用可能である。例えば、MeadWestVaco Corp.は、その許容量、表面酸度、標的分子への孔接近性および意図される用途が異なる少なくとも12の型の粉末状活性化炭素を供給する。一般的には、不純物除去のための活性化炭素の許容量を最大化することが望ましい。
【0118】
本明細書に記載のいくつかの実施形態において、活性化炭素はセルロース媒体中に組み込まれる。
【0119】
III.従来のフロースルー精製プロセス
多くの従来のフロースルー精製プロセスが、目的の標的タンパク質と除去しようとする不純物との異なる表面相互作用に明確に依存する。例えば、モノクローナル抗体の従来のAEXフロースルー精製は、多くの抗体の等電点が他のタンパク質および核酸よりも高く、通常は7より上であるという事実に依存する。かくして、AEXフロースルー精製プロセスは、固定相および抗体が同じ電荷を有し、かくして、抗体が表面に有意に結合することなく媒体を通過して流動することを確実にするために、精製される抗体のpIよりも低いpHで実行される。他方、多くのタンパク質性不純物、核酸および内毒素は抗体よりも低いpIを有し、通常は7より下であり、従って、それらはAEX媒体の表面に結合する。
【0120】
多くのイオン交換クロマトグラフィープロセスと同様、AEXフロースルー精製は、一般的には、溶液の伝導率に対して感受性であり、一般的には、より高い塩濃度ではあまり有効ではない。モノクローナル抗体の典型的な精製プロセスにおいて、「仕上げステップ」とも呼ばれることがあるAEXフロースルー精製は、1または複数の結合および溶出クロマトグラフィーステップに続く。
【0121】
2つの最も一般的に用いられる定型プロセスは、以下に示される:
1)プロテインA捕捉→CEX結合および溶出精製および濃縮→希釈→AEXフロースルー
2)プロテインA捕捉→AEXフロースルー→CEX結合および溶出精製および濃縮。
【0122】
これらの一般的に用いられる定型プロセスに加えて、CEX捕捉ならびに混合様式および無機結合および溶出樹脂(セラミックヒドロキシアパタイト、CHTなど)の使用を含む他の精製スキームが用いられることもある。一般的には、フロースルー精製の目標は、微量レベルの不純物を除去することであるが、精製の大部分は結合および溶出ステップを用いて行われる。しかしながら、最初の結合および溶出ステップの使用からフロースルー精製プロセスへのシフトは、時間、試薬ならびに運転費用を節約する非常に費用効果的な解決法であり得る。従って、本明細書に記載のプロセスは、それらがより費用効果的であり、全体の製造費用および運転費用を減少させるという点で従来のプロセスに対する実行可能な解決法を提供する。
【0123】
本明細書に記載のいくつかの実施形態において、フロースルー精製を連続様式で実施することができる改良されたフロースルー精製プロセスが提供される。
【0124】
IV.精製プロセスにおける炭素質材料の使用
上記で考察されたように、本発明は、活性化炭素を用いる新規で改良された精製プロセスを提供する。活性化炭素は、精製ステップに直接添加してもよく、その後、沈殿化もしくは濾過によりまたは活性化炭素を含有するデバイスに溶液もしくは気体を通過させることにより除去することができる。活性化炭素は好適なデバイス中に独立に充填されてもよくまたはその機械的特性、流動特性もしくは分離特性を増強する他の材料と混合されてもよい。例えば、活性化炭素は、セルロースを含有する湿式繊維媒体中に組み込まれた後、Millipore Corporationから入手可能なMillistak+(登録商標)Pod CRまたはPall Corporation,Port Washington,NY,USAから入手可能なSeitz(登録商標)AKS Filter Mediaなどの使い捨てデバイスの内部に密閉され得る。別の形式の活性化炭素は、熱可塑性粉末と一緒に圧縮することにより活性化炭素が多孔性モノリス中に組み込まれた活性化炭素ブロックである。また、顆粒状形態の活性化炭素は、クロマトグラフィー媒体と同様にカラム中に充填され得るまたは好適なデバイス中に充填され得る。活性化炭素媒体が脱色、小分子不純物の除去などのために用いられることが一般的に許容される。例えば、標的化された不純物の分子量に基づいて選択することができる、Pall Corporationから入手可能ないくつかの等級の活性化炭素媒体が存在する。3つの分子量範囲:200−400、400−1,000および400−1,500Daが利用可能であり、後者が最も大きい。しかしながら、市販の活性化炭素媒体はいずれも、分子量が2000から200,000Daの範囲の生体試料からの非常により大きい不純物の選択的除去については記載されていない。
【0125】
本発明は、少なくとも部分的には、活性化炭素が、同時に標的タンパク質へのごくわずかな結合を示しながら、望ましくない不純物(例えば、HCPおよびDNA)に選択的に結合することができるという驚くべき発見に基づくものである。
【0126】
本発明はまた、あらゆる吸着材料と同様、活性化炭素の吸着能力が無制限であるという事実も認識する。例えば、CHO−S供給液の場合、活性化炭素は、HCPとDNAの両方の種が実施例1に示される代表的な供給液中で観察される濃度で存在する場合、それらを効率的に除去することを示した。しかしながら、異常に高レベルでのDNAの添加は、実施例2に示されるように活性化炭素のHCP除去効率を抑制することがわかった。
【0127】
活性化炭素はまた、標的タンパク質捕捉ステップの前および後の両方に、標的タンパク質の溶液中に存在し得る細胞培養培地の潜在的な成分を除去するのに高度に有益であり得る。細胞培養培地の典型的な成分としては、界面活性剤(たとえば、Pluronic(登録商標)F68)、インスリン、抗生物質、メトトレキサートおよび消泡剤が挙げられる。これらの成分のいくつかが精製された標的タンパク質中に持ち越される危険のため、これらの成分を除去することができるステップをタンパク質精製トレイン中に組み込むのが有利である。本明細書の実施例によりさらに証明されるように、活性化炭素を精製プロセスにおいて用いて、そのような成分を除去することができる。
【0128】
以下は、下記の表Iにおいて下線により示される、1または複数の中間ステップとして活性化炭素を組み込むタンパク質精製プロセスの例である。これらのプロセスの多くの変形を用いることができることが理解される。
【0129】
【表1】

【0130】
一般的に、上記の表において、アフィニティ媒体を用いる結合および溶出ならびに/またはCEX媒体を用いる結合および溶出のステップは、3つの様式のいずれかで運転され得る:(1)媒体を標的タンパク質と共にロードし、ロードを停止し、媒体を洗浄し溶出させ、プールを収集するバッチ様式;(2)負荷を連続的に実施するが、溶出は間欠的である半連続様式(例えば、連続多カラムクロマトグラフィーの場合);および(3)負荷と溶出の両方を連続的に実施する完全連続様式。
【0131】
いくつかの実施形態において、上記の表に記載の1または複数のプロセス、ウイルス不活化ステップを、本明細書に記載のように、結合および溶出ステップの後および溶出液をフロースルー精製ステップにかける前に実施することができる。
【0132】
本明細書および上記の表に記載のプロセスは、追加のステップならびに溶液条件をインラインでまたはサージタンクにより変化させるステップをさらに用いてもよいことが理解される。本明細書に記載のいくつかの実施形態において、プロセスは以下のステップを含む:清澄化;プロテインAアフィニティ媒体を用いる結合および溶出;インラインのウイルス不活化;以下のようなフロースルー精製:活性化炭素、次いで、フロースルーAEX媒体、次いで、インラインスタティックミキサーおよび/またはサージタンクを用いる溶液交換、次いで、フロースルーCEX媒体、次いで、ウイルス濾過;ならびに製剤化。
【0133】
V.1または複数の不純物のレベルを低下させるためのアッセイ
本発明は、目的のタンパク質を含有する試料中に存在する1または複数の不純物のレベルを低下させるプロセスを提供する。生物学的起源から誘導されるタンパク質試料中に含まれる典型的な不純物としては、宿主細胞タンパク質(HCP)および核酸(DNA)が挙げられる。宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である場合、HCPはCHO HCPまたはCHOPと一般的に呼ばれる。ウェスタンブロットおよびELISAなどのHCPに対する抗体を用いる免疫学的方法が、そのような不純物の検出に従来用いられている。マイクロタイタープレート酵素免疫アッセイ(ELISA)も、高感度の分析を提供するために日常的に用いられる。そのようなアッセイは使用が簡単であり、客観的であり、精製プロセス中に1または複数の不純物のレベルを測定するための強力な道具である。
【0134】
HCPを測定するためのいくつかのELISAキットが、例えば、Cygnus Technologies、Southport,NC,USAなどの業者から市販されている。そのようなキットのいくつかは、それらが、用いられた精製プロセスとは無関係に生成物を汚染し得る本質的に全てのHCPと反応することを意図されるという意味で「包括的」である。いくつかの実施形態において、市販のキットを、試料中の1または複数の不純物のレベルを検出するのに用いることができる。
【0135】
本発明を、限定と解釈されるべきではない以下の実施例によりさらに例示する。本出願を通して引用された全ての参考文献、特許および公開特許出願の内容ならびに図面は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0136】
[実施例1]
フロースルー様式における不純物除去のための様々な材料の評価
本実験において、清澄化されたCHO供給液から不純物を除去する能力について、異なる材料が評価された。表IIに示される材料が、フロースルー様式における不純物除去のために試験された。リン酸緩衝生理食塩水(PBS、10mMリン酸、pH7.4)が平衡化バッファーおよび洗浄バッファーとして用いられた。
【0137】
【表2】

【0138】
重力フロースルー(FT)試験法を用いて、樹脂不純物除去を試験した。表IIに列挙されたそれぞれの材料の1mlをとり、5mlの使い捨てクロマトグラフィーカラム(Evergreen Scientific,LA,CA)中に充填した。カラムを5カラム容量(CV)の平衡化バッファー(PBS)で平衡化させ、20CVの供給液をロードし、5CVの洗浄バッファー(PBS)で再度洗浄した。フロースルー溶出液画分を収集した。ポリクローナルIgG(約2.6mg/ml、SeraCare)を添加した未処理の清澄化されたヌルCHO−S供給液を用いた。
【0139】
フロースルー溶出液および対応する供給液を、IgG収率、UV活性種(280nm)除去、HCP除去およびDNA除去について試験した。IgG収率を、業者の説明書に従ってPoros Protein A 2.1mm X 30mm分析カラム(LIFE TECHNOLOGIES,Palo Alto,CA)を用いて、Waters Alliance HPLC(Milford,MA)上で定量した。280nmでのUV活性種を、プロテインAクロマトグラム上のフロースルーピークとして示された非保持種のピーク面積を用いて定量した。宿主細胞タンパク質を、CHO−CM HCP ELISAキット(CYGNUS TECHNOLOGIES,Southport,NC)を用いて検出した。DNAを、Quant−iT(商標)PicoGreen(登録商標)dsDNA Reagent(LIFE TECHNOLOGIES,Foster City,CA)を用いて検出した。全てのアッセイを、製造業者のプロトコールに従って行った。その結果を図1−4に示す。
【0140】
図1に示されるように、約5%のIgG収率損失を示すHIC樹脂以外のスクリーニングした全ての他の媒体、すなわち、活性化炭素、SPFF、ProRes(商標)−SおよびQFFは、検出可能な収率損失を示さなかった。
【0141】
さらに、図2、3および4に示されるように、活性化炭素は280nmでのUV活性種のレベルの有意な低下をもたらした。これは、pH指示剤、HCPのいくらかの集団、DNAおよびいくらかの残留細胞培養成分を含む。ポリクローナルIgGを用いた場合、この画分は、プロテインAが結合しないIgG 3の集団も含む。活性化炭素などの、全ての材料はある程度までHCPを除去するようであったが、陽イオン交換官能基を有する2つの材料、Sepharose FastFlowおよびProRes(商標)−SはほとんどのHCPを除去した。DNA除去に関してと同様、陰イオン交換樹脂、Q FastFlowによる有意なDNA除去がわかったことは驚くべきことではなかったが、活性化炭素が同様の能力でDNAを除去することがわかったことは予想外であった。他の全ての材料はDNAをより少ない程度で除去した。
【0142】
本実施例から得られたデータは、活性化炭素、ならびに陽イオン交換、陰イオン交換および疎水性相互作用官能基を有する材料が、CHO供給液からのフロースルー様式における収率を有意に損失することなく様々な程度で不純物(HCP、DNAおよびUV活性種)を除去することができることを示している。
【0143】
[実施例2]
フロースルー不純物除去能力
代表的な実験において、単位容量あたりの異なる材料により除去される不純物の量を評価した。DNAとHCPとの吸着競合の効果を理解するために、CHO−S供給液中のDNAのレベルを、市販のニシン精子DNAの添加により増加させた。不純物除去のために評価された材料を、以下の表IIIに列挙する。
【0144】
【表3】

【0145】
表IIIに列挙された材料の各々(1ml)を、Omnifitカラム(内径0.66cm)に充填した。カラムを5CVのPBSを用いて平衡化させ、ポリクローナルIgGおよびニシン精子DNAを添加した100CVのヌル未処理清澄化CHO−S供給液をロードし、BioCad(APPLIED BIOSYSTEMS,Palo Alto,CA)上、20カラム容量のPBSで洗浄した。負荷ステップ中のフロースルー溶出液画分を、10カラム容量毎に収集した。フロースルー溶出液画分および対応する供給液を、実施例1に記載のものと同じ方法を用いて、IgG収率、UV活性種、HCPおよびDNA除去についてアッセイした。
【0146】
図5に示されるように、スクリーニングした全ての材料は、供給液の100カラム容量の負荷にわたってIgG収率の有意な損失を示さなかった。図6に示されるように、活性化炭素は、100CVを通じて多くのUV活性種を除去した。陰イオン交換材料も、100CVを通じてある程度までUV活性種を除去した。さらに、図7に示されるように、陰イオン交換樹脂、Q FastFlowによるHCP除去能力は、それが初期画分から漏出するため、限られていた。しかしながら、陽イオン交換材料、Q FastFlowおよびProRes(商標)−Sは、100カラム容量を通じて有意な量のHCPを除去した。この特定の実験において高いDNA濃度(すなわち、さらなる195μg/mL)を用いた場合、活性化炭素はDNAを添加していない供給液と比較して少ないHCPを除去した。例えば、DNAを添加していない元のヌルCHO−S供給液を用いる同様の実験において、活性化炭素は、100CVを通じて20%に近いHCPを除去した(データは示さない)。これは、活性化炭素への吸着に関するDNAとHCPとのある程度の競合を示していた。さらに、図8に示されるように、全ての材料はある程度までDNAを除去した。
【0147】
本実施例から得られたデータは、活性化炭素ならびに陽イオン交換、陰イオン交換および疎水性相互作用官能基を有する材料が、CHO細胞供給液からのフロースルー様式における収率を有意に損失させることなく、100カラム容量にわたって様々な程度で不純物(HCP、DNAおよびUV活性種)を除去することができることを示している。
【0148】
[実施例3]
不純物除去に対する様々な材料の組合せの効果
別の実験において、図9に記載のワークフローに示される材料の様々な組合せが、不純物除去について評価された。材料(1ml)を安定化させ、5mlの使い捨てクロマトグラフィーカラム中に充填した。カラムを5CVのPBSで平衡化させ、20CVの供給液をロードし、5CVのPBSで洗浄した。
【0149】
フロースルー溶出液画分を、選択された媒体の次の使い捨てカラム上にさらにロードした(図9の左側に記載の2つのワークフローに示されている)。ワークフロー中の最後のフロースルー溶出液を分析した。供給液が媒体の混合物を通過した右側に記載のワークフローの場合、溶出液を直接分析した。供給液は、SeraCareから入手したポリクローナルIgG(約2.5mg/ml)を添加した非発現CHO−S供給液を用いて調製された。フロースルー溶出液画分および対応する供給液を、実施例1に上記されたのと同じ方法を用いて、IgG収率、UV活性種、HCPおよびDNA除去についてアッセイした。結果を図10−12に示す。
【0150】
図10に示されるように、活性化炭素および活性化炭素を含有する混合物は、UV活性種のレベルを有意に低下させた。さらに、全ての材料がある程度までHCP除去を示したが、陽イオン樹脂と組合せた活性化炭素混合物が図11に示されるようにHCPの最も効果的な除去を示した。また、図12に示されるように、全ての材料がある程度までDNAを除去したが、活性化炭素と陰イオン交換樹脂との組合せがDNAの最も効率的な除去を示した。
【0151】
本実施例から得られたデータは、活性化炭素と、陽イオン交換、陰イオン交換および疎水性相互作用官能基を有する材料との組合せが、CHO供給液からフロースルー様式において任意の単一成分よりも効率的に不純物(HCP、DNAおよびUV活性種)を除去することができることを示している。
【0152】
[実施例4]
プロテインA溶出プールの不純物除去
別の実験において、標準的な重力フロースルー試験法を用いて、プロテインAプール後の不純物除去を調査した。実施例1においてスクリーニングされた材料、すなわち、活性化炭素、陽イオン交換樹脂(SP FFおよびProRes(商標)−S)、陰イオン交換樹脂、Q FFおよびHIC樹脂、Phenyl FastFlowならびにこれらの材料の様々な組合せを評価した。活性化炭素または樹脂材料(1ml)を安定化させ、Evergreenから入手した使い捨てクロマトグラフィーカラム中に充填した。それぞれのカラムを5CVのPBSで平衡化させ、20CVの供給液をロードし、5CVのPBSで洗浄した。負荷ステップ中のフロースルー溶出液画分を収集した。用いた供給液は、pHを7.0に調整した後のプロテインA(ProSep Ultra Plus)溶出プール(約3.2mg/mlのIgG)であった。プロテインAカラムのための供給液は、ポリクローナルIgGと混合した非発現CHO−Sであった。
【0153】
フロースルー溶出液画分およびプロテインA溶出プールを、IgG収率、UV活性種除去、HCP除去およびDNA除去について評価した。全てのアッセイは、HCPの場合にCHO−3G HCP ELISAキット(CYGNUS TECHNOLOGIES,Southport,NC)を用いた点以外は、実施例1に記載のように実施された。
【0154】
図13に示されるように、スクリーニングした全ての材料は、約85%以上の収率を生成した。活性化炭素、陽イオン交換樹脂、SP FastFlowが、単一の材料としてほとんどのHCPを除去した。様々な材料の混合物が、図14に示されるように、最も高いHCP除去を提供した。図15は、全ての材料が、部分的に供給液中の低いレベルのため、有意な量のDNAを除去するという事実を示す。全体として、材料の混合物は、一般的に、単一の材料と比較して不純物除去においてより効果的であった。
【0155】
本実施例から得られたデータは、活性化炭素ならびに陽イオン交換、陰イオン交換および疎水性相互作用官能基を有する材料、ならびにこれらの材料の混合物が、CHO供給液から生成されたプロテインA溶出プールからフロースルー様式において様々な程度で不純物(HCP、DNAおよびUV活性種)を除去することができることを示している。
【0156】
[実施例5]
MAbの精製に関する活性化炭素の性能を評価するための代表的なアフィニティに基づく(プロテインA)捕捉されたMAb供給液の調製
MAbIと呼ばれる部分精製されたモノクローナル抗体を、タンパク質を精製するための活性化炭素の性能を評価するための代表的なアフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体供給液として使用するためにCHO細胞系培養液を用いて産生させた。まず、細胞培養液を、Millistak(登録商標)PODフィルター(MILLIPORE CORPORATION,Billerica,MA,USA)として入手可能な、深層濾過媒体を用いてバイオリアクターから直接清澄化した。細胞培養液を、一連の2つのフィルター、D0HCおよびX0HCを通して10 NTU未満の最終濁度まで濾過した後、Millipore Express(登録商標)SHCカプセルフィルターを用いて滅菌濾過した。
【0157】
Millipore Corporation,Billerica,MA,USAから入手したアクリル系のQuick−Scale(登録商標)内径14cmのカラムに、約3.2Lのベッド容量までMillipore ProSep−vA High Capacity Protein A媒体を充填した。PBSを用いる流動充填と、振動との組合せを用いて、カラムを充填した。全てのクロマログラフィーステップは、Millipore K−Prime 40−Iシステム上で実施され、検出は280nmの波長でのUV吸収を用いて実施された。カラムをMAb I精製のために少なくとも5サイクルにわたって使用し、4℃でPBS中で保存した。カラムを使用する前に、カラムを、少なくとも2カラム容量(CV)の0.15Mリン酸pH 1.5−1.7を用いてフラッシュした後、pHが安定化されるまでPBSを用いて平衡化させた(少なくとも3CV)。典型的には、清澄化させた次の日、滅菌濾過された清澄化された細胞培養液を、少なくとも5分の滞留時間で(すなわち、500−600mL/minの流速で)プロテインAカラム上にロードした。1リットルの媒体あたり30gのMAb Iと定義されたカラムの最大許容量を超えないことを確保するようにカラムにロードした。
【0158】
カラムの負荷の後、カラムを、微量のUVが基線に到達するまで、典型的には、3CV以内で、同じ滞留時間でPBSを用いてフラッシュした。次いで、カラムを、pH 6の0.5M NaClを含む20mM酢酸ナトリウムを用いて、少なくとも3CVだが5CVを超えない量で洗浄した。次いで、生成物を20mMの酢酸pH 3.0への段階的変化を用いて溶出させ、溶出ピークの捕捉を手動で実施して、溶出ピークの希釈率を減少させた。溶出液を静置して室温(20−25℃)で少なくとも30分間から最大で1.5時間インキュベートした。インキュベーション後、溶出プールのpHを、pH 10以上の2M Tris塩基を用いてpH 5±0.2に滴定した。溶出プールの出発pHは、典型的には、pH 4.0近辺であり、Tris塩基溶液の5%容量未満の添加が必要であった。溶出プールの滴定の間、可視的沈殿物が観察された。沈殿物の除去を、溶出プールの滅菌濾過の前にMillipore Millistak(登録商標)X0HC lab scale PODを用いて沈殿物の除去を行ったが、溶出プール全体の沈殿物を清澄化するには少なくとも2個の0.027mのPODが必要であった。深層濾過の後、溶出液をMillipore Express Plus Stericupフィルターユニットを用いて滅菌濾過し、用いるまで4℃で保存した。
【0159】
[実施例6]
MAbの精製に関する活性化炭素の性能を評価するための代表的な非アフィニティに基づく(陽イオン交換)捕捉されたMAb供給液の調製
MAb Iと呼ばれる、部分精製されたモノクローナル抗体を、タンパク質を精製するための活性化炭素の性能を評価するための代表的な非アフィニティ(陽イオン交換)捕捉モノクローナル抗体供給液として使用するためにCHO細胞系培養液を用いて産生させた。MAb I清澄化された細胞培養液を、実施例5で考察されたように作製した。細胞培養液を一連の2つのフィルター、D0HCおよびX0HCを通して10 NTU未満の最終濁度まで濾過した後、Millipore Express(登録商標)SHCカプセルフィルターを用いて滅菌濾過した。
【0160】
Millipore Corporation,Billerica,MA,USAから入手した内径22cmのガラス製Vantage(登録商標)実験室カラムに、陽イオン交換(CEX)媒体Fractogel(登録商標)SO(M)を充填した。カラムを、PBSを用いて、約1000cm/hの空塔速度でAkta(登録商標)Explorer 100(GE HEALTHCARE,Uppsala,Sweden)上で充填した。充填およびその後の全てのカラム泳動中に、カラムにわたる圧力低下を3barより下に維持した。カラムのベッド圧縮率は約15%であり、充填されたベッド容量は75mLであった。カラムの充填効率を、泳動バッファーとしてPBSを用いて、100cm/hの空塔速度で、25mM Tris、1M NaCl、3%(v/v)アセトンpH6.9の500μLのパルス注入を用いて測定した。システムの死容積を計上した後標準的な方法を用いるアセトンピークを用いて理論段相当高さ(HETP)を算出し、1.3のピーク非対称を有する0.053cmと算出され、これはカラムが十分に充填されたことを示唆している。NaClのピークは、より大きいレベルのピークテイリングを示したが、これは塩イオンと媒体との相互作用と関連する可能性があり、カラム効率の代表ではない。
【0161】
カラムの初回使用の前に、タンパク質ロードを用いずに完全なブランク泳動を実施して、ベース媒体との任意の溶液関連相互作用を減少させおよび/または排除した。負荷の前に、カラムを少なくとも5CVにわたって20mM酢酸ナトリウムpH 5を用いて平衡化させた。氷酢酸を用いてpH 5まで低下させたpHを有するMAb Iを含有する清澄化された細胞培養液をカラムにロードした。細胞培養液のpHを低下させた時、沈殿物がしばしば観察され、これを、遠心分離と、Millipore Millistak(登録商標)X0HC lab scale PODを用いる深層濾過との組合せを用いて除去した。
【0162】
Millipore Express Plus Stericupフィルターユニットを用いて、負荷の前に負荷溶液を滅菌濾過した。滅菌濾過されたロードを、カラムにわたる圧力低下を最小化しながら、カラム許容量(約45gのMAb I/L媒体)を最大化するために、10minの滞留時間を用いてカラム上にロードした。負荷の後、カラムを5CVにわたって平衡化バッファーを用いてフラッシュした。次いで、カラムを、5CVにわたって20mM酢酸ナトリウム、0.1M NaCl pH 5.0バッファーを用いて洗浄した。カラムからの溶出を、少なくとも5CVにわたって、20mM酢酸ナトリウム、0.25M NaCl pH 6.0への段階的変化を用いて実施した。溶出液を分画し、ピーク画分をプールし、さらなる使用のために4℃で保存した。次いで、カラムを20mM酢酸ナトリウム、1M NaCl pH 6.0を用いて洗浄して、強く結合したタンパク質を除去したが、これらの多くは宿主細胞タンパク質(HCP)であると決定された。次いで、カラムを、30分の滞留時間に相当するより遅い流速で5CVにわたって0.5N NaOHを用いて洗浄した。次いで、カラムを、5CVの平衡化バッファーで洗浄し、さらなる使用のために室温(20−25℃)で保存した。
【0163】
[実施例7]
アフィニティ捕捉されたMAb溶出液のフロースルー処理による様々な吸着剤の評価
活性化炭素がタンパク質溶液からの不純物の除去にとって、予想外に非常に効果的であることを証明するために、アフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体溶出液の精製のための陰イオン交換(ChromaSorb(商標))、陽イオン交換(HiTrap SP FF、HiTrap CM FF)および疎水性相互作用(HiTrap Phenyl FF、HiTrap Butyl FF)化合物などのタンパク質の精製に一般的に用いられているいくつかの異なる市販の吸着媒体と活性化炭素をフロースルー適用において比較した。
【0164】
部分精製されたMAb Iアフィニティ(プロテインA)捕捉溶出液を、実施例5に従って調製した。MAb Iの溶出液をTris塩基(2M)を用いて約pH 5からpH 7に調整し、0.22μmのMillipore Express Plus Stericupフィルターユニットを通して濾過した。この溶液は、本明細書ではMAb IプロテインA溶出液と呼ばれる。
【0165】
Nuchar HDおよびHD Nuchar活性化炭素は、本明細書で互換的に用いられ、MeadWestVaco Corporation,Richmond,VA,USAから得られた粉末状活性化炭素の等級を指す。Glass Omnifit Chromatography Column(直径10mm、長さ100mm)に、水中でスラリー化された250mgのHD Nuchar活性化炭素をロードして、1mLの充填カラム容量を得た。0.2mLのChromaSorb膜デバイスを、様々なサイズのデバイス中、Millipore Corporation,Billerica,MA,USAから入手可能な、ポリアリルアミンで改変された0.65μm定格ポリエチレン膜を用いて製造した。この膜を25mmのディスクに切断した;5枚のディスクを積み重ね、Millipore Corporationから市販されているOptiScale 25使い捨てカプセルフィルターデバイスと同じ型の外側被覆ポリプロピレンデバイス中に密封した。このデバイスは、気泡形成を防止するための換気口を含み、3.5cmの有効濾過面積および0.2mLの容量を有する。
【0166】
1mLの予め充填されたクロマログラフィーカラムHiTrap SP FF、HiTrap CM FF、HiTrap Phenyl FF(high sub)およびHiTrap Butyl FFを、GE Healthcare,Pittsburgh,PA,USAから購入し、使用前にバッファー溶液(Tris−HClバッファー、25mM、pH 7)を用いて平衡化させた。6つのフロースルー精製トレインを組立てた:a)活性化炭素、b)ChromaSorb、c)HiTrap SP FF、d)HiTrap CM FF、e)HiTrap Phenyl FFおよびf)HiTrap Butyl FF。続いて、96mLのMAb IプロテインA溶出液を、0.25mL/minの流速で各組立物に通過させた。精製トレインを通過させた後、溶液を宿主細胞タンパク質(HCP)、IgG濃度および残留プロテインAについて分析した。HCP分析を、Cygnus Technologies,Southport,NC,USAからの市販のELISAキット(カタログ番号F550)を、キットの製造業者のプロトコールに従って用いて実施した。IgG濃度を、Poros(登録商標)AプロテインA分析カラムを備えたAgilent HPLCシステムを用いて測定した。プロテインA分析を、Meridian Life Sciences,Saco,ME,USA、Kit C0Z51−188からの市販のELISAキットを用いて実施した。結果を表IVにまとめる。
【0167】
結果は、活性化炭素が、0.87の宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)で最も多い量の不純物を除去したことを示している。活性化炭素に関するHCP値のLRVは、0.19から0.35の範囲のHCPのLRVを有する試験した市販の媒体(陰イオン交換、陽イオン交換、疎水性相互作用)と比較して有意により高かった。アフィニティ捕捉ステップからの残留プロテインAも、活性化炭素により検出限界以下に効率的に除去された。有意な量の残留プロテインAを除去することが観察された唯一の市販の媒体は、陰イオン交換媒体(ChromaSorb(商標))であったが、これも残留プロテインAの濃度を検出限界以下に低下させた。活性化炭素により除去された不純物の量がより高いにも拘わらず、それは依然としてモノクローナル抗体生成物(MAb I)の優れた回収率(96%)を有し、これは試験した市販の媒体について観察された生成物回収率(82−100%)と類似していた。
【0168】
【表4】

【0169】
[実施例8]
活性化炭素および/または陰イオン交換媒体を用いるMABのアフィニティ捕捉溶出液の静的ソーク(static soak)処理
活性化炭素のみおよび陰イオン交換媒体と組合せた活性化炭素を、アフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体溶出液からの不純物の除去について試験して、不純物の除去のための予想外に非常に効果的な方法を証明した。
【0170】
部分精製されたMAb Iアフィニティ(プロテインA)捕捉溶出液を、実施例5に従って調製した。MAb Iの溶出液をTris塩基(2M)を用いて約pH 5からpH 7に調整し、0.22μmのMillipore Express Plus Stericupフィルターユニットを通して濾過した。この溶液は、本明細書ではMAb IプロテインA溶出液と呼ばれる。
【0171】
Nuchar RGCおよびRGC Nuchar活性化炭素は、本明細書で互換的に用いられ、MeadWestVaco Corporation,Richmond,VA,USAから得られた粉末状活性化炭素の等級を指す。代表的な実験において、ChromaSorb(商標)膜の直径7mmの環状部分(5μL)および/または10mgのRGC Nuchar活性化炭素を、Tris−HClバッファー、25mM、pH 7と共に1.5mLの遠心チューブに添加して、吸着剤媒体を平衡化させた。チューブを遠心分離し、上清の平衡化バッファーを除去した。続いて、1mL容量のMAb IプロテインA溶出液を、平衡化された吸着剤を含有する1.5mLの遠心チューブに添加した。吸着剤媒体および溶出液を、緩やかな撹拌下、室温で18時間相互作用させた。次いで、チューブを遠心分離にかけ、上清溶液を宿主細胞タンパク質(HCP)およびIgG濃度について分析した。
【0172】
HCP分析を、Cygnus Technologies,Southport,NC,USAからの市販のELISAキット(カタログ番号F550)を、キットの製造業者のプロトコールに従って用いて実施した。IgG濃度を、Poros(登録商標)AプロテインA分析カラムを備えたAgilent HPLCシステムを用いて測定した。1つのそのような実験の結果を表Vにまとめる。
【0173】
結果は、活性化炭素のみおよび陰イオン交換媒体と組合せた活性化炭素が、モノクローナル抗体溶液からの不純物の除去に関して予想外に効果的であったことを示している。活性化炭素および陰イオン交換媒体(ChromaSorb)の組合せは、1.43の宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)で最も多い量の不純物を除去した。個々の活性化炭素および陰イオン交換媒体は、それぞれ、1.21および0.36のHCPのLRVを有していた。活性化炭素のみおよび陰イオン交換媒体と組合せた活性化炭素は両方とも、それぞれ95%および95%のモノクローナル抗体生成物の優れた回収率を有していた。
【0174】
【表5】

【0175】
[実施例9]
活性化炭素および/または陰イオン交換媒体を用いるMAbのアフィニティ捕捉溶出液の静的ソーク処理
活性化炭素のみおよび陰イオン交換媒体と組合せた活性化炭素を、MAb Iとは異なるモノクローナル抗体(MAb IIと呼ぶ)を含有するアフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体溶出液からの不純物の除去について試験して、活性化炭素のみおよび陰イオン交換媒体と組合せた活性化炭素が、様々な異なるモノクローナル抗体の精製に適用することができる予想外に非常に効果的な方法を提供することを証明した。
【0176】
第2の部分精製されたMAb IIアフィニティ(プロテインA)捕捉溶出液を、実施例5に従って調製した。MAb IIの溶出液を、Tris塩基(2M)を用いて約pH 5からpH 7に調整し、0.22μmのMillipore Express Plus Stericupフィルターユニットを通して濾過した。この溶液は、本明細書ではMAb IIプロテインA溶出液と呼ばれる。
【0177】
ChromaSorb(商標)膜の直径7mmの環状部分(5μL)および/または10mgのRGC Nuchar活性化炭素を、Tris−HClバッファー、25mM、pH 7と共に1.5mLの遠心チューブに添加して、吸着剤媒体を平衡化させた。チューブを遠心分離し、上清の平衡化バッファーを除去した。続いて、1mL容量のpH調整されたMAb IIプロテインA溶出液を、平衡化された吸着剤を含有する1.5mLの遠心チューブに添加した。吸着剤媒体および溶出液を、緩やかな撹拌下、室温で18時間相互作用させた。次いで、チューブを遠心分離にかけ、上清溶液を宿主細胞タンパク質(HCP)およびIgG濃度について分析した。HCP分析を、Cygnus Technologies,Southport,NC,USAからの市販のELISAキット(カタログ番号F550)を、キットの製造業者のプロトコールに従って用いて実施した。IgG濃度を、Poros(登録商標)AプロテインA分析カラムを備えたAgilent HPLCシステムを用いて測定した。結果を表VIにまとめる。
【0178】
結果は、活性化炭素のみおよび陰イオン交換媒体と組合せた活性化炭素が、第2の型のモノクローナル抗体を含有する溶液からの不純物の除去に関して予想外に効果的であったことを示している。活性化炭素と陰イオン交換媒体(ChromaSorb(商標))との組合せは、1.78の宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)で最も多い量の不純物を除去した。個々の活性化炭素および陰イオン交換媒体は、それぞれ、1.08および0.64のHCPのLRVを有していた。活性化炭素のみおよび陰イオン交換媒体と組合せた活性化炭素は両方とも、それぞれ87%および85%のモノクローナル抗体生成物の良好な回収率を有していた。
【0179】
【表6】

【0180】
[実施例10]
活性化炭素および/または陰イオン交換媒体を用いるMAb Iの非アフィニティ捕捉溶出液の静的ソーク処理
活性化炭素のみおよび陰イオン交換媒体と組合せた活性化炭素を、非アフィニティ(陽イオン交換)捕捉モノクローナル抗体溶出液からの不純物の除去について試験して、活性化炭素のみおよび陰イオン交換媒体と組合せた活性化炭素が、不純物の除去のための予想外に非常に効果的な方法を提供することを証明した。アフィニティ(プロテインA)捕捉溶出液と比較して、非アフィニティ(陽イオン交換)捕捉溶出液は、有意により高いレベルの異なる型の不純物を含有する。非アフィニティ捕捉溶出液の精製のための活性化炭素の適用は、この方法が一般的であり、様々なタンパク質溶出液の精製に適用することができることを示している。
【0181】
別の実験において、部分精製されたMAb I CEX溶出液を実施例6に記載のように調製した。溶出液を、バッファー溶液(Tris−HClバッファー、25mM、pH 7)で4倍希釈した後、0.22μmのMillipore Express Plus Stericupフィルターユニットを通して濾過した。この溶液は、本明細書ではMAb I CEX溶出液と呼ばれる。
【0182】
ChromaSorb膜の2つの直径10mmの環状部分(19.6μL)および/または20mgのRGC Nuchar活性化炭素を、Tris−HClバッファー、25mM、pH 7と共に1.5mLの遠心チューブに添加して、吸着剤媒体を平衡化させた。チューブを遠心分離し、上清の平衡化バッファーを除去した。続いて、1mL容量のMAb I CEX溶出液を、平衡化された吸着剤を含有する1.5mLの遠心チューブに添加した。吸着剤媒体および溶出液を、緩やかな撹拌下、室温で18時間相互作用させた。次いで、チューブを遠心分離にかけ、上清溶液を宿主細胞タンパク質(HCP)およびIgG濃度について分析した。HCP分析を、Cygnus Technologies,Southport,NC,USAからの市販のELISAキット(カタログ番号F550)を、キットの製造業者のプロトコールに従って用いて実施した。IgG濃度を、Poros(登録商標)AプロテインA分析カラムを備えたAgilent HPLCシステムを用いて測定した。結果を表VIIにまとめる。
【0183】
結果は、活性化炭素のみおよび陰イオン交換媒体と組合せた活性化炭素が、非アフィニティ(陽イオン交換)クロマトグラフィーを用いて細胞培養液から捕捉されたモノクローナル抗体溶液からの不純物の除去に関して予想外に効果的であったことを示している。非アフィニティ(陽イオン交換)に基づく捕捉媒体は、より特異的なアフィニティ(プロテインA)に基づく捕捉媒体よりも、モノクローナル抗体と共により多くの不純物に結合する。従って、非アフィニティ捕捉溶出液は、有意により高いレベルの異なる型の不純物を含有する。活性化炭素と陰イオン交換膜(ChromaSorb(商標))との組合せは、1.45の宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)で最も多い量の不純物を除去した。個々の活性化炭素および陰イオン交換媒体は、それぞれ、1.20および0.55のHCPのLRVを有していた。活性化炭素のみおよび陰イオン交換媒体と組合せた活性化炭素は両方とも、それぞれ95%および74%のモノクローナル抗体生成物の良好な回収率を有していた。
【0184】
【表7】

【0185】
[実施例11]
様々なpH値での活性化炭素を用いるMAb Iのアフィニティ捕捉溶出液の静的ソーク処理
活性化炭素を、様々な溶液pHのアフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体溶出液からの不純物の除去について試験して、活性化炭素が様々な溶液条件にわたって効果的であることを証明した。
【0186】
別の実験において、部分精製されたMAb Iアフィニティ(プロテインA)捕捉溶出液を、実施例5に従って調製した。MAb Iの溶出液を、Tris塩基(2M)を用いて約pH 5からpH 7に調整し、0.22μmのMillipore Express Plus Stericupフィルターユニットを通して濾過した。この溶液は、本明細書ではMAb IプロテインA溶出液と呼ばれる。
【0187】
MAb IプロテインA溶出液(20mL)のpHを、Tris塩基(2M)または酢酸(3M)の添加により5、6、7または8に調整した。続いて、得られたpH調整されたMAb IプロテインA溶出液を、Millipore Express(登録商標)0.22μm膜を用いて滅菌濾過して、任意の混濁物を除去した。次いで、RGC Nuchar活性化炭素(10mg)を、Tris−HClバッファー、25mM、pH 7と共に1.5mLの遠心チューブに添加して、活性化炭素を平衡化させた。チューブを遠心分離し、上清の平衡化バッファーを除去した。続いて、1mLのpH調整されたMAb IプロテインA溶出液をチューブに添加した。吸着剤媒体および溶出液を、緩やかな撹拌下、室温で18時間相互作用させた。次いで、チューブを遠心分離にかけ、0.5mLの上清を除去し、宿主細胞タンパク質(HCP)およびIgG濃度について分析した。HCP分析を、Cygnus Technologies,Southport,NC,USAからの市販のELISAキット(カタログ番号F550)を、キットの製造業者のプロトコールに従って用いて実施した。IgG濃度を、Poros(登録商標)AプロテインA分析カラムを備えたAgilent HPLCシステムを用いて測定した。結果を表VIIIにまとめる。
【0188】
結果は、活性化炭素が、幅広いpH範囲にわたってモノクローナル抗体溶液からの不純物の除去に関して予想外に効果的であったことを示している。宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)は、HCPの1.27から1.30の範囲のLRVであり、pH 6、pH 7およびpH 8について非常に類似していた。活性化炭素はpH 5でも依然として選択的不純物除去を提供したが、HCPのLRVは0.70に低下した。活性化炭素は、試験した全てのpH条件について、90%から95%の範囲のモノクローナル抗体生成物の優れた回収率を有していた。
【0189】
【表8】

【0190】
[実施例12]
活性化炭素および/または陰イオン交換媒体を用いるMAb Iのアフィニティ捕捉溶出液のフロースルー処理
活性化炭素のみおよび陰イオン交換媒体と組合せた活性化炭素を、アフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体溶出液からの不純物の除去についてフロースルー適用において試験して、活性化炭素のみおよび陰イオン交換媒体と組合せた活性化炭素が、タンパク質の大規模精製に一般的に用いられるフロースルー条件下での不純物の除去のための予想外に非常に効果的な方法を提供することを証明した。
【0191】
部分精製されたMAb Iアフィニティ(プロテインA)捕捉溶出液を、実施例5に従って調製した。MAb Iの溶出液を、Tris塩基(2M)を用いて約pH 5からpH 7に調整し、0.22μmのMillipore Express Plus Stericupフィルターユニットを通して濾過した。この溶液は、本明細書ではMAb IプロテインA溶出液と呼ばれる。
【0192】
Glass Omnifit Chromatography Column(直径10mm、長さ100mm)に、水中でスラリー化された250mgのHD Nuchar活性化炭素をロードして、1mLの充填カラム容量を得た。カラムをバッファー溶液(Tris−HClバッファー、25mM、pH 7)を用いて平衡化させた。実施例7に上記されたように組立てられた0.2mLのChromaSorbデバイスも、バッファー溶液(Tris−HClバッファー、25mM、pH 7)を用いて平衡化させた。続いて、3つの精製トレインを組立てた。1番目はChromaSorbデバイスからなり、2番目は活性化炭素カラムからなり、3番目は活性化炭素カラム、次いで、ChromaSorbデバイスからなる。100mLのMAb IプロテインA溶出液を、0.25mL/minの流速で各組立物に通過させた。10個の10mLの溶出液画分を収集した。10個全ての画分ならびに選択された個々の画分のプールされた試料を、宿主細胞タンパク質(HCP)およびIgG濃度について分析した。HCP分析を、Cygnus Technologies,Southport,NC,USAからの市販のELISAキット(カタログ番号F550)を、キットの製造業者のプロトコールに従って用いて実施した。IgG濃度を、Poros(登録商標)AプロテインA分析カラムを備えたAgilent HPLCシステムを用いて測定した。結果を表IXにまとめる。
【0193】
図16に示され、表IXにまとめられた通り、結果は、活性化炭素のみおよび陰イオン交換媒体と組合せた活性化炭素を用いるアフィニティ捕捉溶出液のフロースルー処理が、モノクローナル抗体溶液からの不純物の除去に関して予想外に効果的であったことを示している。活性化炭素と陰イオン交換膜(ChromaSorb)との組合せは、1.95の宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)で最も多い量の不純物を除去した。個々の活性化炭素および陰イオン交換媒体は、それぞれ0.96および0.23のHCPのLRVを有していた。活性化炭素のみおよび陰イオン交換媒体と組合せた活性化炭素は両方とも、それぞれ96%および98%の範囲のモノクローナル抗体生成物の優れた回収率を有していた。
【0194】
【表9】

【0195】
[実施例13]
様々な陰イオン交換媒体のみを用いるまたは活性化炭素を用いる処理後のMAb Iのアフィニティ捕捉溶出液のフロースルー処理
活性化炭素を、単独でおよび様々な市販の陰イオン交換媒体と組合せて、アフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体溶出液からの不純物の除去に関して試験して、活性化炭素を様々な陰イオン交換媒体と組合せることができることを証明した。試験した市販の陰イオン交換媒体は、第一級アミン(ChromaSorb)および第四級アミン(Sartobind Q、Mustang Q、HiTrap Q FF)を含んでいた。膜(ChromaSorb、Sartobind Q、Mustang Q)および樹脂(HiTrap Q FF)上に支持された市販の陰イオン交換化合物を試験した。
【0196】
部分精製されたMAb Iアフィニティ(プロテインA)捕捉溶出液を、実施例5に従って調製した。MAb Iの溶出液を、Tris塩基(2M)を用いて約pH 5からpH 7に調整し、0.22μmのMillipore Express Plus Stericupフィルターユニットを通して濾過した。この溶液は、本明細書ではMAb IプロテインA溶出液と呼ばれる。
【0197】
Glass Omnifit Chromatography Column(直径10mm、長さ100mm)に、水中でスラリー化された250mgのHD Nuchar活性化炭素をロードして、1mLの充填カラム容量を得た。カラムをバッファー溶液(Tris−HClバッファー、25mM、pH 7)を用いて平衡化させた。3層の0.26mLのSartobind Q膜デバイスを、市販のSartobind Q膜ディスク(SIGMA−ALDRICH,St.Louis,MO,USA)(0.26mL、3シート)およびデバイス筐体ならびに実施例7に上記されたように組立てられた0.2mLのChromaSorbデバイスを作成するのに用いられたプロセスを用いて製造した。Mustang Q膜を用いた0.18mLのAcrodisc(登録商標)Unitsを、Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USAから購入した。これらのデバイスを、1mLのHiTrap Q FF予備充填カラム(GE Healthcare,Pittsburgn,PA,USA)および0.2mLのChromaSorbデバイスと共に、バッファー溶液(Tris−HClバッファー、25mM、pH 7)を用いて平衡化させた。
【0198】
9つのフロースルー精製トレインを組立てた:a)活性化炭素、b)ChromaSorb、c)活性化炭素、次いで、ChromaSorb、d)Sartobind Q、e)活性化炭素、次いで、Sartobind Q、f)Mustang Q、g)活性化炭素、次いで、Mustang Q、h)HiTrap Q FF、i)活性化炭素、次いで、HiTrap Q FF。続いて、96mLのMAb IプロテインA溶出液を、0.25mL/minの流速で各組立物に通過させた。精製トレインを通過させた後、溶液を宿主細胞タンパク質(HCP)およびIgG濃度について分析した。HCP分析を、Cygnus Technologies,Southport,NC,USAからの市販のELISAキット(カタログ番号F550)を、キットの製造業者のプロトコールに従って用いて実施した。IgG濃度を、Poros(登録商標)AプロテインA分析カラムを備えたAgilent HPLCシステムを用いて測定した。結果を表Xにまとめる。
【0199】
結果は、活性化炭素と様々な陰イオン交換媒体との組合せを用いるアフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体溶出液のフロースルー処理が、不純物の除去に関して予想外に効果的であったことを示している。宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)は、活性化炭素のみについて0.91であった。様々な市販の陰イオン交換媒体のみが、0.17から0.23の範囲の非常に類似したHCPのLRVを有していた。活性化炭素、次いで、様々な市販の陰イオン交換媒体の組合せは、1.70から1.90の範囲の非常により高いHCPのLRVを有していた。活性化炭素、次いで、様々な陰イオン交換媒体の組合せは、96%から97%の範囲のモノクローナル抗体生成物の優れた回収率を有していた。このデータは、活性化炭素が、第一級アミン(ChromaSorb(商標))および第四級アミン(Sartobind Q、Mustang Q、HiTrap Q FF)などの様々な市販の陰イオン交換媒体と共に抗体の精製に関して予想外に効果的であることを示している。活性化炭素の組合せは、膜(ChromaSorb、Sartobind Q、Mustang Q)および樹脂(HiTrap Q FF)上に支持された市販の陰イオン交換化合物と共に高度に効果的であった。
【0200】
【表10】

【0201】
[実施例14]
活性化炭素、次いで、陰イオン交換媒体を用いるまたは陰イオン交換媒体、次いで、活性化炭素を用いるMAb Iのアフィニティ捕捉溶出液のフロースルー処理
アフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体溶出液からの不純物のフロースルー除去に関して活性化炭素および陰イオン交換媒体の順序を試験して、2つの吸着剤の順序がその有効性に予想外に影響することを証明した。この実験は、陰イオン交換媒体の前の活性化炭素の配置が、タンパク質溶液から不純物を除去する吸着剤の組合せの能力を最大化するのに重要であることを例示するものである。
【0202】
部分精製されたMAb Iアフィニティ(プロテインA)捕捉溶出液を、実施例5に従って調製した。MAb Iの溶出液を、Tris塩基(2M)を用いて約pH 5からpH 7に調整し、0.22μmのMillipore Express Plus Stericupフィルターユニットを通して濾過した。この溶液は、本明細書ではMAb IプロテインA溶出液と呼ばれる。
【0203】
Glass Omnifit Chromatography Column(直径10mm、長さ100mm)に、水中でスラリー化された250mgのHD Nuchar活性化炭素をロードして、1mLの充填カラム容量を得た。カラムをバッファー溶液(Tris−HClバッファー、25mM、pH 7)を用いて平衡化させた。実施例7に上記されたように組立てられた0.2mLのChromaSorb膜デバイスも、バッファー溶液(Tris−HClバッファー、25mM、pH 7)を用いて平衡化させた。2つのフロースルートレインを組立てた。1番目は活性化炭素カラム、次いで、ChromaSorb膜デバイスを有していたが、2番目はChromaSorb膜デバイス、次いで、活性化炭素カラムの逆の順序を有していた。96mLのMAb IプロテインA溶出液を、0.25mL/minの流速で各組立物に通過させた。精製トレインを通過させた後、溶液を宿主細胞タンパク質(HCP)およびIgG濃度について分析した。HCP分析を、Cygnus Technologies,Southport,NC,USAからの市販のELISAキット(カタログ番号F550)を、キットの製造業者のプロトコールに従って用いて実施した。IgG濃度を、Poros(登録商標)AプロテインA分析カラムを備えたAgilent HPLCシステムを用いて測定した。結果を表XIにまとめる。
【0204】
結果は、活性化炭素および陰イオン交換媒体(ChromaSorb)の順序が、アフィニティ(プロテインA)捕捉溶出液のフロースルー精製の有効性にとって重要であるという予想外の結果を示している。活性化炭素を陰イオン交換媒体の前に置いた場合、宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)は1.87であった。陰イオン交換媒体を活性化炭素の前に置いた場合、HCPのLRVは1.38に減少した。活性化炭素および陰イオン交換媒体の順序は、抗体の回収率に対する影響を有さなかったが、それは吸着剤の両方の順序について97%であった。それらの結果は、陰イオン交換媒体の前に活性化炭素を置くことは、タンパク質溶液から不純物を除去する2つの吸着剤の組合せの有効性を最大化するのに重要であるという重要な理解を示している。
【0205】
【表11】

【0206】
[実施例15]
活性化炭素を用いるMAb Iの非アフィニティ捕捉溶出液のフロースルー処理
活性化炭素を、非アフィニティ(陽イオン交換)捕捉モノクローナル抗体溶出液からの不純物の除去に関してフロースルー適用において試験して、活性化炭素が、不純物の除去のための予想外に非常に効果的な方法を提供することを証明した。アフィニティ(プロテインA)捕捉溶出液と比較して、非アフィニティ(陽イオン交換)捕捉溶出液は、有意により高いレベルの異なる型の不純物を含有する。非アフィニティ捕捉溶出液の精製のための活性化炭素の適用は、この方法が一般的であり、様々なタンパク質溶液の精製に適用することができることを示している。
【0207】
部分精製されたMAb I CEX溶出液を、実施例6に記載のように調製した。溶出液を、バッファー溶液(Tris−HClバッファー、25mM、pH 7)を用いて4倍希釈した。MAb Iの希釈された溶出液を、Tris塩基(2M)を用いて約pH 6からpH 7に調整し、0.22μmのMillipore Express Plus Stericupフィルターユニットを通して濾過した。この溶液は本明細書ではMAb I CEX溶出液と呼ばれる。
【0208】
Glass Omnifit Chromatography Column(直径10mm、長さ100mm)に、水中でスラリー化された250mgのHD Nuchar活性化炭素をロードして、1mLの充填カラム容量を得た。カラムをバッファー溶液(Tris−HClバッファー、25mM、pH 7)を用いて平衡化させた。
【0209】
次いで、70mLのMAb I CEX溶出液を、0.25mL/minの流速で活性化炭素のカラムに通過させた。7個の10mLの溶出液画分を収集した。全部で7個の画分ならびに選択された個々の画分のプールされた試料を、宿主細胞タンパク質(HCP)およびIgG濃度について分析した。HCP分析を、Cygnus Technologies,Southport,NC,USAからの市販のELISAキット(カタログ番号F550)を、キットの製造業者のプロトコールに従って用いて実施した。IgG濃度を、Poros(登録商標)AプロテインA分析カラムを備えたAgilent HPLCシステムを用いて測定した。結果を表XIにまとめる。
【0210】
図16に示され、以下の表XIIにまとめられる通り、結果は、活性化炭素を用いるフロースルー精製は、非アフィニティ(陽イオン交換)捕捉モノクローナル抗体溶出液からの不純物の除去に関して予想外に効果的であったことを示している。非アフィニティ(陽イオン交換)に基づく捕捉媒体は、より特異的なアフィニティ(プロテインA)に基づく捕捉媒体よりもモノクローナル抗体と共により多くの不純物に結合する。従って、非アフィニティ捕捉溶出液は、有意により高いレベルの異なる型の不純物を含有する。活性化炭素は、0.76の宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)を提供し、モノクローナル抗体生成物の89%の回収率を有していた。これらの結果は、活性化炭素を用いて様々なタンパク質溶液から不純物を除去することができることを示唆している。
【0211】
【表12】

【0212】
[実施例16]
活性化炭素充填カラムおよび活性化炭素−セルロースデバイスを用いるMAb Iのアフィニティ捕捉溶出液のフロースルー精製
カラム中に充填されたまたはセルロースシート中に混合された活性化炭素を、アフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体溶出液からの不純物の除去についてフロースルー適用において試験して、活性化炭素が様々な形式における不純物の除去のための予想外に非常に効果的な方法を提供することを証明した。
【0213】
部分精製されたMAb Iアフィニティ(プロテインA)捕捉溶出液を、実施例5に従って調製した。MAb Iの溶出液を、Tris塩基(2M)を用いて約pH 5からpH 7に調整し、0.22μmのMillipore Express Plus Stericupフィルターユニットを通して濾過した。この溶液は、本明細書ではMAb IプロテインA溶出液と呼ばれる。
【0214】
Glass Omnifit Chromatography Column(直径15mm、長さ100mm)に、水中でスラリー化された600mgのHD Nuchar活性化炭素をロードして、2.4mLの充填カラム容量を得た。Millipore Corporation,Billerica,MAからMillistak+Pod CRデバイスで市販されている、活性化炭素を含浸させたセルロースシート媒体を、入力および出力のためのLuerコネクターを装備した、外側被覆されたポリプロピレンシリンジデバイス、内部濾過面積25mm、4.6mLベッド容量に入れた。
【0215】
カラムおよび活性化炭素−セルロースデバイスを、バッファー溶液(Tris−HClバッファー、25mM、pH 7)を用いて平衡化させた。2つのフロースルートレインを組立てた。1番目は活性化炭素カラムを有していたが、2番目は活性化炭素−セルロースデバイスを有していた。続いて、315mLのMAb IプロテインA溶出液を、0.75mL/minの流速で、各組立物に通過させた。精製トレインを通過させた後、溶液を宿主細胞タンパク質(HCP)およびIgG濃度について分析した。HCP分析を、Cygnus Technologies,Southport,NC,USAからの市販のELISAキット(カタログ番号F550)を、キットの製造業者のプロトコールに従って用いて実施した。IgG濃度を、Poros(登録商標)AプロテインA分析カラムを備えたAgilent HPLCシステムを用いて測定した。結果を表XIIIにまとめる。
【0216】
結果は、活性化炭素を用いるフロースルー精製が、カラム中に充填されたまたはセルロースシート中に混合した場合、アフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体溶出液からの不純物の除去に関して予想外に効果的であったことを示している。カラム中に充填されたまたはセルロースシート中に混合した活性化炭素は両方とも、それぞれ0.95および0.97の宿主細胞タンパク質(HCP)の非常に類似した対数減少値(LRV)を与えた。それらはまた、カラムについては91%およびセルロースシートについては87%のモノクローナル抗体生成物の非常に類似した回収率を有していた。これらの結果は、活性化炭素を、セルロースシート中に混合した場合、タンパク質溶液からの不純物の除去のために効果的に用いることができることを示唆している。
【0217】
【表13】

【0218】
[実施例17]
2つの他の型の活性化炭素を用いるMAb Iのアフィニティ捕捉溶出液のフロースルー精製
2つの他の型の市販の活性化炭素を、アフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体溶出液からの不純物の除去についてフロースルー適用において試験して、様々な活性化炭素をタンパク質溶液からの不純物の除去のために用いることができるという予想外の結果を証明した。
【0219】
部分精製されたMAb Iアフィニティ(プロテインA)捕捉溶出液を、実施例5に従って調製した。MAb Iの溶出液を、Tris塩基(2M)を用いて約pH 5からpH 7に調整し、0.22μmのMillipore Express Plus Stericupフィルターユニットを通して濾過した。この溶液は、本明細書ではMAb IプロテインA溶出液と呼ばれる。
【0220】
Glass Omnifit Chromatography Column(直径5mm、長さ100mm)に、水中でスラリー化された125mgのChemviron Pulsorb PGC活性化炭素(Chemviron Carbon,Feluy,Belgium)またはNorit A Supra USP活性化炭素(Norit Americas Inc.,Marshall,Texas,USA)をロードして、0.24mLの充填カラム容量を得た。カラムをバッファー溶液(Tris−HClバッファー、25mM、pH 7)を用いて平衡化させた。2つのフロースルートレインを組立てた。1番目はChemviron Pulsorb PGC活性化炭素カラムを有したが、2番目はNorit A Supra USP活性化炭素カラムを有していた。96mLのMAb IプロテインA溶出液を、0.25mL/minの流速で各組立物に通過させた。精製トレインを通過させた後、溶液を、宿主細胞タンパク質(HCP)およびIgG濃度について分析した。HCP分析を、Cygnus Technologies,Southport,NC,USAからの市販のELISAキット(カタログ番号F550)を、キットの製造業者のプロトコールに従って用いて実施した。IgG濃度を、Poros(登録商標)AプロテインA分析カラムを備えたAgilent HPLCシステムを用いて測定した。結果を表XIVにまとめる。
【0221】
結果は、2つの他の型の活性化炭素を用いるフロースルー精製が、アフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体溶出液からの不純物の除去に関して予想外に効果的であったことを示している。Chemviron Pulsorb PSGおよびNorit A Supra USPは両方とも、それぞれ0.40および0.48の宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)で不純物を除去した。それらはまた、Chemviron Pulsorb PSGについては100%およびNorit A Supra USPについては100%のモノクローナル抗体生成物の優れた回収率を有していた。これらの結果は、いくつかの異なる型の活性化炭素を、タンパク質溶液からの不純物の除去に用いることができることを示唆している。
【0222】
【表14】

【0223】
[実施例18]
様々なバッファー塩の存在下でのMAb Iのアフィニティ捕捉溶出液のフロースルー精製
活性化炭素を、様々な塩を添加したアフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体溶出液からの不純物の除去についてフロースルー適用において試験して、活性化炭素が多くの様々な塩の存在下での不純物の除去のための予想外に非常に効果的な方法を提供することを証明した。この調査は、この方法が一般的であり、様々なバッファー塩中でのタンパク質の精製に適用することができることを例示するものである。
【0224】
部分精製されたMAb Iアフィニティ(プロテインA)捕捉溶出液を、実施例5に従って調製した。MAb Iの溶出液を、Tris塩基(2M)を用いて約pH 5からpH 7に調整し、0.22μmのMillipore Express Plus Stericupフィルターユニットを通して濾過した。この溶液は、本明細書ではMAb IプロテインA溶出液と呼ばれる。
【0225】
MAb IプロテインA溶出液50mLに、300mMの様々な塩(ここで、塩は硫酸アンモニウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩無水物(EDTA)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、塩化ナトリウム、クエン酸三ナトリウム無水物、リン酸ナトリウム七水和物、およびTrizma(登録商標)Pre−set結晶、pH 7.0(Tris−HCl)である)を含有する10mLの水性溶液を添加した。
【0226】
10mLの水で希釈した溶液を対照として用いた。塩と混合したプロテインA溶出液のpHを、2M Tris塩基または3M酢酸を用いて7に調整し戻した。この溶液は、本明細書では塩と混合したMAb IプロテインA溶出液と呼ばれる。
【0227】
Glass Omnifit Chromatography Column(直径5mm、長さ100mm)に、水中でスラリー化された125mgのHD Nuchar活性化炭素をロードして、0.5mLの充填カラム容量を得た。カラムをバッファー溶液(Tris−HClバッファー、25mM、pH 7)を用いて平衡化させた。次いで、40mLの塩と混合したMAb IプロテインA溶出液を、0.125mL/minの流速で活性化炭素のカラムに通過させた。カラムを通過させた後、溶液を宿主細胞タンパク質(HCP)およびIgG濃度について分析した。HCP分析を、Cygnus Technologies,Southport,NC,USAからの市販のELISAキット(カタログ番号F550)を、キットの製造業者のプロトコールに従って用いて実施した。IgG濃度を、Poros(登録商標)AプロテインA分析カラムを備えたAgilent HPLCシステムを用いて測定した。結果を表XVにまとめる。
【0228】
結果は、活性化炭素を用いるアフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体のフロースルー精製が、様々な塩添加物の存在下での不純物の除去に関して予想外に効果的であったことを示している。活性化炭素は、全ての添加した塩の存在下で、0.63から1.00の範囲の宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)で不純物を除去した。それらはまた、92%から96%の範囲のモノクローナル抗体生成物の優れた回収率を有していた。これらの結果は、活性化炭素を、様々な塩のバッファー中におけるタンパク質溶液からの不純物の除去に用いることができることを示唆している。
【0229】
【表15】

【0230】
[実施例19]
pH 5およびpH 7でのプロテインA溶出液のフロースルー精製
活性化炭素を、2つの異なるpH条件でのアフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体溶出液からの不純物の除去についてフロースルー適用において試験して、活性化炭素が異なる溶液pH条件での不純物のフロースルー除去のための予想外に非常に効果的な方法を提供することを証明した。この調査は、この方法が一般的であり、異なるpH条件下でのタンパク質の精製に適用することができることを例示するものである。
【0231】
部分精製されたMAb Iアフィニティ(プロテインA)捕捉溶出液を、実施例5に従って調製した。この溶液は、本明細書ではpH 5のMAb IプロテインA溶出液と呼ばれる。
【0232】
実施例5に従って調製されたMAb Iの溶出液の一部を、Tris塩基(2M)を用いて約pH 5からpH 7に調整し、0.22μmのMillipore Express Plus Stericupフィルターユニットを通して濾過した。この溶液は、本明細書ではpH 7のMAb IプロテインA溶出液と呼ばれる。
【0233】
Glass Omnifit Chromatography Column(直径15mm、長さ100mm)に、水中でスラリー化された1.25gのHD Nuchar活性化炭素をロードして、5mLの充填カラム容量を得た。カラムをバッファー溶液(Tris−HClバッファー、25mM、pH 7)を用いて平衡化させた。次いで、500mLのpH 5のMAb IプロテインA溶出液またはpH 7のMAb IプロテインA溶出液を、1.25mL/minの流速で活性化カラムに通過させた。精製トレインを通過させた後、溶液を宿主細胞タンパク質(HCP)およびIgG濃度について分析した。HCP分析を、Cygnus Technologies,Southport,NC,USAからの市販のELISAキット(カタログ番号F550)を、キットの製造業者のプロトコールに従って用いて実施した。IgG濃度を、Poros(登録商標)AプロテインA分析カラムを備えたAgilent HPLCシステムを用いて測定した。結果を表XVIにまとめる。
【0234】
結果は、活性化炭素を用いるアフィニティ(プロテインA)捕捉モノクローナル抗体溶出液のフロースルー精製が、pH 5およびpH 7の両方において不純物の除去に関して予想外に効果的であったことを示している。活性化炭素は、pH 5では0.85およびpH 7では1.15の宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)で不純物を除去した。活性化炭素はまた、pH 5では97%およびpH 7では101%のモノクローナル抗体の優れた回収率を有していた。これらの結果は、活性化炭素を、様々なpH条件でのタンパク質溶液の不純物の除去に用いることができることを示唆している。
【0235】
【表16】

【0236】
[実施例20]
連続クロマトグラフィーを用いて調製されたプロテインA溶出液のフロースルー精製
この代表的な実験は、活性化炭素および陰イオン交換クロマトグラフィーデバイスを用いて、連続多カラムクロマトグラフィー(CMC)を用いて得られたプロテインA溶出液を精製することができることを証明する。
【0237】
本実施例において、モノクローナル抗体(MAb II)は、参照により本明細書に組み込まれる同時係属出願欧州特許出願第EP12002828.7号に記載のようなProsep(登録商標)Ultra Plus Protein A樹脂を用いる3つのカラムの連続多カラムクロマトグラフィー(CMC)法を用いて精製される。実施例12に記載のように、プロテインA溶出液をプールし、活性化炭素デバイス、次いで、陰イオン交換クロマトグラフィーデバイス(すなわち、ChromaSorb(商標))に通して処理する。
【0238】
図18に示されるように、活性化炭素および陰イオン交換クロマトグラフィーデバイスの組合せを用いた場合、10ppm以下のHCP濃度の減少により測定されるように、モノクローナル抗体の精製の成功が得られる。
【0239】
[実施例21]
いくつかのフロースルー不純物除去ステップの接続
この代表的な実験において、生成物の純度および収率目標を満たしながら、単一の単位操作またはプロセスステップとして運転するフロースルー様式でのいくつかの不純物除去ステップを接続する実現可能性が証明される。
【0240】
本実施例において、個々のデバイス、すなわち、活性化炭素デバイス、陰イオン交換クロマトグラフィーデバイス(すなわち、ChromaSorb(商標))、陽イオン交換クロマトグラフィーデバイスおよびウイルス濾過デバイス(すなわち、Viresolve(登録商標)Pro)を接続して、フロースルー様式で運転する。さらに、インラインスタティックミキサーおよび/またはサージタンクを、陰イオン交換クロマトグラフィーと陽イオン交換クロマトグラフィーデバイスとの間に配置して、pH変化を達成する。最後に、精製される試料が濁っている場合、任意選択の深層フィルターを活性化炭素デバイスの上流に配置する。
【0241】
図19は、以下に記載のデバイスを含む、フロースルー精製プロセスステップを実施するための実験組立物の略図を示す。
【0242】
さらに、必要なポンプ、バルブ、センサーなどもそのような組立物中に含有させてもよい。
【0243】
全てのデバイスを異なる位置で個別に湿らせた後、組立てる。デバイスは製造業者のプロトコールに従って湿らせ、予備処理する。簡単に述べると、深層フィルター(A1HC等級)を、100L/mの水、次いで、5倍量の平衡化バッファー1(EB1;1M Tris塩基、pH 11でpH 7.5に調整されたプロテインA溶出バッファー)を用いてフラッシュする。2.5mLの活性化炭素を、実施例12に記載の2.5cmのOmnifitカラムに充填して、0.55kg/Lの抗体負荷を作製する。このカラムを10CVの水でフラッシュした後、pHがpH 7.5に安定化されるまでEB1を用いて平衡化させる。2つのChromaSorbデバイス(0.2および0.12mL)を直列に接続して、4.3kg/Lの負荷を得る。デバイスを、少なくとも10minにわたって12.5CV/minの水、次いで5DV(デバイス容量)のEB1で湿らせる。12個のエレメントを有する使い捨てらせん形スタティックミキサー(Koflo Corporation,Cary,IL)を用いて、インラインpH調整を実施する。凝集物除去のための2つの1.2mL陽イオン交換フロースルーデバイスを平行に接続して、凝集物を除去する。CEXデバイス上のMAb負荷は、約570mg/mLである。これらのデバイスを10DVの水、次いで、5DVの平衡化バッファー2(EB2;1M酢酸を用いてpH 5.0に調整されたEB1)を用いて湿らせる。デバイスを5DV(デバイス容量)のEB2+1M NaClでさらに処理した後、5DVのEB2を用いて平衡化させる。3.1cmのVireSolve(登録商標)Proデバイスを、30psiで少なくとも10minにわたって加圧した水を用いて湿らせる。次いで、流速が連続で3分間一定のままになるまで、流速を毎分モニターする。全てのデバイスを湿らせ、平衡化させた後、それらを図19に示されるように接続する。全ての圧力読み取り値およびpH読み取り値が安定化されるまで、EB1をシステム全体に通過させる。平衡化の後、供給液をフロースルートレインに通過させる。泳動の間、サージタンクの前およびViresolve(登録商標)Proの後で試料を収集して、IgG濃度および不純物レベル(HCP、DNA、浸出したPrAおよび凝集物)をモニターする。供給液を処理した後、システムを3死容量のEB1でフラッシュして、デバイスおよび配管中のタンパク質を回収する。
【0244】
接続されたフロースループロセスのための供給液は、バッチ式プロテインAプロセスにおいて製造されたMAb IIのプロテインA溶出液である。このMAb中の凝集物の天然レベルは1%を超えず、従って、凝集物のレベルを増加させるための特殊な手順を開発した。溶液のpHを、緩やかに撹拌しながら、水性NaOHで11に上昇させ、1時間保持する。次いで、このpHを、緩やかに撹拌しながら、水性HClを用いてpH 5にゆっくりと低下させる。pHサイクルをさらに4回繰り返す。凝集物の最終レベルは約5%であり、その多くは、SECにより測定されるようにMAbダイマーおよびトリマーからなる。次いで、供給液をTris−HClバッファー、pH 7.5中に、約3mS/cmの伝導率で透析する。
【0245】
この泳動のために処理されるMAb供給液の量は、0.6mL/minの流速の102mLの13.5mg/mLのMAbである。
【0246】
ChromaSorb(商標)後の時間の関数としてのHCP漏出は、10ppmの上限より下である(図20)。凝集物は、CEXデバイスにより5%から1.1%に減少する(図21)。接続されたプロセスのMAb IIの収率は92%である。Viresolve(登録商標)Proデバイス上の処理量は3.7kg/mより大きい。
【0247】
従って、前記実施例は、いくつかのデバイスを接続してフロースルー様式で上手く運転することによって、所望の生成物純度および収率目標を達成することができることを示している。
【0248】
[実施例22]
フロースルー精製プロセスステップと連続結合および溶出クロマトグラフィー捕捉ステップとの接続
この代表的な実験において、本明細書に記載のフロースルー精製プロセスを、フロースルー精製の前にある連続結合および溶出クロマトグラフィー捕捉プロセスに直接連結した。
【0249】
本実施例において、CHOに基づくモノクローナル抗体(MAbII)を、フェドバッチ式バイオリアクター中で製造する。合計7Lの細胞培養液を、刺激原応答ポリマーの溶液と接触させて、0.2%v/vの最終刺激原応答ポリマー濃度を作製する。細胞培養液を約10分間混合させる。175mLの2M KHPO溶液を添加し、さらに10分間混合させる。次いで、pHを、2Mトリス塩基を用いて7.0に上昇させ、15分間混合させる。次いで、溶液を4,500 x gで10分間、2Lアリコート中で遠心分離し、上清をデカンテーションし、保持する。固体を除去する。細胞培養上清をプールした後、連続撹拌しながらバッチ様式で1:10の比で5M NaClと混合する。溶液の最終伝導率をこの時点で測定すれば、55±5mS/cmである。得られたより高いNaCl濃度の溶液を、0.22μmのExpressフィルターを通して滅菌濾過する。滅菌濾過された溶液は、プロテインAクロマトグラフィーのための負荷材料である。
【0250】
プロテインA捕捉ステップは、改変Akta Explorer 100上の方法を用いて泳動する2つのプロテインAカラムからなる。プロテインAカラムは、10.25および10.85cmのベッド高さまで内径1.6cmのVantage−L(EMD Millipore)クロマトグラフィーカラム中に充填された10mLのProSep(登録商標)Ultra PlusプロテインA媒体を有する。カラムを5カラム容量(CV)にわたって1X TBS、0.5M NaClを用いて平衡化させる(全てのカラム容量は最も小さいカラムに基づく)。泳動を通して、負荷の流速を、約1分の負荷滞留時間を有するように設定する。最初の負荷の間に、両方のカラムを直列に置き、一次カラムの流出液を、特定のロード容量に達するまで二次カラム上に直接ロードする。特定の負荷容量をカラム上に通過させた後、供給液を停止させ、2CVの平衡化バッファーを一次カラムから二次カラムに通過させる。次いで、一次カラムを、洗浄、溶出、クリーニングおよび再平衡化を受けるように配置する一方、二次カラムを一次カラムと同様にロードする。第1カラムの再平衡化の後、そのカラムを第2の位置に移動させて、現在の一次カラムと直列に存在させる。この一連の事象を、元の一次に位置するカラムを設定された容量までロードした後、一次の位置を取る各カラムを用いて繰り返す。各カラムを、合計7回ロードする。溶出の開始時間を制御するためのUVトリガーを用いて、各カラムからの溶出液を画分収集器を用いて収集し、約3.5CVの一定容量まで収集する。
【0251】
フロースルー精製トレインは、6つの主要なデバイスからなる:任意選択の深層フィルター(pH 7.5にpHを調整した後の沈殿物除去のため);活性化炭素;ChromaSorb(商標);インラインpH調整のためのスタティックミキサーおよび/またはサージタンク;凝集物除去のための陽イオン交換フロースルーデバイス(CEXデバイス);ならびにウイルス濾過デバイス(すなわち、Viresolve(登録商標)Pro)。
【0252】
図19は、これらのデバイスを接続する順序を例示する。
【0253】
全てのデバイスを異なる位置で個々に湿らせた後、図19に示されるように組立てる。デバイスを、製造業者のプロトコールに従ってまたは以前に記載のように湿らせ、予備処理する。簡単に述べると、深層フィルター(A1HC)を、100L/mの水、次いで、5倍量の平衡化バッファー1(EB1;1M Tris塩基、pH 11でpH 7.5に調整されたPrA溶出バッファー)を用いてフラッシュする。10mLの活性化炭素を、実施例12に記載のように2.5cmのOmnifitカラムに充填する。カラムを10CVの水でフラッシュした後、pHがpH 7.5に安定化されるまでEB1を用いて平衡化させる。1.2mLのChromaSorb膜(7層)を、直径47mmのSwinexデバイス中に積み重ねる。このデバイスを、少なくとも10minにわたって12.5CV/minの水、次いで、5デバイス容量(DV)のEB1で湿らせる。12個のエレメントを有する使い捨てらせん形スタティックミキサー(Koflo Corporation,Cary,IL)を用いて、インラインpH調整を実施する。3層の陽イオン交換クロマトグラフィーデバイス(0.12mLの膜容量)を、10DVの水、次いで、5DVの平衡化バッファー2(EB2:1M酢酸を用いてpH 5.0に調整されたEB1)を用いて湿らせる。デバイスを5DVのEB2+1M NaClを用いてさらに処理した後、5DVのEB2を用いて平衡化させる。3.1cmのViresolve(登録商標)Proウイルス濾過デバイスを、30psiで少なくとも10分間加圧された水を用いて湿らせる。次いで、流速が連続3分間一定のままになるまで、流速を毎分モニターする。全てのデバイスを湿らせ、平衡化させた後、それらを図19に示されるように接続する。全ての圧力読み取り値およびpH読み取り値が安定化されるまで、EB1をシステム全体に通過させる。平衡化後、供給液(pH 7.5に調整されたPrA溶出液)を、フロースルー精製トレインに通過させる。泳動の間に、サージタンクの前およびViresolve(登録商標)Proの後に試料を収集して、IgG濃度および不純物レベル(HCP、DNA、浸出したPrAおよび凝集物)をモニターする。供給液を処理した後、システムを3死容量のEB1を用いてフラッシュして、デバイスおよび配管中のタンパク質を回収する。
【0254】
図22は、深層フィルター、活性化炭素およびViresolveProの前の圧力読み取り値を示す。深層フィルター上の圧力は、泳動の多くの部分について未変化のままであるが、終わりに向かって上昇し、これはプロテインA泳動の終わりに向かうプロテインA溶出液供給画分のいくらかの沈殿物を示唆している。活性化炭素カラムは、活性化炭素の深層フィルター上流のため、任意の沈殿物からかなり保護されたままである。ViresolveProの圧力は時間と共にゆっくり上昇するが、運転最大限界(50psi)よりもはるかに低い。
【0255】
ViresolveProプール中の最終的なHCPは1ppm未満である(表XVI)。溶出液画分中の平均浸出プロテインAは、32ppmである。Viresolve(登録商標)Proプール中の浸出プロテインAは、4ppmである。凝集物は1%から0.4%まで減少する。以下の表XVIIは、連続結合および溶出クロマトグラフィープロセスステップと接続した場合のフロースルー精製の性能を調査するための実験の結果を示す。
【0256】
【表17】

【0257】
[実施例23]
活性化炭素を用いる細胞培養液成分不純物の除去
この代表的な実験において、プロテインAアフィニティ捕捉ステップを通じて存続し得る細胞培養液に由来する潜在的な不純物が活性化炭素により除去されることが証明される。
【0258】
細胞培養培地の一般的な成分、インスリン、哺乳動物細胞の成長刺激因子は、典型的には1−20mg/Lの濃度で細胞培養培地中に存在する。組換えヒトインスリン(EMD Millipore Corp.からのIncelligent AF)を1mg/mLで50mM Tris pH 7.0バッファー中に溶解し、モノクローナル抗体MAb IIを7g/Lの濃度まで添加した。ガラス製のOmnifitカラムに、HD Nuchar活性化炭素を充填する。溶液を、0.25CV/minの一定速度で、1kg/Lの合計MAb II負荷でカラムに通過させる。フロースループールを、インスリンおよび抗体濃度について分析する。分析のために、HC18カラム(Cadenza)を装備したAgilent HPLCシステムを用いる;溶媒A:水中の0.1%TFA;溶媒B:アセトニトリル中の0.1%TFA;15分にわたる5%−30%のBの最適化勾配を用いて、UV A214吸光度によりインスリンを検出した。まず、抗体の存在下でインスリンの標準溶液を用いて補正曲線を作製する。活性化炭素カラムからの流出液中ではインスリンは検出されないが、これは活性化炭素が240mg/gの過剰量で、MAbの存在下でのインスリンに対する許容量を有することを示唆している。
【0259】
[実施例24]
活性化炭素セルロース媒体を用いるMAb IIのアフィニティ捕捉溶出液の濁った溶液からの不純物のフロースルー除去
この代表的な実験において、活性化炭素が、微生物供給液から誘導されるHCPの除去について予想外に非常に効果的であることが証明された。E.コリ溶解物の溶液を、1.5mg/mLのmAbモノクローナル抗体と混合した。混合した供給液を、フロースルー条件下でカラム中に充填された活性化炭素を用いて処理した。
【0260】
E.コリの培養物に由来する細胞を遠心分離により回収した。上清をデカンテーションにより除去し、残りの細胞ペレットを激しい振とうおよび撹拌により溶解バッファー(25mM Tris、0.1mM EDTA pH 7)中に懸濁した。次いで、100mMのPMSFのエタノール中の保存溶液の0.4mL分を添加した。懸濁液を画分(それぞれ約100mL)に分割し、3secオンにし、4secオフにして5minにわたって超音波処理にかけた。超音波処理の後、材料をプールし、−80℃で48時間保存した。次いで、溶液を解凍し、4,500 x gで2時間遠心分離して、溶解した細胞を除去した。上清を、Stericup−HV 0.45μm Durapore膜(1000mL、カタログ番号:SCHVU11RE、Millipore Corp.Billerica,MA,01821,USA)を用いて濾過した。次いで、それをStericup−GP 0.22μm Millipore Express PLUS膜(1000mL、カタログ番号:SCGPU11RE、Millipore Corp.Billerica,MA,01821,USA)に通して濾過した。次いで、濾過した溶解物を7.5mLの10mg/mLのmAb溶液と混合して、1.5mLのmAbと混合された溶液を得た。溶液のpHは7.7であると測定された。
【0261】
ガラス製のOmnifit Chromatography Column(直径10mm、長さ100mm)に、水中でスラリー化された250mgのNuchar HD活性化炭素(MeadWestVaco Corporation,Richmond,VA,USA)をロードして、1mLの充填カラム容量を得た。カラムを25mM TrisバッファーpH 7を用いて平衡化させた。次いで、42mLのmAbと混合したE.コリ溶解物を、0.25mL/minの流速で活性化炭素カラムに通過させ、活性化炭素中での4分間の滞留時間を得た。対照およびプール試料を、宿主細胞タンパク質(HCP)およびIgG濃度に関する分析に提出した。
【0262】
HCP分析を、Cygnus Technologies,Southport,NC,USAからの市販のE.コリHCP ELISAキット(カタログ番号F410)をキットの製造業者の説明書に従って用いて実施した。IgG濃度を、Poros(登録商標)AプロテインA分析カラムを装備したAgilent HPLCシステムを用いて測定した。結果は、活性化炭素が、微生物供給液から誘導されるHCPの選択的除去について予想外に効果的であったことを示している。溶解物中のHCPの濃度は、206,000ng/mL(133,00ppm)から119,000ng/mL(77,800ppm)に減少したが、mAbの回収率は99%であり、1.55g/Lの濃度で出発し、1.53g/Lで回収された。本実施例は、活性化炭素を用いて、非哺乳動物細胞からHCPを除去することができることを示している。
【0263】
[実施例25]
活性化炭素−セルロース媒体および陰イオン交換媒体を用いるMAb IIのアフィニティ捕捉溶出液の濁った溶液からの不純物の除去
この実験において、活性化炭素のみおよびイオン交換媒体と組合せた活性化炭素が、捕捉ステップ後の微生物供給液から誘導されるHCPの除去に関して予想外に非常に効果的であることが示された。
【0264】
E.コリ溶解物の溶液に、1.5mg/mLのmAbモノクローナル抗体を添加した後、プロテインAクロマトグラフィーを用いて捕捉した。捕捉された供給液を、フロースルー条件下でカラム中に充填された活性化炭素、および次いで、ChromaSorb(商標)AEX膜で処理した。
【0265】
E.コリの培養液に由来する細胞を遠心分離により回収した。上清をデカンテーションにより除去し、残りの細胞ペレットを激しい振とうおよび撹拌により溶解バッファー(25mM Tris、0.1mM EDTA、pH 7)に懸濁した。次いで、100mM PMSFのエタノール中の保存溶液の0.4mL分を添加した。懸濁液を画分(それぞれ約100mL)に分割し、5minにわたって3secのオンおよび4secのオフを用いる超音波処理にかけた。超音波処理後、材料をプールし、−80℃で48時間保存した。次いで、溶液を解凍し、4,500 x gで2時間遠心分離して、溶解した細胞を除去した。上清をStericup−HV 0.45μm Durapore膜(1000mL、カタログ番号:SCHVU11RE、Millipore Corp.Billerica,MA,01821,USA)を用いて濾過した。次いで、それをStericup−GP 0.22μm Millipore Express PLUS膜(1000mL、カタログ番号:SCGPU11RE、Millipore Corp.Billerica,MA,01821,USA)に通して濾過した。次いで、濾過された溶解物を、7.5mLの10mg/mLのmAb溶液と混合して、1.5mLのmAbと混合した溶液を得た。溶液のpHは7.7であると測定された。次いで、混合した溶解物中のmAbを、プロテインAクロマトグラフィーを用いて捕捉した。次いで、30mLの捕捉されたmAbを、低いpHで溶出させた。溶出pHを、1M Trisの滴下添加により3−4から7に上昇させた後、StericupGP 0.22μm Millipore Express PLUS膜(250mL、カタログ番号:SCGPU02RE、Millopore Corp.Billerica,MA,01821,USA)に通して濾過した。1mLのpH調整された溶液を、分析のために取りのけておいた。
【0266】
ガラス製のOmnifit Chromatography Column(直径10mm、長さ100mm)に、水中でスラリー化された250mgのNuchar HD活性化炭素(MeadWestVaco Corporation,Richmond,VA,USA)をロードして、1mLの充填カラム容量を得た。カラムを25mM TrisバッファーpH 7を用いて平衡化させた。次いで、29mLのmAbプロテインAクロマトグラフィー溶出液を、0.2mL/minで活性化炭素に通過させた。滞留時間は4分であった。1mLの活性化炭素処理された溶出液を、分析のために取りのけておいた。
【0267】
次いで、0.08mLのChromaSorb(商標)デバイス(EMD Millipore Corp.Billerica,MA,01821,USA)を、説明書に従って水で湿らせた後、25mM Tris pH 7を用いてフラッシュした。次いで、27mLの活性化炭素処理された溶出液を、0.5mL/minの流速でChromaSorbデバイスに通過させた。滞留時間は0.16分であった。1mLの活性化炭素およびChromaSorb処理された溶出液を、分析のために取りのけておいた。
【0268】
それぞれの試料を、宿主細胞タンパク質(HCP)およびIgG濃度について分析した。HCP分析を、Cygnus Technologies,Southport,NC,USAからの市販のE.コリHCP ELISAキット(カタログ番号F410)をキットの製造業者の説明書に従って用いて実施した。IgG濃度を、Poros(登録商標)AプロテインA分析カラムを装備したAgilent HPLCシステムを用いて測定した。
【0269】
結果は、活性化炭素のみおよびAEX膜と組合せた活性化炭素が、微生物供給液の捕捉された溶出液からのHCPの選択的除去に関して予想外に効果的であったことを示している。溶出液中のHCPの濃度は、活性化炭素によって86ng/mL(7ppm)から8ng/mL(0.7ppm)に減少したが、mAbの回収率は97%であり、11.5g/Lの濃度で開始して11.2g/Lで回収された。活性化炭素処理された溶出液中のHCPの濃度は、ChromaSorb AEX膜によって3ng/mL(0.3ppm)にさらに減少し、mAbの全体の回収率は96%であり、11.1g/Lの最終濃度を得た。本実施例は、活性化炭素のみおよびAEX媒体と組合せた活性化炭素を用いて、捕捉ステップ後に非哺乳動物細胞から誘導されるHCPを除去することができることを示している。
【0270】
本明細書は、参照により本明細書に組み込まれる本明細書内に引用された参考文献の教示に照らして最も完全に理解される。本明細書内の実施形態は、本発明における実施形態の例示を提供するものであり、その範囲を限定すると解釈されるべきではない。当業者であれば、多くの他の実施形態が本発明により包含されることを容易に認識する。全ての刊行物および発明は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれた材料が本明細書と相反するまたはそれと矛盾する範囲について、本明細書は任意のそのような材料に優先する。本明細書の任意の参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明に対して先行技術であるとの許諾ではない。
【0271】
特に指摘がない限り、特許請求の範囲を含む本明細書において用いられる成分、細胞培養液、処理条件などの量を表す全ての数は、用語「約」により全ての事例において修飾されると理解されるべきである。従って、特に逆の記載がない限り、数的パラメーターは近似値であり、本発明により得られることが求められる所望の特性に応じて変化してもよい。特に指摘がない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、あらゆる一連の要素について言及していると理解されるべきである。当業者であれば、日常的なものを超えない実験を用いて、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するまたは確認することができる。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲により包含されることが意図される。
【0272】
当業者には明らかであるように、本発明の多くの改変および変更を、その精神および範囲を逸脱することなく行うことができる。本明細書に記載の特定の実施形態は、ほんの一例として提供されるものであり、いかなる意味でも限定を意味するものではない。本明細書および実施例は例示のみと考えられ、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲により示されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテインA溶出液から標的分子を精製するためのフロースループロセスであって、
下記ステップ:
(i)プロテインAクロマトグラフィーカラムから回収された溶出液を活性化炭素と接触させるステップ;
(ii)ステップ(i)からのフロースルー試料を陰イオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させるステップ;
(iii)ステップ(ii)からのフロースルー試料を陽イオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させるステップ;および
(iv)標的分子を含むステップ(iii)からのフロースルー試料を取得するステップ
を含み、溶出液がステップ(i)−(iii)を連続的に流動し、ならびにステップ(iii)後のフロースルー試料中の1または複数の不純物のレベルが、ステップ(i)における溶出液中のレベルよりも低い、フロースループロセス。
【請求項2】
ステップ(iii)からのフロースルー試料をウイルス濾過にかけることをさらに含む、請求項1のフロースループロセス。
【請求項3】
ステップ(ii)と(iii)との間に、pHを変化させるためのインラインスタティックミキサーおよび/またはサージタンクの使用をさらに含む、請求項1のフロースループロセス。
【請求項4】
単一のスキッドを用いる、請求項1のフロースループロセス。
【請求項5】
プロテインAクロマトグラフィーカラムからの溶出液が、活性化炭素と接触させる前にウイルス不活化にかけられる、請求項1のフロースループロセス。
【請求項6】
ステップ(i)−(iii)が任意の順序で実施され得る、請求項1のプロセス。
【請求項7】
プロテインA溶出液を、活性化炭素、陰イオン交換媒体、陽イオン交換媒体およびウイルス濾過媒体から選択される2つ以上のマトリックスと接触させることを含み、溶出液の流動が連続的である、プロテインA溶出液から標的分子を精製するためのフロースルー精製プロセス。
【請求項8】
タンパク質精製の間に1または複数のクロマトグラフィーカラム上の負担を減少させる方法であって、
目的のタンパク質および1または複数の不純物を含む試料を、フロースルー様式において、
(i)炭素質材料;
(ii)炭素質材料とCEX媒体との組合せ;
(iii)炭素質材料とAEX媒体との組合せ;
(iv)炭素質材料と混合様式媒体との組合せ;および
(v)炭素質材料とHIC媒体との組合せ
のうちの1つと接触させた後、試料を、アフィニティ媒体、AEX媒体、CEX媒体、HIC媒体または混合様式媒体を含む1または複数のクロマトグラフィーカラムと接触させることによって、1または複数のクロマトグラフィーカラム上の負担を減少させることを含む、方法。
【請求項9】
タンパク質精製の間に多孔性媒体を用いる1または複数のクロマトグラフィーステップ上の負担を減少させる方法であって、
目的のタンパク質および1または複数の不純物を含む試料を、フロースルー様式において、
(i)炭素質材料;
(ii)炭素質材料とCEX媒体との組合せ;
(iii)炭素質材料とAEX媒体との組合せ;
(iv)炭素質材料と混合様式媒体との組合せ;ならびに
(v)炭素質材料とHIC媒体との組合せ
のうちの1つと接触させた後、試料を、多孔性媒体を用いる1または複数のクロマトグラフィーステップと接触させることによって、1または複数のクロマトグラフィーステップ上の負担を減少させることを含む、方法。
【請求項10】
多孔性媒体が、アフィニティ媒体、AEX媒体、CEX媒体、HIC媒体または混合様式媒体のうちの1または複数を含む、請求項9の方法。
【請求項11】
アフィニティ媒体がプロテインAまたはプロテインGから選択される、請求項8の方法。
【請求項12】
目的のタンパク質が抗体またはその機能的フラグメントである、請求項8の方法。
【請求項13】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項12の方法。
【請求項14】
抗体がポリクローナル抗体である、請求項12の方法。
【請求項15】
試料が細胞培養供給液を含む、請求項8の方法。
【請求項16】
試料を(i)から(v)のうちの1つと接触させる前に、試料が清澄化ステップにかけられる、請求項8の方法。
【請求項17】
清澄化ステップが、深層濾過、スクリーン濾過、軟凝集および/または遠心分離のうちの1または複数を含む、請求項9の方法。
【請求項18】
炭素質材料が活性化炭素を含む、請求項8の方法。
【請求項19】
活性化炭素が活性炭を含む、請求項18の方法。
【請求項20】
炭素質材料とAEX媒体との組合せが活性化炭素とAEX樹脂との混合物であり、炭素質材料とCEX媒体との組合せが活性化炭素とCEX樹脂との混合物であり、炭素質材料と混合様式媒体との組合せが活性化炭素と混合様式樹脂との混合物であり、および炭素質材料とHIC媒体との組合せが活性化炭素とHIC樹脂との混合物である、請求項8の方法。
【請求項21】
混合物がカラム中に充填される、請求項20の方法。
【請求項22】
混合物が密閉された使い捨てデバイス中に充填される、請求項20の方法。
【請求項23】
CEX媒体がCEX樹脂を含む、請求項8の方法。
【請求項24】
AEX媒体がAEX樹脂を含む、請求項8の方法。
【請求項25】
HIC媒体がHIC樹脂を含む、請求項8の方法。
【請求項26】
混合様式媒体が第1群および第2群を含み、第1群および第2群の両方が異なる機構によって目的の分子と相互作用する、請求項8の方法。
【請求項27】
活性化炭素が、カラム、密閉された使い捨てデバイス、カートリッジまたはカプセル中に充填される、請求項18の方法。
【請求項28】
活性化炭素が多孔性材料中に含浸される、請求項18の方法。
【請求項29】
多孔性材料が、カラム、密閉された使い捨てデバイス、カートリッジまたはカプセル内に含有される、請求項28の方法。
【請求項30】
AEX媒体が、1または複数のポリマー性第一級アミンまたはそのコポリマーを含む表面コーティングを有する多孔性吸着媒体である、請求項8の方法。
【請求項31】
AEX媒体が、1または複数のポリマー性第一級アミンまたはそのコポリマーを含む表面コーティングを有する多孔性吸着媒体である、請求項9の方法。
【請求項32】
AEX媒体が、1または複数の第一級、第二級、第三級および第四級アミンを含む表面コーティングを有する多孔性吸着媒体である、請求項8の方法。
【請求項33】
AEX媒体が、1または複数の第一級、第二級、第三級および第四級アミンを含む表面コーティングを有する多孔性吸着媒体である、請求項9の方法。
【請求項34】
試料中の目的のタンパク質と関連する1または複数の不純物のレベルを低下させる方法であって、
下記ステップ:
(i)目的のタンパク質および1または複数の不純物を含む試料を、アフィニティ媒体、AEX媒体、CEX媒体、HIC媒体または混合様式媒体を含む1または複数のクロマトグラフィーカラムと、目的のタンパク質が1または複数のクロマトグラフィーカラム中の媒体に結合するような条件下で接触させるステップ;
(ii)試料の第1の溶出液を取得するステップ;
(iii)ステップ(ii)からの第1の溶出液を、フロースルー様式において、(a)炭素質材料;および(b)炭素式材料と、1または複数のアフィニティ媒体、CEX媒体、AEX媒体、混合様式媒体およびHIC媒体との組合せのうちの1つと接触させるステップ;ならびに
(iv)試料の第2の溶出液を取得するステップ
を含み、第2の溶出液が、第1の溶出液中の1または複数の不純物のレベルと比較して、より低いレベルの1または複数の不純物を含む、方法。
【請求項35】
アフィニティ媒体がプロテインAまたはプロテインGから選択される、請求項34の方法。
【請求項36】
第2の溶出液が、目的のタンパク質の収率の10%未満の損失を含む、請求項34の方法。
【請求項37】
目的のタンパク質および1または複数の不純物を含有する試料中の1または複数の不純物のレベルを低下させる方法であって、
下記ステップ:
(i)目的のタンパク質および1または複数の不純物を含む試料を、アフィニティ媒体を含むクロマトグラフィーカラムと接触させるステップ;
(ii)試料の第1の溶出液を取得するステップ;
(iii)ステップ(ii)からの第1の溶出液を、フロースルー様式において、炭素質材料と接触させるステップ;
(iv)試料の第2の溶出液を取得するステップ;
(v)第2の溶出液を、陰イオン交換多孔性媒体膜吸着剤と接触させるステップ;ならびに
(vi)試料の第3の溶出液を取得するステップ
を含み、第3の溶出液が、炭素質材料が方法において用いられない場合の1または複数の不純物のレベルと比較して、より低いレベルの1または複数の不純物を含む、方法。
【請求項38】
目的のタンパク質を含有する試料中の1または複数の不純物のレベルを低下させる方法であって、
下記ステップ:
(i)目的のタンパク質および1または複数の不純物を含む試料を用意するステップ;
(ii)試料を、好適な媒体と接触させて、目的のタンパク質を捕捉するステップ;
(iii)試料の第1の溶出液を取得するステップ;
(iv)第1の溶出液を、炭素質材料と接触させるステップ;
(v)試料の第2の溶出液を取得するステップ;
(vi)第2の溶出液を、陰イオン交換媒体と接触させるステップ;ならびに
(vii)試料の第3の溶出液を取得するステップ
を含み、第3の溶出液が、ステップ(iv)を実施しない場合の1または複数の不純物のレベルと比較して、より低いレベルの1または複数の不純物を含む、方法。
【請求項39】
目的のタンパク質が抗体である、請求項38の方法。
【請求項40】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項38の方法。
【請求項41】
陰イオン交換媒体が樹脂または膜である、請求項38の方法。
【請求項42】
炭素質材料が活性化炭素である、請求項38の方法。
【請求項43】
目的のタンパク質を含む試料中の1または複数の不純物のレベルを低下させる方法であって、
下記ステップ:
(i)沈降、軟凝集、結晶化、可溶性小分子もしくはポリマーリガンドへの結合、または懸濁されたクロマトグラフィー媒体への結合により試料から目的のタンパク質を単離することによって、目的のタンパク質を含むタンパク質相を取得するステップ;
(ii)タンパク質相の好適なバッファー中への溶解によりタンパク質を再構成させるステップ;
(iii)再構成されたタンパク質を、フロースルー様式において炭素質材料と接触させるステップ;
(iv)試料の第1の溶出液を取得するステップ;
(v)第1の溶出液を、陰イオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させるステップ;および
(vi)試料の第2の溶出液を取得するステップ
を含み、第2の溶出液が、ステップ(iii)を実施しない場合の1または複数の不純物のレベルと比較して、より低いレベルの1または複数の不純物を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−44748(P2013−44748A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−179197(P2012−179197)
【出願日】平成24年8月13日(2012.8.13)
【出願人】(504115013)イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン (33)