説明

タンパク質集積体及びその利用

【課題】所定の機能を有するタンパク質のターゲットに対する親和性や結合性を高めるために、新規なタンパク質の集積化剤を提供する。
【解決手段】以下のアミノ酸配列(a)及び(b);(a)特定のアミノ酸配列(b)特定のアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸の置換、欠失、付加及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列から選択されるいずれかのアミノ酸配列を有するペプチドをタンパク質集積化剤として利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質の集積体及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質を集積することでその機能を高められることが知られている。たとえば、抗体のC末端に35アミノ酸残基ペプチド(二量体化ドメインであって、へリックス・ループ・へリックス構造をとる)又は42アミノ酸残基ペプチド(p53由来の四量体化ドメイン)を融合することによって、こうしたドメインを介して個々の融合タンパク質を集積して全体としての抗原に対する親和性(アビディティ;avidity)を高める試みがなされている(非特許文献1)。
【0003】
また、このほかにも多量体化ドメインを用いてタンパク質を多量体化する試みがなされている(特許文献1〜4)。
【0004】
このように、所定の機能を有するタンパク質のターゲットに対する親和性や結合性を高めるためには、タンパク質の集積化が望まれる。例えば、触媒作用を有するタンパク質を集積化した場合には、局所的な触媒濃度が高まり触媒反応の効率が高まると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−136292号公報
【特許文献2】特開2007−97417号公報
【特許文献3】特開2005−213166号公報
【特許文献4】特表2009−519931号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M Rheinnecker, C Hardt, LL Ilag, P Kufer, R Gruber, A Hoess, A Lupas, C Rottenberger, A Pluckthun, and P Pack ,J. Immunol., Oct 1996; 157: 2989 - 2997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のとおり、公知の二〜六量体化ドメインを用いることで、集積したタンパク質の数に応じた機能性の向上が期待できる。しかしながら、これらのドメインは、それぞれ、二量体〜六量体の作製に用いることができるものの、それ以上の多量体の作製は困難であった。また、これらのドメインは、30〜50のアミノ酸残基の長いペプチドであって、分散性や経済性を高めるためにも、多量体化に必要なペプチドを短くすることが望まれる。
【0008】
そこで、本発明は、新規なタンパク質の集積化のためのドメインと、それを保持するタンパク質、及びこうしたタンパク質の集積体並びに集積体の用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、疎水性イオン液体に対して溶解又は疎水性イオン液体と水との水/非水界面に局在するペプチドにつき検討していたところ、こうしたペプチドを融合したタンパク質が水相のみにおかれた場合には自己組織化により集積してタンパク質の集積体を形成するという知見を得た。本明細書の開示によれば、以下の手段が提供される。
【0010】
本明細書の開示によれば、以下のアミノ酸残基(a)及び(b):
(a)第1のアミノ酸残基;セリン及びリジンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸残基
(b)第2のアミノ酸残基;トリプトファン、チロシン及びフェニルアラニンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸残基、
とをそれぞれ備えるペプチド鎖を含むペプチドである、タンパク質集積化剤が提供される。
【0011】
前記タンパク質集積化剤の前記ペプチド鎖は、好ましくは、前記第1のアミノ酸残基は2残基以上連続して備える第1の末端部分と、前記第2のアミノ酸残基を2残基以上連続して備える第2の末端部分と、を備えることができる。また、前記ペプチド鎖は、前記第1のアミノ酸残基及び前記第2のアミノ酸残基のみからなる残基数が9個以上13個以下のアミノ酸配列を備えることが好ましい。
【0012】
前記ペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列(a)及び(b)
(a)配列番号1〜17及び29で表されるアミノ酸配列
(b)配列番号1〜17及び29で表されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸の置換、欠失、付加及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を有することが好ましい。また、前記(b)において、置換、挿入及び付加されるアミノ酸は、セリン(S)、リジン(K)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)及びフェニルアラニン(F)からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。さらに、前記(b)において配列番号1、3〜7、9、10、11及び12で表されるアミノ酸配列中のセリン(S)の1個又は2個以上がリジンで置換されていることも好ましい。さらにまた、前記(b)において配列番号1、3〜8、11及び12で表されるアミノ酸配列中のトリプトファン(W)の1個又は2個以上がチロシン(Y)及びフェニルアラニン(F)で置換されていることも好ましい。
【0013】
本明細書の開示によれば、1種又は2種以上の所望のペプチド鎖と、上記いずれかのタンパク質集積化剤と、を備える、融合タンパク質が提供される。
【0014】
本明細書の開示によれば、タンパク質集積体であって、前記融合タンパク質を構成単位として含む、集積体が提供される。
【0015】
本明細書の開示によれば、タンパク質の集積体の生産方法であって、前記融合タンパク質を準備する工程と、前記融合タンパク質を構成単位として含む集積体を形成する工程と、を備える、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例試料1〜7のペプチドの分配状態を示す図である。
【図2】実施例試料8〜17のペプチドの分配状態を示す図である。
【図3】比較例試料1〜4のペプチドの分配状態を示す図である。
【図4】比較例試料5〜11のペプチドの分配状態を示す図である。
【図5】融合タンパク質を生産するためのDNAコンストラクトの構成を示す図である。
【図6】融合タンパク質の分配状態を示す図である。
【図7】融合タンパク質を大量発現させた大腸菌から取得したタンパク質の電気泳動結果を示す図である。
【図8】サイズ排除クロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図9】DLSの結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、新規なタンパク質の集積化のためのドメイン(集積化剤)と、それを保持するタンパク質、及びこうしたタンパク質の集積体並びに集積体の用途に関する。本発明者らによれば、特定のアミノ酸残基、すなわち、セリン及びリジンから選択される第1のアミノ酸残基及びトリプトファン、チロシン及びフェニルアラニンから選択される第2のアミノ酸残基が、これらを含むタンパク質の集積化に寄与することを見出した。すなわち、本発明は、所望の物タンパク質を自己組織化を介して集積させるのにあたっての第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基の利用に関している。
【0018】
本発明の一つの形態は、第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基をそれぞれ備えるペプチドのタンパク質の集積化剤としての利用である。本発明によれば、こうしたアミノ酸残基を備えるペプチドを自己組織化を介して集積させることができる。
【0019】
本明細書の開示を拘束するものではないが、本明細書に開示されるタンパク質集積化剤中の第1のアミノ酸残基は、イオン結合性相互作用又は双極子相互作用により、また、第2のアミノ酸残基は、疎水性相互作用又は環構造のスタッキング作用により、集積化剤相互が集積しうると考えられる。本明細書に開示されるタンパク質集積化剤は、イオン液体に対するタンパク質の溶解性等の付与の観点から見出されたが、特定のアミノ酸残基の組み合わせの、イオン液体、特に疎水性イオン液体に対する挙動は、水性媒体中における当該ペプチド鎖の自己組織化及び融合タンパク質の集積化の挙動と強く関連していると考えられる。すなわち、本発明者らが見出した、疎水性イオン液体に対して特定の挙動を示すペプチドは、いずれも、水性媒体中における自己組織化能及び融合タンパク質の集積化能を備えていると考えられる。
【0020】
なお、本発明において、タンパク質の集積化剤とは、特定のアミノ酸残基の組み合わせを含むペプチドであって、前記特定のアミノ酸残基の組み合わせを有する融合タンパク質を水性媒体中で集積させることができるペプチドを意味している。
【0021】
以下、本発明の各種実施形態について詳細に説明する。これらの各種実施形態について詳細に説明する。
【0022】
(タンパク質の集積化剤)
本発明のタンパク質集積化剤は、第1のアミノ酸残基;セリン及びリジンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基;トリプトファン、チロシン及びフェニルアラニンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸残基と、をそれぞれ備えているペプチドを含むことができる。
【0023】
集積化剤であるペプチド(本ペプチドという。)は、第1のアミノ酸残基を1残基以上を備えていればよいが、第1のアミノ酸残基は2残基以上連続して備えることが好ましい。より好ましくは3残基以上を連続して備える。上限は特に限定しないが6残基以下であることが好ましい。以下、これらのアミノ酸残基が連続する部分をブロックともいう。
【0024】
また、第2のアミノ酸残基を2残基以上連続して備えることも好ましい。より好ましくは3残基以上であり、又は4残基以上である。上限は特に限定しないが、6残基以下程度である。
【0025】
本ペプチドは、そのアミノ酸配列において、第1のアミノ酸残基が2残基以上連続するブロック(配列部分)と第2のアミノ酸残基が2残基以上連続するブロック(配列部分)とをそれぞれ1個以上備えることが好ましい。これらのブロック間に他のアミノ酸残基が挿入されることを排除するものではないが、これらのブロックが直接的に交互に又は第1のアミノ酸残基及び/又は第2のアミノ酸残基を介して連続していることが好ましい。
【0026】
また、1残基の第1のアミノ酸残基に対して第2のアミノ酸残基が2個以上連続するブロック(配列部分)を備えていてもよい。こうした第1のアミノ酸残基と第2のアミノ酸残基の葉ブロックが直接的に交互に又は第1のアミノ酸残基及び/又は第2のアミノ酸残基を介して連続していることが好ましい。
【0027】
特に、本ペプチドにおいては、第1のアミノ酸残基ブロック及び第1のアミノ酸残基ブロックをそれぞれ末端に備えていることが好ましい。例えば、第1のアミノ酸残基ブロックN末端に備え、第2のアミノ酸残基ブロックをC末端に備えることもできるし、第1のアミノ酸残基ブロックをC末端に備え、第2のアミノ酸残基ブロックをN末端に備えることもできる。なお、第1のアミノ酸残基ブロックからなるN末端及びC末端が本発明の集積化剤の第1の末端部分に対応し、第2のアミノ酸残基ブロックからなるN末端及びC末端が本発明の集積化剤における第2の末端部分に対応している。
【0028】
本ペプチドは、融合タンパク質の集積化能を発揮している限り、第1のアミノ酸残基及び第2のアミノ酸残基以外のアミノ酸残基を備えていてもよい。例えば、第1の末端部分と第2の末端部分を備える本ペプチドにおいて、このペプチドの末端以外の部分において他のペプチド種を備えていてもよい。このようなペプチド種は、特に限定されないが、後述するスクリーニング方法やペプチドの設計プログラム等に基づいて選択することができる。
【0029】
本ペプチドは、好ましくは、第1のアミノ酸残基と第2のアミノ酸残基とからなる。第1のアミノ酸残基と第2のアミノ酸残基の組み合わせは特に限定しないが、例えば、以下の組み合わせが好適なものとして例示される。
【0030】
第1のアミノ酸残基 第2のアミノ酸残基
セリン トリプトファン
セリン チロシン
セリン フェニルアラニン
リジン トリプトファン
【0031】
なお、セリン及びリジン、特にセリンは、立体障害性の小さいアミノ酸残基であるため、比較的立体障害性の大きい第2のアミノ酸残基ブロック間に1残基単位で挿入されていることも好ましい。また、第2のアミノ酸残基ブロック間には、このほか、グリシン、アラニン及びアスパラギン酸などが1残基単位で挿入されていてもよい。
【0032】
本ペプチドにおいて第1のアミノ酸残基は全体として3残基以上、好ましくは4残基以上含まれていることが好ましい。また、第2のアミノ酸残基は全体として4残基以上、好ましくは5残基以上含まれていることが好ましい。本ペプチドの全体のアミノ酸残基数は特に限定されないが、好ましくは、7個以上であり、より好ましくは8個以上である。7個未満であると、水との2相界面にも局在されにくくなる傾向があるからである。さらに好ましくは9個以上である。9個未満であると、疎水性イオン液体への親和性を確保しにくくなるからである。また、上限は好ましくは13残基以下である。13残基を超えると、疎水性イオン液体への溶解性も低下するからである。より好ましくは、9個以上12個以下であり、さらに好ましくは、10個以上11個以下程度である。
【0033】
本ペプチドは、配列番号1〜17及び29で表されるいずれかのアミノ酸配列からなることができる。また、本ペプチドは、配列番号1〜17及び29で表されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸の置換、欠失、付加及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列であってもよい。本ペプチドが有することができる(又はそれのみからなる)アミノ酸配列は、好ましくは配列番号1〜15で表されるアミノ酸配列である。より好ましくは、配列番号1、2、8、11及び12である。一層好ましくは配列番号1、2、11及び12である。
【0034】
配列番号1〜18で表されるアミノ酸配列に対して置換、欠失、付加及び挿入されるアミノ酸残基は、セリン(S)、リジン(K)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)及びフェニルアラニン(F)からなる群から選択される1種又は2種以上とすることが好ましい。これらアミノ酸残基は、いずれも、ペプチドの疎水性イオン液体への親和性に関する寄与があることがわかったからである。
【0035】
配列番号1〜17及び29で表されるアミノ酸配列における各種改変は、既に説明した本ペプチドとして好ましいアミノ酸残基の組成及び配列の態様の範囲内で行うことが好ましい。配列番号1〜10で表されるアミノ酸配列についての好ましい改変例としては、例えば、配列番号1、3〜7、9及び10のアミノ酸残基で表されるアミノ酸配列中のセリン(S)の1個又は2個以上がリジンで置換される態様が挙げられる。また、配列番号1、3〜8で表されるアミノ酸配列中のトリプトファン(W)の1個又は2個以上がチロシン(Y)及びフェニルアラニン(F)で置換される態様が挙げられる。
【0036】
本発明の各種態様のペプチドは、公知の方法で取得することができる。例えば、ペプチド固相合成法などの化学合成法により得ることができるほか、こうしたペプチドをコードする化学合成等により取得するとともに、発現ベクター等に組み込んで大腸菌等を形質転換して生産させたり、無細胞合成系を利用して合成することもできる。
【0037】
本ペプチドが、融合タンパク質集積化能を有しているか否かは、例えば、本ペプチドをC末端又はN末端に有する融合タンパク質を作製し、当該タンパク質が水性媒体中で集積体を形成するかどうかで確認することができる。集積体の形成は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーによる複数の融合タンパク質の合計に相当する分子量の検出又は動的光散乱測定(DLS)による所定の大きさの超分子構造の検出によることができる。
【0038】
また、本ペプチドが融合タンパク質集積化能を有しているか否かは、以下の方法でも確認することができる。すなわち、水と混和しない所定量の非水溶媒、例えば、疎水性イオン液体に対して、所定量の本ペプチドを添加して溶解又は分散させ、その後、所定量の水などの水性媒体(好ましくは水又は緩衝液)を混合して、所定条件で混合攪拌し、一定時間静置した後、混合液を観察して溶解又は分散程度又は水/非水界面への局在を目視等で確認する。
【0039】
なお、本発明において疎水性イオン液体とは、大気条件で水と混和しにくく2相分離状態を形成するイオン液体を意味する。なお、大気条件で常時水と2相分離状態を形成している必要はなく、一定温度条件下等で水と2相分離状態を形成するイオン液体であってもよい。
【0040】
疎水性イオン液体としては、特に限定されないが、例えば、カチオン種として、例えばアルキル置換イミダゾリウム塩、アルキル置換ピリジニウム塩、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第三級スルホニウム塩等が挙げられ、本発明の疎水性イオン液体としては、アルキル置換イミダゾリウム塩、アルキル置換ピリジニウム塩、第四級アンモニウム塩及び第四級ホスホニウム塩が好ましく、なかでもアルキル置換イミダゾリウム塩及び第四級ホスホニウム塩が好ましい。
【0041】
疎水性イオン液体のカチオン種としては、イミダゾール環の2つの窒素原子が同一又は相異なるアルキル基と結合したイミダゾリウムカチオン、ピリジン環上の窒素原子がアルキル基と結合したピリジニウムカチオン、同一または相異なる4つのアルキル基が窒素原子に結合したアンモニウムカチオン、同一または相異なる4つのアルキル基がリン原子に結合したホスホニウムカチオン、同一または相異なる3つのアルキル基がイオウ原子に結合したスルホニウムカチオンなどが挙げられる。本発明のイオン液体として好ましいカチオン種としては、イミダゾール環の2つの窒素原子が、同一又は相異なるアルキル基と結合したイミダゾリウムカチオン、ピリジン環上の窒素原子がアルキル基と結合したピリジニウムカチオン、同一または相異なる4つのアルキル基が窒素原子に結合したアンモニウムカチオンなどが挙げられ、より好ましいカチオン種としては、イミダゾール環の2つの窒素原子が、同一又は相異なるアルキル基と結合したイミダゾリウムカチオンが挙げられる。なお、これらのカチオン種におけるアルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキル基、好ましくは1〜10の直鎖状のアルキル基が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基などが挙げられる。
【0042】
疎水性イオン液体のアニオン種としては、例えば、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドアニオンなどのビス(パーフルオロアルカン)スルホンイミドアニオン、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、アルカンスルホネートアニオン、パーフルオロアルカンスルホネートアニオンなどが挙げられる。
【0043】
疎水性イオン液体は、これらのアニオン種と前記したカチオン種を適宜組み合わせてなるものである。例えば、イミダゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、イミダゾリウムテトラフルオロボレート、塩化イミダゾリウム、臭化イミダゾリウム、ヨウ化イミダゾリウム、イミダゾリウムアルカンスルホネート;ピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、ピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、ピリジニウムテトラフルオロボレート、塩化ピリジニウム、臭化ピリジニウム、ヨウ化ピリジニウム、ピリジニウムアルカンスルホネート;アンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、アンモニウムヘキサフルオロホスフェート、アンモニウムテトラフルオロボレート、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、アンモニウムアルカンスルホネート;ホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ホスホニウムテトラフルオロボレート、塩化ホスホニウム、臭化ホスホニウム、ヨウ化ホスホニウム、ホスホニウムアルカンスルホネートなどが挙げられる。
【0044】
なお、本発明の前記したイオン液体は、公知の方法により製造することもできるし、商業的にも入手が可能である。
【0045】
(融合タンパク質)
本発明の融合タンパク質は、1種又は2種以上の所望のペプチド鎖と、本ペプチドのペプチド鎖(以下、集積用ペプチド鎖という。)と、を備えることができる。本発明の融合タンパク質は、集積用ペプチド鎖をその一部に備えるため、所望のペプチドに対して自己集積能を付与することができる。なお、融合タンパク質の要素としての集積用ペプチド鎖には、上記した本ペプチドの全ての実施態様を含むものとする。
【0046】
本融合タンパク質における所望のペプチド鎖としては特に限定されない。アミノ酸残基が10個以下程度のペプチドであってもよいし、数十から数百のペプチドであってもよい。こうした所望のペプチド鎖としては、セルラーゼをはじめとする酵素、セルロース結合ペプチド(ドメイン)、抗体等の各種タンパク質が挙げられる。なお、セルラーゼは、セルロースをグルコースにまで加水分解するのに作用する各種の酵素の総称である。セルラーゼとしては、狭義には、β1,4エンドグルカナーゼ(EC3.2.1.4)、グルカン1,4−βグルコシダーゼ(EC3.2.1.74)、セルロース1,4−βセロビオシダーゼ(EC3.2.1.91)、βグルコシダーゼ(EC3.2.1.21)等が挙げられる。また、セルラーゼは、天然由来であっても人工的に改変されたものであってもよい。天然由来のものとしては、特に限定しないが、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)などのClostridium属、Trichoderma reesei等のTrichoderma属、Aspergillus oryzaeや、Aspergillus niger等のAspergillus属、及びPhanerocaete chrysosporiumなどの白色腐朽菌等に由来のセルラーゼなどを好ましく用いることができる。また、例えば、Pyrococcus属に代表される超好熱性古細菌由来のセルラーゼであってもよい。
【0047】
本融合タンパク質における、所望のペプチドのペプチド鎖に対する集積用ペプチド鎖の連結形態は、所望のペプチド鎖に対する自己集積能が可能である限り、特に限定されない。連結形態としては、例えば、所望のペプチドのN末端及び/又はC末端に付与することが挙げられる。いずれの末端に連結するかは、所望のペプチドの機能やイオン液体への親和性付与程度によって適宜決定される。所望のペプチド鎖のN末端及びC末端の双方に付与されてもよい。また、所望のペプチドのペプチド鎖に対して、本ペプチド鎖は、かならずしも直接結合されていなくてもよい。例えば、適当なリンカーを介して結合されていてもよい。このようなリンカーとしては、例えば、公知の各種ペプチド又はその誘導体を用いることができる。
【0048】
本融合タンパク質は、従来とは異なり集積用ペプチド鎖により自己集積能が付与又は増強されているため、化学的な修飾によらず遺伝子工学的な手法により一挙に取得することができる。また、ペプチド鎖の修飾によって自己集積能を付与するため、所望のペプチドの本来の機能を損なわない。さらに、ペプチド鎖による修飾のため、所望のペプチド鎖のN末端及びC末端などの末端部分への選択的修飾が可能である点も有利である。
【0049】
このような融合タンパク質は、ペプチド鎖の長さにもよるが、化学合成又は遺伝子工学的に合成することができる。遺伝子工学的手法については、例えば、融合タンパク質をコード化したDNAを発現ベクター等を用いて大腸菌などの宿主に導入し形質転換して当該形質転換体を培養することにより製造してもよい。また、無細胞合成系等により合成する手法が挙げられる。このような人工的なタンパク質の合成手法は当業者において周知であるほか、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 3nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,2001(以下、モレキュラークローニング第3版と略す)又は、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)を適宜参照して合成することができる。
【0050】
なお、融合タンパク質における所望のペプチド鎖及び集積用ペプチド鎖は、それぞ適宜化学修飾されていてもよい。化学修飾の形態は特に限定しないが、例えば、リン酸化、アミド化、アセチル化、スクシニル化、ビオチニル化、硫酸化、ラベル化等適宜孔公知の化学修飾態様から選択することができる。
【0051】
(発現用コンストラクト)
本発明の発現用コンストラクトは、本発明の融合タンパク質のアミノ酸配列をコードするDNAを含むことができる。本発明の発現用コンストラクトによれば、本発明の融合タンパク質を効率的に大量生産することができる。また、発明の発現用コンストラクトは、集積化剤を生産するための発現用コンストラクトの形態とすることもできる。すなわち、本ペプチドをコードするDNAを含む、DNAコンストラクトとすることができる。なお、ここで本ペプチドは、上記した各種全ての実施態様を含むものである。この形態の発現用コンストラクトによれば、本ペプチドを効率的に大量生産することができる。このため、このペプチドを他のキャリアに担持させる場合に有利である。
【0052】
発現用コンストラクトは、通常、宿主で作動可能なプロモーターほか、ターミネーターやエンハンサー等、宿主に応じて適切な発現用のコンポーネントを含むことができる。また、形質転換体を選択するためのマーカー遺伝子を含めることができる。さらに、宿主染色体に対する導入形態を採用する場合には、宿主染色体への相同組換えを可能とする相同領域を備えることができる。その他、発現形態に応じて適切なコンポーネントを備えることができる。発現用コンストラクトの形態は特に限定しないで、その利用形態、すなわち、遺伝子導入手法及び遺伝子に応じた形態を採ることができる。このようなコンストラクトの構築は当業者に周知であるほか、モレキュラークローニング第3版と略すカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーを適宜参照して作製することができる。
【0053】
(タンパク質集積体)
本明細書に開示されるタンパク質集積体は、本明細書に開示される融合タンパク質を構成単位として含むことができる。本集積体は、複数の融合タンパク質が集積されている。複数の融合タンパク質における所望のペプチド鎖及び本ペプチドは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。本集積体は、全体として2種類以上の所望のペプチド鎖が同一の本ペプチド所望のペプチド鎖によって集積されたものであってもよい。本集積体によれば、所望のペプチド鎖が集積用ペプチド鎖によって集積されているため、所望のペプチド鎖を局所的に高濃度化することができる。また、所望のペプチド鎖を複数種類組み合わせることで、複数種類のペプチド鎖による機能の相乗効果あるいは機能の増強効果を得ることができる。
【0054】
本タンパク質集積体における、融合タンパク質の集積形態は特に限定しない。例えば、球状、層状、棒状等の各種ミセル形態をとることができる。本タンパク質集積体は、こうした集積形態を、所望のペプチド鎖が機能する媒体中で取ることができる。こうした媒体としては、典型的には、水性媒体が挙げられる。集積用ペプチド鎖は、疎水性相互作用又は環構造のスタッキング作用により相互に自己組織化するからである。水性媒体としては、水、水と水に対して相溶性のある有機溶媒との混液が挙げられる。こうした水性媒体は、本融合タンパク質が溶解できるような水性媒体であればよい。また、所望のペプチド鎖の機能等を考慮して、pHや塩濃度を適宜調整することができる。また、水性媒体を構成しうる有機溶媒としては、特に限定しないが、例えば、炭素数が1〜4程度の低級アルキル基を備えるアルコール等が挙げられる。
【0055】
なお、本タンパク質集積体は、ゲル濾過クロマトグラフィーによるサイズ分画、動的光散乱(DLS)による分子サイズ測定などで確認することができる。DLSによる分子サイズの測定にあたっては、試料溶液は、分子サイズを測定するために適切な濃度に適宜調整すればよく、例えば、融合タンパク質濃度として1μM程度とすることができる。
【0056】
(タンパク質集積体の生産方法)
本明細書に開示されるタンパク質の集積体の生産方法は、本明細書に開示される融合タンパク質を準備する工程と、前記融合タンパク質を構成単位として含む集積体を形成する工程と、を備えることができる。本明細書に開示されるタンパク質集積体の生産方法によれば、所望のペプチド鎖を集積化して、高機能化したり機能を増強したりすることができる。また、複数の所望のペプチド鎖による相乗効果も得ることができるようになる。
【0057】
本融合タンパク質の準備工程は、既に説明した実施態様で本融合タンパク質を作製等することにより準備することができる。また、融合タンパク質の集積化は、例えば、適当な水性媒体の存在下に本融合タンパク質を配することで、集積用ペプチド鎖の自己組織化の結果、本融合タンパク質を集積させることができる。
【0058】
(タンパク質集積体を用いた各種有用物質の生産方法)
本明細書に開示される有用物質の酵素的生産方法は、所望のペプチド鎖として酵素を含む融合タンパク質を構成単位として含む本タンパク質集積体積体を用いて、前記酵素の反応により有用物質を生産する工程を備えることができる。本生産方法によれば、局所的な酵素濃度高めることができるとともに、複数種類の酵素やペプチド鎖の相乗作用により、高効率な酵素反応による有用物質の生産が可能となる。
【0059】
有用物質としては、特に限定しないで、公知の酵素によって生産できる各種の物質が挙げられる。例えば、本タンパク質集積体に酵素としてセルラーゼを含める場合には、セルロースを糖化して得られるグルコース等が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0061】
以下の表に示す各種ペプチド(実施例試料1〜17、比較例試料1〜11)を合成し、フルオレセインでラベルした。このラベル化ペプチド約0.2mgを採取し、以下のイオン液体70μlにそれぞれ溶解させ、その後、210μlの蒸留水を加えてよく攪拌した。その後、遮光して約16時間静置した。その後、液を目視で観察するとともに写真撮影を行った。結果を表2及び図1〜図4に示す。
【0062】
【表1】






【0063】
【表2】



【0064】
表2及び図1〜図4に示すように、実施例試料1〜17は、いずれも少なくとも1種の疎水性イオン液体につき、確実に水との2相界面に局在するかあるいはイオン液体に分配された。これに対して、比較例試料1〜11は、水相に分配するかまたはイオン液体に沈殿した。
【0065】
以上のことから、セリン及びリジンから選択されるアミノ酸種とトリプトファン、チロシン及びフェニルアラニンから選択されるアミノ酸種が、ペプチドの疎水性イオン液体への親和性付与又は増強に有効であることがわかった。また、アラニン、グリシン、ヒスチジン及びアスパラギン酸などは有効でないことがわかった。さらに、これらの残基数や配列にも一定の規則性があることがわかった。少なくとも7残基又は8残基であり、好ましくは9残基以上であることがわかった。また、実施例試料のなかでも、実施例試料1、2、8、11及び12が好ましい親和性を示しており、特に、実施例試料1、2、11及び12が好ましいことがわかった。
【実施例2】
【0066】
本実施例では、イオン液体に親和性のペプチド鎖(SWWWWSWWWW:配列番号29)を末端(C末端)に備える融合タンパク質を作製し、イオン液体に対する親和性を評価した。
【0067】
図5に示すコンストラクト(挿入配列:配列番号30)を、pET−20B(Merck)のNde I−Hind IIIにクローニングした。新たに構築したコンストラクトを、BL21(DE3)(Merck)のコンピテントセルに形質転換した。アンピシリン(50μg/ml)含有LB選択培地上に生えてきたコロニーを、アンピシリン(50μg/ml)含有LB液体培地に植菌し30℃で一昼夜前培養した。なお、LB培地は、1Lあたりbacto-tryptone16g、yeast extract10g、NaCl5gを含有している。
【0068】
次いで、アンピシリン(100μg/ml)含有2×YT液体培地に対して前培養液を1/80量添加して、30℃でOD600=0.6となるまで培養後、IPTGを終濃度1mMとなるように加えて、さらに6時間培養した。なお、2×YT培地は、1Lあたりbacto-tryptone16g、yeast extract10g、NaCl5gを含有している。
【0069】
培養後、菌体を遠心分離にて集菌した後、50mM酢酸緩衝液(pH5.0)/500mM NaClに溶解し、超音波にて菌体を破砕した。その後、遠心分離を行い、上清と沈殿とをそれぞれ回収して、SDS-PAGEを行い、不溶画分に意図した融合タンパク質が存在することを確認した。
【0070】
不溶画分から融合タンパク質を回収するために、以下の手順でタンパク質の可溶化を行った。すなわち、不溶画分の沈殿にタンパク質の可溶化溶液(2MGd−HCl、1M L−Arg、50mM Tris−HCl(pH8.0)、200mM NaCl)を加えてよく攪拌した。37℃で12時間放置後、透析バッファー(50mM Tris−HCl(pH8.0)、200mMNaCl)を用い、4℃、6時間で、合計三回透析を行い、融合タンパク質を回収した。
【0071】
透析後のタンパク質溶液100μlと、疎水性イオン液体(1-Ethyl-3-methylimidazolium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)100μlを、1.5mlチューブに入れてよく混合した後、軽く遠心分離した。遠心後、タンパク質溶液と疎水性イオン液体との混合液は、上相が水相であり、下相がイオン液体となった。遠心後の液体にチューブの下方からUV光を照射してGFPの緑色蛍光を発光させて蛍光の分布を確認した。なお、コントロールとして通常のGFPタンパク質についても同様に操作した。結果を図6に示す。
【0072】
図6に示すように、融合タンパク質に由来する蛍光は、水と疎水性イオン液体との界面に局在していた。これに対し、通常のGFPタンパク質に由来する蛍光は、水相(上相)に分布していた。以上のことから、本発明のイオン液体親和性ペプチド鎖は、それを一部に備えるタンパク質にイオン液体親和性を付与できることがわかった。
【実施例3】
【0073】
(コンストラクトの構成)
実施例2と同様に、図5に示すコンストラクトをpET-20b(Merck)のNdeI-HindIII部位にクローニングした。
【0074】
(タンパク質の大量発現)
ついで、コンストラクトを大腸菌BL21(DE3)(Merck)のコンピテントセルに形質転換した。LB/Amp(50mg/ml)選択培地上に生えてきたコロニーを、LB/Amp(100mg/ml)液体培地に植菌し30℃で一昼夜前培養した。LB培地組成は、1lあたり bacto-tryptone 10g, yeast extract 5g, NaCl 10gとした。ついで、2×YT/Amp(100mg/ml)液体培地に対して前培養液を1/80量加えて、30℃でOD600=0.6まで培養後、IPTGを終濃度1mMになるように加え、さらに6時間培養した。なお、2×YT 培地組成は、1lあたりbacto-tryptone 16g, yeast extract 10g, NaCl 5gとした。その後、菌体を遠心で集菌した後、50mM酢酸緩衝液(pH5.0)/500mM NaClに溶解し、菌体の超音波破砕を行い、遠心分離し、上清と沈殿(不溶画分)に分離し、SDS-PAGEを行った。結果を図7に示す。
【0075】
(タンパク質の可溶化)
不溶画分からタンパク質を回収するために、以下の手順でタンパク質の可溶化を行った。すなわち、上記の不溶画分の沈殿に可溶化溶液(2M Gd-HCl, 1M L-Arg, 50mM Tris-HCl (pH8.0), 200mM NaCl)を加えてよく攪拌し、37℃で12時間静置後、透析バッファー(50mM Tris-HCl (pH8.0), 200mM NaCl)を用い、4℃・6時間で、三回透析を行った。
【0076】
(ゲル濾過クロマトグラフィーによるサイズ分画)
その後、Sterivex(MILLIPORE)を使用して、透析液をろ過し、HiTrap Sephacryl-400HR(GEヘルスケア)を用い、バッファー(50mM Tris-HCl, 200mM NaCl(pH8.0))、流速0.8mL/min、4℃で、ゲル濾過を行った。各フラクションに対し、UV照射を行い、GFP蛍光の確認を行い、蛍光を確認した結果を図8に示す。
【0077】
図8に示すように、タグ(集積用ペプチド鎖)を付与した融合GFPは、12〜24量体を形成していることが強く、示唆された。
【0078】
(動的光散乱測定[DLS; Dynamic light Scattering]による超分子サイズの測定)
動的光散乱(DLS)によって、タグを付与した融合GFPのサイズを評価した。DLS測定装置として、Zetasizer Nano ZS dynamic light scattering spectrophotometer(Malvern社製)を用いた。なお、タンパク質の屈折率を1.450、溶液の粘度及び屈折率を、それぞれ0.8881mPa・s及び1.330として行った。試料は、図8のゲルろ過クロマトグラフィーにおける180ml〜181mlの画分の水溶液を用いて、その水溶液を12mm角ポリスチレンセルに入れて測定を行った。結果を図9に示す。
【0079】
図9に示すように、得られたタンパク質は、平均直径21nmの超分子を形成していることが示された。
【0080】
以上のゲル濾過とDLSの結果より、ペプチド「SWWWWSWWWW」を融合したタンパク質(GFP)は、自己組織的に比較的大きな多量体(12〜24量体)を形成することがわかった。
【配列表フリーテキスト】
【0081】
配列番号1〜29:合成ペプチド
配列番号30:融合タンパク質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のアミノ酸残基(a)及び(b):
(a)第1のアミノ酸残基;セリン及びリジンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸残基
(b)第2のアミノ酸残基;トリプトファン、チロシン及びフェニルアラニンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸残基、
とをそれぞれ備えるペプチド鎖を含むペプチドである、タンパク質集積化剤。
【請求項2】
前記ペプチド鎖は、前記第1のアミノ酸残基は2残基以上連続して備える第1の末端部分と、
前記第2のアミノ酸残基を2残基以上連続して備える第2の末端部分と、を備える、請求項1に記載のタンパク質集積化剤。
【請求項3】
前記ペプチド鎖は、前記第1のアミノ酸残基及び前記第2のアミノ酸残基のみからなる残基数が9個以上13個以下のアミノ酸配列を備える、請求項1又は2に記載のタンパク質集積化剤。
【請求項4】
前記ペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列(a)及び(b)
(a)配列番号1〜17及び29で表されるアミノ酸配列
(b)配列番号1〜17及び29で表されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸の置換、欠失、付加及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質集積化剤。
【請求項5】
前記(b)において、置換、挿入及び付加されるアミノ酸は、セリン(S)、リジン(K)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)及びフェニルアラニン(F)からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項4又は5に記載のタンパク質集積化剤。
【請求項6】
前記(b)において配列番号1、3〜7、9、10、11及び12で表されるアミノ酸配列中のセリン(S)の1個又は2個以上がリジンで置換されている、請求項4に記載のタンパク質集積化剤。
【請求項7】
前記(b)において配列番号1、3〜8、11及び12で表されるアミノ酸配列中のトリプトファン(W)の1個又は2個以上がチロシン(Y)及びフェニルアラニン(F)で置換されている、請求項4に記載のタンパク質集積化剤。
【請求項8】
1種又は2種以上の所望のペプチド鎖と、
請求項1〜7のいずれかに記載のタンパク質集積化剤と、
を備える、融合タンパク質。
【請求項9】
タンパク質集積体であって、
請求項9に記載の融合タンパク質を構成単位として含む、集積体。
【請求項10】
タンパク質の集積体の生産方法であって、
請求項9に記載の融合タンパク質を準備する工程と、
前記融合タンパク質を構成単位として含む集積体を形成する工程と、
を備える、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−68625(P2011−68625A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223331(P2009−223331)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】