説明

ターゲット体、コンクリート構造物の撮像方法

【課題】撮像装置による変位測定対象としてのコンクリート構造物が巨大である場合においても、所望の測定位置に容易に配置できる撮像用のターゲット体を提供する。
【解決手段】撮像装置7による変位測定対象としてのコンクリート構造物中に埋設される撮像用のターゲット体1において、セメント系材料からなる基板11と、基板11の表面上に形成されたマーカー12と、基板11の表面上において、マーカー12の周囲でかつマーカー12から離間させて形成されてなり、両面貼着機能を有する遮蔽材13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
撮像装置による変位測定対象としてのコンクリート構造物中に埋設される撮像用のターゲット体、並びにそのターゲット体を利用したコンクリート構造物の撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、防災のための法面の挙動監視やトンネル内空変位計測等に撮像装置によるデジタル画像の撮像を利用した変位測定が行われている。
【0003】
この撮像装置による変位測定では、変位測定対象としてのコンクリート構造物中に所要数のターゲット(計測点)を設置し、そのターゲットを撮像装置等により自動的に撮像し、得られたデジタル画像を解析することにより、ターゲットの経時変位を測定するものである。
【0004】
近年においては、撮像装置により少なくとも任意の2地点からターゲットを撮影して、視差の異なる2枚以上の画像を取得するとともに、この画像を写真測量理論に基づいて解析(特許文献1〜3)し、ターゲットの3次元座標を求めることを繰り返し行うことにより、経時変位を測定する技術も提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】特開2004−325073号公報
【特許文献2】特開2007−198867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の撮像装置による変位測定では、撮像装置による変位測定対象としてのコンクリート構造物が巨大である場合において、上述したターゲットの設置が高所作業になり困難を伴う場合もある。また、コンクリート構造物は、一般的には隅角部において面取りが行われているため、所望の測定位置に精度よくターゲットを設置するのは困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、撮像装置による変位測定対象としてのコンクリート構造物が巨大である場合においても、所望の測定位置に容易に配置できる撮像用のターゲット体、並びにそのターゲット体を利用したコンクリート構造物の変位を測定し、又はその形状を計測可能な撮像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するために、撮像装置による変位測定対象又は形状計測対象としてのコンクリート構造物中に埋設される撮像用のターゲット体において、セメント系材料からなる基板と、上記基板の表面上に形成されたマーカーと、上記基板の表面上において、上記マーカーの周囲でかつ上記マーカーから離間させて形成されてなり、両面貼着機能を有する遮蔽材とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するために、セメント系材料からなる基板と、上記基板の表面上に形成されたマーカーと上記マーカーの周囲でかつ上記マーカーから離間させて形成されてなり両面貼着機能を有する遮蔽材とを備えるターゲット体を、その遮蔽材を介してコンクリート打設前の型枠内側における所定位置に貼着し、上記型枠内にコンクリートを打設することにより、上記型枠内側に貼着された上記ターゲット体を当該コンクリートで埋設し、上記ターゲット体がその埋設されたコンクリートにより固定された後、上記コンクリート並びに上記ターゲット体から上記型枠を撤去し、上記コンクリートに固定された上記ターゲット体における、上記コンクリート表面から露出しているマーカーを、撮像装置により時系列的に撮像することにより、その変位を測定し、又はその形状を計測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上述した構成からなるターゲット体をコンクリート打設前の型枠の内側における所定位置に貼着することにより仮固定する。そして、この型枠内にコンクリートを打設する。その結果、型枠の内側に仮固定されているターゲット体は、この打設されたコンクリートにより埋設され、このとき遮蔽材の存在により、打設されたコンクリートがマーカーに向けて浸入してしまうのを防止することが可能となる。また、仮に遮蔽材の隙間からコンクリートが内部に浸入しても、上述したように、マーカーと、遮蔽材との間が離間しており、ちょうど貼着された型枠との間で空間が形成されている。これにより、空間に浸入したコンクリートがマーカーに到達するのを阻止することができ、マーカーが汚れてしまうのを防止することが可能となり、撮像時の明確なコントラストを維持することが可能となる。
【0010】
また、型枠内に打設されたコンクリートは、時間の経過とともに固化し、これに伴い、当該コンクリートに固定されることになる。これにより、コンクリート並びにターゲット体から型枠を撤去した後、コンクリート並びにターゲット体が外部に直接露出することになり、ターゲット体におけるマーカーは、直接外部に露出することになり、これを撮像装置により時系列的に撮像することにより、コンクリート構造物の所定位置の変位を求めることが可能となる。このため、極めて施工労力を簡略化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、撮像装置による変位測定対象又は形状計測対象としてのコンクリート構造物中に埋設される撮像用のターゲット体について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1(a)は、本発明を適用したターゲット体1を上側から視認した斜視図を、また図1(b),(c)は、それを下側から視認した斜視図を、また図2はこれらの側面図を示している。ターゲット体1は、基板11と、この基板11の表面11a上に形成されたマーカー12及び遮蔽材13とを備えている。また、このターゲット体1は、裏面11bにおいて固定手段としてのアンカー部材15又は付着処理体17が設けられている。ちなみに、図1(b)、図2(a)は、固定手段としてアンカー部材15を用いた例を、また、図1(c)、図2(b)は、固定手段として付着処理体17を用いた例を示している。このアンカー部材15又は付着処理体17の構成は必須ではなく、省略するようにしてもよい。
【0013】
基板11は、例えばモルタル等に代表されるセメント系材料により構成されている。この基板11は、略円板形で構成されている場合を例に挙げているがこれに限定されるものではなく、いかなる形状で構成されていてもよい。基板11のサイズについても限定されるものではないが、作業員の手で所望位置に配設できる程度のサイズで構成されていることが望ましく、できれば作業員の片手に収まる程度の大きさである1〜数十cm程度の径で構成されることが望ましい。
【0014】
このマーカー12は、撮像装置による撮影対象とされることから、少なくとも基板11との間で視覚的なコントラストが現れる輝度からなる塗料で構成されていることが望ましい。このマーカー12を構成する材料として、無機材料で構成してもよいし、また反射塗料を用いるようにしてもよい。この反射塗料としては、例えばガラスビーズ入りの塗料を用いるようにしても良い。この例としては、住友スリーエム製のハイゲイン反射シート7610を用いるようしてもよい。これを用いることにより、再帰性反射輝度値は、入射角が大きくなっても高くすることができることから、ターゲットを明確に捉えることが可能となる。
【0015】
何れの場合においても、このマーカー12について塗料で構成する場合には、基板11の表面11a上において塗布することにより、これを付着させる。ちなみに、この形成すべきマーカー12の形状は、6〜10mm径の円形で構成する場合を想定しており、マーカー12の形成位置は、基板11のほぼ中央を想定しているが、これに限定されるものではない。
【0016】
遮蔽材13は、両面貼着機能を有する材料で構成されており、例えば両面粘着テープ等からなる。遮蔽材13は、マーカー12と同様に基板11の表面11aにおいて形成されるが、その形成位置は、マーカー12の周囲である。即ちこの遮蔽材13は、マーカー12を囲むようにして形成される。また、この遮蔽材13は、マーカー12に対して接触させるのではなく、離間させて形成される。その結果、マーカー12と遮蔽材13との間には、基板11の表面11aが直接露出することになる。このマーカー12と遮蔽材13との間に間隔が空いていることにより、マーカー12を塗布する際にこれが遮蔽材13へはみ出してしまうこともなくなり、コントラストを明確化することができる。また、この遮蔽材13は、同心円状のリングで構成されていてもよいが、これに限定されることなく、いかなる形状のリングで構成されていてもよい。ちなみに、遮蔽材13の膜厚は、図2に示すように、マーカー12の膜厚とほぼ同一か、又はマーカー12の膜厚以上で構成されている必要がある。
【0017】
アンカー部材15は、基板11の裏面11bの略中央から突出された部材により構成されている。アンカー部材15は、基板11と同様にセメント系材料で構成されていてもよく、かかる場合には、基板11と一体成形されていてもよい。
【0018】
付着処理体17は、コンクリートとの間で付着性を発揮する材料で構成されている。
【0019】
次に、上述した構成からなるターゲット体1を利用したコンクリート構造物の撮像方法について、図3、4を用いて詳細に説明をする。ちなみに、この図3は、固定手段としてアンカー部材15を用いた例を、また、図4は、固定手段として付着処理体17を用いた例を示している。
【0020】
先ず、図3(a),図4(a)に示すように、ターゲット体1をコンクリート打設前の型枠2の内側2bにおける所定位置に貼着する。この貼着は、遮蔽材13を介して行う。遮蔽材13が両面粘着テープで構成されている場合には、これを型枠2の内側2bの所望位置に貼り付けることになる。これにより、ターゲット体1は、型枠2の内側2bに仮固定されることになる。
【0021】
次に、図3(b),図4(b)に示すように、型枠2内にコンクリート3を打設する。その結果、型枠2の内側2bに仮固定されているターゲット体1は、この打設されたコンクリート3中により埋設されることになる。このとき、遮蔽材13により、打設されたコンクリート3がマーカー12に向けて浸入してしまうのを防止することが可能となる。また、仮に遮蔽材13の隙間からコンクリート3が内部に浸入しても、上述したように、マーカー12と、遮蔽材13との間が離間しており、ちょうど貼着された型枠2との間で空間5が形成されている。この空間5の存在により、空間5に浸入したコンクリート3がマーカー12に到達するのを阻止する役割を担うこととなる。その結果、マーカー12が浸入してきたコンクリート3により汚れることがなくなり、撮像時の明確なコントラストを維持することが可能となる。
【0022】
型枠2内に打設されたコンクリート3は、時間の経過とともに固化する。その結果、ターゲット体1がこのコンクリート3の固化に伴い、当該コンクリート3に固定されることになる。このとき、ターゲット体1に設けられたアンカー部材15がコンクリート3と係合することにより強固に固定され、或いはターゲット体1に設けられた付着処理体17がコンクリート3に対して固定されることになる。
【0023】
次に、図3(c),図4(c)に示すように、コンクリート3並びにターゲット体1から型枠2を撤去する。型枠2の撤去時は、少なくともコンクリート3が固化して、ターゲット体1を強固に固定された状態の後とする。その結果、コンクリート3並びにターゲット体1が外部に直接露出することになる。特にこのターゲット体1におけるマーカー12は、型枠2の撤去前において、型枠2に面していたことから、型枠2の撤去後は直接外部に露出することになる。ちなみに、この型枠2を撤去する際には、上述したようにターゲット体1は、コンクリート3に対して強固に固定されている状態にあることから、型枠2の撤去とともにターゲット体1も取り外されることなく、単に遮蔽材13から型枠2が取れるのみで、ターゲット体1自体はそのままコンクリート3内に埋設固定されたままとなる。ちなみに、この型枠2の撤去時において、遮蔽材13も一緒に取れてしまう場合もあれば、そのままターゲット体1に付着したままの場合もありえる。
【0024】
そして、コンクリート3の表面から露出したマーカー12を、撮像装置7により撮像を行う。この撮像装置7によるマーカー12の撮像は、動画像、静止画像いずれでもよく、また間欠的に撮像してもよいし、連続して撮像するようにしてもよい。何れのケースにおいても、この撮像装置7による撮像は、時系列的に、言い換えれば時の経過に応じて複数回行う必要がある。このようにして撮像装置7により撮像したデジタル画像をパーソナルコンピュータ等を介して事後的に解析し、マーカー12の変位を求めることにより、コンクリート構造物の所定位置の変位を求めることが可能となる。
【0025】
本発明を適用したコンクリート構造物の撮像方法では、予め型枠2の内側2bにターゲット体1を仮固定しておくのみで、残りは通常のコンクリート3の打設、型枠2の撤去を行うのみで、これを所望位置に固定することが可能となる。このため、極めて施工労力を簡略化させることができる。特に撮像装置による変位測定対象としてのコンクリート構造物が巨大である場合においても、ターゲット1体の取り付けを容易に行うことが可能となり、ターゲット体1の設置が高所作業になることも無くなり、施工が困難になるのを防止することができる。また、コンクリート構造物は、一般的には隅角部において面取りが行われているが、上述した方法によれば、所望の測定位置に精度よくターゲットを設置することも可能となる。
【0026】
特に本発明では、所望の箇所にターゲット体1を確実かつ高精度に設置できることから、特に複数台の撮像装置を利用して、三角測量の原理に基づいてターゲットの3次元座標を求める際において特に有用となる。
【0027】
マーカー12を複数の撮像装置7により時系列的に間隔をおいて撮像することにより、その変位を測定するようにしてもよい。即ち、1台の撮像装置7により数回の撮像を行うことになる。理論的には1台の撮像装置7により2回の撮像でよいが、基本的には4回の撮像であることが多く、一般的には4回以上で行われることが望ましい。
【0028】
なお、上述した実施の形態では、あくまで撮像装置7によりコンクリート構造物の変位を測定する場合を例にとり、説明をしたが、これに限定されるものではない。本発明を適用したコンクリート構造物の撮像方法では、上述したターゲット体1を用いることにより、コンクリート構造物の形状を計測するようにしてもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用したターゲット体を上側から視認した斜視図である。
【図2】本発明を適用したターゲット体の側面図である。
【図3】ターゲット体を利用したコンクリート構造物の撮像方法について説明するための図である。
【図4】ターゲット体を利用したコンクリート構造物の撮像方法について説明するための他の図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ターゲット体
2 型枠
3 コンクリート
7 撮像装置
11 基板
12 マーカー
13 遮蔽材
15 アンカー部材
17 付着処理体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置による変位測定対象又は形状計測対象としてのコンクリート構造物中に埋設される撮像用のターゲット体において、
セメント系材料からなる基板と、
上記基板の表面上に形成されたマーカーと、
上記基板の表面上において、上記マーカーの周囲でかつ上記マーカーから離間させて形成されてなり、両面貼着機能を有する遮蔽材とを備えること
を特徴とするターゲット体。
【請求項2】
上記遮蔽材は、両面粘着テープであり、
上記マーカーは、反射塗料であること
を特徴とする請求項1記載のターゲット体。
【請求項3】
上記基板の裏面に形成され、埋設される上記コンクリート構造物に固定されるための固定手段を更に備え、
上記固定手段は、アンカー、又は付着処理が施された材料により構成されていること
を特徴とする請求項1又は2記載のターゲット体。
【請求項4】
セメント系材料からなる基板と、上記基板の表面上に形成されたマーカーと上記マーカーの周囲でかつ上記マーカーから離間させて形成されてなり両面貼着機能を有する遮蔽材とを備えるターゲット体を、その遮蔽材を介してコンクリート打設前の型枠内側における所定位置に貼着し、
上記型枠内にコンクリートを打設することにより、上記型枠内側に貼着された上記ターゲット体を当該コンクリートで埋設し、
上記ターゲット体がその埋設されたコンクリートにより固定された後、上記コンクリート並びに上記ターゲット体から上記型枠を撤去し、
上記コンクリートに固定された上記ターゲット体における、上記コンクリート表面から露出しているマーカーを、撮像装置により時系列的に撮像することにより、その変位を測定し、又はその形状を計測すること
を特徴とするコンクリート構造物の撮像方法。
【請求項5】
上記マーカーを複数の撮像装置により時系列的に間隔をおいて撮像することにより、その変位を測定し、又はその形状を計測すること
を特徴とする請求項4記載のコンクリート構造物の撮像方法。
【請求項6】
アンカー、又は付着処理が施された材料により構成されている固定手段を介して上記コンクリートにより固定された後、上記型枠を撤去すること
を特徴とする請求項4又は5記載のコンクリート構造物の撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−91300(P2010−91300A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258973(P2008−258973)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000103769)オリエンタル白石株式会社 (136)