説明

ターニング工具

【課題】 軸継手の点検などを容易かつ適正に行うことが可能なターニング工具を提供する。
【解決手段】棒状の工具本体21の一端部に、軸継手103に係合する係合部22を備えたターニング工具2であり、係合部22を軸継手103に係合させた状態で工具本体21を回動させることで軸継手103が回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸継手を手動で回転させるためのターニング工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば火力発電においては、蒸気タービンを流れる蒸気と蒸気を復水する復水器との圧力差が大きいほど、蒸気は蒸気タービンを効率よく回転させることができ、発電効率も上昇する。このため、復水器内を真空(負圧)にするための真空ポンプが設置されている(例えば、特許文献1参照。)。この真空ポンプは、入力軸が電動機(モータ)の出力軸に接続され、電動機の回転に伴って入力軸が回転し、ブレード(回転翼)の回転などによって復水器内を真空にするものである。このような真空ポンプは、復水器内を真空にするものであるため、比較的大型(大容量)であり、これを駆動する電動機も大型のものとなっている。
【0003】
また、真空ポンプの入力軸と電動機の出力軸との接続部である軸継手などを保護するために、図6、7に示すようなカップリングカバー100が配設されている。このカップリングカバー100は、断面が逆U字状で、軸101、102の長手方向に沿って延びている。そして、真空ポンプPの入力軸101と電動機Mの出力軸102および、軸継手103を上方から覆うように配設され、下端部が設置面にボルト104で固定(設置)されている。このようなカップリングカバー100は、大型の真空ポンプPの軸継手103などを保護するため、大型のものとなり、また重量物となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−281367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、設備の異常をより早期に発見するために設備を巡視する設備パトロールなどでは、設備の異常を目視や聴音によって発見、確認する場合がある。しかしながら、上記のようなカップリングカバー100が配設された真空ポンプPでは、軸継手103などがカップリングカバー100で覆われているため、異常の発見が目視では困難であったり、聴音では容易ではなかったり、あるいは手間と時間とを要していた。すなわち、カップリングカバー100と真空ポンプPとの隙間などから軸継手103などを覗き見るだけでは、異常を適正に発見することが困難であった。また、ボルト104を外して、大型で重量物であるカップリングカバー100を取り外して軸継手103などを見るには、手間と時間とを要していた。
【0006】
一方、保守作業などのために設備が長期間停止している場合には、軸101、102や軸継手103などに錆などの異常が発生している場合がある。このため、軸継手103などを手で回転させて異常の有無を確認する必要がある。そして、このような確認の際には、ボルト104を外して、大型で重量物であるカップリングカバー100を取り外し、軸継手103などを手で回転させなければならなかった。
【0007】
このように従来のカップリングカバーでは、軸継手の点検などに多くの時間と労力とを要していた。
【0008】
そこでこの発明は、軸継手の点検などを容易かつ適正に行うことが可能なターニング工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、軸継手を手動で回転させるためのターニング工具であって、棒状の工具本体の一端部に、前記軸継手に係合する係合部を備え、この係合部を前記軸継手に係合させた状態で前記工具本体を回動させることで前記軸継手が回転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、ターニング工具の係合部を軸継手に係合させ、例えば工具本体の他端部を回動させることで、てこの原理を利用して軸継手を回転させることができる。このため、直接手で軸継手を回転させる場合に比べて、容易に軸継手を回転させることができる。また、工具本体の長さを長くすることで、軸継手が遠くに位置する場合でも、容易に軸継手を回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態に係るカップリングカバーが配設された状態を示す正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】この発明の実施の形態に係るターニング工具を示す正面図である。
【図4】図3のターニング工具の係合部を軸継手に係合させた状態を示す斜視図である。
【図5】図3のターニング工具で軸継手を回転させている状態を示す正面図である。
【図6】従来のカップリングカバーが配設された状態を示す正面図である。
【図7】図6のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0013】
図1は、この発明の実施の形態に係るカップリングカバー1が配設された状態(後述する点検窓11を開けた状態)を示す正面図であり、図2は、図1のA−A断面図である。また、図3は、この発明の実施の形態に係るターニング工具2を示す正面図である。
【0014】
カップリングカバー1は、真空ポンプPの入力軸101と電動機Mの出力軸102および、入力軸101と出力軸102との接続部である軸継手103を上方から覆うようにして保護するカバーである。このカップリングカバー1は鋼板製で、断面が逆U字状であり、軸101、102の長手方向に沿って延びている。また、両下端部には水平方向に折り曲げられた設置部1aが形成され、この設置部1aには複数のボルト挿入孔(図示せず)が形成されている。そして、設置面(地面)に打たれたアンカーボルト104がボルト挿入孔に挿入され、締め付けられることで、カップリングカバー1が設置、固定されている。
【0015】
ここで、真空ポンプPは、火力発電所の復水器内を真空(負圧)にするためのポンプであり、電動機Mは真空ポンプPを駆動するためのモータである。この真空ポンプPは、復水器内を真空にするものであるため大型であり、これを駆動する電動機Mも大型のものとなっている。さらに、カップリングカバー1も、大型の真空ポンプPの軸継手103などをカバーするため、大型のものとなり、また重量物となっている。
【0016】
このようなカップリングカバー1の上部(逆U字の円弧側)には、開閉可能な点検窓11が設けられている。すなわち、カップリングカバー1の上部に、カップリングカバー1を正面から見て長方形の窓穴1bが形成され、この窓穴1bと同形状あるいはやや大きい形状の点検窓11が、丁番12を介して開閉可能に配設されている。この点検窓11つまり窓穴1bは、軸継手103および入力軸101と出力軸102とに対向して配設されている。さらに、点検窓11を開けた状態で、軸継手103および入力軸101と出力軸102とを目視できるとともに、軸継手103をターニング工具2などで手動で回転できるように、点検窓11の大きさと位置とが設定されている。また、点検窓11を閉じると、窓穴1bが密閉されるとともに、カップリングカバー1の外形上に沿うように点検窓11の外形状が設定されている。
【0017】
ターニング工具2は、軸継手103を手動で回転させるための工具であり、鉄鋼製で工具本体21と係合部22とを備えている。すなわち、丸棒状の工具本体21の一端部に、丸棒状の第1の係合部22aと第2の係合部22bとからなる係合部22が、工具本体21と一体的に形成されている。第1の係合部22aは、工具本体21の一端から、工具本体21の長手方向に対して垂直に延びるように形成されている。第2の係合部22bは、工具本体21の把持部(他端部)21a寄りから、工具本体21の長手方向に対して垂直でかつ第1の係合部22aと同方向(平行)に延びるように形成されている。また、第1の係合部22aと第2の係合部22bとの長さおよび配設位置(間隔)は、係合部22が軸継手103に係合するように設定されている。
【0018】
すなわち、この実施の形態では図4に示すように、軸継手103が円盤状で、外周縁に盤面に対して垂直に立ち上がった垂直縁部103aを有し、この垂直縁部103aから中心側に円環状の溝部103bが形成され、この溝部103b内にボルト、ナットが配設されている。そして、第1の係合部22aを溝部103b内に位置させ、第2の係合部22bを垂直縁部103aの外側に位置させて、第1の係合部22aと第2の係合部22bとで垂直縁部103aを挟持(把持)するように工具本体21の把持部21a側を回動させる。これにより、係合部22が軸継手103に係合(軸継手103を把持)し、この状態で工具本体21を軸101、102中心に所望の方向に回動させると、軸継手103が回転するものである。また、第1の係合部22aと第2の係合部22bとには、ゴム製でチューブ状の滑り止め23、24がそれぞれ装着され、垂直縁部103aを挟持しやすいようになっている。
【0019】
次に、このような構成のカップリングカバー1とターニング工具2の作用、およびこれらを使用した軸継手103などの点検方法について説明する。
【0020】
まず、通常時においては、カップリングカバー1の点検窓11を閉じておくことで、真空ポンプPの入力軸101と電動機Mの出力軸102と軸継手103とが保護される。また、設備パトロール時などでは、点検窓11を開けて、軸継手103や軸101、102を目視点検する。さらに、設備が長期間停止している場合などには、点検窓11を開けて窓穴1bからターニング工具2の係合部22側を挿入する。そして、上記のようにして係合部22を軸継手103に係合させて、図5に示すように、ターニング工具2で軸継手103を回転させながら、軸101、102や軸継手103に錆などの異常が発生しているか否かを点検する。点検後には、カップリングカバー1の点検窓11を閉じて、軸継手103などを保護するものである。
【0021】
以上のように、このカップリングカバー1とターニング工具2、およびこれらを使用した点検方法によれば、点検窓11を開けることで軸継手103などを目視できるため、カップリングカバー1全体を取り外したりすることなく、軸継手103の点検などを容易、迅速かつ適正に行うことができる。また、点検窓11の大きさ、位置が、軸継手103を手動で回転可能なように設定されているため、点検窓11を開けて手やターニング工具2を入れることで軸継手103を回転させることができる。
【0022】
さらに、ターニング工具2の係合部22を軸継手103に係合させ、工具本体21の把持部21a側を回動させることで、てこの原理を利用して軸継手103を回転させることができる。このため、直接手で軸継手103を回転させる場合に比べて、容易に軸継手103を回転させることができる。また、カップリングカバー1の大きさなどに応じて工具本体21の長さを長くすることで、軸継手103が窓穴1bから遠くに位置する場合でも、容易に軸継手103を回転させることができる。
【0023】
以上、この発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の態様では、点検窓11を軸継手103と軸101、102とに対向して配設しているが、軸継手103の形状、大きさや点検内容などに応じて、軸継手103のみに対向するように配設してもよく、カップリングカバー1の長手方向のほぼ全長にわたって配設するようにしてもよい。また、ターニング工具2の係合部22が2本の直線棒状の第1の係合部22aと第2の係合部22bとによって構成されているが、このような構成に限らない。つまり、軸継手103の形状や大きさに応じた形状、大きさとし、軸継手103と係合して、軸継手103を挟持、把持できるものであればよい。
【符号の説明】
【0024】
1 カップリングカバー
1b 窓穴
11 点検窓
12 丁番
2 ターニング工具
21 工具本体
22 係合部
22a 第1の係合部
22b 第2の係合部
23、24 滑り止め
101 入力軸
102 出力軸
103 軸継手
103a 垂直縁部
103b 溝部
P 真空ポンプ
M 電動機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸継手を手動で回転させるためのターニング工具であって、
棒状の工具本体の一端部に、前記軸継手に係合する係合部を備え、この係合部を前記軸継手に係合させた状態で前記工具本体を回動させることで前記軸継手が回転することを特徴とするターニング工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−769(P2012−769A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192111(P2011−192111)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【分割の表示】特願2007−274671(P2007−274671)の分割
【原出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】