説明

タービンエンジン懸架部材を支持するピンの回転防止手段

【課題】懸架ピンの回転を防止することによって、ラグ、ブッシュ、および懸架ピンの摩擦による摩耗問題を回避することのできる、タービンエンジンケーシングヨーク上への懸架部材の搭載を提供すること。
【解決手段】本発明は、ケーシングに固定された少なくとも1つのラグ(4)を備えるヨーク(3)と、ピン(1)を取り囲むリング(7)によって懸架部材を支持するヨーク(3)に固定されたピン(1)とを含む、タービンエンジンのケーシングに前記部材を搭載するための装置に関し、上記装置は、ラグに取り付けられた回転防止プレート(2)を含む回転防止手段を含む。本装置は、上記プレート(2)およびピン(1)が、ペグと切り欠き、または孔からなる組み立て体を含み、この中に上記ペグが固定されて、ピン(1)がヨーク(3)中で回転するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボジェットエンジンなどのタービンエンジン用懸架部材の搭載に関する。本発明は、詳細には、ピンの振動と摩耗に起因する問題を回避するために、懸架ピンが回転するのを防止する手段を含む懸架部材の搭載に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボジェットエンジンなどの推進エンジンは、航空機の構造物に付属するストラットに取り付けることによって航空機のさまざまな点に搭載することができる。それは、翼の下部に懸架し、胴体に固定し、または取り付け手段を用いて尾翼に搭載することができる。これらの取り付け手段の目的は、ターボジェットエンジンのエンジンと構造物との間の機械的負荷を伝達することである。考慮すべき負荷は、3つの主方向に導かれる。これらは、詳細には、エンジンの重量、そのスラスト、および横方向の空気力学的負荷である。伝達する必要のある負荷はまた、エンジンの軸の周りのトルクへの反作用を含む。これらの手段はまた、飛行中のさまざまな段階の間に、特に熱膨張または収縮による寸法的変動のためにエンジンが受ける変形を吸収しなければならない。
【0003】
例えば、ターボファンエンジンの場合、懸架方法の1つは、前方懸架すなわち固定点および後方懸架すなわち固定点を用いて、航空機の翼の構造物に付属するストラットにエンジンを取り付けることである。前方懸架は、詳細にはファンケーシングの下流の中間ケーシングに固定され、後方懸架はジェットパイプに固定される。
【0004】
知られている構造において、前方懸架はエンジンと航空機との間の縦および接線方向の機械的負荷を伝達するように設計される。後方懸架はこれらと同じ方向の機械的負荷を伝達し、ターボジェットエンジンの軸周りのエンジントルクに反作用し、スラストに反作用するように設計される。スラストは前部で長手軸の両側の中間ケーシングのベース、後部でエンジン後方懸架手段に取り付けられた2つのスラスト反作用ロッドを経由して伝達される。
【0005】
一般に、懸架手段は、ボルトによってストラットに固定され、リンクロッドによってエンジンケーシングに接続されたビーム、可能ならば二重ビームを含む。リンクロッドは、その両端部で、それらの搭載方法に応じてそれぞれケーシングおよびビームに固定されたヨークまたはブラケット中を旋回する。負荷がリンクロッドを経由して純粋に軸状に伝達されるために、その両端部でボールスイベルが貫通ピン上に提供される。この搭載方法は、特にエンジンの放射状および軸状膨張の吸収を可能にする。
【0006】
図1に示すように、リンクロッド30は、2つのブッシュ40および50によって2つのラグに固定された、リンクロッドの上端部を通過する段付きピン22によってケーシングヨークのラグ20および21に固定される。リンクロッド30は孔を有し、その中に球状内部表面のケージ35が設けられる。球状内部表面はピンに固定された球状外部表面を有するリング70用の案内として働き、したがってボールジョイントを形成する。ブッシュとボール70との間にはクリアランスがある。ボールはピンに沿って軸方向に動くことができる。上記ピンはナットとワッシャによって位置が保持され、ワッシャとヨークのラグとの間にクリアランスを有する。
【0007】
このボールジョイントの機構のおかげで、リンクロッドの頂部は、周囲によって画定される端部停止部の限界内で、ピンの周りだけでなくそれに垂直な任意の軸の周りを枢動することができる。運動は、特にリンクロッドの頂部とヨークのラグとの間の両側に残された空間に応じて制限される。リンクロッド懸架装置の一例示的実施形態は、FR0357504に与えられる。
【0008】
エンジンの寿命の過程で、特にリンクロッドがケーシングに対してわずかに傾斜しているため、接続ピンは、振動負荷、特にピンに平行に導かれる力によって顕微鏡的な運動を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】仏国特許出願公開第0357504号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
時間の経過で、この種の力の繰り返しは、ピンおよびブッシュに摩擦摩耗を招く。さらに、リンクロッド上に分配された負荷を伴う膨張の結果、ケーシングの直径の変化によってピンはその搭載部の周りを回転する。
【0011】
本出願人は、この懸架ピンの回転を防止することによって、ラグ、ブッシュ、および懸架ピンの摩擦による摩耗問題を回避することのできる、タービンエンジンケーシングヨーク上への懸架部材の搭載を目的として設定する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、タービンエンジンのケーシングに懸架部材を搭載するための装置は、ケーシングに固定された少なくとも1つのラグと、ピンを取り囲むリングによってこの部材を支持するヨークに固定されたピンとを含み、この装置はラグに取り付けられた回転防止プレートを含む回転防止手段を含むもので、このプレートおよびピンは、ペグおよび切り欠きまたは孔からなる組み立て体を含み、この中にこのペグが固定され、ピンがヨーク中で回転するのを防止する。
【0013】
本発明の1つの利点は、簡単な手段によって、リンクロッド上に分配された負荷を伴う膨張によるケーシングの直径の変化に起因する問題を防止することが可能になることである。この機構はまた、振動を制限する利点を有する。
【0014】
他の特徴によれば、プレートは、プレートを貫通するネジとラグからなり、ナットによって位置が保持されるボルト接続によってヨークに対する回転が防止される。
【0015】
本発明は、少なくとも1つのラグを備える少なくとも1つのヨークを含むタービンエンジンケーシングに関し、懸架部材を搭載するための少なくとも1つの上述の装置を含む。
【0016】
本発明はまた、懸架部材を搭載するための少なくとも1つの上述の装置を含むタービンエンジンに関する。
【0017】
本発明の目的、態様、および利点は、添付図面を参照して、非限定的な例として以下に与えられる様々な実施形態の説明に従ってよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術によるヨーク上への懸架部材の搭載を示す図である。
【図2】本発明による懸架部材を搭載するための装置の一実施形態を示す図である。
【図3】図2の装置の側面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
装置は、ケーシングに固定され、2つのラグを含むヨーク3を示す図2および図3を参照してより詳細に説明される。ラグ4は1つだけ見ることができ、これは孔が穿孔され、そこをボールジョイントによってリンクロッド5を支持するピン1が通る。ピン1は、リンクロッド5およびヨークのラグ4を貫通する。
【0020】
リンクロッド5自体は孔を有し、その内部に球状内部表面を有するケージ15が設けられる。ケージ15の内部表面は球状外部表面を有するリング7の案内として働き、リングはピン1にその中間で固定されボールジョイントを形成する。リング7は、ピン1を取り囲み、ボールジョイントは、リンクロッドがピン1の周りだけでなく、それに垂直でボールの中心を貫通する軸の周りを枢動することを可能にする。
【0021】
ピン1は、ブッシュ14によってヨーク3のラグ4の孔に搭載される。ブッシュ14はその端部にラグ4との当接を保つ段51を有する円筒形状である。この実施形態において、ヨーク3に対してピンの摩擦による摩耗をできる限り制限するように、ピン1はヨークに対して強く押圧される。
【0022】
図示されていないナットによって位置を保たれるネジ22(図2)は、ピン1の中央を長手方向に貫通する。
【0023】
円筒形状のピン1は、その端部に段16を含み、その上に平坦な表面が形成されて平坦部8(図3に示される)を作る。この段16は、それ自体ヨーク3のラグ4を押圧しているプレート2を押圧する。
【0024】
プレート2(図2および図3)は、矩形形状の回転防止タブ17(図3)を含み、したがってピン1の平坦部8に対して当接する表面18を形成する。したがって、プレート2は、タブ17によってピン1が回転するのを防止する。
【0025】
ネジ25は、タブ2とヨーク3のラグ4を貫通する。それはナット6によって位置が保たれ、このプレートとラグ4との間のボルト締め接続を形成する。したがって、このボルト締め接続によって、プレート2はヨーク3に対する回転が防止される。
【0026】
本解決策は、エンジン運転の際に受ける振動にもかかわらず、ピン1をヨークに対して静止状態に保持することを可能にする。
【0027】
これらの実施形態は非限定的であり、したがって、図に示されなかった本発明の他の実施形態において、ヨーク3に対するプレート2の回転を防止するネジ25とナット6によるボルト締め接続(図2)は、ヨーク3またはプレート2のいずれかに固定されたペグに置き換えることができる。
【0028】
他の実施形態において、回転防止タブ17は、プレート2に固定されたペグに置き換えることができる。この場合、ピン1の段16の領域の孔または切り欠きは、このペグを取り付けるために働く。このシステムにおいて、プレート2のペグはピン1の孔に入り、その回転を防止する。この実施形態において、ピン1はヨーク3に対して軸方向に強く押し圧されない。
【符号の説明】
【0029】
1 ピン
2 回転防止プレート
3 ヨーク
4、20、21 ラグ
5、30 リンクロッド
6 ナット
7、70 リング
8 平坦部
14、40、50 ブッシュ
15、35 ケージ
16、51 段
17 回転防止タブ
18 表面
22、24、25 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングに固定された少なくとも1つのラグ(4)を備えるヨーク(3)と、ピン(1)を取り囲むリング(7)によって懸架部材を支持する前記ヨーク(3)に固定されたピン(1)とを含む、タービンエンジンのケーシングに前記部材を搭載するための装置であって、前記装置が、ラグに取り付けられた回転防止プレート(2)を含む回転防止手段を含み、前記プレート(2)およびピン(1)が、ペグと切り欠きまたは孔からなる組み立て体を含み、この中に前記ペグが固定されて、ヨーク(3)中でピン(1)が回転するのを防止する装置。
【請求項2】
プレート(2)が、ボルト締め接続によってヨーク(3)に対する回転を防止される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ボルト締め接続が、プレート(2)とラグ(4)を貫通してナット(6)によって位置が保たれるネジ(24)からなる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の懸架部材を搭載するための少なくとも1つの装置を含む、少なくとも1つのラグ(4)を備える少なくとも1つのヨーク(3)を含む、タービンエンジンケーシング。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の懸架部材を搭載するための少なくとも1つの装置を含む、タービンエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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