説明

ターボジェットのファンコンパートメント用中間ケーシングへのAGBの取り付け

本発明は、
タービンエンジンの長手方向軸(X−X)を中心とするシュラウド(22)と、
タービンエンジンの長手方向軸を中心とし、シュラウドの下流側面に取り付けられる環状チークプレート(24)と、
チークプレートに締結され、タービンエンジンの長手方向軸に平行に下流側に延在するサスペンションビーム(28)と、
ビームから懸架され、チークプレートから軸方向に離間した上流側面(30b)と、上流側面の反対側にある下流側面(30a)と、下流側面に取り付けられタービンエンジンの長手方向軸を中心に配置される複数の補機(32、34)とを備えるAGB(30)と
を備える、ターボジェットのファンコンパートメント(C)用中間ケーシング(20)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボジェットへの補機駆動ユニットの取り付けの一般的な分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボジェットでは、油圧エネルギーの生成、燃料の供給、および潤滑を行うためのポンプ、また電力を作るための発電機のような補機は、一般に、補機ギアボックス(AGB)と呼ばれるユニット内にまとめられる。そのようなユニットは、通常、ターボジェットのシャフトから取り出された動力によって回転駆動され種々の補機に結合される1つまたは複数の歯車列を備える。
【0003】
CFM(R)シリーズのターボジェットでは、AGBは、通常、ファンコンパートメントのゾーンまたは領域に取り付けられている。もっと正確に言えば、AGBは、前記ファンコンパートメントの金属製のブレード格納ケーシングに形成されたフランジから懸架されている。
【0004】
しかしながら、ファンコンパートメントの格納ケーシングは、重量を抑える取り組みにおいて、ますます複合材料で作られるようになってきている。残念なことに、複合材料製のそのようなケーシングにAGBを取り付けることができるフランジを形成するのは容易ではない。
【0005】
さらに、航空機製造会社は、一般に、AGBに設置される2つの大容量の発電機を生み出すより高いレベルの電力を供給するためにターボジェットを必要とする。その結果、AGBがファンコンパートメントの領域に取り付けられるように、ターボジェットのナセルは、ナセルの前部の面積を制限するために前記AGBに合わせて広くされる。しかしながら、このようにナセルを広くすることで、性能の点で非常に不利な空気力学的影響が生じる。
【0006】
上述の問題を解決するために、AGBをターボジェットの中心コンパートメントまたは「コア」、特に、ターボジェットの高圧圧縮機の周囲に取り付けるのが周知である。しかしながら、その取り付け方法では、技術的な問題が生じる。特に、高圧圧縮機のケーシングにかなりの負荷をかけることは、ケーシングの楕円化現象が生じるために(圧縮機ケーシングの直径が小さければ、それに応じて楕円化の及ぼす影響が大きくなる)、前記ケーシングの性能が低下するリスクにつながる。さらに、飛行のいくつかの段階で高圧圧縮機から上流側の空気を排出するための空気管が存在するので、AGBを高圧圧縮機のケーシングでなくコアコンパートメントの部品に取り付けることができる可能性を制限してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な目的は、ターボジェットの高圧圧縮機の性能を損なわずにAGBをターボジェットのコアコンパートメントに取り付ける方法を提供することによって、上述の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的は、
タービンエンジンの長手方向軸を中心とするシュラウドと、
タービンエンジンの長手方向軸を中心とし、シュラウドの下流側面に取り付けられる環状チークプレートと、
チークプレートに締結され、タービンエンジンの長手方向軸に平行に下流側に延在するサスペンションビームと、
ビームから懸架され、チークプレートから軸方向に離間した上流側面と、上流側面の反対側にある下流側面と、下流側面に取り付けられタービンエンジンの長手方向軸を中心に配置される複数の補機とを備えるAGBと
を備える、ターボジェットのファンコンパートメント用中間ケーシングによって達成される。
【0009】
ターボジェットの中間ケーシングは、低圧圧縮機と高圧圧縮機との間に位置決めされる。また、中間ケーシングのチークプレートに締結されたビームから懸架されるAGBは、ターボジェットの高圧圧縮機に直接締結されずにその周囲に配置されてもよい。したがって、高圧圧縮機のケーシングの楕円化によりケーシングの性能が低下するリスクが取り除かれる。さらに、本発明に従ってAGBを取り付けることで、高圧圧縮機から上流側の空気を排出するための空気管を通すスペースを残すことができるように、中間ケーシングのチークプレートからAGBを離すことができる。
【0010】
有利な配置では、AGBの一端はビームに締結され、その反対端はチークプレートに締結されたヨークに締結され、ケーシングはさらに、一端がチークプレートのヨークに締結され、反対端がビームに締結される燃料ユニットを備える。したがって、燃料ユニットを追加することで、AGBと共に、ターボジェットの長手方向軸を中心とする完全な円を形成し、そのことで、前記長手方向軸を中心に最適な方法で重量のバランスを取ることができるようになる。さらに各AGBは、他方とは別個に取り外すことができ、そのメンテナンスが容易である。
【0011】
この場合、燃料ユニットは、チークプレートから軸方向に離間した上流側面と、上流側面の反対側にある下流側面と、下流側面に取り付けられる燃料処理装置の複数の部品とを備えることができる。
【0012】
好ましくは、AGBはさらに、上流側面に取り付けられる伝達装置を備える。
【0013】
さらに好ましくは、ケーシングはさらに、一端がチークプレートに締結され、反対端がAGBの上流側面に締結される少なくとも1つの軸力吸収リンクを備える。
【0014】
AGBの補機は、航空機に電力を供給するための少なくとも1つの発電機と、タービンエンジンの電気装置に電気を供給するためのオルタネータと、タービンエンジンを始動させるためのスタータと、航空機に油圧動力を供給するための少なくとも1つの油圧ポンプと、燃料ポンプと、潤滑油ポンプとを備えることができる。
【0015】
本発明はさらに、タービンエンジンの長手方向軸を中心とする格納ケーシングと、格納ケーシングに締結された上述の中間ケーシングとを備える、ターボジェットのファンコンパートメントに関する。
【0016】
本発明はさらに、上述の中間ケーシングを含むターボジェットに関する。
【0017】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な特徴を有する一実施形態を示した添付図面に関する以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の中間ケーシングが取り付けられたターボジェットの側面図である。
【図2】図1のII−IIに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の中間ケーシングが取り付けられた2スプールバイパスターボジェット式のターボジェット10を示した側面図である。当然、本発明は、他のターボジェットにも適用できる。
【0020】
周知の形では、そのようなターボジェット10は、ファンが収容され、ファンコンパートメントCとも呼ばれる上流側コンパートメントと、ターボジェットの残りの部品が収容され、「コア」Cまたは中央コンパートメントとも呼ばれる下流側コンパートメントとから成る。
【0021】
より詳細には、ファンコンパートメントCは、ブレード格納ケーシング12を含む。ブレード格納ケーシング12は、ターボジェットの長手方向軸X−Xを中心とし、両端部にフランジ、すなわち、上流側フランジ16および下流側フランジ18を備えるシュラウド14(複合材料製であるのが好ましい)から成る。
【0022】
さらに、ファンコンパートメントは、格納ケーシング12の下流側フランジ18に締結される中間ケーシング20を含む。前記中間ケーシングは、ターボジェットの長手方向軸X−Xを中心とする金属シュラウド22と、同様に長手方向軸X−Xを中心とし、シュラウド22の下流側面に取り付けられる環状チークプレート24とから成る(図2)。
【0023】
また、ターボジェット10は、パイロン26によって航空機翼(図示せず)から懸架され、前記パイロンは、中間ケーシング20のチークプレート24に締結されるサスペンションビーム28によってターボジェットに接続される。このサスペンションビームは、ターボジェットの長手方向軸X−Xに平行に下流側に延在する。
【0024】
本発明によれば、ターボジェットの補機ギアボックス(AGB)30を懸架するためのパイロン26を締結するように設計された前記サスペンションビーム28を使用することが行われ、AGBはターボジェットの高圧圧縮機の周囲により精密に位置決めされる。
【0025】
AGB30は、略平面状の下流側面30aと、略平面状で下流側面の反対側にある上流側面30bとを含む。サスペンションビームがあることで、AGBを中間ケーシングのチークプレートから軸方向に離間させることができる。したがって、これらの2つの要素間にスペースを設けることによって、ターボジェットの高圧圧縮機から上流側の空気を排出するために、そのスペースに空気管31を通すことができる。
【0026】
さらに、AGB30は、ターボジェットのシャフトから動力を取り出すことによって回転駆動される1つまたは複数の歯車列(図示せず)を内蔵する。複数の補機がAGB30の下流側面30aに取り付けられ、補機の各々が、AGBの歯車の1つに結合される駆動軸を有する。これらの駆動軸(図示せず)は、長手方向軸X−Xに略平行な方向に延在する。
【0027】
これらの複数の補機としては、航空機に電力を供給するための2つの発電機32と、タービンエンジンの電気装置に電気を供給するためのオルタネータ34と、タービンエンジンを始動させるためのスタータ(図示せず)と、航空機に油圧動力を供給するための油圧ポンプ(図示せず)と、燃料ポンプ36と、潤滑油ポンプ38とを備える。当然、上述の補機以外の補機がAGBに取り付けられてもよい。
【0028】
さらに、AGB30は、ターボジェットのシャフトから動力を取り出すシャフトが貫通して、種々の補機を駆動することができる伝達装置40(図2)を含む。前記伝達装置40は、AGBの上流側面30bに取り付けられるのが好ましい。
【0029】
AGB30は、一端がサスペンションリンク44に締結され、前記サスペンションリンク自体は、クロスピースを形成しサスペンションビーム28に固定される横バー46に締結される。AGB30は、反対端は、中間ケーシング20のチークプレート24に締結されたヨーク48に締結される。
【0030】
特に有利な配置では、中間ケーシングはさらに、一端がチークプレート24のヨーク48に締結され、反対端が(横バー46に締結されたサスペンションリンク52によって)サスペンションビーム28に締結される燃料ユニット50を含む。
【0031】
燃料ユニット50は、チークプレートから軸方向に離間した上流側面と、上流側面の反対側にある下流側面と、下流側面に取り付けられる燃料処理装置の複数の部品とを備える。例として、そのような燃料処理装置は、アクチュエータのサーボ弁を制御するための制御ユニット54と、熱交換器および潤滑油/燃料フィルタ56a、56b群と、燃料計量弁58とを備える。
【0032】
したがって、燃料ユニット50は、AGB30と一緒になって、ターボジェットの長手方向軸X−Xを中心とする完全な円をなすアセンブリを形成する。このアセンブリの補機/装置は、前記長手方向軸X−Xを中心に配置され、ターボジェットのコアコンパートメントの周囲に配置され、特に、高圧圧縮機の周囲に配置される。したがって、最適な方法で前記長手方向軸X−Xを中心として重量のバランスが取られる。さらに、各々のユニット(AGBまたは燃料ユニット50)は、他方とは別個に取り外すことができるので、メンテナンスが容易である。
【0033】
図1に示されるように、軸力吸収リンク60は、一端が中間ケーシングのチークプレート24に締結され、反対端がAGB30の上流側面30bに締結される。
【0034】
本発明の中間ケーシングの上述の説明では、AGBは、通常はパイロンを締結するのに使用されるサスペンションビームから懸架される。この実施形態は、パイロンを締結するためのサスペンションビームはAGBを懸架する場合よりもずっと大きい負荷を支持することができる寸法であるという利点がある。また、前記サスペンションビームはすでに存在するので、サスペンションビームの形状を変更することでターボジェットの全重量に与える影響はわずかである。
【0035】
しかしながら、一部のターボジェットは、パイロンを取り付けるための異なるシステムを有し、ファンコンパートメントの中間ケーシングに締結されるサスペンションビームが設けられていないものもある。当然、この構造では、本発明に従って取り付けられるAGBを懸架するために、そのようなサスペンションビームを中間ケーシングのチークプレートに設置できることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジンの長手方向軸(X−X)を中心とするシュラウド(22)と、
タービンエンジンの長手方向軸を中心とし、シュラウドの下流側面に取り付けられる環状チークプレート(24)と、
チークプレートに締結され、タービンエンジンの長手方向軸に平行に下流側に延在するサスペンションビーム(28)と、
ビームから懸架され、チークプレートから軸方向に離間した上流側面(30b)と、上流側面の反対側にある下流側面(30a)と、下流側面に取り付けられタービンエンジンの長手方向軸を中心に配置される複数の補機(32〜38)とを備えるAGB(30)と
を備える、ターボジェットのファンコンパートメント(C)用中間ケーシング(20)。
【請求項2】
AGB(30)は、一端はビーム(28)に締結され、反対端はチークプレート(24)に締結されたヨーク(48)に締結され、ケーシングはさらに、一端がチークプレートのヨークに締結され、反対端がビームに締結される燃料ユニット(50)を備える、請求項1に記載のケーシング。
【請求項3】
燃料ユニット(50)は、チークプレートから軸方向に離間した上流側面と、上流側面の反対側にある下流側面と、下流側面に取り付けられる燃料処理装置の複数の部品とを備える、請求項2に記載のケーシング。
【請求項4】
AGB(30)はさらに、上流側面(30b)に取り付けられる伝達装置(40)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のケーシング。
【請求項5】
一端がチークプレート(24)に締結され、反対端がAGB(30)の上流側面(30b)に締結される少なくとも1つの軸力吸収リンク(60)をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のケーシング。
【請求項6】
補機は、航空機に電力を供給するための少なくとも1つの発電機(32)と、タービンエンジンの電気装置に電気を供給するためのオルタネータ(34)と、タービンエンジンを始動させるためのスタータと、航空機に油圧動力を供給するための少なくとも1つの油圧ポンプと、燃料ポンプ(36)と、潤滑油ポンプ(38)とを備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のケーシング。
【請求項7】
タービンエンジンの長手方向軸を中心とする格納ケーシング(12)と、格納ケーシングに締結された請求項1から6のいずれか一項に記載の中間ケーシング(20)とを備える、ターボジェットのファンコンパートメント(C)。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の中間ケーシング(20)を含むターボジェット(10)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−510996(P2013−510996A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539385(P2012−539385)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052431
【国際公開番号】WO2011/061437
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)