説明

タールを含まないガス化システムおよびその方法

タールを含まない新規ガス化方法およびシステムが記載されている。これは、二段階ガス化装置の2個の分離した反応区域において、循環させた乾燥した固体を部分的に燃焼させ、炭素性材料を含んで成るスラリ供給原料を乾燥する過程を含み、これによって合成ガスを含んで成る混合生成物を製造するプロセスを含んでいる。次に高温の第1段階の反応区域からつくられた合成ガスを、スラリの供給原料を導入する前に、ガス化装置の第2段階の反応区域の中で急冷する。これによってガス化装置の第2段階の反応区域から出る最終的な合成ガスの温度は約350〜900°Fに低下する。この温度は炭素性供給原料のタイプに依存してタールが容易に生成する温度範囲よりも低い。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は2008年12月24日出願の「タールを含まないガス化システムおよびその方法」と題する米国特許暫定出願第61/140,667号への優先利益を請求する。該特許出願は全文を引用することにより本明細書に包含される。
【技術分野】
【0002】
本発明は炭素性材料のような一般的に固体の供給原料を合成ガスのような望ましいガス状の製品に変換するガス化システムおよびその方法に関する。このガス化システムおよび方法は単純ではあるが炭素変換効率を最大にするように設計されていなければならない。
【背景技術】
【0003】
炭素性材料のガス化には3種の基本的なタイプのシステムおよび方法が開発されている。これらは(1)固定ベッドガス化法、(2)流動ベッドガス化法、および(3)懸濁または飛沫同伴ガス化法である。本発明は第3のタイプのシステムおよび方法、即ち懸濁または飛沫同伴ガス化法に関する。特に本発明は炭素性材料をガス化するための二段階飛沫同伴ガス化法に関する。
【0004】
二段階ガス化装置においては、低温の第2段階に対するスラリの供給速度を最大にする、これにより第1段階のガス化装置の中で発生する熱を用いスラリから水を蒸発させることによって融通性を得ることができる。次に第2段階のガス化装置から出るチャー(char)および変換されない炭素を分離し、乾燥した形で第1段階のガス化装置へ循環させ、このようにして高温の第1段階において必要とされる酸素の量を最小にし、且つガス化装置の変換効率を最大にする。
【0005】
低温の第2段階への供給を行うことに伴う問題の一つは、石炭または石油コークスの熱分解中に生じるタールが適切に分解されないことである。合成ガスを冷却した場合、分解されなかったタールは凝縮し、これが熱交換器の表面に付着したり下手にあるフィルタ−を詰まらせたりする。従ってガス化反応器の低温の第2段階に対する供給原料の添加量を増加させ、同時にタールの生成を最低限度に抑制する技術が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
歴史的には、タールの生成は熱交換表面を汚損し、下手にあるフィルターを詰まらせる主な問題点であった。本発明のガス化方法およびシステムは、従来のシステムに比べて著しく簡単であり、建設費および維持費が低く、同時にタールの生成を防止することができる。
【0007】
本発明のシステムおよび方法を使用することにより、炭素性供給原料の内部に蓄えられたエネルギーを最大限度に回収することができる。本発明においては、二段階ガス化装置の二つの分離した反応器の区域の中で、循環されてきた乾燥した固体分を部分的に燃焼させ、スラリ状の炭素性供給原料を乾燥させ、これによって合成ガスを含んで成る混合生成物をつくる方法を含んでいる。ガス化装置の高温の第1段階の反応区域から生じる合成ガスを、次に第2段階の反応区域において急冷して低温の合成ガスにする。次いでスラリ状の供給原料を第2段階の中に導入し、ガス化装置の第2段階の反応区域から出てくる最終的な合成ガスの温度を低下させる。この温度は使用する供給原料の種類に依存して約350〜900°Fである。
【0008】
本発明の或る種の具体化例は(a)乾燥した供給原料を反応器の下方区域に導入し、こ
の中で酸素含有ガスまたは水蒸気を用いて部分的に燃焼させ、これによって熱を発生させ且つ合成ガスおよび熔融したスラグを含んで成る生成物をつくり;(b)段階(a)から得られる合成ガスを反応器の上方区域へと上方へ通し、この際段階(a)からの合成ガスを1種またはそれ以上の冷却剤で冷却し;(c)液体担体中に粒子状の炭素性材料を含むスラリを反応器の上方区域の中で得られる段階(b)からの冷却された合成ガスで乾燥し、これによって固体流とガス流を含んで成る混合生成物をつくり;(d)この混合生成物を分離装置に通して固体流をガス流から分離し;(e)固体流を反応器の下方区域へと戻して循環させる段階を含んで成る炭素性材料をガス化する方法に関する。このような方法においては、反応器の下方区域の中でつくられる合成ガスは上方へと運ばれ、第2段階に導入された冷却剤を加熱および/または蒸発させ、その結果第2段階においてつくられた混合生成物の温度は低下する。本発明の他の態様は、(a)熱を発生させ、且つ合成ガスおよび熔融したスラグを含んで成る生成物をつくるために、酸素含有ガスまたは水蒸気を含んで成るガス流を用いて乾燥した供給原料を部分的に燃焼させる反応器の下方区域であって、ガス流および乾燥した供給原料を導入するための一つまたはそれ以上の分散装置を具備している反応器の下方区域;(b)該反応器の下方区域から得られる合成ガスを冷却し、次いで液体担体中に粒子状の炭素性材料を含むスラリを該冷却した合成ガスを用いて乾燥し、固体流およびガス流を含んで成る混合生成物をつくるための反応器の上方区域;および(c)ガス流から固体流を分離する分離装置を具備した炭素性材料をガス化するシステムに関する。このようなシステムにおいては、反応器の下方区域でつくられる高温の合成ガスは上方ヘと運ばれ、これによって第2段階で導入された冷却剤を加熱および/または蒸発させ、その結果第2段階においてつくられた混合生成物の温度が低下する。
【0009】
本発明の或る種の具体化例においては、反応器の下方区域の温度は1500〜3500°F、好ましくは2000〜3200°Fの範囲に保たれる。反応器の下方区域の内部の圧力は14.7〜2000psig、好ましくは50〜1500psigの範囲に保たれる。反応器の上方区域の温度は、スラリを導入する前において、600〜2000°F、好ましくは800〜1800°Fの範囲に保たれる。反応器の上方区域の圧力は、スラリを導入する前において、14.7〜2000psig、好ましくは50〜1500psigの範囲に保たれる。反応器の上方区域から出て分離装置に入る前の混合生成物の温度は、300〜1200°F、好ましくは350〜900°F、最も好ましくは400〜700°Fである。本発明の或る種の具体化例においては、反応器の上方区域は液体担体中に粒子状の炭素性材料を含むスラリを導入するための一つまたはそれ以上の分散装置を具備している。反応器の上方区域はさらに冷却剤を導入するための一つまたはそれ以上の供給装置を具備している。反応器の下方区域は酸素含有ガスまたは水蒸気を導入するための一つまたはそれ以上の分散装置を具備している。
【0010】
本発明の或る種の具体化例においては、冷却剤は10〜120フィート/秒、好ましくは15〜100フィート/秒、最も好ましくは20〜80フィート/秒の供給速度で反応器の上方区域に導入される。酸素含有ガスまたは水蒸気を含んで成るガス流は、20〜120フィート/秒、好ましくは20〜90フィート/秒の範囲の供給速度で反応器の下方区域に導入される。液体担体中に粒子状の炭素性材料を含むスラリは10〜80フィート/秒の範囲の供給速度で反応器の上方区域に導入される。
【0011】
本発明の或る種の具体化例においては、担体液体は水、液体CO、液状石油、またはこれらの任意の混合物である。粒子状の担体材料は石炭、リグナイト、石油コークス、またはこれらの任意の混合物であることができる。本発明の具体化例の冷却剤は水、または循環された合成ガス、またはこれらの任意の混合物であることができる。酸素含有ガスは空気、酸素に富んだ空気、酸素またはこれらの任意の混合物であることができる。
【0012】
本発明の或る種の具体化例においては、粒子状の炭素性材料を含んで成るスラリはスラ
リの全重量に関して30〜75重量%、好ましくは45〜70重量%の固体分濃度をもっている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の具体化例をさらに詳細に説明するために、下記添付図面を参照する。
【0014】
【図1】本発明の一具体化例を表すガス化システムの模式図、並びに模式的なプロセスの流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して下記に示す本発明の種々の具体化例の詳細な説明を行い、また本発明を実施し得る特定の具体化例を示す。この具体化例は、当業界の専門家が本発明を実施し得るほど十分詳細に本発明の態様を説明することを意図したものである。
【0016】
他の具体化例も使用することができるが、これらの具体化例は本発明の範囲を逸脱することのない範囲内で変形が施されたものでる。従って下記の詳細な説明は本発明を限定する意味で捕らえられるべきではない。本発明の範囲は、添付特許請求の範囲の各項に記載された本発明の全範囲内に入る同等物を含めた添付特許請求の範囲よってのみ定義される。
【0017】
図1を参照すれば、本発明の一具体化例においては、反応器の下方区域30および反応器の上方区域40を具備した一般的に数字10で示されるガス化反応器が提供される。反応器の下方区域30はガス化プロセスの第1段階の反応区域を規定し、他方反応器の上方区域40はガス化プロセスの第2段階の反応区域を規定している。
【0018】
再び図1を参照すれば、循環された木炭および高圧の酸素含有ガスおよび/または水蒸気を含んで成る反応流は、分散装置60および/または60aを通ってガス化反応器10の下方区域30に導入される。或る具体化例においては、分散装置は反応器の下方区域30の相対する側に位置している。2個より多くの分散装置を使用することもできる。例えば例えば90°の間隔で配置された4個の装置を使うことができる。また分散装置は異なった高さにあることができ、同じ面上にある必要はない。
【0019】
ガス化反応器10の反応器の下方区域30(または第1段階の反応区域)の内部では、循環される木炭、並びに酸素含有ガスおよび/または水蒸気を含んで成る混合流が反応して迅速な混合と反応物の反応が起こり、反応器10の下方区域30を通って渦を生じるように(必ずしもそうとは限らないが)一緒になった反応物を上方へと通すような回転運動が賦与される。反応器の下方区域30の中の反応はガス化プロセスの第1段階であり、これによって下記に詳細に説明されているように循環されたチャー、並びに酸素含有ガスおよび/または水蒸気を含んで成る混合流が発熱的に水蒸気、合成ガス、中間体ガス、および飛沫同伴された副成物、例えば溶融スラグを含んで成る混合生成物に変換される。このようにして生じた熔融したスラグは湯出し口20を通って反応器10の底部からスラグ処理システム(図示せず)へと抜き取られ、最終的に廃棄される。
【0020】
水蒸気、中間生成物、および合成ガスが非燃焼型のへと上方へ流されることにより反応器の下方区域30から出て行き、反応器の上方区域40には冷却剤、例えば(これだけには限定されないが)水および/または下方のシステムから循環された低温の合成ガスが供給装置80および/または80a、或いは他の供給装置を通して注入される。反応器の下方区域30の中でつくられガス流と共に上方へ運ばれる熱は、水および/または低温の合成ガスを加熱するのに用いられ、その結果生じた混合物の温度を低下させる。この冷却段階はまた当業界の専門家には通常公知の直接的な熱交換法によっても達成することができ
る。
【0021】
水蒸気、中間生成物、および合成ガスが、上記冷却段階により反応器の下方区域30から出た後、液体担体中に粒子状の炭素性の固体を含むスラリが供給装置90および/または90a、または他の供給装置を通して注入される。次に非燃焼型の反応器の上方区域40において、供給水の蒸発、炭素−水蒸気の反応、およびHを生じるCOとHOとの間の水−ガスの反応(COの放出を減少させるためにCOを隔離することが望ましい場合には、COに対する反応が好適である)を含む乾燥および反応工程が行われる。
【0022】
燃焼型の反応器の下方区域30(または反応器10の第1段階の反応区域)は主として燃焼反応器であるが、反応器の上方区域40は主として急冷反応器およびスラリに対する乾燥室である。反応器の下方区域30から上昇してくる高温のガスは供給原料のスラリを添加することによって冷却される。これによって、非燃焼型の反応器の上方区域40の中で生じる全体的な反応が吸熱的であるという事実と組み合わされ、飛沫同伴された灰分が冷却されて灰分の熔融による初期変形温度より低くなる点までガスが冷却される。この時揮発性の有機および無機性の化学種は凝縮し、伝熱面に到達する前に自分自身同士で凝集するか粒子状の炭素性材料の上に吸収され、従ってこれらの表面にくっつくことはない。反応器の上方区域40の中の反応条件は下記にさらに詳細に記載されている。
【0023】
図1に示された本発明の具体化例においては、反応器10の非燃焼型反応器である上方区域40は反応器10の燃焼型反応器である下方区域の頂部に直接連結され、高温の反応生成物は反応器の下方区域30から直接反応器の上方区域40に運ばれるようになっている。このような形態はガス状の反応生成物および飛沫同伴された固体分の中の熱損失を最低限度に抑制する。
【0024】
図1に示されているように、ガス化反応によってつくられるチャーを粗製ガス流から分離して循環させ、炭素の変換率を増加させることができる。例えば上記に説明したような分散装置60および/または60a(または他のもの)を通してチャーを反応器の下方区域へ循環させることができる。或る種の具体化例においては、分散装置60および60aはチャーのような粒子状の固体の分散した供給材料を反応器の第1段階の中へ供給する。分散装置は例えば固体に対する中央の管、および噴霧化用のガスを添加するための該中央の管を取り囲んだ環状の空間を有し、内部的または外部的に共通の混合区域に対して開口した装置であることができる。さらに非燃焼型の反応器である上方区域40の供給装置80および/または80a、および90および/または90aも上記の分散装置と同様であるか、或いは単にスラリまたは急冷媒体を供給するための管を具備しているだけであることができる。分散装置60、60a、急冷装置80、80a、および供給装置90、90aは当業界の専門家に通常公知のように構成することができる。
【0025】
図1にさらに示されているように、反応器の上方区域40の中でつくられる第2段階の反応の混合生成物は反応器の上方区域40の頂部から引き出され、一緒になった混合流を固体流とガス流とに分離する分離装置50の中に導入される。分離装置を出た固体流は固化した灰分、チャーおよび非燃焼型の反応器の上方区域40の中でつくられた乾燥した炭素性固体粒子を含んで成っている。この固体流は酸素含有ガスおよび/または水蒸気と混合され、分散装置60および/または60aを通し第1段階の反応に対する供給原料として燃焼型の反応器の下方区域30へと循環して戻される。
【0026】
分離装置50から出るガス流は水素、一酸化炭素、少量のメタン、硫化水素、アンモニア、窒素、二酸化炭素、および少量の割合の残留固体微粉末を含んで成っている。このガス流はさらに粒状物のフィルター装置(図示せず)に導入され、ここで固体の微粉末および粒状物を除去することができる。いったん粒状物が除去されると、生成した合成ガスは
タールを含まなくなり、タールを除去するための別の処理をせずに温暖ガス脱硫装置でさらに処理することができる。またガス化装置を出る合成ガスの温度が低いために高温の熱回収ボイラーの必要がなくなり、これによって全体としてのガス化システムおよびプロセスが簡単化され、信頼度が改善され、設備投資、操作コスト、および材料のコストが低くなる。
【0027】
ガス化反応器10の製作材料はあまり重要ではない。必ずしも必要なことではないが、熱損失を減少させ、高温および腐食性のスラグから容器を保護し、且つ良好な温度制御を行うために、反応器の壁は鋼であり、反応器の下方区域30は耐熱性のキャスタブル繊維またはセラミックス繊維、または耐熱レンガ、例えばクロムを高度に含有するレンガでライニングされており、反応器の上方区域40は溶鉱炉に使用されスラッギングの用途には使われてないような緻密な媒質でライニングされていることが好ましい。これらの材料はすべて市販されている。別法として、燃焼型の反応器の下方区域30に対しては、また随時非燃焼型の反応器の上方区域40に対しても、「低温壁」システムを提供することにより壁にライニングを行わないこともできる。「低温壁」と言う言葉は、石炭のガス化システムの専門家には通常知られているように、冷却用のジャケットを用い、これに冷却用の媒質を循環させて反応器の壁を冷却する方法を意味する。このようなシステムではスラグは低温壁の上に凝縮し、これによって冷却用のジャケットの金属壁が保護される。
【0028】
反応器の下方区域30の中における第1段階の物理的条件は、循環されるチャーを迅速にガス化できるように制御され、維持される。さらに特定的に述べれば、燃焼用の反応器の下方区域30の温度は1500〜3500°F、好ましくは2000〜3200°F、最も好ましくは2400〜3000°Fに維持される。このような温度においては、チャーのガス化によって生じる灰分は熔融して粘度が約250ポイズ以下の熔融したスラグを生じ、これは反応器の底部にある湯出し口から抜き取られ、本特許の範囲外の装置によってさらに処理される。
【0029】
反応器の上方区域40におけるガス化プロセスの第2段階における反応の物理的条件は、ガス化が迅速に行われ、可塑性を示す範囲より高い温度まで加熱できるように制御される。さらに特定的に述べれば、この区域内部の温度は、急冷媒質を導入した後で且つ原料のスラリを導入する前において測定して、600〜2000°F、好ましくは800〜1800°F、最も好ましくは1000〜1600°Fに維持される。燃焼用の反応器の下方区域30から上昇してくる中間生成物は、非燃焼型の反応器の上方区域40の中で起こる吸熱反応に対して熱を提供する。
【0030】
冷却段階(上述)の操作パラメータは担体液体中の粒子状の炭素性供給原料の種類および濃度によって調節される。さらに特定的に述べれば、冷却過程を操作する温度は、第2段階から出てくる混合生成物の最終的な温度が300〜1200°F、好ましくは350〜900°F、最も好ましくは400〜600°Fである。この温度範囲内において高分子量のタール類は典型的には放出されない。その結果分離装置50および随時存在する粒子供給フィルター装置から出てくる合成ガスはタールおよび粒状物を含まず、さらに酸性ガス除去、硫黄回収などを含む通常の精製法を行うことによって容易に処理することができる。
【0031】
本発明方法は大気圧またはそれ以上の圧力において行われる。一般に反応器の下方区域30および上方区域40の圧力は14.7〜2000psig、好ましくは50〜1500psig、最も好ましくは150〜1200psigに保たれる。
【0032】
本発明の種々の具体化例においては、反応器の下方区域30の分散装置60および/または60aを通るガスおよび固体分の速度(または供給速度)は、20〜120フィート
/秒、好ましくは20〜90フィート/秒、最も好ましくは30〜60フィート/秒に保たれる。反応器の下方区域30の中におけるチャーの滞在時間は2〜10秒、好ましくは4〜6秒に保たれる。反応器の上方区域40の供給装置90および/または90aを通るスラリ流の供給速度は5〜100フィート/秒、好ましくは10〜80フィート/秒、最も好ましくは20〜60フィート/秒に保たれる。反応器の上方区域40の供給装置80および/または80aを通過する下手のシステムから循環される水または低温の合成ガスの速度(または供給速度)は10〜120フィート/秒、好ましくは15〜100フィート/秒、最も好ましくは20〜80フィート/秒に保たれる。反応器の上方区域40の中の滞在時間は5〜40秒に保たれる。
【0033】
本発明方法は、任意の粒子状の炭素性供給材料を使用して用いることができる。しかし粒子状の炭素性材料は好ましくは石炭であるが、これは何の制限もなく瀝青炭、亜瀝青炭、またはこれらの任意の組合せを含んでいる。使用できる他の炭素性材料は石炭からつくったコークス、石炭のチャー、石炭液化残留物、粒子状炭素、石油コークス、頁岩から誘導された炭素性固体材料、タールサンド、ピッチ、バイオマス、濃縮した下水汚泥、ゴミ屑、ゴムおよびそれらの混合物である。これらの例示された材料は微粉砕した固体の形であることができるが、例えばポンプで圧入し得る液体担体のスラリは最良の材料の取扱い特性および反応性をもっている。
【0034】
炭素性固体材料に対する液体担体は、反応中に蒸発して沈澱し所望のガス生成物、特に一酸化炭素と水素を生じ得る任意の液体であることができる。好ましくは液体担体は水であり、これは反応器の下方区域30の中で水蒸気を生じる。水蒸気は次に炭素性供給原料と反応して合成ガスの有用な成分であるガス生成物を生じる。しかし、水以外の液体、例えば燃料油、残留油、石油、および液体COを使用して炭素性材料のスラリをつくることができる。液体担体が炭化水素の場合、さらに水または水蒸気を加え、効率的な反応を行い反応器の温度を適度に和らげるのに十分な水を与えることができる。
【0035】
少なくとも20%の酸素を含む任意のガスを燃焼型の反応器の下方区域30に供給する酸素含有ガスとして使用することができる。好適な酸素含有ガスには酸素、空気、および酸素に富んだ空気が含まれる。
【0036】
スラリとして担体の液体中に含まれる粒子状炭素性材料の濃度は、スラリをポンプで注入可能な混合物にする必要によって制限される。一般に、炭素性材料の濃度は最高80重量%の範囲にある。好ましくはスラリ中の粒子状炭素性材料の濃度は、第1段階および第2段階のプロセスの両方において30〜75重量%の範囲である。さらに好ましくは、水性スラリ中の石炭粒子の濃度は45〜70重量%である。
【0037】
石炭が供給原料の場合、これを粉砕した後液体担体と配合してスラリをつくるか、或いは液体媒質と一緒に摩砕する。一般に、任意の適切に微粉末化した炭素性材料を使用することができ、粒子状の固体の粒径を減少させる任意の公知方法を用いることができる。このような方法の例としては、ボール、棒、ハンマー・ミルを使用する方法が含まれる。粒径はあまり重要ではないが、細かく粉砕した炭素性粒子が好適である。石炭を供給する火力発電所において燃料として使用される粉末状の石炭が典型的なものである。このような石炭は、石炭の90重量%が200メッシュの篩を通るような粒径分布をもっている。さらに高い反応性をもった材料に対しては、安定で沈降しないスラリをつくり得る限り、平均粒径は100メッシュ程度のもっと粗い粒径のものを使用することができる。
【0038】
本明細書において「チャー」という言葉は、種々の生成物が生成した後ガス化システムの内部に捕捉された未燃焼の炭素および灰分の粒子を意味する。
【0039】
本明細書において「および/または」という言葉は、それが二つまたはそれ以上の記載項目に対して使用された場合、記載された項目の任意の一つが使用できるか、或いは記載された項目の任意の二つまたはそれ以上の組合せが使用できることを意味する。例えば或る組成物が成分A、Bおよび/またはCを含むとして記載されている場合、この組成物はAを単独で、Bを単独で、またはCを単独で含むことができるか、或いはAとBを組み合わせて、AとCを組み合わせて、BとCを組み合わせて;或いはA、B、およびCをすべて組み合わせて含んでいることができる。
【0040】
本発明の特許による保護範囲は上記の説明によって限定されるものではなく、下記の特許請求の範囲だけに限定される。これらの特許請求の範囲は該特許請求の範囲の主要事項のすべての同等物を含むものである。それぞれの各特許請求の範囲は本発明の具体化例として本明細書に包含されている。従ってこれらの特許請求の範囲は本発明の好適な具体化例のさらなる説明であり、また追加事項である。
【0041】
特許請求の範囲中において、規定された機能を行う「ための方法(means for)」または規定された機能を行う「ための段階(step for)」と明示的に記述されていない項目は、35U.S.C.§112¶6に規定された方法(means)または段階(steps)と解釈すべきではない。特に本明細書においては特許請求の範囲中に記載された「の段階(step of)」の使用は35U.S.C.§112¶6の条項を適用することを意図したものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)乾燥した供給原料を反応器の下方区域に導入し、その中において酸素含有ガスまたは水蒸気を含んで成るガス流を用いて部分的に燃焼させ、これによって熱を発生させ且つ合成ガスおよび熔融したスラグを含んで成る生成物を製造し;
(b)段階(a)から得られる該合成ガスを反応器の上方区域へと上方に通し、ここで段階(a)からの該合成ガスを1種またはそれ以上の冷却剤で冷却し、
(c)液体担体中に粒子状の炭素性材料を含むスラリを該反応器の上方区域において段階(b)からの該冷却された合成ガスで乾燥し、これによって固体流およびガス流を含んで成る混合生成物をつくり;
(d)該混合生成物を分離装置に通し、ここで該固体流を該ガス流から分離し;
(e)該固体流を該反応器の下方区域へと戻して循環させ、ここで該反応器の下方区域中においてつくられ該合成ガスと共に上方に運ばれる熱を用い該冷却剤の加熱、蒸発、または両者の組合せを行うのに利用し、これによって該混合生成物の温度を低下させる段階を含んで成ることを特徴とする炭素性材料のガス化を行う方法。
【請求項2】
段階(a)は1500〜3500°Fの範囲の温度、14.7〜2000psigの範囲の圧力で行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
段階(a)は2000〜3200°Fの範囲の温度、50〜1500psigの範囲の圧力で行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
該反応器の上方区域の温度は段階(b)の後で且つ段階(c)の前において600〜2000°Fの範囲の温度、14.7〜2000psigの範囲の圧力に保たれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
該反応器の上方区域の温度は段階(b)の後で且つ段階(c)の前において800〜1800°Fの範囲の温度、50〜1500psigの範囲の圧力に保たれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
該冷却剤は水、循環させる合成ガス、およびこれらの任意の混合物から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
酸素含有ガスまたは水蒸気を含んで成る該ガス流は20〜120フィート/秒の範囲の供給速度で反応器の下方区域に導入され、該反応器の下方区域の中における該チャーの滞在時間は2〜10秒であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
酸素含有ガスまたは水蒸気を含んで成る該ガス流は20〜90フィート/秒の範囲の供給速度で反応器の下方区域に導入され、該反応器の下方区域の中における該乾燥した供給原料の滞在時間は4〜6秒であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
該液体担体中に粒子状の炭素性材料を含んで成る該スラリは10〜80フィート/秒の範囲の供給速度で反応器の上方区域に導入され、該反応器の上方区域の中における該第1の液体流の滞在時間は5〜40秒であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
該冷却剤は10〜120フィート/秒の範囲の供給速度で反応器の上方区域に導入されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
該担体の液体は水、液体CO、液状石油、およびこれらの任意の混合物から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
該粒子状の炭素性材料は石炭、リグナイト、石油コークス、およびこれらの任意の混合物から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
粒子状の炭素性材料を含んで成る該スラリは固体分の濃度がスラリの全重量に関して30〜75重量%であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項14】
粒子状の炭素性材料を含んで成る該スラリは固体分の濃度がスラリの全重量に関して45〜70重量%であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項15】
該酸素含有ガスは空気、酸素に富んだ空気、酸素、およびそれらの任意の混合物から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項16】
さらに、該ガス生成物流を粒子を濾過する装置に通し、ガス生成物流から残留した固体の微粉末および粒子を分離する段階を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項17】
反応器の上方区域を出た該混合生成物の温度は該分離装置に入る前において300〜1200°Fであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項18】
反応器の上方区域を出た該混合生成物の温度は該分離装置に入る前において400〜700°Fであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項19】
該固体流は循環されるチャー、灰分、および乾燥した炭素性の固体粒子を含んで成り、該ガス流は合成ガスおよび熔融したスラグを含んで成っていることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項20】
(a)熱を発生させ且つ合成ガスおよび熔融したスラグを含んで成る生成物を製造するために、酸素含有ガスまたは水蒸気を含んで成るガス流を用いて乾燥した供給原料を部分的に燃焼させる反応器の下方区域であって、該ガス流および該乾燥した供給原料を導入するための一つまたはそれ以上の分散装置を具備している反応器の下方区域;
(b)該反応器の下方区域から出た該合成ガスを冷却し、次いで液体担体中に粒子状の炭素性材料を含むスラリを該冷却した合成ガスで乾燥して固体流とガス流とを含んで成る混合生成物をつくるための反応器の上方区域;
(c)該ガス流から該固体流を分離する装置であって、該合成ガスと一緒に上方に運ばれてくる該反応器の下方区域の中でつくられた熱を利用して該冷却剤の加熱、蒸発、またはこれらの両方を行うのに用い、このようにして該混合生成物の温度を低下させる装置;および
(d)該ガス状の生成物流から残留した固体の微粉末および粒子を分離する粒子フィルター装置
を具備していることを特徴とする炭素性の材料をガス化するシステム。

【図1】
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【公表番号】特表2012−514078(P2012−514078A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543574(P2011−543574)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/068066
【国際公開番号】WO2010/075085
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(502259425)コノコフイリツプス・カンパニー (11)
【氏名又は名称原語表記】ConocoPhillips Company