説明

ダイカスト用射出装置

【課題】プランジャロッドが回転するのを防止することができるダイカスト用射出装置の提供。
【解決手段】ダイカスト用射出装置1は、ピストンロッド6を備えた射出シリンダと、ピストンロッド6にカップリング7を介して連結されたプランジャロッド3と、プランジャロッド3の先端に連結されて射出スリーブ5内に配置されるプランジャチップ2とを有しており、射出スリーブ5内に給湯された金属溶湯をプランジャチップ2によって金型キャビティ内に射出する。プランジャロッド3の上面にはその軸線方向に沿って延びる切欠き3Cが形成されることにより、プランジャロッド3の回転が防止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト法に用いられるダイカスト用射出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト法に用いられる射出装置は、下記特許文献1所載のように、プランジャチップを先端に取り付けたプランジャロッドと射出シリンダのピストンロッドとをカップリングにより連結し、射出シリンダの作動によりプランジャチップを前進させることにより、射出スリーブ内の金属溶湯を金型キャビティ内に射出する構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−21902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1のような従来の射出装置においては、プランジャロッドとピストンロッドを連結するカップリングは両ロッドを周方向に対しては係止していないので、スリーブ内を摺動するプランジャチップが摺動抵抗を受けるとプランジャロッドがプランジャチップと一体に回転してしまう場合がある。プランジャロッドにはプランジャチップを冷却する冷却水を供給・排出するための冷却ホースが接続されており、プランジャロッドが回転してしまうと冷却ホースが破損したり、冷却ホースがプランジャロッドから外れたりするという事態が生じ、生産性が低下するという問題がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、プランジャロッドが回転するのを防止することができるダイカスト用射出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のダイカスト用射出装置は、前述の課題解決のために、ピストンロッド6を備えた射出シリンダと、該ピストンロッド6にカップリング7を介して連結されたプランジャロッド3と、該プランジャロッド3の先端に連結されて射出スリーブ5内に配置されるプランジャチップ2とを有し、該射出スリーブ5内に給湯された金属溶湯を該プランジャチップ2によって金型キャビティ内に射出するダイカスト用射出装置1において、プランジャロッド3の重心Gがプランジャチップの中心Cよりも下方に偏心して位置することを特徴とする。
【0007】
ここで、該プランジャロッド3の上面にはその軸線方向に沿って延びる切欠き3Cが形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のダイカスト用射出装置によれば、ダイカスト法を行っている際にプランジャロッドが回転することが阻止されるので、冷却ホースが破損したり、冷却ホースがプランジャロッドから外れたりすることによる生産性の低下を防ぐことができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態のダイカスト用射出装置の構造を示す部分断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1において、1はダイカスト法を行うのに用いられるダイカスト用射出装置である。プランジャチップ2がプランジャロッド3の先端に接手4により連結されており、プランジャチップ2は図示せぬ固定型に配置された射出スリーブ5内を摺動可能となっている。プランジャロッド3は、大径部3Aと小径部3Bとからなる円柱形状であり、大径部3Aはカップリング7内に収容されて図示せぬ射出シリンダのピストンロッド6の先端とカップリング7によって連結されている。プランジャチップ2の内部には冷却用の穴部2aが形成され、この穴部2aには接手4の中心と、プランジャロッド3の小径部3Bの中心とに形成された冷却水排出路8が連通している。また、冷却水排出路8内には冷却水供給管9が配設され、冷却水供給管9の先端はプランジャチップ2の穴部2aに連通している。プランジャロッド3の小径部3Bの後端寄りの位置には、冷却水供給管9と連通する冷却水供給ポート3aと、冷却水排出路8と連通する冷却水排出ポート3bとが形成されている。冷却水供給ポート3a及び冷却水排出ポート3bには冷却ホース10が夫々接続されており、冷却水供給ポート3aから冷却水を供給してプランジャチップ2を冷却し、冷却水排出ポート3bから冷却水を排出できるように構成されている。
【0011】
図1に示すように、プランジャロッド3の小径部3Bの上面には、プランジャロッド3の軸線方向に沿って延びるように所定範囲に亘って切欠き3Cが形成されている。このようにプランジャロッド3の上面の所定範囲に切欠き3Cを形成することにより、図2に示すようにプランジャロッド3の重心Gがプランジャロッド3の中心Cよりも下方に偏心して位置するように構成されている。
【0012】
以上のように構成されたダイカスト用射出装置1によりダイカスト法を行うには、射出スリーブ5の図示せぬ給湯孔からアルミニウム合金等の金属溶湯を射出スリーブ5内に注入し、射出シリンダの作動によってプランジャチップ2を射出スリーブ5内で摺動させることにより、金属溶湯を図示せぬ金型キャビティ内に充填する。この際、プランジャロッド3とピストンロッド6を連結するカップリング7は両ロッドを周方向に対しては係止していないので、射出スリーブ5内を摺動するプランジャチップ2が摺動抵抗を受けるとプランジャロッド3はプランジャチップ2と一体に回転しようとする場合があるが、本実施形態のダイカスト用射出装置1においてはプランジャロッド3の上面には切欠き3Cが形成され、プランジャロッド3の重心Gがプランジャチップの中心Cよりも下方に偏心して位置するように構成されているので、プランジャロッド3が回転することが阻止される。従って、プランジャロッド3の回転によってプランジャロッド3に接続された冷却ホース10が破損したり、冷却水供給ポート3aや冷却水排出ポート3bから冷却ホース10が外れたりすることがなく、ダイカスト法を生産性よく行うことができる。
【0013】
本発明によるダイカスト法用射出装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、上述した実施形態においては、プランジャロッド3の上面の所定範囲に切欠き3Cを形成することにより、プランジャロッド3の重心Gがプランジャロッド3の中心Cよりも下方に偏心して位置するように構成されていたが、これに限定されない。冷却水排出通路をプランジャロッドの中心よりも上方に偏心した位置に形成したり、プランジャロッドの中心よりも上方にプランジャロッドの軸線方向に沿って延びる穴を形成したりすることにより、プランジャロッドの重心がプランジャロッドの中心よりも下方に偏心して位置するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0014】
1 ダイカスト用射出装置
2 プランジャチップ
2a 穴部
3 プランジャロッド
3a 冷却水供給ポート
3b 冷却水排出ポート
3A 大径部
3B 小径部
3C 切欠き
4 接手
5 射出スリーブ
6 ピストンロッド
7 カップリング
8 冷却水排出路
9 冷却水供給管
10 冷却ホース
C プランジャロッドの中心
G プランジャロッドの重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンロッドを備えた射出シリンダと、該ピストンロッドにカップリングを介して連結されたプランジャロッドと、該プランジャロッドの先端に連結されてスリーブ内に配置されるプランジャチップとを有し、該スリーブ内に給湯された金属溶湯を該プランジャチップによって金型キャビティ内に射出するダイカスト用射出装置において、該プランジャロッド3の重心Gがプランジャチップの中心Cよりも下方に偏心して位置することを特徴とするダイカスト用射出装置。
【請求項2】
該プランジャロッドの上面にはその軸線方向に沿って延びる切欠きが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のダイカスト用射出装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−92968(P2011−92968A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248399(P2009−248399)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)