説明

ダイクッション装置

【課題】
ダイクッションの設計を容易にすると共にダイクッションの駆動機構を小型化して使用部品種類数を抑える。
【解決手段】
ダイクッション装置を、個別に駆動可能にしてユニット化されたダイクッションモジュールによって構成する。各ダイクッションモジュールは、クッションパッド、サーボモータ、動力伝達機構、動力変換機構及びガイド部材を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボモータを用いてクッションパッドを昇降駆動させるプレス機械のダイクッション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス機械には絞り加工におけるしわ押さえのためにダイクッション装置(以下、単にダイクッションという)が設けられる。従来のダイクッションは油圧や空気圧を用いてクッションパッドを昇降駆動しつつクッション圧を発生させる。プレス機械の絞り加工性を高くしワークの破断やひずみを防止するためにはダイクッションのクッション圧を高精度に制御する必要があり、特にクッションパッドの下降動作時のクッション圧を高精度に制御する必要がある。
【0003】
空気圧のみを利用するダイクッションはクッションパッド動作時にクッション圧を高精度に制御できない。油圧を利用するダイクッションは圧油の制御によってクッションパッド動作時にクッション圧を高精度に制御できる。しかし油圧機器の構造が複雑であり、また厳密な保守・管理を必要とするという点が難点である。そこで近年は構造が簡素であり、また厳密な保守・管理を必要としない電動サーボモータを備えたダイクッションが注目されている。
【0004】
下記特許文献1には回転式の電動サーボモータを備えたダイクッションが開示されている。このダイクッションは、大きくはクッションパッドとクッションパッドを駆動する駆動機構とで構成される。駆動機構は、大きくはサーボモータとサーボモータの動力をクッションパッドに伝達する動力伝達機構とで構成される。動力伝達機構は大きくは支持杆とラックとピニオンとで構成される。
【0005】
クッションパッドの下面には支持杆が接続され、支持杆の下部にはラックが接続される。クッションパッドと支持杆とラックは一体となって昇降動作自在である。ラックにはピニオンが咬合され、ピニオンはサーボモータの回転軸に連結される。サーボモータに電流が供給され回転軸が回転するとピニオンが回転し、ピニオンの回転によってラックは昇降動作する。ラックと共に支持杆とクッションパッドも昇降動作する。
【0006】
下記特許文献2には、特許文献1と同様に回転式の電動サーボモータを備えたダイクッションが開示されている。特許文献2で示されたクッションパッドは複数に分割されており、分割された各クッションパッドはラックピニオン機構と減速ギア列を介してサーボモータに連結されている。そして各サーボモータを制御することで、クッションパッドを昇降駆動させている。
【特許文献1】特開平6−544号公報(図4)
【特許文献1】特開平6−543号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クッションパッドの大きさやダイクッションの能力はユーザの要望等によって決められる。よってダイクッションの設計は仕様にしたがいその都度行われている。またクッションパッドやプレス機械の場積制限によって、駆動機構の設計変更は勿論のこと、ベッドフレームの設計変更までもが余儀なくされる状況も多々ある。このようなことからダイクッションの製造段階では設計工数が嵩むことになる。
【0008】
例えば、特許文献1及び特許文献2で開示されたダイクッションは駆動機構が垂直方向にも水平方向にも大きな構造である。ユーザ側で許容される場積にこの駆動機構が収容できない場合は、駆動機構の設計変更等が必要となる。すると前述したように設計工数を要することになる。
【0009】
ところで特許文献2で開示されたダイクッションは、複数に分割されたクッションパッドのそれぞれがサーボモータで独立制御されている。クッションパッドが分割されているためクッション圧を部分的に変化させることができ、その点では優れている。しかしクッションパッドの分割箇所はユーザ側の要望に応じて決められるため、個々のダイクッションで異なる。つまり仕様にしたがいその都度ダイクッションを設計する必要がある。この点でも前述したようにダイクッションの設計工数が嵩むといえる。
【0010】
さらに、大容量のダイクッションの場合は大型の駆動機構が必要になる。結果として駆動機構の構成要素が増えることになる。すると使用部品の種類が増え、種々の部品の管理が必要となり、管理コストが上昇する。
【0011】
以上のように、従来のダイクッションの製造においては、設計工数の増加、コストの上昇ということが問題となる場合がある。
【0012】
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、ダイクッションの設計を容易にすると共にダイクッションの駆動機構を小型化して使用部品種類数を抑えることを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明は、
ダイクッション装置において、
ベッド内で昇降自在のクッションパッドと、
前記クッションパッドの昇降駆動源であるサーボモータと、
前記サーボモータの回転動を前記クッションパッドの昇降動に変換する動力変換機構と、
前記サーボモータの回転軸から前記動力変換機構へ回転動を伝達する動力伝達機構と、
前記クッションパッドを昇降方向にガイドするガイド部材と、
でユニット化されたダイクッションモジュールを構成し、
ベッドの1加工ステーションに1以上の前記ダイクッションモジュールを備えたこと
を特徴とする
第1発明では、ダイクッション装置が、個別に駆動可能にしてユニット化されたダイクッションモジュールによって構成されている。各ダイクッションモジュールは、クッションパッド、サーボモータ、動力伝達機構、動力変換機構及びガイド部材を備えている。こうした構成によれば、ダイクッションモジュールという規格化されたユニットを組み合わせるだけで、1加工ステーションのダイクッションが成り立つ。ダイクッションを設計する場合は、単にダイクッションモジュールを組み合わせればよい。また設計変更があった場合は、組み合わせを変更するのみで対応できる。このようにダイクッションモジュールによればダイクッションの設計が容易になるため、設計工数が減少する。
【0014】
ダイクッションモジュールの容量は任意である。よってダイクッションモジュールの容量を小さくすれば、駆動機構が小型になり使用部品種類数が少なくなる。その一方で、小容量のダイクッションモジュールを複数組み合わせれば大容量のダイクッションを形成できる。つまり小型の駆動機構を有するダイクッションモジュールによって大容量のダイクッションを実現できる。このようにダイクッションモジュールによれば部品種類数が減少するため、部品管理のコストが低減する。
【0015】
なおプレス機械の設計に合わせた細かな寸法調整は、クッションパッド上面に設けられる上板の寸法を調整することで対応可能である。
【0016】
第2発明は、第1発明において、
垂直上方から下方水平面へ投影した場合に想定される前記サーボモータ、前記動力変換機構及び前記動力伝達機構の投影像の全てが同様に垂直上方から下方水平面へ投影した場合に想定される前記クッションパッドの投影像内に含まれるように、前記クッションパッド、前記サーボモータ、前記動力変換機構及び前記動力伝達機構が配置されていること
を特徴とする
第2発明では、垂直上方から下方水平面へ投影した場合に想定されるクッションパッドの投影像内にサーボモータ、動力変換機構及び動力伝達機構の投影像の全てが含まれる。こうした構成によれば、駆動機構の水平方向の収容面積がクッションパッドの上面面積より大きくなることがない。したがって駆動機構の影響を受けることなくダイクッションモジュールを組み合わせることができ、ダイクッションの自由度が増す。
【0017】
第3発明は、第1発明において、
前記1加工ステーションの対向する壁面間に渡設されたリブを備え、当該リブを介して前記ダイクッションパッド同士を隣接させること
を特徴とする。
【0018】
第3発明では、複数のダイクッションモジュールが組み合わされる場合に、ベッドの1加工ステーションの対向する壁面間に渡設されたリブを備える。各クッションパッドは部分的に各リブやベッドで区切られた空間に収容される。よってクッションパッド同士はリブを介して隣接する。こうした構造によると、リブ上方にはクッションパッドが存在しないことになる。したがってクッションパッドの上面に一回り大きな上板を設け、リブ上方を覆うことが好ましい。リブを設けた場合は、クッションパッドの上面に設けられるクッションプレートの撓みを低減できる。
【0019】
第4発明は、第1発明において、
前記動力変換機構にボールねじ機構を含むこと
を特徴とする。
【0020】
第4発明では、動力伝達機構はナット部とねじ部とで構成されるボールねじ機構を含む。ボールねじのナット部が動力伝達機構に直結する場合は、ねじ部が昇降動作する。逆にボールねじのねじ部が動力伝達機構に直結する場合は、ナット部が昇降動作する。
【0021】
ボールねじ機構は、回転部材の軸心と昇降部材の軸心が同軸上に存在するため、垂直上方から下方水平面へ投影した場合に想定されるサーボモータ、動力変換機構及び動力伝達機構の投影像を小さくさせることが容易になる。
【0022】
なおナット部とねじ部とで構成されることから、ボールねじ機構の中にスクリュー・ナット機構を含むこととする。ボールねじ機構は摩擦損失が少なく、台形ねじを用いたスクリュー・ナット機構は大トルクの伝達が可能であり、三角ねじを用いたスクリュー・ナット機構はその中間的な効果を有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、駆動機構の水平方向の収容面積がクッションパッドの上面面積又は下面面積よりも大きくなることがない。また駆動機構の下端位置がクッションパッドの昇降動作に関わらず変位しない。結果としてダイクッションモジュールの駆動機構が小型になる。したがって複数の組合せが自在なダイクッションモジュールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1はプレス機械の構成を示す模式図である。
プレス機械においては、上部に位置するスライド2と下部に位置するボルスタ8とが互いに対向するように設けられる。スライド2は上方のスライド駆動機構1から動力を受けて昇降動作する。スライド2の下部には上型3aが取り付けられる。一方、ボルスタ8はベッド9の上部に固定されており、ボルスタ8の上部には下型3bが取り付けられる。ボルスタ8及び下型3bには上下方向に貫通する複数の孔が設けられ、この孔にはクッションピン7が挿通される。クッションピン7の上端は下型3bの凹部分に設けられたブランクホルダ5の下部に当接し、クッションピン7の下端はベッド9内に設けられたダイクッションモジュール10aのクッションパッド11に当接する。ベッド9の内壁面間にはビーム6が設けられ、ビーム6でダイクッションモジュール10aが支持される。一以上のダイクッションモジュール10aでダイクッション10が構成される。
【実施例1】
【0025】
図2は第1の実施形態に係るダイクッションの模式図である。
ダイクッションモジュール10aにおいては、クッションパッド11はボールねじ12と連結部材22と大プーリー13とベルト14と小プーリー15を介してサーボモータ16の回転軸に連結される。クッションパッド11とサーボモータ16との間では互いの動力が伝達自在である。クッションパッド11の下部にはボールねじ12のナット部12aが連結される。ボールねじ12のねじ部12bはナット部12aに螺合される。ねじ部12bの下部は連結部材17に接続される。連結部材17はビーム6に対してベアリングなどで軸支され、その下部は大プーリー13に連結される。サーボモータ16の回転軸には小プーリー15が接続される。大プーリー13と小プーリー15にはベルト14が巻架され、互いの動力が伝達自在である。
【0026】
回転式のサーボモータ16は回転軸を有し、電流の供給によって回転軸が正逆回転する。サーボモータ16に電流が供給され回転軸が回転すると、小プーリー15、大プーリー13、連結部材17、ねじ部12bが回転動作する。ねじ部12bの回転動作に伴い、ナット部12aがねじ部12bに沿って上下方向すなわち昇降方向に直線動作する。するとナット部12aと共にクッションパッド11が昇降動作する。なおナット部12aの昇降動作に関わりなく、ナット部12aの下端は連結部材17の下端より上方に保持される。サーボモータ16への電流制御によってクッションパッド11に与えられる付勢力すなわちクッションパッド11に生ずるクッション圧が制御される。
【0027】
本実施形態では、サーボモータ16の回転動をクッションパッド11の直線動に変換すると共にクッションパッド11の直線動に関わる機構、すなわちボールねじ12及び連結部材17を動力変換機構23といい、この動力伝達機構23にサーボモータ16の回転動を伝達する機構、すなわち大プーリー13、ベルト14及び小プーリー15を動力伝達機構24という。
【0028】
クッションパッド11の各側面にはガイドプレート18が設けられる。また図示しないがベッド9の内壁面にもガイドプレート18が設けられ、クッションパッド11側のガイドプレート18と互いに摺動自在になっている。二つのクッションパッド11が隣接し側面同士が対向する場合は、それぞれのガイドプレート18が互いに摺動自在になっている。このようにクッションパッド11の四側面に設けられたガイドプレートによって、クッションパッド11は昇降方向に案内される。
【0029】
次にクッションパッド11とサーボモータ16等からなる駆動機構の位置関係を説明する。
まずクッションパッド11の垂直上方から下方水平面へ投影した場合の第1投影像21を想定する。同様にサーボモータ16、動力変換機構23及び動力伝達機構24の垂直上方から下方水平面へ投影した場合の第2投影像22を想定する。そして第2投影像22の全てが第1投影像21内に含まれるようにクッションパッド11とその駆動機構が配置される。こうした配置によれば、ダイクッションモジュール10aの水平方向の場積は、クッションパッド11の上面面積よりも大きくなることがない。つまりクッションパッド11が互いに隣接して設けられたとしても、各クッションパッド11の下部の駆動機構同士が干渉することがなくなり、複数のダイクッションモジュール10aを1加工ステーションに隣接して設けることが可能となる。
【0030】
なお図2において、サーボモータ16、ベルト14及び小プーリー15の下方への投影像が第1投影像21外にある場合は、ベルト14の高さを違えたり、サーボモータ16の配置を互いに逆にしたりすることによって隣接するダイクッションモジュール10aを接近させて設置することも可能になる。こうすることによって、各ダイクッションモジュール10aのクッションパッド11の面積をさらに小さくすることが可能になり、ダイクッションモジュール10aの配置が容易になると共に、配置の自由度が増す。
【0031】
図3(a)〜(d)は1加工ステーションを簡略化して示す平面図である。図3(a)ではプレス機械の1加工ステーションに一つのダイクッションモジュール10aが設けられ、図3(b)ではプレス機械の1加工ステーションに二つのダイクッションモジュール10aが設けられ、図3(c)ではプレス機械の1加工ステーションに四つのダイクッションモジュール10aが設けられ、図3(d)ではプレス機械の1加工ステーションに八つのダイクッションモジュール10aが設けられている。
【0032】
ここで1加工ステーションに四つのダイクッションモジュール10aが設けられる場合を例にして、ダイクッションモジュール10aの配置について説明する。
【0033】
図4は1加工ステーションの平面図である。図5は1加工ステーションを斜め上方から見た場合の斜視図である。
図5で示されるように、ベッド9は対向する内壁面間に渡設された縦リブ9aを有し、1加工ステーションが複数の空間に区切られる。ベッド9の内壁面及び縦リブ9aの壁面にはガイドプレート18が設けられる。図4ではダイクッションモジュール10a同士が縦リブ9aを介して隣接する。この構造によれば、クッションパッド11が四側面共にガイドプレート18を介してベッド9に支えられることになる。この構造によってクッションプレート18のがたが少なくなる。ただしこのままでは縦リブ9a上にクッションピン7が配置できなくなる。そこでクッションパッド11の上面には上板11aが設けられ、この上板11aで縦リブ9aの上方も覆われる。
【0034】
このように縦リブ9aを設けた構造によると、クッションパッド11の上面に設けられるクッションプレートの撓みを低減できる。
【0035】
図6は1加工ステーションの平面図であり、図4とは異なる形態が示されている。
図6ではダイクッションモジュール10a同士がガイドプレート18を介して直接隣接する。この構造によれば、ベッド9の縦リブを考慮することがなくなるため、ダイクッションモジュール10aの配置の自由度が増す。またベッド9の縦リブそのものが必要ないので、製造コストの上昇を抑えることができる。さらにクッションパッド11の上板も不要になる。ただし図6で示される構造は図4で示される構造よりもクッションプレート18のがたがいくらか増える。
【0036】
各ダイクッションモジュール10aは独立して制御される。したがって1加工ステーション内のクッション圧が可変になる。また各ダイクッションモジュール10aを連動させることも可能である。
【0037】
複数の駆動機構を備えた一つのクッションパッドを1加工ステーションに設け、このクッションパッドの動作を制御する場合と、一つの駆動機構を備えたクッションパッドを1加工ステーションに複数設け、個々のクッションパッドの動作を制御する場合と、を比較すると、クッションパッドが分割されることから後者の方が独立制御性が高いといえる。
【0038】
第1の実施形態によれば、ダイクッションモジュール10aの配置、組み合わせは自在であり、設計の自由度が増す。したがってダイクッション10の設計が容易になる。またダイクッションモジュール10aを小型化することで部品種類数が減少するため、部品管理のコストが低減する。また駆動機構の下端位置がクッションパッド11の昇降動作に関わらず変位しないので、保護カバーをベッド下面から垂下させる必要がなく、ダイクッションのためにピットの深さを深くする必要もない。
【実施例2】
【0039】
第2の実施形態の構造は第1の実施形態の構造と多くの点で一致する。しかし第1の実施形態ではボールねじのナット側が回転動しねじ側が直線動するのに対し、第2の実施形態ではボールねじのねじ側が回転動しナット側が直線動する。
【0040】
図7は第2の実施形態に係るダイクッションの模式図である。
ダイクッションモジュール40aにおいては、クッションパッド11はボールねじ42と連結部材47と大プーリー13とベルト14と小プーリー15を介してサーボモータ16の回転軸に連結される。クッションパッド11とサーボモータ16との間では互いの動力が伝達自在である。クッションパッド11の下部にはボールねじ42のねじ部42bが連結される。ボールねじ42のねじ部42bはナット部42aに螺合される。ナット部42bの下部は連結部材47に接続される。連結部材47はビーム6に対してベアリングなどで軸支され、その下部は大プーリー13に連結される。サーボモータ16の回転軸には小プーリー15が接続される。大プーリー13と小プーリー15にはベルト14が巻架され、互いの動力が伝達自在である。
【0041】
サーボモータ16に電流が供給され回転軸が回転すると、小プーリー15、大プーリー13、連結部材47、ナット部42aが回転動作する。ナット部42aの回転動作に伴い、ねじ部42bがナット部42aに沿って上下方向すなわち昇降方向に直線動作する。するとねじ部42bと共にクッションパッド11が昇降動作する。なおねじ部42bの昇降動作に関わりなく、ねじ部42bの下端は連結部材47の下端よりも上方に保持される。サーボモータ16への電流制御によってクッションパッド11に与えられる付勢力すなわちクッションパッド11に生ずるクッション圧が制御される。
【0042】
本実施形態では、サーボモータ16の回転動をクッションパッド11の直線動に変換すると共にクッションパッド11の直線動に関わる機構、すなわちボールねじ42を動力変換機構53といい、この動力伝達機構53にサーボモータ16の回転動を伝達する機構、すなわち連結部材47、大プーリー13、ベルト14及び小プーリー15を動力伝達機構54という。
【0043】
クッションパッド11の各側面にはガイドプレート18が設けられる。また図示しないがベッド9の内壁面にもガイドプレート18が設けられ、クッションパッド11側のガイドプレート18と互いに摺動自在になっている。二つのクッションパッド11が隣接し側面同士が対向する場合は、それぞれのガイドプレート18が互いに摺動自在になっている。このようにクッションパッド11の四側面に設けられたガイドプレートによって、クッションパッド11は昇降方向に案内される。
【0044】
次にクッションパッド11とサーボモータ16等からなる駆動機構の位置関係を説明する。
【0045】
まずクッションパッド11の垂直上方から下方水平面へ投影した場合の第1投影像51を想定する。同様にサーボモータ16、動力変換機構53及び動力伝達機構54の垂直上方から下方水平面へ投影した場合の第2投影像52を想定する。そして第2投影像52の全てが第1投影像51内に含まれるようにクッションパッド11とその駆動機構が配置される。こうした配置によれば、ダイクッションモジュール40aの水平方向の場積は、クッションパッド11の上面面積よりも大きくなることがない。つまりクッションパッド11が互いに隣接して設けられたとしても、各クッションパッド11の下部の駆動機構同士が干渉することがなくなり、複数のダイクッションモジュール40aを1加工ステーションに隣接して設けることが可能となる。
【0046】
なお図7において、サーボモータ16、ベルト14及び小プーリー15の下方への投影像が第1投影像51外にある場合は、ベルト14の高さを違えたり、サーボモータ16の配置を互いに逆にしたりすることによって隣接するダイクッションモジュール40aを接近させて設置することも可能になる。こうすることによって、各ダイクッションモジュール40aのクッションパッド11の面積をさらに小さくすることが可能になり、ダイクッションモジュール40aの配置が容易になると共に、配置の自由度が増す。
【0047】
ダイクッションモジュール40aは、第1の実施形態のダイクッションモジュール10aと同様に、図4、図6で示されるように配置される。
【0048】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0049】
図8は第3の実施形態に係るダイクッションの模式図である。
ダイクッションモジュール60aにおいては、クッションパッド11はプランジャロッド63とピストン64とボールねじ62と連結部材65と大プーリー13とベルト14と小プーリー15を介してサーボモータ16の回転軸に連結される。クッションパッド11とサーボモータ16との間では互いの動力が伝達自在である。
【0050】
クッションパッド11の下部には柱状のプランジャロッド63が接続される。プランジャロッド63はその側面を筒状のプランジャガイド66で摺動自在に支持される。プランジャガイド66はビーム6に取付自在である。プランジャガイド66がビーム6に固定されると、プランジャロッド73はプランジャガイド66に支持されつつ昇降動作する。プランジャガイド66はプランジャロッド63及びプランジャロッド63に連結されるクッションパッド11を昇降方向に案内する。
【0051】
プランジャロッド63の下部には下方向に開口を有するシリンダ63aが形成され、シリンダ63aの内部にはピストン64が摺動自在に収容される。シリンダ63aの内壁面及びピストン64の上面で油圧室67が形成され、この油圧室67には圧油が充填される。油圧室67の軸心はプランジャロッド63及びボールねじ62の軸心と同一である。油圧室67の圧油ポートは図示しない油圧回路に接続され、油圧室67と油圧回路との間で圧油の授受が行われる。油圧室67の圧油は、上型とワークとが接する際に生ずる衝撃を緩和すると共に、油圧が所定値以上になるとタンクに排出される。油圧室67の圧油はこうした過負荷保護機能を有する。
【0052】
ピストン64の下端はボールねじ62のねじ部62bの上端に当接する。ピストン64の下端には球面状の凹面64aが形成され、この凹面64aに対向するねじ部62bの上端には球面状の凸面62cが形成される。逆にピストン68の下端に凸面が形成され、ねじ部62bの上端に凹面が形成されていてもよい。ねじ部62bのような棒状の部材は端部に働く軸方向の力には強いものの、曲げモーメントには弱い。ねじ部62bの上端が球面形状であると、仮にクッションパッド11が傾いてねじ部62bの上端に曲げモーメントが発生したとしても、ねじ部62b全体には軸方向の力のみが働く。このような構造によって偏心荷重によるねじ部62bの損傷を防止できる。
【0053】
ボールねじ62のナット部62aと大プーリー13との間には連結部材65が介在され、連結部材65がビーム6に対してベアリングなどで軸支される。サーボモータ16の回転軸には小プーリー15が接続される。大プーリー13と小プーリー15にはベルト14が巻架され、互いの動力が伝達自在である。
【0054】
サーボモータ16に電流が供給され回転軸が回転すると、小プーリー15、大プーリー13が回転動作する。大プーリー13と連結部材65とナット部62aは一体であるため、大プーリー13の回転と共にナット部62aが回転動作する。ナット部62aの回転動作に伴い、ねじ部62bがナット部62aに沿って上下方向すなわち昇降方向に直線動作する。ねじ部62b、ピストン64、プランジャロッド63と共にクッションパッド11が昇降動作する。なおねじ部62bの昇降動作に関わりなく、ねじ部62bの下端は連結部材65の下端よりも上方に保持される。サーボモータ16への電流制御によってクッションパッド11に与えられる付勢力すなわちクッションパッド11に生ずるクッション圧が制御される。
【0055】
本実施形態では、サーボモータ16の回転動をクッションパッド11の直線動に変換すると共にクッションパッド11の直線動に関わる機構、すなわちボールねじ62、プランジャロッド63及びプランジャガイド66を動力変換機構73といい、この動力伝達機構73にサーボモータ16の回転動を伝達する機構、すなわち連結部材65、大プーリー13、ベルト14及び小プーリー15を動力伝達機構74という。
【0056】
次にクッションパッド11とサーボモータ16等からなる駆動機構の位置関係を説明する。
まずクッションパッド11の垂直上方から下方水平面へ投影した場合の第1投影像71を想定する。同様にサーボモータ16、動力変換機構73及び動力伝達機構74の垂直上方から下方水平面へ投影した場合の第2投影像72を想定する。そして第2投影像72の全てが第1投影像27内に含まれるようにクッションパッド11とその駆動機構が配置される。こうした配置によれば、ダイクッションモジュール60aの水平方向の場積は、クッションパッド11の上面面積よりも大きくなることがない。つまりクッションパッド11が互いに隣接して設けられたとしても、各クッションパッド11の下部の駆動機構同士が干渉することがなくなり、複数のダイクッションモジュール60aを1加工ステーションに隣接して設けることが可能となる。
【0057】
なお図8において、サーボモータ16、ベルト14及び小プーリー15の下方への投影像が第1投影像71外にある場合は、ベルト14の高さを違えたり、サーボモータ16の配置を互いに逆にしたりすることによって隣接するダイクッションモジュール60aを接近させて設置することも可能になる。こうすることによって、各ダイクッションモジュール60aのクッションパッド11の面積をさらに小さくすることが可能になり、ダイクッションモジュール60aの配置が容易になると共に、配置の自由度が増す。
【0058】
ここで1加工ステーションに四つのダイクッションモジュール60aが設けられる場合を例にして、ダイクッションモジュール60aの配置について説明する。
【0059】
図9は1加工ステーションの平面図である。
ダイクッションモジュール60aではプランジャガイド66がガイド部材の機能を果たす。よって図9で示されるように、クッションプレート11の側面にガイドプレートが不要になる。この構造によれば、ダイクッションモジュール60aの配置の自由度がさらに増す。またガイドプレート部分の機械加工が不要になるため、製造コストの上昇を抑えることができる。ただしプランジャロッド63の長さの分だけダイクッションモジュール自体の長さが長くなる。
【0060】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。またクッションパッド11の側面にガイドプレートを設ける必要がなくなり、ダイクッションモジュール60aの配列に関する自由度が増す。
【実施例4】
【0061】
図10は第4の実施形態に係るダイクッションの模式図である。
第4の実施形態の構造は第3の実施形態の構造と多くの点で共通する。そこで相違点のみを説明する。
【0062】
ダイクッションモジュール80aにおいては、クッションパッド11はプランジャロッド63とピストン64とボールねじ62と連結部材65とカップリング81と減速機82を介してサーボモータ16の回転軸に直結される。クッションパッド11と減速機82との間では互いの動力が伝達自在である。
【0063】
ボールねじ62のナット部62aの下部の同軸上に連結部材65が取り付けられ、連結部材65がビーム6に対してベアリングなどで軸支される。サーボモータ16の回転軸には減速機82が接続される。なおサーボモータ16が減速機を内蔵していてもよい。減速機82の出力軸と連結部材65とはカップリング81で接続される。したがってボールねじ62、連結部材65、カップリング81、減速機82の出力軸が同軸上に位置することになり、さらに減速機82の構造によっては、サーボモータ16の回転軸も同軸上に位置することになる。
【0064】
サーボモータ16に電流が供給され回転軸が回転すると、減速機82内のギヤ等が回転し、減速機82の出力軸、カップリング81、連結部材65が回転動作する。連結部材65とナット部62aは一体であるため、ナット部62aが回転動作し、ナット部62aの回転に伴いねじ部62bがナット部62aに沿って上下方向すなわち昇降方向に直線動作する。ねじ部62b、ピストン64、プランジャロッド63と共にクッションパッド11が昇降動作する。なおねじ部62bの昇降動作に関わりなく、ねじ部62bの下端は連結部材65の下端よりも上方に保持される。サーボモータ16への電流制御によってクッションパッド11に与えられる付勢力すなわちクッションパッド11に生ずるクッション圧が制御される。
【0065】
本実施形態では、サーボモータ16の回転動をクッションパッド11の直線動に変換すると共にクッションパッド11の直線動に関わる機構、すなわちボールねじ62、プランジャロッド63及びプランジャガイド66を動力変換機構93といい、この動力伝達機構93にサーボモータ16の回転動を伝達する機構、すなわち連結部材65、カップリング81及び減速機82を動力伝達機構94という。
【0066】
次にクッションパッド11とサーボモータ16等からなる駆動機構の位置関係を説明する。
まずクッションパッド11の垂直上方から下方水平面へ投影した場合の第1投影像91を想定する。同様にサーボモータ16、動力変換機構93及び動力伝達機構94の垂直上方から下方水平面へ投影した場合の第2投影像92を想定する。そして第2投影像92の全てが第1投影像97内に含まれるようにクッションパッド11とその駆動機構が配置される。こうした配置によれば、ダイクッションモジュール80aの水平方向の場積は、クッションパッド11の上面面積よりも大きくなることがない。つまりクッションパッド11が互いに隣接して設けられたとしても、各クッションパッド11の下部の駆動機構同士が干渉することがなくなり、複数のダイクッションモジュール80aを1加工ステーションに隣接して設けることが可能となる。
【0067】
このような構造によれば、例えばクッションパッド11が隣接して設けられたとしても、各クッションパッド11の下部の駆動機構同士が干渉することがなくなる。よって複数のダイクッションモジュール80aを1加工ステーションに隣接して設けることができる。
【0068】
また駆動機構がほぼ同軸上に配置されるため、垂直上方から下方水平面へ投影した場合に想定される駆動機構の投影像が小さくなる。このためクッションパッド11自体を小さくすることができる。したがってさらにダイクッションモジュール80aの組合せが容易委になる。
【0069】
ダイクッションモジュール80aは、第3の実施形態のダイクッションモジュール60aと同様に、図9で示されるように配置される。
【0070】
第4に実施形態によれば、第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。特にクッションパッド11の大きさについては、第3の実施形態よりも小さくすることが可能であり、ダイクッションモジュール80aの配列に関して自由度がさらに増す。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1はプレス機械の構成を示す模式図である。
【図2】図2は第1の実施形態に係るダイクッションの模式図である。
【図3】図3(a)〜(d)は1加工ステーションを簡略化して示す平面図である。
【図4】図4は1加工ステーションの平面図である。
【図5】図5は1加工ステーションを斜め上方から見た場合の斜視図である。
【図6】図6は1加工ステーションの平面図である。
【図7】図7は第2の実施形態に係るダイクッションの模式図である。
【図8】図8は第3の実施形態に係るダイクッションの模式図である。
【図9】図9は1加工ステーションの平面図である。
【図10】図10は第4の実施形態に係るダイクッションの模式図である。
【符号の説明】
【0072】
10、40、60、80 ダイクッション
10a、40a、60a、80a ダイクッションモジュール
11 クッションパッド
12、42、62 ボールねじ
12a、52a、72a ナット部
12b、52b、72b ねじ部
13 大プーリー
14 ベルト
15 小プーリー
16 サーボモータ
17、47、65 連結部材
18 ガイドプレート
19 アウターガイド
21、51、71、91 第1投影像
22、52、72、92 第2投影像
63 プランジャロッド
64 ピストン
66 プランジャガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイクッション装置において、
ベッド内で昇降自在のクッションパッドと、
前記クッションパッドの昇降駆動源であるサーボモータと、
前記サーボモータの回転動を前記クッションパッドの昇降動に変換する動力変換機構と、
前記サーボモータの回転軸から前記動力変換機構へ回転動を伝達する動力伝達機構と、
前記クッションパッドを昇降方向にガイドするガイド部材と、
でユニット化されたダイクッションモジュールを構成し、
ベッドの1加工ステーションに1以上の前記ダイクッションモジュールを備えたこと
を特徴とするダイクッション装置。
【請求項2】
垂直上方から下方水平面へ投影した場合に想定される前記サーボモータ、前記動力変換機構及び前記動力伝達機構の投影像の全てが同様に垂直上方から下方水平面へ投影した場合に想定される前記クッションパッドの投影像内に含まれるように、前記クッションパッド、前記サーボモータ、前記動力変換機構及び前記動力伝達機構が配置されていること
を特徴とする請求項1記載のダイクッション装置。
【請求項3】
前記1加工ステーションの対向する壁面間に渡設されたリブを備え、当該リブを介して前記ダイクッションパッド同士を隣接させること
を特徴とする請求項1記載のダイクッション装置。
【請求項4】
前記動力変換機構にボールねじ機構を含むこと
を特徴とする請求項1記載のダイクッション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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