説明

ダイバーシチ装置

【課題】ブランチ合成ダイバーシチにおいて、少ないブランチ数で受信感度を改善することができるダイバーシチ装置を提供すること。
【解決手段】N(≧2)ブランチの合成ダイバーシチ装置100は、アンテナ101〜104、アンテナ選択回路110、ブランチ1受信部121、ブランチ2受信部122、ブランチ1受信品質測定回路131、ブランチ2受信品質測定回路132、合成部140、受信品質測定回路150、及び制御部160を備え、制御部160は、合成後の受信品質が所定以上劣化した場合、N個のブランチ中、受信状態が悪い1ブランチを選択するとともに、未使用のM−N個のブランチ中、1つのブランチを選択し、これら2ブランチの可変利得合成を行うように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システムにおける携帯電話機等の移動局やこの移動局と無線通信を行う基地局に用いて好適なダイバーシチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システムの移動局と基地局との通信においては、様々な電波伝搬環境により受信信号レベルが変動するフェージングを生じる場合が多い。フェージングに対する効果的な対策としてアンテナ選択ダイバーシチや合成ダイバーシチがある。アンテナ選択ダイバーシチでは、通常アンテナを複数個設置して、フェージングで受信状態が悪化したときに条件の良いアンテナを選択して通信を行う。例えば、同一周波数を時分割して複数ユーザで共有するTDMA(Time Division Multiple Access)通信方式におけるアンテナ選択ダイバーシチ装置がある。このアンテナ選択ダイバーシチ装置では、受信部に関係のないタイムスロットの期間中にアンテナの受信信号強度をサンプルし、受信部に関係のあるタイムスロットの受信前に最も良好なアンテナを選択することによりダイバーシチを実現している。他方、合成ダイバーシチ装置では、アンテナと受信系の一部又は全部を2系統用意し、この2系統を同相合成することにより合成利得を得るようにしている。アンテナ選択ダイバーシチ装置では、電波伝搬環境が良いアンテナを使用して、また合成ダイバーシチ装置では、受信2系統を合成して、通信ができるので、通信性能の向上が見込める。
【0003】
特許文献1には、前方指向性アンテナセットと後方指向性アンテナセットのように指向性の異なるアンテナセットを用意し、受信状態が劣化したとき、使用するアンテナセットを切り替えて用いるダイバーシチ受信装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、合成ダイバーシチにおいて、基準以下の受信品質になったブランチのアンテナを切り、未使用アンテナを検索し、所定の条件を満たす未使用アンテナが見つかればそれと切り替える車載デジタル信号受信装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−274726号公報
【特許文献2】特開2005−65001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のダイバーシチ装置にあっては、以下の問題がある。
【0007】
(1)合成ダイバーシチにおいて、ブランチ数を多くすれば受信感度が向上するものの、回路規模、消費電力が比例して大きくなる。
【0008】
(2)アンテナ切り替えと合成ダイバーシチを組み合わせれば受信ブランチ数は小さくできる。しかし、アンテナを切り替えることにより改善するかどうかは分らない。
【0009】
(3)受信品質が悪いアンテナを切り替えたとしても、切り離した時点で合成後の受信品質は確実に劣化してしまう。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ブランチ合成ダイバーシチにおいて、少ないブランチ数で受信感度を改善することができるダイバーシチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のダイバーシチ装置は、N(≧2)ブランチの合成ダイバーシチ装置であって、M(>N)個のアンテナと、前記M(>N)個のアンテナそれぞれを選択可能なアンテナ選択手段と、前記アンテナ選択手段で選択された前記アンテナにより捉えられた無線信号を受信するNブランチ受信手段と、前記N個のブランチの受信品質を測定する受信品質測定手段と、前記Nブランチ受信手段それぞれから出力される受信信号を同相合成する合成手段と、受信していたブランチの受信品質が低下した場合、今まで受信していた1ブランチと非受信であったM−N個のブランチのうち1つを選択し、該2ブランチの可変利得合成を行うように制御する制御手段と、を備える構成を採る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブランチ合成ダイバーシチにおいて、少ないブランチ数で受信感度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係るダイバーシチ装置の概略構成を示すブロック図
【図2】上記実施の形態1に係るダイバーシチ装置のN(≧2)ブランチA,Bの利得合成を説明する図
【図3】上記実施の形態1に係るダイバーシチ装置のダイバーシチ動作を説明するフロー図
【図4】本発明の実施の形態2に係るダイバーシチ装置のダイバーシチ動作を説明するフロー図
【図5】本発明の実施の形態3に係るダイバーシチ装置のダイバーシチ動作を説明するフロー図
【図6】上記実施の形態3に係るダイバーシチ装置の他のダイバーシチ動作を説明するフロー図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(原理説明)
本発明の基本的な考え方について説明する。
【0016】
N(≧2)ブランチの合成ダイバーシチ受信機において、M(≧N)個のアンテナを用意する。まず、任意のN個のアンテナを使用して合成ダイバーシチ受信を行う。
【0017】
合成後の受信品質が劣化した場合、残るM−N個のアンテナのうち1つを選択し、使用中のアンテナの1つと可変利得合成を行う。
【0018】
上記アンテナ選択アルゴリズムは、使用中のN個のブランチのうち最も受信品質、もしくは受信レベルが低いブランチを選び、これと現在未使用のアンテナのうち1つと可変利得合成を行う。
【0019】
上記可変利得合成の制御アルゴリズムは、M−N+1個のブランチのうち、今まで受信していた1ブランチと非受信であったM−N個のブランチのうち1つを選択し、2ブランチの可変利得合成とし、非受信であったブランチの重みを少しずつ増やし、良化した場合にさらに重みつけを増やしていく。すなわち、合成後の受信品質が劣化した場合、受信品質が劣化したブランチのアンテナを、未使用アンテナに単に(一律に全部)切り替えてしまうのではなく、受信品質が劣化したブランチのアンテナの受信信号についてはブランチの重みは下げつつも残して使用し、次に切り替え使用する未使用アンテナのブランチと可変利得合成する。
【0020】
アンテナを一気に切り替える従来のダイバーシチ受信機の場合、未使用アンテナの受信品質が切り替え前のアンテナの受信品質以上の場合はダイバーシチの効果は発揮できるものの、仮に未使用アンテナの受信品質が、切り替え前のアンテナの受信品質より劣化した場合には、アンテナ選択によってさらに受信状態が悪化してしまう。しかも上記アンテナ選択を行った結果ではじめて、未使用アンテナに切り替えなかった方が良いことが判明する。
【0021】
本発明は、受信品質が劣化したブランチのアンテナの受信信号の利得は残し、次に切り替え使用する未使用アンテナの利得と可変利得合成を行うことで、受信品質が劣化したブランチのアンテナを未使用アンテナに徐々に切り替える。これにより、アンテナ選択が失敗だった場合のリスクを分散することで、アンテナ選択による受信感度の意図しない劣化を未然に防止する。
【0022】
受信していたブランチと非受信であったブランチとの可変利得合成は、どのような方法でもよい。例えば、非受信であったブランチの重みを少しずつ増やし、良化した場合にさらに重みつけを増やしていく。具体的には、追加したアンテナに対する利得は、まずは低い値に設定しておき、受信品質が改善した場合は、追加したアンテナの利得比率を増加させていく。受信品質が改善しない場合は、利得を下げ、利得0となったら、別の未使用アンテナを選択する。
【0023】
また、未使用アンテナのうち、どのアンテナを選択するかは、(1)ランダムに選択する方法、(2)合成後の受信品質が良い時に、アンテナ切り替えを実施し、各アンテナの受信状態をあらかじめ調べておく方法、(2)合成後の受信品質が切り替え不要な時に、アンテナ切り替えを実施し、各アンテナの受信状態をあらかじめ調べておく方法が考えられる。
【0024】
これらの方法であれば、最も受信品質が良いアンテナは常時受信となるため、切り替え時に受信信号が途切れることはない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、上記基本的な考え方に基づく本発明の実施の形態1に係るダイバーシチ装置の概略構成を示すブロック図である。本実施の形態のダイバーシチ装置は、移動体通信システムの携帯電話機等の移動局に適用した例である。
【0026】
図1に示すように、ダイバーシチ装置100は、4本のアンテナ101〜104、アンテナ選択回路110、ブランチ1受信部121、ブランチ2受信部122、ブランチ1受信品質測定回路131、ブランチ2受信品質測定回路132、合成部140、受信品質測定回路150、及び制御部160を備えて構成される。
【0027】
全アンテナ数Mは4、ブランチ数は2である。また、M(≧N)個中N(≧2)個のアンテナを選択する。可変利得合成をするブランチは3以上であってもよい。
【0028】
4本のアンテナ101〜104は、それぞれ無線信号の受信に用いられる。
【0029】
アンテナ選択回路110は、制御部160からの切り替え信号に従って内部接点(図示略)をそれぞれオン/オフし、アンテナ101〜104の出力をブランチ1受信部121又はブランチ2受信部122のいずれかに切り替える。
【0030】
ブランチ1受信部121及びブランチ2受信部122は、アンテナ101〜104で捉えられた無線信号を増幅、選別及び復調等を行い、受信信号として出力する。
【0031】
ブランチ1受信品質測定回路131及びブランチ2受信品質測定回路132は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)測定等により受信電界強度を測定し、ブランチ1及びブランチ2からの受信信号の受信品質を測定する。受信品質を示す指標として、RSSIなどの受信電界強度を用いたが、受信したビットデータ列におけるビット誤り率(BER(Bit Error Rate))、SNR(Signal to Noise Ratio)、又はアンテナ端の入力パワーレベルの測定などを推定して用いてもよい。
【0032】
合成部140は、ブランチ1受信部121からの受信信号とブランチ2受信部122からの受信信号とを同相合成し、その結果を出力する。
【0033】
受信品質測定回路150は、RSSI測定等により合成部140の合成結果の受信電界強度を測定し、合成後の受信品質を測定する。
【0034】
制御部160は、CPU、プログラムメモリ、ワークメモリ等から構成され、装置各部を制御する。また、マイクロプロセッサ等で構成する場合は、ダイバーシチ装置100を搭載する携帯端末装置が、本体機能として備えるCPU等の資源を使用してもよい。
【0035】
制御部160は、ブランチ1受信品質測定回路131、ブランチ2受信品質測定回路132、及び受信品質測定回路150の受信品質を基に、合成ダイバーシチ受信制御を行う。特に、制御部160は、N(≧2)ブランチの合成ダイバーシチにおいて、M(≧N)個のアンテナを使って受信するとき受信状態の良いN−1個のブランチは100%受信、残るM−N+1個のブランチは合成部140で可変利得合成を行うように制御する。制御部160は、合成後の受信品質が劣化した場合、残るM−N個のアンテナのうち1つを選択し、使用中のアンテナの1つと可変利得合成を行う。上記アンテナ選択アルゴリズムは、使用中のN個のブランチのうち最も受信品質、もしくは受信レベルが低いブランチを選び、これと現在未使用のアンテナのうち1つと可変利得合成を行う。上記可変利得合成の制御アルゴリズムは、M−N+1個のブランチのうち、今まで受信していた1ブランチと非受信であったM−N個のブランチのうち1つを選択し、2ブランチの可変利得合成とし、非受信であったブランチの重みを少しずつ増やし、良化した場合にさらに重みつけを増やしていく。
【0036】
以下、上述のように構成されたダイバーシチ装置100のダイバーシチ動作について説明する。
【0037】
図2は、N(≧2)ブランチA,Bの利得合成を説明する図である。図中、実線はブランチBに切り替えた方が良い場合、破線はブランチAのままが良い場合、鎖線はブランチAとブランチBを合成した方が良い場合をそれぞれ示し、線上の丸印はその場合の目標とするアンテナ比率点(追い込みたいアンテナ比率点)を示す。aは、ブランチBのアンテナ比率であり、図3のフローにより後述する。なお、移動中は、図2のグラフの形が刻々と変化する場合がある。
【0038】
図3は、ダイバーシチ装置100のダイバーシチ動作を説明するフローチャートであり、制御部160により所定タイミングで繰り返し実行される。図中、Sはフローの各ステップを示す。
【0039】
ステップS1では、N個のアンテナでNブランチの合成ダイバーシチ受信する。
【0040】
ステップS2では、合成後の受信品質が悪いか否かを判別し、合成後の受信品質が悪くなければ上記ステップS1で合成ダイバーシチ受信を継続する。合成後の受信品質の悪いことは、受信品質測定回路150により測定された合成結果の受信電界強度が所定の閾値以下となる場合に受信品質が悪いと判定する。
【0041】
合成後の受信品質が悪い場合は、ステップS3で制御部160は、N個のブランチ中、受信状態が悪い1ブランチ(ここではブランチA)を選択する(図2参照)。
【0042】
ステップS4では、制御部160は、未使用のM−N個のブランチ中、1つのブランチ(ここではブランチB)を選択する(図2参照)。
【0043】
ステップS5では、制御部160は、ブランチBのアンテナ比率aをΔaに設定する(a=Δa)。
【0044】
ステップS6では、制御部160は、ブランチAとブランチBの割合を、1−a:aの割合で利得合成を実施する。
【0045】
ステップS7では、制御部160は、合成後の受信品質が良化したか否かを判別する。合成後の受信品質の悪化は、受信品質測定回路150により測定された合成結果の受信電界強度が前回の測定値より大きい場合に受信品質の良化と判定する。
【0046】
合成後の受信品質が良化した場合は、ステップS8で制御部160は、ブランチBの割合を、Δa増加させる(a→a+Δa)。
【0047】
ステップS9では、制御部160は、増加後のブランチBのアンテナ比率aが1か(a=1か)否かを判別する。
【0048】
a=1でない場合は、上記ステップS6に戻ってブランチAとブランチBの割合を、1−a:aの割合で利得合成を実施する。
【0049】
a=1の場合は、ステップS10で制御部160は、ブランチBの割合増加が終了したと判断して合成後の受信品質が良いか否かを判別する。合成後の受信品質が良いことは、受信品質測定回路150により測定された合成結果の受信電界強度が所定の閾値より大きい場合に受信品質が良いと判定する。
【0050】
合成後の受信品質が良くない場合は、ステップS11で制御部160は、未使用のM−N−1個のブランチ中1つのブランチ(この場合はブランチA)を選択してステップS6に戻る。
【0051】
上記ステップS10で合成後の受信品質が良い場合は、上記ステップS1に戻り、N個のアンテナでNブランチの合成ダイバーシチ受信を継続する。
【0052】
一方、上記ステップS7で合成後の受信品質が良化しなかった場合は、ステップS12で制御部160は、ブランチBの割合を、Δa減少せる(a→a−Δa)。
【0053】
ステップS13では、制御部160は、減少後のブランチBのアンテナ比率aが0か(a=1か)否かを判別する。
【0054】
a=0でない場合は、上記ステップS6に戻ってブランチAとブランチBの割合を、1−a:aの割合で利得合成を実施する。
【0055】
a=0の場合は、ステップS14で制御部160は、ブランチBの割合増加が終了したと判断して合成後の受信品質が良いか否かを判別する。
【0056】
合成後の受信品質が良くない場合は、ステップS15で制御部160は、未使用のM−N−1個のブランチ中1つのブランチ(この場合はブランチB)を選択してステップS6に戻る。
【0057】
上記ステップS14で合成後の受信品質が良い場合は、上記ステップS1に戻り、N個のアンテナでNブランチの合成ダイバーシチ受信を継続する。
【0058】
上記フローを実行することにより、N個のブランチ中、受信状態が悪い1ブランチ(ここではブランチA)を選択し、未使用のM−N個のブランチ中、1つのブランチ(ここではブランチB)を選択する場合、ブランチAとブランチBの割合が1−a:aの割合で利得合成が実施される。例えば、従来例ではブランチAとブランチBに100%(100:0)で切り替わっていた。これに対し、本実施の形態では、90:10,80:20,…,10:90と合成比率が徐々に切り替わる。図2では、実線に示すブランチBに切り替えた方が良い場合、又は破線に示すブランチAのままが良い場合から、目標とするアンテナ比率点(追い込みたいアンテナ比率点)に線形で合成比率を変える状態に対応する。本実施の形態は、図2の縦軸上の一端から他端の追い込みたいアンテナ比率点(図2丸印参照)に、ブランチBのアンテナ比率aをΔaずつ、増減させる。
【0059】
以上のように、本実施の形態によれば、N(≧2)ブランチの合成ダイバーシチ装置100は、アンテナ101〜104、アンテナ選択回路110、ブランチ1受信部121、ブランチ2受信部122、ブランチ1受信品質測定回路131、ブランチ2受信品質測定回路132、合成部140、受信品質測定回路150、及び制御部160を備え、制御部160は、合成後の受信品質が所定以上劣化した場合、N個のブランチ中、受信状態が悪い1ブランチを選択するとともに、未使用のM−N個のブランチ中、1つのブランチを選択し、これら2ブランチの可変利得合成を行うように制御する。追加したアンテナに対する利得は、まずは低い値に設定しておき、受信品質が改善したならば、追加したアンテナの利得比率を増加させていく。改善しないのであれば、利得を下げ、利得0となったら、別の未使用アンテナを選択する。
【0060】
ダイバーシチ装置100は、M(>N)個中N個のアンテナを選択し、受信感度を改善するので、ブランチ数を増やすことなく、受信感度を向上させることができる。
【0061】
また、本実施の形態のダイバーシチ動作では、受信品質が劣化したブランチのアンテナを未使用アンテナに徐々に切り替える。アンテナの合成比率が徐々に切り替わることで、アンテナの受信品質がより悪いアンテナに切り替えられた場合であっても、切り替えによる受信品質の劣化を最小限に抑えることができる。すなわち、アンテナ選択が失敗だった場合の受信品質の劣化を未然に防止することができる。但し、切り替え先のアンテナの受信品質が良好であった場合には、本実施の形態ではアンテナの合成比率が徐々に切り替わるが故に、受信品質の向上には遅れが生じる。その対策として、合成後の受信品質が良い時に、アンテナ切り替えを実施し、各アンテナの受信状態をあらかじめ調べておき、アンテナ切り替え時にはあらかじめ調べておいた情報を基に、最も受信品質が良いアンテナを選択する。このように構成すれば、切り替え時に受信信号が途切れることはなく、受信感度を改善することができる。
【0062】
また、本実施の形態では、合成後の受信品質が所定以上劣化した場合、上述したダイバーシチ動作を実施することから、常時合成ダイバーシチを使用する場合と比べて低消費電力化を図ることができる。
【0063】
(実施の形態2)
実施の形態2は、制御アルゴリズムとして、2分法を使用して可変利得制御する例である。
【0064】
図4は、実施の形態1に係るダイバーシチ装置のダイバーシチ動作を説明するフローチャートである。図3と同一ステップには同一符号を付している。
【0065】
ハード的構成は図1のダイバーシチ装置100と同様である。
【0066】
ステップS1では、N個のアンテナでNブランチの合成ダイバーシチ受信する。
【0067】
ステップS2では、合成後の受信品質が悪いか否かを判別し、合成後の受信品質が悪くなければ上記ステップS1で合成ダイバーシチ受信を継続する。合成後の受信品質の悪いことは、受信品質測定回路150により測定された合成結果の受信電界強度が所定の閾値以下となる場合に受信品質が悪いと判定する。
【0068】
合成後の受信品質が悪い場合は、ステップS3で制御部160は、N個のブランチ中、受信状態が悪い1ブランチ(ここではブランチA)を選択する(図2参照)。
【0069】
ステップS4では、制御部160は、未使用のM−N個のブランチ中、1つのブランチ(ここではブランチB)を選択する(図2参照)。
【0070】
ステップS21では、制御部160は、ブランチBのアンテナ比率aを0.5に設定する(a=0.5)。
【0071】
ステップS6では、制御部160は、ブランチAとブランチBの割合を、1−a:aの割合で利得合成を実施する。
【0072】
ステップS7では、制御部160は、合成後の受信品質が良化したか否かを判別する。合成後の受信品質の悪化は、受信品質測定回路150により測定された合成結果の受信電界強度が前回の測定値より大きい場合に受信品質の良化と判定する。
【0073】
合成後の受信品質が良化した場合は、ステップS22で制御部160は、ブランチBの割合を、a/2増加させる(a→a+a/2)。
【0074】
ステップS23では、制御部160は、増加後のブランチBのアンテナ比率aが(1−ε)より大きいか(a>1−εか)否かを判別する。2分法の場合、ブランチBのアンテナ比率aは、1/2であるため最小値は0ではない。そこで下限値εを設定し、ブランチBのアンテナ比率aを(1−ε)又はεと比較することで、利得割合の実施の継続の有無を判定している。
【0075】
a≦1−εの場合は、上記ステップS6に戻ってブランチAとブランチBの割合を、1−a:aの割合で利得合成を実施する。
【0076】
a>1−εの場合は、ステップS10で制御部160は、ブランチBの割合増加が終了したと判断して合成後の受信品質が良いか否かを判別する。合成後の受信品質が良いことは、受信品質測定回路150により測定された合成結果の受信電界強度が所定の閾値より大きい場合に受信品質が良いと判定する。
【0077】
合成後の受信品質が良くない場合は、ステップS11で制御部160は、未使用のM−N−1個のブランチ中1つのブランチ(この場合はブランチA)を選択してステップS6に戻る。
【0078】
上記ステップS10で合成後の受信品質が良い場合は、上記ステップS1に戻り、N個のアンテナでNブランチの合成ダイバーシチ受信を継続する。
【0079】
一方、上記ステップS7で合成後の受信品質が良化しなかった場合は、ステップS24で制御部160は、ブランチBの割合を、a/2減少させる(a→a−a/2)。
【0080】
ステップS25では、制御部160は、増加後のブランチBのアンテナ比率aがaより小さいか(a<εか)否かを判別する。
【0081】
a≧εの場合は、上記ステップS6に戻ってブランチAとブランチBの割合を、1−a:aの割合で利得合成を実施する。
【0082】
a<εの場合は、ステップS14で制御部160は、ブランチBの割合増加が終了したと判断して合成後の受信品質が良いか否かを判別する。
【0083】
合成後の受信品質が良くない場合は、ステップS15で制御部160は、未使用のM−N−1個のブランチ中1つのブランチ(この場合はブランチB)を選択してステップS6に戻る。
【0084】
上記ステップS14で合成後の受信品質が良い場合は、上記ステップS1に戻り、N個のアンテナでNブランチの合成ダイバーシチ受信を継続する。
【0085】
上記フローを実行することにより、N個のブランチ中、受信状態が悪い1ブランチ(ここではブランチA)を選択し、未使用のM−N個のブランチ中、1つのブランチ(ここではブランチB)を選択する場合、ブランチAとブランチBの割合が1−a:aの割合で利得合成が実施される。
【0086】
実施の形態1は、図2の縦軸上の一端から他端の追い込みたいアンテナ比率点(図2丸印参照)に、ブランチBのアンテナ比率aをΔaずつ、増減させている。このため、90:10,80:20,…,10:90と合成比率が徐々に切り替わる。
【0087】
本実施の形態は、2分法を適用している。このため、ブランチBのアンテナ比率aを中間1/2に設定し、この1/2位置から図2の縦軸上のいずれかの端の追い込みたいアンテナ比率点(図2丸印参照)に、ブランチBのアンテナ比率aをa/2ずつ、増減させる。このため、実施の形態1と同様の効果を得た上で、実施の形態1に比較してより高速性を確保することができる。
【0088】
(実施の形態3)
上記各実施の形態1,2は、合成後の受信品質が劣化したときに、ダイバーシチ動作を行う例である。
【0089】
実施の形態3は、合成後の受信品質に拘らずダイバーシチ動作を行う例である。
【0090】
ハード的構成は図1のダイバーシチ装置100と同様である。本実施の形態では、制御部120は、受信品質測定回路150により測定された合成後の受信品質を使用しない。このため、本実施の形態では、ダイバーシチ装置100は、受信品質測定回路150を除くことが可能である。
【0091】
また、本実施の形態は、実施の形態1,2のいずれにも適用することができる。
【0092】
図5は、実施の形態3に係るダイバーシチ装置のダイバーシチ動作を説明するフローチャートであり、図3のフローに対応する。図3と同一ステップには同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0093】
ステップS1でN個のアンテナでNブランチの合成ダイバーシチ受信すると、合成後の受信品質の判定を行うことなく、ステップS3に進む。
【0094】
また、ステップS9で増加後のブランチBのアンテナ比率aが、a=1でない場合は、ステップS6に戻ってブランチAとブランチBの割合を、1−a:aの割合で利得合成を実施する。
【0095】
a=1の場合は、合成後の受信品質の判定を行うことなく、ステップS11に進む。
【0096】
ステップS11で制御部160は、未使用のM−N−1個のブランチ中1つのブランチ(この場合はブランチA)を選択してステップS6に戻る。
【0097】
また、ステップS13で減少後のブランチBのアンテナ比率aが、a=0でない場合は、ステップS6に戻ってブランチAとブランチBの割合を、1−a:aの割合で利得合成を実施する。
【0098】
a=0の場合は、合成後の受信品質の判定を行うことなく、ステップS15に進む。
【0099】
ステップS15で制御部160は、未使用のM−N−1個のブランチ中1つのブランチ(この場合はブランチB)を選択してステップS6に戻る。
【0100】
上記フローに示すように、合成後の受信品質を条件分岐の判定要素としない。このため、合成後の受信品質に拘らず、常動でダイバーシチ動作を行うことになる。
【0101】
図6は、実施の形態3に係るダイバーシチ装置の他のダイバーシチ動作を説明するフローチャートであり、図4のフローに対応する。図4と同一ステップには同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0102】
ステップS1でN個のアンテナでNブランチの合成ダイバーシチ受信すると、合成後の受信品質の判定を行うことなく、ステップS3に進む。
【0103】
また、ステップS23で増加後のブランチBのアンテナ比率aが(1−ε)より大きい(a≦1−ε)場合は、ステップS6に戻ってブランチAとブランチBの割合を、1−a:aの割合で利得合成を実施する。
【0104】
a>1−εの場合は、合成後の受信品質の判定を行うことなく、ステップS11に進む。
【0105】
ステップS11で制御部160は、未使用のM−N−1個のブランチ中1つのブランチ(この場合はブランチA)を選択してステップS6に戻る。
【0106】
また、ステップS25で減少後のブランチBのアンテナ比率aが、a≧εの場合は、ステップS6に戻ってブランチAとブランチBの割合を、1−a:aの割合で利得合成を実施する。
【0107】
a<εの場合は、合成後の受信品質の判定を行うことなく、ステップS15に進む。
【0108】
ステップS15で制御部160は、未使用のM−N−1個のブランチ中1つのブランチ(この場合はブランチB)を選択してステップS6に戻る。
【0109】
本フローは、図5のフローと同様に、合成後の受信品質を条件分岐の判定要素としない。このため、合成後の受信品質に拘らず、常動状態でダイバーシチ動作を行うことになる。
【0110】
このように、本実施の形態によれば、実施の形態1,2と同様に、N個のブランチ中、受信状態が悪い1ブランチ(ブランチA)を選択し、未使用のM−N個のブランチ中、1つのブランチ(ブランチB)を選択する場合、ブランチAとブランチBの合成比率が徐々に切り替わる。したがって、実施の形態1,2と同様の効果を得ることができる。
【0111】
本実施の形態は、合成後の受信品質に拘らず、常時、上述したダイバーシチ動作を実施することから、合成後の受信品質が劣化した場合に上述したダイバーシチ動作を実施する実施の形態1,2に比べて受信感度をより改善することができる。
【0112】
本実施の形態は、図2の鎖線に示すように、目標とするアンテナ比率点(追い込みたいアンテナ比率点)が下に凸の曲線の底部にあって、このアンテナ比率点に常時近づくようにダイバーシチ動作である。
【0113】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0114】
例えば、上記各実施の形態では、アンテナを4本用いた場合であったが、3本以上であればその数に限定はなく、同様の作用効果が得られる。
【0115】
また、上記各実施の形態では、受信品質測定回路131,132,150でRSSIを測定する形態を示したが、信号対雑音比SNR(Signal to Noise Ratio)や信号対干渉信号比SIR(Signal to Interference Ratio)などの指標を測定する形態やこれらの指標を組み合わせた形態でも構わない。
【0116】
また、N(≧2)ブランチの合成ダイバーシチ装置であればどのような装置にも適用できる。例えば、携帯電話機/PHS(Personal Handy-Phone System)は勿論のこと、PDA(Personal Digital Assistants)等の携帯情報端末、ノート型パソコン等の情報処理装置にも適用可能である。
【0117】
また、上記各実施の形態では、ダイバーシチ装置という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、合成ダイバーシチ受信機等でもよいことは勿論である。
【0118】
また、上記ダイバーシチ装置を構成する各回路部の種類、数及び接続方法などは前述した実施の形態に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明に係るダイバーシチ装置は、アンテナ選択機能付き合成ダイバーシチ受信装置に汎用に適用することができる。TDMA通信方式、またTDMA以外の通信方式や、HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)のような通信状態の良化が特に望まれる通信方式を採用した移動体通信システムの携帯電話機等の移動局やこの移動局と無線通信を行う基地局に適用して好適である。
【符号の説明】
【0120】
100 ダイバーシチ装置
101〜104 アンテナ
110 アンテナ選択回路
121 ブランチ1受信部
122 ブランチ2受信部
131 ブランチ1受信品質測定回路
132 ブランチ2受信品質測定回路
140 合成部
150 受信品質測定回路
160 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
N(≧2)ブランチの合成ダイバーシチ装置であって、
M(>N)個のアンテナと、
前記M(>N)個のアンテナそれぞれを選択可能なアンテナ選択手段と、
前記アンテナ選択手段で選択された前記アンテナにより捉えられた無線信号を受信するNブランチ受信手段と、
前記N個のブランチの受信品質を測定する受信品質測定手段と、
前記Nブランチ受信手段それぞれから出力される受信信号を同相合成する合成手段と、
受信していたブランチの受信品質が低下した場合、今まで受信していた1ブランチと非受信であったM−N個のブランチのうち1つを選択し、該2ブランチの可変利得合成を行うように制御する制御手段と、
を備えるダイバーシチ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、使用中のN個のブランチのうち最も受信品質が低いブランチを選択し、これと現在未使用のアンテナのうち1つと可変利得合成を行う請求項1記載のダイバーシチ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、非受信であったアンテナの利得を低い値に設定しておき、受信品質の良化/悪化に従って、前記非受信であったアンテナの利得比率を増加/減少させる請求項1記載のダイバーシチ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、非受信であったアンテナの利得を中間値に設定しておき、受信品質の良化/悪化に従って、前記非受信であったアンテナの利得比率を増加/減少させる請求項1記載のダイバーシチ装置。
【請求項5】
前記制御手段は、受信品質が良化しない場合、前記非受信であったアンテナの利得比率を下げ、該利得比率が0となったとき、別の未使用アンテナを選択する請求項1記載のダイバーシチ装置。
【請求項6】
前記合成手段により合成された合成後の受信品質を測定する合成後受信品質測定手段を備え、
前記制御手段は、合成後の受信品質が所定以上劣化した場合、今まで受信していた1ブランチと、非受信であったM−N個のブランチのうち1つを選択し、該2ブランチの可変利得合成を行う請求項1記載のダイバーシチ装置。
【請求項7】
前記合成手段により合成された合成後の受信品質を測定する合成後受信品質測定手段を備え、
前記制御手段は、合成後の受信品質が良い場合にアンテナ切り替えを実施して、各アンテナの受信状態をあらかじめ調べておき、未使用アンテナを選択時に、最も受信品質が良いアンテナを選択する請求項1記載のダイバーシチ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−23803(P2011−23803A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164721(P2009−164721)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】