説明

ダイバーシティ装置および送信ダイバーシティ制御方法

【課題】送信ダイバーシティ制御専用のフィードバック情報を必要とせずに、送信ダイバーシティを適切に制御することを可能とする。
【解決手段】送信出力を指示するパワーコントロールビットAを受信し、該パワーコントロールビットAに基づいて送信ダイバーシティを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイバーシティ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FDD(周波数分割全二重)通信方式等のように送信と受信のキャリア周波数が異なる無線通信システムにおいては、送信と受信の電波伝搬状況が異なる可能性があるので、送信局が受信信号の状態から送信ダイバーシティを制御しても効果が得られない場合があり、通信品質が安定しない。このため、従来は、受信局が送信局からの受信信号に基づいて当該送信局の送信ダイバーシティを制御する専用のフィードバック情報を生成し、この専用フィードバック情報を当該送信局へ提供している。なお、ダイバーシティ技術については特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2002−359587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した従来の技術では、受信局から送信局へ送信ダイバーシティ制御専用のフィードバック情報を伝達するための通信リソース(チャネルや伝送フォーマット内の使用可能領域等)が必要となる。しかし、既存の無線通信システムでは、その通信リソースを新たに割当てることができない場合がある。例えば、既存のCDMA(符号分割多元接続)方式移動通信システムの一つにおいては、基地局において、フィードバック情報を生成する手段を追加しなければならない。さらに、基地局から移動局方向の伝送フォーマットを改定しなければ、基地局から移動局へ該専用フィードバック情報を伝達することができず、従って移動局の送信ダイバーシティを適切に制御することができない。また、仮に伝送フォーマットを改定したとしても、フィードバック情報の伝送分だけデータ伝送効率が低下するという問題が生じる。
【0004】
また、受信局において、送信ダイバーシティ制御専用のフィードバック情報を生成する処理分の負荷が増加するという問題もある。さらに、送信局の送信ダイバーシティ制御機能は、その専用フィードバック情報に対応しなければならず、送信ダイバーシティの制御方式が限定される等の悪影響が生じる虞もある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、送信ダイバーシティ制御専用のフィードバック情報を必要とせずに、送信ダイバーシティを適切に制御することができるダイバーシティ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載のダイバーシティ装置は、複数のアンテナを備えたダイバーシティ装置において、送信するアンテナを切り替えるアンテナ切替手段と、現在、送信中か否かを判断し、未送信の場合には、前記アンテナ切替手段が切り替え可能であるとして、前記アンテナ切替手段に対して切り替えを実行させる切替制御手段と、該ダイバーシティ装置の送信出力の増加または減少を指示する制御情報を受信する受信手段と、を有し、前記切替制御手段は、前記受信手段により受信した複数の前記制御情報のうち、前記ダイバーシティ装置の送信出力の増加を指示する制御情報の割合が多くない場合には、第1の所定時間経過迄は前記アンテナ切替手段に対して切り替えの実行を待機させるようにし、更に、前記ダイバーシティ装置の送信出力の増加を指示する制御情報の割合が多い場合には、前記アンテナ切替手段に対して切り替えを実行させた後、第2の所定時間経過迄は切り替えの実行を待機させるようにすることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載のダイバーシティ装置においては、前記切替制御手段は、現在、送信中か否かを判断した結果、送信中の場合には、更に、送信データが損なわれたとしても通信品質に悪影響を及ぼすか否かを判断し、通信品質に悪影響を及ぼさないと判断された場合には、前記アンテナ切替手段が切り替え可能であるとして、前記アンテナ切替手段に対して切り替えを実行させることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載のダイバーシティ装置においては、前記アンテナ切替手段はスイッチから構成されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載のダイバーシティ装置においては、前記アンテナ切替手段は、前記複数のアンテナに供給する送信信号に対して重み付けすることにより、送信するアンテナを切り替えることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載のダイバーシティ装置においては、前記重み付けする送信信号は、ベースバンド信号であることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載のダイバーシティ装置においては、前記重み付けする送信信号は、無線出力信号であることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の送信ダイバーシティ制御方法は、複数のアンテナを備えたダイバーシティ装置における送信ダイバーシティ制御方法において、現在、送信中か否かを判断し、未送信の場合には、送信するアンテナが切り替え可能であるとして、送信するアンテナを切り替えるステップと、前記送信するアンテナの切り替え後、該ダイバーシティ装置の送信出力の増加または減少を指示する制御情報を複数受信するステップと、前記受信した複数の前記制御情報のうち、前記ダイバーシティ装置の送信出力の増加を指示する制御情報の割合が多くない場合、第1の所定時間経過迄は前記送信するアンテナの切り替えを待機するステップと、前記受信した複数の前記制御情報のうち、前記ダイバーシティ装置の送信出力の増加を指示する制御情報の割合が多い場合、前記送信するアンテナを切り替えた後、第2の所定時間経過迄は前記送信するアンテナの切り替えを待機するステップとを具備することを特徴とする。
請求項8に記載の送信ダイバーシティ制御方法においては、現在、送信中か否かを判断した結果、送信中の場合には、更に、送信データが損なわれたとしても通信品質に悪影響を及ぼすか否かを判断し、通信品質に悪影響を及ぼさないと判断された場合には、送信するアンテナが切り替え可能であるとして、送信するアンテナを切り替えるステップをさらに具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、送信出力指示用の既存の制御情報を送信ダイバーシティの制御に活用したので、送信ダイバーシティ制御専用のフィードバック情報は不要となる。さらに、送信出力の指示内容に基づいて送信ダイバーシティを制御するので、送信出力の増減に応じて送信ダイバーシティを適切に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を順次説明する。
本実施形態においては、CDMA方式移動通信システムの移動局が本発明に係るダイバーシティ装置を具備する場合を例に挙げて説明する。なお、このCDMA方式移動通信システムは、基地局が移動局からの受信強度に応じて当該移動局の送信出力を増減制御するものである。そして、その送信出力制御は、移動局と基地局間の距離及びフェージングに起因した基地局における各移動局からの受信強度のばらつきを抑えることを目的としている。すなわち、各移動局からの受信強度は、移動局の送信出力一定条件下では移動局と基地局間の距離に応じて基地局に近い移動局ほど大きくなる。また、フェージングにより減衰の大きさが異なる。従って、そのままでは基地局における受信電力が低い移動局から受信し辛くなる。そこで、従来より、基地局が移動局の送信出力を制御して各移動局からの受信強度の均衡を図っている。
【0015】
具体的には、基地局は制御対象の移動局へパワーコントロールビットを送信する。パワーコントロールビットは、1ビット構成であり、ビット値「0」が0.5dBまたは1dBの送信電力増加の指示、ビット値「1」が0.5dBまたは1dBの送信電力減少の指示である。移動局は、基地局から受信したパワーコントロールビットの指示に従って、自己の送信電力を増減する。これにより移動局の送信出力が変化する。
【0016】
本発明は、上記した送信出力指示用の既存の制御情報(パワーコントロールビット)に着目し、該既存の制御情報を送信ダイバーシティの制御に活用することを着想したものである。以下、上記した既存のパワーコントロールビットを送信ダイバーシティの制御に利用するための構成を主に説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る移動局の構成を示すブロック図である。なお、図1には、移動局の構成のうち、無線送受信機能に係る構成を示し、その他の構成は省略している。
図1において、移動局は2つのアンテナ1−1,2を有している。アンテナ共用器2は、送信と受信とにアンテナ1−1,2を共用する。受信RF部3は、アンテナ1−1,2により受信された各RF信号をベースバンド信号に変換し、さらにデジタル化して適応アレーアンテナ処理部4へ出力する。適応アレーアンテナ処理部4は、参照信号と各受信信号とを使用して、MMSE(Minimum Mean Square Error:最小2乗誤差法)などに基づく適応アルゴリズムを用いた適応信号処理を行い、適応アレーアンテナによる受信を行う。この適応アレーアンテナ出力信号はデータ受信部へ出力されてデータ受信処理が行われる。
【0018】
また、適応アレーアンテナ出力信号はパワーコントロールビット検出部5にも入力される。パワーコントロールビット検出部5は適応アレーアンテナ出力信号の中からパワーコントロールビットを検出する。そして、この検出されたパワーコントロールビットAは、送信ダイバーシティ制御部7に入力される。
【0019】
送信RF部6は、ベースバンドの送信信号をRF信号に変換し、さらに電力増幅し、無線出力信号Bを送信ダイバーシティ制御部7へ出力する。そして、その電力増幅レベルについては、従来と同様に、パワーコントロールビットAの指示に応じて増減させる。
【0020】
送信ダイバーシティ制御部7は、パワーコントロールビットAによる送信電力の指示内容に基づいて送信ダイバーシティを制御する。送信ダイバーシティ制御部7は、その送信ダイバーシティ制御により送信するアンテナを選択し、この選択したアンテナに対して無線出力信号Bを出力する。従って、アンテナ1−1を用いて送信する場合は、無線出力信号Bが無線出力信号C1として送信ダイバーシティ制御部7から出力される。一方、アンテナ1−2を用いて送信する場合は、無線出力信号Bが無線出力信号C2として送信ダイバーシティ制御部7から出力される。
【0021】
図2は、図1に示す送信ダイバーシティ制御部7の構成を示すブロック図である。図2において、制御部11は、パワーコントロールビットAを使用して送信ダイバーシティ制御処理を行う。送信ダイバーシティ制御部7は、その送信ダイバーシティ制御処理により送信するアンテナを選択し、この選択結果に応じてスイッチ12を切り替え制御する。
【0022】
また、制御部11は、送信状態を示す情報を取得することができる。例えば、現在、送信を待機しているのか、それとも送信中であるのか、いずれの状態であるのかを知ることができる。また、未送信の送信データの有無や種類を知ることができる。そして、制御部11は、現在の送信状態に基づいてスイッチ12を切り替え可能であるか否かを判断する。例えば、送信待機中の場合、未送信の送信データが無い場合、及び未送信の送信データが損なわれたとしても通信品質に悪影響を及ぼさない場合には切り替え可能と判断する。
【0023】
次に、送信ダイバーシティ制御に係る動作を説明する。
図3は、図2に示す制御部11が行う送信ダイバーシティ制御処理の一実施例の流れを示すフローチャートである。
図3において、先ず、制御部11は、現在の送信状態に基づいてスイッチ12を切り替え可能であるか否かを判断する(ステップS101)。この判断の結果、切り替え可能な場合にスイッチ12を切り替える(ステップS102)。これにより、今まで送信していなかったアンテナが送信アンテナとなる。
【0024】
次いで、制御部11は、スイッチ12の切り替え後に入力されたパワーコントロールビットAの和を計算する(ステップS103)。なお、上述したように、パワーコントロールビットAは、1ビット構成であり、ビット値「0」が送信電力増加の指示、ビット値「1」が送信電力減少の指示であるので、ステップS103によるパワーコントロールビットAの和は、送信電力の増加指示の回数が多いほど小さい値となる。すなわち、パワーコントロールビットAの和は、切り替え後の送信アンテナによる送信電力の増加指示の割合を示しており、該和が小さいほど基地局からの送信電力の増加指示の割合が大きく、送信するアンテナを切り替えたことの効果が小さいと判断することができる。
【0025】
また、ステップS103において和を計算するパワーコントロールビットAの個数は、数個(例えば2〜4個)でよい。この理由は、電波伝搬環境の変化に対する追従性の向上のため、また、送信電力自体が変化することによる影響を排除するためには、和を計算するパワーコントロールビットAの個数を極力少なくすることが望ましいからである。
【0026】
次いで、ステップS104では、パワーコントロールビットAの和と所定の閾値とを比較し、該和が所定の閾値以下であるか否かを判断する。この閾値は、送信するアンテナを切り替えたことによって送信ダイバーシティ効果が得られたか否かを判断するための境界値である。例えば、基地局からの送信電力の増加指示の割合が多い場合、送信ダイバーシティ効果が得られなかったと判断する。そして、本実施形態では、パワーコントロールビットAのビット値「0」が送信電力増加の指示、ビット値「1」が送信電力減少の指示であるので、和を計算する個数が2の場合、閾値を0超過且つ1未満の値、例えば0.5とし、個数が3の場合、0.5又は1.5とし、個数が4の場合、1.5とする。これにより、パワーコントロールビットAの和が閾値以下の場合には、アンテナを切り替えたことによる送信ダイバーシティ効果が得られなかったと判断し、閾値超過の場合にはその効果が得られたと判断する。また、和の計算は、単なる「0」と「1」の割合を計算するためのや、別の方法(単位時間内の割合など)を用いて、割合を計算してもよい。
【0027】
次いで、ステップS104の判断の結果、閾値超過の場合には、アンテナ切り替えによる効果が得られたので、そのまま現在の送信アンテナを維持し、タイマー1をスタートさせてタイムアウトするまでの一定期間待機する(ステップS105、S106)。そして、タイムアウト後にステップS101へ戻る。
【0028】
一方、ステップS104の判断の結果、閾値以下の場合には、アンテナ切り替えによる効果が得られなかったので、スイッチ12を切戻し、切り替え前のアンテナを送信アンテナとする(ステップS107)。次いで、タイマー2をスタートさせてタイムアウトするまでの一定期間待機し、タイムアウト後にステップS101へ戻る(ステップS108、S109)。
【0029】
上述した図3の実施例では、一定周期で、送信していないアンテナを送信アンテナとして試行し、基地局からの送信電力の増加指示の割合を検証する。そして、送信電力の増加指示の割合が少ないことからアンテナ切り替えによる送信ダイバーシティ効果が得られたと判断した場合には、そのまま現在の送信アンテナを維持する。一方、送信電力の増加指示の割合が多いことからアンテナ切り替えによる送信ダイバーシティ効果が得られなかったと判断した場合には、切り替え前のアンテナに戻す。これにより、基地局からの送信電力の増加指示の割合が小さくなるように送信ダイバーシティの制御が行われることとなる。これは、基地局の受信強度がより良好な状態になるように、送信ダイバーシティの制御が適切に行われることを意味する。この結果、通信品質の向上を図ることができるという優れた効果が得られる。
【0030】
なお、タイマー1,2のタイムアウト時間は電波伝搬環境の変化速度に基づいて設定する。これにより、電波伝搬環境の変化速度に合わせて送信電力の増加指示の割合を検証し、適切なアンテナへと切り替えることが可能となるので、電波伝搬環境の変化に対する追従性が向上する。
【0031】
図4は、図2に示す制御部11が行う送信ダイバーシティ制御処理の他の実施例の流れを示すフローチャートである。
図4においては、先ず、制御部11は、入力されたパワーコントロールビットAの和を計算し、この和を所定の閾値と比較し、該和が閾値以下であるか否かを判断する(ステップS201,S202)。この閾値は、現在送信しているアンテナの送信効果の良さを判断するための境界値である。この例では、上記図3の実施例と同様に、パワーコントロールビットAの和が閾値以下の場合には送信効果がよくないと判断し、閾値超過の場合には送信効果が良いと判断する。
【0032】
ステップS202の判断の結果、現在の送信アンテナにより効果が得られている場合(ステップS202がNO)には、タイマー1をスタートさせてタイムアウトするまでの一定期間待機し、タイムアウト後にステップS201へ戻る(ステップS203、S204)。
【0033】
一方、ステップS202の判断の結果、現在の送信アンテナでは効果が得られていない場合(ステップS202がYES)には、アンテナを切り替え可能か否かを判断する(ステップS205)。そして、切り替え可能ならばスイッチ12を切り替え、今まで送信していなかったアンテナを送信アンテナとする。次いで、タイマー2をスタートさせてタイムアウトするまでの一定期間待機し、タイムアウト後にステップS201へ戻る(ステップS206、S207、S208)。
【0034】
上述した図4の実施例では、一定周期で、現在の送信アンテナによる基地局からの送信電力の増加指示の割合を検証する。そして、送信電力の増加指示の割合が少ないことから現在の送信アンテナによる送信効果が良いと判断した場合には、そのまま現在の送信アンテナを維持する。一方、送信電力の増加指示の割合が多いことから現在の送信アンテナによる送信効果がよくないと判断した場合には、送信するアンテナを切り替える。これにより、基地局からの送信電力の増加指示の割合が小さくなるように送信ダイバーシティの制御が行われることとなり、従って基地局の受信強度がより良好な状態になるように、送信ダイバーシティの制御が適切に行われる。
【0035】
上述したように第1の実施形態によれば、基地局から受信する既存のパワーコントロールビットを利用して、送信ダイバーシティの制御を適切に行うことができる。従って、送信ダイバーシティ制御専用のフィードバック情報は不要であり、基地局は送信ダイバーシティ制御専用のフィードバック情報を生成する必要がない。これにより、該専用フィードバック情報の生成のために処理負荷が増加するという問題が解消される。また、専用フィードバック情報の伝送分だけデータ伝送効率が低下する問題も解消される。
【0036】
さらに、移動局は送信ダイバーシティ制御専用のフィードバック情報に対応する必要がないので、移動局用の端末装置が採用する送信ダイバーシティの制御方式は任意となる。この結果、移動局の設計の自由度が増すことから端末装置の性能向上やコストダウン等の効果が期待できる。
【0037】
また、一定周期で基地局からのパワーコントロールビットによる送信電力の増加指示の割合を検証するので、電波伝搬環境が変化したことを間接的に検出することができ、電波伝搬環境の変化に追従して送信ダイバーシティを制御することが可能となる。
【0038】
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る移動局の構成を示すブロック図である。この図5において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
図5に示す移動局においては、送信するアンテナをスイッチを使用して切り替えるのではなく、各アンテナ1−1,2へ個別に供給する送信信号に対して重み付けすることにより切り替える。そして、その重み付けは、ベースバンド信号に対して行う。
【0039】
具体的には、各アンテナ1−1,2用の無線出力信号を生成する2つの送信RF部6を設ける。また、送信ダイバーシティ制御部7aには、送信RF部6の各々に対応して重み付け部21を設ける。そして、制御部11aが、各重み付け部21に対して、各アンテナ1−1,2用の重み係数W1,W2を供給する。重み付け部21は、ベースバンドの送信信号を制御部11aから供給された重み係数を用いて重み付けする。これにより、アンテナ1−1に対しては、ベースバンドの送信信号が重み係数W1により重み付けされた後に、RF信号に変換された無線出力信号が供給される。また、アンテナ1−2には、ベースバンドの送信信号が重み係数W2により重み付けされた後に、RF信号に変換された無線出力信号が供給される。
【0040】
また、制御部11aは、上記図3または図4の送信ダイバーシティ制御処理と同様の処理を行う。但し、スイッチ12を切り替える代わりに、重み係数W1,W2を制御する。この重み係数の制御方法を以下に説明する。
【0041】
初めに、重み係数W1,W2の初期値として、一方の値を0に設定し、もう一方の値を1に設定する。これにより、重み係数の値が1である方のアンテナが送信アンテナとなる。そして、送信するアンテナを変更する際には、W1とW2の和が1である条件を保ちながら、値が1である重み係数を徐々に0へと変更するとともに値が0である重み係数を徐々に1へと変更する。このようにして2つの重み係数W1、W2の値を逆転させることにより、送信するアンテナを切り替える。
【0042】
また、制御部11aは、重み係数の値が0となっている方の送信RF部6に対しては、動作を停止させる。例えば送信RF部6への電源供給を停止する。そして、アンテナ切り替え操作を行う際には双方の送信RF部6を動作させ、2つの重み係数W1、W2の値の0/1が逆転して切り替えが完了したら、重み係数の値が0の方の送信RF部6の動作を停止させる。
【0043】
上述した第2の実施形態によれば、上記した第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、重み付け制御により送信アンテナの切り替えをスムーズに行うことができる。また、ベースバンド領域において簡易に送信信号を重み付けすることができる。また、機構的なスイッチで切り替えることによるノイズを無くすことができる。
【0044】
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
図6は、本発明の第3の実施形態に係る移動局の構成を示すブロック図である。この図6において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
図6に示す移動局においては、上記した図5の第2の実施形態と同様に、各アンテナ1−1,2へ個別に供給する送信信号に対して重み付けすることにより、送信するアンテナを切り替える。但し、その重み付けは、無線出力信号に対して行う。
【0045】
具体的には、送信ダイバーシティ制御部7bに、各アンテナ1−1,2の各々に対応して重み付け部22を設ける。そして、制御部11bが、上記した第2の実施形態と同様のダイバーシティ制御処理を行い、各重み付け部22に対して、各アンテナ1−1,2用の重み係数W1,W2を供給する。重み付け部22は、送信RF部6から出力された無線出力信号を制御部11bから供給された重み係数を用いて重み付けする。これにより、アンテナ1−1に対しては、無線出力信号が重み係数W1により重み付けされた後に供給される。また、アンテナ1−2には、無線出力信号が重み係数W2により重み付けされた後に供給される。
【0046】
上述した第3の実施形態によれば、上記した第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、重み付け制御により送信アンテナの切り替えをスムーズに行うことができる。また、送信RF部6が一つでよいので、送信RF部6の動作のオンオフ制御が不要となる。また、機構的なスイッチで切り替えることによるノイズを無くすことができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した実施形態では、2つのアンテナを使用したが、3つ以上のアンテナを使用する場合にも同様に適用することができる。また、受信に適応アレーアンテナを構成しない無線装置にも同様に適用することができる。また、基地局用の無線装置にも同様に適用してもよい。
【0048】
また、送信局に対して送信出力を指示する制御情報を送信する無線通信システムであれば、各種の無線通信システムに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る移動局の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す送信ダイバーシティ制御部7の構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示す制御部11が行う送信ダイバーシティ制御処理の一実施例の流れを示すフローチャートである。
【図4】図2に示す制御部11が行う送信ダイバーシティ制御処理の他の実施例の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る移動局の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る移動局の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
1−1,2…アンテナ、5…パワーコントロールビット検出部、7,7a,7b…送信ダイバーシティ制御部、11,11a,11b…制御部、12…スイッチ、21,22…重み付け部、A…パワーコントロールビット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを備えたダイバーシティ装置において、
送信するアンテナを切り替えるアンテナ切替手段と、
現在、送信中か否かを判断し、未送信の場合には、前記アンテナ切替手段が切り替え可能であるとして、前記アンテナ切替手段に対して切り替えを実行させる切替制御手段と、
該ダイバーシティ装置の送信出力の増加または減少を指示する制御情報を受信する受信手段と、を有し、
前記切替制御手段は、前記受信手段により受信した複数の前記制御情報のうち、前記ダイバーシティ装置の送信出力の増加を指示する制御情報の割合が多くない場合には、第1の所定時間経過迄は前記アンテナ切替手段に対して切り替えの実行を待機させるようにし、更に、前記ダイバーシティ装置の送信出力の増加を指示する制御情報の割合が多い場合には、前記アンテナ切替手段に対して切り替えを実行させた後、第2の所定時間経過迄は切り替えの実行を待機させるようにする、
ことを特徴とするダイバーシティ装置。
【請求項2】
前記切替制御手段は、現在、送信中か否かを判断した結果、送信中の場合には、更に、送信データが損なわれたとしても通信品質に悪影響を及ぼすか否かを判断し、通信品質に悪影響を及ぼさないと判断された場合には、前記アンテナ切替手段が切り替え可能であるとして、前記アンテナ切替手段に対して切り替えを実行させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のダイバーシティ装置。
【請求項3】
前記アンテナ切替手段はスイッチから構成されることを特徴とする請求項1に記載のダイバーシティ装置。
【請求項4】
前記アンテナ切替手段は、前記複数のアンテナに供給する送信信号に対して重み付けすることにより、送信するアンテナを切り替えることを特徴とする請求項1に記載のダイバーシティ装置。
【請求項5】
前記重み付けする送信信号は、ベースバンド信号であることを特徴とする請求項4に記載のダイバーシティ装置。
【請求項6】
前記重み付けする送信信号は、無線出力信号であることを特徴とする請求項4に記載のダイバーシティ装置。
【請求項7】
複数のアンテナを備えたダイバーシティ装置における送信ダイバーシティ制御方法において、
現在、送信中か否かを判断し、未送信の場合には、送信するアンテナが切り替え可能であるとして、送信するアンテナを切り替えるステップと、
前記送信するアンテナの切り替え後、該ダイバーシティ装置の送信出力の増加または減少を指示する制御情報を複数受信するステップと、
前記受信した複数の前記制御情報のうち、前記ダイバーシティ装置の送信出力の増加を指示する制御情報の割合が多くない場合、第1の所定時間経過迄は前記送信するアンテナの切り替えを待機するステップと、
前記受信した複数の前記制御情報のうち、前記ダイバーシティ装置の送信出力の増加を指示する制御情報の割合が多い場合、前記送信するアンテナを切り替えた後、第2の所定時間経過迄は前記送信するアンテナの切り替えを待機するステップと、
を具備することを特徴とする送信ダイバーシティ制御方法。
【請求項8】
現在、送信中か否かを判断した結果、送信中の場合には、更に、送信データが損なわれたとしても通信品質に悪影響を及ぼすか否かを判断し、通信品質に悪影響を及ぼさないと判断された場合には、送信するアンテナが切り替え可能であるとして、送信するアンテナを切り替えるステップをさらに具備することを特徴とする請求項7に記載の送信ダイバーシティ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−195151(P2007−195151A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318840(P2006−318840)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【分割の表示】特願2004−39652(P2004−39652)の分割
【原出願日】平成16年2月17日(2004.2.17)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】