説明

ダイヤルイン時定数を有するエレクトロポレーション

【課題】方法、システム及び装置がエレクトロポレーションの正確な時定数を提供する。
【解決手段】所望の時定数を有するモデル電圧を提供するためにモデル電圧関数を作り出す(デジタル、アナログ又はこれらの組合せ)。電圧がサンプルに印加される。比較回路は、減衰することができる出力電圧と、モデル電圧とを比較し、出力制御信号を提供する。この出力信号は、サンプルに平行な抵抗を変化させるために用いられ、これによって、出力電圧を、所望の時定数を有するモデル電圧に近似するように変更する。一態様において、制御信号を、並列抵抗を変化させるよう抵抗に直列のトランジスタをオンオフするために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年8月22日に出願された「エレクトロポレーションのダイヤルイン時定数」(DIAL-IN TIME CONSTANT FOR ELECTROPORATION)の表題の米国仮特許出願第61/091,177号(代理人整理番号002558−082100US)の利益を主張し、その内容は、参照によりそのままここに組み込まれる。
【0002】
本願は、本発明の譲受人に譲渡された以下の米国特許出願:2006年12月6日に出願されたラグスデールによる「エレクトロポレーションにおけるサンプル抵抗の測定」(MEASURING SAMPLE RESISTANCE IN ELECTROPORATION)の表題の米国特許出願第11/567,438号(以下、ラグスデールI)及び2007年9月19日に出願されたラグスデールによる「抵抗パルス変調」(RESISTANCE PULSE MODULATION)の表題の米国特許出願第11/857,679号(以下、ラグスデールII)にも関連し、その内容は、参照によりそのままここに組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本発明は、一般的にエレクトロポレーションシステムに関し、更に詳しくは、正確かつユーザでも設定可能な時定数を有するエレクトロポレーションシステムを提供することに関する。
【0004】
細胞又は他の生体分子を少しの間だけ強電界にさらすことによって膜を一時的に不安定化させる(destabilize)ことが知られている。この影響は、誘導膜透過電位(induced transmembrane potential)に起因する絶縁破壊として説明され、「エレクトロポレーション」と称される。エレクトロポレーションを用いる手順の一部は、モノクローナル抗体の製造(production of monoclonal antibodies)、細胞間融合(cell-cell fusion)、細胞組織融合(cell-tissue fusion)、膜タンパク質の挿入(insertion of membrane proteins)及び形質転換(genetic transformation)である。
【0005】
細胞又は組織は、1以上の直流パルスを印加することによって電界にさらされる。これらのパルスは、電気的処理において印加され、その結果、細胞の損傷(cytotoxicity)を最小にしながら一時的に膜を不安定化させる。電気的処理の強度は、典型的には、印加される電界の電界強度に関して表現される。この電界強度は、電極に印加される電圧を電極間の距離で除算したものとして規定される。エレクトロポレーションで用いられる電界強度は、典型的には、250V/cmから10,000V/cmに及ぶ。
【0006】
有効なエレクトロポレーションのためには、電気パルスの形状、例えば、時定数を制御する必要がある。例えば、エレクトロポレーションそれ自体は、電撃(electrocution)とほとんど又は全くエレクトロポレーションのないところとの間の狭い窓によって示されるパルス電圧やパルス持続時間のような狭い範囲のパラメータ内で生じる。非常に長い持続時間又は非常に高い電界強度を有するパルスが用いられる場合、細胞が溶解(破壊)されるおそれがある。パルスの持続時間が非常に短い又はパルスの電界強度が非常に低い場合、エレクトロポレーション効率が失われる。更に困難なことには、最適電圧及び時定数が細胞のタイプによって変化する。傷つきやすく(sensitive)かつトランスフェクト(transfect)(分子が膜を通過すること)が困難な細胞を研究するためにエレクトロポレーションを用いる際に電流を重要視することによって、エレクトロポレーション状態の制御が特に重要となる。
【0007】
エレクトロポレーションパラメータを選択する際の問題の一つは、サンプルそれ自体(細胞及びバッファ)がエレクトロポレーションシステムに課される負荷、したがって、時定数の重要な要因であることである。ラグスデールIは、サンプルの抵抗を測定する方法を説明している。理論的には、ラグスデールIIに記載されているように、適切な時定数を有するパルスの供給を可能にするために並列抵抗を設定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、サンプルの抵抗は時間的に変化し、これによって、印加される電気パルスの形状に影響を及ぼす。例えば、パルスが印加される前のサンプルの抵抗は、X秒後の抵抗とは異なり、X秒後の抵抗は、電気パルスを更に印加した後の抵抗とは異なる。したがって、所望の形状の電気パルスを取得するのは非常に困難である。
【0009】
したがって、特定の時定数、例えば、ユーザがダイヤルイン(dial-in)できる(すなわち、ユーザが設定可能な)時定数を取得する方法、システム及び装置を提供することが所望されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施の形態は、エレクトロポレーションシステムからサンプルに送信される経時変化する電気信号に対して所望の形状を取得するシステム及び方法を提供する。所望の形状を提供するためにモデル電圧関数(model voltage function)(アナログ、デジタル又はこれらの組合せ)が作り出される。比較回路は、電気信号の(減衰することができる)電圧とモデル電圧とを比較し、制御信号を出力する。この出力信号は、サンプルと並列な抵抗を変化させるために使用され、これによって、電気信号は、所望の形状を有するように変更される。一態様において、所望の形状は、電気信号の電圧の減衰速度を規定するユーザが設定可能な時定数を有する形状である。
【0011】
一つの典型的な実施の形態によれば、エレクトロポレーションシステムのサンプル負荷に電気信号を供給する方法を提供する。電気信号がサンプル負荷に供給されている間、電気信号の第1の電圧が減少する。この第1の電圧を、サンプルによって受信された出力電圧又は減少した電圧とすることができる。第1の電圧は、電気信号の第1の電圧の所望の減少を表すモデル関数のモデル電圧と比較される。比較に基づいて、サンプル負荷に並列な抵抗は、電気信号がサンプル負荷に供給されている間に変化する。電気信号をモデル関数に近似させるように並列抵抗を変化させることができる。
【0012】
他の典型的な実施の形態によれば、エレクトロポレーションシステムのサンプルに送信される電気信号の時定数又は形状の他の特性を正確に取得することができるエレクトロポレーションシステムを提供する。出力電圧をサンプル負荷に供給するコンデンサは、例えば、一度コンデンサが充電されると、選択的にサンプル負荷に結合される。サンプル負荷に並列な可変抵抗装置も、コンデンサに選択的に結合される。
【0013】
モデリング回路は、所望の形状の出力電圧を有するモデル電圧を出力する。比較回路は、出力電圧及びモデル電圧を受信する。二つの電圧の比較に基づいて、比較回路は、可変抵抗装置の入力部に送信される制御信号を出力する。この制御信号は、可変抵抗装置の抵抗を変化させる。電気信号をモデル関数に近似させるように制御信号を提供することができる。
【0014】
一実施の形態において、エレクトロポレーションシステムは、出力電圧を受信する電圧減少回路を有する比較回路を備える。比較回路は、モデル電圧も受信する。比較回路のコンパレータは、モデル電圧と減少した電圧との差を決定し、可変抵抗装置の抵抗を制御するために用いられる制御信号を出力する。
【0015】
以下の詳細な説明及び添付図面を参照することによって、本発明の性質及び利点を更によく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態によるエレクトロポレーションシステム100を示す。
【図2】図2は、本発明の実施の形態によるモデリング回路を有するエレクトロポレーションシステム200を示す。
【図3】図3は、本発明の実施の形態によるエレクトロポレーションシステムのサンプル負荷に電気信号を供給する方法を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の実施の形態による所望の形状の経時変化する電気信号を取得するために並列抵抗を変化させる方法のフローチャートである。
【図5A】図5Aは、本発明の実施の形態による指数関数的に減衰する波形を示す。
【図5B】図5Bは、本発明の実施の形態によるモデル電圧及び出力波形の時間に対する電圧のプロット例を示す。
【図6】図6は、本発明の実施の形態によるアナログモデリング回路600を有するエレクトロポレーションシステムのブロック図を示す。
【図7】図7は、本発明の実施の形態によるデジタルモデリング回路を有するエレクトロポレーションシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
しばらくの間、ユーザがエレクトロポレーションの時定数にダイヤルイン(dial-in)できるようにすることが所望されている。エレクトロポレーション中に送信される電気信号の所望の時定数を取得するために、実施の形態は、コンデンサを設定し、電気信号をコンデンサからサンプルに送信し、電気信号が送信されている間に、サンプルに並列な抵抗を調整する。所望の形状(例えば、時定数)の経時変化する電気信号は、並列抵抗を変化させることによって取得される。適切な変更は、電気信号の電圧と所望の形状を有するモデル関数のモデル電圧とを比較することによって決定される。したがって、電圧印加中にサンプルの抵抗が変化した場合でも、モデル電圧とほぼ同一の形状を取得するために、並列抵抗を比較に基づいて変化させる(例えば、増大又は減少)ことができる。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態によるエレクトロポレーションシステム100を示す。システム100は、電気信号をサンプル負荷(Rs)120に送信する。電気信号によって、サンプル120によって感知される経時変化する電圧が生じる。この電圧は、サンプル中の細胞の膜を不安定化させることができる。
【0019】
エレクトロポレーションシステムが哺乳類細胞に用いられるとき、電圧は、典型的には500V以下である。例えば3000Vに至るまでの高電圧を他の細胞に用いることもできる。本発明の実施の形態は、任意の電圧値と連動する。複数のサンプルがテストされ又はパラメータが最適化されるような場合、サンプル負荷Rs120は、各々が電気信号を受信する複数の生物サンプルを含むことができる。そのような実施の形態において、異なるサンプルが、2:3矩形行列で配置されるマイクロタイタープレートのようなサンプルプレート上に存在することができる。
【0020】
電気信号を送信する前に、充電回路105は少なくとも一つのコンデンサ110を充電する。充電中、スイッチ115、例えば、高電圧(HV)スイッチは、まだサンプル120に電圧を供給しないようにするために開いている。一実施の形態において、充電回路105は、電源又は他の何らかの定電力源若しくは定電流源である。他の実施の形態において、HVスイッチ115は、パルス数、パルス持続時間及びバーストパルスのようなプログラマブルパラメータを有するドライバである。また、コンデンサ110を、任意の数の異なる容量値に設定することができる。
【0021】
一度充電回路105がコンデンサ110を所望の値まで充電すると、HVスイッチ115が閉じられる。この時点で、電気信号がRs120に送信される。電気信号の例は、指数関数的に減衰するパルス、打切りされた(truncated)指数関数的に減衰するパルス又は垂下(droop)を有する方形波を含む。
【0022】
電気信号は、Rs120に並列接続された可変抵抗Rv125にも送信される。Rv125の抵抗値を、所望の形状を有するよう電気信号を選択するために選択し又は変化させることができる。例えば、指数関数的に減衰するパルスに対して、Rv125の抵抗は、(所望のパルス持続時間にほぼ等しくすることができる)電気信号が所望の時定数τ=CRを有するように決定され、この場合、R=(Rs×Rv)/(Rs+Rv)であり、Cはコンデンサ110の容量である。
【0023】
他の変数Rs(サンプル120の抵抗)を測定することができ、Rv及びCを、所望の時定数を取得するよう設定することができる。サンプル負荷125が複数の生物サンプルを有する場合、測定は、サンプルの全ての合成抵抗を反映することができる。Rsを測定する典型的な方法は、電気信号(例えば、パルス)を供給する前にサンプル抵抗の所定野タイプの測定を必要とする。この場合、並列抵抗Rv及び容量Cを、適切な時定数を有するパルスを供給できるように設定することができる。しかしながら、これらの方法は、しばしば、時定数を正確に制御するのに必要な程度まで正確にならない。例えば、選択された容量Cの誤差は約20%であり、選択された抵抗Rvの誤差は約10%である。
【0024】
他の問題は、サンプル抵抗が時間的に変化し、分散が非線形であり、かつ、サンプル抵抗が用いられる電圧に依存しうる(例えば、電圧が高くなるに従ってサンプル抵抗が低くなる。)ことである。一態様において、この変動は、少なくとも部分的にバッファウォータ(buffer water)の電気分解に起因する。典型的には、電気パルスは、所望の速度よりも速く減少する。補償のために、実施例は、所望の形状の電気パルスを維持するためにRv125を複数回変更する。Rv125に対する異なる抵抗を、ラグスデールIIに記載されているように取得することができる。
【0025】
時定数を、サンプル負荷の細胞又は他のタイプの生体分子に基づいて特別に選択することができる。一部のセルは傷つきやすくトランスフェクトが困難であるので、正確に制御された時定数は、エレクトロポレーションの成功を促進することができる。
【0026】
一態様において、Rvに対する変化は、モデリング回路から受け取るモデル関数に基づく。モデル関数をアナログ又はデジタル形態とすることができる。モデリング回路は、所望の時定数に従う電圧を提供する。Rvの抵抗値は、実際に印加される電圧とモデル電圧との比較に基づいて変化する。モデリング回路を用いたシステムの説明は、以下の通りである。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態によるモデリング回路を有するエレクトロポレーションシステム200を示す。システム200は、電気信号をサンプル負荷220に送信する。一態様において、電気回路の送信は、(少なくとも部分的に)コンピュータシステム250によって制御される。線は、電気的な接続を示し、矢印は、制御信号やデータのような情報の流れを示す。
【0028】
コンピュータシステム250は、一つ以上のプロセッサと、RAMのようなメモリと、入力/出力用のユーザインタフェースと、CD、(例えば、フラッシュメモリを用いる)サムドライブ、DVD等の外部記憶装置を受け入れるドッキングポート(docking port)と、を有することができる。プロセッサを、簡単なマイクロコントローラ又は更に複雑な中央処理装置とすることができる。
【0029】
一実施の形態において、コンピュータシステム250は、電気信号の入力パラメータを受信する。これらの入力パラメータを、ユーザによって入力し、及び/又は、エレクトロポレーションシステムそれ自体によって測定(し又は検出)することができる。入力パラメータは、(a)波形(指数関数又は方形波(exponential or square wave))、(b)電圧の特定の値又は範囲(例えば、10〜500V)、(c)容量の特定の値又は範囲(例えば、25〜3,275mfd)、(d)並列抵抗の特定の値又は範囲(例えば、50〜1000Ω)及び(e)サンプルの抵抗のうちの一つ以上を含む。
【0030】
入力パラメータに基づいて、コンピュータシステム250は、所望の容量を取得するために、(例えば、制御ライン235を通じて)利用できるコンデンサのセットから一つ以上のコンデンサ210を選択する。一実施の形態において、電解コンデンサが用いられる。一実施の形態において、コンピュータシステム250は、当該セットの各コンデンサの容量値を含む記憶素子を含む。記憶素子を、フラッシュRAM又は他の適切な記憶装置とすることができる。コンピュータシステム250は、所望の容量になるコンデンサを選択することができる。
【0031】
スイッチ215、例えば、高電圧(HV)スイッチが開いているときに、充電回路205は、コンピュータシステム250から充電コンデンサ210への命令を受け取ることができる。命令は、コンデンサ210への充電を継続するか否か又はコンデンサ210をどのレベルまで充電するかの命令を含むことができる。一実施の形態において、コンピュータシステム250は、分圧器255を通じて、コンデンサ210の両端間の電圧をモニタする。コンデンサ210の電圧が十分な値に到達すると、コンピュータシステム250は、負荷サンプルRs220及びRs220に並列接続された可変抵抗装置Rv225にコンデンサ210を接続するようHVドライバ215に信号を送信することができる。
【0032】
この時点で、電気信号がRs220及びRv225に送信される。一部の実施の形態において、コンピュータシステム250は、複数のパルス、パルス持続時間及びバーストパルスを生じるようにするためにHVスイッチ215をオンオフする。一態様において、電気信号は、指数関数的に減衰するパルス、打切りされた指数関数的に減衰するパルス又は垂下を有する方形波である。垂下を有する方形波信号を、長い時定数の指数関数的に減衰するパルスの一部とすることができる。方形波の端部に到達した後、コンデンサの電荷の残り(例えば、パルスの残り)を、他の経路を通じてアース端子に放出することができる。一態様において、方形波の特定の割合の垂下は出力である。典型的には、約10%の値が好適である。
【0033】
Rv225の抵抗の初期値を、所望の形状の信号を取得するのを助けるために設定することができる。例えば、指数関数的に減衰するパルスに対して、Rv225の抵抗を、所望の時定数τ=CRに公称的に(nominally)到達するよう自動的に決定することができ、この場合、R=(Rs×Rv)/(Rs+Rv)であり、Cは、コンデンサ210の容量である。
【0034】
Rsの初期値を、ラグスデールIに記載されているような種々の方法で決定することができる。例えば、低電圧を伴う交流電流を、電気パルスを送信する前に用いることができる。Rsの初期値を、測定された抵抗を有する他のサンプルとの類似性に基づいて簡単に推定することもできる。
【0035】
Rsの値が変化すると、Rv225の初期値によって高精度の時定数を取得しない。しかしながら、電気信号の送信中のRv225を変化させることによって、所望の高精度を提供することができる。
【0036】
Rv225を変化させることを、エレクトロポレーションシステム200からの電気信号(例えば、指数関数的なパルス(exponential pulse))の出力電圧を例えばノード260でモニタすることによって決定することができる。所望の形状からの(例えば、特定時間の)出力電圧の差に基づいて、Rv225を、電気信号を所望の形状に近づけるように変化させることができる。一態様において、所望の形状は、特定の時点の電気信号の所望の電圧値に対応するモデル電圧に対応する。
【0037】
一実施の形態において、差は、比較回路245を用いて決定される。例えば、電気信号の電圧は、比較回路245例えばコンパレータを用いてモデル電圧と比較される。比較回路245を、二つの値を比較することができる任意のアナログ又はデジタル回路とすることができる。デジタル形態において、アナログ−デジタルコンバータを用いることができる。一実施の形態において、コンパレータが比較的低い電圧で動作できるようにするために分圧器280又は他の電圧減少回路を用いる。
【0038】
一例として、モデル電圧をモデリング回路270によって生成することができる。一態様において、このモデル電圧信号は、所望の時定数を有する。例えば、モデルは、容量、抵抗及び時間との間の正確かつ数学的な関係を生成することができ、その結果、所望の時定数を有する指数関数的な波形(exponential wave)となる。一実施の形態において、モデルは、後に詳細に説明するように、モデル電圧を生成するために既知の(一つ以上の)抵抗及び(一つ以上の)コンデンサを用いる。
【0039】
出力電圧とモデル電圧との比較に基づいて、比較回路245は、Rv225を変化させる制御信号248を生成する。制御信号128を、アナログ又はデジタル信号とすることができる。種々の実施の形態において、制御信号128は、抵抗値を直接設定し、信号に比例する量によって抵抗を変化させ、又は更に複雑な関係によって抵抗を変化させることができる。任意の可変抵抗装置を用いることができることに留意されたい。
【0040】
一実施の形態において、信号248は、(例えば、抵抗に直列の)トランジスタをオフ及びオンするよう制御し、したがって、抵抗225の値の制御を操作する。例えば、トランジスタを、高電圧出力波形がモデル化された波形より高くなり又は低くなるときにオン及びオフすることができる。
【0041】
他の実施の形態において、信号248は、電圧の差分を搬送することができ、抵抗を、差に基づいて増減することができる。一例として、抵抗を増大するために、抵抗に直列のトランジスタに送信されるパルス幅変調(PWM)信号の幅を増大することができる。この実施の形態及び他の実施の形態の更なる説明をラグスデールIIで見つけることができる。
【0042】
一部の実施の形態において、Rv225を5Ωまで小さくすることができる。そのような実施の形態において、複数の抵抗を並列に用いることができ、制御信号は、各抵抗に直列の各トランジスタに供給される。
【0043】
コンピュータシステム250は、制御信号によってRv225を制御することもできる。例えば、コンピュータシステム250は、一つ以上のトランジスタを制御するためにPWMを用いることもできる。
【0044】
図3は、本発明の実施の形態によるエレクトロポレーションシステムのサンプル負荷に電気信号を供給する方法300を示すフローチャートである。方法300を、システム200又はここで説明する実施の形態に対応する他のシステムによって実現することができる。
【0045】
ステップ310において、所望の時定数を決定する。一実施の形態において、時定数の値を、システム200のユーザによって特定することができる。ユーザは、所望の時定数を入力し、所望の時定数を供給するのに適切な公称C及び並列Rv235をシステムに選択させることができる。一態様において、システムは、並列Rv235を実用範囲内に保持するようにCを選択する。
【0046】
ユーザは、他の複数のパラメータを選択することができる。例えば、ユーザは、容量を選択するのと同時に時定数の値を選択することができ、この場合、システムは、選択した容量の付近の範囲内にある容量を用いて、選択した時定数を提供することを試みる。一実施の形態において、選択した容量の約25〜30%の範囲内の容量が用いられ、又は、選択した容量が選択した時定数に整合しない場合には、サンプル抵抗の推定値に必要だと予測される容量より約25〜30%高い容量が用いられる。ユーザは、並列抵抗を選択するのと同時に時定数を選択することもでき、この場合、システムは、所望の時定数が供給されている間に選択された公称並列抵抗付近の範囲に公称並列抵抗があると予測されるようにコンデンサ210の容量を決定する。
【0047】
他の実施の形態において、システム200は、サンプルに基づいて適切な時定数を決定することができる。例えば、時定数を、サンプルの抵抗を測定することによって決定することができる。この場合、適切な時定数を、この抵抗又はユーザによって入力することができる他のパラメータに基づいて選択することができる。
【0048】
ステップ320において、モデル電圧関数を、例えばモデリング回路270によって決定する。モデル電圧は、所望の時定数又は他の所望の形状を有するように形成される。一実施の形態において、モデル関数は、異なる時点で生じる単なる一連の電圧値である。これらの電圧値を、エレクトロポレーションシステムのメモリに格納することができる。
【0049】
他の実施の形態において、モデル電圧は、所望の時定数を提供する容量及び抵抗を有するRC回路によって提供される。一態様において、使用されるモデルR及びC(又は電圧値)は、使用される実際のR(サンプル抵抗及び予測される並列抵抗)及び実際のCに近似するように選択される。しかしながら、典型的には、モデル回路のR及びCの値は、互いに同一(又はほぼ同一)の相対関係を有することができ、例えば、モデル回路のRCは、電気信号を供給するために用いられる実際のRCに近づく。例えば、典型的には、モデルRは、1KΩと2MΩの範囲内にあり、これによって、モデルCを0.01〜2mfdの範囲内にすることができる。モデル回路270のような用いられるアナログ回路の5%のコンデンサ及び1%の抵抗を仮定すると、時定数を、典型的には6%内に選択することができる。図6は、この実施の形態の更なる説明を提供する。
【0050】
他の実施の形態において、モデル関数は、所望の時定数の割合で減少する電圧値を出力する関数に対応する。例えば、関数を
【数1】

とすることができる。デジタルモデリング回路の利点は、常に所望の時定数を正確に有するようにモデル電圧を生成できることである。
【0051】
ステップ330において、コンデンサ及びコンデンサの充電量を決定する。推定されたサンプル抵抗が与えられた条件で実際の時定数が所望の時定数に近似できるように適切な容量を選択する。種々の実施の形態において、容量は、モデル電圧の容量より高く、モデル電圧の容量と同一に又はモデル電圧の容量より低くなるように選択される。
【0052】
一実施の形態において、容量は、所望の時定数をRsで除算したものより高くなるように選択される。この選択は、所望の時定数を取得するために更に速く減少するような並列抵抗Rvを用いることができるように更に高い最初の時定数を有効に用いる。並列抵抗Rvが(例えば、Rvに直列のトランジスタをオンにすることによって)減少すると、この減少によって時定数を有効に低減する。
【0053】
一実施の形態において、含まれない並列抵抗によって、所望の時定数は、最初の時定数より例えば約25〜30%(又は50%まで)短くなる。上述したように、一度並列抵抗がオンになると、時定数が減少する。また、(一実施の形態において常に)最小値の並列抵抗を有することによって、時定数を、所望の時定数より例えば50%短くすることができる。
【0054】
ステップ340において、電気信号をサンプル電圧に送信する。この処理の例は上述した通りである。サンプル前のあるポイント(ノード)の電圧は、出力電圧とみなされる。
【0055】
ステップ350において、例えば比較回路245を用いることによって、出力電圧をモデル電圧と比較する。一実施の形態において、比較の一部は、モデル電圧との更に直接的な比較(例えば、差)の前の規定される量による出力電圧の減少を含む。一態様において、規定された量は、モデルの容量と高電圧システムの容量との間の比である。
【0056】
出力電圧とモデル電圧の両方は、これらが経時的に変化する点で時間的に変化する。したがって、比較を、異なる瞬時に複数回行うことができる。一実施の形態において、比較を、例えばアナログ回路によって行われる連続的な計算とする。一態様において、比較を非常に速く行うことができる。例えば、コンパレータは、100KHzから2MHzの間で振動することができる。
【0057】
他の実施の形態において、例えばデジタル回路を用いて周期的な間隔で比較を行う。出力電圧(又は減少した出力電圧)を、デジタル値に変換し、デジタル回路(例えば、モデル関数に基づいてデジタル値を出力する回路)からの値と比較することができる。
【0058】
ステップ360において、並列抵抗を比較に基づいて変化させる。種々の実施の形態において、変更が、連続的、断続的又は周期的に行われる。変更を、システム200の制御信号248によって行うことができる。
【0059】
一実施の形態において、出力電圧がモデル電圧の値と交差するとき、すなわち、出力電圧がモデル電圧の値より低くなり、モデル電圧の値より高くなり又はモデル電圧の値と同一になるとき、並列抵抗を変化させる。例えば、出力波形がモデル電圧より低いとき、制御信号248は、(例えば、抵抗に直列のトランジスタをオフにすることによって)並列抵抗225をオフにすることができる。このようにオフにすることによって、出力電圧は、モデル電圧の減少よりも緩慢に減少し、これによって、出力電圧がモデル電圧に整合する。出力波形がモデル電圧より高いとき、制御信号248は、並列抵抗をオフにし、これによって、出力電圧は、モデル電圧の減少よりも急速に減少する。
【0060】
他の実施の形態において、並列抵抗を、比較動作の度に又は少なくとも電圧差が特定方向に変化する度に変化させる。例えば、制御信号248は、特定抵抗を設定し又はそれを設定するために用いられ、すなわち、無限抵抗(infinite resistance)(例えば、回路からの並列抵抗装置の切離し)の他に設定し又はそれを設定するために用いられる。出力電圧とモデル電圧との差が増大する場合、並列抵抗は、例えば差の大きさに比例して適切に増大/減少し続けることができる。出力電圧とモデル電圧との差が減少する場合、出力電圧がモデル電圧に交差するが符号が逆であるときに生じうる電圧の差が最小となるように並列抵抗を変化させることもできる。
【0061】
ステップ370において、抵抗の変更に応答して、出力電圧は、モデル電圧に近似するように急速又は緩慢に減少する。換言すれば、出力電圧は、モデル電圧に一致するように戻る。したがって、所望の時定数を取得することができる。抵抗を変化させる一実施の形態を以下説明する。
【0062】
図4は、本発明の実施の形態による並列抵抗を変化させることによってモデル関数に近似するよう出力電圧を変更する方法400を示すフローチャートである。一例として、方法400を、方法400の実施の形態を示す図5A及び図5Bを参照しながら示す。図5Aは、モデル関数として用いられる指数的に減衰する波形を示す。図5Bは、時間に対する電圧のプロットとして指数的に減衰する波形510の拡大図を示し、本発明の実施の形態による出力電圧520を示す。出力電圧520が分圧器280によって取得されるような減少した出力電圧に対応することに留意されたい。
【0063】
ステップ410において、電気信号の初期電圧を、例えばコンデンサに特定量を充電することによって設定する。上述したように、一実施の形態において、並列抵抗が用いられないときにモデル関数より長い時定数を生成するとともに並列抵抗が用いられるときにモデル関数より短い時定数を生成することができる容量を有するように高電圧コンデンサ210が選択される。本実施の形態において、初期出力電圧(場合によっては、減少した出力電圧)をモデル電圧と同一の電圧で開始する場合、出力電圧は、(1)並列抵抗が回路の一部となりえない場合には常にモデル電圧より高く、又は、(2)(例えば、スイッチによって制御されるように)並列抵抗が常に回路の一部である場合には常にモデル電圧より低くなる。
【0064】
他の実施の形態において、初期出力電圧を、モデル電圧より高い電圧で開始するように設定することができる。例えば、図5Bは、モデル電圧510より高い電圧で開始する出力電圧520を示す。この場合、並列抵抗が常に回路の一部である場合にモデル関数は出力電気信号より低い状態で開始するが、モデル関数が出力電気信号より低い状態は比較的短い。
【0065】
更に別の実施の形態において、初期出力電圧を、モデル電圧より低い状態で開始するように設定することができる。この場合、並列抵抗が回路の一部となりえない場合にモデル関数は出力電気信号より高い状態で開始するが、モデル関数が出力電気信号より高い状態は比較的短い。
【0066】
ステップ420において、電圧が等しくなるまで出力電圧を並列抵抗とともに変更する。図5Bの例において、初期出力電圧がモデル電圧より高い状態で開始するので、出力電圧は減少する。
【0067】
一実施の形態において、開始領域530において、比較回路245からの出力は、並列抵抗225を起動する信号を提供する。その理由は、出力320がモデル310より高いからである。例えば、ハイ信号が一つ以上のトランジスタのゲートを起動し、サンプル220に印加される電圧の並列な供給を有効に行う。一態様において、出力520がモデル電圧510より高い場合、並列抵抗225が最小値となる。他の態様において、並列抵抗225の値は、出力520がモデル510の減少より迅速に減少するのに十分小さい。
【0068】
ステップ430において、例えば、比較回路245を用いることによって、モデル電圧と交差する出力電圧を検出する。例えば、出力520は、ポイント535でモデル電圧510と交差する。この検出を、二つの電圧間の差の符号の変化を識別することによって行うことができる。比較回路245からの制御信号248は、差の符号の変化に基づいて変化することができる。
【0069】
ステップ440において、並列抵抗の値を、二つの電圧間の差の変化に応答して変更する。図5Bに示すように、ポイント335において、抵抗225の値は、出力電圧520がモデル電圧510より低くなると増大する。一実施の形態において、抵抗225がオフになり、極端に高い抵抗(無限でない場合)を有効に提供する。
【0070】
出力520は、二つの電圧を比較する時間及び抵抗225の値を変更する時間の遅延のためにモデル510より急速に減少し続ける。この遅延を非常に短い期間にすることができる。図5Bは拡大図であるので、遅延時間は実際には非常に短い。出力520のラインを、一つにはシステムの容量のために更に曲げて滑らかにすることもできる。また、少なくとも一実施の形態において、遷移間の時間間隔は、一つにはある実施の形態において(100KHzから2MHzまでの)高周波数で振動する傾向がある比較回路245のコンパレータが高速であるために小さい。
【0071】
領域540のあるポイントにおいて、出力520は、抵抗225が増大するために急速に増大し始め、抵抗225に流れる電荷の量が降下する。上述したように、一実施の形態において、並列抵抗の値を、オフ又はオンのときよりも緩慢に変更することができる。そのような実施の形態において、並列抵抗を、電圧間の差が減少し始める領域540のこのポイントまで特定の速度で減少させることができる。このポイントにおいて、並列抵抗を、大きなオーバーシュートを防止するために安定に保持し又は増大し始めることができる。
【0072】
方法400は、モデル電圧と交差する出力電圧の検出430及び並列抵抗の変更440を複数回繰り返す。例えば、ポイント545において、出力はモデル510より大きく、したがって、抵抗225はオンになり又は少なくとも減少する。したがって、出力520は、再びモデル510よりも急速に減少し始める。このようにして、モデル電圧が追跡され、所望の時定数を取得する。出力電圧をモニタし及び変更する時間間隔を、電気信号がサンプルに送信される期間の全て又はその期間の一部のみとすることができる。
【0073】
一実施の形態において、出力電圧520が段階的に処理されるように示されるが、エレクトロポレーションシステムの固有の容量は結果を平滑化することができる。また、段階的な関数は非常に小規模であり、したがって、出力電圧は円滑であるように見え、円滑化機能として機能的に処理を行うことに留意されたい。
【0074】
上述したように、モデリング回路を、アナログ、デジタル又は両方の組合せとして実現することができる。図6及び図7は、異なる実施の形態の例を提供する。
【0075】
図6は、本発明の実施の形態によるアナログモデリング回路600を有するエレクトロポレーションシステムのブロック図を示す。回路600は、所望の形状に従う(例えば、所望の時定数を提供する)電圧を出力するRC(抵抗−コンデンサ)回路を有する。一態様において、このモデリング回路600は、二重充電システム(duplicate charging system)を提供する。しかしながら、このシステムは、制御される全抵抗を有する。
【0076】
一連のスイッチ(ゲート)610は、モデル回路のコンデンサ615のスイッチングイン(switching-in)を許容する。ゲート605は、充電を開始し及び停止するために用いられる。ショットキーダイオード617は、放電を制御するために用いられる。ゲート610がオンであるとき、充電のために対応するコンデンサが選択される。対応するダイオード617によって、充電されたコンデンサから適切な電流を放電中に流すことができる。
【0077】
簡単のために、二つのコンデンサの選択がゲート610及びダイオード617によって行われる。他の実施の形態において、例えば、利用できる容量の増分量が利用できる全容量の少なくとも1%(又は0.5%)となるように少なくとも12個のコンデンサを設ける。
【0078】
電気信号をコンデンサ210からサンプル負荷220に送信するのとほぼ同様に、コンデンサ615の電荷を放出するために電気信号をコンデンサから(可変又は可変でない)抵抗620に送信する。電気信号の送信を、ゲート(スイッチ)625を切り替えることによって開始することができる。
【0079】
一実施の形態において、抵抗620の値を、実際のエレクトロポレーションシステムの全抵抗(並列抵抗及びサンプル抵抗)と同様に選択する。抵抗を更に有効に制御するために、ゲート625を、コンピュータシステム650又は他のマイクロプロセッサ630からのパルス幅変調(PWM)信号を用いて制御することができる。PWM信号のデューティサイクルを、抵抗620及びゲート625によって達成される実効抵抗を設定するために用いることができる。ラグスデールIIは、そのような手順の更なる説明を提供する。一態様において、PWM信号は、30:1範囲(30:1 range)に亘る調整を行うことができ、すなわち、デューティサイクルは、(一つ以上の抵抗の実効抵抗Xを30倍したものを与える)時間の1/30から(実効抵抗Xを与える)時間の全てまで変化することができる。
【0080】
一態様において、システムマイクロプロセッサ(コンピュータシステム)650は、デューティサイクルを設定することができる他のマイクロプロセッサ630及びモデル回路の並列抵抗に情報を提供する。他の態様において、コンピュータシステム650がデューティサイクルを設定する。
【0081】
他の態様において、モデル回路600は、製造コスト及び動作コストの低減のような実用的な理由により低電圧で動作する。例えば、上述したように、典型的には、モデルR(ゲート625の影響を含む抵抗620の値)は、1KΩから2MΩの範囲にあり、これによって、モデルC(コンデンサ615)を0.01mfdから2mfdの範囲にすることができる。典型的な電圧範囲を、モデル回路600に対して0.02〜10.0Vとすることができる。低電圧範囲で動作することによって、回路600は、コンデンサ615と抵抗620との間のスイッチを、使用可能であっても使用しなくてよい。
【0082】
抵抗620に送信される電圧642は、コンパレータ640(又は他の比較回路)にも出力される。電圧642は、上述したようなモデル電圧である。
【0083】
したがって、動作中、システムマイクロプロセッサ650は、モデル回路の容量(すなわち、コンデンサ615)及び高電圧回路670の容量を設定する。システムマイクロプロセッサ650は、高電圧コンデンサを充電し、パルスを搬送する。コンパレータ640は、モデル電圧642と、高電圧回路670から受信し又は取得した出力電圧644とを比較する。
【0084】
モデル回路600が比較的低い電圧で動作する実施の形態において、分圧器660又は電圧を減少させる他の回路が、高電圧回路670からの出力部638とコンパレータ640との間に存在する。電圧の減少量は、高電圧システムの電圧と低電圧システムの電圧との差又は比に対応する。
【0085】
コンパレータ640からの出力648は、出力波形がモデルに従うように必要に応じて高電圧回路の並列抵抗をオン及びオフ(又は他の制御を)することができる。したがって、サンプル抵抗が非線形的に機能するとしても、システムは、自動的に補償を行い、出力波形をモデルに従わせる。一態様において、高電圧回路の時定数は、高電圧並列抵抗Rがオフのときにモデルの時定数より長くなる必要があり、高電圧並列抵抗Rがオンのときにモデルの時定数より短くなる必要がある。
【0086】
図7は、本発明の実施の形態によるデジタルモデリング回路を有するエレクトロポレーションシステムのブロック図を示す。本実施の形態において、モデル電圧は、モデル電圧に対応するデジタル離散値として提供される。一態様において、デジタル値を、入力としてのR及び/又はCを有する数学関数によって決定することができる。
【0087】
他の態様において、デジタル値を、数学関数及び関係に基づいて又は単純に実験結果若しくは知識(intuition)に基づいて、所望の形状を有するように選択することができる。したがって、モデル電圧の各値(すなわち、各時間ステップに対する電圧)を、異なる時間ステップの他の値に関係なく選択することができる。このようにして、モデル電圧は、完全に柔軟性があり、任意の形状をとるように形成することができる。例えば、電圧のテーブルを用いることができる。
【0088】
図示したように、マイクロプロセッサ730は、デジタルモデル電圧値をデジタル−アナログコンバータ(DAC)735に供給し、デジタル−アナログコンバータ735は、出力を比較回路740に供給する。一態様において、デジタルモデル電圧値は、クロックサイクルごとに又は予め決定されたクロックサイクル数の後に変化する。デジタルモデル電圧値が連続的に変化しないとしても、デジタル−アナログコンバータは、連続的に比較回路740に電圧を供給する。
【0089】
他の実施の形態において、マイクロプロセッサ730は、アナログ電圧を直接比較回路740に供給することができる。更に別の実施の形態において、マイクロプロセッサ730は、デジタル値を比較回路740に供給する。
【0090】
デジタル値が比較回路740に供給された場合、(電圧減少回路760の前段又は後段にある)高電圧回路770からのアナログ出力電圧をデジタル値に変換するためにアナログ−デジタルコンバータが用いられる。コンピュータシステム750は、(デジタル又はアナログの)モデル電圧値を提供することもでき、他のプロセッサを必要としない。コンピュータシステム750は、高電圧回路770からの出力電圧に対応するデジタル値を受信した後に比較回路の機能を提供することもできる。
【0091】
典型的には、高電圧回路770の出力を、比較回路740又は比較機能を有するコンピュータシステム750による比較の前に減少させる。図示した実施の形態において、(分圧器のような)電圧減少回路760は、高電圧回路770の出力を受信する。他の実施の形態において、電圧減少回路760の出力は、比較を行うためにコンピュータシステム750に送信される。
【0092】
本発明の特定の態様の特定の詳細を、本発明の精神及び範囲から逸脱することなくあらゆる適切な方法で組み合わせることができる。しかしながら、本発明の他の形態は、個別の態様にそれぞれ関連する特定の実施の形態又はこれらの個別の態様の特定の組合せを対象にすることができる。
【0093】
上述したような本発明をハードウェア及び/又はソフトウェアを用いた制御論理の形態においてモジュールで又は一体となって実現できることを理解すべきである。ここで提供した開示及び教示に基づいて、当業者は、ハードウェア及びハードウェアとソフトウェアの組合せを用いて本発明を実現する他の手法及び/又は方法を知り及び理解することができる。
【0094】
本明細書に記載したソフトウェアコンポーネント又は機能のいずれかを、例えば従来技術又はオブジェクト指向技術を用いたJava(登録商標),C++,パール等の任意の適切な言語を用いてプロセッサによって実行されるソフトウェアコードとして実現することができる。ソフトウェアコードを、記憶及び/又は送信のために一連の命令又はコマンドとしてコンピュータ読取可能媒体に記憶させることができ、適切な媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、ハードドライブやフロッピー(登録商標)ディスクのような磁気媒体、コンパクトディスク(CD)やDVD(デジタル多用途ディスク)のような光媒体、フラッシュメモリ等を含む。コンピュータ読取可能媒体をそのような記憶又は送信装置の任意の組合せとすることができる。
【0095】
そのようなプログラムを、インターネットを含む様々なプロトコルに適合する有線ネットワーク、光ネットワーク及び/又は無線ネットワークを通じて送信するのに適合した搬送波信号を用いて符号化し及び送信することもできる。そのようなものとして、本発明の実施の形態によるコンピュータ読取可能媒体を、そのようなプログラムを用いて符号化されたデータ信号を用いて作り出すことができる。プログラムコードによって符号化されたコンピュータ読取可能媒体を、互換性のある装置に含ませることができ又は(例えばインターネットのダウンロードを通じて)他の装置から個別に提供することができる。そのようなコンピュータ読取可能媒体は、単一のコンピュータプログラム製品(例えば、ハードドライブ又は全コンピュータシステム)上に又はその中に存在することができ、システム又はネットワーク内の異なるコンピュータプログラム製品上又はその中に存在することができる。コンピュータシステムは、モニタ、プリンタ、又はここで説明する結果のいずれかをユーザに提供する他の適切なディスプレイを有することができる。
【0096】
本発明の典型的な実施の形態の上記の説明は、実例及び説明のために提示した。本発明は、上述したままの形態に包括され又は限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が、上述した教示を考慮すると可能である。実施の形態は、本発明の原理及びその実用的なアプリケーションを最もよく説明するために選択され及び説明され、これによって、他の当業者は、本発明を、種々の実施の形態において及び意図した特定の用途に適切となるように種々の変更を用いて最適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号をエレクトロポレーションシステムのサンプル負荷に供給する方法であって、前記電気信号の第1の電圧は、前記サンプル負荷に供給されている間に減少し、
前記電気信号の前記第1の電圧の減少のモデル関数を決定し、
前記電気信号を前記サンプル負荷に送信して、出力電圧を前記サンプル負荷によって受信させ、
前記第1の電圧と前記モデル関数のモデル電圧とを比較し、
前記比較に基づいて、前記電気信号が前記サンプル負荷に送信されている間に前記サンプル負荷に並列な抵抗を変化させることを備える方法。
【請求項2】
前記第1の電圧は、前記出力電圧である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の電圧は、前記出力電圧を予め規定された量だけ減少することによって作り出される減少した電圧である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記比較を時間間隔中に複数回実行し、前記時間間隔は、前記電気信号が前記サンプル負荷に送信される時間の少なくとも一部である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記比較は、前記時間間隔中に連続的に起きる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記比較は、前記時間間隔中に周期的な時間で起きる請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記モデル関数は、周期的な時間でデジタル値によって表され、前記デジタル値は、前記モデル電圧を提供する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記デジタル値をアナログ値に変換し、
前記アナログ値をコンパレータに供給することを更に備え、前記出力電圧と前記モデル電圧とを比較することは、前記コンパレータによって前記複数回の各々で前記アナログ電圧の各々と前記出力電圧とを比較することを有する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の電圧が前記モデル電圧と異なるときに並列抵抗を変化させる請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の電圧が前記モデル電圧より大きいときに前記並列抵抗を減少し、これによって、前記第1の電圧を前記モデル電圧よりも急速に減少させる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の電圧が前記モデル電圧より小さいときに前記並列抵抗を増大し、これによって、前記第1の電圧を前記モデル電圧よりも緩慢に減少させる請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記モデル関数の決定は、前記エレクトロポレーションシステムのユーザによって提供される時定数に基づく請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記サンプル負荷に並列な抵抗を変化させることによって、前記電気信号を前記モデル関数に近似させる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
サンプル負荷に選択的に結合され、出力電圧を前記サンプル負荷に供給するコンデンサと、
前記コンデンサに選択的に結合され、前記サンプル負荷に並列に結合された可変抵抗装置と、
モデル電圧を提供するモデリング回路と、
前記出力電圧を受信する第1の入力部、前記モデル電圧を受信する第2の入力部及び前記可変抵抗装置の入力部に結合した出力部を有する比較回路であって、前記比較回路は、前記出力電圧と前記モデル電圧との比較に基づいて制御信号を出力し、前記制御信号は、前記可変抵抗装置の入力部によって受信され、前記可変抵抗装置の抵抗を制御する、前記比較回路と、を備えるエレクトロポレーションシステム。
【請求項15】
前記比較回路の入力部で受信した電圧がデジタル値によって表される請求項14に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項16】
前記モデリング回路は、前記モデル電圧として前記比較回路に提供されるデジタル値を決定するプロセッサを備える請求項14に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項17】
前記比較回路は、前記モデル電圧のデジタル値を受信し、前記比較回路が前記出力電圧と前記モデル電圧との比較のために用いる前記モデル電圧のアナログ値を出力するアナログ−デジタルコンバータを有する請求項16に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項18】
前記比較回路は、
予め規定された量だけ前記出力電圧を減少する分圧器と、
減少した出力電圧と前記モデル電圧とを比較するコンパレータと、を有する請求項16に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項19】
前記モデリング回路は、少なくとも一つの抵抗及び少なくとも一つのコンデンサを備え、前記モデル電圧に対するアナログ値を出力する請求項14に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項20】
前記可変抵抗装置は、
抵抗と、
前記抵抗に直列に結合したスイッチであって、前記制御信号は、前記スイッチを開くか閉じるかを制御する、前記スイッチと、を有する請求項14に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項21】
サンプル負荷に選択的に結合され、出力電圧を前記サンプル負荷に供給するコンデンサと、
前記コンデンサに選択的に結合され、前記サンプル負荷に並列に結合された可変抵抗装置と、
モデル電圧を提供するモデリング回路と、
第1の入力部で前記出力電圧を受信する電圧減少回路、前記モデル電圧を受信する第2の入力部及び前記モデル電圧と減少した出力電圧との間の差に応答して制御信号を出力するコンパレータを有する比較回路であって、前記可変抵抗装置は前記コンパレータの出力部に結合され、前記制御信号は、前記可変抵抗装置の抵抗を制御する、前記比較回路と、を備えるエレクトロポレーションシステム。
【請求項22】
前記制御信号によって、前記減少した出力電圧が前記モデル電圧より小さいときに前記可変抵抗装置の抵抗を増大し、前記減少した出力電圧が前記モデル電圧より大きいときに前記可変抵抗装置の抵抗を減少する請求項21に記載のエレクトロポレーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−500629(P2012−500629A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523941(P2011−523941)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/054204
【国際公開番号】WO2010/022086
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(591099809)バイオ−ラッド ラボラトリーズ,インコーポレイティド (79)
【Fターム(参考)】