説明

ダイヤルスイッチ装置

【課題】ダイヤルノブの操作状態を短時間に認識することを可能とするダイヤルスイッチ装置を提供すること。
【解決手段】透光可能な表示板3bで筒状部3aの開口を閉じた形状を成し、回路基板1に回動可能に支持されたダイヤルノブ3と、ダイヤルノブ3の回動操作に応じた信号を出力可能なロータリエンコーダ2と、ダイヤルノブ3の筒状部3aの内側に配置され、表示板3bを発光可能な表示用光源5と、表示用光源5と表示板3bとの間に設けられ、光の透過量をダイヤルノブ3の回動角度に応じて変更可能な固定側偏光板6および可動側偏光板7と、を備えていることを特徴とするダイヤルスイッチ装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤルノブを回動させて回動量に応じた信号を出力するダイヤルスイッチ装置であって、車両用空調装置、オーディオ装置、ナビゲーション装置などの車載機器の作動を調節するのに用いるのに好適なダイヤルスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置の温度調節スイッチのように、ダイヤルノブを回動させ、その操作量に応じて出力される信号に基づいて室温を設定するのに用いるダイヤルスイッチ装置が、例えば、特許文献1などにより知られている。
【0003】
このようなスイッチは、ダイヤルノブの外周縁に沿って、操作量の目安となる目盛などが記載され、ダイヤルノブの操作量が分かるようになっている。例えば、温度調節スイッチの場合、低温領域では、低温を示す青色の目盛が設定され、高温領域では、高温を示す赤色の目盛が設定され、ダイヤルノブの操作量が感覚的に分かるようになっている。
あるいは、オーディオ装置のボリューム調節用のダイヤルノブでは、ダイヤルノブの周囲に、音量の目安となる数字が記載されている。
そして、ダイヤルノブを回動操作した場合、ダイヤルノブの基準となる位置を示すポジションマークと、その外周に設定された目盛と、の相対的な位置関係に基づいて、ダイヤルノブの操作量を認識できるようになっている。
【特許文献1】特開平9−240260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来のダイヤルスイッチ装置では、ダイヤルノブの基準となる位置を示すポジションマークと、その外周に設定された目盛と、の相対的な位置関係に基づいて、ダイヤルノブの操作量を認識する構造であったため、操作時には、ユーザが操作量を認識するために、ダイヤルノブのポジションマークと目盛とを注視する必要があり、ユーザに短時間に操作量を認識させる性能が十分ではなかった。
特に、車載機器では、運転者は、視線を進行方向からできるだけ外さないようにする必要があり、短時間に感覚的に操作量を認識できるようにすることが望まれていた。
【0005】
本発明は、上述のような従来の問題に着目して成されたもので、ダイヤルノブの操作状態を短時間に認識することを可能とするダイヤルスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために本発明は、透光可能な表示板で筒状部の開口を閉じた形状を成し、基体に回動可能に支持されたダイヤルノブと、このダイヤルノブの回動操作に応じた信号を出力可能な出力部と、前記ダイヤルノブの筒状部の内側に配置され、前記表示板を発光可能な表示用光源と、この表示用光源と前記表示板との間に設けられ、光の透過量を前記ダイヤルノブの回動角度に応じて変更可能な透過量変更部と、を備えていることを特徴とするダイヤルスイッチ装置とした。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のダイヤルスイッチ装置において、前記表示板が、あらかじめ設定された第1の色に着色され、前記表示用光源が、前記第1の色とは異なる第2の色で発光することを特徴とするダイヤルスイッチ装置とした。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のダイヤルスイッチ装置において、前記透過量変更部が、前記表示板の裏面側に、この表示板と一体的に回動可能に設けられた可動側偏光板と、前記ダイヤルノブの内側であって、前記表示用光源と前記可動側偏光板との間に固定された固定側偏光板と、を備えていることを特徴とするダイヤルスイッチ装置とした。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載のダイヤルスイッチ装置において、前記ダイヤルノブが、空調装置の温度調節に用いられるダイヤルノブであって、最も高温に設定するホットMAXポジションと最も低温に設定するコールドMAXポジションとの間で回動可能に支持され、前記第1の色として寒色が用いられる一方、前記第2の色として暖色が用いられ、前記透過量変更部は、前記ダイヤルノブがホットMAXポジションに配置された場合に、光の透過量を最大とする一方、前記ダイヤルノブがコールドMAXポジションに配置された場合に、光の透過量を最小とするよう設定されていることを特徴とするダイヤルスイッチ装置とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明のダイヤルスイッチ装置では、表示用光源を発光状態として、ダイヤルノブを回動させると、ダイヤルノブの回動位置に応じて透過量変更部による光の透過量が変化し、表示板の発光状態が変化する。
したがって、ダイヤルノブを操作したユーザは、ポジションマークなどの位置を注視することなく、操作したダイヤルノブの表示板の発光状態に基づいて、短時間にダイヤルノブの操作状態を視覚的に認識することができる。
しかも、発光量のコントロールを回路などの制御系で行うのと比較して、安価に構成することが可能である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明では、透過量変更部が、光の透過を制限した状態では、ダイヤルノブの表示板は、第1の色として認識でき、一方、透過量変更部が、光の透過を許す状態では、ダイヤルノブの表示板は、第2の色で発光して、第2の色として認識できる。
したがって、ダイヤルノブを操作したユーザは、表示板の発光状態に加えて色の違いによって、ダイヤルノブの操作状態を短時間に視覚的に認識することができ、高い視認性を得ることができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明では、ダイヤルノブを回動させると、ダイヤルノブと一体的に回動する可動側偏光板と、ダイヤルノブの内側に固定された固定側偏光板との位相が変化することで、表示用光源と表示板との間の光の透過量が変更される。
このような偏光板は、厚さが薄く、透過量変更部をコンパクトに形成することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、ダイヤルノブをコールドMAXに配置された状態では、透過量変更部における表示用光源の光の透過量は最小となっており、ユーザは、ダイヤルノブの表示板の色を、第1の色の寒色として認識する。
一方、ダイヤルノブをホットMAXポジションに向けて回動するのに連れて、透過量変更部における光の透過量が増大し、これに伴い、表示板における第2の色である暖色の発光量が増大する。そして、ホットMAXポジションでは、暖色の光の透過量が最大となって、ユーザは、表示板が、第2の色の暖色で強く発光していると認識する。
したがって、ダイヤルノブを、低温側に操作したか、高温側に操作したかを、寒色および暖色により、感覚的に認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
この実施の形態のダイヤルスイッチ装置は、透光可能な表示板(3b)で筒状部(3a)の開口を閉じた形状を成し、基体(1)に回動可能に支持されたダイヤルノブ(3)と、このダイヤルノブ(3)の回動操作に応じた信号を出力可能な出力部(2)と、前記ダイヤルノブ(3)の筒状部(3a)の内側に配置され、前記表示板(3b)を発光可能な表示用光源(5)と、この表示用光源(5)と前記表示板(3b)との間に設けられ、光の透過量を前記ダイヤルノブ(3)の回動角度に応じて変更可能な透過量変更部(6,7)と、を備えていることを特徴とするダイヤルスイッチ装置である。
【実施例1】
【0015】
以下に、図1〜図2に基づいて、この発明の最良の実施の形態の実施例1のダイヤルスイッチ装置Aについて説明する。
【0016】
この実施例1のダイヤルスイッチ装置Aは、図示を省略した車両のインストルメントパネルに設置された空調装置用コントロールパネルに設置されて、温度調節に用いられるものである。
この実施例1のダイヤルスイッチ装置Aは、図1に示すように、回路基板(基体)1、ロータリエンコーダ(出力部)2、ダイヤルノブ3、ケーシング4、表示用光源5、固定側偏光板(透過量変更部)6、可動側偏光板(透過量変更部)7、フィニッシャ8を備えている。
【0017】
回路基板1は、前述の図示を省略した空調装置用コントロールパネルにおいて、電源供給や各種表示を行う回路を備えたもので、前述の図示を省略したインストルメントパネルの内側に設置され、その表面は、樹脂製のフィニッシャ8で覆われている。
【0018】
この回路基板1に、ダイヤルノブ3が回動可能に支持されており、このダイヤルノブ3の基端部に、ダイヤルノブ3の回動量および回動方向を示すパルス信号を出力する周知のロータリエンコーダ2が設けられている。
【0019】
ダイヤルノブ3は、透光性を有した樹脂による一体成形品であり、下端にフランジ3fを有した円筒状の筒状部3aと、この筒状部3aの開口を閉じる表示板3bとを備えた略ハット断面形状に形成されている。また、表示板3bの表面である表示面3cは、寒色である青色(第1の色)に着色されており、図2に示すように、その外周縁部の1箇所に、ダイヤルノブ3の回動量の基準となるポジションマーク3mが設けられている。さらに、筒状部3aの内周および外周は、非透光性の、例えば黒色の塗料で塗装されている。
なお、ダイヤルノブ3は、ポジションマーク3mが、図示のホットMAXポジションPhmの位置から、反時計回り方向に90°回動した位置であるコールドMAXポジションPcmの位置までの範囲で、回動可能に支持されている。
【0020】
そして、フィニッシャ8には、図示のように、ホットMAXポジションPhmからコールドMAXポジションPcmまでの範囲で、温度の目安となる複数の温度マーク8mが表示されている。この温度マーク8mは、コールドMAXポジションPcmとホットMAXポジションPhmとの中間位置Pntから、コールドMAXポジションPcmに向かうにつれて青が濃くなり、一方、中間位置PntからホットMAXポジションPhmに向かうにつれて赤が濃くなるように着色されている。
【0021】
図1に戻り、ダイヤルノブ3の内側には、略円筒状のケーシング4が設けられ、このケーシング4の内側略中央に表示用光源5が設置されている。この表示用光源5としては、本実施例1では、暖色である赤色(第2の色)で発光する発光ダイオードが用いられている。
そして、ケーシング4の先端の開口部分は、円盤状の固定側偏光板6で覆われている。
【0022】
一方、この固定側偏光板6に対向するダイヤルノブ3の表示板3bの裏面には、可動側偏光板7が貼り付けられている。
この可動側偏光板7と固定側偏光板6とは、本実施例1では、図2に示すようにダイヤルノブ3のポジションマーク3mがホットMAXポジションPhmを指したときに、両偏光板6,7の位相が一致し、ダイヤルノブ3およびケーシング4の軸方向(図1の上下方向)への光の透過量が最大となり、一方、この位置からダイヤルノブ3を反時計回りに90°回動させて、両偏光板6,7の位相が90°ずれたときに、光の透過量が最少となり、光が遮断されるように位相の向きが設定されている。
【0023】
さらに、ダイヤルノブ3の基端部に設けられたフランジ部3fの外周面に対向して、夜間照明用の照明用光源9が設けられている。この照明用光源9は、本実施例1では、白色に発光する発光ダイオードが用いられており、この照明用光源9から照射された光は、フランジ部3fからダイヤルノブ3に入光され、筒状部3aの内部を導かれて、表示面3cを発光させる。
【0024】
次に、実施例の作用を説明する。
図外のイグニッションスイッチをONにして空調装置用コントロールパネルが表示作動を実行した際には、表示用光源5が点灯される。
この状態で、図2に示すように、ダイヤルノブ3を、最も高温に温度調節する状態であって、そのポジションマーク3mがホットMAXポジションPhmを指す状態では、固定側偏光板6と可動側偏光板7との位相が一致し、表示用光源5の赤色が両偏光板6,7を透過し、さらに、ダイヤルノブ3の表示板3bを透過する。その結果、ダイヤルノブ3の表示面3cは、強く赤色発光される。
したがって、ダイヤルノブ3の表示面3cが強く赤色発光している状態のときには、ユーザは、ポジションマーク3mの位置を注視しなくても、ダイヤルノブ3のポジションマーク3mがホットMAXポジションPhmを指す位置に操作されていることを、短時間に認識することができる。
【0025】
上述のポジションマーク3mがホットMAXポジションPhmを指す位置から、ダイヤルノブ3を、図2において反時計回り方向に回動させると、固定側偏光板6と可動側偏光板7との位相がずれて、ホットMAXポジションPhmから離れるのに連動し、両偏光板6,7の光の透過性が低下する。
したがって、ダイヤルノブ3を、反時計回り方向に回すのに連れて、表示面3cにおける赤色の発光量が、徐々に低下する。
【0026】
そして、ダイヤルノブ3を、最も低温に温度調節する状態であって、そのポジションマーク3mがコールドMAXポジションPcmを指し位置まで回動させた状態では、両偏光板6,7の位相が90°ずれて、光の透過量が0となって、表示用光源5の光が両偏光板6,7により遮断される。
したがって、ダイヤルノブ3の表示面3cは、非発光状態となり、かつ、表示面3cの着色である青色に表示される。
【0027】
よって、ユーザは、ダイヤルノブ3の表示面3cが、非発光状態での青色表示状態のときには、ポジションマーク3mの位置を注視しなくても、ダイヤルノブ3が、そのポジションマーク3mがコールドMAXポジションPcmを指す位置に操作されていることを、短時間に認識することができる。
【0028】
なお、上述したように、ポジションマーク3mがホットMAXポジションPhmを指す位置と、コールドMAXポジションPcmを指す位置との、中間では、ホットMAXポジションPhmに近いほど、強く赤色発光することから、ユーザは、表示面3cの赤色発光の強さの程度に基づいて、ポジションマーク3mの位置を注視しなくても、ダイヤルノブ3の操作位置を、短時間に認識可能である。
【0029】
次に、夜間の照明時には、照明用光源9を発光させると、その白色光が表示板3bまで導かれて、表示面3cが発光表示される。
この夜間照明時にあっても、表示用光源5は、発光されており、ダイヤルノブ3の操作位置に応じて、表示板3bへの透過量が変更される。
【0030】
したがって、照明用光源9の発光時にあっても、表示面3cは、ダイヤルノブ3を高温側に操作した場合には、表示用光源5の赤色発光が強くなって、赤色表示され、一方、ダイヤルノブ3を低温側に操作した場合には、表示用光源5の赤色発光が弱くなって、表示面3cは、青色表示される。
【0031】
以上説明したように、実施例1のダイヤルスイッチ装置Aでは、ダイヤルノブ3を操作したユーザは、ポジションマーク3mを注視することなく、操作したダイヤルノブ3の表示面3cの発光状態に基づいて、短時間にダイヤルノブ3の操作状態を視覚的に認識することができる。
【0032】
しかも、表示面3cの発光量のコントロールを、回路基板1側の制御系で実行するものと比較して、安価に構成することができる。
【0033】
また、実施例1では、ダイヤルノブ3を、最も低温に操作した状態であるポジションマーク3mがコールドMAXポジションPcmを指す状態では、固定側偏光板6と可動側偏光板7とが、光の透過を制限して、ダイヤルノブ3の表示面3cを、青色として認識できる。一方、ダイヤルノブ3を、最も高温に操作した状態であるポジションマーク3mがホットMAXポジションPhmを指す状態では、ダイヤルノブ3の表示面3cは、赤色発光して、赤色と認識できる。
【0034】
したがって、ダイヤルノブ3を操作したユーザは、その操作温度を、色と発光の強さとにより短時間に視覚的に認識することができ、高い視認性を得ることができる。しかも、低温側の操作は、寒色である青色で認識でき、高温側の操作は、暖色である赤色で認識できることから、操作方向と色の傾向とが一致しており、さらに視認性を向上させることができる。
【0035】
また、実施例1では、上述した表示用光源5の光の透過量を、固定側偏光板6と可動側偏光板7との2枚の偏光板に変更するようにしたため、この透過量を変更させる構成をコンパクトに設置することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0036】
(他の実施例)
以下に、他の実施例について説明するが、これら他の実施例は、実施例1および他の実施例の変形例であるため、その相違点についてのみ説明し、共通する構成については共通する符号を付けることで説明を省略し、また、作用効果についても、共通するものは説明を省略する。
【実施例2】
【0037】
図3および図4に基づいて、実施例2のダイヤルスイッチ装置について説明する。
この実施例2のダイヤルスイッチ装置は、図3に示すように、ダイヤルノブ203を最も高温に操作するホットMAXポジションPhmと、最も低温に操作するコールドMAXポジションPcmと、が略180°の角度を成すように設定した例である。
【0038】
この場合、実施例1と同様に、固定側偏光板6(図3,4では、図示省略)と可動側偏光板207とは、ダイヤルノブ203をホットMAXポジションPhmに操作したときに、位相が一致する構成となっている。
【0039】
そして、ダイヤルノブ203と可動側偏光板207との間には、ホットMAXポジションPhmと中間位置Pntとの間では、可動側偏光板207がダイヤルノブ203に係合されて連れ回り、中間位置PntからコールドMAXポジションPcmの間では、可動側偏光板207とダイヤルノブ203との係合が外れて、可動側偏光板207が固定され、ダイヤルノブ203のみが回動するリリース状態とするキャッチアンドリリース機構200が設けられている。
【0040】
その一例の概略を図4に示している。
キャッチアンドリリース機構200は、係合ピン203aと付勢部材203bとストッパピン204aとガイド204bと係合溝207aと空走溝207bとを備えている。
【0041】
係合ピン203aは、ダイヤルノブ203の表示板3bの裏面から下方に向けて突出されており、かつ、ダイヤルノブ203に対して径方向に移動可能に支持されている。
また、付勢部材203bは、係合ピン203aを内径方向に付勢している。
【0042】
ストッパピン204aは、ケーシング204から上方に一体に突出されている。
ガイド204bは、ダイヤルノブ203を、図3において反時計回り方向に回動させた場合に、中間位置Pntの直前で係合ピン203aと当接して、反時計回り方向の回動を外径方向の動きに変換する径方向ガイド面204cを備え、係合ピン203aがこの径方向ガイド面204cを反時計回り方向に通過したときには、後述する可動側偏光板207の係合溝207aから退出されるまで付勢部材203bの付勢力に抗して外径方向に変位させ、かつ、その位置を保持させる保持ガイド面204dを備えている。
【0043】
係合溝207aは、可動側偏光板207の外周において略U字状に切欠されており、係合ピン203aが、周方向に係合可能であるとともに、径方向に出入り可能に形成されている。
空走溝207bは、可動側偏光板207の外周において略90°の範囲で切欠して形成されており、ストッパピン204aと、周方向に係合可能に形成されている。すなわち、可動側偏光板207がダイヤルノブ203と共にホットMAXポジションPhm側から中間位置Pntを回動する間は、ストッパピン204aが空走溝207b内を相対移動し、中間位置Pntに達した時点で、ストッパピン204aが空走溝207bの端部のストッパ端面207cに係合する位置関係で形成されている。
したがって、この実施例2では、ダイヤルノブ203を、最も高温に操作するホットMAXポジションPhmに配置した状態では、固定側偏光板6と可動側偏光板207とは、位相が一致して、表示用光源5の赤色光で表示面3cを発光させる。
【0044】
ダイヤルノブ203を、ホットMAXポジションPhmから中間位置Pntまで反時計回り方向に回動させると、ダイヤルノブ203の係合ピン203aと係合状態の可動側偏光板207は、ダイヤルノブ203と一体的に回動する。
【0045】
この回動に伴い、両偏光板6,207の相対回動により位相がずれることにより、表示用光源5の赤色光の透過量が徐々に制限される。
【0046】
そして、ダイヤルノブ203が中間位置Pntに達した時点で、両偏光板6,207の位相が90°ずれることにより、表示用光源5の赤色光は遮断された状態となる。
なお、ダイヤルノブ203が、ホットMAXポジションPhmから中間位置Pntまでの間、可動側偏光板207の空走溝207bとストッパピン204aとは周方向に相対スライドする。
【0047】
そして、ダイヤルノブ203が中間位置Pntに達した時点で、空走溝207bの端部のストッパ端面207cがケーシング204に固定されたストッパピン204aと係合し、可動側偏光板207のそれ以上の反時計回り方向の回動が規制される。
同時に、ダイヤルノブ203の係合ピン203aがガイド204bの径方向ガイド面204cにガイドされて、付勢部材203bの付勢力に抗して外径方向に移動して、可動側偏光板207の係合溝207aから退出された状態となる。
【0048】
よって、ダイヤルノブ203を、中間位置PntからさらにコールドMAXポジションPcmに向けて反時計回り方向に回動させると、可動側偏光板207の回動は規制されてダイヤルノブ203のみが回動される。なお、このとき、ダイヤルノブ203と一体的に回動する係合ピン203aは、図4において二点鎖線で示すように、ガイド204bの保持ガイド面204dに沿って周方向に移動する。
【0049】
一方、ダイヤルノブ203を、コールドMAXポジションPcmからホットMAXポジションPhmに向けて時計回り方向へ回動させる場合、中間位置Pntに達すると、ダイヤルノブ203の係合ピン203aが、付勢部材203bの付勢力により保持ガイド面204dから径方向ガイド面204cにガイドされて内径方向に移動し、係合溝207aに係合される。
したがって、中間位置PntよりもホットMAXポジションPhm側へ回動させた場合には、可動側偏光板207がダイヤルノブ203と一体的に回動し、表示用光源5の赤色光の透過量が増大し、表示面3cが赤く発光する。
【0050】
以上説明したように、実施例2にあっても、実施例1と同様に、以下に列挙する効果を得ることができる。
すなわち、ダイヤルノブ203を操作したユーザは、ポジションマーク3mを注視することなく、操作したダイヤルノブ203の表示面3cの発光状態に基づいて、短時間にダイヤルノブ203の操作状態を視覚的に認識することができる。しかも、安価に構成することができる。
【0051】
また、ダイヤルノブ203のポジションマーク3mが中間位置PntからコールドMAXポジションPcmを指す範囲では、固定側偏光板6と可動側偏光板7とが、光の透過を制限して、ダイヤルノブ3の表示面3cを、青色として認識できる。一方、ダイヤルノブ3のポジションマーク3mが、中間位置PntからホットMAXポジションPhmを指す範囲では、ダイヤルノブ3の表示面3cは、赤色発光して、赤色と認識できる。
【0052】
したがって、ダイヤルノブ203を操作したユーザは、その操作温度を、色と発光の強さとにより短時間に視覚的に認識することができ、高い視認性を得ることができる。しかも、低温側の操作は、寒色である青色で認識でき、高温側の操作は、暖色である赤色で認識できることから、操作方向と色の傾向とが一致しており、さらに視認性を向上させることができる。
【0053】
また、上述した表示用光源5の光の透過量を、固定側偏光板6と可動側偏光板207との2枚の偏光板に変更するようにしたため、この透過量を変更させる構成をコンパクトに設置することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0054】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例1,2を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例1に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0055】
例えば、実施例1,2では、ダイヤルスイッチ装置として、空調装置用コントロールパネルにおいて、温度調節を行うダイヤルに適用した例を示したが、これに限定されるものではなく、空調装置の風量コントロールスイッチなどの他のスイッチや、空調装置に限らず、車両用空調装置、オーディオ装置、ナビゲーション装置などの車載機器や、車載機器以外の産業機器などにも適用することができる。
【0056】
また、実施例1,2において、透過量変更部として、2枚の偏光板を用いた例を示したが、これに限定されるものではなく、3枚以上の偏光板を用いるようにしてもよい。特に、実施例2のようにダイヤルノブ203を略180°回動させる間に、光の透過量を変更する場合、例えば、固定側偏光板として、あらかじめ2枚の偏光板の位相を異ならせて重ねておき、ダイヤルノブと一体的に回動する可動側偏光板との位相を代えることで、可動側偏光板が180°回動する間に、透過量が最大と最小の間で変化するように構成することも可能である。さらに、固定側偏光板に、セロハンなどを重ねることも可能である。
【0057】
あるいは、実施例1,2では、透過量変更部として、偏光板を用いるものを示したが、これに限定されるものではなく、機械的な構造を用いてもよい。すなわち、傾斜した複数の平行ルーバを備えたルーバ部材として、ケーシング側の固定ルーバ部材と、ダイヤルノブ側の可動ルーバ部材とを用い、両部材のルーバの向きが平行になるに連れて透過量が増大し、直交する向きに成るに連れて透過量が減少するようなものを用いることもできる。
【0058】
また、実施例1,2では、ダイヤルノブの筒状部として、円筒状のものを示したが、多角形筒状や楕円筒状など、他の断面形状のものを用いてもよい。
【0059】
また、実施例1,2では、ダイヤルノブを回動可能に支持する基体として、回路基板1を示したが、基体としてはこれに限定されるものではなく、例えば、メータ装置のハウジングなどの他の部材を用いることもできる。
【0060】
また、実施例1,2では、表示用光源5および照明用光源9として、発光ダイオードを用いた例を示したが、電球など他の光源を用いてもよい。
【0061】
また、実施例1,2では、第1の色であって寒色として青を例示し、第2の色であって暖色として赤を例示したが、それぞれ、これに限定されることは無く、前者として白や水色や緑などを用い、後者としてオレンジやピンクなどの色を用いることもできる。
【0062】
また、実施例1,2では、表示板3bの第1の色として、寒色であって青を示し、表示用光源5の第2の色として、暖色であって赤を示したが、これとは逆に設定してもよい。すなわち、表示板3bの表示面3cを赤などの暖色に着色し、表示用光源5の色を、青などの寒色としてもよい。この場合、透過量変更部による透過量は、実施例1,2とは逆に設定し、コールドMAXポジションPcmで、透過量を最大として、青色発光させ、ホットMAXポジションPhmでは、透過量を最少として、非発光状態とし、着色による赤の表示とする。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の最良の実施の形態の実施例1のダイヤルスイッチ装置Aの構成の概略を示す断面図である。
【図2】図1の矢印Y方向から視た実施例1のダイヤルスイッチ装置Aの要部の外観を示す正面図である。
【図3】実施例2のダイヤルスイッチ装置の要部の外観を示す正面図である。
【図4】実施例2のダイヤルスイッチ装置に用いたキャッチアンドリリース機構200の概略を示す構成説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 回路基板(基体)
2 ロータリエンコーダ(出力部)
3 ダイヤルノブ
3a 筒状部
3b 表示板
4 ケーシング
5 表示用光源
6 固定側偏光板(透過量変更部)
7 可動側偏光板(透過量変更部)
203 ダイヤルノブ
204 ケーシング
207 可動側偏光板透過量変更部)
Pcm コールドMAXポジション
Phm ホットMAXポジション
Pnt 中間位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光可能な表示板で筒状部の開口を閉じた形状を成し、基体に回動可能に支持されたダイヤルノブと、
このダイヤルノブの回動操作に応じた信号を出力可能な出力部と、
前記ダイヤルノブの筒状部の内側に配置され、前記表示板を発光可能な表示用光源と、
この表示用光源と前記表示板との間に設けられ、光の透過量を前記ダイヤルノブの回動角度に応じて変更可能な透過量変更部と、
を備えていることを特徴とするダイヤルスイッチ装置。
【請求項2】
前記表示板が、あらかじめ設定された第1の色に着色され、
前記表示用光源が、前記第1の色とは異なる第2の色で発光することを特徴とする請求項1に記載のダイヤルスイッチ装置。
【請求項3】
前記透過量変更部が、前記表示板の裏面側に、この表示板と一体的に回動可能に設けられた可動側偏光板と、前記ダイヤルノブの内側であって、前記表示用光源と前記可動側偏光板との間に固定された固定側偏光板と、を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のダイヤルスイッチ装置。
【請求項4】
前記ダイヤルノブが、空調装置の温度調節に用いられるダイヤルノブであって、最も高温に設定するホットMAXポジションと最も低温に設定するコールドMAXポジションとの間で回動可能に支持され、
前記第1の色として寒色が用いられる一方、前記第2の色として暖色が用いられ、
前記透過量変更部は、前記ダイヤルノブがホットMAXポジションに配置された場合に、光の透過量を最大とする一方、前記ダイヤルノブがコールドMAXポジションに配置された場合に、光の透過量を最小とするよう設定されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のダイヤルスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−181945(P2009−181945A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22754(P2008−22754)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】