説明

ダイヤル式コントロール操作装置

【課題】 ギア間のバックラッシュによるコントロールケーブルのストロークロスやヒステリシスを可能なるかぎり少なくし、且つ、操作性を向上させた円筒状の操作ノブを有するコントロール操作装置を提供すること。
【解決手段】 円筒状内に風量調節用の操作ノブ62を備える温度調節用の操作ノブ61と、この操作ノブ61に固着した連動ギア64に連動される太陽ギア65と、この太陽ギア65に連動されて移動する遊星ギア66と、前記太陽ギア65と協同して前記遊星ギア66を所定方向に導く内接ギア82を有するギアケース79と、前記遊星ギア66の連結突部66aに連結して空調用ユニットを動作させるコントロールケーブル84とを備え、さらに、前記連結突部66aに設けてスプリング87により付勢力を与えた小球88と、後ベース77に設けた凹形溝85の底面に設けた節度部89とよりなる節度機構を備えた構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ノブの回動操作にしたがう駆動力をコントロールケーブルを介して外部装置に伝達し、外部装置を動作制御するダイヤル式コントロール操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤル式のコントロール操作装置としては様々なものがあるが、一例として自動車などに装備される空調用コントロール操作装置について述べる。
図17及び図18は、広く知られている車輌空調用コントロール操作装置を示し、図17は同装置の正面図、図18は同装置の平面図である。
【0003】
図示する如く、風向調節用の操作ノブ11、風量調節用の操作ノブ12、温度調節用の操作ノブ13がダイヤル式の操作ノブとして操作パネル10に回動可能に設けられ、また、リアウインドの熱線に通電させるリアデフスイッチ14、エアコンモードを切り換えるエアコンスイッチ15、内気循環と外気導入を切り換える内外気切換スイッチ16の各スイッチボタンが設けられている。
【0004】
また、操作パネル10は、ベース17の前面側に設けられたハウジング部17aに取り付けられ、さらに、ハウジング部17aより後方に水平に延設させたベース17には、上記した操作ノブ11、13のギアシャフト18、24を回動自在に軸受けする軸受部19、25が設けられている。
【0005】
すなわち、操作ノブ11がギアシャフト18の一端部側に軸着され、また、ギアシャフト18にはかさ歯車18aが設けられ、その他端部がベース17に設けられた軸受部19によって軸受けされている。
そして、かさ歯車18aをギアレバー20のギア部20aに噛合させ、操作ノブ11の回動をギアレバー20に伝達させるようになっている。
【0006】
ギアレバー20は、ベース17に形成した筒状の支軸部21に回動自在に軸支されており、そして、このギアレバー20のアーム部20bには空調ユニット(図示省略)を動作制御するためのコントロールケーブル22が連結されている。
【0007】
したがって、操作ノブ11を回動操作することにより、かさ歯車18aに連動したギアレバー20が回動し、コントロールケーブル22のインナーケーブル22aが押し出され、また、引き戻され空調ユニットの風向調整が行われる。
なお、コントロールケーブル22は、インナーケーブル22aを摺動可能に内装させたアウターケーブル22bを有するもので、アウターケーブル22bの一端部がベース17に配設したクランプ部材23に固着されている。
【0008】
また、操作ノブ13についても上記同様に、一端側に操作ノブ13を軸着したギアシャフト24の他端側が軸受部25によって回転自在に軸受けされ、また、このギアシャフト24に設けられたかさ歯車24aが支軸部26によって軸支されたギアレバー27のギア部27aに噛合し、さらに、ギアレバー27のアーム部27bにコントロールケーブル28が連結されている。
【0009】
したがって、操作ノブ13を回動操作することにより、コントロールケーブル28のインナーケーブル28aが押し出され、また、引き戻されて空調ユニットの温度調節が行われる。
なお、コントロールケーブル28は、コントロールケーブル22と同様に、インナーケーブル28aとアウターケーブル28bとからなり、アウターケーブル28bの一端部がベース17に配設したクランプ部材29に固着されている。
【0010】
さらに、上記した操作ノブ11、12、13については、希望する回動操作位置でノブの回動を一旦停止させる節度機構が設けられている。
図19は、図17上のA―A線に沿って切断した拡大部分断面図であり、この図に示す如く、ギアシャフト18に設けた拡形円板部18bには、シャフト回転軸芯に対し直交向きとした長孔18cを設け、この長孔18c内にスプリング30のバネ勢力で突出力を与えた小球31が収納してある。
【0011】
そして、前記した拡形円板部18bを回転可能に嵌合させるベース部17bには、上記小球31を落入させる節度凹部32を設け、この節度凹部32と上記した小球31とで節度機構が構成されている。
具体的には、節度凹部32は、操作ノブ11を操作して操作位置を合わせる各々のシンボル(図17参照)33a、33b、33c、33d、33eに対応させた拡形円板部周囲のベース部17bに設けてある。
【0012】
したがって、操作ノブ11を希望するシンボルに合わせるように可動操作すると、小球31がそのシンボルに対応する節度凹部に落入し、操作ノブ11の回動操作に軽い停止力(節度感)がかかる。
そして、その停止力に勝る操作力で操作ノブ11を回動させれば、小球31が節度凹部から脱出し、次の節度凹部に向かう。
また、操作ノブ12、13についても同様の節度機構が備えられている。
【0013】
一方、上記したコントロール操作装置は、操作ノブの前面側に突出した凸状のノブ部を指先で摘んで操作するため、操作力が伝達しにくく、操作性が必ずしも好ましくない。
このことから、操作ノブを円筒状に形成したコントロール操作装置が提案されている。
【0014】
図20は、この種のコントロール操作装置の断面図である。
このコントロール操作装置は、風向調節用の操作ノブ、風量調節用の操作ノブ、温度調節用の操作ノブが円筒状の操作ノブとして操作パネル40に回動可能に設けられ、また、リアデフスイッチ、エアコンスイッチ、内外気切換スイッチの各スイッチボタンが設けられている。
なお、図示する断面図は、風向調節用の操作ノブ41と、その駆動力伝達系を示したものである。
【0015】
図示する如く、操作パネル40に円筒状の操作ノブ41が回動可能に設けられ、また、この操作ノブ41の外周面には円筒状の連動ギア42が一体的に設けられている。
そして、連動ギア42の内歯車42aには、ベース43の前部43aから突出させた支軸43b、43cに設けた2つの連繋ギア44、45を噛合させ、さらに、これら連繋ギア44、45が出力ギア46に噛合されている。
【0016】
出力ギア46はギアシャフト47に一体的に連結してあり、この出力ギア46の回転によってかさ歯車47aを駆動し、上記同様のギアレバー48を旋回動させる。
具体的には、操作ノブ41を回動操作すると、連動ギア42、連繋ギア44、45、出力ギア46、かさ歯車47aを介してギアレバー48を旋回動させ、コントロールケーブルのインナーケーブルを押し出し、また、引き戻して空調ユニットの風向調節を行う構成となっている。
なお、操作ノブ41内には、バルブ49によって照明される表示部材50が設けられている。
【0017】
この種のコントロール操作装置は、操作ノブ41と一体的に回動する連動ギア42の外周部に、連動ギア42の回動中心線に直交する長孔を設け、この長孔にスプリングのバネ力で突出勢力を与えた小球を内装し、また、ベース43には、操作ノブ41を可動操作するシンボルに対応させた複数の節度凹部を設け、これら小球と節度凹部とで構成した上記同様の節度機構を備えている。
なお、その他の操作ノブについても同様の節度機構が備えられている。
【0018】
【特許文献1】特開2003−267034号公報
【特許文献2】特開2004−210019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
円筒状の操作ノブを備えたコントロール操作装置は、連動ギアに設けた小球とベースに設けた節度凹部とで節度機構が構成されている関係で、操作ノブが操作し易いものとなる反面、連動ギア42と連繋ギア44、45の間、連繋ギア44、45と出力ギア46の間、かさ歯車47aとギアレバー48の間に生じるバックラッシュ(揺り戻し)のために、ギア間のバックラッシュが増加し、コントロールケーブルのストロークロスやヒステリシス現象が発生し、所定のケーブルストロークが得られないことがある。
また、操作ノブの円筒径を大きくすると、各節度部の間隔が広くなるため、操作ノブが節度部で決まる各ポジション間の中間位置で止まってしまい、各ポジションに合わせにくいと言った問題があった。
【0020】
上記した事情にかんがみ、本発明では、円筒状の操作ノブを備える上、ギア間のバックラッシュの影響を可能なるかぎり少なくすることができる他、操作性に優れるダイヤル式コントロール操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記した目的を達成するため、本発明では、第1の発明として、円筒状に形成した操作ノブと、前記操作ノブの外周に一体的に設けたかさ歯車からなる連動ギアと、前記連動ギアに連動させ前記操作ノブの駆動力を伝達する太陽ギアと、前記操作ノブ、連動ギア、太陽ギアとを回動可能に支持するベース部材に、前記太陽ギアに連動されて移動する遊星ギアとを備えると共に、前記ベース部材には、前記遊星ギアを前記太陽ギアと協同して移動方向に導く内接ギアと、前記遊星ギアに連結して外部装置を動作させるコントロールケーブルとを備え、さらに、前記遊星ギアには、ベース部材に設けた節度部に圧接させる節度部材を備えたことを特徴とするダイヤル式コントロール操作装置を提案する。
【0022】
第2の発明としては、円筒状に形成した操作ノブと、前記操作ノブの外周に一体的に設けたかさ歯車からなる連動ギアと、前記連動ギアに連動させたかさ歯車と平歯車とからなり、前記操作ノブの駆動力を伝達する太陽ギアと、前記操作ノブ、連動ギア、太陽ギアとを回動可能に支持するベース部材に形成した面状部上を、前記太陽ギアの平歯車に連動されて移動する遊星ギアとを備えると共に、前記ベース部材には、前記遊星ギアを前記太陽ギアと協同して移動方向に導く内接ギアと、前記遊星ギアに連結して外部装置を動作させるコントロールケーブルとを備え、ベース部材の前記面状部には、端部を開口させた長形の凹形部を形成すると共に、前記遊星ギアには、前記凹形部に移動可能に挿入し、当該凹形部内で前記コントロールケーブルを連結する連結突部を設け、さらに、前記凹形部の底面には複数の凹部からなる節度部を形成すると共に、前記連結突部には、付勢力を与えて前記節度部に圧接させる節度部材を設けたことを特徴とするダイヤル式コントロール操作装置を提案する。
【0023】
第3の発明としては、円筒状に形成した操作ノブと、前記操作ノブの外周に一体的に設けたかさ歯車からなる連動ギアと、前記連動ギアに連動させたかさ歯車と平歯車とからなり、前記操作ノブの駆動力を伝達する太陽ギアと、前記操作ノブ、連動ギア、太陽ギアを回動可能に支持させ、前記太陽ギアの平歯車に連動されて移動する遊星ギアとを備えるベース部材を備えると共に、前記ベース部材には、前記遊星ギアに連結して外部装置を動作させるコントロールケーブルと、前記太陽ギアと前記遊星ギアとを保持し、かつ、前記太陽ギアと協同して遊星ギアを所定方向に導く内接ギアを有するギアケースとを設け、さらに、前記ギアケースには節度部を設け、前記遊星ギアには、付勢力を与えて前記節度部に圧接させる節度部材を備えたことを特徴とするダイヤル式コントロール操作装置を提案する。
【0024】
第4の発明としては、円筒状に形成した操作ノブと、前記操作ノブの外周に一体的に設けたかさ歯車からなる連動ギアと、前記連動ギアに連動させたかさ歯車と平歯車とからなり、前記操作ノブの駆動力を伝達する太陽ギアと、前記操作ノブ、連動ギア、太陽ギアを回動可能に支持させ、前記太陽ギアの平歯車に連動されて移動する遊星ギアとを備えるベース部材を備えると共に、前記ベース部材には、前記遊星ギアに連結して外部装置を動作させるコントロールケーブルと、前記太陽ギアと前記遊星ギアとを保持し、かつ、前記太陽ギアと協同して遊星ギアを所定方向に導く内接ギアを有するギアケースとを設け、さらに、前記太陽ギアと前記ギアケースの一方には、節度部を設け、それらの他方には、付勢力を与えて前記節度部に圧接させる節度部材を備えたことを特徴とするダイヤル式コントロール操作装置を提案する。
【発明の効果】
【0025】
第1の発明によれば、円筒状の操作ノブを回動操作してコントロールケーブルを制御し、外部装置を動作させることができるダイヤル式コントロール操作装置となる他、遊星ギアに設けた節度部材とベース部材に設けた節度部とで構成した節度機構を備えているので、コントロールケーブルのストロークが遊星ギアの移動距離で決まるものとなる。
【0026】
したがって、ギア間にバックラッシュが発生しても、コントロールケーブルのストロークにはバックラッシュの影響がほとんどないので、精度高く動作制御できるダイヤル式コントロール操作装置となる。
また、操作ノブの大きな節度部間の回動に対し、遊星ギアが小さい移動で他の節度に移動するので、操作ノブが次の節度部にまで回動しないうちに止まってしまうようなことがなく、操作性を向上させることができる。
【0027】
第2の発明では、コントロールケーブルを連結するための遊星ギアの連結突部に節度部材と、コントロールケーブルを引き出すためにベース部材に形成した凹形部底に設けた節度凹部とにより節度機構を構成しているので、コントロールケーブルのストロークが節度部の間隔に一致するコントロール操作装置となる。
したがって、第1の発明の効果に加えて、外部装置の仕様に応じた設計が容易となる。
【0028】
第3の発明では、太陽ギアと遊星ギアとを保持するギアケースを設け、このギアケースに設けた節度部と、遊星ギアに設けた節度部材とで節度機構を構成したので、第1の発明と同様に、コントロールケーブルのストロークにはバックラッシュの影響がほとんどなく、また、操作ノブが次の節度部にまで回動しないうちに止まってしまうようなことのないコントロール操作装置となる他、ベース部材には節度部を設けなくともよく、各機能を集中させるために複雑な構造となるベース部材の簡素化に有利となる。
【0029】
第4の発明では、太陽ギアとギアケースの一方に設けた節度部と、それらの他方に設けた節度部材とで操作ノブの節度機構を構成したコントロール操作装置となっている。
したがって、太陽ギアと遊星ギアとの間のバックラッシュの影響を受けるため、上記した第1、2、3の発明に比べれば、コントロールケーブルのストロークに生じる誤差が多少大きくなるが、従来装置に比べれば遙かに少ないストローク誤差となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、車輌空調用コントロール操作装置として実施した第1実施形態について図面に沿って説明する。
図1は2連の操作ノブ構成としたコントロール操作装置の正面図、図2は同コントロール操作装置の底面図、図3は図1上のB−B線断面図、図4は同コントロール操作装置の分解斜視図である。
【0031】
先ず、操作ノブ61とその連動系機構について説明する。
操作ノブ61が温度調節用ダイヤルノブ、この操作ノブ61の円筒状内に配設した摘み凸部の操作ノブ62が風量調節用のダイヤルノブとなっている。
すなわち、操作ノブ61を回動操作し、その指標61aをシンボル63aに選択的に合わせ温度調節する。
また、凸部を指先で摘んで操作ノブ62を回動操作し、その指標62aをシンボル63bに選択的に合わせて風量調節する。
【0032】
円筒形に形成した操作ノブ61は、図3、図4に示す如く、後部外周にかさ歯車からなる連動ギア64を一体的に固着し、太陽ギア65がこの連動ギア64によって連動され、遊星ギア66を旋回移動させる構成としてある。
この操作ノブ61は、前ベース67内に突出形成したベース円筒67aの外周に回動可能に嵌装してある。
【0033】
つまり、操作ノブ61に一体的となっている連動ギア64には、内部にリング状に形成した段差部64aが設けてあり、この段差部64aが前記のベース円筒部67aに設けた係合突起67bに係合し、操作ノブ61を抜け止めしている。
なお、係合突起67bは、ベース円筒部67aの外周の数カ所に設けてある。
また、この連動ギア64には、円形フランジの外周面数カ所に係止突起64bを設け、この係止突起64bを操作ノブ61の内周面に設けた係止溝に係止させることで、操作ノブ61と一体的に回転させるようにしてある。
【0034】
一方、上記したべース円筒部67aには前面板部を一体形成し、この前面板部の円周に沿って上記シンボル63a、63bを照明するための複数の透過孔70が設けてある。
また、前面板部には上記透過孔70を塞ぐようにした表示板71が固着してある。
【0035】
この表示板71は、シンボル63a、63bを透光性とし、その他は非透光部として形成してあり、配線基板72に設けたランプ73を点灯させることでシンボル63a、63bを光学的に表示させるようになっている。
なお、操作ノブ61には導光部材74(図4参照)を嵌着して配線基板72に設けたLEDなどの光源により指標61aを光学表示させ、操作ノブ62には導光部材75を備えて配線基板72に設けたLEDなどの光源により指標62aを光学表示させる。
【0036】
上記した前面板部の中央凹形部内に設けた開口には、操作ノブ62が回動可能に挿入してある。
この操作ノブ62のノブ軸62bには風量調節スイッチ76の動作軸76aが嵌着してある。
なお、上記した配線基板72、風量調節スイッチ76は後ケース77に配設してある。
【0037】
一方、操作ノブ61に設けた連動ギア64に連動させた太陽ギア65は、かさ歯車部65aとかさ歯車部65aに比べて小径とした平歯車部65bとを一体形成したもので、平歯車部65bを下側として後ベース77に直立形成した支軸78に回動可能に軸支させてある。
【0038】
遊星ギア66は、平歯車として形成し、上記した太陽ギア65の平歯車部65bに噛合させてある。
すなわち、遊星ギア66は、図3に示す如く、太陽ギア65に連動され、後ベース77の一部分を形成している面状部77aを旋回移動する構成となっている。
また、図3に示すように、面状部77aは、操作ノブ61、操作ノブ62の回動中心から偏心した位置に配置している。
【0039】
したがって、コントロール操作装置の背後中央部に空間を設けることができ、この空間に風量調節スイッチ76などの電気スイッチを配設することができる。
また、配線基板72の配置空間を大きくとることができるため、配線基板72に多くの電子部品を実装でき、配線基板72によって様々な機能を処理できるという利点がある。
なお、面状部77aには、遊星ギア66の下面が摺動する摺接突起77cを設け、遊星ギア66の摺動抵抗を少なくしてある。
【0040】
また、本実施形態では、後ベース77にネジ止めするギアケース79が設けてある。
すなわち、ギアケース79は、図5に示す如く、ネジ80によって周囲を後ベース77に固着すると共に、中程に設けたネジ81を支軸78にねじ込み、太陽ギア65と遊星ギア66との脱落を防止している。
なお、ギアケース79の高面部の内面リブ79aが太陽ギア65に接し、低面部の内面リブ79bが遊星ギア66に接している。
【0041】
さらに、上記のギアケース79には、太陽ギア65と協同して遊星ギア66の旋回移動を導く内接ギア82が設けてある。
つまり、ギアケース79には、図7に拡大図として示したように、円弧状に形成した内接ギア82を設け、この内接ギア82と太陽ギア65との間で遊星ギア66が太陽ギア65から駆動力を受け回転しながら移動する。
なお、図7はギアケース79の裏面図である。
【0042】
上記したギアケース79は、周囲に設けた舌片83を後ベース77に設けた位置決め溝77bに嵌入して取付位置を決めた後にネジ80、81をネジ込み取り付ける。
なお、内接ギア82については、ギアケース79に設けないで、後ベース77に円弧状ギアとして設けても同様に遊星ギア66を導くこともできる。
【0043】
一方、上記した遊星ギア66には連結突部66aを設け、この連結突部66aにコントロールケーブル84のインナーケーブル84aが連結してある。
連結突部66aは、図3、図5などに示す通り、遊星ギア66の回転中心部から離れた偏心位置に下向きに突設してあり、そして、この連結突部66aが後ベ
ース77の面状部77aに形成した凹形溝85に移動可能に突入している。
【0044】
この凹形溝85は、図5、図6に示す通り、操作ノブ61が全回動範囲で操作されたときに連結突部66aが移動する距離に合わせた長さの直線状の細長溝としてある。
すなわち、太陽ギア65と遊星ギア66とを適宜設計し、上記のように連結突部66aを遊星ギア66の偏心部に設けることによって、遊星ギア66が太陽ギア65の周りを移動することに伴い、連結突部66aをほぼ直線的に移動させることができる。
【0045】
また、この凹形溝85の一端部には開口85aを設け、一端部を連結突部66aに連結したインナーケーブル84aを開口85aより引き出すと共に、このインナーケーブル84aのアウターケーブル84bを、図2に示すように、後ベース77の裏側に設けたケーブル保持部(クランプ部材)86に保持させてある。
なお、図5は操作ノブ61の連動系機構の平面を示す部分図、図6はギアケース79を取り外して内部構成を示した同連動系機構の平面図である。
【0046】
他方、この第1実施形態では、図3、図4、図6などに示すように、遊星ギア66の連結突部66aには長孔66bを設け、この長孔66b内にスプリング87によって突出勢力を与えた小球(節度部材)88が設けてあり、また、図6、図8に示す通り、前記の連結突部66aを突入させた凹形溝85の底面には、前記小球88を圧接させる複数の凹部(節度凹部)からなる節度部89が形成してあり、これら小球88と節度部89とで操作ノブ61の回動操作に節度を与える節度機構が構成してある。
したがって、節度部89の凹部間隔は、操作ノブ61を回動操作する各シンボル63aの間隔に対応している。
なお、図8は図6上のC−C線断面図である。
【0047】
上記した第1実施形態のコントロール操作装置は、操作ノブ61を回動操作し、その指標61aを希望するシンボル63aに合わせると、操作ノブ61と一体回動する連動ギア64に連動された太陽ギア65が支軸78を回動軸として回動する。
したがって、太陽ギア65の平歯車部65bに噛合している遊星ギア66が、太陽ギア65により駆動され、太陽ギア65と内接ギア82によって案内されて自転しながら移動する。
【0048】
これより、連結突部66aが操作ノブ61の回動にしがって移動し、小球88が操作ノブ61の回動位置(指標61aを合わせたシンボル63aの位置)に対応した節度部89の凹部に落入することから、節度機構の作用によって操作ノブ61に軽い回動停止力(節度感)が加わる。
この結果、コントロールケーブル84のインナーケーブル84aが押し出され、また、引き戻され、空調ユニットの温度調節動作が行われる。
【0049】
また、操作ノブ62は、凸部を摘んで回動操作し、その指標62aを希望するシンボル63bに合わせる。
この操作で風量調節スイッチ76がスイッチ動作し、風量調節のファンモータ が制御される。
【0050】
以上は、操作ノブ61と操作ノブ62と、それらの連動系機構について説明したが、他方の操作ノブ91は風向調節用の操作ノブで、この操作ノブ91の連動系機構は、上記した操作ノブ61の連動系機構と同じ構成としてある。
すなわち、操作ノブ91の指標91aをシンボル92aに合わせるように操作ノブ91を回動操作すれば、連動ギア93、太陽ギア94、遊星ギア95が連動され、遊星ギア95の連結突部95aが移動してコントロールケーブル96のインナーケーブル96aが押し出され、また、引き戻される。
これより、空調ユニットの風向き切り換えが行われる。
【0051】
また、操作ノブ91の連動系機構にも上記した小球88と節度部89からなる節度機構と同様の節度機構が設けてあり、各シンボル92aに合わせる操作ノブ91の回動位置にしたがい、操作ノブ91に軽い停止力(節度感)を与えるようにしてある。
なお、コントロールケーブル96はインナーケーブル96aを摺動自在としたアウターケーブル96bを有している。
【0052】
また、操作ノブ91の円筒状内には、リアデフスイッチ、エアコンスイッチ、内外気切換スイッチの各押しボタン97、98、99が設けられている。
これらの押しボタン97、98、99は、そのプッシュ操作で図4に示すところのスライダー100a、100b、100cが移動し、配線基板72に設けたプッシュスイッチ101a、101b、101cを動作させる。
【0053】
その他、図4に示す参照符号102、103、104は導光部材、105は夜間照明用のランプ、106はシンボル92aの表示板、107はギアケースである。
なお、前ベース67と後ベース77はネジ止めし、また、前ベース67の前面にはパネル部材108がネジ止めしてある。
【0054】
上記したように、コントロールケーブル84は、インナーケーブル84aのストロークが遊星ギア66の連結突部66aの移動位置(節度位置)で決まるので、連動ギア64と太陽ギア65との間のバックラッシュや太陽ギア65と遊星ギア66との間のバックラッシュの影響を受けない。
したがって、インナーケーブル84aには、ストロークロスやヒステリシス現象が発生しないので、高い精度で空調制御することができる。
【0055】
また、操作ノブ61の広い範囲で回動されても、遊星ギア66にはその回動範囲が減少されて伝達されるので、連結突部66aの移動範囲が縮小される。
この結果、操作ノブ61の回動操作にしたがって連結突部66aに設けた小球88が各節度部89の凹部間を確実に移動して切り換わるから、操作ノブ61が次の節度部に移る間に止まってしまうような問題がない。
【0056】
図9は第2実施形態として示した図3同様の車輌空調用コントロール操作装置の断面図である。
本実施形態では、遊星ギア66の中心部に長孔66cを形成し、この長孔66cにスプリング87によって突出勢力を与えた小球88とを設けると共に、ギアケース79の内面には、図10に示すように、前記小球88を圧接させる節度部89を設けて構成した節度機構を備えことが特徴となっており、その他は上記第1実施形態と同じ構成となっている。
なお、図10は図7同様に示したギアケースの裏面図である。
【0057】
この第2実施形態のコントロール操作装置は、操作ノブ61の回動操作にしたがって遊星ギア66が太陽ギア65の周りを自転しながら旋回移動するため、小球88が節度部89の各凹部間を移動して節度作用し、操作ノブ61に節度感を与える。
本実施形態は、コントロールケーブル84のインナーケーブル84aのストロークが、遊星ギア66の旋回動に応じた連結突部66aの移動距離となるので、第1実施形態と同様にギア間のバックラッシュの影響を受けない。
【0058】
図11は第3実施形態を示した図3同様の車輌空調用コントロール操作装置の断面図である。
本実施形態は、太陽ギア65に縦に長い長孔65cを形成し、この長孔65cにスプリング87によって突出勢力を与えた小球88を設けると共に、ギアケース79の内面には、図12に示すように、前記小球88を圧接させる節度部89を設けて構成した節度機構を備えたことが特徴となっており、その他は上記第1実施形態と同じ構成となっている。
なお、図12は図7同様に示したギアケースの裏面図である。
【0059】
この第3実施形態のコントロール操作装置は、操作ノブ61の回動操作にしたがって太陽ギア65が回転し、小球88が節度部89の各凹部間を移動して節度作用し、操作ノブ61に節度感を与える。
本実施形態では、コントロールケーブル84が有するインナーケーブル84aのストロークが、太陽ギア65と遊星ギア66との間のバックラッシュの影響をうけるが、その影響によるストロークロスは実用上問題とならない。
【0060】
図13は第3実施形態の変形例を示した図11同様の車輌空調用コントロール操作装置の断面図である。
本変形例は、太陽ギア65に横向きの長孔65dを形成し、この長孔65dにスプリング87によって突出勢力を与えた小球88を設けると共に、ギアケース79の内側面には、図14に示すように、前記小球88を圧接させる節度部89
を設けて構成した節度機構を備えことが特徴となっており、その他は上記第3実施形態と同じ構成となっている。
本変形例は、太陽ギア65と遊星ギア66との間のバックラッシュの影響をうけるが、その影響によるストロークロスは実用上問題とならない。
なお、図14は図7同様に示したギアケースの裏面図である
【0061】
図15は第3実施形態の他の変形例を示した図11同様の車輌空調用コントロール操作装置の断面図である。
本変形例は、ギアケース79にスプリング87と小球88を収納する収納部79cを設け、この収納部79cよりスプリング87によって突出勢力を与えた小球88と、図16に示す如く、太陽ギア65の側面に設けた小球88を圧接させる節度部89とから構成した節度機構を備えことが特徴となっており、その他は上記第3実施形態と同じ構成となっている。
本変形例においても、太陽ギア65と遊星ギア66との間のバックラッシュの影響をうけるが、その影響によるストロークロスは実用上問題とならない。
なお、図16は図7同様に示したギアケースの裏面図である
【0062】
なお、上記した第2、第3実施形態及び変形例は、操作ノブ61の連動系機構に限らず、操作ノブ91の連動系機構にも同様に備えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
自動車に備える空調用コントロール操作装置などのようにダイヤル式の操作ノブを回動操作して外部装置を動作制御するコントロール操作装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1実施形態の車輌空調用コントロール操作装置の正面図である。
【図2】同コントロール操作装置の底面図である。
【図3】図1上のB−B線断面図である。
【図4】上記コントロール操作装置の分解斜視図である。
【図5】上記コントロール操作装置の部分的な平面図である。
【図6】上記コントロール操作装置が備えるギアケースを取り外して内部構造を示した部分的な平面図である。
【図7】上記ギアケースの裏面図である。
【図8】上記コントロール操作装置が備える節度機構を示した部分的な断面図である。
【図9】第2実施形態として示した図3同様の車輌空調用コントロール操作装置の断面図である。
【図10】第2実施形態のギアケースの裏面図である。
【図11】第3実施形態として示した図3同様の車輌空調用コントロール操作装置の断面図である。
【図12】第3実施形態のギアケースの裏面図である。
【図13】第3実施形態の変形例として示した図11同様の車輌空調用コントロール操作装置の断面図である。
【図14】第3実施形態の変形例のギアケースの裏面図である。
【図15】第3実施形態の他の変形例として示した図11同様の車輌空調用コントロール操作装置の断面図である。
【図16】第3実施形態の他の変形例のギアケースの裏面図である。
【図17】従来例として示したコントロール操作装置の正面図である。
【図18】図17に示すコントロール操作装置の平面図である。
【図19】図17に示すコントロール操作装置の部分断面図である。
【図20】他の従来例を示すコントロール操作装置の断面図である。
【符号の説明】
【0065】
61 温度調節用の操作ノブ
62 風量調節用の操作ノブ
64 連動ギア
65 太陽ギア
66 遊星ギア
66a 連動突部
66b 長孔
79 ギアケース
82 内接ギア
84 コントロールケーブル
85 凹形溝
87 スプリング
88 小球
89 節度部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成した操作ノブと、
前記操作ノブの外周に一体的に設けたかさ歯車からなる連動ギアと、
前記連動ギアに連動させ、前記操作ノブの駆動力を伝達する太陽ギアと、
前記操作ノブ、連動ギア、太陽ギアとを回動可能に支持するベース部材に、
前記太陽ギアに連動されて移動する遊星ギアとを備えると共に、
前記ベース部材には、前記遊星ギアを前記太陽ギアと協同して移動方向に導く内接ギアと、前記遊星ギアに連結して外部装置を動作させるコントロールケーブルとを備え、
さらに、前記遊星ギアには、ベース部材に設けた節度部に圧接させる節度部材を備えたことを特徴とするダイヤル式コントロール操作装置。
【請求項2】
円筒状に形成した操作ノブと、
前記操作ノブの外周に一体的に設けたかさ歯車からなる連動ギアと、
前記連動ギアに連動させたかさ歯車と平歯車とからなり、前記操作ノブの駆動力を伝達する太陽ギアと、
前記操作ノブ、連動ギア、太陽ギアとを回動可能に支持するベース部材に形成した面状部上を、前記太陽ギアの平歯車に連動されて移動する遊星ギアとを備えると共に、
前記ベース部材には、前記遊星ギアを前記太陽ギアと協同して移動方向に導く内接ギアと、前記遊星ギアに連結して外部装置を動作させるコントロールケーブルとを備え、
ベース部材の前記面状部には、端部を開口させた長形の凹形部を形成すると共に、前記遊星ギアには、前記凹形部に移動可能に挿入し、当該凹形部内で前記コントロールケーブルを連結する連結突部を設け、
さらに、前記凹形部の底面には複数の凹部からなる節度部を形成すると共に、前記連結突部には、付勢力を与えて前記節度部に圧接させる節度部材を設けたことを特徴とするダイヤル式コントロール操作装置。
【請求項3】
円筒状に形成した操作ノブと、
前記操作ノブの外周に一体的に設けたかさ歯車からなる連動ギアと、
前記連動ギアに連動させたかさ歯車と平歯車とからなり、前記操作ノブの駆動力を伝達する太陽ギアと、
前記操作ノブ、連動ギア、太陽ギアを回動可能に支持させ、前記太陽ギアの平歯車に連動されて移動する遊星ギアとを備えるベース部材を備えると共に、
前記ベース部材には、前記遊星ギアに連結して外部装置を動作させるコントロールケーブルと、前記太陽ギアと前記遊星ギアとを保持し、かつ、前記太陽ギアと協同して遊星ギアを所定方向に導く内接ギアを有するギアケースとを設け、
さらに、前記ギアケースには節度部を設け、前記遊星ギアには、付勢力を与えて前記節度部に圧接させる節度部材を備えたことを特徴とするダイヤル式コントロール操作装置。
【請求項4】
円筒状に形成した操作ノブと、
前記操作ノブの外周に一体的に設けたかさ歯車からなる連動ギアと、
前記連動ギアに連動させたかさ歯車と平歯車とからなり、前記操作ノブの駆動力を伝達する太陽ギアと、
前記操作ノブ、連動ギア、太陽ギアを回動可能に支持させ、前記太陽ギアの平歯車に連動されて移動する遊星ギアとを備えるベース部材を備えると共に、
前記ベース部材には、前記遊星ギアに連結して外部装置を動作させるコントロールケーブルと、前記太陽ギアと前記遊星ギアとを保持し、かつ、前記太陽ギアと協同して遊星ギアを所定方向に導く内接ギアを有するギアケースとを設け、
さらに、前記太陽ギアと前記ギアケースの一方には、節度部を設け、それらの他方には、付勢力を与えて前記節度部に圧接させる節度部材を備えたことを特徴とするダイヤル式コントロール操作装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−262656(P2009−262656A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112107(P2008−112107)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】