説明

ダイレータ

気管切開ダイレータが長手方向に湾曲しており、先細の患者端領域(5)および逆側に湾曲したハンドル領域(7)をその反対端に備えている。管路(10)が、その患者端(4)からダイレータに沿って後方に延在し、ハンドル領域(7)の開口(12)においてダイレータの側面に開口を備えている。ガイドワイヤ(30)を導く管路(10)は、前方に傾斜した表面(23)を有する挿入部(2)により、開口(12)の後方に向かって遮断されている。使用中、ガイドワイヤ(30)の一端はダイレータの患者端(4)から突出し、その反対端はハンドル領域(7)の外側に沿って延在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気管に挿入して気管を拡張するように構成されている、曲線状かつテーパー状の患者端領域と、前記患者端領域の逆側のダイレータ後部端に向かって延在するハンドル領域と、ガイド部材を収容し前記患者端内に延在する管路とを備えるような気管切開ダイレータに関連する。
【背景技術】
【0002】
経皮的気管切開は、さまざまな方法で形成し得る。1つの技術においては、皮膚を経て中空針を気管に挿入し、その針に沿ってガイドワイヤを挿入し、ガイドワイヤの上から針を引き抜き、ガイドワイヤに沿って滑動する1つまたは複数のダイレータを用いて開口を拡張して、気管切開チューブの挿入を可能にする。いくつかの、直径が徐々に大きくなる一連のダイレータを用いるので、開口が次第に拡張される。あるいは、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6に開示されているように、単独の、より急テーパー状のダイレータも用いられ得る。単独のダイレータの使用は、手順数および部品数を低減するので有利である。従来のダイレータは、長手方向に沿って延在する管路を有し、その内部にガイドワイヤまたはカテーテルが摺動可能に収容される。一部の使用者は、ガイドワイヤとそれに取り付けられたダイレータを共に気管に挿入し、ガイドワイヤとダイレータを一緒に挿入することを好む。従来のダイレータを用いて、ガイドワイヤおよびダイレータを一緒に握持することは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4364391号明細書
【特許文献2】独国特許第10065604号明細書
【特許文献3】米国特許第4898163号明細書
【特許文献4】米国特許第6637435号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/0100657号明細書
【特許文献6】英国特許第2394669号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、別態様のダイレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態では、上記で特定したような気管切開ダイレータが提供され、該ダイレータは、管路がダイレータの片側で、その後端の開口から、前方に向かって連通する。
【0006】
好適には、管路はハンドル領域中に開通している。好適には、ハンドル領域は患者端領域から逆方向に湾曲し、患者端領域と共に、滑らかな連続曲線を形成する。好適には、管路はハンドル領域の内曲部に開通している。ハンドル領域は、ダイレータに挿入されたガイド部材を導くように配置された傾斜表面を伴う挿入部を備え得る。
【0007】
本発明の他の実施形態においては、上記の一実施形態に従うダイレータとガイド部材のアセンブリであって、該ガイド部材の一端がダイレータ患者端から突出し、かつ、管路の開口から出ている該ガイド部材の一部分がハンドル領域の外側に沿って後方に向かって延在することを特徴とするダイレータとガイド部材のアセンブリが提供される。
【0008】
本発明に従うダイレータについて、添付の図面を参照して以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ダイレータ沿って延在するガイドワイヤを示すダイレータの側面図である。
【図2】ガイドワイヤ伴わないダイレータの平面図である。
【図3】管路の後部開口領域におけるダイレータ部分の拡大平面図である。
【図4】ガイドワイヤを有するダイレータの側断面図である。
【図5】曲げられる前のダイレータの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ダイレータは、外側管状部品1と、ダイレータの後部に挿入されるロッド状の部品、栓、または、挿入部2を備えている。管状部品1は、90Aのショア硬度を有するポリウレタンのような硬いが可撓性のあるプラスチック材を一体成型した単一の部品である。ダイレータの全長は200mmであり、長手方向に沿って、後部端3において直径13.65mmの円形部を、前端すなわち患者端の先端4において直径4.0mmの円形部を有する。
【0011】
ダイレータは、長手方向に沿って3領域を有し、それらは、患者端すなわち前方領域5、中間領域6、ハンドルすなわち後部領域7である。
【0012】
患者端領域5は、80mmに渡って延在し、長手方向に、先端4における直径4mmから、領域の後端部における直径12.85mmまたは38FRにテーパー状をなす。中間領域6は、40mmに渡って延在し、長手方向に一定の直径を有する。ハンドル領域7は、80mmに渡って延在し、長手方向に一定の直径を有する。管状部品1は、把持性を高めるために、ハンドル領域7に浅い逆V形リブ9を伴って形成される。
【0013】
ダイレータは、実質的にその全長に渡って湾曲している。患者端領域5の序盤の25mmは直線であるが、残りの患者端領域および中間領域6は半径約90mmで湾曲している。ハンドル領域7は、同様の曲率半径であるが、逆方向に湾曲している。これらの2本の曲線は、ダイレータを全体としてS字状にしている。
【0014】
管路10は、ダイレータの長手方向の一部のみにおいて延在する。管路10の直径はダイレータのテーパーとともに変化し、ハンドル7の後部端領域で最大となり、9mmであり、患者端先端4において2mmである。ディレータがテーパーして小径になるにつれて、ディレータの壁厚は患者端領域5に沿って薄くなる。管路10の一端は、患者端4において開口部11を経て軸方向に開通している。管路10の他端は、ハンドル領域7の前端に向かって配置されたダイレータ側面の開口12に通じている。管路10の後端側開口12は、ハンドル領域7の内部または凹面側に位置する。管路10の後端側開口12は、管状部品1に形成された、細長く、長手方向に延在する開口13と、栓2の横縁14によってもたらされる。
【0015】
栓2は、ポリウレタンまたは類似の材料から成型され、リアヘッド20、柄21およびフォワードパッド22を備える。柄21は、管状部品の内径の約3分の1の直径を有し、可撓性である。栓2は、管状部材の適所へ挿入部を固定する潤滑油としての溶媒等を使用して、管状部品1の後端に挿入される。あるいは、栓は、ざらざらとした表面形状、または、表面形状と溶媒、接着剤、ボンドとの組み合わせによって保持され得る。パッド22は、ダイレータの軸線に対して約45度傾斜している滑らかな前方傾斜面23と、管状部品1内でぴたりと適合する、後方に延在する管状環24とを有する。傾斜面23は開口12に向かって傾斜し、開口12の後端から僅かに距離を置いて前方に配置されており、これにより環の前端が開口の後端から僅かに前方に出て、上記の縁14をもたらす。
【0016】
ダイレータ外側はその患者端ならびに中間領域5および6において浸漬により親水性コーティングを施され、開口から気管への挿入を補助する。
【0017】
図5に示すように、好適には、管状部品1および挿入部2の両方が、直線状または線形に成型されることが望ましい。挿入部2が管状部品の後端に挿入された後、ダイレータが実質的に曲げられ、所望の形状に保持される。そしてダイレータは熱処理、冷却処理を順に受け、上記曲線形状が固定される。栓2の柄21の可撓性は、製造段階において、ダイレータを容易に曲げられるようにする。
【0018】
ダイレータが、ガイドワイヤ30およびガイドカテーテル31または管路10に沿って延在する同様の他のガイド部材を収容し、それらの患者端がダイレータの患者端4において、開口11から出て、それらの後端は側面開口12から出る。ガイドワイヤ30およびカテーテル31の後端は、ハンドル7の外側に沿い後方に延在する。
【0019】
ダイレータは従来の経皮的気管切開法において用いられる。この場合、最初に針が気管に皮膚を経て気管に挿入され、次いで、カニューレがその針を通じて挿入される。カニューレを適所に残し、針が除去される。ガイドワイヤ30はカニューレを通じて挿入され、そして、カニューレが除去される。プレダイレータがガイドワイヤ30に沿って摺動し、気管開口を僅かに拡張する。プレダイレータ除去の後、ガイドカテーテル31がガイドワイヤ30に沿って摺動する。ガイドカテーテル31の後端およびガイドワイヤ30がダイレータの患者端4で開口11に挿入され、側開口12から出てくるまでこれらのガイド部材に沿ってダイレータがねじ込まれる。患者端5およびダイレータ中間部6の湾曲のために、ガイドカテーテル31およびガイドワイヤ30は、開口12が位置する側面方向に自然に導かれる。傾斜面23は、ガイド部材30および31が僅かにもつれまたは変形されても、それらが開口12の方向に導かれることを確実にする。ダイレータは、ガイド部材30および31に沿って摺動し、開口部を経て気管に押入れられ、最大約38FRまで気管を拡張し得る。ガイドカテーテル31は、先端4において開口部11の直径に実質的に等しい直径を有する。従って、この位置におけるダイレータ薄壁により、ガイドカテーテル31とディレータとの間の実質的に無段階な移行が保証されるので、挿入が容易となり、組織外傷が低減される。
【0020】
このようなダイレータの構造は、ガイド部材がダイレータに対して相対的に動かないようにしてガイド部材およびダイレータを一緒に気管に押し入れるような、僅かに異なる方法で用いることも可能である。これはユーザが、縁面14に対して親指を側開口12の上から押圧してガイドカテーテル31を把持し、ダイレータ後部の側面と共にガイドカテーテルを握持することで達成される。親指による押圧が開放されるまで、これはダイレータとガイドカテーテル31との間の相対的な動きを防ぐ。
【0021】
拡張の後にダイレータを取り外し、導入器に取り付けられた気管切開チューブが、通常の方法で拡張された開口を経て気管に摺り入れられる。
【0022】
ダイレータのハンドル7の曲線形状は、人間工学的な効果を付与し、これにより、如何にしてユーザが比較的高いが制御可能な挿入力を加えるかという課題を解決する。ダイレータは、異なる方法で把持され得る。典型的には、ガイドワイヤに沿った初期の摺動と皮膚表面の貫通のために、親指と人差し指の間にスプーンのように把持され得る。その後、付加的な力が必要な際には、ユーザは容易に握り方を代えて、ハンドル領域7が手のひらを横切るようにして小指、薬指、人差し指で把持して、ダイレータをタオルのように把持する。ダイレータの患者端領域5は、親指と人さし指の第2関節との間から出て、親指の方向に湾曲する。親指および人さし指を誘導として、他の3本の指で力を加える。この握持法では、ハンドル領域7の湾曲が手のひらの握りの形状に従うので、握持を確実にし、力加減の良好な制御を可能にする。
【0023】
本発明に従うダイレータは、気管に沿って輪状甲状域から気管の下方までの、様々な部位において気管切開拡張に用いられ得る。
【0024】
上述したように、ダイレータは2つの部品から成る必要は無い。代わりに、ハンドル領域7が一体的な内部傾斜を備えて成型される。ハンドル部の外側に沿って長手方向にロケーション溝が延在形成され、ダイレータ外部にガイド部材を保持することを補助し得る。あるいは、他のいくつかの構造を用いて、ガイド部材がダイレータに導かれまたは保持される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気管に挿入して気管を拡張するように構成されている、曲線状かつテーパー状の患者端領域(5)と、前記患者端領域の逆側のダイレータ後部端に向かって延在するハンドル領域(7)と、ガイド部材(30、31)を収容し前記患者端(4)内に延在する管路(10)を備え、前記管路(10)が後部端(3)の開口(12)を経て前方側において開通している、気管切開ダイレータ。
【請求項2】
前記管路(10)が前記ハンドル領域(7)内に開通している、請求項1に記載のダイレータ。
【請求項3】
前記ハンドル領域(7)が前記患者端領域(5)とは逆方向に湾曲し、前記患者端領域(5)と共に滑らかな連続的曲線を形成している、請求項1又は2に記載のダイレータ。
【請求項4】
前記管路(10)が前記ハンドル領域(7)の内曲部に開通している、請求項3に記載のダイレータ。
【請求項5】
前記ハンドル領域(7)が、前記ダイレータに挿入されるガイド部材(30、31)を導くように配置されている傾斜表面(23)を有する挿入部(2)を備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載のダイレータ。
【請求項6】
前記ガイド部材(30、31)の一端が前記ダイレータの患者端(4)から突出し、かつ、前記ガイド部材の一部が前記ダイレータの前記管路(10)の前記開口(12)から出て、前記ハンドルハンドル領域(7)の外側に沿って後方に延在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のダイレータとガイド部材(30、31)のアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−544344(P2009−544344A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520050(P2009−520050)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002738
【国際公開番号】WO2008/009943
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(501038551)スミスズ グループ ピーエルシー (26)
【氏名又は名称原語表記】SMITHS GROUP PLC