説明

ダクトホース

【課題】ダクト内面を略平滑にして風損を抑えながら、吸音性能をより効果的に向上させることができるダクトホースを提供する。
【解決手段】この発明のダクトホースは、略直筒状に形成した通気性を有する内層1と、この内層1の外側に積層した吸音層2と、この吸音層2の外側に積層した断熱層4と、この断熱層4の外側に積層した外層5とを備えている。そして、吸音層2の内周面に凹凸部21を形成することで、内層1と吸音層2との間に吸音用の空隙22を確保している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば住宅やビル等における空調設備の送排気用として使用されるダクトホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、送排気用のダクトホースにおいては、送風源からの騒音をダクト内部で極力減衰させて、室内への伝搬を防止するような消音対策が施されている。この種のダクトホースとしては、発泡樹脂体や不織布、グラスウール等からなる吸音層を設けた構造のものが一般的に広く知られているが、吸音性能をより高めるために、吸音層の内周面に凹凸を形成して、吸音層の内周面の表面積を拡大したり(例えば、特許文献1参照)、吸音層の内周面側に通気性を有する凹凸状のアルミ箔層を設けて、吸音層とアルミ箔層との間に吸音用の空隙を設けたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭58−217889号公報
【特許文献2】特開平9−217955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されているダクトホースにおいては、ダクト内面に凹凸が生じることになって、送排気時において風損が大きくなるといった不具合があった。
【0005】
さらに、特許文献1に開示されているダクトホースにおいては、吸音層の内周面の表面積を拡大しているだけであり、また特許文献2に開示されているダクトホースにおいては、凹凸状のアルミ箔層を設けて吸音用の空隙を確保してはいるものの、吸音層自体には吸音効果を高めるための工夫が何ら施されていないといったように、吸音性能をより一層向上させる上で改良の余地があった。
【0006】
この発明は、上記従来の欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、ダクト内面を略平滑にして風損を抑え、さらに吸音性能をより効果的に向上させることができるダクトホースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明のダクトホースは、略直筒状に形成した通気性を有する内層1と、この内層1の外側に積層した吸音性及び/又は断熱性を有する外側層2、4とを備え、前記外側層2、4の内周面に凹凸部21を形成して、前記内層1と外側層2、4との間に吸音用の空隙22を確保したことを特徴とする。
【0008】
具体的に、前記凹凸部21を、前記外側層2、4の内周面のほぼ全面に亘ってプロファイル加工を施すことによって形成している。また、前記内層1は、不織布又は織布からなる帯状の繊維質材9を螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を直接的又は間接的に接合してなる。
【0009】
さらに、前記外側層2は、連続気泡構造の帯状の発泡樹脂材20を前記内層1の外周面に沿って螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を互いに突き合わせてなる。また、前記外側層4は、独立気泡構造の帯状の発泡樹脂材30を前記内層1の外周面に沿って螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を互いに突き合わせてなる。
【0010】
さらにまた、前記内層1の外周面に、螺旋状に巻回してなる補強芯材6を取り付けて前記内層1を補強している。
【発明の効果】
【0011】
この発明のダクトホースにおいては、略直筒状の内層の外側に外側層を積層して、その外側層の内周面に凹凸部を形成して、内層と外側層との間に吸音用の空隙を確保しているので、ダクト内面を略平滑に保って送排気時の風損を抑えながら、ダクト内部を伝搬する騒音を、内層から吸音用の空隙内へ導いて減衰させることができ、これによって吸音性能を高めることができる。しかも、凹凸部を形成することによって外側層が曲がり易くなり、ホース全体としての可撓性も高めることができる。
【0012】
特に、外側層が吸音性を有する吸音層である場合には、凹凸部によって内周面の表面積が拡大した吸音層と吸音用の空隙の双方によって騒音を効率良く減衰して、吸音性能をより効果的に向上させることができる。
【0013】
また、外側層が断熱性を有する断熱層である場合には、断熱層によって断熱性能を良好に維持しながら、吸音用の空隙によって吸音性能を良好に維持することができる。一般に、吸音と断熱の両性能が要求されるダクトホースにおいては、吸音層と断熱層を積層した構造となっているが、このように断熱層の内側に吸音用の空隙を確保することによって、吸音層を廃止しても、吸音と断熱の両性能を良好に維持することが可能となり、これによってダクトの壁厚を格段に薄くすることができ、しかも部品点数を削減することができる。
【0014】
さらに、外側層の内周面のほぼ全面に亘って凹凸部が形成されていると、ホースのほぼ全長に亘って吸音用の空隙が確保されて、ホースのほぼ全長に亘って吸音性能をむらなく良好に発揮させることができる。さらにまた、螺旋巻回した繊維質材によって内層を構成することで、内層自体によっても騒音の減衰を図ることができ、吸音性能をさらに高めることができる。
【0015】
また、内層を補強芯材によって補強することで、ダクトの保形性を高めて、吸音用の空隙を良好に確保することができ、吸音性能をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、この発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。この発明の一実施形態に係るダクトホースは、例えば住宅やビル等の冷暖房装置の給排気口に接続されたり、或いは換気装置の給排気口に接続されて、これら空調設備に対する送排気用として利用される。
【0017】
このダクトホースは、図1乃至3に示すように、内層1、外側層としての吸音層2、中間層3、断熱層4及び外層5を内側から順に積層した構造となっている。
【0018】
内層1は、例えば通気性を有する不織布からなる帯状の繊維質材9を螺旋状に巻回することによって、略直筒状に形成されている。なお、内層1を構成する繊維質材9としては、不織布だけに限らず、例えば通気性を有する織布を用いるようにしても良い。
【0019】
内層1の外周面には、例えばポリプロピレン製の押し出し成形品からなる補強芯材6が固着されて、内層1と補強芯材6とが一体化されている。これにより、内層1が略直筒状に維持され、その内周面及び外周面が略平滑に保たれている。
【0020】
補強芯材6は、内層1における隣接する帯状の繊維質材9の端縁部間に沿って螺旋状に巻回され、それら端縁部の外周面間に跨って熱融着された断面略凸形の主補強芯10と、帯状の繊維質材9の幅方向中央部に沿って螺旋状に巻回され、その中央部の外周面に熱融着された断面略凸形の副補強芯11と、これら主補強芯10と副補強芯11の間において螺旋状に巻回され、帯状の繊維質材9の外周面に熱融着された断面略円形の線状補強芯12、12とを備えている。これら主補強芯10、副補強芯11、線状補強芯12、12は、押し出し成形時の溶融熱によって、内層1の外周面に熱融着されている。なお、内層1における隣接する帯状の繊維質材9の端縁部同士は、上記のように主補強芯10を介して間接的に接合するだけでなく、主補強芯10を介することなく互いに重ね合わせるようにして直接的に接合しても良い。
【0021】
そして、上記補強芯材6においては、主補強芯10の高さが最も高く、副補強芯11、線状補強芯12、12の順に高さが小さくなっている。すなわち、主補強芯10のホース径外方向への張り出し量が大きく、副補強芯11のホース径外方向への張り出し量が小さくなっていて、線状補強芯12、12のホース径外方向への張り出し量が主補強芯10や副補強芯11よりもさらに小さくなっている。なお、この補強芯材6は、例えば内層1をそれ自身の保形性によって略直筒状に維持することができるのであれば必ずしも設ける必要はなく、場合によっては廃止しても良い。
【0022】
吸音層2は、例えば可撓性及び弾発性を有する断面略長方形の帯状の吸音発泡樹脂材20を内層1の外周面に沿って螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を互いに突き合わせることによって、略直筒状に形成されている。この吸音層2の吸音発泡樹脂材20としては、例えば発泡ウレタン等からなる連続気泡構造の軟質発泡樹脂が用いられている。なお、吸音発泡樹脂材20としては、一部分が独立気泡構造となっていて断熱性も積極的に持たせるようにした軟質発泡樹脂を用いるようにしても良い。また、断面略長方形のものに限らず、例えば断面略菱形や断面略平行四辺形のものであっても良い。
【0023】
そして、この吸音層2の内周面には、凹凸部21が形成されており、これによって吸音層2の内周面の表面積が拡大されるとともに、内層1と吸音層2との間に吸音用の空隙22が確保されている。この凹凸部21は、吸音層2の内周面すなわち吸音発泡樹脂材20の内面のほぼ全面に亘ってプロファイル加工を施すことによって、ホース軸方向及びホース周方向に沿って凹部と凸部が交互に連続するように形成されている。したがって、ホースのほぼ全長に亘って吸音用の空隙22が確保されている。なお、凹凸部21としては、例えば吸音層2の内周面に複数の溝を形成することで構成したものであっても良い。
【0024】
また、この吸音層2の内周側において、吸音発泡樹脂材20の隣接する端縁部間に主補強芯10が入り込むとともに、吸音発泡樹脂材20の幅方向中央部に副補強芯11が当接し、吸音発泡樹脂材20の幅方向中央部と端縁部との間に線状補強芯12、12が当接した状態となっている。
【0025】
このように、内層1と吸音層2との間に補強芯材6を介在させているので、吸音層2の位置ずれや捻れ等を防止することができ、しかも吸音層2の凹凸部21の内層1への圧接による押し潰れを抑制することができる。
【0026】
中間層3は、例えば軟質樹脂テープ25を螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を熱融着してなる。なお、この中間層3は、必ずしも設ける必要はなく、場合によっては廃止しても良い。
【0027】
断熱層4は、例えば可撓性及び弾発性を有する断面略長方形の帯状の断熱発泡樹脂材30を、中間層3の外周面に沿って螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を互いに突き合わせることによって、略直筒状に形成されている。この断熱層4の断熱帯状材30としては、例えば発泡ポリエチレン等からなる独立気泡構造の軟質発泡樹脂が用いられている。なお、断熱発泡樹脂材30としては、一部分が連続気泡構造となっていて吸音性も積極的に持たせるようにした軟質発泡樹脂を用いるようにしても良い。また、断面略長方形のものに限らず、例えば断面略菱形や断面略平行四辺形のものであっても良い。
【0028】
この断熱層4における断熱発泡樹脂材30の端縁部間の突き合わせ部分は、吸音層2における吸音発泡樹脂材20の端縁部間の突き合わせ部分に対してホース軸方向に位置ずれした状態となっており、これにより吸音層2の吸音発泡樹脂材20の突き合わせ部分、及び、断熱層4の断熱発泡樹脂材30の突き合わせ部が塞がれて、吸音性能及び断熱性能が高められている。
【0029】
そして、断熱層4の内周側において、断熱発泡樹脂材30の隣接する端縁部間に沿って螺旋状に巻回された例えばエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる細幅の接着用テープ31が、それら端縁部間及び中間層3の外周面に熱融着されている。これにより、断熱発泡樹脂材30の隣接する端縁部同士が接着され、また断熱層4と中間層3とが接着された状態となっている。
【0030】
このように、接着用テープ31によって、断熱発泡樹脂材30の端縁部同士をつなぐことで、例えばホースを曲げたときにでも、断熱発泡樹脂材30の端縁部間の突き合わせ部分が開いて、その端縁部間に隙間が生じるといったことがなく、断熱層4において良好な断熱性能を維持するようになっている。
【0031】
外層5は、例えば軟質樹脂テープ35を螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を熱融着してなる。この外層5は、断熱層4の外周面側において螺旋状に巻回された例えばEVAからなる細幅の接着用テープ36を介して断熱層4に接着されている。このような外層5を設けることで、断熱層4の劣化や損傷等を抑えるとともに、断熱性能を高めている。
【0032】
上記構成のダクトホースを空調設備の給排気口に接続した状態において、送風機からの騒音がダクト内に侵入すると、この騒音は、ダクト内部を伝搬する間に、まず内層1に干渉することによって減衰される。また、内層1を通過して吸音用の空隙22に導かれた騒音は、この吸音用の空隙22内において拡散や反射を繰り返して減衰される。さらに、吸音用の空隙22内の騒音は、表面積が拡大された内周面から吸音層2内部へ効率良く導かれて、この吸音層2内部において減衰される。従って、ダクト内に侵入した騒音を、内層1、吸音層2及びそれらの間に形成した吸音用の空隙22によって効率良く減衰して、ダクトホースの室内側開口部に行き着くまでに消音することができる。
【0033】
図4は、他の実施形態に係るダクトホースを示しており、このダクトホースにおいては、中間層3及び断熱層4が廃止されて、吸音層2の外周面側に外層5が設けられている。このように、断熱層4を廃止することで、ダクトの壁厚を格段に薄くしながら、部品点数を削減することができる。しかも、断熱層4を廃止したにも係わらず、吸音用の空隙22による断熱効果によって、断熱性能もある程度は持たせることができる。その他の構成は、上記実施形態と同様であり、上記実施形態と同様の機能を有する部材については同符号を付してある。
【0034】
図5は、別の実施形態に係るダクトホースを示しており、このダクトホースにおいては、内層1の外側に積層する外側層として吸音層2の代わりに断熱層4が用いられ、吸音層2及び中間層3が廃止されている。そして、断熱層4の内周面に凹凸部21が形成されており、これによって内層1と断熱層4との間に吸音用の空隙22が確保されている。このように、吸音層2を廃止することで、ダクトの壁厚を格段に薄くしながら、部品点数を削減することができる。しかも、吸音層2を廃止したにも係わらず、吸音用の空隙22によって吸音性能を良好に維持することができる。その他の構成は、上記実施形態と同様であり、上記実施形態と同様の機能を有する部材については同符号を付してある。
【0035】
以上にこの発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の一実施形態に係るダクトホースの一部破断斜視図である。
【図2】同じくその一部破断側面図である。
【図3】同じその部分拡大断面図である。
【図4】他の実施形態に係るダクトホースの部分拡大断面図である。
【図5】別の実施形態に係るダクトホースの部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1・・内層、2・・吸音層(外側層)、4・・断熱層(外側層)、6・・補強芯材、9・・繊維質材、20・・吸音発泡樹脂材、21・・凹凸部、22・・吸音用の空隙、30・・断熱発泡樹脂材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直筒状に形成した通気性を有する内層(1)と、この内層(1)の外側に積層した吸音性及び/又は断熱性を有する外側層(2)(4)とを備え、前記外側層(2)(4)の内周面に凹凸部(21)を形成して、前記内層(1)と外側層(2)(4)との間に吸音用の空隙(22)を確保したことを特徴とするダクトホース。
【請求項2】
前記凹凸部(21)を、前記外側層(2)(4)の内周面のほぼ全面に亘ってプロファイル加工を施すことによって形成した請求項1記載のダクトホース。
【請求項3】
前記内層(1)は、不織布又は織布からなる帯状の繊維質材(9)を螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を直接的又は間接的に接合してなる請求項1又は2記載のダクトホース。
【請求項4】
前記外側層(2)は、連続気泡構造の帯状の発泡樹脂材(20)を前記内層(1)の外周面に沿って螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を互いに突き合わせてなる請求項1乃至3のいずれかに記載のダクトホース。
【請求項5】
前記外側層(4)は、独立気泡構造の帯状の発泡樹脂材(30)を前記内層(1)の外周面に沿って螺旋状に巻回して、その隣接する端縁部同士を互いに突き合わせてなる請求項1乃至3のいずれかに記載のダクトホース。
【請求項6】
前記内層(1)の外周面に、螺旋状に巻回してなる補強芯材(6)を取り付けて前記内層(1)を補強した請求項1乃至5のいずれかに記載のダクトホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−96073(P2008−96073A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280933(P2006−280933)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000221502)東拓工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】