説明

ダクト同士の接続部構造

【課題】漏風量の低減を可能にするダクト同士の接続部構造を提供する。
【解決手段】筒状に形成されたダクト1、2同士を接続する接続部の構造Aであって、一対のダクト1、2の端部1a、2a同士を着脱可能に接続するファスナーからなる第1接続部3と、筒状に形成されるとともに一端部5a、6a全周に嵌合凸部9及び/又は嵌合凹部10を設けて形成され、他端部5b、6b全周をダクト1、2の端部1a、2a側の外面1b、2bに固着してダクト1、2に一体に取り付けられたカバー部材5、6を有し、一方のダクト1に取り付けた一方のカバー部材5の嵌合凸部9と他方のダクト2に取り付けた他方のカバー部材6の嵌合凹部10とを密着嵌合させて一対のカバー部材5、6の一端部5a、6a同士を着脱可能に接続するとともに、第1接続部3を一対のカバー部材5、6で覆って内包する第2接続部4とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト同士の接続部構造に関し、特に、気密性と可撓性を有するシートを筒状に成形してなるダクト同士を接続する接続部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地下工事やトンネル工事等において、換気設備は、作業員の呼気確保、排熱、粉塵の除去、有害ガスの希釈や排除など、作業環境を好適な状態に保つという重要な役割を担っている。
【0003】
そして、この種の換気設備は、例えば換気ファンの駆動とともに外部の空気を所定位置に送るためのダクト(風管)を備え、このダクトとして、気密性と可撓性を有する合成樹脂製シートを円筒状に成形したものが多用されている(例えば、特許文献1参照)。また、合成樹脂製シートを円筒状に成形してなるダクトは、一般に、端部全周にファスナーの務歯が取り付けられ、スライダー金具を操作して互いの端部の務歯同士を噛合させることによってダクト同士を接続し、所定位置まで延長できるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−264034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のファスナーのみからなるダクト同士を接続する接続部の構造においては、務歯を端部に取り付けたテープ部分(布テープ)や、ファスナーの終点の隙間などから漏風が発生するという問題があった。
【0006】
そして、例えば長距離のトンネル工事などでは、10〜100m程度のダクトを接続して延長し、接続部の数が多くなるため、この接続部の数に応じて漏風量も多くなる。このため、大きな容量の換気ファンなどが必要になり、漏風が設備コストや動力コストなどのランニングコストの増大を招く要因となっていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、漏風量の低減を可能にするダクト同士の接続部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明のダクト同士の接続部構造は、気密性と可撓性を有する部材を用いて筒状に形成されたダクト同士を接続する接続部の構造であって、各ダクトの端部全周に取り付けた務歯同士を噛合させて一対のダクトの端部同士を着脱可能に接続するファスナーからなる第1接続部と、気密性と可撓性を有する部材を用いて筒状に形成されるとともに一端部全周に嵌合凸部及び/又は嵌合凹部を設けて形成され、他端部全周をダクトの端部側の外面に固着してダクトに一体に取り付けられたカバー部材を有し、一方のダクトに取り付けた一方のカバー部材の嵌合凸部と他方のダクトに取り付けた他方のカバー部材の嵌合凹部とを密着嵌合させて一対のカバー部材の一端部同士を着脱可能に接続するとともに、前記第1接続部を一対のカバー部材で覆って内包する第2接続部とを備えて構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のダクト同士の接続部構造においては、前記第2接続部の嵌合凸部と嵌合凹部が嵌合した嵌合部とダクトの延設方向の同位置において、筒体がダクトとカバー部材の間に緩挿して設けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のダクト同士の接続部構造においては、各ダクトの端部に設けた務歯同士を噛合させることにより、ファスナーの第1接続部で一対のダクトを互いの内部を連通させた状態で接続することができる。また、一方のダクトに取り付けたカバー部材と他方のダクトに取り付けたカバー部材の嵌合凸部と嵌合凹部を嵌合させ、一対のカバー部材の一端部同士を第2接続部で接続することにより、一対のダクトの端部同士を接続した第1接続部を一対のカバー部材で覆って内包することができる。
【0012】
これにより、第1接続部のファスナーで漏風が発生した場合に、嵌合凸部と嵌合凹部を密着嵌合させて接続し、第1接続部を内包する一対のカバー部材によって第1接続部で発生した漏風を遮断することができ、従来のダクト同士の接続部構造と比較し、接続部の気密性を高め、漏風量を大幅に低減することできる。よって、換気設備(換気ファン)の規模を小さくすることができ、設備コストや動力コストなどのランニングコストの低減を図ることが可能になる。
【0013】
また、第2接続部の嵌合凸部と嵌合凹部が嵌合した嵌合部とダクトの延設方向(ダクトの軸線方向)の同位置に筒体を設けておくと、この筒体によってダクトを筒状に保持することができるとともに、筒体に押し当てながら嵌合凸部と嵌合凹部を嵌合させることができ、確実且つ容易に、ダクトの全周にわたって連続的に嵌合凸部と嵌合凹部を嵌合密着させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るダクト同士の接続部構造によって複数のダクトを接続した状態を示す図である。
【図2】図1のX1−X1線矢視図であり、本発明の一実施形態に係るダクト同士の接続部構造を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る一方のダクトと他方のダクトを示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るダクト同士の接続部構造の第1接続部によって一対のダクトの端部同士を接続した状態を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るダクト同士の接続部構造の変形例を示す図であり、筒体を備えた接続部構造を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るダクト同士の接続部構造の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1から図4を参照し、本発明の一実施形態に係るダクト同士の接続部構造について説明する。
【0016】
本実施形態において、ダクトは、気密性と可撓性を有するポリ塩化ビニールシートなどの合成樹脂製シートを円筒状に成形してなる風管であり、例えば地下工事やトンネル工事等において、作業員の呼気確保、排熱、粉塵の除去、有害ガスの希釈や排除などを行うために使用される。
【0017】
また、本実施形態のダクト同士の接続部構造Aは、図1から図3に示すように、隣り合うダクト1、2の端部1a、2a同士を接続して、複数のダクト1、2を連通させつつ接続し所定長さに延長するための構造であり、第1接続部3と第2接続部4とを備えて構成されている。
【0018】
第1接続部3は、一方のダクト1の端部1a全周と他方のダクト2の端部2a全周にそれぞれ、布テープなどを介して一体に取り付けられた務歯3a、3bと、これら務歯3a、3b同士を噛合させるためのスライダー金具(不図示)とを備えたファスナーからなり、スライダー金具を操作して各ダクト1、2の端部1a、2aに取り付けた務歯3a、3b同士を噛合させることによって、一対のダクト1、2の端部1a、2a同士を着脱可能に接続することができる。また、第1接続部3で接続したダクト1、2同士は、互いの内部が連通した状態で接続される。
【0019】
一方、第2接続部4は、気密性と可撓性を有する合成樹脂製シート(部材)を円筒状に形成するとともに、一端部5a、6a全周にジッパテープ7、8を取り付けて形成したカバー部材5、6を備えて構成されている。また、カバー部材5、6は、他端部5b、6b全周をダクト1、2の端部1a、2a側の外面1b、2bに固着してダクト1、2に一体に取り付けられている。そして、カバー部材5、6は、一方のダクト1と他方のダクト2の端部1a、2a側にそれぞれ取り付けられている。
【0020】
また、図2及び図3に示すように、一方のダクト1に取り付けた一方のカバー部材5の一端部5a全周に、周方向に延びる嵌合凸部9を備えた雄側ジッパテープ7が取り付けられ、他方のダクト2に取り付けた他方のカバー部材6の一端部6a全周に、周方向に延びる嵌合凹部10を備えた雌側ジッパテープ8が取り付けられている。
【0021】
上記構成からなる本実施形態のダクト同士の接続部構造Aで一対のダクト1、2を接続する際には、はじめに、図3及び図4に示すように、一方のダクト1の端部1aに設けた務歯3aと他方のダクト2の端部2aに設けた務歯3bを、スライダー金具を操作して噛合させ、第1接続部3によって一対のダクト1、2の端部1a、2a同士を接続する。
【0022】
次に、図2及び図3に示すように、一方のカバー部材5と他方のカバー部材6をダクト1、2の延設方向(軸線方向)O1に延ばし、一方のカバー部材5の一端部5a全周に取り付けた雄側ジッパテープ7の嵌合凸部9と、他方のカバー部材6の一端部6a全周に取り付けた雌側ジッパテープ8の嵌合凹部10とを全周にわたって連続的に密着嵌合させ、一対のカバー部材5、6の一端部5a、6a同士を接続して第2接続部4とする。なお、ジッパテープ7を嵌合凹部10を有する雌側、ジッパテープ8を嵌合凸部9を有する雄側としても差し支えない。
【0023】
そして、このように一対のカバー部材5、6の一端部5a、6a同士を接続すると、図2に示すように、ファスナーの第1接続部3が一対のカバー部材5、6で覆われ、これら一対のカバー部材5、6で形成される密閉空間H内に第1接続部3が内包される。
【0024】
これにより、ファスナーの第1接続部3において、務歯3a、3bを端部1a、2aに取り付けたテープ部分(布テープ)や、ファスナーの終点の隙間などから漏風が発生した場合であっても、第1接続部3が嵌合凸部9と嵌合凹部10を密着嵌合して接続した第2接続部4の一対のカバー部材5、6によって内包されていることで、第1接続部3で発生した漏風が一対のカバー部材5、6で遮断され、外部に漏出することが防止される。よって、本実施形態のダクト同士の接続部構造Aにおいては、漏風量を大幅に低減することになる。
【0025】
なお、一対のカバー部材5、6の一端部5a、6a同士を嵌合凸部9と嵌合凹部10を嵌合させて接続した状態で、この嵌合凸部9と嵌合凹部10を嵌合させた嵌合部11に外側からテープを貼り付け、第2接続部4の接続が解除されないようにしたり、また、第2接続部4の気密性をさらに向上させるようにしてもよい。
【0026】
ここで、本実施形態のダクト同士の接続部構造Aの優位性を確認するために行った実証試験について説明する。この実証試験では、ダクト(風管)径が300mmの一対のダクト1、2を用い、これらダクト1、2を本実施形態の接続部構造Aで接続し、管内圧力を3.0kPa、5.0kPa、7.0kPa、10.0kPaの4段階で変化させてダクト内に送風した。そして、各管内圧力における漏風量を測定し、漏風係数αを、α=q×100/(ht×π×Dt)、q:漏風量(m/min)、Dt:風管径(m)、ht:圧力損失(kPa)によって求めた。
【0027】
表1は、実証試験の結果を示している。この表1に示す通り、本実施形態のダクト同士の接続部構造Aを設けた場合、管内圧力を3.0kPa、5.0kPa、7.0kPa、10.0kPaの4段階で変化させた際の漏風係数は0.4前後になることが確認された。そして、「ずい道工事等における換気技術指針」では、ビニール風管の漏風係数が18〜22とされているため、この値と比較すると、本実施形態のダクト同士の接続部構造Aを設けた場合には漏風係数が約97%も低くなることが実証された。すなわち、本実施形態のダクト同士の接続部構造Aは、著しく優れた漏風防止効果を発揮することが実証された。
【0028】
【表1】

【0029】
なお、実証試験では、管内圧力を最大10.0kPaとしたが、別途行った要素試験により、本実施形態のダクト同士の接続部構造Aは20kPa程度の耐圧性能があることが確認された。トンネル工事等で通常利用する送風機の静圧が2〜10kPa程度であることを考えれば、本実施形態のダクト同士の接続部構造Aが実用上も十分であると言える。
【0030】
したがって、本実施形態のダクト同士の接続部構造Aにおいては、各ダクト1、2の端部1a、2aに設けた務歯3a、3b同士を噛合させることにより、ファスナーの第1接続部3で一対のダクト1、2を互いの内部を連通させた状態で接続することができる。また、一方のダクト1に取り付けたカバー部材5と他方のダクト2に取り付けたカバー部材6の嵌合凸部9と嵌合凹部10を嵌合させ、一対のカバー部材5、6の一端部5a、6a同士を第2接続部4で接続することにより、一対のダクト1、2の端部1a、2a同士を接続した第1接続部3を一対のカバー部材5、6で覆って内包することができる。
【0031】
これにより、第1接続部3のファスナーで漏風が発生した場合に、嵌合凸部9と嵌合凹部10を密着嵌合させて接続し、第1接続部3を内包する一対のカバー部材5、6によって第1接続部3で発生した漏風を遮断することができ、従来のダクト同士の接続部構造と比較し、接続部の気密性を高め、漏風量を大幅に低減することできる。よって、換気設備の規模を小さくすることができ、設備コストや動力コストなどのランニングコストの低減を図ることが可能になる。
【0032】
以上、本発明に係るダクト同士の接続部構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0033】
例えば、図5に示すように、第2接続部4の嵌合凸部9と嵌合凹部10が嵌合した嵌合部11とダクト1、2の延設方向O1の同位置に、ダクト2の外径よりも若干大径の筒体12をダクト2とカバー部材6の間のスペースに緩挿する。このようにすると、筒体12に押し当てながら嵌合凸部9と嵌合凹部10を嵌合させることができ、確実且つ容易に、ダクト1、2の全周にわたって連続的に嵌合凸部9と嵌合凹部10を嵌合密着させることが可能になる。
【0034】
また、図2から図4に示したように、本実施形態では、他方のカバー部材6が、その他端部6b全周を他方のダクト2の外周に固着し、この他端部6bに対し嵌合凹部10を備えた一端部6a側を他方のダクト2の端部2a側に配して、他方のダクト2に取り付けられているものとして説明を行った。
【0035】
これに対し、図6に示すように、他端部6b全周を他方のダクト2の外周に固着するとともに、嵌合凹部10(や嵌合凸部9)を備えるジッパテープ8’がその全周に取り付けられた一端部6aよりも他端部6bが他方のダクト2の端部2a側に配されるようにして、他方のカバー部材6を他方のダクト2に取り付けるようにしてもよい。そして、上記のように構成した場合には、図6に示すように、一方のカバー部材5の一端部5aの全周に取り付けられたジッパテープ7’の嵌合凸部9(や嵌合凹部10)と他方のカバー部材6の一端部6aの嵌合凹10(や嵌合凸部9)を上下に重ねつつ、指で摘まむことにより、容易に嵌合凸部9と嵌合凹部10を嵌合させて密着(接続)させることが可能になる。
【0036】
また、図6に示すように、一方のダクト1に取り付けた一方のカバー部材5の一端部5aと、他方のダクト2に取り付けた他方のカバー部材6の一端部6aとにそれぞれ、(複数の)嵌合凸部9と嵌合凹部10を設けて第2接続部4を構成するようにしてもよい。また、ジッパテープ7,7’、8,8’は軟質合成樹脂製であり、カバー部材5、6と同様に可撓性を有する。
【符号の説明】
【0037】
1 ダクト(一方のダクト)
1a 端部
1b 外面
2 ダクト(他方のダクト)
2a 端部
2b 外面
3 第1接続部
3a 務歯
3b 務歯
4 第2接続部
5 カバー部材(一方のカバー部材)
5a 一端部
5b 他端部
6 カバー部材(他方のカバー部材)
6a 一端部
6b 他端部
7 ジッパテープ(雄側ジッパテープ)
8 ジッパテープ(雌側ジッパテープ)
9 嵌合凸部
10 嵌合凹部
11 嵌合部
12 筒体
A ダクト同士の接続部構造
H 密閉空間
O1 ダクトの延設方向(軸線方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性と可撓性を有する部材を用いて筒状に形成されたダクト同士を接続する接続部の構造であって、
各ダクトの端部全周に取り付けた務歯同士を噛合させて一対のダクトの端部同士を着脱可能に接続するファスナーからなる第1接続部と、
気密性と可撓性を有する部材を用いて筒状に形成されるとともに一端部全周に嵌合凸部及び/又は嵌合凹部を設けて形成され、他端部全周をダクトの端部側の外面に固着してダクトに一体に取り付けられたカバー部材を有し、
一方のダクトに取り付けた一方のカバー部材の嵌合凸部と他方のダクトに取り付けた他方のカバー部材の嵌合凹部とを密着嵌合させて一対のカバー部材の一端部同士を着脱可能に接続するとともに、前記第1接続部を一対のカバー部材で覆って内包する第2接続部とを備えて構成されていることを特徴とするダクト同士の接続部構造。
【請求項2】
請求項1記載のダクト同士の接続部構造において、
前記第2接続部の嵌合凸部と嵌合凹部が嵌合した嵌合部とダクトの延設方向の同位置において、筒体がダクトとカバー部材の間に緩挿して設けられていることを特徴とするダクト同士の接続部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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