ダクト
【課題】 必要な強度を確保したうえで、製造コストの上昇を抑え得るダクトの提供。
【解決手段】 一の板面部と一の板面部に角部を介して他の板面部が連続するダクト本体の角部に補強手段が設けられ、一の板面部、他の板面部、および補強手段は、一枚の板部材を折り曲げて形成され、補強手段は、板部材を折り返して形成した複数枚の折曲片からなるとともに、折曲片は一の板面部および他の板面部に亘って形成されている構成のダクト。
【解決手段】 一の板面部と一の板面部に角部を介して他の板面部が連続するダクト本体の角部に補強手段が設けられ、一の板面部、他の板面部、および補強手段は、一枚の板部材を折り曲げて形成され、補強手段は、板部材を折り返して形成した複数枚の折曲片からなるとともに、折曲片は一の板面部および他の板面部に亘って形成されている構成のダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調用等に用いられるダクトの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
空調用等に用いられるダクトとして、例えば下記特許文献1の技術が提案されている。このダクトにおいて、ダクト構成板からフランジ部(共板フランジ)を形成する場合では、ダクト構成板の一部を直角に折曲げるようにしている。しかしながら、このようにダクト構成板の一部を直角に折曲げるだけでは必要な強度を確保することは難しい。
【0003】
そこで、例えば特許文献2に示す技術が考えられる。このダクトでは、フランジ部に補強手段を設けている。すなわち補強手段は、前フランジ部に連続して対面する後フランジ部、ならびに前フランジ部に折曲回帰して前フランジ部の後壁面に密接する押圧片を形成してなり、この構成によってフランジ部の強度を向上させている。
【0004】
さらに、特許文献3に示す技術が提案されている。これは、断面矩形の中空状ダクトの角部において、ダクト構成板の一短辺部を折り曲げて、被挿入側となるはぜ折部(ダブル)を形成し、別のダクト構成板の一短辺部を折り曲げて、挿入側となる折曲部(シングル)を形成し、はぜ折部に折曲部を挿入し、はぜ折部のうちの延長部分を前記別のダクト構成板に重ねるように折曲することで構成されている。このようなはぜ折部の構造によれば、中空状ダクトの角部の強度が向上し、外力に対抗することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−298234号公報
【特許文献2】特開平7−91723号公報
【特許文献3】特開2002−168504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献2に開示されたダクトでは、補強手段が、前フランジ部に連続して対面する後フランジ部を備えており、しかも前フランジ部に折曲回帰して前フランジ部の後壁面に密接する押圧片を備えた構成であるから、必要となる材料が多くなり、したがって材料費が高くなる。また、上記特許文献3に開示されたダクトでは、補強部分を、一の部材(一のダクト構成板)にはぜ折部を形成し、他の部材(他のダクト構成板)に折曲部を形成して、はぜ折部に折曲部を挿入して構成しているから、工数が増加して製造コストが高くなるという課題があった。
【0007】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、製造コストの上昇を抑えたうえで必要な強度を確保し得るダクトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のダクトは、一の板面部と該一の板面部に角部を介して他の板面部が連続するダクト本体の、前記角部に補強手段が設けられ、前記一の板面部、他の板面部、および補強手段は、一枚の板部材を折り曲げて形成され、補強手段は、板部材を折り返して形成した複数枚の折曲片からなるとともに、該折曲片は一の板面部および他の板面部に亘って形成されていることを特徴としている。
【0009】
上記構成のダクトによれば、補強手段を、板部材を折り返して形成した複数枚の折曲片から形成して、折曲片は一の板面部および他の板面部に亘るよう形成しているから、材料費の高騰を抑え、製造コスト全体の上昇が抑えられる。
【0010】
本発明のダクトでは、折曲片は角部の長手方向に沿って形成されている構成を採用することができる。該構成のように、折曲片を角部の長手方向に沿って形成することで、ダクトの長手方向全域に亘る補強が可能である。
【0011】
本発明のダクトでは、一の板面部がダクト本体であり、他の板面部がダクト本体の長手方向端部に形成されて他のダクトのフランジと接続されるフランジであることが好ましい。この構成によれば、他のダクトのフランジとの接続に用いられて大きな外力が働き易いフランジの変形を防止することが可能である。
【0012】
本発明のダクトでは、フランジにおけるダクト本体寄りの所定位置を沈みこませることで、フランジ側の折曲片の表面とフランジの接続面を面一とする段付部が形成されている構成を採用することができる。フランジの所定位置を沈みこませて段付部を形成することで、その部分の断面形状が変化するので、その分だけ強度を向上させられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のダクトは、補強手段を、板部材を折り返して形成した複数枚の折曲片から形成して、折曲片は一の板面部および他の板面部に亘るよう形成しているから、材料費の高騰を抑えることができ、製造コスト全体の上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態のダクトの単体構成を表した斜視図である。
【図2】同分解斜視図である。
【図3】同図1のダクトを幅方向(左右方向)中心で切断した縦割斜視図である。
【図4】同補強手段を主に表した断面図である。
【図5】同図1のダクトを長手方向(前後方向)中心で切断した横割斜視図である。
【図6】同補強手段の製造第一工程を表した側面図である。
【図7】同補強手段の製造第二工程を表した側面図である。
【図8】同補強手段の製造第三工程を表した側面図である。
【図9】同補強手段の製造第四工程を表した側面図である。
【図10】同補強手段の製造第五工程を表した側面図である。
【図11】同フランジ部と接続用部材との関係の詳細を示す側面図である。
【図12】別の実施形態のダクトにおける補強手段を表した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るダクトを、図面を参照しつつ説明する。図1ないし図5に示すように、本発明の実施形態に係るダクト1は、ダクト本体2と、ダクト本体2の長手方向両端部に形成されたフランジ3(この場合、継手用フランジ)と、接続用部材4(コーナーピースとも称される)とから構成されている。
【0016】
図2に示すように、ダクト本体2は、一枚の上板部材5、一枚の下板部材6、一枚の右側の側板部材7、および一枚の左側の側板部材8の、四枚の金属板(この場合、亜鉛鉄板等が用いられる)の組み合わせから、中空状の矩形断面に形成されている。上板部材5および下板部材6は同様の構成であって対称使いされ、右側の側板部材7および左側の側板部材8は同様の構成であって対称使いされている。上板部材5および下板部材6は上下方向に離間して対向するよう配置され、右側の側板部材7および左側の側板部材8は、左右方向に離間して対向するよう配置されている。
【0017】
上板部材5、下板部材6、右側の側板部材7、および左側の側板部材8には、それぞれ長手方向端部を折曲げることでフランジ部3A(枠状のフランジ3の一部)が形成されている。すなわち、上板部材5は平板状の上板部9と、フランジ部3Aとから一体的に構成され、下板部材6は平板状の下板部10と、フランジ部3Aとから一体的に構成され、右側の側板部材7は平板状の右側板部11と、フランジ部3Aとから一体的に構成され、左側の側板部材8は平板状の左側板部12と、フランジ部3Aとから一体的に構成されている。
【0018】
上板部9とフランジ部3Aの関係において、フランジ部3Aは上板部9の長手方向各端部を、上板部9から直角方向に外側に折曲げることで形成されている。下板部10とフランジ部3Aの関係において、フランジ部3Aは下板部10の長手方向各端部を、下板部10から直角方向に外側に折曲げることで形成されている。右側板部11とフランジ部3Aの関係において、フランジ部3Aは右側板部11の長手方向各端部を、右側板部11から直角方向に外側に折曲げることで形成されている。左側板部12とフランジ部3Aの関係において、フランジ部3Aは左側板部12の長手方向各端部を、左側板部12から直角方向に外側に折曲げることで形成されている。
【0019】
上板部9とフランジ部3Aの連続部分である角部、下板部10とフランジ部3Aの連続部分である角部、右側板部11とフランジ部3Aの連続部分である角部、および左側板部12とフランジ部3Aの連続部分である角部には、それぞれ同様の構成の補強手段13が設けられている。これら補強手段13は同様の構成であるので、図3,4、図6〜10を参照して、ここでは、下板部材6の補強手段13の説明することで、他の補強手段13の構成の代用の説明とする。
【0020】
図3および図4に示すように、補強手段13は、下板部材6を構成する一枚の板部材を折り曲げて形成されており、下板部材6を二回折り返して形成した折曲片から構成されている。ここで便宜上、図6ないし図10に示す補強手段13の製造工程図を含めて、下板部材6の補強手段13の構成を代表して説明する。
【0021】
図6の第一工程に示すように、平板状の下板部材用ブランク材14を、下板部10となる部分とフランジ部3Aとなる部分との境界部付近である所定位置Aを中心として、直角をなすように折曲げる。この所定位置Aに対する一方側を下板部形成材15とし、他方側をフランジ形成材16と称することとする。第一工程が終了すれば、続いて、図7の第二工程に示すように、所定位置Aから下板部形成材15に所定長さ分の部分領域17を置いた所定位置Bから下板部形成材15をフランジ形成材16と平行になるよう直角に折曲げる。
【0022】
続いて、図8の第三工程に示すように、部分領域17をフランジ形成材16に重なるように折曲げるとともに、下板部形成材15をフランジ形成材16と平行になるよう折曲げる。そうすると、部分領域17を介してフランジ形成材16の一部領域18と下板部形成材15の一部領域19とが重なった、三枚の折曲片(すなわちフランジ形成材16の一部領域18、部分領域17、下板部形成材15の一部領域19)が重なってなる重なり部20が形成される。続いて、図9の第四工程に示すように、フランジ形成材16の表面(フランジ3Aの接続面に相当する)と下板部形成材15の表面(フランジ側における折曲片の表面に相当する)とを面一にするために、フランジ形成材16の所定部分を沈みこませる。すなわちフランジ形成材16に、符号16aで示す段付部を形成する。なお、段付部16aを形成する位置は、前記所定位置Bに略一致する位置である。
【0023】
さらに、図10の第五工程に示すように、重なり部20の途中部分Cにおいて、下板部形成材15とフランジ形成材16とが直角になるよう折曲げる。このようにすることにより、補強手段13が形成される。すなわち補強手段13は、三枚の折曲片(フランジ形成材16の一部領域18、部分領域17、下板部形成材15の一部領域19)が重なって構成される重なり部20の途中部分Cを、下板部形成材15(一の板面部に相当する)とフランジ形成材16(他の板面部に相当する)とが直角になるよう折曲げることで、下板部形成材15とフランジ形成材16とに亘るようにすることで構成されている。
【0024】
さらに、フランジ形成材16の先端部21は外方に向けて直角に折曲げられ、先端部21の先端辺部は折返されて挟持片22が形成される。補強手段13(重なり部20)は、角部の長手方向(左右方向)全域に亘って形成されている。なお、符号23は、角部から離間して下板部形成材15に形成された接続用部材止である。この接続用部材止23は、溝状に形成され、角部の長手方向(左右方向)全域に亘って形成されている。
【0025】
このような補強手段13、接続用部材止23、フランジ部3Aは、上板部材5、下板部材6、右側の側板部材7、および左側の側板部材8のそれぞれについて形成されている。しかもこの場合、フランジ部3Aは、各板部材の長手方向(前後方向)の両側部分に形成されている。
【0026】
なお、フランジ3(フランジ部3A)を正面視した際に、フランジ形成材16と下板部形成材15を面一にするためにフランジ形成材16を沈めたことによる、一条のスリット状部24(例えば図2、図3参照)を観て取ることができる。
【0027】
上記のように、同様の構成の補強手段13およびフランジ部3Aを有する上板部材5、下板部材6、右側の側板部材7、および左側の側板部材8を組付けるための組付手段25(図5参照)が設けられている。この組付手段25は、上板部材5と、右側の側板部材7および左側の側板部材8とを組付け、下板部材6と、右側の側板部材7および左側の側板部材8とを組付けることができるよう構成されている。
【0028】
この組付手段25は、図5の拡大部分に示すように、ダブル部26とシングル部27とを嵌合することによって構成される一般的な構成を備えた、はぜ構造が好適に用いられる。そしてこの場合、右側の側板部材7および左側の側板部材8の端部に、ダブル部26が形成されており、上板部材5および下板部材6の端部に、ダブル部26に嵌合するシングル部27が形成されている。
【0029】
図2に示すように、接続用部材4は、直交する方向で隣り合うフランジ部3A間に渡されるよう、一方側の板状の被挟持片4aと他方側の板状の被挟持片4aとが、直交する方向にある鉤形に形成されている。一方側の板状の被挟持片4aと他方側の板状の被挟持片4aとは同一の長さに形成されている。
【0030】
図11に示すように、接続用部材4の各被挟持片4aは、フランジ部3Aに沿うように配置される本体部4bと、本体部4bの両側に、フランジ部3Aから離れる方向でフランジ部3Aに直交する方向に折曲げられた折曲部4c,4dとを備えている。一方の折曲部4cは補強手段13側にあってフランジ形成材16の一部領域18に重ねられ、他方の折曲部4dはフランジ形成材16の先端部21に重ねられている。そして、他方の折曲部4dは、フランジ形成材16の先端部21の挟持片22をさらに折曲げることで抱き込むようにしてフランジ部3Aに保持され、一方の折曲部4cは接続用部材止23に係止してフランジ部3Aから離脱することを阻止されている。
【0031】
上記構成のダクト1は、補強手段13を備えており、補強手段13は、一枚の板部材を折曲げて形成した重なり部20を、その途中部分Cで一の板面部と他の板面部とを所定の角度(例えば直角)になるよう折曲げることで、一の板面部と他の板面部とに亘るようにして構成している。したがって、フランジ部3A全体を二重構造にした構成に比べて材料の使用量の増大を抑えるころができる。また、補強手段13を設けるのに、一の板面部と他の板面部とを別の板部材で構成するが必要なく、したがって別の板部材どうしを連結する必要がない。このため、工数の増加に伴う製造コストの上昇を抑えることができ、しかも必要な強度を確保することができる。
【0032】
特に、この種のダクト1ではフランジ3は他のダクト(図示せず)と連結される継手部分として使用されるから、特に強度を要する部分である。したがって、このようなフランジ3部分の強度向上させることはこの種のダクト1においては有用である。
【0033】
また、上記のような補強手段13を形成したうえで、フランジ3の接続面3bをフラット面にしている。これは、前記第四工程に示すように、例えばフランジ形成材16と下板部形成材15を面一にするために、フランジ形成材16を沈めるよう板部材を加工することにより実現している。このように構成することによって、フランジ3の接続面3bがフラット面となり、別のダクトを、フランジどうしを接続して組付ける際に、フランジの接続面どうしを密に接続することができる。
【0034】
しかも、フランジ形成材16を沈めることで段付部16aを形成して、断面形状を変化させている。したがって、断面形状を変化させている分だけ強度が向上している。そして補強手段13と段付部16aを形成したことにより、充分な強度が確保できているから、その分だけダクト形成材料の厚みを薄くすることができ、ダクト形成材料の厚みを薄くすることによれば、製造コストをさらに抑えることができる。
【0035】
ところで、補強手段13は、一枚の板部材を折曲げて形成した重なり部20を、その途中部分Cで一の板面部と他の板面部とを所定の角度になるよう折曲げて構成している。このため、接続用部材4の各被挟持片4aは、フランジ部3Aの裏面から浮く形態になる。しかしながら、この実施形態による補強手段13によれば板部材の厚みを薄くできるから、そのようにすることで、被挟持片4aのフランジ部3Aの裏面からの浮量を最小限に抑えることができる。
【0036】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。例えば、補強手段は上記実施形態に限定されない。図12に補強手段13の別の実施形態を示している。図12に示す実施形態は、フランジ3を介して、ダクト1を別のダクトと接続されるフランジ3の接続面3bをフラット面とするために、一の板面部を沈めている。したがって、一条のスリット状部24は、一の板面部(例えば下板部形成材15)に観て取られる。他の構成は、上記実施形態と同様であるから、同一の機能を有する部分についいては同一の符号を付してその説明を省略する。
【0037】
なお、上記各実施形態における補強手段13は、フランジ部3Aとこれに連続する板面部の角部に亘るよう形成した。しかしながらこれに限定されるものではなく、上記実施形態で示した組付手段25の代わりとして用いて、一の板面部と他の板面部を一体的に形成するよう設けることも可能である。
【0038】
また、補強手段13は、ダクト1に用いてその角部に設けることに限定されず、補強を必要とする棚受部材(例えば断面L字形の長尺の棚受部材)等の角部に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…ダクト、2…ダクト本体、3…フランジ、3A…フランジ部、3b…接続面、13…補強手段、14…下板部材用ブランク材、17…部分領域、18,19…一部領域、24…スリット状部、25…組付手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調用等に用いられるダクトの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
空調用等に用いられるダクトとして、例えば下記特許文献1の技術が提案されている。このダクトにおいて、ダクト構成板からフランジ部(共板フランジ)を形成する場合では、ダクト構成板の一部を直角に折曲げるようにしている。しかしながら、このようにダクト構成板の一部を直角に折曲げるだけでは必要な強度を確保することは難しい。
【0003】
そこで、例えば特許文献2に示す技術が考えられる。このダクトでは、フランジ部に補強手段を設けている。すなわち補強手段は、前フランジ部に連続して対面する後フランジ部、ならびに前フランジ部に折曲回帰して前フランジ部の後壁面に密接する押圧片を形成してなり、この構成によってフランジ部の強度を向上させている。
【0004】
さらに、特許文献3に示す技術が提案されている。これは、断面矩形の中空状ダクトの角部において、ダクト構成板の一短辺部を折り曲げて、被挿入側となるはぜ折部(ダブル)を形成し、別のダクト構成板の一短辺部を折り曲げて、挿入側となる折曲部(シングル)を形成し、はぜ折部に折曲部を挿入し、はぜ折部のうちの延長部分を前記別のダクト構成板に重ねるように折曲することで構成されている。このようなはぜ折部の構造によれば、中空状ダクトの角部の強度が向上し、外力に対抗することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−298234号公報
【特許文献2】特開平7−91723号公報
【特許文献3】特開2002−168504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献2に開示されたダクトでは、補強手段が、前フランジ部に連続して対面する後フランジ部を備えており、しかも前フランジ部に折曲回帰して前フランジ部の後壁面に密接する押圧片を備えた構成であるから、必要となる材料が多くなり、したがって材料費が高くなる。また、上記特許文献3に開示されたダクトでは、補強部分を、一の部材(一のダクト構成板)にはぜ折部を形成し、他の部材(他のダクト構成板)に折曲部を形成して、はぜ折部に折曲部を挿入して構成しているから、工数が増加して製造コストが高くなるという課題があった。
【0007】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、製造コストの上昇を抑えたうえで必要な強度を確保し得るダクトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のダクトは、一の板面部と該一の板面部に角部を介して他の板面部が連続するダクト本体の、前記角部に補強手段が設けられ、前記一の板面部、他の板面部、および補強手段は、一枚の板部材を折り曲げて形成され、補強手段は、板部材を折り返して形成した複数枚の折曲片からなるとともに、該折曲片は一の板面部および他の板面部に亘って形成されていることを特徴としている。
【0009】
上記構成のダクトによれば、補強手段を、板部材を折り返して形成した複数枚の折曲片から形成して、折曲片は一の板面部および他の板面部に亘るよう形成しているから、材料費の高騰を抑え、製造コスト全体の上昇が抑えられる。
【0010】
本発明のダクトでは、折曲片は角部の長手方向に沿って形成されている構成を採用することができる。該構成のように、折曲片を角部の長手方向に沿って形成することで、ダクトの長手方向全域に亘る補強が可能である。
【0011】
本発明のダクトでは、一の板面部がダクト本体であり、他の板面部がダクト本体の長手方向端部に形成されて他のダクトのフランジと接続されるフランジであることが好ましい。この構成によれば、他のダクトのフランジとの接続に用いられて大きな外力が働き易いフランジの変形を防止することが可能である。
【0012】
本発明のダクトでは、フランジにおけるダクト本体寄りの所定位置を沈みこませることで、フランジ側の折曲片の表面とフランジの接続面を面一とする段付部が形成されている構成を採用することができる。フランジの所定位置を沈みこませて段付部を形成することで、その部分の断面形状が変化するので、その分だけ強度を向上させられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のダクトは、補強手段を、板部材を折り返して形成した複数枚の折曲片から形成して、折曲片は一の板面部および他の板面部に亘るよう形成しているから、材料費の高騰を抑えることができ、製造コスト全体の上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態のダクトの単体構成を表した斜視図である。
【図2】同分解斜視図である。
【図3】同図1のダクトを幅方向(左右方向)中心で切断した縦割斜視図である。
【図4】同補強手段を主に表した断面図である。
【図5】同図1のダクトを長手方向(前後方向)中心で切断した横割斜視図である。
【図6】同補強手段の製造第一工程を表した側面図である。
【図7】同補強手段の製造第二工程を表した側面図である。
【図8】同補強手段の製造第三工程を表した側面図である。
【図9】同補強手段の製造第四工程を表した側面図である。
【図10】同補強手段の製造第五工程を表した側面図である。
【図11】同フランジ部と接続用部材との関係の詳細を示す側面図である。
【図12】別の実施形態のダクトにおける補強手段を表した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るダクトを、図面を参照しつつ説明する。図1ないし図5に示すように、本発明の実施形態に係るダクト1は、ダクト本体2と、ダクト本体2の長手方向両端部に形成されたフランジ3(この場合、継手用フランジ)と、接続用部材4(コーナーピースとも称される)とから構成されている。
【0016】
図2に示すように、ダクト本体2は、一枚の上板部材5、一枚の下板部材6、一枚の右側の側板部材7、および一枚の左側の側板部材8の、四枚の金属板(この場合、亜鉛鉄板等が用いられる)の組み合わせから、中空状の矩形断面に形成されている。上板部材5および下板部材6は同様の構成であって対称使いされ、右側の側板部材7および左側の側板部材8は同様の構成であって対称使いされている。上板部材5および下板部材6は上下方向に離間して対向するよう配置され、右側の側板部材7および左側の側板部材8は、左右方向に離間して対向するよう配置されている。
【0017】
上板部材5、下板部材6、右側の側板部材7、および左側の側板部材8には、それぞれ長手方向端部を折曲げることでフランジ部3A(枠状のフランジ3の一部)が形成されている。すなわち、上板部材5は平板状の上板部9と、フランジ部3Aとから一体的に構成され、下板部材6は平板状の下板部10と、フランジ部3Aとから一体的に構成され、右側の側板部材7は平板状の右側板部11と、フランジ部3Aとから一体的に構成され、左側の側板部材8は平板状の左側板部12と、フランジ部3Aとから一体的に構成されている。
【0018】
上板部9とフランジ部3Aの関係において、フランジ部3Aは上板部9の長手方向各端部を、上板部9から直角方向に外側に折曲げることで形成されている。下板部10とフランジ部3Aの関係において、フランジ部3Aは下板部10の長手方向各端部を、下板部10から直角方向に外側に折曲げることで形成されている。右側板部11とフランジ部3Aの関係において、フランジ部3Aは右側板部11の長手方向各端部を、右側板部11から直角方向に外側に折曲げることで形成されている。左側板部12とフランジ部3Aの関係において、フランジ部3Aは左側板部12の長手方向各端部を、左側板部12から直角方向に外側に折曲げることで形成されている。
【0019】
上板部9とフランジ部3Aの連続部分である角部、下板部10とフランジ部3Aの連続部分である角部、右側板部11とフランジ部3Aの連続部分である角部、および左側板部12とフランジ部3Aの連続部分である角部には、それぞれ同様の構成の補強手段13が設けられている。これら補強手段13は同様の構成であるので、図3,4、図6〜10を参照して、ここでは、下板部材6の補強手段13の説明することで、他の補強手段13の構成の代用の説明とする。
【0020】
図3および図4に示すように、補強手段13は、下板部材6を構成する一枚の板部材を折り曲げて形成されており、下板部材6を二回折り返して形成した折曲片から構成されている。ここで便宜上、図6ないし図10に示す補強手段13の製造工程図を含めて、下板部材6の補強手段13の構成を代表して説明する。
【0021】
図6の第一工程に示すように、平板状の下板部材用ブランク材14を、下板部10となる部分とフランジ部3Aとなる部分との境界部付近である所定位置Aを中心として、直角をなすように折曲げる。この所定位置Aに対する一方側を下板部形成材15とし、他方側をフランジ形成材16と称することとする。第一工程が終了すれば、続いて、図7の第二工程に示すように、所定位置Aから下板部形成材15に所定長さ分の部分領域17を置いた所定位置Bから下板部形成材15をフランジ形成材16と平行になるよう直角に折曲げる。
【0022】
続いて、図8の第三工程に示すように、部分領域17をフランジ形成材16に重なるように折曲げるとともに、下板部形成材15をフランジ形成材16と平行になるよう折曲げる。そうすると、部分領域17を介してフランジ形成材16の一部領域18と下板部形成材15の一部領域19とが重なった、三枚の折曲片(すなわちフランジ形成材16の一部領域18、部分領域17、下板部形成材15の一部領域19)が重なってなる重なり部20が形成される。続いて、図9の第四工程に示すように、フランジ形成材16の表面(フランジ3Aの接続面に相当する)と下板部形成材15の表面(フランジ側における折曲片の表面に相当する)とを面一にするために、フランジ形成材16の所定部分を沈みこませる。すなわちフランジ形成材16に、符号16aで示す段付部を形成する。なお、段付部16aを形成する位置は、前記所定位置Bに略一致する位置である。
【0023】
さらに、図10の第五工程に示すように、重なり部20の途中部分Cにおいて、下板部形成材15とフランジ形成材16とが直角になるよう折曲げる。このようにすることにより、補強手段13が形成される。すなわち補強手段13は、三枚の折曲片(フランジ形成材16の一部領域18、部分領域17、下板部形成材15の一部領域19)が重なって構成される重なり部20の途中部分Cを、下板部形成材15(一の板面部に相当する)とフランジ形成材16(他の板面部に相当する)とが直角になるよう折曲げることで、下板部形成材15とフランジ形成材16とに亘るようにすることで構成されている。
【0024】
さらに、フランジ形成材16の先端部21は外方に向けて直角に折曲げられ、先端部21の先端辺部は折返されて挟持片22が形成される。補強手段13(重なり部20)は、角部の長手方向(左右方向)全域に亘って形成されている。なお、符号23は、角部から離間して下板部形成材15に形成された接続用部材止である。この接続用部材止23は、溝状に形成され、角部の長手方向(左右方向)全域に亘って形成されている。
【0025】
このような補強手段13、接続用部材止23、フランジ部3Aは、上板部材5、下板部材6、右側の側板部材7、および左側の側板部材8のそれぞれについて形成されている。しかもこの場合、フランジ部3Aは、各板部材の長手方向(前後方向)の両側部分に形成されている。
【0026】
なお、フランジ3(フランジ部3A)を正面視した際に、フランジ形成材16と下板部形成材15を面一にするためにフランジ形成材16を沈めたことによる、一条のスリット状部24(例えば図2、図3参照)を観て取ることができる。
【0027】
上記のように、同様の構成の補強手段13およびフランジ部3Aを有する上板部材5、下板部材6、右側の側板部材7、および左側の側板部材8を組付けるための組付手段25(図5参照)が設けられている。この組付手段25は、上板部材5と、右側の側板部材7および左側の側板部材8とを組付け、下板部材6と、右側の側板部材7および左側の側板部材8とを組付けることができるよう構成されている。
【0028】
この組付手段25は、図5の拡大部分に示すように、ダブル部26とシングル部27とを嵌合することによって構成される一般的な構成を備えた、はぜ構造が好適に用いられる。そしてこの場合、右側の側板部材7および左側の側板部材8の端部に、ダブル部26が形成されており、上板部材5および下板部材6の端部に、ダブル部26に嵌合するシングル部27が形成されている。
【0029】
図2に示すように、接続用部材4は、直交する方向で隣り合うフランジ部3A間に渡されるよう、一方側の板状の被挟持片4aと他方側の板状の被挟持片4aとが、直交する方向にある鉤形に形成されている。一方側の板状の被挟持片4aと他方側の板状の被挟持片4aとは同一の長さに形成されている。
【0030】
図11に示すように、接続用部材4の各被挟持片4aは、フランジ部3Aに沿うように配置される本体部4bと、本体部4bの両側に、フランジ部3Aから離れる方向でフランジ部3Aに直交する方向に折曲げられた折曲部4c,4dとを備えている。一方の折曲部4cは補強手段13側にあってフランジ形成材16の一部領域18に重ねられ、他方の折曲部4dはフランジ形成材16の先端部21に重ねられている。そして、他方の折曲部4dは、フランジ形成材16の先端部21の挟持片22をさらに折曲げることで抱き込むようにしてフランジ部3Aに保持され、一方の折曲部4cは接続用部材止23に係止してフランジ部3Aから離脱することを阻止されている。
【0031】
上記構成のダクト1は、補強手段13を備えており、補強手段13は、一枚の板部材を折曲げて形成した重なり部20を、その途中部分Cで一の板面部と他の板面部とを所定の角度(例えば直角)になるよう折曲げることで、一の板面部と他の板面部とに亘るようにして構成している。したがって、フランジ部3A全体を二重構造にした構成に比べて材料の使用量の増大を抑えるころができる。また、補強手段13を設けるのに、一の板面部と他の板面部とを別の板部材で構成するが必要なく、したがって別の板部材どうしを連結する必要がない。このため、工数の増加に伴う製造コストの上昇を抑えることができ、しかも必要な強度を確保することができる。
【0032】
特に、この種のダクト1ではフランジ3は他のダクト(図示せず)と連結される継手部分として使用されるから、特に強度を要する部分である。したがって、このようなフランジ3部分の強度向上させることはこの種のダクト1においては有用である。
【0033】
また、上記のような補強手段13を形成したうえで、フランジ3の接続面3bをフラット面にしている。これは、前記第四工程に示すように、例えばフランジ形成材16と下板部形成材15を面一にするために、フランジ形成材16を沈めるよう板部材を加工することにより実現している。このように構成することによって、フランジ3の接続面3bがフラット面となり、別のダクトを、フランジどうしを接続して組付ける際に、フランジの接続面どうしを密に接続することができる。
【0034】
しかも、フランジ形成材16を沈めることで段付部16aを形成して、断面形状を変化させている。したがって、断面形状を変化させている分だけ強度が向上している。そして補強手段13と段付部16aを形成したことにより、充分な強度が確保できているから、その分だけダクト形成材料の厚みを薄くすることができ、ダクト形成材料の厚みを薄くすることによれば、製造コストをさらに抑えることができる。
【0035】
ところで、補強手段13は、一枚の板部材を折曲げて形成した重なり部20を、その途中部分Cで一の板面部と他の板面部とを所定の角度になるよう折曲げて構成している。このため、接続用部材4の各被挟持片4aは、フランジ部3Aの裏面から浮く形態になる。しかしながら、この実施形態による補強手段13によれば板部材の厚みを薄くできるから、そのようにすることで、被挟持片4aのフランジ部3Aの裏面からの浮量を最小限に抑えることができる。
【0036】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。例えば、補強手段は上記実施形態に限定されない。図12に補強手段13の別の実施形態を示している。図12に示す実施形態は、フランジ3を介して、ダクト1を別のダクトと接続されるフランジ3の接続面3bをフラット面とするために、一の板面部を沈めている。したがって、一条のスリット状部24は、一の板面部(例えば下板部形成材15)に観て取られる。他の構成は、上記実施形態と同様であるから、同一の機能を有する部分についいては同一の符号を付してその説明を省略する。
【0037】
なお、上記各実施形態における補強手段13は、フランジ部3Aとこれに連続する板面部の角部に亘るよう形成した。しかしながらこれに限定されるものではなく、上記実施形態で示した組付手段25の代わりとして用いて、一の板面部と他の板面部を一体的に形成するよう設けることも可能である。
【0038】
また、補強手段13は、ダクト1に用いてその角部に設けることに限定されず、補強を必要とする棚受部材(例えば断面L字形の長尺の棚受部材)等の角部に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…ダクト、2…ダクト本体、3…フランジ、3A…フランジ部、3b…接続面、13…補強手段、14…下板部材用ブランク材、17…部分領域、18,19…一部領域、24…スリット状部、25…組付手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の板面部と該一の板面部に角部を介して他の板面部が連続するダクト本体の、前記角部に補強手段が設けられたダクトにおいて、
前記一の板面部、他の板面部、および補強手段は、一枚の板部材を折り曲げて形成され、補強手段は、板部材を折り返して形成した複数枚の折曲片からなるとともに、該折曲片は一の板面部および他の板面部に亘って形成されていることを特徴とするダクト。
【請求項2】
折曲片は角部の長手方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1記載のダクト。
【請求項3】
一の板面部がダクト本体であり、他の板面部がダクト本体の長手方向端部に形成されて他のダクトのフランジと接続されるフランジであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のダクト。
【請求項4】
フランジにおけるダクト本体寄りの所定位置を沈みこませることで、フランジ側における折曲片の表面とフランジの接続面を面一とする段付部が形成されていることを特徴とする請求項3記載のダクト。
【請求項1】
一の板面部と該一の板面部に角部を介して他の板面部が連続するダクト本体の、前記角部に補強手段が設けられたダクトにおいて、
前記一の板面部、他の板面部、および補強手段は、一枚の板部材を折り曲げて形成され、補強手段は、板部材を折り返して形成した複数枚の折曲片からなるとともに、該折曲片は一の板面部および他の板面部に亘って形成されていることを特徴とするダクト。
【請求項2】
折曲片は角部の長手方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1記載のダクト。
【請求項3】
一の板面部がダクト本体であり、他の板面部がダクト本体の長手方向端部に形成されて他のダクトのフランジと接続されるフランジであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のダクト。
【請求項4】
フランジにおけるダクト本体寄りの所定位置を沈みこませることで、フランジ側における折曲片の表面とフランジの接続面を面一とする段付部が形成されていることを特徴とする請求項3記載のダクト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−42078(P2012−42078A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182295(P2010−182295)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【特許番号】特許第4714794号(P4714794)
【特許公報発行日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(593091533)株式会社ヤブサダイナミックス (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【特許番号】特許第4714794号(P4714794)
【特許公報発行日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(593091533)株式会社ヤブサダイナミックス (2)
【Fターム(参考)】
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