説明

ダミーブロック

【課題】押カス量を増やすことなくビレット表皮層の押出材への巻き込みを防止できるダミーブロックを提供する。
【解決手段】押出装置のコンテナに装填されたビレットに押圧力を付与するステムの先端に配置されるダミーブロック(10)であって、ビレットに接触する押出作用面(11)は、中央部に突出部(12)を有し、この突出部(12)の外側領域が環状のポケット部(20)となされ、かつ前記突出部(12)とポケット部(20)とが突出部(12)の先端側に向かって断面積が小さくなる傾斜部(13)を介して連続的に形成され、前記傾斜部(13)が、前記ポケット部(20)の最深部を通り押出軸(P)に直交する基準面(Q)に対して25〜60°の最大傾斜角度(θ1)で傾斜し、前記ポケット部(20)の外周縁(16)が、前記基準面(Q)に平行、または前記基準面(Q)よりも前方にせり出して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属の押出装置において、ビレットに押圧力を付与するステムの先端に配置されるダミーブロックおよびその関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように、金属の押出装置においては、ビレット(3)に押圧力を付与するステム(4)とビレット(3)の後端面との間にダミーブロック(70)を介在させている。従来のダミーブロック(70)はビレット(3)の後端面に接する押出作用面(71)がフラットなものが一般的であった。このため、ビレット(3)が残り少なくなるとビレット(3)の後端部では外周部から中心に向かい、さらに中心部でダイス側に向かうメタルフローが生じ、ビレット(3)の表皮層(3a)や離型剤等の不純物が押出材(5)に巻き込まれるという問題点があった。
【0003】
メタルフローに伴う押出材への不純物巻き込みを防止する方法の一つとして、ビレットが十分に残っている段階で押出を停止し、不純物を含む部分を押カスとして廃棄する方法がある。しかし、この方法では押カス量が多くなって材料歩留まりが悪くなる。そこで、ダミーブロックの押出作用面を不純物がダイス側に押し出され難い形状にすることで、材料歩留まりを確保しつつ不純物の巻き込みを防止する方法が種々提案されている(特許文献1、2、3参照)。
【0004】
特許文献1に記載されたダミーブロックは、押出作用面に押出軸を中心とする円形の溝を多数形成する等して凹凸を形成し、ビレットの後端面に回り込んだ酸化スケール層(表皮層)に凹凸を食い込ませ、酸化スケール層がダイス方向に流動しないようにしたものである。
【0005】
特許文献2に記載されたダミーブロックは、押出作用面に先端に向かって径の小さくなる複数の凸部を同心状かつ階段状に設けたものである。ダミーブロックは小径の凸部から順にビレット後端部に接するので空気の滞留が防がれ、さらに押出が進むと階段状の段差によってメタルフローが阻害し、表皮層や離型材の巻き込みが抑制するようにしたものである。
【0006】
非特許文献1に記載されたダミーブロックは押出作用面を凹曲面または凸曲面に形成したものであり、押カス中のビレット表皮層残留率を高めることを目的としたものである。
【特許文献1】実公昭54−35148号公報
【特許文献2】特開2001−259730号公報
【非特許文献1】「ビレット表皮層の塑性流れからみた押出し歩留まりの向上」、高辻則夫、時澤貢、室谷和雄、松木賢司、村田伸一、塑性と加工、第28巻、第319号、第818〜824頁、1987年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2および非特許文献1のように、押出作用面に突出部を形成したダミーブロックでは、突出部の高さを高くするほど押出ダイスから離れた位置でステムを停止させねばならず、コンテナ内に残留する押カスが多くなって材料歩留まりが悪くなる。一方、突出部の高さを低くすると、不純物の巻込み防止効果が小さくなる。
【0008】
また、特許文献1のように、押出作用面に溝を形成したダミーブロックでは、溝に金属が詰まるとメタルフローを阻止する効果が小さくなり、表皮層の巻き込み防止効果が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した技術背景に鑑み、押カス量を増やすことなくビレット表皮層の押出材への巻き込みを防止できるダミーブロックを提供し、さらにこのダミーブロックを備えた押出装置、このダミーブロックを用いた押出加工方法の提供を目的とする。
【0010】
即ち、本発明は下記[1]〜[8]に記載の構成を有する。
【0011】
[1]押出装置のコンテナに装填されたビレットに押圧力を付与するステムの先端に配置されるダミーブロックであって、
ビレットに接触する押出作用面は、中央部に突出部を有し、この突出部の外側領域が環状のポケット部となされ、かつ前記突出部とポケット部とが突出部の先端側に向かって断面積が小さくなる傾斜部を介して連続的に形成され、
前記傾斜部が、前記ポケット部の最深部を通り押出軸に直交する基準面に対して25〜60°の最大傾斜角度で傾斜し、
前記ポケット部の外周縁が、前記基準面に平行、または前記基準面よりも前方にせり出して形成されていることを特徴とするダミーブロック。
【0012】
[2]前記外周縁の基準面に対するエッジ角度が1〜10°である前項1に記載のダミーブロック。
【0013】
[3]前記突出部の先端が前記基準面に平行な平面で形成されている前項1または2に記載のダミーブロック。
【0014】
[4]前記ポケット部の体積は、前記基準面におけるダミーブロックの断面を底面とし、前記基準面から突出部の先端までの距離を高さとする柱体の体積の30〜85%である前項1〜3のいずれかに記載のダミーブロック。
【0015】
[5]前記傾斜部は、押出軸に沿った断面における輪郭が直線で形成されている前項1〜4のいずれかに記載のダミーブロック。
【0016】
[6]前記傾斜部は、押出軸に沿った断面における輪郭が凹状曲線または凸状曲線で形成されている前項1〜4のいずれかに記載のダミーブロック。
【0017】
[7]コンテナに装填されたビレットに押圧力を付与するステムの先端に、前項1〜6のいずれかに記載されたダミーブロックが配置されていることを特徴とする押出装置。
【0018】
[8]押出装置において、コンテナに装填したビレットと、このビレットに押圧力を付与するステムとの間に、前項1〜6のいずれかに記載されたダミーブロックを介在させて押出加工を行うことを特徴とする押出加工方法。
【発明の効果】
【0019】
上記[1]にかかる発明によれば、ビレットの表皮層を押出作用面のポケット部内に滞留させることにより、表皮層の押出材への巻き込みを防止することができる。また、表皮層を効率良く滞留させることができるので、押カス量を減量して材料歩留まりを向上させることができる。
【0020】
上記[2]にかかる発明によれば、コンテナの内壁からビレットをせん断し易くなるので押出圧力の上昇を抑制できる。
【0021】
上記[3]にかかる発明によれば、ダミーブロックを押出ダイスの近くまで前進させることができるので、コンテナ内に残留する押カスを減量できる。
【0022】
上記[4]にかかる発明によれば、適正量の押カスを滞留させることができる。
【0023】
上記[5][6]にかかる各発明によれば、いずれも表皮層を効率良くポケット部に滞留させることができる。
【0024】
上記[7][8]にかかる発明によれば、ビレットの表皮層をダミーブロックの押出作用面のポケット部内に滞留させることができるので、表皮層の押出材への巻き込みを防ぐことができる。また表皮層を効率良く滞留させることができるので、押カス量を減量して材料歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1A〜1Cは本発明のダミーブロックを用いた押出装置の模式的断面図であり、図2はダミーブロックを押出軸を含む面で切断した断面図である。
【0026】
押出装置において、(1)はコンテナ、(2)は押出ダイス、(3)はビレット、(3a)はビレットの表層部、(4)はビレットに押圧力を付与するステム、(5)は押出材である。(10)はステム(4)の先端に配置されたダミーブロックであり、本発明にかかるダミーブロックの一実施形態である。コンテナ(1)に装填されたビレット(3)はダミーブロック(10)を介してステム(4)からの押圧力を受け、押出ダイス(2)から押し出されて押出材(5)が成形される。図1Aは押出初期、図1Bは押出中期、図1Cは押出後期の状態を示している。
【0027】
図2に示すように、前記ダミーブロック(10)は概略円盤状体であり、ビレット(3)の後端面に接する押圧作用面(11)の中央部に平面視円形の突出部(12)を有し、この突出部(12)より外側で押圧作用面(11)の外周縁(16)に至る環状領域がポケット部(20)となされている。前記突出部(12)とポケット部(20)とは、突出部(12)の先端側に向かって徐々に断面積が小さくなる傾斜部(13)を介して連続的に形成されている。前記押圧作用面(11)の外周縁(16)とは、ダミーブロック(10)の外径部に位置し、コンテナ(1)の内壁に近接する最外面(17)と押圧作用面(11)との角部である。
【0028】
前記突出部(12)は先端面(14)が一つの平坦な面で形成されている。また、前記傾斜部(13)は、押出軸(P)に沿った断面における輪郭が直線で形成されている。前記傾斜部(13)の輪郭は突出部(12)の周壁でもある。これらの構成により、前記突出部(12)は偏平な円錐台形となされている。また、前記傾斜部(13)の下端部はポケット部(20)の底壁(21)の内周縁に段差無く滑らかに繋がっている。
【0029】
前記ポケット部(20)は、前記突出部(12)よりも低くなった領域である。前記傾斜部(13)とポケット部(12)の底壁(21)との入隅部(15)は曲面で形成され、傾斜部(13)とポケット部(12)とは滑らかに繋がっている。底壁(21)は径方向の中間部から外周側に向かって滑らかに高くなるように形成され、外周縁(16)に外周エッジ(22)が立てられている。換言すると、外周縁(16)が押出方向の前方にせり出している。これらの構成により、ポケット部(20)は断面において凹状となされている。
【0030】
前記ダミーブロック(10)を用いて押出加工を行うと、ビレット(3)の表皮層(3a)はビレット(3)の後端部へと流動するが、流れは突出部(12)に阻まれて徐々にポケット部(20)内に滞留していく(図1A、図1B参照)。ビレット(3)の寸法、換言すれば表皮層(3a)の体積に応じてポケット部(20)の体積を設定しておけば、押出の後期になっても流動した表皮層(3a)はポケット部(20)内に滞留し、あるいは突出部(12)の先端面(14)上に止まっているので、押出材(5)への巻き込みを阻止することができる(図1C参照)。従って、押カス量を減量でき、材料歩留まりを向上させることができる。
【0031】
以下に、前記ダミーブロック(10)における各部の好適形状について詳述する。本発明においては、前記ポケット部(20)の最深部を通り押出軸(P)に直交する面を基準面(Q)と定義し、各部の形状をこの基準面(Q)との関係において規定する。
【0032】
押出初期のアプセット時にポケット部(20)内に入った金属は押出材(5)として押し出されなければならず、かつそれを押出した後はポケット部(20)内に表皮層(3a)を滞留させなければならない。このため、前記傾斜部(13)を前記基準面(Q)に対して傾斜させ、かつ前記基準面(Q)に対する最大傾斜角度(θ1)を25〜60°に設定している。前記最大傾斜角度(θ1)が25°未満になると、ポケット部(20)の体積が小さくなるので表皮層(3a)を滞留させるための体積を確保することが困難となる。また、ポケット部(20)に入った金属の排出が容易になりすぎて滞留させるべき表皮層(3a)までが押し出されるおそれがある。一方、前記最大傾斜角度(θ1)が60°を超えて大きくなると、押出初期のアプセット時に入隅部(15)に入り込んだ金属が排出されにくくなり、排出されない金属がデッドメタルとなって材料が無駄になる。しかも、押出初期に入隅部(15)に金属が滞留してしまうと、滞留させるべき表皮層(3a)をポケット部(20)内に効率良く取り込むことが困難になる。上記理由により、前記最大傾斜角度(θ1)は25〜60°が好ましく、特に35〜55°が好ましい。
【0033】
前記傾斜部(13)の傾斜角度を最大傾斜角度(θ1)で規定するのは、本発明が、傾斜部の形状を輪郭が直線で形成されたもの(図2参照)に限定しておらず、輪郭が曲線で形成された傾斜部も含んでいるためである。傾斜部の輪郭が曲線の場合は、位置によって傾斜角度に差があり、1つの角度では傾斜部の傾斜角度を正確に表すことが困難であるため、本発明においては傾斜部の傾斜角度を最大傾斜角度として規定している。図3および図4は、輪郭が曲線で形成された傾斜部(33)(43)を有するダミーブロック(30)(40)の例である。図3は輪郭が凹曲線で形成された傾斜部(33)を示し、図4は輪郭が凸曲線で形成された傾斜部(46)を示している。傾斜部(33)(43)の輪郭が曲線で形成されたダミーブロック(30)(40)においても、表皮層(3a)を効率良くポケット部(20)内に滞留させることができる。前記凸曲線または凹曲線の曲率半径(R)の実寸の好適範囲はダミーブロック(10)の寸法によって変わる。このため、本発明においては、前記曲率半径(R)の好適範囲を突出部(12)の高さ(H)、即ち基準面(Q)から突出部(12)の先端までの距離に対する比率で表すこととする。そして、前記曲率半径(R)の好ましい範囲は突出部(12)の高さ(H)の1.5〜4倍であり、特に2.5〜3.5倍の範囲が好ましい。
【0034】
前記ポケット部(20)の外周縁(16)の基準面(Q)に対するエッジ角度(θ2)は、押出作用面(11)の外周縁(16)に臨む面(22a)と前記基準面(Q)とがなす角度として表される(図2参照)。本発明において、ポケット部(20)の外周縁(16)は基準面(Q)に平行であるか、あるいは基準面(Q)よりも前方にせり出しているものに規定されるので、前記エッジ角度(θ2)は0°以上となる。換言すれば、図3〜5に示すように、ポケット部(20)の底壁(21)が外周縁(16)までフラットで外周エッジ(22)を立てていない(θ2=0°)ものか、あるいは図2に示すように、外周エッジ(22)を立てて外周縁(16)が高くなっている(θ2>0°)ものに規定される。前者はポケット部(20)の外周縁(16)が基準面(Q)に対して平行であり、後者は外周縁(16)が基準面(Q)よりも前方にせり出している。押出作用面(11)に突出部(12)およびポケット部(20)を有するダミーブロック(10)では押出圧力が高くなる傾向があるが、ポケット部(20)の外周縁(16)に外周エッジ(22)を立ててθ2>0°とすることでコンテナ(1)の内壁からビレット(3)をせん断し易くなるので押出圧力の上昇を抑制できる。このような理由により、前記エッジ角度(θ2)は1〜10°が好ましい。
【0035】
前記ポケット部(20)内には表皮層(3a)のみを滞留させ、滞留させる表皮層(3a)以外の金属を最大限に押出すために、ダミーブロック(10)は可能な限り押出ダイス(2)の近くまで前進させることになる。このため、前記突出部(12)の先端面(14)は前記基準面(Q)に平行な平面で形成されていることが好ましい。先端面が曲凸面となされたダミーブロックでは、押出ダイス(2)から離れた位置でステム(4)を停止させねばならず、コンテナ(1)内に残留する押カス量が多くなる。また、先端面が凹曲面となされたダミーブロックでは、エアを巻き込むおそれがあり、かつ押出初期のアプセット時に溜まった金属が押出に供されないので無駄になる(非特許文献1参照)。
【0036】
本発明において、ポケット部(20)の体積(V)は、ポケット部(20)の底壁(21)、傾斜部(13)、突出部(12)の先端を通り押出軸(P)に直交する平面(S1)(本実施形態においては先端面(14)を延長した平面)、押出作用面(11)の直径(D1)を直径とする円周面(S2)で囲まれた環状部分の面積とする。前記体積(V)は、前記基準面(Q)におけるダミーブロック(10)の断面を底面とし、前記突出部(12)の高さ(H)を高さとする円柱体の体積の30〜85%であることが好ましい。ポケット部(20)の体積(V)が前記円柱体の体積の30%未満の場合は、表皮層(3a)がポケット部(3)から溢れて押出材(5)に巻き込まれるおそれがある。一方、85%の体積があれば表皮層(3a)を滞留させることができるので、それ以上大きく設定する意味が乏しいし、押し出すべき金属が滞留して材料歩留まりが低下するおそれがある。従って、適正量の押カスを滞留させるために、ポケット部(20)の体積(V)は前記円柱体の体積の30〜85%に設定されていることが好ましく、特に45〜70%に設定されていることが好ましい。
【0037】
前記ポケット部(20)の体積(V)は、上述したように傾斜部(13)の最大傾斜角度(θ1)に影響を受ける他、突出部(12)の先端面(14)の直径および高さ(H)に大きく影響される。また、ポケット部(20)の体積(V)は、滞留させるべき表皮層(3a)の体積に対応するから、突出部(12)の先端面(14)の直径(D2)および高さ(H)をビレット(3)径に応じて設定すればポケット部(20)の適切な体積(V)を導き出すことができる。
【0038】
前記ポケット部(20)の底壁(21)は凹状に形成されていることに限定されず、前記エッジ角度(θ2)が0°となされたフラットな面であっても良い。但し、表皮層(3a)を効率良くポケット部(20)内に滞留させるには滑らかな底壁(21)が好ましいので、外周エッジ(22)を立てる場合は、底壁(21)の径方向の中央部と外周縁(16)に臨む面(22a)とが角張らないように滑らかに繋ぐことが好ましい。同様に、傾斜部(13)と底壁(21)の入隅部(15)も滑らかに繋ぐことが好ましい。
【0039】
本発明のダミーブロック、ならびにこのダミーブロックを用いた押出装置および押出加工方法は金属の種類に関わりなく適用できる。例えばアルミニウムおよびアルミニウム合金の押出材の製造に好適に用いることができる。
【実施例】
【0040】
表1に示す種々の形状のダミーブロックを製作してアルミニウムの押出試験を行った。ビレット(3)は直径160mmのものを用い、直径160mm×長さ400mmのビレット体積である8042477mmを基準体積とした。そして、各ダミーブロックの押出初期のアプセット時の状態、即ちビレット後端面にダミーブロックの突出部が食い込んでポケット部内に金属が入った状態において、押出に供するビレット体積が前記基準体積となるようにした。前記ビレット(3)の表皮層(3a)の厚さは3mmである。また、押出材(5)は直径25mmの丸棒である。
【0041】
各例のダミーブロックの形状の特徴は下記のとおりであり、表1に形状を示す参考図と各部の寸法を示す。
【0042】
実施例1〜10は、図5に示す形状のダミーブロック(50)であり、押出作用面(11)の中央部に円錐台形の突出部(12)を有し、傾斜部(13)の輪郭は直線、ポケット部(20)の底壁(21)は外周端までフラットである。実施例11〜13は、図2に示す形状のダミーブロック(10)であり、押出作用面(11)の中央部に円錐台形の突出部(12)を有し、傾斜部(13)の輪郭は直線、ポケット部(20)の底壁(21)の外周縁(16)に外周エッジ(22)を立てたものである。実施例14、15は、図3に示すダミーブロック(30)であり、傾斜部(33)の輪郭は曲率半径が(R)となされた凹曲線である。実施例16、17は、図4に示すダミーブロック(40)であり、傾斜部(44)の輪郭は曲率半径が(R)となされた凸曲線である。比較例1は、図8に示す従来の押出作用面(71)がフラットなダミーブロック(70)である。比較例2は、図5の円錐台形の突出部(12)、傾斜部(13)、ポケット部(20)を有するダミーブロック(50)であるが、傾斜部(13)の最大傾斜角度(θ1)が本発明の範囲を逸脱している。比較例3は、図6に示すダミーブロック(60)であり、押出作用面(61)に円柱形の突出部(62)とポケット部(64)を有しているが、突出部(62)の周壁(63)は基準面(Q)に対して垂直である。図6において、(65)はポケット部(64)の底壁、(66)は突出部(62)の先端面、(67)は突出部(62)の周壁(63)とポケット部(64)の入隅部であって曲面で形成されている。
【0043】
また、各例のダミーブロック(10)(30)(40)(50)(60)(70)の押出作用面(11)(61)(71)の直径はビレット径と同じ160mmであり、突出部(12)(62)はいずれも平面視円形(直径D2)で先端面(14)(66)はいずれも基準面(Q)に平行な平面である。また、基準面(Q)から先端面(14)(66)までの距離を突出部(12)(62)の高さ(H)とし、ポケット部(20)(64)の体積率は、基準面(Q)におけるダミーブロック(10)(30)(40)(50)(60)の断面を底面とし、突出部(12)(62)の高さ(H)を高さとする円柱体に対する体積比率である。
【0044】
押出試験は、ビレット(3)の基準体積の90%を押し出した時点で押出を中止し、コンテナ(1)内に残ったビレット(3)を取り出して断面を観察し、下記の基準に基づいて4段階で評価した。なお、図7A〜図7Cにおいては図2のダミーブロック(10)を例示し、図7Dにおいては図6のダミーブロック(60)を例示している。
◎:表皮層はポケット部内に止まっている(図7A参照)
○:表皮層はポケット部を越えて突出部の先端面に達している(図7B参照)
△:表皮層はポケット部を越えて中心部でダイス方向に流れて巻き込みが始まっているが、押出材には巻き込まれていない(図7C参照)。
×:表皮層が押出材に巻き込まれている(図7D参照)
【0045】
【表1】

【0046】
表1に記載した押出試験の結果より、実施例1〜17は表皮層(3a)が押出材(50)中に巻き込まれていなかった。また、◎および○と評価したものは、試験条件よりもダミーブロックをダイスに近づけることが可能であるから、実際の製品製造時の押カス量はこの試験よりも減量される。一方、×と評価したものは、試験条件よりも手前でダミーブロックを停止させなければならないので、製品製造時の押カス量はこの試験よりも増えることになる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のダミーブロックは、ビレット表皮層の押出材への巻き込みを防ぎ、押カス量を減量して材料歩留まりの向上を図ることができるので、各種金属の押出材製造に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1A】本発明にかかるダミーブロックを用いた押出装置において、押出初期の状態を示す模式的断面図である。
【図1B】本発明にかかるダミーブロックを用いた押出装置において、押出中期の状態を示す模式的断面図である。
【図1C】本発明にかかるダミーブロックを用いた押出装置において、押出後期の状態を示す模式的断面図である。
【図2】本発明にかかるダミーブロックの一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明にかかるダミーブロックの他の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明にかかるダミーブロックのさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明にかかるダミーブロックのさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図6】比較例3のダミーブロックの断面図である。
【図7A】押出試験の評価基準において◎と評価する状態を示す模式的断面図である。
【図7B】押出試験の評価基準において○と評価する状態を示す模式的断面図である。
【図7C】押出試験の評価基準において△と評価する状態を示す模式的断面図である。
【図7D】押出試験の評価基準において×と評価する状態を示す模式的断面図である。
【図8】従来のダミーブロックを用いた押出装置において、押出後期の状態を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1…コンテナ
2…押出ダイス
3…ビレット
3a…表皮層
4…ステム
5…押出材
10、30、40、50、60、70…ダミーブロック
11、61、71…押出作用面
12、62…突出部
13、33、43…傾斜部
14、66…先端面
15…入隅部
16…外周縁
20、64…ポケット部
21…底壁
22…外周エッジ
P…押出軸
Q…基準面
θ1…傾斜部の最大傾斜角度
θ2…エッジ角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出装置のコンテナに装填されたビレットに押圧力を付与するステムの先端に配置されるダミーブロックであって、
ビレットに接触する押出作用面は、中央部に突出部を有し、この突出部の外側領域が環状のポケット部となされ、かつ前記突出部とポケット部とが突出部の先端側に向かって断面積が小さくなる傾斜部を介して連続的に形成され、
前記傾斜部が、前記ポケット部の最深部を通り押出軸に直交する基準面に対して25〜60°の最大傾斜角度で傾斜し、
前記ポケット部の外周縁が、前記基準面に平行、または前記基準面よりも前方にせり出して形成されていることを特徴とするダミーブロック。
【請求項2】
前記外周縁の基準面に対するエッジ角度が1〜10°である請求項1に記載のダミーブロック。
【請求項3】
前記突出部の先端が前記基準面に平行な平面で形成されている請求項1または2に記載のダミーブロック。
【請求項4】
前記ポケット部の体積は、前記基準面におけるダミーブロックの断面を底面とし、前記基準面から突出部の先端までの距離を高さとする柱体の体積の30〜85%である請求項1〜3のいずれかに記載のダミーブロック。
【請求項5】
前記傾斜部は、押出軸に沿った断面における輪郭が直線で形成されている請求項1〜4のいずれかに記載のダミーブロック。
【請求項6】
前記傾斜部は、押出軸に沿った断面における輪郭が凹状曲線または凸状曲線で形成されている請求項1〜4のいずれかに記載のダミーブロック。
【請求項7】
コンテナに装填されたビレットに押圧力を付与するステムの先端に、請求項1〜6のいずれかに記載されたダミーブロックが配置されていることを特徴とする押出装置。
【請求項8】
押出装置において、コンテナに装填したビレットと、このビレットに押圧力を付与するステムとの間に、請求項1〜6のいずれかに記載されたダミーブロックを介在させて押出加工を行うことを特徴とする押出加工方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図7D】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−89123(P2010−89123A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261676(P2008−261676)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】