説明

ダンパー装置の作動点検治具

【課題】、チェーンブロック等の牽引具を使用することなく、作業員が簡単に羽板部材の作動状態を確認することができる、ダンパー装置を構成する羽板部材の作動点検治具を提供する。
【解決手段】本発明に係るダンパー装置の作動点検治具は、ダンパー装置を構成する羽板部材のアーム部に宛がう当接部に、所定の長さの操作杆を連設して羽板部材の作動点検治具を構成し、当接部には、アーム部の側壁を挟み込む挟持突部により形成された係合手段を設けている。また、アーム部の側壁を挟み込む挟持突部は、2本の突片により形成され、アーム部の形状に合わせて、基端部側から先端部側に行くに従って徐々に間隔が狭くなるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所や、その他の施設に設置されている種々のダンパー装置において、例えば、ダンパー装置を構成する個々の羽板部材が適正に作動するかどうかを点検するために、羽板部材のアーム部に宛がって使用する、ダンパー装置の作動点検治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や、その他の施設においては、種々の構造のダンパー装置が設置されている。
【0003】
このダンパー装置は、例えば、所定のボイラ等を備えている施設において、燃焼用空気の導入部や、燃焼ガスが通過する煙道等に設置されて、当該導入部や煙道を進行する空気やガスの流量を調整したり、また、空気やガスの進行自体を遮断する機能を有している。
【0004】
ダンパー装置Dは、例えば、図7(a)(b)・図8(a)(b)に示すように、複数の羽板部材100が並置されており、個々の羽板部材100が一斉に回動して、閉状態(図7参照)と開状態(図8参照)を維持することにより、進行する空気やガス等の流量を調整(遮断を含む)するのである。
【0005】
個々の羽板部材100においては、図9に示すように、自身の軸部101がボールベアリング等の軸受け102を介して回動可能に支持され、所定の位置に設置されている。また、軸部101の端部には、所定のアーム部103が固定されている。
【0006】
このアーム部103は、所定の長さを有しており、図10(a)に示すように、先端部側に接続孔104を備えている。
【0007】
また、図7(a)(b)・図8(a)(b)に示すように、それぞれのアーム部103には、長尺な連係杆105が接続されている。この連係杆105は、等間隔に複数の接続孔を設けている。そして、アーム部103の接続孔104に連係杆105の接続孔を合致させ、ボルト止めする等して、個々のアーム部103に連係杆105を取り付けているのである。
【0008】
連係杆105の基端部側には、図7(a)・図8(a)に示すように、ダンパー装置Dの羽板部材100を開閉させる、駆動装置200のシリンダ部材201が接続されている。連係杆105の基端部と、シリンダ部材201の先端部は、図7(b)・図8(b)に示すように、所定の連動部300を介して接続されている。
【0009】
そして、図7(a)に示すように、駆動装置200によりシリンダ部材201が斜め上方に移動すると、連動部300を介して連係杆105が右方向に移動する。
この連係杆105の移動により、図7(b)に示すように、個々のアーム部103がいずれも右側に傾くように回動し、複数の羽板部材100もアーム部103と一緒に回動して閉状態となる。
【0010】
一方、図8(a)に示すように、駆動装置200によりシリンダ部材201が斜め下方に移動すると、連動部300を介して連係杆105が左方向に移動する。この連係杆105の移動により、図8(b)に示すように、個々のアーム部103がいずれも左側に傾くように回動し、複数の羽板部材100もアーム部103と一緒に回動して開状態となる。
【0011】
以上に説明した様に、複数の羽板部材100による閉状態と開状態を維持して、導入部や煙道を進行する空気やガスの流量を調整したり、空気やガスの進行自体を遮断する機能を有するダンパー装置Dは、1枚もしくは複数の羽板部材100により構成されているが、火力発電所等の大規模な施設においては、ダンパー装置Dが数多く設置されている。
【0012】
この様に、ダンパー装置Dが数多く設置されているときには、当然のことながら、羽板部材100も数多く存在していることとなる。
【0013】
そして、燃焼用空気の導入部や、燃焼ガスが通過する煙道等に設置されているダンパー装置Dは、熱風にさらされることから、ボールベアリング等の軸受け102が熱により変形して、開閉する複数の羽板部材100の動きが悪くなることがある。
【0014】
その為、定期的にダンパー装置Dを点検し、個々の羽板部材100の作動状態を確認し、動きが悪くなっている軸受け102を交換する等の修理作業を実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特になし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、ダンパー装置Dを構成する個々の羽板部材100の作動状態を確認する作業においては、以下のような弊害が生じている。
【0017】
個々の羽板部材100の作動状態を確認する作業は、羽板部材100が所定の重量を有することから、図10(a)に示すように、チェーンブロック等の牽引具110を使用している。
【0018】
点検作業の具体的な手順は、まず、図10(a)に示すように、個々のアーム部103に接続されている長尺な連係杆105を取り外して、アーム部103の接続孔104を露出させる。
【0019】
次に、牽引具110を所定の位置に設置し、牽引具110に連結しているフック部材111を、点検するアーム部103の接続孔104に引っ掛ける。この状態で、牽引具110を操作し、フック部材111を手前側に引っ張ってアーム部103を回動させ、当該アーム部103に連設されている羽板部材100を閉状態(図7参照)から開状態(図8参照)にする。このとき、羽板部材100が滑らかに回動するかどうかを、作業員が確認するのである。
【0020】
しかし、図10(a)に示すように、点検するアーム部103の近傍にチェーンブロック等の牽引具110を設置すること自体、非常に面倒な作業である。
【0021】
また、羽板部材100を、開状態(図8参照)から閉状態(図7参照)にするときには、牽引具110を設置している位置を変更しなければならず、これも非常に面倒な作業となる。
【0022】
さらに、牽引具110を設置する位置を変更するとき、アーム部103の近傍に好ましい部材が存在しないことがあり、時として、アーム部103と牽引具110が著しく離れてしまうような事態も生じている。
【0023】
また、火力発電所等の大規模な施設のように、ダンパー装置Dが数多く設置されて、羽板部材100が数多く存在するときには、牽引具110を使用して羽板部材100の作動状態を1個づつ確認する作業に長時間を要していた。
【0024】
この他、ダンパー装置Dの構成において、牽引具110を設置する位置を変更するのに好ましい部材が存在せず、また、牽引具110を設置するスペースさえ存在しないこともある。
【0025】
この様な場合、苦肉の策として、図10(b)に示すように、フック部材111をアーム部103の接続孔104から外し、軸部101の下側を通過させてチェーン部分が軸部101に巻回するようにしてから、フック部材111をアーム部103の接続孔104に引っ掛けるようにする。
【0026】
この状態で、牽引具110を操作し、フック部材111を反対側に引っ張ってアーム部103を回動させ、羽板部材100を開状態(図8参照)から閉状態(図7参照)にするのである。
【0027】
しかし、図10(b)に示す点検の手法は、軸部101自体に負荷が生じて破損してしまう恐れがある為、羽板部材100の作動状態を確認する手法としては好ましくない。
【0028】
そこで、本発明は如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、チェーンブロック等の牽引具を使用することなく、作業員が簡単に羽板部材の作動状態を確認することができる、ダンパー装置を構成する羽板部材の作動点検治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明に係るダンパー装置の作動点検治具は、ダンパー装置を構成する羽板部材のアーム部に宛がう当接部に、所定の長さの操作杆を連設して羽板部材の作動点検治具を構成し、当接部には、アーム部の側壁を挟み込む挟持突部により形成された係合手段を設けていることで、上述した課題を解決した。
【0030】
また、アーム部の側壁を挟み込む挟持突部は、2本の突片により形成され、アーム部の形状に合わせて、基端部側から先端部側に行くに従って徐々に間隔が狭くなるように配置されていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0031】
さらに、係合手段は、アーム部の接続孔に挿入する棒体を備えていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0032】
また、棒体が雄ねじ部材であり、雄ねじ部材をアーム部の接続孔に挿入してボルト止めしていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0033】
加えて、係合手段は、アーム部の接続孔に合致する孔を備え、この孔とアーム部の接続孔を合致させた状態で、ボルト止めしていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0034】
また、本発明に係るダンパー装置の作動点検治具は、ダンパー装置を構成する羽板部材のアーム部に宛がう当接部に、所定の長さの操作杆を連設して羽板部材の作動点検治具を構成し、当接部には、アーム部の接続孔に挿入する棒体と、アーム部の側壁に当接する掛止棒により形成された係合手段を設けていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0035】
さらに、棒体が雄ねじ部材であり、雄ねじ部材をアーム部の接続孔に挿入してボルト止めしていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0036】
この他、本発明に係るダンパー装置の作動点検治具は、ダンパー装置を構成する羽板部材のアーム部に宛がう当接部に、所定の長さの操作杆を連設して羽板部材の作動点検治具を構成し、当接部には、アーム部の接続孔に合致する孔と、アーム部の側壁に当接する掛止棒を備え、この孔とアーム部の接続孔を合致させた状態で、ボルト止めする係合手段を設けていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0037】
また、操作杆は、作動点検治具の当接部をアーム部に宛がったときに、ダンパー装置から離れる方向に屈曲していることで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係るダンパー装置の作動点検治具は、ダンパー装置を構成する羽板部材のアーム部に宛がう当接部に、所定の長さの操作杆を連設して羽板部材の作動点検治具を構成し、当接部には、アーム部への係合手段を設けていることから、アーム部に当接部を宛がうと、当接部の係合手段によりアーム部をしっかりと保持した状態となる。
【0039】
この状態で、作業員が操作杆を手で掴み、操作杆を押し込む(引っ張る)ようにして移動させると、操作杆に連設している当接部も自身の位置を変えることとなる。このとき、当接部の係合手段がアーム部をしっかりと保持していることから、アーム部が強制的に回動させられて、当該アーム部に連設している羽板部材が閉状態から開状態になる。この際に作業員は、自らの感触により、羽板部材が滑らかに回動するかどうかを確認できる。
【0040】
また、作業員が操作杆を引っ張る(押し込む)ようにして操作杆を移動させたときは、羽板部材が開状態から閉状態になり、この際にも作業員は、自らの感触により、羽板部材が滑らかに回動するかどうかを確認できる。
【0041】
この様に、作業員が作動点検治具を使用することにより、チェーンブロック等の牽引具を用いることなく、羽板部材が滑らかに回動するかどうかを簡単に確認できる。
【0042】
その為、点検するアーム部の近傍にチェーンブロック等の牽引具を設置する作業、また、牽引具を設置している位置を変更する作業を省いて、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0043】
さらに、牽引具を設置する位置を変更するのに好ましい部材が存在しなかったり、また、牽引具を設置するスペースさえ存在しない場合においても、作業員が作動点検治具を使用することにより、羽板部材が滑らかに回動するかどうかを簡単に確認できる。
【0044】
また、点検の作業は、アーム部に作業員が当接部を宛がい、操作杆を手で掴んで、操作杆を押し込む(引っ張る)ようにして移動させるだけであるので、羽板部材が数多く存在する場合であっても、極めて短時間の内に全体の点検作業を完了することができる。
【0045】
加えて、ダンパー装置を構成する部材に必要以上の負荷もかけないことから、検査時に部材を破損することもない。
【0046】
また、係合手段は、アーム部の側壁を挟み込む挟持突部により形成されていることから、アーム部に当接部を宛がうと、挟持突部によりアーム部をしっかりと保持した状態となる。
【0047】
さらに、アーム部の側壁を挟み込む挟持突部は、2本の突片により形成され、アーム部の形状に合わせて、基端部側から先端部側に行くに従って徐々に間隔が狭くなるように配置されていることから、アーム部に当接部を宛がうと、2本の突片によりアーム部を確実に保持できる。
【0048】
その為、作業員が操作杆を手で掴んで、操作杆を押し込む(引っ張る)ようにして移動させるときに、アーム部から当接部が外れることがない。
【0049】
また、係合手段は、アーム部の接続孔に挿入する棒体を備えていることから、当接部をアーム部に宛がったときに、当該棒体をアーム部の接続孔に挿入した状態で、挟持突部によりアーム部をしっかりと保持できる。
【0050】
加えて、棒体が雄ねじ部材であり、雄ねじ部材をアーム部の接続孔に挿入してボルト止めしていることから、アーム部から当接部が外れることがない。
【0051】
また、係合手段は、アーム部の接続孔に合致する孔を備え、この孔とアーム部の接続孔を合致させた状態で、ボルト止めしていることから、この場合にもアーム部から当接部が外れることがない。
【0052】
この他、係合手段は、アーム部の接続孔に挿入する棒体と、アーム部の側壁に当接する掛止棒により形成されていることから、アーム部に当接部を宛がうと、当接部の棒体がアーム部の接続孔に挿入され、当接部の掛止棒がアーム部における軸部近傍の側壁に当接する。
【0053】
この状態で、作業員が操作杆を移動させると、アーム部の側壁に当接している掛止棒が支点となり、また、アーム部の接続孔に挿入されている当接部の棒体が作用点となるようにして、アーム部を強制的に回動させるのである。
【0054】
また、棒体が雄ねじ部材であり、雄ねじ部材をアーム部の接続孔に挿入してボルト止めしていることから、当接部をアーム部に宛がっている状態が確実に維持される。
【0055】
さらに、係合手段は、アーム部の接続孔に合致する孔と、アーム部の側壁に当接する掛止棒を備え、この孔とアーム部の接続孔を合致させた状態で、ボルト止めするときにも、当接部をアーム部に宛がっている状態が確実に維持される。
【0056】
また、操作杆は、作動点検治具の当接部をアーム部に宛がったときに、ダンパー装置から離れる方向に屈曲していることから、当接部をアーム部の平面部分に宛がい、作業員が操作杆を手で掴んで押し込む(引っ張る)ようにして移動させるときに、ダンパー装置を構成する種々の部材に手が当たって怪我を負ってしまう事態の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】作動点検治具を使用して、軸受けを介して支持されている羽板部材の軸部が滑らかに回動するかどうかを点検する手順を示すもので、(a)は当接部をアーム部に宛がう状態を示す分解斜視図、(b)は当接部の挟持突部がアーム部をしっかりと保持している状態を示す斜視図、(c)は操作杆を移動させて、当接部によりアーム部を強制的に回動させた状態を示す斜視図である。
【図2】作動点検治具の構成を示すもので、(a)は当接部をアーム部に宛がう状態を示す分解斜視図、(b)は当接部を宛がって、当接部の挟持突部がアーム部をしっかりと保持している状態を示す斜視図である。
【図3】当接部の挟持突部を形成する2本の突片間に棒体を設けている作動点検治具の構成を示すもので、(a)は当接部をアーム部に宛がう状態を示す分解斜視図、(b)は当接部を宛がい、棒体が接続孔に挿入された状態で、当接部の挟持突部がアーム部をしっかりと保持している状態を示す斜視図である。
【図4】当接部に棒体と掛止棒を設けている作動点検治具の構成を示すもので、(a)は棒体をアーム部の接続孔に挿入する状態を示す分解斜視図、(b)は当接部をアーム部に宛がい、掛止棒がアーム部における軸部近傍の側壁に当接している状態を示す斜視図である。
【図5】当接部に雄ねじ部材と掛止棒を設けている作動点検治具の構成を示すもので、(a)は雄ねじ部材をアーム部の接続孔に挿入する状態を示す分解斜視図、(b)は当接部をアーム部に宛がい、雄ねじ部材の先端部が接続孔から突出している状態を示す斜視図、(c)は雄ねじ部材の先端部にナット部材を螺合させている状態を示す斜視図である。
【図6】当接部に孔と掛止棒を設けている作動点検治具の構成を示すもので、(a)は当接部にボルト部材を挿入する状態を示す分解斜視図、(b)は当接部の孔とアーム部の接続孔にボルト部材を挿入する状態を示す分解斜視図、 (c)は雄ねじ部材の先端部にナット部材を螺合させる状態を示す分解斜視図、(d)は雄ねじ部材の先端部にナット部材を螺合させた状態を示す斜視図である。
【図7】ダンパー装置の構成を示すもので、(a)は個々の羽板部材が一斉に回動して閉状態となっている側面図、(b)はその斜視図である。
【図8】ダンパー装置の構成を示すもので、(a)は個々の羽板部材が一斉に回動して開状態となっている側面図、(b)はその斜視図である。
【図9】ダンパー装置の羽板部材において、軸部が軸受けを介して回動可能に支持され、軸部の端部にアーム部が固定されている状態を示す斜視図である。
【図10】チェーンブロック等の牽引具を使用した従来の点検手法を示すもので、(a)はアーム部から連係杆を取り外して、アーム部の接続孔に、牽引具に連結しているフック部材を引っ掛けている状態を示す斜視図、(b)はフック部材をアーム部の接続孔から外し、軸部の下側を通過させてチェーン部分が軸部に巻回するようにしてから、フック部材をアーム部の接続孔に引っ掛けている状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下に、本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0059】
本発明は、ダンパー装置Dを構成する羽板部材100が、閉状態(図7参照)・開状態(図8参照)を維持する際に、ボールベアリング等の軸受け102を介して支持されている羽板部材100の軸部101が、滑らかに回動するかどうかを点検するために使用する作動点検治具1である。
【0060】
尚、ダンパー装置Dや羽板部材100の構成は、図7乃至図10を参照して説明済みであることから、これらと同一の部材には、同一の符号を付すことにより
その詳細な説明を省略する。
【0061】
作動点検治具1は、図1(a)・図2(a)に示すように、ダンパー装置Dを構成する羽板部材100において、連係杆105を取り外した状態のアーム部103に装着して使用するものである。
【0062】
この作動点検治具1は、図2(a)に示すように、アーム部103の平面部分に宛がう当接部2に、所定の長さの操作杆3を連設して形成している。当接部2と操作杆3は、所定の厚みを有する板片状に形成されている。
【0063】
アーム部103自体は、所定の長さを有しており、基端部側に軸部101が固定されている。また、先端部側に接続孔104を設けている。アーム部103の平面部分は、図1(a)・図10(a)(b)に示すように、基端部側から先端部側に行くに従い、徐々に幅が狭くなっている丸みを帯びた略三角形状に形成されている。
【0064】
作動点検治具1の当接部2は、このアーム部103の平面部分に宛がうもので、
図2(a)(b)に示すように、アーム部103の全体をすっぽりと収めることのできる大きさを備えている。
【0065】
当接部2は、アーム部103の形状に合わせて、縦長の略台形状に形成されている。また、当接部2に、図2(a)(b)に示すように、アーム部103の厚み部分である側壁を挟み込む挟持突部4により形成された係合手段を設けている。
【0066】
この挟持突部4は、2本の突片4a,4bにより形成されている。これらの突片4a,4bは、アーム部103の側壁に該当する長さと高さを有している。また、突片4a,4bは、図1(a)に示すように、アーム部103の形状に合わせて、基端部側から先端部側に行くに従って徐々に間隔が狭くなるように配置されている。
【0067】
以上のように構成された作動点検治具1を使用して、ボールベアリング等の軸受け102を介して支持されている羽板部材100の軸部101が滑らかに回動するかどうかを点検するときには、図1(a)(b)に示すように、作動点検治具1の当接部2をアーム部103の平面部分に宛がう。
【0068】
このとき、図1(b)・図2(b)に示すように、当接部2の突片4a,4bが、アーム部103の側壁を挟み込むようにして当該側壁に当接し、当接部2がアーム部103をしっかりと保持した状態となっている。
【0069】
次に、作業員が操作杆3を手で掴み、図1(c)に示すように、操作杆3を押し込む(引っ張る)ようにして移動させる。すると、操作杆3に連動して当接部2も自身の位置を変えることとなる。このとき、当接部2の突片4a,4bが、アーム部103をしっかりと保持していることから、アーム部103が強制的に回動させられて、当該アーム部103に連設している羽板部材100が閉状態(図7参照)から開状態(図8参照)になる。この際に作業員は、自らの感触により、羽板部材100が滑らかに回動するかどうかを確認するのである。
【0070】
尚、図1(c)に示す位置において、作業員が操作杆3を引っ張る(押し込む)ようにし、操作杆3を図1(b)に示す位置に移動させたときは、アーム部103に連設している羽板部材100が開状態(図8参照)から閉状態(図7参照)になる。この際にも作業員は、自らの感触により、羽板部材100が滑らかに回動するかどうかを確認できるのである。
【0071】
作動点検治具1の他の形態として、例えば、図3(a)に示すように、当接部2の挟持突部4を形成する2本の突片4a,4b間に、棒体5を設けても良い。
この棒体5は、当接部2をアーム部103の平面部分に宛がったときに、図3(b)に示すように、アーム部103の接続孔104に挿入されるものである。
【0072】
また、図3(a)(b)に示すように、当接部2に連設している操作杆3を、略中間位置において屈曲するように形成している。この操作杆3における屈曲は、作動点検治具1の当接部2をアーム部103の平面部分に宛がい、作業員が操作杆3を手で掴んで押し込む(引っ張る)ようにして移動させるときに、ダンパー装置Dを構成する種々の部材に手が当たって怪我を負ってしまう事態の発生を防止するものである。
【0073】
そのため、操作杆3は、作動点検治具1の当接部2をアーム部103の平面部分に宛がったときに、ダンパー装置Dから離れる方向に屈曲している。
【0074】
さらに、作動点検治具1の他の形態として、例えば、図4(a)に示すように、当接部2に、アーム部103の接続孔104に挿入する棒体5Aと、アーム部103の側壁に当接する掛止棒6により形成された係止手段を設けても良い。
【0075】
このとき、当接部2は、アーム部103の全体よりも若干長い略長方形状に形成されている。また、当接部2は、棒体5Aを設けている部分が若干湾曲している。
【0076】
掛止棒6は、当接部2の棒体5Aをアーム部103の接続孔104に挿入した状態で、アーム部103の軸部101の近傍に位置するように、棒体5Aから所定の間隔を開けて当接部2に固定されている。
【0077】
以上のように構成された作動点検治具1を使用して、ボールベアリング等の軸受け102を介して支持されている羽板部材100の軸部101が滑らかに回動するかどうかを点検するときには、図4(a)に示すように、作動点検治具1の当接部2をアーム部103の平面部分に宛がう。
【0078】
このとき、図4(b)に示すように、当接部2の棒体5Aがアーム部103の接続孔104に挿入され、当接部2の掛止棒6がアーム部103における軸部101近傍の側壁に当接している。
【0079】
次に、作業員が操作杆3を手で掴み、操作杆3を押し込む(引っ張る)ようにして移動させる。すると、アーム部103の側壁に当接している掛止棒6が支点となり、また、アーム部103の接続孔104に挿入されている当接部2の棒体5Aが作用点となるようにして、アーム部103を強制的に回動させるのである。
【0080】
尚、アーム部103を反対方向に回動させるときは、アーム部103から当接部2を一旦取り外す。そして、当接部2の棒体5Aをアーム部103の接続孔104に再度挿入する。このとき、当接部2の掛止棒6が、アーム部103における他の側壁に当接するようにする。
【0081】
この他、作動点検治具1の他の形態として、例えば、図5(a)に示すように、当接部2に、アーム部103の接続孔104に挿入する棒状の雄ねじ部材5Bと、アーム部103の側壁に当接する掛止棒6を設けても良い。
【0082】
このように構成された作動点検治具1の当接部2をアーム部103の平面部分に宛がうと、図5(b)に示すように、当接部2の雄ねじ部材5Bがアーム部103の接続孔104に挿入され、雄ねじ部材5Bの先端部が接続孔104か突出した状態となる。
【0083】
その為、図5(c)に示すように、雄ねじ部材5Bの先端部にナット部材7を螺合させることにより、作動点検治具1の当接部2をアーム部103に宛がっている状態がしっかりと維持されるのである。
【0084】
さらに、作動点検治具1の他の形態として、例えば、図6(a)に示すように、
当接部2に、アーム部103の接続孔104に合致する孔8と、アーム部103の側壁に当接する掛止棒6を設け、この孔8とアーム部103の接続孔104を合致させた状態で、ボルト止めする係合手段を設けても良い。
【0085】
このように形成された作動点検治具1の当接部2をアーム部103の平面部分に宛がうと、図6(b)に示すように、当接部2の孔8がアーム部103の接続孔104に合致する。
【0086】
次に、図6(c)(d)に示すように、合致している当接部2の孔8とアーム部103の接続孔104にボルト部材9の雄ねじ部分を挿入し、接続孔104から突出している雄ねじ部分の先端部にナット部材7を螺合させることにより、作動点検治具1の当接部2をアーム部103に宛がっている状態がしっかりと維持されるのである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係るダンパー装置の作動点検治具は、チェーンブロック等の牽引具を使用することなく、作業員が簡単に羽板部材の作動状態を確認することができる作動点検治具として、火力発電所や、その他の施設に設置されている種々のダンパー装置に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
D…ダンパー装置
100…羽板部材
101…軸部
102…軸受け
103…アーム部
104…接続孔
105…連係杆
110…牽引具
111…フック部材
200…駆動装置
201…シリンダ部材
300…連動部

1…作動点検治具
2…当接部
3…操作杆
4…挟持突部
4a…突片
4b…突片
5…棒体
5A…棒体
5B…雄ねじ部材
6…掛止棒
7…ナット部材
8…孔
9…ボルト部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンパー装置を構成する羽板部材のアーム部に宛がう当接部に、所定の長さの操作杆を連設して羽板部材の作動点検治具を構成し、当接部には、アーム部の側壁を挟み込む挟持突部により形成された係合手段を設けていることを特徴とする、ダンパー装置の作動点検治具。
【請求項2】
アーム部の側壁を挟み込む挟持突部は、2本の突片により形成され、アーム部の形状に合わせて、基端部側から先端部側に行くに従って徐々に間隔が狭くなるように配置されている請求項1に記載のダンパー装置の作動点検治具。
【請求項3】
係合手段は、アーム部の接続孔に挿入する棒体を備えている請求項1に記載のダンパー装置の作動点検治具。
【請求項4】
棒体が雄ねじ部材であり、雄ねじ部材をアーム部の接続孔に挿入してボルト止めしている請求項3に記載のダンパー装置の作動点検治具。
【請求項5】
係合手段は、アーム部の接続孔に合致する孔を備え、この孔とアーム部の接続孔を合致させた状態で、ボルト止めしている請求項1に記載のダンパー装置の作動点検治具。
【請求項6】
ダンパー装置を構成する羽板部材のアーム部に宛がう当接部に、所定の長さの操作杆を連設して羽板部材の作動点検治具を構成し、当接部には、アーム部の接続孔に挿入する棒体と、アーム部の側壁に当接する掛止棒により形成された係合手段を設けていることを特徴とする、ダンパー装置の作動点検治具。
【請求項7】
棒体が雄ねじ部材であり、雄ねじ部材をアーム部の接続孔に挿入してボルト止めしている請求項6に記載のダンパー装置の作動点検治具。
【請求項8】
ダンパー装置を構成する羽板部材のアーム部に宛がう当接部に、所定の長さの操作杆を連設して羽板部材の作動点検治具を構成し、当接部には、アーム部の接続孔に合致する孔と、アーム部の側壁に当接する掛止棒を備え、この孔とアーム部の接続孔を合致させた状態で、ボルト止めする係合手段を設けていることを特徴とする、ダンパー装置の作動点検治具。
【請求項9】
操作杆は、作動点検治具の当接部をアーム部に宛がったときに、ダンパー装置から離れる方向に屈曲している請求項1乃至請求項8に記載のダンパー装置の作動点検治具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−202933(P2011−202933A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73151(P2010−73151)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(593162361)日本建設工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】