説明

ダンプトラック

【課題】プルアウトを抑制することのできるダンプトラックを提供する。
【解決手段】フレーム(2)と、ヒンジピン(4)と、荷台(1)と、ホイストシリンダ(3)とを備えたダンプトラックにおいて、索状体、鎖状体、または帯状体の何れか1つから成る張力伝達部材(9)と、この張力伝達部材の巻き取りおよび巻き出しを行う巻取り装置(6、8)と、この巻取り装置にブレーキを掛けるブレーキ装置(7)と、張力伝達部材の一端を固定する固定部材(10)と、巻取り装置およびブレーキ装置の作動を制御する制御装置(20)とを有する張力付与装置を備えている。そして、制御装置は、荷台の上げ動作時にプルアウトが発生したときには、巻取り装置にブレーキを掛けるようブレーキ装置の作動を制御している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂等の運搬対象物を運搬するダンプトラックに関し、特に、ダンプトラックの荷台上げ(ホイスト上げ)動作時に発生するホイストシリンダの衝撃的な伸び動作であるプルアウトを抑制するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
建設機械用の大型のダンプトラックは、本体となるフレームと、土砂等を積み込むための荷台とを備えており、フレームと荷台はホイストシリンダとヒンジピンで連結されている。そして、ホイストシリンダを伸縮動作させると、荷台がフレームに対してヒンジピンを支点に上下方向に回動するようになっている。このホイストシリンダの駆動は、油圧によって行われている。具体的には、圧油を供給する油圧ポンプと、この油圧ポンプとホイストシリンダの間に配置され、ホイストシリンダの作動を抑制する方向制御弁(ホイストバルブとも言う)とにより、ホイストシリンダの作動が制御されている。
【0003】
ところで、ダンプトラックの荷台上げ動作時に、荷台の回動角度が所定角度を超えたときに、荷台上の土砂等の塊が急激に落下することに伴うホイストシリンダの衝撃的な伸び動作、即ちプルアウトが発生することあがる。このプルアウトを抑制するために、例えば、特許文献1には、方向制御弁に絞りを設けた技術が開示されている。この特許文献1に記載の技術によれば、方向制御弁に設けられた絞りにより、タンクに戻される油の流量を緩やかにすることができるので、急激なホイストシリンダの伸び動作、即ちプルアウトを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−62697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、荷台上げ動作時の上げ速度が速すぎる場合や、荷台に積載されている運搬対象物の粘性が高く、荷台上げ時(ホイスト上げ時)に運搬対象物の塊が急激に落下する場合、あるいはホイストシリンダの仕様や荷台の形状のバランスが悪い場合には、上記従来の技術をもってしても、プルアウトが生じる可能性がある。プルアウトが生じると、ホイストシリンダがストロークエンドまで急激に伸びてしまい、その衝撃反動でホイストシリンダや荷台、フレームなどに過大荷重が掛かり、寿命低下を引き起こすと共に、オペレータの乗り心地低下も招いてしまうこととなる。
【0006】
さらに、プルアウトが生じると、その反動でホイストシリンダが一瞬急激に反転して収縮方向に動かされるキックバックという現象が生じる。このキックバックは、プルアウト時のホイストシリンダ伸長に伴ってホイストシリンダ内の圧力が下がるため、その下がった圧力を戻そうとしてホイストシリンダが収縮するよう一瞬急激に動作することによって生じる現象である。このキックバックによっても、荷台に急激な衝撃が与えられるため、寿命低下や乗り心地悪化を招くこととなる。
【0007】
本発明は、上記した実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、プルアウトを抑制することのできるダンプトラックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1の発明は、フレームと、このフレームの後部に配置されたヒンジピンと、このヒンジピンを介して前記フレームに取り付けられた荷台と、この荷台を前記ヒンジピン回りに回動させるホイストシリンダとを備えたダンプトラックにおいて、索状体(例えば、ワイヤ、紐など)、鎖状体(例えば、チェーンなど)、または帯状体(例えば、ベルトなど)の何れか1つから成る張力伝達部材と、この張力伝達部材の巻き取りおよび巻き出しを行う巻取り装置と、この巻取り装置にブレーキを掛けるブレーキ装置と、前記張力伝達部材の一端を固定する固定部材と、前記巻取り装置および前記ブレーキ装置の作動を制御する制御装置とを有する張力付与装置を備え、前記フレームと前記荷台の一方に前記巻取り装置および前記ブレーキ装置を設けると共に、他方に前記固定部材を設け、前記制御装置は、少なくとも前記張力伝達部材の巻き出し時に前記張力伝達部材に張力が付与されるように、前記荷台の回動に連動して前記張力伝達部材の巻き取りおよび巻き出しを行うように前記巻取り装置の作動を制御すると共に、前記荷台の上げ動作時にプルアウトが発生したときには、前記巻取り装置にブレーキを掛けるよう前記ブレーキ装置の作動を制御することを特徴としている。
【0009】
第1の発明によれば、プルアウトが発生すると巻取り装置にブレーキが掛かって、荷台の起き上がる方向への回動が張力伝達部材によって物理的に制限されるため、ホイストシリンダがストロークエンドまで急激に伸びる現象、即ちプルアウトを抑制することができる。また、プルアウトが抑制されるので、ホイストシリンダや荷台、フレームなどに過大な荷重が掛かることが防止され、ダンプトラックの長寿命化が図られると共に、オペレータは安定した乗り心地を得ることができることとなる。さらに、第1の発明は、プルアウトを抑制できるため、キックバックが生じることも未然に防止することができることとなる。
【0010】
また、第2の発明は、フレームと、このフレームの後部に配置されたヒンジピンと、このヒンジピンを介して前記フレームに取り付けられた荷台と、この荷台を前記ヒンジピン回りに回動させるホイストシリンダとを備えたダンプトラックにおいて、索状体(例えば、ワイヤ、紐など)、鎖状体(例えば、チェーンなど)、または帯状体(例えば、ベルトなど)の何れか1つから成る張力伝達部材と、この張力伝達部材の巻き取りおよび巻き出しを行う巻取り装置と、この巻取り装置にブレーキを掛けるブレーキ装置と、前記張力伝達部材の一端を固定する固定部材と、前記巻取り装置および前記ブレーキ装置の作動を制御する制御装置とを有する張力付与装置を備え、前記フレームと前記荷台の一方に前記巻取り装置、前記ブレーキ装置および前記固定部材を設けると共に、他方に前記張力伝達部材の巻き取りを案内するためのガイド部材を設け、前記制御装置は、少なくとも前記張力伝達部材の巻き出し時に前記張力伝達部材に張力が付与されるように、前記荷台の回動に連動して前記張力伝達部材の巻き取りおよび巻き出しを行うように前記巻取り装置の作動を制御すると共に、前記荷台の上げ動作時にプルアウトが発生したときには、前記巻取り装置にブレーキを掛けるよう前記ブレーキ装置の作動を制御することを特徴としている。
【0011】
第2の発明によれば、プルアウトが発生すると巻取り装置にブレーキが掛かって、荷台の起き上がる方向への回動が張力伝達部材によって物理的に制限されるため、ホイストシリンダがストロークエンドまで急激に伸びる現象、即ちプルアウトを抑制することができる。また、プルアウトが抑制されるので、ホイストシリンダや荷台、フレームなどに過大な荷重が掛かることが防止され、ダンプトラックの長寿命化が図られると共に、オペレータは安定した乗り心地を得ることができることとなる。さらに、第2の発明は、プルアウトを抑制できるため、キックバックが生じることも未然に防止することができることとなる。
【0012】
また、第3の発明は、上記構成において、前記ホイストシリンダの変位速度を検知する変位速度検知手段を備え、前記制御装置は、前記変位速度検知手段が検知した変位速度の値が予め定めた変位速度の閾値を超えた場合に、前記巻取り装置にブレーキを掛けるように前記ブレーキ装置の作動を制御することを特徴としている。この発明によれば、簡単な制御でプルアウトを抑制できる利点がある。
【0013】
また、第4の発明は、上記構成において、前記ホイストシリンダの圧力を検知する圧力検知手段を備え、前記制御装置は、前記圧力検知手段が検知した圧力の変動値が予め定めた圧力変動の閾値を超えた場合に、前記巻取り装置にブレーキを掛けるように前記ブレーキ装置の作動を制御することを特徴としている。この発明によれば、簡単な制御でプルアウトを抑制できる利点がある。
【0014】
また、第5の発明は、上記構成において、前記ホイストシリンダの変位を検知する変位検知手段を備え、前記制御装置は、前記変位検知手段が検知した変位の値に基づいて前記巻取り装置による前記張力伝達部材の巻き取り量および巻き出し量を制御することを特徴としている。この発明によれば、張力伝達部材の巻き取り量および巻き出し量の制御を簡単なものにすることができる利点がある。
【0015】
また、第6の発明は、上記構成において、前記荷台の回動角度を検知する角度検知手段を備え、前記制御装置は、前記角度検知手段が検知した回動角度の値に基づいて前記巻取り装置による前記張力伝達部材の巻き取り量および巻き出し量を制御することを特徴としている。この発明によれば、張力伝達部材の巻き取り量および巻き出し量の制御を簡単なものにすることができる利点がある。
【0016】
また、上記構成において、前記荷台が前記フレームに着座していることを検知する着座検知手段を備え、前記フレームに前記荷台が着座していることを前記着座検知手段が検知した場合には、前記制御装置は、前記張力伝達部材に張力を付与した状態に保持するように、前記巻取り装置および前記ブレーキ装置の作動を制御するようにするのが好ましい。荷台がフレームから浮き上がることを防止できるからである。
【発明の効果】
【0017】
このように、上記した発明によれば、張力付与装置によってプルアウトが抑制されるので、ダンプトラックの寿命を長くすることができ、プルアウトによる乗り心地の低下も防止することができる。また、プルアウトが抑制されるため、プルアウトの反動で生じるキックバックも未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態例に係るダンプトラックの側面図であって、荷台が倒伏姿勢にある状態を示す側面図である。
【図2】図1に示すダンプトラックの要部の側面図であって、荷台が起立姿勢にある状態を示す側面図である。
【図3】図1に示すダンプトラックの要部の鳥瞰図であって、荷台が起立姿勢にある状態を示す鳥瞰図である。
【図4】図1に示すダンプトラックの電気的構成の概略を示すブロック図である。
【図5】図4に示す制御装置がプルアウト発生時に行う制御処理の手順を示すフローチャート図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態例に係るダンプトラックの要部の鳥瞰図であって荷台が起立姿勢にある状態を示す鳥瞰図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態例に係るダンプトラックの要部の鳥瞰図であって、荷台が起立姿勢にある状態を示す鳥瞰図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施の形態例について図面を参照して説明する。本発明の第1の実施の形態例に係るダンプトラックは、図1に示すように、本体を形成するフレーム2と、このフレーム2の前側位置に配置される運転室30と、前輪31及び後輪32と、フレーム2の後方部分に設けられたヒンジピン4を回動中心として上下方向に回動可能な荷台1と、この荷台1を上下方向に回動させる左右一対のホイストシリンダ3とを備えて構成されている。そして、オペレータが運転室30からホイストシリンダ3を駆動すると、荷台1は、ホイストシリンダ3の伸縮動作に伴って、フレーム2に着座する倒伏姿勢と土砂などを放土する起立姿勢との間をヒンジピン4回りに回動するようになっている。なお、ヒンジピン4は、フレーム2に設けられたフレーム側連結穴(図示せず)に挿通されている。
【0020】
また、荷台1にはガイド5が設けられ、フレーム2にはガイド5と当接するガイド当て(図示せず)が設けられている。荷台1がフレーム2に着座した倒伏姿勢の状態で、荷台1が鉛直方向を軸として回転した(別言すれば、ダンプトラックの正面から見て左右方向に移動した)際には、ガイド5がガイド当てに当接することにより荷台1の左右方向への移動は防止される。
【0021】
また、荷台1の底面には、フレーム2に着座したときの衝撃を緩和するためのパッド5aが複数個取り付けられている(図2参照)。このパッド5aはゴム系材料から成り、方形の板状に形成されている。パッド5aとフレーム2との間の摩擦力により、荷台1がフレーム2上に安定した姿勢で着座できるようになっている。
【0022】
さらに、ダンプトラックには、プルアウトを抑制するための張力付与装置が取り付けられている。この張力付与装置は、図2および図3に示すように、索状体の1つであるワイヤロープ(張力伝達部材)9と、このワイヤロープ9の巻き取りおよび巻き出しを行うウインチ8と、ウインチ8を回転駆動するウインチ用モータ6と、ウインチ用モータ6およびウインチ8の回転にブレーキを掛けるディスクブレーキ装置(ブレーキ装置)7と、ワイヤロープ9の一端を固定するためのブラケット(固定部材)10と、制御装置20(図4参照)を備えて構成されている。ここで、ウインチ8とウインチ用モータ6とが本発明の巻取り装置に相当する。
【0023】
ウインチ8、ウインチ用モータ6およびディスクブレーキ装置7はフレーム2に設けられており、ブラケット10は荷台1の底面の前部に設けられている。ワイヤロープ9は、一端がブラケット10に固定され、他端がウインチ8に固定されており、ウインチ用モータ6を回転させることによりワイヤロープ9はウインチ8に巻き取られ、あるいは、巻き出されるようになっている。
【0024】
ディスクブレーキ装置7は、ウインチ用モータ6の軸とウインチ8との連結部に設けられたディスクを挟むことによって、ウインチ用モータ6の回転を強制的に停止させる仕様となっており、ウインチ8とウインチ用モータ6との間に取り付けられている。
【0025】
次に、第1の実施の形態例に係るダンプトラックの電気的構成の概略について図4を参照しながら説明する。図4に示すように、制御装置20には、運転室30からの指令信号が入力されるだけでなく、ホイストシリンダ3の変位速度を検知する変位速度センサ(変位速度検知手段)21、ホイストシリンダ3の圧力を検知する圧力センサ(圧力検知手段)22、ホイストシリンダ3の変位を検知する変位センサ(変位検知手段)23、荷台1の回動角度を検知する角度センサ(角度検知手段)24、荷台1がフレーム2に着座したことを検知する着座検知センサ(着座検知手段)25、および荷台1の積載重量を検知する重量検知センサ(重量検知手段)が電気的に接続されており、これらの各センサ21〜26からの入力を受けて、ウインチ用モータ6およびディスクブレーキ装置7の作動を制御している。
【0026】
次に、プルアウトが発生した場合の制御装置20の具体的な制御処理の手順について、図5を参照しながら説明する。まず、制御装置20は、現在、ホイストシリンダ3が動作中であるか否かをステップS1にて判断する。ステップS1でYesの場合には、ステップS2に進んで、制御装置20は、ディスクブレーキ装置7によるブレーキを解除(OFF)にする。次いで、ステップS3に進んで、制御装置20は、変位センサ23からの入力に基づいてホイストシリンダ3の変位を取得する。次いで、ステップS4に進み、制御装置20は、ワイヤロープ9の巻き取り量および巻き出し量の計算および入力を行う。
【0027】
ここで、制御装置20は、ワイヤロープ9にほぼ一定の張力が付与されるように巻き取り量および巻き出し量の計算を行っている。即ち、荷台1が起き上がる方向に回動する場合には、ワイヤロープ9が荷台1によって引っ張られるように制御装置20はワイヤロープ9の巻き出し量を計算して、ウインチ用モータ6の回転を制御する。また、荷台1が倒伏する方向に回動する場合には、ワイヤロープ9によって荷台1が引っ張られるように制御装置20はワイヤロープ9の巻き取り量を計算して、ウインチ用モータ6の回転を制御する。
【0028】
次いで、ステップS5に進み、制御装置20は、現在、積荷の状態であるか否かを重量検知センサ26からの入力に基づいて判断する。ステップS5でYesの場合には、ステップS6に進み、制御装置20は、ホイストシリンダ3が荷台1の上げ動作を行っているか否かを運転室30からの指令信号に基づいて判断する。ステップS6でYesの場合には、ステップS7に進み、制御装置20は、ホイストシリンダ3の圧力変動(ΔP)の値が予め定めた圧力変動の閾値を超えたか否かを判断する。このステップS7でYesの場合には、プルアウトが発生したと判断できるため、制御装置20はステップS8にて直ちにディスクブレーキ装置7を作動(ON)させて、ウインチ用モータ6とウインチ8の回転を急停止させる。すると、荷台1は上述したようにワイヤロープ9に張力が付与された状態で回動しているため、ワイヤロープ9によって荷台1の回動は阻止される。つまり、プルアウトが発生しても、荷台1がプルアウト発生時の姿勢からさらに起き上がる方向に回動することは防止されるのである。このように、ステップS8での処理により、ホイストシリンダ3がストロークエンドまで急激に伸びるのを抑制している。
【0029】
次いで、ステップS9に進んで、制御装置20は、ホイストシリンダ3の圧力変動の値が予め定めた圧力変動の閾値以下になったか否かを判断する。ステップS9でYesの場合には、ステップS10に進み、制御装置20は、ディスクブレーキ装置7によるブレーキを解除(OFF)する。次いで、ステップS11に進み、制御装置20は、変位センサ23からの入力に基づいてホイストシリンダ3の変位を取得する。次いで、ステップS12に進み、制御装置20は、ワイヤロープ9の巻き取り量および巻き出し量の計算および入力を行って、ステップS1に戻る。なお、このステップS12では、プルアウト発生時のステップS8の処理によりワイヤロープ9には通常より大きな張力が掛かっているため、その過大な張力をプルアウト発生前と同等に戻すようにワイヤロープ9の巻き出し量が計算されることとなる。
【0030】
なお、ステップS1でNoの場合は終了となり、ステップS5、ステップS6、ステップS7でNoの場合には、ステップS1へと戻る。また、ステップS9でNoの場合には、ステップS8に戻り、ディスクブレーキ装置7によるブレーキONの状態が維持される。
【0031】
以上、説明したように、第1の実施の形態例に係るダンプトラックによれば、プルアウトが抑制されるので、ホイストシリンダ3や荷台1、フレーム2などに過大な荷重が掛かることが防止され、ダンプトラックの長寿命化が図られる。また、プルアウトの発生が抑止されることから、オペレータは安定した乗り心地を得ることができる。しかも、プルアウトを抑制できるため、キックバックが生じることも未然に防止することができる。
【0032】
(変形例1)
上記した第1の実施の形態例では、プルアウトの発生をホイストシリンダ3の圧力変動(ΔP)の値から判断したが、プルアウトが発生するとホイストシリンダ3の変位速度が通常に比べて著しく早くなる。この点に着目して、制御装置20は、変位速度センサ21の値が予め定めた変位速度の閾値を超えたか否かを判断し、超えている場合にディスクブレーキ装置7を作動させるようにしても良い。つまり、図5のステップS7において、「ホイスト圧力変動>閾値?」を「変位速度>閾値?」に置き換え、ステップS9において、「ホイスト圧力変動≦閾値?」を「変位速度≦閾値?」に置き換えこともできる。このように制御しても、プルアウトを抑制することができる。
【0033】
(変形例2)
上記した第1の実施の形態例では、制御装置20は、変位センサ23からの入力に基づいてホイストシリンダ3の変位を取得し、その取得した値に基づいてワイヤロープ9の巻き取り量および巻き出し量の計算および入力を行うようにしたが、角度センサ24からの入力に基づいて荷台1の回動角度を取得し、この取得した回動角度の値に基づいてワイヤロープ9の巻き取り量および巻き出し量の計算および入力を行うようにしても良い。この場合、図5のステップS3およびS11で「ホイストシリンダ変位取得」を「荷台の回動角度取得」に置き換えれば良い。この構成によっても、ワイヤロープ9の巻き取り量および巻き出し量の計算は簡単に行える。
【0034】
次に、本発明の第2の実施の形態例に係るダンプトラックについて説明するが、第1の実施の形態例に係るダンプトラックと同一構成のものについては、同一符号を付して、その説明は省略する。図6に示すように、第2の実施の形態例では、ウインチ8、ディスクブレーキ装置7、およびウインチ用モータ6がフレーム2に取り付けられているだけでなく、ワイヤロープ9の一端を固定するためのブラケット10もフレーム2に取り付けられている。一方、荷台1の底面の前部には、ワイヤロープ9の巻き取りを案内するためのリング(ガイド部材)41a、41bが設けられている。リング41aとリング41bとは正面視で左右にやや間隔を空けて設けられている。また、ウインチ8とブラケット10も同様に正面視で左右にやや間隔を空けて設けられている。
【0035】
そして、荷台1を起立姿勢にした状態でウインチ8、リング41a、リング41b、ブラケット10を直線で結ぶと四角形(略長方形)が形成され、ウインチ8とブラケット10はその四角形の隣り合う角に位置している。
【0036】
ワイヤロープ9の一端はブラケット10に固定され、他端はリング41b、リング41aの順にリング内部を通ってウインチ8に固定されており、ウインチ用モータ6を回転駆動するとワイヤロープ9がリング41a、41bに案内されながら巻き取られ、あるいは巻き出されるようになっている。
【0037】
このように構成されたダンプトラックによれば、ワイヤロープ9はリング41a、41bにも挿通しているので、ワイヤロープ9を巻き取っていくと、リング41a、41bの2箇所で荷台1を下向きに引っ張ることができる。よって、荷台1の浮き上がりを防止できるうえ、正面視で左右方向への荷台1のズレを防止するのにも効果的である。
【0038】
次に、本発明の第3の実施の形態例に係るダンプトラックについて説明するが、第1の実施の形態例に係るダンプトラックと同一構成のものについては、同一符号を付して、その説明は省略する。図7に示すように、第3の実施の形態例では、ウインチ8、ディスクブレーキ装置7、およびウインチ用モータ6は荷台1の底面の前部に取り付けられており、ブラケット10がフレーム2に取り付けられている。つまり、第3の実施の形態例では、ウインチ8、ディスクブレーキ装置7、およびウインチ用モータ6が取り付けられる位置と、ブラケット10が取り付けられる位置とが第1の実施の形態例と逆になっている。この構成によっても、同様にプルアウトを抑止できる。
【0039】
なお、上記の実施の形態例では張力伝達部材としてワイヤロープを用いたが、この構成に代えて、チェーン(鎖状体)やベルト(帯状体)を用いることも可能である。また、リングの個数、取り付け位置などは適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0040】
また、上記の実施の形態例では、ディスクブレーキ装置7を採用したが、ウインチ用モータ6をブレーキ付モータにすることでディスクブレーキ装置7の代用が可能である。
【0041】
また、制御装置20は、荷台1がフレーム2に着座したことを着座検知センサ25が検知した場合には、その着座検知センサ25の検知信号の入力を受けて、ウインチ用モータ6を駆動してワイヤロープ9に張力を付与した状態で、ディスクブレーキ装置7を作動させて、ワイヤロープ9に張力が付与された状態に保持するようにしても良い。この構成によれば、ワイヤロープ9に付与された張力によって、荷台1がフレーム2から浮き上がることが防止される。よって、ダンプトラックの走行中などに荷台1の浮き上がりによる荷台1とフレーム2の連結部等へのダメージが軽減されるといった利点がある。
【符号の説明】
【0042】
1 荷台
2 フレーム
3 ホイストシリンダ
4 ヒンジピン
5 ガイド
5a パッド
6 ウインチ用モータ(巻取り装置)
7 ディスクブレーキ装置(ブレーキ装置)
8 ウインチ(巻取り装置)
9 ワイヤロープ(張力伝達部材)
10 ブラケット(固定部材)
20 制御装置
21 変位速度センサ(変位速度検知手段)
22 圧力センサ(圧力検知手段)
23 変位センサ(変位検知手段)
24 角度センサ(角度検知手段)
25 着座検知センサ
26 重量検知センサ
30 運転室
31 前輪
32 後輪
41a、41b リング(ガイド部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、このフレームの後部に配置されたヒンジピンと、このヒンジピンを介して前記フレームに取り付けられた荷台と、この荷台を前記ヒンジピン回りに回動させるホイストシリンダとを備えたダンプトラックにおいて、
索状体、鎖状体、または帯状体の何れか1つから成る張力伝達部材と、この張力伝達部材の巻き取りおよび巻き出しを行う巻取り装置と、この巻取り装置にブレーキを掛けるブレーキ装置と、前記張力伝達部材の一端を固定する固定部材と、前記巻取り装置および前記ブレーキ装置の作動を制御する制御装置とを有する張力付与装置を備え、
前記フレームと前記荷台の一方に前記巻取り装置および前記ブレーキ装置を設けると共に、他方に前記固定部材を設け、
前記制御装置は、少なくとも前記張力伝達部材の巻き出し時に前記張力伝達部材に張力が付与されるように、前記荷台の回動に連動して前記張力伝達部材の巻き取りおよび巻き出しを行うように前記巻取り装置の作動を制御すると共に、前記荷台の上げ動作時にプルアウトが発生したときには、前記巻取り装置にブレーキを掛けるよう前記ブレーキ装置の作動を制御する
ことを特徴とするダンプトラック。
【請求項2】
フレームと、このフレームの後部に配置されたヒンジピンと、このヒンジピンを介して前記フレームに取り付けられた荷台と、この荷台を前記ヒンジピン回りに回動させるホイストシリンダとを備えたダンプトラックにおいて、
索状体、鎖状体、または帯状体の何れか1つから成る張力伝達部材と、この張力伝達部材の巻き取りおよび巻き出しを行う巻取り装置と、この巻取り装置にブレーキを掛けるブレーキ装置と、前記張力伝達部材の一端を固定する固定部材と、前記巻取り装置および前記ブレーキ装置の作動を制御する制御装置とを有する張力付与装置を備え、
前記フレームと前記荷台の一方に前記巻取り装置、前記ブレーキ装置および前記固定部材を設けると共に、他方に前記張力伝達部材の巻き取りを案内するためのガイド部材を設け、
前記制御装置は、少なくとも前記張力伝達部材の巻き出し時に前記張力伝達部材に張力が付与されるように、前記荷台の回動に連動して前記張力伝達部材の巻き取りおよび巻き出しを行うように前記巻取り装置の作動を制御すると共に、前記荷台の上げ動作時にプルアウトが発生したときには、前記巻取り装置にブレーキを掛けるよう前記ブレーキ装置の作動を制御する
ことを特徴とするダンプトラック。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、
前記ホイストシリンダの変位速度を検知する変位速度検知手段を備え、
前記制御装置は、前記変位速度検知手段が検知した変位速度の値が予め定めた変位速度の閾値を超えた場合に、前記巻取り装置にブレーキを掛けるように前記ブレーキ装置の作動を制御する
ことを特徴とするダンプトラック。
【請求項4】
請求項1または2の記載において、
前記ホイストシリンダの圧力を検知する圧力検知手段を備え、
前記制御装置は、前記圧力検知手段が検知した圧力の変動値が予め定めた圧力変動の閾値を超えた場合に、前記巻取り装置にブレーキを掛けるように前記ブレーキ装置の作動を制御する
ことを特徴とするダンプトラック。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、
前記ホイストシリンダの変位を検知する変位検知手段を備え、
前記制御装置は、前記変位検知手段が検知した変位の値に基づいて前記巻取り装置による前記張力伝達部材の巻き取り量および巻き出し量を制御する
ことを特徴とするダンプトラック。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、
前記荷台の回動角度を検知する角度検知手段を備え、
前記制御装置は、前記角度検知手段が検知した回動角度の値に基づいて前記巻取り装置による前記張力伝達部材の巻き取り量および巻き出し量を制御する
ことを特徴とするダンプトラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−225111(P2011−225111A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96961(P2010−96961)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)