説明

ダンプ車両の傾動装置

【課題】ダンプ車両の傾動装置において、従来の油圧シリンダよりも非力なシリンダを使用した場合にも従来と同程度のダンプ機能を発揮することができるようにする。
【解決手段】車台2の荷箱支持軸20と離れた位置のシリンダ支持軸21に起伏自在に傾動シリンダ12の基端12aを取り付け、回動部材24の第1取付部24aを塵芥収容箱3下部の回動部材支持軸23に回動自在に取り付け、荷箱支持軸20とシリンダ支持軸21との間に設けたリンク支持軸25にリンク部材26の一端26aを起伏自在に取り付ける。第2取付部24bに傾動シリンダ12の先端12bを回動自在に取り付け、第3取付部24cにリンク部材26の他端26bを回動自在に取り付ける。さらに、傾動シリンダ12の伏倒状態において、荷箱支持軸20の軸方向から見て第1、第2及び第3取付部24a,24b,24cは、シリンダ支持軸21とリンク支持軸25との間に配置され、回動部材24を塵芥収容箱3を上方に押し上げる方向に回動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプ車両の傾動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ダンプ車両の傾動装置としては、図10及び図11に示すように、油圧シリンダ112のシリンダ支持軸121を荷箱支持軸20と反対側に設けて油圧シリンダ112の先端で荷箱下部3aを直接押し上げる直押し式のものが知られている。この直押し式は、構造が簡単であるが、荷箱の起立開始時に水平に近い油圧シリンダ112で荷箱3を上方へ回動させなければならず、過大なシリンダ推力F101を必要とするという難点があった。
【0003】
そこで、この欠点を解消するために種々なリンク方式が考案されてきた。例えば、ガーウッド式やヘール式やマレル(天付き)式である。例えば、図12及び図13に示すようなテンションリンク(リンク部材)226とリフトアーム(回動部材)224と傾動シリンダ212とを組み合わせた特許文献1の天付き式のものでは、最大ダンプ時に傾動シリンダ212がほぼ直立するようになっている。また、テンションリンク(リンク部材)226の車台2への取付部225は、傾動シリンダ212の車台へ取付部分であるシリンダ支持軸221の近傍に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−158144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1などで見られるような従来のリンク方式は、油圧シリンダの使用を前提に考えられたものであり、依然として、荷箱の起立開始時に荷箱及び積載物の1.6倍〜3倍の大きな推力を必要としていた。この必要推力は、電動シリンダ等の非力なシリンダの使用を不可能にしていた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来の油圧シリンダよりも非力なシリンダ(低油圧シリンダ、電動シリンダ等)を使用した場合にも従来と同程度のダンプ機能を発揮することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、シリンダとリンク部材と回動部材とを車台に適切に配置して荷箱の起立開始時にシリンダ推力が小さくなるようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、
車台上の荷箱支持軸を中心に起伏自在に設けられた荷箱と、
上記荷箱支持軸と離れた位置で上記車台に設けたシリンダ支持軸に起伏自在に基端が取り付けられたシリンダと、
三角形状に配置された第1、第2及び第3取付部を有する共に、該第1取付部を上記荷箱下部の回動部材支持軸に回動自在に取り付けた回動部材と、
上記荷箱支持軸と上記シリンダ支持軸との間となるように上記車台に設けたリンク支持軸に一端が起伏自在に取り付けられたリンク部材とを備え、
上記第2取付部には、上記シリンダの先端が回動自在に取り付けられると共に、上記第3取付部には、上記リンク部材の他端が回動自在に取り付けられ、
さらに、上記シリンダの伏倒状態において、上記荷箱支持軸の軸方向から見て第1、第2及び第3取付部は、上記シリンダ支持軸と上記リンク支持軸との間に配置されて、
上記回動部材が、上記伏倒状態の上記シリンダを伸長させると上記荷箱を上方に押し上げる方向に回動するように構成されている。
【0009】
上記の構成によると、伏倒状態のシリンダを伸長させて荷箱をダンプさせるときにシリンダの水平方向の力を回動部材とリンク部材とを利用し、シリンダの水平方向の力を回動部材に生じる力のモーメントの作用により荷箱押し上げ方向の力に変換するように第1、第2及び第3取付部を配置できるので、荷箱の起立開始時の必要シリンダ推力を小さくして非力なシリンダでも荷箱の起伏作業を行うことができるようになる。
【0010】
また、第1、第2及び第3取付部が上記シリンダ支持軸に対してリンク支持軸と反対側に配置される天付きリンク式に比べてさらに荷箱の起立開始時の必要シリンダ推力を小さくするように第1、第2及び第3取付部の配置が可能となる。
また、従来、直押し式や天付きリンク式で電動シリンダを用いようとする場合、必要シリンダ推力を発生可能なものが存在しないか、あるいは存在したとしてもサイズや重量が大きすぎて実際には使用できなかった。しかし、本発明では、必要シリンダ推力が小さくて済むので、サイズや重量が小さい電動シリンダを使用できるようになる。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
上記第2取付部は、上記第1取付部の上方に配置され、
上記荷箱が上記伏倒状態から起立状態に移行する際に上記荷箱支持軸の軸方向から見て上記第2取付部が上記第1取付部を中心に上記荷箱支持軸側へ回動しながら、上記回動部材が上記第3取付部を中心に回動するように構成されている。
【0012】
上記の構成によると、簡単な構成で確実に荷箱を小さなシリンダ推力で起伏させることができる。
【0013】
第3の発明では、
車台上の荷箱支持軸を中心に起伏自在に設けられた荷箱と、
上記荷箱支持軸と離れた位置で上記荷箱に設けたシリンダ支持軸に起伏自在に基端が取り付けられたシリンダと、
三角形状に配置された第1、第2及び第3取付部を有する共に、該第1取付部を上記車台の回動部材支持軸に回動自在に取り付けた回動部材と、
上記荷箱支持軸と上記シリンダ支持軸との間となるように上記荷箱に設けたリンク支持軸に一端が起伏自在に取り付けられたリンク部材とを備え、
上記第2取付部には、上記シリンダの先端が回動自在に取り付けられると共に、上記第3取付部には、上記リンク部材の他端が回動自在に取り付けられ、
さらに、上記シリンダの伏倒状態において、上記荷箱支持軸の軸方向から見て第1、第2及び第3取付部は、上記シリンダ支持軸と上記リンク支持軸との間に配置されて、
上記回動部材が、上記伏倒状態の上記シリンダを伸長させると上記荷箱を上方に押し上げる方向に回動するように構成されている。
【0014】
上記の構成によると、第1の発明の発明と同様の作用効果が得られる。
【0015】
第4の発明では、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、
上記第2取付部と上記第3取付部との間の距離は、上記第1取付部と上記第3取付部との間の距離よりも大きい。
【0016】
上記の構成によると、第3取付部を中心に第1取付部と第2取付部とが相対的に回転するときに、てこの作用を利用して確実に小さな推力で荷箱を起立させることができる。
【0017】
第5の発明では、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、
上記車台は左右一対で前後に延びる縦フレームを有し、
上記シリンダは、シリンダチューブと当該シリンダチューブに並列のロッド駆動部とを有する電動シリンダであり、上記伏倒状態では、上記シリンダチューブと上記ロッド駆動部とが上記左右一対の縦フレーム間に左右並んで納められるように構成した。
【0018】
上記の構成によると、電動シリンダのロッド駆動部が、車台の縦フレームの上方又は下方に大きく突出することがないので、車両の走行部品や荷箱にロッド駆動部が干渉することがなくなる。また、電動シリンダの左右には、従来の天付き式のようなリンク部材が存在しないので、左右一対の縦フレーム間に容易にロッド駆動部を納めることができる。これにより、架装性に優れたダンプ車両の傾動装置にすることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、従来の荷箱の起立開始時に必要だったシリンダ推力を大幅に低減することができ、電動シリンダ等の非力なシリンダを用いた荷箱傾動装置を構成できる。これにより、油圧シリンダを用いる場合には、より低油圧でダンプできるようになり省エネ化を図ることができる。また電動シリンダを用いる場合には、油圧と比べて油圧配管を省略できる分、メンテナンス性を向上させることができる。また、低油圧作動による省エネや油圧レス作動によるメンテナンス容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態にかかる荷箱及び傾動装置の伏倒状態を示す側面図である。
【図2】傾動装置を備えた塵芥収集車を示す側面図である。
【図3】傾動装置を拡大して示す斜視図である。
【図4】伏倒状態から起立開始した状態の荷箱及び傾動装置を示す側面図である。
【図5】伏倒状態からさらに起立した状態の荷箱及び傾動装置を示す側面図である。
【図6】伏倒状態からさらに起立した状態の荷箱及び傾動装置を示す側面図である。
【図7】伏倒状態からさらに起立した状態の荷箱及び傾動装置を示す側面図である。
【図8】起立完了状態の荷箱及び傾動装置を示す側面図である。
【図9】シリンダ必要推力のダンプ角度に対する移り変わりを比較するグラフである。
【図10】直押し式の傾動装置にかかる図4相当図である。
【図11】直押し式の傾動装置にかかる図8相当図である。
【図12】天付き式の傾動装置にかかる図4相当図である。
【図13】天付き式の傾動装置にかかる図8相当図である。
【図14】その他の実施形態にかかる図8相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
−塵芥収集車の構造−
図2は本発明の実施形態にかかる塵芥積込装置(図示せず)を備えたダンプ車両としての塵芥収集車1を示し、この塵芥収集車1の車台2上に荷箱としての塵芥収容箱3が搭載されている。塵芥収容箱3の後方開口部4には、その上方で投入箱支持ピン5により軸支された塵芥投入箱6が設けられている。詳しくは図示しないが、この塵芥投入箱6は、塵芥収容箱3と塵芥投入箱6との間に設けられた電動シリンダである回動シリンダ(不図示)により、投入箱支持ピン5を中心に回動自在に構成されている。そして、図1に示すように、塵芥収容箱3は、車台2に設けた傾動装置10の傾動シリンダ12を伸縮させることにより、車台2後側の傾動軸を中心に傾動可能(ダンプ可能)に構成されている。本実施形態では、傾動シリンダ12は、同じサイズの油圧シリンダに比べて非力な電動シリンダで構成されている。
【0023】
この傾動シリンダ12は、シリンダロッドを納めるシリンダチューブ12cと、当該シリンダチューブ12cに並列すると共にシリンダロッドを駆動させるロッド駆動部12dとを有している。
【0024】
詳しくは図示しないが、塵芥収集車1は、車両エンジンに駆動される発電機を備え、この発電機で得られた電力又は蓄電装置に蓄えた電力により上記回動シリンダや傾動シリンダ12を駆動させるようになっている。
【0025】
そして、図1及び図3に示すように、車台2は、左右一対で前後に延びる縦フレーム(サブフレーム)2aを有している。これら縦フレーム2aの各後端には、車幅方向に所定の距離をあけて荷箱支持軸20が設けられている。上記塵芥収容箱3は、この荷箱支持軸20を中心に起伏自在となっている。この荷箱支持軸20と離れた位置である左右一対の縦フレーム2aの前端部は、車幅方向(左右方向)に延びる前横フレーム2bにて連結されている。また、左右一対の縦フレーム2aの後部は、車幅方向(左右方向)に延びる後横フレーム2cにて連結されている。前横フレーム2bの車幅方向中央のシリンダ取付部2dには、1本のシリンダ支持軸21が設けられている。このシリンダ支持軸21に上記傾動シリンダ12の基端12aが起伏自在に取り付けられている。傾動シリンダ12の伏倒状態では、傾動シリンダ12のシリンダチューブ12cとロッド駆動部12dとが左右一対の縦フレーム2a間に左右並んで納められるようになっている。
【0026】
一方、塵芥収容箱3の下部3aには、車幅方向に所定の距離をあけて左右一対のブラケット支持部3bが設けられている。左右一対のブラケット支持部3bは、塵芥収容箱3の伏倒状態において、左右一対の縦フレーム2aの間に納まるようになっている。このブラケット支持部3bは、側面視で略三角形状であり、その下端角部に回動部材支持軸23が設けられている。各回動部材支持軸23には、ブラケット支持部3bの左右内側となるように回動部材24が回動自在に取り付けられている。具体的には、回動部材24は、略三角形状であり、ボス状の第1、第2及び第3取付部24a,24b,24cが三角形状に配置されている。そして、第1取付部24aが回動部材支持軸23に回動自在に連結されている。
【0027】
また、車台2における荷箱支持軸20とシリンダ支持軸21との間の中央よりも荷箱支持軸20寄りには、リンク支持軸25が設けられている。具体的には、リンク支持軸25は、後横フレーム2cの中央部に上方へ突設された左右一対のリンク取付部2eのそれぞれに設けられている。各リンク支持軸25には、棒状のリンク部材26の一端26aが起伏自在に取り付けられている。
【0028】
また、回動部材24の第2取付部24bには、傾動シリンダ12の先端12bがシリンダ連結軸27を中心に回動自在に取り付けられている。さらに、第3取付部24cには、リンク部材26の他端26bがリンク連結軸28を中心に回動自在に取り付けられている。そして、塵芥収容箱3の通常位置である伏倒状態において、荷箱支持軸20の軸方向(車幅方向)から見て第1、第2及び第3取付部24a,24b,24cは、シリンダ支持軸21とリンク支持軸25との間に配置されている。また、第2取付部24bは、第1取付部24aの上方に配置されている。そして、図1に示すように、第2取付部24bと第3取付部24cとの間の距離L1は、第1取付部24aと第3取付部24cとの間の距離L2よりも大きくなるように設定されている(L1>L2)。
【0029】
このように構成することにより、図1に示すように、塵芥収容箱3が伏倒状態から起立状態に移行する際に荷箱支持軸20の軸方向から見て第2取付部24bが第1取付部24aを中心に荷箱支持軸20側へ(図3で時計回りに)回動しながら、回動部材24が第3取付部24cを中心に回動するように構成されている。すなわち、回動部材24が、伏倒状態の傾動シリンダ12を伸長させると塵芥収容箱3を上方に押し上げる方向に回動するように構成されている。
【0030】
−傾動装置の作動−
次に、本実施形態にかかる塵芥収集車1の傾動装置10の作動について説明する。
【0031】
塵芥収集作業を終えた塵芥収集車1は、図示しない塵芥処理場において塵芥収容箱3内の塵芥を排出する。
【0032】
まず、回動シリンダ9を伸長させて図1に示すように塵芥投入箱6を投入箱支持ピン5を中心に回動させて開く。
【0033】
次いで、伏倒状態の傾動シリンダ12を伸長させて塵芥収容箱3をダンプさせる。このとき、傾動シリンダ12は、水平よりも若干だけ後方に向けて上方へ起きているだけであるが、回動部材24とリンク部材26とを利用し、傾動シリンダ12の水平方向の力を回動部材24に生じる力のモーメントの作用により塵芥収容箱3を押し上げる方向の力に変換することができる。具体的には、第2取付部24b(シリンダ連結軸27)に加わった傾動シリンダ12の推力F1により、第3取付部24cを中心とする円の接線方向には分力F2が働く。この接線方向の分力F2による第3取付部24c(リンク連結軸28)まわりの力のモーメントが第1取付部24a(回動部材支持軸23)に伝達される。このとき、第2取付部24bと第3取付部24cとの間の距離L1が第1取付部24aと第3取付部24cとの間の距離L2よりも大きく設定されていることから、第1取付部24aにおいて第3取付部24cを中心とする円の接線方向の力F3がてこの作用により大きくなって伝達される。この接線方向の力F3により、回動部材支持軸23を押し上げる力が荷箱支持軸20を中心とする力のモーメントを発生させ、塵芥収容箱3が荷箱支持軸20を中心に回動される。
【0034】
また、塵芥収容箱3が荷箱支持軸20を中心に上方へ回動する際には、回動部材24は、リンク部材26に対して第3取付部24cまわりに回動可能であると共にリンク部材26のリンク支持軸25まわりの回動により上方へ移動可能となっている。したがって、塵芥収容箱3はスムーズに回動される。
【0035】
図4〜図8に塵芥収容箱3のダンプ角度を徐々に大きくしていくときの傾動装置10の動きを示す。傾動シリンダ12を伸長させるにしたがって前方に向かって下方に傾斜していたリンク部材26が徐々に起きあがる。第2取付部24bは、リンク連結軸28によって軌跡を規制されるので、傾動シリンダ12によるシリンダ推力F1によって生じる力のモーメントによって、図4〜図6の辺りまで第3取付部24cを中心に第2取付部24bが回動されるように回動部材24が回動し、塵芥収容箱3を押し上げる。
【0036】
図7〜図8の辺りでは、回動部材24の第3取付部24cを中心とする回動が止まり、又は若干逆方向に回動する。
【0037】
−必要シリンダ推力の比較−
上記実施形態の必要シリンダ推力F1を実施例とし、図9を用いて比較例と比較する。以下の説明においては、簡略化のために塵芥収容箱3を回動させても塵芥収容箱3内の塵芥が排出されることなくその場に留まっている場合の必要シリンダ推力比較を行う。
【0038】
実施例の必要シリンダ推力F1のダンプ角度の拡大に伴う変化を実線で示す。
【0039】
比較例1は、図10及び図11に示す直押し式の傾動装置110であり、図9にその必要シリンダ推力の移り変わりを一点鎖線で示す。比較例2は、図12及び図13に示す上記特許文献1などの天付き式の傾動装置210とし、その必要シリンダ推力の移り変わりを破線で示す。
【0040】
図10及び図11にシリンダ連結軸127の軌跡を実線で示すように、その軌跡は、荷箱支持軸20を中心とする円弧となっている。図10に示す状態では、水平状態よりも若干だけ後方に向かって上方へ起きている傾動シリンダ112の推力F101によって、荷箱支持軸20を中心とする接線方向の分力F102が生じる。この分力F102が塵芥収容箱3を押し上げるので、F102はF101に比べて大幅に小さくなり(F102<F101)、シリンダ必要推力F101としては、図9に示すように塵芥収容箱3及び積載物の重量に比べてとても大きなものとなる。なお、図11に示す起立完了状態では、F102は、F101よりも若干小さいだけであることから図9でダンプ角度が大きい領域では有利となっている。
【0041】
一方、図12及び図13の天付き式では、傾動シリンダ212と回動部材224との連結部分であるシリンダ連結軸227の軌跡が実線で示される。また、リンク部材226と回動部材224との連結部分であるリンク連結軸228の軌跡が破線で示される。また、塵芥収容箱3の下部と回動部材224との連結部分である回動部材支持軸223の軌跡が一点鎖線で示される。この方式では、図12に示すように、伏倒状態において、荷箱支持軸20の軸方向から見てシリンダ連結軸227、リンク連結軸228及び回動部材支持軸223は、シリンダ支持軸221よりも前方に配置されている。傾動シリンダ212は、塵芥収容箱3の起立開始時には、前方に向かって伸長する。図12に示す状態では、水平状態よりも若干だけ前方に向かって上方へ起きている傾動シリンダ212の推力F201のうち、リンク連結軸228を中心とする円の接線方向の分力F202がリンク連結軸228まわりの力のモーメントを発生させる。このリンク連結軸228まわりの力のモーメントにより、回動部材224を回転させる力が発生する。これにより、回動部材支持軸223には、リンク連結軸228を中心とする円の接線方向の力F203が発生する。このとき、シリンダ連結軸227とリンク連結軸228との間の距離L201は、リンク連結軸228と回動部材支持軸223との間の距離L202よりも短いので、F203はF201及びF202に比べて小さくなり(F203<F202<F201)、起立開始時のシリンダ必要推力F201としては、図9に示すように、比較例1のF101よりも小さいものの、依然として実施例よりも大きな値(実施例の約2倍)となっている。
【0042】
実施例では、図1に示すように、第3取付部24cを中心に第1取付部24aと第2取付部24bとが相対的に回転するときに、L1>L2の関係からてこの作用を利用することができ、起立開始時の必要シリンダ推力F1が小さくなるので、比較例1及び2に比べて特に起立開始時の必要シリンダ推力F1が小さくなっている(F1<F201<F101)。
【0043】
また、上述のように実施例の必要シリンダ推力F1は、起立開始時に小さい。しかし、比較例1や比較例2と異なり、実施例の必要シリンダ推力F1は、ダンプ角度が大きくなるに従って一旦大きくなり、最大値に達した後また小さくなっている。必要シリンダ推力F1は、図6の辺りで最大値に達する。ただし、この最大値は、比較例2の必要シリンダ推力F201の最大値の70%程度であり、必要シリンダ推力F1が必要シリンダ推力F201よりも大きくなることはない。
【0044】
そして、一般に電動シリンダは油圧シリンダと同じ推力を発生させようとすると油圧シリンダに比べてサイズが大きくなって使用が困難であるが、実施例構造では、従来の直押し式や天付き式よりも起立開始時の必要シリンダ推力F1を小さくできる。これにより、傾動シリンダ12として電動シリンダを用いても、そのサイズを一対の縦フレーム2aの間に納めることが可能なサイズに設定できる。
【0045】
したがって、本実施形態にかかる塵芥収集車1の傾動装置10によると、従来の塵芥収容箱3の起立開始時に必要だったシリンダ推力F1を大幅に低減することができ、電動シリンダ等の非力な傾動シリンダ12を用いた塵芥収容箱3の傾動装置10を構成できる。これにより、油圧シリンダを用いる場合には、より低油圧でダンプできるようになり省エネ化を図ることができる。また電動シリンダを用いる場合には、油圧と比べて油圧配管を省略できる分、メンテナンス性を向上させることができる。また、低油圧作動による省エネや油圧レス作動によるメンテナンスの容易化を図ることができる。
【0046】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0047】
すなわち、上記実施形態では、ダンプ車両として塵芥収集車1の例を示したが、ダンプ車両としては、ダンプカーなど車台上の荷箱支持軸を中心に起伏自在に設けられた荷箱を有する車両であれば特に限定されない。
【0048】
また、図14に示すように、塵芥収容箱3の下部3aと縦フレーム2aとの位置関係を上下逆としてもよい。なお、他の部材は、上記実施形態と同じ符号を使用している。この場合傾動シリンダ12は、塵芥収容箱3に設けたシリンダ支持軸21に起伏自在に基端12aが取り付けられる。また、回動部材24は、車台2の回動部材支持軸23に回動自在に取り付けられる。また、リンク部材26の一端26aは、塵芥収容箱3に設けたリンク支持軸25に取り付けられることになる。これにより、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0049】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明は、ダンプ車両の傾動装置について有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 塵芥収集車(ダンプ車両)
2 車台
3 塵芥収容箱(荷箱)
3a 下部(荷箱下部)
10 傾動装置
12 傾動シリンダ
12a 基端
12b 先端
12c シリンダチューブ
12d ロッド駆動部
20 荷箱支持軸
21 シリンダ支持軸
23 回動部材支持軸
24 回動部材
24a 第1取付部
24b 第2取付部
24c 第3取付部
25 リンク支持軸
26 リンク部材
26a 一端
26b 他端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台上の荷箱支持軸を中心に起伏自在に設けられた荷箱と、
上記荷箱支持軸と離れた位置で上記車台に設けたシリンダ支持軸に起伏自在に基端が取り付けられたシリンダと、
三角形状に配置された第1、第2及び第3取付部を有する共に、該第1取付部を上記荷箱下部の回動部材支持軸に回動自在に取り付けた回動部材と、
上記荷箱支持軸と上記シリンダ支持軸との間となるように上記車台に設けたリンク支持軸に一端が起伏自在に取り付けられたリンク部材とを備え、
上記第2取付部には、上記シリンダの先端が回動自在に取り付けられると共に、上記第3取付部には、上記リンク部材の他端が回動自在に取り付けられ、
さらに、上記シリンダの伏倒状態において、上記荷箱支持軸の軸方向から見て第1、第2及び第3取付部は、上記シリンダ支持軸と上記リンク支持軸との間に配置されて、
上記回動部材が、上記伏倒状態の上記シリンダを伸長させると上記荷箱を上方に押し上げる方向に回動するように構成されている
ことを特徴とするダンプ車両の傾動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のダンプ車両の傾動装置において、
上記第2取付部は、上記第1取付部の上方に配置され、
上記荷箱が上記伏倒状態から起立状態に移行する際に上記荷箱支持軸の軸方向から見て上記第2取付部が上記第1取付部を中心に上記荷箱支持軸側へ回動しながら、上記回動部材が上記第3取付部を中心に回動するように構成されている
ことを特徴とするダンプ車両の傾動装置。
【請求項3】
車台上の荷箱支持軸を中心に起伏自在に設けられた荷箱と、
上記荷箱支持軸と離れた位置で上記荷箱に設けたシリンダ支持軸に起伏自在に基端が取り付けられたシリンダと、
三角形状に配置された第1、第2及び第3取付部を有する共に、該第1取付部を上記車台の回動部材支持軸に回動自在に取り付けた回動部材と、
上記荷箱支持軸と上記シリンダ支持軸との間となるように上記荷箱に設けたリンク支持軸に一端が起伏自在に取り付けられたリンク部材とを備え、
上記第2取付部には、上記シリンダの先端が回動自在に取り付けられると共に、上記第3取付部には、上記リンク部材の他端が回動自在に取り付けられ、
さらに、上記シリンダの伏倒状態において、上記荷箱支持軸の軸方向から見て第1、第2及び第3取付部は、上記シリンダ支持軸と上記リンク支持軸との間に配置されて、
上記回動部材が、上記伏倒状態の上記シリンダを伸長させると上記荷箱を上方に押し上げる方向に回動するように構成されている
ことを特徴とするダンプ車両の傾動装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載のダンプ車両の傾動装置において、
上記第2取付部と上記第3取付部との間の距離は、上記第1取付部と上記第3取付部との間の距離よりも大きい
ことを特徴とするダンプ車両の傾動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載のダンプ車両の傾動装置において、
上記車台は左右一対で前後に延びる縦フレームを有し、
上記シリンダは、シリンダチューブと当該シリンダチューブに並列のロッド駆動部とを有する電動シリンダであり、上記伏倒状態では、上記シリンダチューブと上記ロッド駆動部とが上記左右一対の縦フレーム間に左右並んで納められるように構成した
ことを特徴とするダンプ車両の傾動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−210826(P2012−210826A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76151(P2011−76151)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)