説明

チェーンコンベアの過負荷位置割出しシステム

【課題】過負荷状態の原因となっている箇所を容易に割り出すこと。
【解決手段】駆動部10の過負荷状態を検出する過負荷検出器、パワーチェーン3に取り付けられ、地上側送信機TRからの要求に応じて、IDナンバ及びパワーチェーン3の張力データを発信する張力発信機S1,…,S7、該張力発信機からの電波を同時に受信する3個の地上側受信機TR,R1,R2、該受信機が受信した電波強度から3点測量法により前記張力発信機の位置を演算する位置演算装置16、過負荷状態を検出してチェーンコンベア1が停止した際に、前記過負荷状態における前記張力発信機からの張力データにより前後方向に隣り合う張力発信機の位置のパワーチェーン3の張力差を演算し、この演算値が通常運転状態における前記張力差よりも大きい、前記隣り合う張力発信機S2,S3の位置を示す管理コンピュータ17を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過負荷状態を検出してチェーンコンベアを停止させた際に、過負荷状態の原因となっている箇所を割り出す、チェーンコンベアの過負荷位置割出しシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
チェーンコンベアの過負荷検出システムとして、チェーンコンベアの駆動部を、固定枠と、該固定枠に移動可能に設けた可動枠と、該可動枠に設けた、駆動チェーンに係合自在なキャタピラーチェーン及び該キャタピラーチェーンに連動する回転駆動装置と、固定枠及び可動枠間に設けた、負荷により移動する可動枠を受け止める圧縮コイルばねとにより構成し、固定枠に対する可動枠の移動量をレーザ変位センサにより検出することにより過負荷状態を検出可能としたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
また、チェーンコンベアの状態検出システムとして、駆動チェーンのリンクに貼付した歪ゲージにより駆動チェーンの張力を測定し、この測定値を発信機により発信し、3つの受信機により発信機の位置を三角測量により求めるコントローラを備えるものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−6791号公報(図1−2)
【特許文献2】米国特許第7,325,669号明細書(FIG.1−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなチェーンコンベアの過負荷検出システムでは、駆動部における可動枠の移動量を検出することにより過負荷状態を検出することはできるが、この過負荷状態の原因となっている箇所を割り出すことはできない。
したがって、例えば搬送キャリア又は積載ワークが干渉物に引っ掛かって過大な負荷が駆動部に掛かり、この過負荷状態を検出して駆動部を停止させた際に、保全員が順次点検しながらコンベア経路を回り、過負荷状態の原因となっている箇所である干渉物に引っ掛かった場所を発見する必要がある。
よって、過負荷状態の原因となっている箇所を割り出すために多くの労力及び時間が必要になることから、コンベアの停止時間が長くなるため、生産性が低下している。
その上、コンベア経路の中には保全員が近づくことが困難な場所がある場合もあるため、このような場合ではさらに多くの労力及び時間が必要になるとともに、保全員が危険作業を強いられる場合もある。
【0005】
また、特許文献2のようなチェーンコンベアの状態検出システムでは、歪ゲージを貼付した駆動チェーンの張力の状態を検出するとともに該状態を発信した発信機の位置を三角測量により求めることはできるが、例えば過負荷状態を特許文献1のようなシステムにより検出して駆動部を停止させた際に、歪ゲージを貼付した駆動チェーンの張力の状態を検出してその位置を特定したとしても、過負荷状態の原因となっている箇所の割出しに繋がるものではない。
【0006】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、過負荷状態を検出してチェーンコンベアを停止させた際に、過負荷状態の原因となっている箇所を比較的容易に割り出すことができ、よってコンベアの停止時間を短縮して生産性を向上することができるチェーンコンベアの過負荷位置割出しシステムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るチェーンコンベアの過負荷位置割出しシステムは、前記課題解決のために、コンベア制御装置により駆動制御され、過負荷状態を検出してチェーンコンベアを停止させた際に、過負荷状態の原因となっている箇所を割り出す、チェーンコンベアの過負荷位置割出しシステムであって、地上側に固定された固定枠、該固定枠に対して前後方向に移動可能に支持された可動枠、該可動枠により支持された、駆動チェーンに係合して駆動力を付与する駆動装置、並びに、前記固定枠及び可動枠間に設けられた、負荷に応じて移動する前記可動枠を受け止める弾性支持手段からなる駆動部と、前記可動枠が前記固定枠に対して所定値を超えて移動したことを検出する過負荷検出器と、前記駆動チェーンに所定距離を隔てて取り付けられ、地上側に設置された送信機からのリクエスト信号に応じて、IDナンバ及び前記駆動チェーンの張力の大きさに対応する張力データを発信する、複数の張力発信機と、該張力発信機からの電波を同時に受信可能なように地上側に配設された3個以上の受信機と、該受信機が受信した電波強度から3点測量法により前記張力発信機の位置を演算する位置演算装置と、前記過負荷検出器により前記駆動チェーンの過負荷状態を検出して前記コンベア制御装置が前記チェーンコンベアを停止させた際に、前記過負荷状態における前記張力発信機からの張力データにより前後方向に隣り合う張力発信機の位置の前記駆動チェーンの張力差を演算し、この演算値が通常運転状態における前記張力差よりも大きい、前記隣り合う張力発信機の位置を示す管理コンピュータとを備えたものである。
【0008】
また、本発明に係るチェーンコンベアの過負荷位置割出しシステムは、前記課題解決のために、コンベア制御装置により駆動制御され、過負荷状態を検出してチェーンコンベアを停止させた際に、過負荷状態の原因となっている箇所を割り出す、チェーンコンベアの過負荷位置割出しシステムであって、地上側に固定された固定枠、該固定枠に対して前後方向に移動可能に支持された可動枠、該可動枠により支持された、駆動チェーンに係合して駆動力を付与する駆動装置、並びに、前記固定枠及び可動枠間に設けられた、負荷に応じて移動する前記可動枠を受け止める弾性支持手段からなる駆動部と、前記可動枠が前記固定枠に対して所定値を超えて移動したことを検出する過負荷検出器と、前記駆動チェーンに所定距離を隔てて取り付けられ、地上側に設置された送信機からのリクエスト信号に応じて、IDナンバ及び前記駆動チェーンの張力の大きさに対応する張力データを発信する、複数の張力発信機と、該張力発信機からの電波を受信する地上側に配設された受信機と、前記駆動部の駆動装置に取り付けられたパルス発信機と、前記駆動チェーンに取り付けられた原点ドッグと、地上側の所定箇所に設置された、前記原点ドッグの通過を検出する原点検出器と、前記過負荷検出器により前記駆動チェーンの過負荷状態を検出して前記コンベア制御装置が前記チェーンコンベアを停止させた際における前記パルス発信機のパルス数及び前記張力発信機の前記原点ドッグからのパルス数から前記張力発信機の位置を演算するとともに、前記過負荷状態における前記張力発信機からの張力データにより前後方向に隣り合う張力発信機の位置の前記駆動チェーンの張力差を演算し、この演算値が通常運転状態における前記張力差よりも大きい、前記隣り合う張力発信機の位置を示す管理コンピュータとを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るチェーンコンベアの過負荷位置割出しシステムによれば、コンベア制御装置により駆動制御され、過負荷状態を検出してチェーンコンベアを停止させた際に、過負荷状態の原因となっている箇所を割り出す、チェーンコンベアの過負荷位置割出しシステムであって、地上側に固定された固定枠、該固定枠に対して前後方向に移動可能に支持された可動枠、該可動枠により支持された、駆動チェーンに係合して駆動力を付与する駆動装置、並びに、前記固定枠及び可動枠間に設けられた、負荷に応じて移動する前記可動枠を受け止める弾性支持手段からなる駆動部と、前記可動枠が前記固定枠に対して所定値を超えて移動したことを検出する過負荷検出器と、前記駆動チェーンに所定距離を隔てて取り付けられ、地上側に設置された送信機からのリクエスト信号に応じて、IDナンバ及び前記駆動チェーンの張力の大きさに対応する張力データを発信する、複数の張力発信機と、該張力発信機からの電波を同時に受信可能なように地上側に配設された3個以上の受信機と、該受信機が受信した電波強度から3点測量法により前記張力発信機の位置を演算する位置演算装置と、前記過負荷検出器により前記駆動チェーンの過負荷状態を検出して前記コンベア制御装置が前記チェーンコンベアを停止させた際に、前記過負荷状態における前記張力発信機からの張力データにより前後方向に隣り合う張力発信機の位置の前記駆動チェーンの張力差を演算し、この演算値が通常運転状態における前記張力差よりも大きい、前記隣り合う張力発信機の位置を示す管理コンピュータとを備えたので、過負荷状態を検出してチェーンコンベアを停止させた際に、前後方向に隣り合う張力発信機の位置の駆動チェーンの張力差が通常状態の張力差よりも大きい、前記隣り合う張力発信機の位置の間に過負荷状態の原因となっている箇所が存在することがわかるとともに、位置演算装置による3点測量法に基づく演算により張力発信機の位置を容易に求めることができる。
よって、過負荷状態を検出してチェーンコンベアを停止させた際に、管理コンピュータが過負荷状態の原因となっている箇所の前後の張力発信機の位置を表示することにより、過負荷状態の原因となっている箇所を比較的容易に割り出すことができるため、コンベアの停止時間を短縮して生産性を向上することができる。
【0010】
また、本発明に係るチェーンコンベアの過負荷位置割出しシステムによれば、コンベア制御装置により駆動制御され、過負荷状態を検出してチェーンコンベアを停止させた際に、過負荷状態の原因となっている箇所を割り出す、チェーンコンベアの過負荷位置割出しシステムであって、地上側に固定された固定枠、該固定枠に対して前後方向に移動可能に支持された可動枠、該可動枠により支持された、駆動チェーンに係合して駆動力を付与する駆動装置、並びに、前記固定枠及び可動枠間に設けられた、負荷に応じて移動する前記可動枠を受け止める弾性支持手段からなる駆動部と、前記可動枠が前記固定枠に対して所定値を超えて移動したことを検出する過負荷検出器と、前記駆動チェーンに所定距離を隔てて取り付けられ、地上側に設置された送信機からのリクエスト信号に応じて、IDナンバ及び前記駆動チェーンの張力の大きさに対応する張力データを発信する、複数の張力発信機と、該張力発信機からの電波を受信する地上側に配設された受信機と、前記駆動部の駆動装置に取り付けられたパルス発信機と、前記駆動チェーンに取り付けられた原点ドッグと、地上側の所定箇所に設置された、前記原点ドッグの通過を検出する原点検出器と、前記過負荷検出器により前記駆動チェーンの過負荷状態を検出して前記コンベア制御装置が前記チェーンコンベアを停止させた際における前記パルス発信機のパルス数及び前記張力発信機の前記原点ドッグからのパルス数から前記張力発信機の位置を演算するとともに、前記過負荷状態における前記張力発信機からの張力データにより前後方向に隣り合う張力発信機の位置の前記駆動チェーンの張力差を演算し、この演算値が通常運転状態における前記張力差よりも大きい、前記隣り合う張力発信機の位置を示す管理コンピュータとを備えたので、過負荷状態を検出してチェーンコンベアを停止させた際に、前後方向に隣り合う張力発信機の位置の駆動チェーンの張力差が通常状態の張力差よりも大きい、前記隣り合う張力発信機の位置の間に過負荷状態の原因となっている箇所が存在することがわかるとともに、パルス発信機のパルス数及び張力発信機の原点ドッグからのパルス数から張力発信機の位置を容易に求めることができる。
よって、過負荷状態を検出してチェーンコンベアを停止させた際に、管理コンピュータが過負荷状態の原因となっている箇所の前後の張力発信機の位置を表示することにより、過負荷状態の原因となっている箇所を比較的容易に割り出すことができるため、コンベアの停止時間を短縮して生産性を向上することができる。
その上、3点測量法により張力発信機の位置を求める構成ではないことから、受信機の数が3個以上でなくてもよく、したがって受信機の数を減らすことができるとともに、位置演算装置のハードウェア及び3点測量法の演算ソフトウェア等が不要になるため、コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。本明細書において、搬送キャリア9に駆動力を付与する駆動チェーンであるパワーチェーン3の移動方向(図中矢印F参照。)側を前とし、左右は前方に向かっていうものとする。
なお、以下の実施の形態においては、チェーンコンベア1の例として、オーバーヘッドコンベアについて説明するが、チェーンコンベア1はフロアコンベアであってもよい。
【0012】
実施の形態1.
図1〜図5は、本発明の実施の形態1に係るチェーンコンベア1の過負荷位置割出しシステムの構成を示す概略図であり、図1は全体構成図、図2は張力発信機S1及び搬送キャリアまわり9の要部拡大図、図3は張力発信機S1の構成を示すブロック図、図4は3点測量法の説明図、図5は張力発信機S1,S2,…の位置のパワーチェーン3の張力と駆動部10からの距離との関係を示す図であり、図5(a)は通常運転状態の例を、図5(b)は過負荷によりチェーンコンベア1を停止させた状態の例を示している。また、図1におけるパワーチェーン3の経路は平面図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、いわゆるパワーアンドフリー式オーバーヘッドコンベアであるチェーンコンベア1は、搬送経路に沿って、その上下にパワーレール2及びフリーレール6が設置されており、パワーレール2に係合するパワートロリ4,…により駆動チェーンであるパワーチェーン3が支持され、フリーレール6に係合するフリートロリ7,…により搬送キャリア9が支持される。
また、近接しているパワートロリ4,4間のパワーレール3には、左右方向軸まわりに揺動する駆動ドッグ5が取り付けられ、先端のフリートロリ7には駆動ドッグ5に係合する被駆動ドッグ8が形成される。
【0014】
次に、駆動部10の構成例について説明する。
駆動部10は、地上側に固定された固定枠11、固定枠11に対して前後方向に移動可能に支持された可動枠12、可動枠12により支持された、パワーチェーン3に係合して駆動力を付与する駆動装置である、キャタピラーチェーン13及びキャタピラーチェーン13を駆動する回転駆動装置である例えばブレーキを備えたギヤドモータ、並びに、固定枠11及び可動枠12間に設けられた、負荷に応じて移動する可動枠12を受け止める弾性支持手段である圧縮コイルばね14等からなり、前記回転駆動装置により駆動されるキャタピラーチェーン13がパワーチェーン3に係合するため、該パワーチェーン3は搬送方向(図中矢印F参照。)へ駆動される。
よって、被駆動ドッグ8が駆動ドッグ5に係合した状態の搬送キャリア9は、パワーチェーン3により牽引されて搬送方向へ移動する。
【0015】
また、駆動部10には、可動枠12が固定枠11に対して所定値を超えて移動したことを検出する過負荷検出器である、図示しない例えばリミットスイッチや変位センサ等が取り付けられているため、過負荷検出器により過負荷状態を検出した際には、チェーンコンベア1はコンベア制御装置20の指令により停止する。
なお、駆動部10は図1に示すようないわゆるキャタピラードライブ(キャタピラーチェーン駆動機構)ではなく、可動枠12上に設けられた、パワーチェーン3に係合する駆動スプロケットを回転駆動装置により駆動する、いわゆるスプロケットドライブであってもよい。
【0016】
図1に示すように、パワーチェーン3には、その前後方向に所定距離を隔てて(図1に示す例では等間隔に)、張力発信機S1,S2,…,S7が取り付けられており、張力発信機S1,S2,…,S7は、地上側に設置された送受信機TRからのリクエスト信号に応じて、IDナンバ及びパワーチェーン3の張力の大きさに対応する張力データを発信する。
また、地上側には、張力発信機S1,S2,…,S7からの電波を同時に受信可能な3個の受信機(3個以上であってもよい。)である送受信機TR及び受信機R1,R2が配設され、送受信機TR及び受信機R1,R2により受信したデータは、LAN(Local Area Network)15を経由して、詳細は後述する位置演算装置16及び管理コンピュータ17に送られる。
なお、送受信機TRは、送信機と受信機とが別体であってもよい。また、張力発信機S1,S2,…,S7は、7個に限定されるものではなく、2個以上であればよいが、これらの個数を多くして前後の張力発信機の間隔を狭くすればする程、後述する過負荷割出しシステムによる過負荷状態の原因となっている箇所の割出し精度が向上する。
【0017】
次に、張力発信機S1,S2,…,S7の構成例について説明する。
図2及び図3に示すように、張力発信機S1(他の張力発信機S2,…,S7も同様の構成である。)は、センターリンク3A及びサイドリンク3B,3Bを交互に連結した構成であるパワーチェーン3の前後に隣接するセンターリンク3A,3Aにそれぞれ取り付けられた、張力検出部である引張型ロードセル21及び演算・発信部22をケーブル23により接続したものである。
ここで、演算・発信部22は、データを無線で発信するための発信回路22C、引張型ロードセル21の出力信号を処理するとともに、この出力信号に基づくパワーチェーン3の張力の大きさに対応する張力データ及びIDナンバを発信回路22Cから発信する制御等を行う演算装置22A並びに電力供給用の電池22Bからなる。
【0018】
次に、3点測量法について説明する。
駆動部10の過負荷検出器が過負荷を検出してコンベア制御装置20がチェーンコンベア1を停止させた状態において、送受信機TRから一定周期で送信されたリクエスト信号又は過負荷発生に対応して送信されたリクエスト信号により、例えば張力発信機S1から前記張力データ及びIDナンバが発信されるが、図4に示すように3個の受信機TR,R1,R2により受信した張力発信機S1の電波強度から、位置演算装置16により、広く知られている3点測量法の演算ソフトウェアを用いて水平面(X−Y平面)内における張力発信機S1の位置を演算して求めることができる。
【0019】
次に、過負荷状態の原因となっている箇所の割出しについて説明する。
駆動部10の過負荷検出器が過負荷を検出せずにチェーンコンベア1が通常運転をしている場合において、パワーチェーン3(張力発信機S1,S2,…,S7)が図1に示す位置であったとすると、この場合における駆動部出口OUTから、張力発信機S7の位置、張力発信機S6の位置ないし張力発信機S1の位置、駆動部入口INまでの距離を横軸にとって、張力発信機S1,S2,…,S7により検出したチェーン張力を縦軸にプロットすると、図5(a)のようになる。
すなわち、このような通常運転状態では、張力発信機S1,S2,…,S7はパワーチェーン3に等間隔に取り付けられているため、前後方向に隣り合う張力発信機の位置のパワーチェーン3の張力差TN、例えば、[(張力発信機S1の位置の張力)−(張力発信機S2の位置の張力)],[(張力発信機S2の位置の張力)−(張力発信機S3の位置の張力)],…,[(張力発信機S6の位置の張力)−(張力発信機S7の位置の張力)]は一定になる。
【0020】
これに対して、過負荷発生箇所Aがあることにより駆動部10の過負荷検出器が過負荷を検出してコンベア制御装置20がチェーンコンベア1を停止させた場合において、パワーチェーン3(張力発信機S1,S2,…,S7)が図1に示す位置であったとすると、この場合における駆動部出口OUTから、その下流側に向かって、張力発信機S7の位置ないし張力発信機S1の位置、駆動部入口INまでの距離を横軸にとって、張力発信機S1,S2,…,S7により検出したチェーン張力を縦軸にプロットすると、図5(b)のようになる。
すなわち、過負荷発生箇所Aがあることから、チェーンコンベア1の停止時において過負荷発生箇所Aの上流側でかつ駆動部10よりも下流側にある張力発信機S3の位置ないし張力発信機S7の位置及び駆動部出口OUTのパワーチェーン3の張力は零になる。
【0021】
このように、過負荷発生箇所Aを挟んで前後に位置する張力発信機S2,S3の位置の張力差TS、すなわち[(張力発信機S2の位置の張力)−(張力発信機S3の位置の張力)]は、前記通常運転状態における張力差TNよりも大きくなる。
したがって、過負荷状態を検出してチェーンコンベア1を停止させた際に、前後方向に隣り合う張力発信機の位置のパワーチェーン3の張力差が通常状態の張力差TNよりも大きい、前記隣り合う張力発信機(例えばS2,S3)の位置の間に過負荷状態の原因となっている箇所(例えばA)が存在することがわかるとともに、位置演算装置16による3点測量法に基づく演算により張力発信機(例えばS2,S3)の水平面内における位置を容易に求めることができる。
【0022】
よって、過負荷状態を検出してチェーンコンベア1を停止させた際に、管理コンピュータ17が、例えばそのモニタ上に、過負荷状態の原因となっている箇所(例えばA)の前後の張力発信機(例えばS2,S3)の位置を表示することにより、過負荷状態の原因となっている箇所(例えばA)を比較的容易に割り出すことができるため、チェーンコンベア1の停止時間を短縮して生産性を向上することができる。
なお、パワーチェーン3における張力発信機S1,S2,…,S7の取付位置は不変であるため、前述の3点測量法により前記隣り合う張力発信機(例えばS2,S3)の一方の位置を演算することにより、他方の位置は管理コンピュータ17が演算して求めてもよい。
【0023】
実施の形態2.
図6〜図9は、本発明の実施の形態2に係るチェーンコンベア1の過負荷位置割出しシステムの構成を示す概略図であり、図6は全体構成図、図7は張力発信機S1,S2,…の原点からのパルス数と張力発信機S1,S2,…の現在位置を示すパルス数との関係を示す図、図8は過負荷によりチェーンコンベア1を停止させた状態の例を示す説明図、図9(a)は同状態における張力発信機S1,S2,…の現在位置とチェーン張力との関係を示す図であり、図9(b)は同状態における張力発信機S1,S2,…の位置のパワーチェーン3の張力と駆動部10からの距離との関係を示す図であり、実施の形態1の図1〜図5と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0024】
図6に示す張力発信機S1,S2,…,S7は、実施の形態1と同様に、地上側に設置された送受信機TRからのリクエスト信号に応じて、IDナンバ及びパワーチェーン3の張力の大きさに対応する張力データを発信するものであり、実施の形態2における受信機は送受信機TRのみである。
張力発信機S1,S2,…,S7から発信され送受信機TRが受信したデータは、LAN15を経由して、詳細は後述する管理コンピュータ17に送られる。
なお、送受信機TRは、送信機と受信機とが別体であってもよい。
【0025】
駆動チェーンであるパワーチェーン3には、その任意の1箇所(本実施の形態では張力発信機S5と張力発信機S6との間)に原点ドッグ18Aが取り付けられており、地上側の所定箇所には、原点ドッグ18Aの通過を検出する原点検出器である例えばリミットスイッチ18Bが設置される。
また、駆動部10の駆動装置(例えばキャタピラーチェーン13を駆動する回転駆動装置)にはパルス発信機19が取り付けられており、リミットスイッチ18Bが原点ドッグ18Aの通過を検出してオンした際に、パルス発信機19のパルスカウントは、カウントエラーの累積を防止するために、零にされる。
ここで、パルス発信機19とリミットスイッチ18Bは、コンベア制御装置20又は管理コンピュータ17に接続される。
【0026】
なお、本実施の形態では、パワーチェーン3の一周を2800パルスとしており、図7に示すように、張力発信機S5,S4,…,S1,S7,S8の原点ドッグ18Aからのパルス数は、200,600,…,1800,2200,2600であり、これら張力発信機の、原点検出器であるリミットスイッチ18Bからのパルス数である現在位置は、パルス発信機19の現在パルス数と上記原点ドッグ18Aからのパルス数との和(2800を超えた場合は2800を引いたもの。)となる。
【0027】
次に、図8に示すように過負荷発生箇所Bが張力発信機S1と張力発信機S2との間にあり、駆動部10の過負荷検出器により過負荷状態を検出してコンベア制御装置20がチェーンコンベア1を停止させた状態の例について説明する。
図8に示す状態でチェーンコンベア1が停止し、このときのパルス発信機19の現在パルスが1600パルスであったとすると、張力発信機S1,S2,…,S7の前記現在位置は、図7により求めることができる。
すなわち、張力発信機S1の前記現在位置は、1600+1800−2800=600パルス、張力発信機S2の前記現在位置は、1600+1400−2800=200パルス、張力発信機S3の前記現在位置は、1600+1000=2600パルス、張力発信機S4の前記現在位置は、1600+600=2200パルス、張力発信機S5の前記現在位置は、1600+200=1800パルス、張力発信機S6の前記現在位置は、1600+2600−2800=1400パルス、張力発信機S7の前記現在位置は、1600+2200−2800=1000パルスであり、図9(a)に示す値となる。
【0028】
このような過負荷状態において、送受信機TRからのリクエスト信号に応じて、張力発信機S1,S2,…,S7からIDナンバ及びパワーチェーン3の張力の大きさに対応する張力データが発信されるため、例えば図9(a)のように張力発信機S1,S2,…,S7の位置のパワーチェーン3の張力がわかる。
したがって、この場合における駆動部出口OUTの固定位置である距離(2000パルス)から、その下流側に向かって、張力発信機S4の前記現在位置である距離(2200パルス)ないし張力発信機S5の前記現在位置である距離(1800パルス)、駆動部入口INの固定位置である距離(2000パルス)を横軸にとって、張力発信機S1,S2,…,S7により検出したチェーン張力を縦軸にプロットすると、図9(b)のようになる。
【0029】
すなわち、過負荷発生箇所Bがあることから、チェーンコンベア1の停止時において過負荷発生箇所Bの上流側でかつ駆動部10よりも下流側にある張力発信機S2の位置ないし張力発信機S4の位置及び駆動部出口OUTのパワーチェーン3の張力は零になる。
このように、過負荷発生箇所Bを挟んで前後に位置する張力発信機S1,S2の位置の張力差TS、すなわち[(張力発信機S1の位置の張力)−(張力発信機S2の位置の張力)]は、通常運転状態における張力差TN(実施の形態1の図5(a)参照。)よりも大きくなる。
【0030】
したがって、過負荷状態を検出してチェーンコンベア1を停止させた際に、前後方向に隣り合う張力発信機の位置のパワーチェーン3の張力差が通常状態の張力差TNよりも大きい、前記隣り合う張力発信機(例えばS1,S2)の位置の間に過負荷状態の原因となっている箇所(例えばB)が存在することがわかるとともに、パルス発信機19のパルス数及び張力発信機(例えばS1,S2)の原点ドッグ18Aからのパルス数から張力発信機(例えばS1,S2)の位置を容易に求めることができる。
【0031】
よって、過負荷状態を検出してチェーンコンベア1を停止させた際に、管理コンピュータ17が、例えばそのモニタ上に、過負荷状態の原因となっている箇所(例えばB)の前後の張力発信機(例えばS1,S2)の位置を表示することにより、過負荷状態の原因となっている箇所(例えばB)を比較的容易に割り出すことができるため、チェーンコンベア1の停止時間を短縮して生産性を向上することができる。
その上、実施の形態1のように3点測量法により張力発信機S1,S2,…,S7の位置を求める構成ではないことから、受信機の数が3個以上でなくてもよく、したがって受信機の数を減らすことができるとともに、位置演算装置16(実施の形態1の図1参照。)のハードウェア及び3点測量法の演算ソフトウェア等が不要になるため、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1に係るチェーンコンベアの過負荷位置割出しシステムの全体構成図である。
【図2】張力発信機及び搬送キャリアまわりの要部拡大図である。
【図3】張力発信機の構成を示すブロック図である。
【図4】3点測量法の説明図である。
【図5】張力発信機の位置のパワーチェーンの張力と駆動部からの距離との関係を示す図であり、(a)は通常運転状態の例を、(b)は過負荷によりチェーンコンベアを停止させた状態の例を示している。
【図6】本発明の実施の形態2に係るチェーンコンベアの過負荷位置割出しシステムの全体構成図である。
【図7】張力発信機の原点からのパルス数と張力発信機の現在位置を示すパルス数との関係を示す図である。
【図8】過負荷によりチェーンコンベアを停止させ状態の例を示す説明図である。
【図9】(a)は過負荷によりチェーンコンベアを停止させ状態における張力発信機の現在位置とチェーン張力との関係を示す図であり、(b)は同状態における張力発信機の位置のパワーチェーンの張力と駆動部からの距離との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
A,B 過負荷発生箇所
R1,R2 受信機
S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7 張力発信機
TR 送受信機
TN 通常の張力差
TS 過負荷時における張力差
1 チェーンコンベア
3 パワーチェーン(駆動チェーン)
10 駆動部
16 位置演算装置
17 管理コンピュータ
18A 原点ドッグ
18B リミットスイッチ(原点検出器)
19 パルス発信機
20 コンベア制御装置
21 ロードセル(張力検出部)
22 演算・発信部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベア制御装置により駆動制御され、過負荷状態を検出してチェーンコンベアを停止させた際に、過負荷状態の原因となっている箇所を割り出す、チェーンコンベアの過負荷位置割出しシステムであって、
地上側に固定された固定枠、該固定枠に対して前後方向に移動可能に支持された可動枠、該可動枠により支持された、駆動チェーンに係合して駆動力を付与する駆動装置、並びに、前記固定枠及び可動枠間に設けられた、負荷に応じて移動する前記可動枠を受け止める弾性支持手段からなる駆動部と、
前記可動枠が前記固定枠に対して所定値を超えて移動したことを検出する過負荷検出器と、
前記駆動チェーンに所定距離を隔てて取り付けられ、地上側に設置された送信機からのリクエスト信号に応じて、IDナンバ及び前記駆動チェーンの張力の大きさに対応する張力データを発信する、複数の張力発信機と、
該張力発信機からの電波を同時に受信可能なように地上側に配設された3個以上の受信機と、
該受信機が受信した電波強度から3点測量法により前記張力発信機の位置を演算する位置演算装置と、
前記過負荷検出器により前記駆動チェーンの過負荷状態を検出して前記コンベア制御装置が前記チェーンコンベアを停止させた際に、前記過負荷状態における前記張力発信機からの張力データにより前後方向に隣り合う張力発信機の位置の前記駆動チェーンの張力差を演算し、この演算値が通常運転状態における前記張力差よりも大きい、前記隣り合う張力発信機の位置を示す管理コンピュータと、
を備えたことを特徴とするチェーンコンベアの過負荷位置割出しシステム。
【請求項2】
コンベア制御装置により駆動制御され、過負荷状態を検出してチェーンコンベアを停止させた際に、過負荷状態の原因となっている箇所を割り出す、チェーンコンベアの過負荷位置割出しシステムであって、
地上側に固定された固定枠、該固定枠に対して前後方向に移動可能に支持された可動枠、該可動枠により支持された、駆動チェーンに係合して駆動力を付与する駆動装置、並びに、前記固定枠及び可動枠間に設けられた、負荷に応じて移動する前記可動枠を受け止める弾性支持手段からなる駆動部と、
前記可動枠が前記固定枠に対して所定値を超えて移動したことを検出する過負荷検出器と、
前記駆動チェーンに所定距離を隔てて取り付けられ、地上側に設置された送信機からのリクエスト信号に応じて、IDナンバ及び前記駆動チェーンの張力の大きさに対応する張力データを発信する、複数の張力発信機と、
該張力発信機からの電波を受信する地上側に配設された受信機と、
前記駆動部の駆動装置に取り付けられたパルス発信機と、
前記駆動チェーンに取り付けられた原点ドッグと、
地上側の所定箇所に設置された、前記原点ドッグの通過を検出する原点検出器と、
前記過負荷検出器により前記駆動チェーンの過負荷状態を検出して前記コンベア制御装置が前記チェーンコンベアを停止させた際における前記パルス発信機のパルス数及び前記張力発信機の前記原点ドッグからのパルス数から前記張力発信機の位置を演算するとともに、前記過負荷状態における前記張力発信機からの張力データにより前後方向に隣り合う張力発信機の位置の前記駆動チェーンの張力差を演算し、この演算値が通常運転状態における前記張力差よりも大きい、前記隣り合う張力発信機の位置を示す管理コンピュータと、
を備えたことを特徴とするチェーンコンベアの過負荷位置割出しシステム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−280027(P2009−280027A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132664(P2008−132664)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)