説明

チェーンストークス呼吸症を治療する方法及び装置

患者の気道に呼吸用気体流を供給する装置及び方法。呼吸用気体流供給装置は、呼吸用気体流の変動に基づいて変化する特性を監視し、監視した特性に基づいて患者に供給する気体の目標流量を決定する。チェーンストークス呼吸症又は睡眠障害呼吸事象の治療に十分なレベルに目標流量が設定される。また、呼吸用気体流供給装置は、患者が睡眠障害呼吸事象を体験しているとの決定に基づいて目標流量を変更する。他の実施の形態では、呼吸用気体流供給装置は、Tinspプラス定数として無呼吸検出時間Tapneaを決定し、吸気の開始からの流量がTapneaに到達した場合に機械式誘発呼吸を供給する。更に他の実施の形態では、呼吸用気体流供給装置は、呼吸周期の吸気段階間に特性を監視し、比較結果に基づいて呼吸周期の吸気段階間に気体流を制御する。

【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)の規定により、2004年10月1日に出願された米国特許出願番号第60/615,328号の利益を主張し、その内容を本明細書に組み込むものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、約言すれば、特に、一般に鬱血性心不全を伴うチェーンストークス呼吸症及び他の呼吸疾患の治療に適する陽圧治療の方法及び装置に関連する。
【背景技術】
【0003】
鬱血性心不全(CHF)患者は、通常、閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)又は中枢性無呼吸等の呼吸障害を患う。鬱血性心不全(CHF)患者が睡眠時に頻繁に経験する他の呼吸障害は、チェーンストークス呼吸症(浅い呼吸から次第に深い呼吸となり、再び浅くなって15〜40秒の無呼吸期に移行する周期を比較的規則的に繰り返す周期性呼吸の一種)として公知である。図1は、典型的なチェーンストークス呼吸症(CSR)パターン30を示し、このパターン30は、高呼吸運動(過呼吸)36と低呼吸運動(呼吸低下又は無呼吸)38とを規則的に反復する期間を含み、周期的に呼吸が強くなる期間32と弱くなる期間34とにより特徴付けられる。図1に符号40で全体を示す約1分持続する典型的なチェーンストークス周期は、複数の呼吸周期にわたり患者の最大(ピーク)呼吸流量が増加する逓増変化(矢印A)と、複数の呼吸周期にわたり患者の最大(ピーク)呼吸流量が減少する逓減変化(矢印B)とにより特徴付けられる。通常のチェーンストークス周期は、逓減段階に続く中枢性無呼吸又は呼吸低下で終了する。無呼吸、過呼吸並びに呼吸の深さ及び速度の異常な変化により、頻繁に覚醒を生じかつ睡眠の質が低下する。この睡眠の中断により、動脈中の酸素(PaO2)が周期的に不飽和になると共に、チェーンストークス呼吸症の周期的発生により心臓血管系、即ち心臓にストレスが加えられる。
【0004】
チェーンストークス呼吸症の初期治療法は、患者にテオフィリン、カフェインを投与するか又は1〜3%濃度の二酸化炭素を吸入させて、呼吸運動を刺激することであった。前記治療法は、チェーンストークス呼吸症を一時的に低減する効果を生ずるが、呼吸速度を増加させ、呼吸速度の増加に比例して心臓と呼吸動作に対する負担量が増大する弊害も生ずる。
【0005】
睡眠時無呼吸症の治療に対する最近の研究では、患者の気道に比較的一定の気道陽圧を供給する持続気道陽圧(CPAP)療法が使用される。気道陽圧療法は、閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)等の呼吸障害の治療のみに限られず、鬱血性心不全(CHF)の治療にも使用される。鬱血性心不全(CHF)の治療に使用される持続気道陽圧(CPAP)療法は、心臓を包囲する胸腔内の圧力を上昇させて、心拍出量(心臓が1分間に拍出する血液の量)を増加できる効果がある。
【0006】
2段階(バイレベル)気道陽圧療法は、睡眠時無呼吸症及び関連する呼吸障害の治療法でも進歩した。2段階気道陽圧療法では、高振幅圧力と低振幅圧力とを交互に処方して、比較的高いレベルの圧力と比較的低いレベルの圧力とが交互に患者の気道内に印加される。高振幅処方陽圧レベル及び低振幅処方陽圧レベルは、吸気気道陽圧(IPAP)及び呼気気道陽圧(EPAP)としてそれぞれ公知である。
【0007】
2段階圧力療法を使用して、患者への圧力を支援して、心拍出量の改善を示す事前検査も行われる。呼吸低下領域38にチェーンストークス呼吸症パターンが認められるとき、呼吸圧力を支援して呼吸作用を強化して、チェーンストークス呼吸症を治療できることも判明した。患者自身の呼吸作用が減少し又はないときに、呼吸低下期間に機械式誘発呼吸(機械的に患者に呼吸を開始させる)を行う人工呼吸器又は圧力支援装置を使用して、チェーンストークス呼吸症を治療することは、公知である。流量が過呼吸領域36であるときに、換気効率を低下させることにより、チェーンストークス呼吸症を治療することも公知である。例えば、下記特許文献1は、過呼吸者が紙袋内で呼吸するように指導するのと同様に、過呼吸領域間の再呼吸により患者の換気効果を減少させる技術を開示する。
【0008】
チェーンストークス呼吸症の更に他の治療法は、下記特許文献2に記載される。下記特許文献2では、送風装置(ブロワ)及びマスクを使用して、患者が換気支援される。下記特許文献2が開示する装置は、「瞬間換気値」と称する媒介変数(パラメータ)を決定し、短期間の吸気体積と呼気体積とを測定し、2つの体積の平均値を算出して、この平均値を二分することにより、媒介変数が導き出される。得られる瞬間換気値を使用して、患者の呼吸量の長期平均値、即ち、最後の1〜2分の流量体積の平均値から決定される目標体積と瞬間値とを比較して換気支援レベルが調整される。短期の瞬間換気体積は、理論的にチェーンストークス呼吸症周期の呼吸低下段階での長期目標体積に満たない。その結果、患者の呼吸への換気支援量が増加する。チェーンストークス呼吸症周期の過呼吸段階では、逆の結果が発生する。
【0009】
特許文献2に開示されるチェーンストークス呼吸症の治療法では、多くの場合、過去の呼吸量の平均値が、呼吸低下と無呼吸を十分に治療できる目標体積を生じない難点がある。チェーンストークス呼吸症は、連続的な苦痛を発祥し、重症度レベルに基づいて最後の1〜2分の流量体積の平均値以外の数値に目標体積を調整する必要がある。また、鬱血性心不全患者は、治療を要するある程度の気道閉塞を生ずるが、閉塞性事象もチェーンストークス呼吸症パターンを誘発すると思われるので、鬱血性心不全を治療しなければならない。従って、過去の流量体積の長期平均値に基づいて目標体積を決定する単純な装置では、気道閉塞とチェーンストークス呼吸症との相互作用に対処できない。鬱血性心不全患者のほぼ60%〜80%の周期的脚運動がチェーンストークス呼吸症パターンを発症する疑いのあることも留意すべきである。特許文献2に記載される流量体積算出法は、予測される患者流量及び吸気の開始と終了との検出に僅かな偏倚誤差を生じる傾向がある。
【0010】
下記特許文献3は、他のチェーンストークス呼吸症治療技術を開示する。患者に接続される圧力支援装置の最大流量を監視して、患者がチェーンストークス呼吸症を体験しているか否かを判定するチェーンストークス呼吸症の検出法と治療技術が特許文献3に記載される。特許文献3では、患者がチェーンストークス呼吸症を体験している場合、吸気気道陽圧(IPAP)、呼気気道陽圧(EPAP)又はその両方を増加させて、チェーンストークス呼吸症パターンを治療する。最大流量を決定するとき、流量体積の算出に比べて推定患者流量の誤差の影響は、常に小さいので、測定される流量体積に基づいてチェーンストークス呼吸症を検出するより、最大流量に基づいてチェーンストークス呼吸症を検出する方が信頼性が高いと思われる。
【0011】
特許文献3に開示される可変気道陽圧技術の一実施の形態では、現在の最大流量と目標の最大流量との比較に基づいて、支援圧力レベルを変化させる。圧力支援レベル(PS)は、吸気気道陽圧(IPAP)レベルと呼気気道陽圧(EPAP)レベルとの差である。特許文献3では、新規呼吸PS(k+1)に対する支援圧力を変化させるアルゴリズムは、下式で与えられる。
【0012】
PS(k+1)=PS(k)+Gain*(目標流量-Qpk(k)), (1)
【0013】
ここで、kは、前回呼吸の指数、PS(k)は、前回呼吸の圧力支援レベル、Gainは、流量を圧力に変換する係数、目標流量は、目標最大流量、Qpk(k)は、前回呼吸の最大流量である。
【0014】
特許文献3は、呼吸毎に圧力支援を調整して少なくとも目標最大流量と同じ最大流量とする技術を示す。その結果、支援圧力は、流量が呼吸低下領域のとき増大し、流量が過呼吸領域のときゼロに減少する。圧力支援は、処方する患者の動作に同期される。特許文献3は、中枢性無呼吸時に所定の速度及び期間に行われる機械式誘発呼吸を示す。
【0015】
特許文献3は、圧力支援療法の効果に基づいて目標流量を調整し、圧力支援の介入程度を決定することを更に示す。より詳細には、下記3つの媒介変数が監視される。1)チェーンストークス呼吸症形状指数、2)チェーンストークス呼吸症重症度指数及び3)圧力支援(PS)指数。前記基準値に基づいて、目標最大流量及び/又は呼気気道陽圧(EPAP)レベルが調整される。
【特許文献1】国際公開WO2000/45882号公報
【特許文献2】米国特許第6,532,959号公報
【特許文献3】米国特許第6,753,151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献3は、チェーンストークス呼吸症を治療する強力かつ信頼性の高い技術を示すが、本発明者らは、前記技術に複数の欠陥の存在を認識する。例えば、特許文献3は、圧力支援を決定する際の実流量Qpk(k)と、チェーンストークス呼吸症治療の効果を分析する際の実流量Qpk(k)を監視する。しかしながら、特許文献3に示される装置の計算に誤差を取り込む可能性があるので、この実際の最大流量は、偏差値を含むことがある。また、特許文献3に示される目標流量を選択する技術は、圧力支援の制御による効果を最大化できない。更に、特許文献3は、各呼吸間に圧力を調整して各呼吸間に必要な圧力又は流量を患者に確実に付与するものではなく、その呼吸周期間に過度の圧力又は過剰の流量を患者に供給することを防止するものでもない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って、本発明の目的は、従来のチェーンストークス呼吸症治療技術の欠点を解決するチェーンストークス呼吸症治療に適する圧力支援装置を提供することである。この目的は、呼吸用気体流を発生する気体流量/圧力発生装置と、気体流量/圧力発生装置に連結しかつ患者の気道に呼吸用気体流を搬送する患者回路とを備える圧力支援装置を提供する本発明の一実施の形態により達成される。監視手段を設けて、流量等の呼吸用気体流の変動に基づいて変化する特性が監視される。制御装置は、監視する特性に基づいて、患者に供給される目標流量を決定する。目標流量は、チェーンストークス呼吸症又は睡眠障害呼吸事象を治療するのに十分なレベルに設定される。制御装置は、患者が睡眠障害呼吸事象を体験しているか否かを判定して、この判定に基づいて目標流量を変更する。最後に、制御装置は、目標流量に基づいて気体流量/圧力発生装置を制御する。
【0018】
本発明の別の目的は、従来の圧力支援技術に伴う欠点がなく、患者の気道に加圧された呼吸用気体を供給する方法を提供することである。この目的は、(a)患者回路を通じて呼吸用気体の供給源から患者の気道まで気体流を供給する過程と、(b)呼吸用気体流の変動に基づいて変化する特性を監視する過程と、(c)監視する特性に基づいて患者に供給される目標流量を決定して、チェーンストークス呼吸症又は睡眠障害呼吸事象を治療するのに十分なレベルに目標流量を設定する過程と、(d)患者が睡眠障害呼吸事象を体験しているか否かを判定する過程と、(e)患者が睡眠障害呼吸事象を体験しているとの判定に基づいて目標流量を変更する過程と、(f)目標流量に基づいて呼吸用気体流を制御する過程とを含む方法により達成される。
【0019】
本発明の更に別の目的は、単独で又は前記発明と組み合わせて使用できる最適な方法で機械式誘発呼吸を実施する装置及び方法を提供することである。この技術は、(a)呼吸周期の呼気段階から吸気段階への移行時と、(b)呼吸周期の吸気段階(吸気時間Tinsp)から呼気段階への移行時との間に経過する第1の時間量を監視する過程を含む。無呼吸検出時間Tapneaは、「Tinsp+定数」として決定される。圧力支援装置は、呼吸周期の呼気段階から吸気段階に移行する以後に経過する第2の時間量を監視し、第2の時間量と無呼吸検出時間Tapneaとを比較する。第2の時間量が無呼吸検出時間Tapneaに達するときに、機械式誘発呼吸が実施される。
【0020】
本発明の別の目的は、呼吸周期の吸気段階に患者に供給される圧力を変更できる装置及び方法を提供することにある。例えば、本発明は、流量の変更に伴って変化する特性を監視する過程と、監視された特性に基づいて、目標流量に合致しないときに呼吸用気体流の圧力を増加させる過程又は目標流量を越えるときに呼吸用気体流の圧力を減少させる過程を企図する。
【0021】
参照符号により各図の対応する部分を示す添付図面に関する以下の説明、特許請求の範囲及び本明細書の全構成部分により、本発明の前記目的及び他の目的、特徴及び特性、構造の関連要素の操作法及び機能、部品の組み合わせ並びに製造経済性は、明らかとなろう。しかしながら、図面は、図示及び説明の目的に過ぎず、発明の範囲を制限しないものであることは、明確に理解できよう。別途明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用する用語「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」の単数形は、複数の対象を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
I.装置
図2は、本発明の原理により患者(被験者)54に支援圧力を供給する改善された可変気道陽圧法に適する気道陽圧支援装置50のブロック図を示す。この圧力支援法は、特にチェーンストークス呼吸症の治療に適する。圧力支援装置50は、例えば、従来の持続気道陽圧(CPAP)若しくは2段階式圧力支援装置に使用される送風装置(ブロワ)、ピストン、送風器(ベローズ)、圧縮装置又は何らかの装置である気体流量/圧力発生器52を備え、気体流量/圧力発生器52は、酸素、空気、周辺大気若しくはこれらの混合気体の加圧タンク等の何らかの適切な供給源から矢印Cで全体を示す呼吸用気体を受ける。気体流量/圧力発生器52は、空気、酸素又はこれらの混合気体等の呼吸用気体流を発生して、比較的高い圧力、即ち周辺大気圧より高い圧力及び比較的低い圧力、即ち周辺大気圧にほぼ等しい圧力で呼吸用気体を患者54の気道に供給する。
【0023】
全体を矢印Dで示す気体流量/圧力発生器52からの呼吸用気体の加圧流は、何らかの公知の構造を有する呼吸マスク又は患者界面装置58に供給導管56を通じて供給され、患者54が通常着用し又は患者54に取り付けられる患者界面装置58を通じて患者54の気道に呼吸用気体流が搬送される。供給導管56及び患者界面装置58は、通常、患者回路と総称される。
【0024】
図2に示さないが、本発明は、大気からの1次気体流(矢印C)に混合して又は単独で2次気体流を供給することも企図する。例えば、気体流量/圧力発生器52の上流又は気体流発生器の下流の患者回路若しくは患者界面装置58に、酸素濃縮器又は酸素貯蔵装置(液体又は気体)等の何らかの適切な供給源からの酸素流を供給して、患者54に供給する吸気酸素の比率を制御してもよい。
【0025】
図2に示す圧力支援装置50は、患者54と圧力支援装置50とを接続する供給導管56のみを含む患者回路を表わす単一のアーム装置である。また、圧力支援装置50から排気する気体を換気する矢印Eで示す排気口57が供給導管56に設けられる。供給導管56に加えて又はその代わりに患者界面装置58等の他の位置に排気口57を設けることに留意すべきである。また、圧力支援装置50から気体を排出すべき所望の方法に依存して、多種多様な形態を排気口57に付与できることも理解すべきである。
【0026】
本発明は、患者54に接続される供給導管56と排出導管とを有する2アーム装置を可変気道陽圧支援装置に設けることも企図する。2アーム装置の排出導管は、患者54からの排気気体を搬送し、患者54から遠位端部に排出弁を備える。通常、排出弁を能動的に制御して、呼気終末陽圧(PEEP)として公知の所望のレベルに患者界面装置58内の圧力が維持される。別の方法で密閉された患者界面装置58からの排気気体の流量を制御することにより、これが実現される。
【0027】
本発明の例示的な図示の実施の形態では、患者界面装置58は、鼻/口マスクである。しかしながら、鼻マスク、鼻受けカバー、気管チューブ、気管内挿入管又は気体流連絡機能を有する他のいかなる装置を患者界面装置58に設けてもよいことは理解されよう。また、本発明の目的に対して、用語「患者界面装置」は、加圧された呼吸用気体源を患者54に接続する供給導管56及び他のどのような構造を含んでもよい。
【0028】
種々の部材を患者回路内に設け又は患者回路に連結してもよいことも理解されよう。例えば、細菌濾過器、圧力制御弁、流量調節弁、センサ、メータ、圧力式濾過器、加湿機及び/又は加熱器を患者回路内に設け又は患者回路に取り付けてもよい。また、消音器及び濾過器等の他の部材を気体流量/圧力発生器52の入口及び弁60の出口に設けてもよい。
【0029】
図示の実施の形態では、可変気道陽圧支援装置50は、供給導管56に設けられる弁60により構成される圧力制御装置を備える。弁60は、気体流量/圧力発生器52から患者54に供給される呼吸用気体流の圧力を制御する。本目的に対し、患者54に供給する気体の圧力及び/又は流量を協働して制御する気体流量/圧力発生器52及び弁60を「圧力発生装置」と総称する。
【0030】
本発明は、圧力制御弁と組み合わせて又は単独で送風機の速度を変更する等気体流量/圧力発生器52により患者54に供給する圧力を制御する他の技術も企図することは、明らかである。従って、患者54に供給される呼吸用気体流の圧力を制御する技術の必要に応じて弁60が設けられる。弁60を省略すると、気体流量/圧力発生器52のみが圧力発生装置となり、例えば、気体流量/圧力発生器52のモータ速度を制御して、患者回路内の気体圧力が制御される。
【0031】
圧力支援装置50は、供給導管56を流れる呼吸用気体の流量を測定する流量センサ62を更に備える。図2に示す現行の好適な実施の形態では、最も好適には弁60の下流の供給導管56に流量センサ62が配置される。流量センサ62は、制御装置64に付与される流量信号Qmeasuredを発生し、制御装置64は、流量信号Qmeasuredを使用して、患者54に供給する気体の流量Qpatientを決定する。
【0032】
流量信号Qmeasuredに基づいて患者流量Qpatientを算出する周知の技術は、患者回路の圧力降下と、圧力支援装置50からの公知の漏出、即ち、図2の矢印Eに示すように、患者回路からの気体の意図的に排気と、マスク/患者界面装置58での漏出等圧力支援装置50からの未知の漏出とを考慮する。本発明は、漏出流量Qleakを算出するあらゆる従来の技術を使用したり、流量信号Qmeasuredに基づいて患者流量Qpatientを算出するのに漏出流量Qleakの算定結果を使用することを企図する。前記技術の例は、米国特許第5,148,802号公報、第5,313,937号公報、第5,433,193号公報、第5,632,269号公報、第5,803,065号公報、第6,029,664号公報、第6,539,940号公報、第6,626,175号公報、米国特許出願第10/243,016号及び米国公開第US−2003−0066528号公報に開示され、これらの各内容を本発明への参考文献として本明細書の一部とする。
【0033】
本発明は、患者54の患者流量Qpatientを測定する他の技術も企図する。例えば、患者54で流量を直接測定してもよく、この場合、測定した流量は、患者流量Qpatientに即応するので、流量を推定する必要がない。本発明は、供給導管56に沿う他の部位での流量測定も企図する。
【0034】
更に、本発明は、圧力支援装置50の他の特性に基づいて、推定される患者流量Qpatientを決定することも企図する。例えば、患者回路の流量又は圧力支援装置50内の圧力を維持する各構成装置の動作は、気体流量/圧力発生器52又は弁60等の流量/圧力制御装置の動作に影響を与える。その結果、患者流量Qpatientを直接測定する代わりに、圧力発生器52の動力、トルク及び/又は回転速度又は弁60の位置を監視する等の圧力支援装置50の特性監視を使用することができる。気体流量/圧力発生器52の上流に設けた流量センサ62を使用して、患者流量Qpatientを測定することも公知である。勿論、前記流量測定技術の全ての組み合わせも使用できる。これら後者の場合に、測定した流量又は他の媒介変数に基づく患者流量Qpatientの推算が必要となる。
【0035】
可変気道陽圧支援装置50により使用される種々の媒介変数を設定するのみならず、臨床医又は介護者等の使用者に情報及びデータを表示しかつ出力する入力/出力装置66が設けられる。本発明は、圧力支援装置50が収集する動作情報及びデータを遠隔で監視しかつ遠隔で制御する入力/出力装置66を設けることを企図する。患者54の呼吸特性を監視しかつ後述のように呼吸特性に基づいて呼吸用気体の流量を制御する手順を実施し実行できるマイクロプロセッサを制御装置64に使用することが好ましい。また、制御装置64は、本明細書に記載する技術を実施するのに必要な情報を記憶しかつ一時的に記憶する記憶装置又は記憶装置アレイを備える。制御装置64は、単一の処理装置でもよく又は本明細書に記載する技術の実施に関与して作動する多数の装置(記憶装置、処理装置、処理装置アレイ、論理回路、その他)を備えてもよいことは、理解されよう。
【0036】
II.患者に対する圧力支援
本発明の好適な実施の形態では、制御装置64は、気体流量/圧力発生器52、弁60又はその両方を制御して、患者54の気道に所与の波形を有する圧力を印加させる。本発明の例示的な実施の形態では、圧力波形は、基本的に、吸気気道陽圧(IPAP)レベルと呼気気道陽圧(EPAP)レベルとの間で交互に変動する2段階圧力波形である。2段階圧力波形を図3Aに示す。本発明では、後述のように、制御装置64の命令に基づいて吸気気道陽圧(IPAP)レベルが変更される。最大吸気気道陽圧レベル(IPAPmax)と最小吸気気道陽圧レベル(IPAPmin)を表わす信号は、使用者から入力装置66を通じて制御装置64に送信される。装置操作者による入力媒介変数の代替値又は初期設定値として最大吸気気道陽圧レベルと最小吸気気道陽圧レベルを予め設定し、制御装置64に記憶できることは、理解できよう。本発明は、手動操作で呼気気道陽圧(EPAP)レベルを設定し又は予め設定することも企図する。
【0037】
図3A及び図3Bは、チェーンストークス呼吸症を治療するため、圧力支援装置50により供給できる例示的な圧力波形76及び78を示す。図3A及び図3Bに示すように、患者54は、呼気から吸気に移行する転換時点Fで、吸気を開始して圧力支援装置50を起動し、吸気気道陽圧(IPAP)レベル80に移行する。例えば、米国特許第5,598,838号、第5,927,274号、第6,532,960号及び第6,640,806号公報に開示されるように、転換時点Fから吸気気道陽圧レベルまでの圧力増加又は圧力上昇82の形状及び持続時間は、固定されても可変でもよく、参照することにより、前記米国特許の各内容を本明細書の一部とする。図示の実施の形態では、圧力増加の形状は、指数関数状に変化する。圧力波形の吸気部83の圧力上昇部に対して、ステップ関数又は線形傾斜(線形逓増)等の他の形状の適用を企図することも理解されよう。
【0038】
本発明が圧力波形76の吸気部83に様々な形状を付与できることを企図する点を更に理解すべきである。即ち、米国特許第5,044,362号及び第5,107,830号公報に記載される比例補助換気(PAV(登録商標))若しくは米国特許第5,535,738号、第5,794,615号、第6,105,575号及び第6,609,517号公報(「比例気道陽圧(PPAP)特許」)に記載される比例気道陽圧(PPAP)等の従来の圧力支援技術又は換気技術を使用して、吸気時の圧力Pinspの波形を制御することができるので、参照することにより前記米国特許の各内容を本明細書の一部とする。比例気道陽圧(PPAP)特許では、圧力支援装置50により呼吸周期の吸気段階に出力される吸気圧力Pinspの波形は、下式により決定される。
【0039】
Pinsp=IPAP+Gaininsp*Qpatient, (2)
【0040】
ここで、Gaininspは、介護者により通常選択される利得係数であって、値(1)を含むあらゆる値に設定できる。
【0041】
図3A及び図3Bに示す圧力波形の時点Gは、吸気から呼気への転換点である吸気期間の終期であり、患者54は、時点Gから呼吸周期の呼気段階を開始する。時点Gで、圧力支援装置50は、周期を再開し、呼気気道陽圧レベル84に向けて圧力を低下させる。図3Aに示す実施の形態では、圧力波形76の呼気部Pexhは、従来の2段階圧力支援装置により処方される呼気圧力に相当し、呼気気道陽圧レベル84に達する圧力レベルは、呼吸周期の全呼気段階を通じてほぼ一定となる。
【0042】
圧力波形76の呼気部Pexhに種々の形状を付与すると共に、記比例補助換気(PAV(登録商標))技術及び比例気道陽圧(PPAP)技術等の従来の圧力支援技術又は換気技術を使用して、圧力波形76の呼気部Pexhを制御することを本発明が企図することは、理解されよう。例えば、図3Bは、圧力支援装置50から出力される呼気圧力Pexhの例示的な実施の形態を示し、呼吸周期の呼気段階は、下式により決定される。
【0043】
Pexh=EPAP+Gainexh*Qpatient, (3)
【0044】
ここで、Gainexhは、介護者により通常選択される利得係数であって、値(1)を含むあらゆる値に設定できる。比例気道陽圧(PPAP)特許は、2段階圧力支援装置により供給される呼気圧力を制御するこの技術を開示する。その結果、患者54に供給される圧力は、患者54の呼気間の領域Hで呼気気道陽圧(EPAP)未満に低下し、患者54の快適性が向上する。制御装置64は、流量センサ62から測定流量Qmeasuredを示す信号を受信して、式(2)、(3)又は両方を演算し、吸気圧力Pinspと呼気圧力Pexhのとの両波形を形成する。
【0045】
III.圧力制御技術
制御装置64は、アルゴリズム(演算手順)を実施して、患者54に供給される気体流の圧力を制御する。図4に示すように、アルゴリズムへの第1の入力値は、流量センサ62の出力値(測定流量Qmeasured)である。例えば、100サンプル/秒のサンプリング速度で出力値を採取して、10ミリ秒毎に新たな推定患者流量Qpatientが決定される。前記のように、公知の流量/漏出推定技術を使用して、測定流量Qmeasuredに基き患者流量Qpatientが算出される。勿論、マスクで直接患者流量Qpatientを測定すれば、流量の推定は必要ない。測定流量Qmeasuredが患者54の気道の正確な流量でないことを認識すれば、本発明では、本発明での演算に測定流量Qmeasuredを直接使用することを企図する。
【0046】
患者流量Qpatientの履歴が記憶装置に記憶されて、後記の流量分析が実行される。制御装置64は、リアルタイム(実時間)で媒介変数を算出して、指定範囲(移動窓)での算出結果を蓄積する蓄積装置アレイと、一時的記憶装置とを備える。
【0047】
本発明の一実施の形態では、制御装置64は、患者流量Qpatientを監視して、吸気から呼気に移行する転換点と、呼気から吸気に移行する転換点とを決定する。何らかの適切な技術を使用して、呼気から吸気に移行する転換時点F及び吸気から呼気に移行する転換時点Gを決定できるが、本発明の好適な実施の形態では、流量体積及び圧力波形の両方を使用して、(a)圧力支援装置50を制御して吸気圧力Pinspを発生させると共に、(b)圧力支援装置50を周期動作させて呼気圧力Pexhを発生させる。蓄積された患者吸気体積が閾値レベルを越えるときに、吸気から呼気への流量制御が生じる。この技術の例は、米国特許第5,148,802号、第5,313,937号及び第5,433,193号公報に記載される。波形制御は、患者の呼吸を表わす流量又は圧力等の監視する特性により決定される2つの波形を互いに比較する制御技術を指称する。この技術の例は、米国特許第5,632,269号、第6,029,664号、第6,539,940号及び第6,626,175号公報に記載される。吸気から呼気への周期動作の監視に類似の技術を使用できることは、当業者に理解されよう。
【0048】
本目的に対し、患者54に向かって流れる流量を正流量と考え、患者54から離間して流れる流量を負流量と考えることに留意すべきである。従って、患者流量Qpatientの数値は、患者54の気道で採取される。例えば、患者回路から排出される気体により、患者54から遠位位置で測定する流量Qmeasuredは、正流量側への偏差を含み、偏差は、漏出推算法により除去されることが当業者に理解されよう。
【0049】
図4のフローチャートに示すステップ100では、制御装置64は、患者54の瞬間流量Qpatientを分析し、呼吸周期間に下記2つの基本測定値を発生する。第1の媒介変数を瞬間平均吸気流量Qave(t)と指称する。瞬間平均吸気流量Qave(t)は、サンプル数で除算した一定期間にわたり、その期間中に得られる正の患者吸気流量Qpatientの総量である。患者流量Qpatientの波形102の例を図5に示す。対応する瞬間平均吸気流量Qave(t)の波形104も図5に示す。
【0050】
瞬間平均吸気流量Qave(t)は、呼吸周期の吸気段階中に連続的に算出される。患者流量Qpatientの波形102は、不明瞭な場合が多いため、本発明で実施する演算過程では、患者流量Qpatientを直接使用せずに、瞬間平均吸気流量Qave(t)を使用する。即ち、患者流量Qpatientの波形は、擬似データ及び電気信号中に「ノイズ」に相当する偏差を頻繁に含む。前記偏差の原因は、例えば、センサでのノイズ、患者54の運動又は鼾、気道の閉塞、咳、粘液の増加、患者54の気道の変化若しくはこれらの組み合わせ等の患者54の生理学的事象又は動作に起因する。要するに、瞬間平均吸気流量Qave(t)の算出過程は、患者流量Qpatientを濾波して、前記「ノイズ」を除去する過程を有する。
【0051】
呼吸周期の吸気段階に算出される第2の媒介変数は、一呼吸にわたる呼吸周期の吸気段階での瞬間平均吸気流量Qave(t)の最大値106を表わす最大平均吸気流量Qave(max)である。従って、患者54の呼吸周期間にある所与の一吸気段階中に瞬間平均吸気流量Qave(t)の連続体(積分値)が吸気段階全体にわたり算出され、唯一の最大平均吸気流量Qave(max)のみを検出できることが理解できよう。また、本発明で実施する計算を通じて混入する誤差となる偏差が、除去しない限り患者流量Qpatientに含まれるので、患者流量Qpatientは、患者流量102の最大流量108等の実際の最大流量ではなく、最大平均吸気流量Qave(max)が使用される。
【0052】
各呼吸周期の吸気段階での最大平均吸気流量Qave(max)のレベルは、図4の呼吸測定ステップ100で記憶装置アレイに記憶される。各呼吸毎に最大平均吸気流量Qave(max)を記憶すると共に、最大平均吸気流量Qave(max)の発生時期を特定する時間記録と、患者54に供給される支援圧力レベルの表示とが、記憶装置アレイに記憶される。吸気気道陽圧(IPAP)と呼気気道陽圧(EPAP)との差として支援圧力(PS)が決定される。換言すれば、「PS=IPAP-EPAP」である。後述のように、圧力支援装置50をどのように良好に動作させていれば、チェーンストークス呼吸症及び睡眠障害呼吸事象を治療できるかを決定しかつ必要に応じて圧力支援装置50の媒介変数を調整する他の過程でこの記憶情報が使用される。
【0053】
A.睡眠障害呼吸事象の検出
ステップ110では、患者流量Qpatientを分析して、睡眠障害呼吸事象が検出される。後述のように、睡眠障害呼吸事象の存否により圧力制御過程が変更される。本発明の現行の好適で例示的な実施の形態では、圧力支援装置50は、患者流量Qpatientを監視して、チェーンストークス呼吸症、呼吸低下、無呼吸及び周期性変動呼吸が検出される。本発明は、患者流量Qpatientを監視して、鼾及び気道の閉塞等の不安定な呼吸を示す他の事象の検出も企図する。
【0054】
本発明は、流量センサ62以外からの入力信号を使用するか又は流量センサ62と組み合わされた別の入力信号を使用して、睡眠障害呼吸事象を検出できることを更に企図する。例えば、鼾は、マイクロホンにより検出できる。チェーンストークス呼吸症、呼吸低下、無呼吸及び周期性変動呼吸は、動作検知ベルト及びサーミスタ流量センサ等の他のセンサを使用して、検出することができる。
【0055】
1.チェーンストークス呼吸症の検出
現行の好適かつ例示的な実施の形態のチェーンストークス呼吸症の検出方法を以下説明する。前記のように、本発明は、チェーンストークス呼吸症を監視して、患者54に処方されている圧力療法がチェーンストークス呼吸症の治療に十分であることを確認する。チェーンストークス呼吸症の存在は、圧力療法が当然有効でないことを表す。従って、チェーンストークス呼吸症事象を正確に検出しかつ監視することが重要である。圧力支援装置50の処理装置により動作されるソフトウェアで後述のステップが実行される。後述のチェーンストークス呼吸症検出技術が一例示技術に過ぎないことは、理解されよう。患者54に処方されるチェーンストークス呼吸症治療法による効果を監視するあらゆる適切なチェーンストークス呼吸症検出技術を使用できることは、本発明が企図しかつ当業者に理解されよう。他のチェーンストークス呼吸症検出技術を下記第H章に示す。
【0056】
本発明の例示的なチェーンストークス呼吸症検出技術では、2つの基本測定値としてチェーンストークス呼吸症指数及び流量比を使用して、患者54のチェーンストークス呼吸症の存在及びその重症度が確認される。最新4分間の患者流量Qpatient履歴データを保持しかつ分析して、前記基本測定値が通常決定される。前記基本測定値には、下記の定義が与えられる。チェーンストークス呼吸症指数−患者54の流量パターンがチェーンストークス呼吸症のひな型にどのくらい適合するかの指標である。チェーンストークス呼吸症指数の出力値は、0から100までの数値である。数値100は、患者54からの流量パターンがチェーンストークス呼吸症の症例に完全に適合することを示す。チェーンストークス呼吸症指数は、百分率の単位で表される数値である。流量比−監視時間範囲内での最小呼吸時の最大平均吸気流量Qave(max)と、最大呼吸時の最大平均吸気流量Qave(max)との比率である。流量比の出力値は、0から100までの数値である。数値100は、全呼吸流量が同量であることを示す。流量比は、百分率の単位で表される数値である。
【0057】
未知のパターンが症例型といかに類似するかを決定する数学的手段のコヒーレンス関数に基づいてチェーンストークス呼吸症指数が決定される。本発明では、未知のパターンは、予め記録された最大平均吸気流量Qave(max)の連続数値であり、症例型は、チェーンストークス呼吸症型に相当する選択されるパターンである。百分率で表されるチェーンストークス呼吸症指数は、2つの前記パターンがどれくらい良く一致するか、即ち、最新の数分間に収集した最大平均吸気流量Qave(max)がどれくらいチェーンストークス呼吸症型に一致するかの測定値であり、一致する程、患者54がチェーンストークス呼吸症を体験している可能性が高い。
【0058】
コヒーレンス技術は、第1に、最新の4分間に記憶される最大平均吸気流量Qave(max)の数値を獲得する必要がある。最大平均吸気流量Qave(max)の数値を処理して、ほぼ60秒間継続する持続期間の少なくとも1周期の典型的なチェーンストークス呼吸症型に数値を適合させる。チェーンストークス呼吸症の症例により、最新の2〜5分間の最大平均吸気流量Qave(max)の数値と、その数値に対する時間記録とを記憶装置アレイに記憶する必要がある。規準化された相互相関技術を使用して、最大平均吸気流量Qave(max)の数値と、チェーンストークス呼吸症の症例とを比較して、0〜100%の範囲で変動するチェーンストークス呼吸症指数が算出される。
【0059】
図6Aは、最新の2〜5分間の通常の対象時間間隔に記憶される最大平均吸気流量Qave(max)値120を表示したグラフを示す。最大平均吸気流量Qave(max)値120を処理して、最大平均吸気流量Qave(max)値120の表示から「直流」バイアス成分を除去し、ゼロ交差点124を検出して最大平均吸気流量Qave(max)値120の偏移されたグラフ(図6Bに示すQave(max)'122)を作成できる。
【0060】
本発明の一実施の形態では、最大平均吸気流量Qave(max)値120のグラフに対する最大平均吸気流量Qave(max)の平均値を決定し、平均最大流量データに平均値を記憶させることにより、「直流」バイアス成分を除去できる。現行の好適な実施の形態では、平均値の採取期間は、最新の4分間である。データの各最大平均吸気流量Qave(max)値120から最大平均吸気流量Qave(max)の平均値を減算することにより、最大平均吸気流量Qave(max)値120のデータが下方に移動される。
【0061】
Qave(max)'値122の移動されるデータのゼロ交差点124を決定できれば、直流バイアスを有効に除去し、最大平均吸気流量Qave(max)値120の零軸を適切な位置に配置するあらゆる従来の技術を使用できることは勿論である。
【0062】
2リットル/分(LPM)のヒステリシス(履歴現象)を有する強力な零交差検出法を使用して、最新のQave(max)'値122から開始して時間を遡及させて、Qave(max)'値122の移動されるデータを検索してゼロ交差点124を検出することが好ましい。同一の傾斜を有する初めの3つのゼロ交差点124を使用して、最新の2つのチェーンストークス呼吸症周期126が形成される。ゼロ交差点124を検出すると、時間も記録される。
【0063】
ゼロ交差124の時間記録からチェーンストークス呼吸症周期の期間TCSRが測定される。測定されたチェーンストークス呼吸症期間を使用して、2つのチェーンストークス呼吸症周期の各々をチェーンストークス呼吸症の症例128まで時間圧縮する。時間圧縮したグラフを図6Cに示す。例えば、40〜90秒間のように、範囲外の測定したチェーンストークス呼吸症期間を過度に時間圧縮すると、処理過程は、停止し、チェーンストークス呼吸症指数は、0%に戻される。図6Cの症例128は、チェーンストークス呼吸症の一般的な形状を示す最大流量データである。本発明の例示的な実施の形態では、この目的に対して簡単な三角関数を使用した。しかしながら、チェーンストークス呼吸症の症例128として、更に複雑な関数(複素関数)又は他の関数を使用できることは、理解されよう。時間記録及びQave(max)'値122の変換データを使用して、Qave(max)'値122の変換データを時間圧縮すると、線形補間法を使用するチェーンストークス呼吸症の症例128として、同一のサンプリング速度でQave(max)'値122の移動したデータを作図できる。その結果、Qave(max)''値130の第2のデータ図が作成される。
【0064】
チェーンストークス呼吸症の症例128にQave(max)''値130の第2のデータのサンプルを時間整合させて、離散時間範囲に関連付け、デジタル型サンプルを使用する必要がある。チェーンストークス呼吸症の症例128に対するQave(max)''値130のコヒーレンス関数が演算される。演算結果は、0から100%までの百分率範囲で与えられるチェーンストークス呼吸症指数と呼ばれる。
【0065】
約言すると、最大平均吸気流量Qave(max)値120が発生した時点の時間記録と共に、最大平均吸気流量Qave(max)値120は、記憶装置アレイに記憶される。次に、初めの3つの零交差点124が検出され、初めの2つのチェーンストークス呼吸症周期期間が計算される。最大平均吸気流量Qave(max)値120のデータを再計算しかつ時間圧縮して、チェーンストークス呼吸症の症例128に適合させ、コヒーレンス関数を演算して、チェーンストークス呼吸症指数が算出される。
【0066】
本発明では、最大平均吸気流量Qave(max)に基づくチェーンストークス呼吸症の決定を説明したが、患者流量Qpatientから直接決定される単純な最大値Qpeak(max)を使用して、チェーンストークス呼吸症の決定を本発明が企図することも理解されよう。この過程は、米国特許第6,752,151号に記載され、参照することにより前記米国特許の各内容を本明細書の一部とする。
【0067】
データの時間間隔中の最大の最大平均吸気流量Qave(max)値120に対する最小の最大平均吸気流量Qave(max)値120の比として、最大平均吸気流量Qave(max)値120のデータ(図6Aに示す)から流量比が計算される。サンプル採取時間中に、最大平均吸気流量Qave(max)値120のデータ内に発生する最大平均吸気流量Qave(max)値120の最新の最小値及び最大値又は複数の最小値及び最大値の平均値を使用して、百分率として表される流量比が決定される。流量比は、数学的に下記式(4)により得られる。
【0068】
流量比=(最小のQave(max)/最大のQave(max))*100, (4)
【0069】
ここで、最小のQave(max)値及び最大のQave(max)値は、チェーンストークス呼吸症期間内のQave(max)値の調査により見出される。最小の最大平均吸気流量Qave(max)値120は、チェーンストークス呼吸症型の谷(図1の無呼吸/呼吸低下期間38)を示し、最大の最大平均吸気流量Qave(max)値120は、チェーンストークス呼吸症型のピーク(図1の過呼吸期間36)を示す。従って、流量比は、患者54が患うチェーンストークス呼吸症の重症度に関する指標を示す。通常、50%を超える流量比は、正常と考えられ、50%に満たない流量比は、異常であり、0%の指数は、中枢性無呼吸症の発症を示す。100%の流量比は、記憶装置アレイに記憶されるデータの期間中の全呼吸量が同量であることを示す。
【0070】
チェーンストークス呼吸症指数及び流量比を使用して、これらの数値を閾値レベルと比較することにより、患者54がチェーンストークス呼吸症を体験していると認められるか否かが判定される。本発明の例示的な実施の形態では、チェーンストークス呼吸症指数が75%を超えてかつ流量比が65%に満たなければ、患者54がチェーンストークス呼吸症事象を体験していると認められる。チェーンストークス呼吸症指数及び流量比に対するこれらの閾値は、観測されたデータに基づいて経験的に決定される。チェーンストークス呼吸症事象の所望の検出感度により他の閾値レベルを選択できることは、理解されよう。
【0071】
チェーンストークス呼吸症指数及び流量比を個別に使用して、患者54がチェーンストークス呼吸症事象を体験しているか否かを決定できることも理解されよう。即ち、本発明は、例えば、チェーンストークス呼吸症指数のみを決定し、チェーンストークス呼吸症指数を閾値と比較して、患者54がチェーンストークス呼吸症事象に苦しんでいるか否かを判定することを企図する。
【0072】
反対に、本発明は、患者54がチェーンストークス呼吸症事象を患っているか否かを断定する他の媒介変数を考慮することも企図する。例えば、本発明は、最小の吸気気道陽圧(IPAP)レベル(IPAPmin)から2cmH2O(水柱センチメートル)超える監視範囲にある圧力支援呼吸の百分率として圧力支援指数PSindexを監視することを企図する。この出力値は、0から100までの数値である。数値100は、分析範囲内の全呼吸が最小の吸気気道陽圧(IPAP)レベル(IPAPmin)より2cmH2Oを超える圧力支援呼吸であったことを示す。この数値は、百分率の単位で表される。
【0073】
チェーンストークス呼吸症指数及び流量比とは異なり、圧力支援指数PSindexは、チェーンストークス呼吸症周期に直接関連する媒介変数の測定値ではない。むしろ、チェーンストークス呼吸症周期との闘病を試みる場合に、圧力支援指数PSindexは、圧力支援装置50により患者54に供給されている支援量の測定値、即ち患者54に代わり圧力支援装置50がどの程度介入して患者54の換気を増加するかを示す支援量の測定値である。
【0074】
予め決められた期間にわたる圧力支援指数PSindexは、下式で算出される。
【0075】
PSindex=(#PSthres/#total)*100, (5)
【0076】
ここで、#PSthresは、圧力支援レベルが閾値以上であったときの呼吸数である。本発明の例示的な実施の形態では、この閾値は、「IPAPmin+2cmH2O」である。#totalは、対象期間を通じた呼吸総数である。例示的な実施の形態では、この期間は、最新の4分間である。一度決定した圧力支援指数PSindexを使用して、圧力支援/換気装置が患者54に与える人工呼吸器の支援レベルを測定することが好ましい。圧力支援/換気装置は、この支援レベルを使用して、どの作用が患者54の換気支援を変化させたかを決定できる。
【0077】
2.無呼吸及び呼吸低下の検出
本発明は、無呼吸及び呼吸低下を検出するあらゆる従来の技術を使用することを企図する。最も基本的な検出形態では、無呼吸及び呼吸低下を検出する過程は、患者流量Qpatientを監視して、予め決められた期間閾値レベル未満に流量が減少することを検出する過程を含む。閾値レベル及び予め決められた期間は、無呼吸又は呼吸低下を構成すると認められるレベル、即ち無呼吸又は呼吸低下の定義に該当するレベルである。
【0078】
本発明の現在の好適な実施の形態では、米国公開第US−2003−0111079号公報(特許文献4)により開示される無呼吸及び呼吸低下検出技術がステップ110に使用される。参照することにより特許文献4の内容を本明細書の一部とする。しかしながら、特許文献4に使用される加重最大流量QWpeakの代わりに、本発明は、先行する呼吸の波高値間流量を使用する。
【0079】
3.周期性変動呼吸の検出
この測定により、不規則な最大平均吸気流量Qave(max)が検査される。不規則な最大平均吸気流量Qave(max)が患者54に対して多過ぎると認められると、周期性変動呼吸事象と宣告される。周期性変動呼吸事象は、図4のステップ110での睡眠障害呼吸事象と考えられる。本発明は、周期性変動呼吸事象を宣言する時機を決定するあらゆる従来技術を使用することを企図する。前記技術の例は、可変呼吸制御層を説明する特許文献4に開示される。しかしながら、完全を期すために、この技術を簡単に以下説明する。
【0080】
予め決められた期間にわたり収集される分散する最大平均吸気流量Qave(max)データを統計的に解析し、患者54の応答の不安定な呼吸パターン又は急激変化を検出することにより、不規則な最大平均吸気流量Qave(max)が検出される。より詳細には、本発明の一実施の形態では、経過する時間帯にわたり最大平均吸気流量Qave(max)を監視して、現在の好適な実施の形態の指定範囲は、4分の時間帯である。
【0081】
監視時間帯に収集される最大平均吸気流量Qave(max)データの標準偏差(統計データ値又は確率変数値の分散度を示す数値)が計算される。本発明は、周期性変動呼吸数VB#を下式で算出することにより、最大平均吸気流量Qave(max)データが十分に安定であるか否かを決定することを企図する。
【0082】
VB#=(標準偏差/平均値)*100, (6)
【0083】
ここで、「平均値」は、監視時間帯にわたる最大平均吸気流量Qave(max)値の平均値である。周期性変動呼吸数VB#が高い程、最大平均吸気流量Qave(max)データはより可変となる。
【0084】
本発明の例示的な実施の形態では、周期性変動呼吸数VB#が30%より大きければ、患者54は、周期性変動呼吸を体験していると認められる。この閾値は、観測されたデータに基づいて経験的に決定される。周期性変動呼吸事象の所望の検出感度により他の閾値レベルを選択できることは、理解されよう。
【0085】
B.統計的測定値
図4のアルゴリズムは、ステップ140で統計的関数を使用して、呼吸の最新の数分にわたり患者54に処方された換気レベルが決定される。ステップ140では、最大平均吸気流量Qave(max)に基づき、制御装置64は下記の統計的測定値を算出する。
1)平均値、
2)60百分位数(パーセンタイル)(上位40%)、
3)平均値の95%、
4)標準偏差、及び
5)標準平均値。
【0086】
図7は、4)標準偏差を含み流量値30リットル/分を有しかつ引出線142で示す平均値付近にある最大平均吸気流量Qave(max)値の例示的な正規分布を示す。この例では、引出線144で示すように、平均値の95%は、28.5リットル/分である。引出線146で示すように、データの60百分位は、33.2リットル/分である。標準平均値は、百分率として表される平均値を超える標準偏差の割合である。
【0087】
C.目標流量の決定
図4のステップ150のアルゴリズムは、圧力支援装置50から患者54に供給される吸気気道陽圧(IPAP)の決定に使用される目標流量値を決定する。後述のように、目標流量は、現在の最大平均吸気流量Qave(max)と比較して、吸気気道陽圧(IPAP)を変更すべきか否かを決定する数値である。目標流量は、患者54に供給する吸気気道陽圧(IPAP)を制御して圧力支援装置50が到達すべき最大平均吸気流量Qave(max)値を示す。本発明では、呼吸毎に定期的にかつ通常、目標流量を更新し、患者54に供給される支援圧力を最適化する。目標流量に対して患者54の最大平均吸気流量Qave(max)を監視し、吸気気道陽圧(IPAP)又は吸気圧力Pinspに関連する何らか他の特性を変更して、患者54、特に、患者54が体験しているチェーンストークス呼吸症周期をより良好に治療できるか否かが決定される。
【0088】
現在の好適かつ例示的な実施の形態では、図4のステップ140に対して前記最大平均吸気流量Qave(max)の統計的測定値から目標流量が選択される。即ち、平均値の95%、60百分位又は平均値に基づく数値として目標流量が得られる。前記統計的測定値の中何れを目標流量として選択すべきかの決定は、ステップ110で検出される睡眠障害呼吸事象に基づいて行われる。
【0089】
本発明の一実施の形態では、患者54が安定状態にあるときに、平均値の95%であるべき目標流量が選択され、睡眠障害呼吸事象(チェーンストークス呼吸症、呼吸低下、無呼吸、鼾、その他)の発症時又は標準平均値(周期性変動呼吸)が30%より大きいときに、最大平均吸気流量Qave(max)データ値の60パーセンタイルが目標流量として使用される。睡眠障害呼吸事象の検出と同時に、より高い目標流量数値に移行する。他方、事象の鎮静後2分経過時に、高目標流量から低目標流量に移行され、例えば30秒の設定時間にわたり目標流量に移行される。本発明は、前記移行を他の期間にわたり実施できることも勿論企図する。
【0090】
図8は、目標流量として使用すべき統計的測定値を選択する過程の詳細を示す過程図である。圧力支援装置50を作動する際に、目標流量選択過程は、目標流量を最小値に設定して初期データを収集するステップ200で開始する。本発明の例示的な実施の形態では、目標流量の最小値は、実験的に決定される。本実施の形態では、最小目標流量は、15リットル/分に設定される。しかしながら、患者54が睡眠障害呼吸、気道の閉塞又はその他を体験していると認められるか否か等の監視する患者54の生理的特徴に基づいて、圧力支援装置50により目標流量を設定できることを本発明が企図することは、理解されよう。
【0091】
ステップ202では、(1)収集する最大平均吸気流量Qave(max)データの平均値の95%に相当する数値又は(2)最大平均吸気流量Qave(max)の平均値から固定流速を引いた値に相当する数値の何れか小さい方の値に目標流量が増加される。本発明の例示的な実施の形態では、固定流速は、2リットル/分である。現在の好適かつ例示的な実施の形態では、30秒等のいくつかの呼吸周期にわたる一定期間を通じて直線状又は傾斜状に目標流量が逓増する。目標流量の逓増により、患者54に導入される急激な圧力変動を回避し、患者54の快適性及び治療への適応性を最適化することができる。固定された割合の形態又はパターンで目標流量を変更(傾斜)するので、傾斜は、直線状変化となる。傾斜状の変化を直線状ではなく、非線形率で目標流量を変化させてもよい。例示的な実施の形態では、目標流量は、1呼吸毎に0.5リットル/分の割合で傾斜状に変化する。
【0092】
ステップ204では、(1)最大平均吸気流量Qave(max)データの平均値の95%に相当する数値又は(2)最大平均吸気流量Qave(max)の平均値から固定流速を引いた値に相当する数値の何れか小さい方の値に目標流量値が維持される。本発明の例示的な実施の形態では、2リットル/分であり、目標流量は、最大平均吸気流量Qave(max)の95%又は(最大平均吸気流量Qave(max)の平均値−2リットル/分)の何れか小さい方の値に固定流速が維持される。しかしながら、無呼吸、呼吸低下又は周期性変動呼吸等の睡眠障害呼吸事象を検出すれば、目標流量を60百分位に変化するステップ206に処理過程が移行する。目標流量の増加により、圧力支援装置50が支援圧力を増加すれば、目標流量を変化させない場合よりも、睡眠障害呼吸事象を治療する大きな可能性が生ずる。目標流量は、1分間等の一定時間、このレベルに維持される。その後、処理過程は、ステップ208に移行する。
【0093】
ステップ208では、1)現時点で収集される最大平均吸気流量Qave(max)データの平均値の95%又は2)最大平均吸気流量Qave(max)の平均値から2リットル/分等の固定流速を引いた値の何れか小さい方の値に目標流量が戻される。現在の好適な実施の形態では、複数の呼吸周期にわたる2分間等の一定時間を通じて、1呼吸毎に0.5リットル/分の割合で直線状又は傾斜状に目標流量が変化する。目標流量を非線形比率で変化させてもよい。
【0094】
ステップ210では、圧力支援装置50は、その時点の数値の目標流量を保留状態に保持する。これにより、目標流量の新たな数値に患者54を安定させることができる。これにより、患者54の監視状態に対する本発明の圧力支援装置による過剰補償又は過剰反応を防止することができる。現在の好適な実施の形態では、1.5分間保持状態を持続する。勿論、他の一定時間を使用したり、圧力支援装置50により一定時間を力学的に選択してもよい。1.5分間維持した後に、処理過程は、ステップ202に戻る。
【0095】
ステップ204でチェーンストークス呼吸症事象を検出したとき、目標流量を60百分位に変更するステップ212に処理過程が移行する。30秒等の比較的短い時間、目標流量は、このレベルに維持される。(図8のタイマ1)。30秒の時間帯でチェーンストークス呼吸症事象を検出しないとき、処理過程は、ステップ208に移行する。しかしながら、チェーンストークス呼吸症事象を検出し続ければ、圧力支援装置50は、更に30秒間待機し、その後、チェーンストークス呼吸症事象を更に検出するか否かに無関係に、処理過程は、ステップ206へ進む。(図8のタイマ2)。
【0096】
本発明は、前記特定期間、百分率及び定数に限定されないことは、理解できよう。更に、本発明の原則に従う限り、前記数値に他の数値を使用することができる。前記量も固定する必要はない。代わりに、患者54の監視状態に基づいて、制御装置64は、前記数値を力学的に変更することができる。これを行って、例えば、患者54が現在の治療方式に反応していない場合、より積極的に患者54を治療し又は逆に消極的に患者54を治療することができる。
【0097】
図9A〜図9Dは、前記説明による本発明の圧力支援装置の例示的な動作を示す。より詳細には、図9Aは、患者流量230を示し、図9Bは、患者54に供給される圧力支援流量232を示し、図9Cは、目標流量の波形234であり、図9Dは、チェーンストークス呼吸症事象(低レベル)がなくかつチェーンストークス呼吸症事象(高レベル)を検出したことを示すグラフ236である。前記図に示す波形は、図8のステップ202で目標流量が逓減する圧力支援レベルで治療される患者54を示す点に留意すべきである。
【0098】
最初に、矢印240で示すように、患者54がチェーンストークス呼吸症事象を体験すると、状態変化242で示すように、図9Dが低レベル状態から高レベル状態に変化して、このチェーンストークス呼吸症事象が検出される。チェーンストークス呼吸症事象の検出により、図9Cの矢印244で示すように、目標流量が増加されるが、これは、図8のステップ212により要求される動作である。30秒又は60秒の期間246、目標流量は、この新たなレベルに維持される(図8のステップ212)。その後、目標流量は、時点248で減少し始める(図8のステップ208)。時点248までの期間、比較的積極的に患者54に支援圧力を供給して、検出したチェーンストークス呼吸症を治療できることは、理解できよう。
【0099】
時点248を経過した後、目標流量は、再び低レベルまで逓減し、患者54の流量は、安定し、これは、チェーンストークス呼吸症事象が回復に向かうか又は快癒したことを意味する。矢印250で全体を示す一定期間の経過後、圧力支援装置50は、そこで最早チェーンストークス呼吸症事象でないと認めて、矢印252で示すように、目標流量が低い数値に設定される。チェーンストークス呼吸症事象を患者54が最早患っていないとの判断に応答して、チェーンストークス呼吸症状態も時点254で高レベル状態から低レベル状態に変更される。時点252を経過した後、目標流量は、減少し続け、矢印256で示すように、支援圧力も減少される。
【0100】
D.圧力支援/吸気気道陽圧(IPAP)制御
本発明の圧力支援装置は、3つの主要圧力制御を実施する。換言すれば、本発明は、圧力支援装置50に入力設定できる3つの圧力制御設定値を企図する。設定値の利用を許可された被許可者は、何人でも前記圧力制御設定値を設定することができる。利用を許可された被許可者には、圧力支援装置50の使用者、製造業者、医療装置提供業者、介護者等が含まれる。
【0101】
第1に、圧力支援装置50は、前記のように、患者54に供給する呼気気道陽圧(EPAP)の圧力を設定しかつ/又は呼気圧力Pexhを制御する機能を有する。第2に、最小吸気気道陽圧レベル(IPAPmin)を設定できる。これは、吸気気道陽圧(IPAP)がこれ以上低下しない最低限度の圧力レベルである。第3に、最大吸気気道陽圧レベル(IPAPmax)を設定できる。これは、吸気気道陽圧(IPAP)がこれ以上超過しない最高限度の圧力レベルである。本発明の説明から理解できるように、吸気気道陽圧(IPAP)を変更して、圧力支援装置50により患者54のチェーンストークス呼吸症の治療が行われる。最小吸気気道陽圧レベル(IPAPmin)及び最大吸気気道陽圧レベル(IPAPmax)は、患者54に供給される吸気気道陽圧(IPAP)の操作範囲を定める。前記3つの全圧力制御設定値を同数値に設定して、チェーンストークス呼吸症診断機能を持続気道陽圧療法に与える圧力支援装置50としてもよいことは、理解できよう。即ち、「IPAPmin=IPAPmax=EPAP」となるので、圧力支援装置50は、チェーンストークス呼吸症の患者54を監視できるが、チェーンストークス呼吸症を治療できない。
【0102】
図4に示すように、ステップ250では、患者54に供給される吸気気道陽圧(IPAP)は、1)現在の最大平均吸気流量Qave(max)、2)前回の呼吸間に供給される圧力支援流量、3)ステップ150で決定する目標流量及び4)ゲイン係数に基づいて決定される。前記のように、圧力支援(PS)は、吸気気道陽圧(IPAP)レベルと呼気気道陽圧(EPAP)レベルとの圧力差である。現在の呼吸(k+1)間に患者54に供給される支援圧力(PS)を決定するアルゴリズムは、以下の通りである。
【0103】
PS(k+1)=PS(k)+Gain*(目標流量-Qave(max)(k)), (7)
【0104】
ここで、kは、最新の呼吸指数、PS(k)は、前回の呼吸間に供給される支援圧力、Gainは、流量を圧力に変換する係数、目標流量は、前記のように決定され、Qave(max)(k)は、前回の呼吸の最大平均吸気流量Qave(max)である。
【0105】
自発呼吸に使用する係数Gainは、最大平均吸気流量にわたる支援圧力(PS)の割合の30回呼吸平均値である。より詳細には、係数Gainの決定は、30回呼吸期間にわたる各呼吸での支援圧力と最大平均吸気流量との比「PS/Qave(max)」を決定する過程を含む。蓄積された前記比の平均値は、式(7)の係数Gainとして決定されかつ使用される。最新の呼吸は、30回呼吸期間内にあると認められ、最古の比は、この時間帯から外れるので、呼吸毎に新たな比として係数Gainが更新されることは、理解できよう。30回呼吸以外の数で「PS/Qave(max)」比を蓄積する時間帯でもよいことを本発明が企図する点に留意すべきである。しかしながら、この範囲の呼吸数は、信頼性のあるデータを形成するのに十分な量であるが、例えば、患者54が睡眠中に転動し又は異なる睡眠段階に移行して、患者54の呼吸パターンが広範囲に変化するのに圧力支援装置50が適時応答できる少ない呼吸数とすることが好ましい。
【0106】
自発開始呼吸、即ち、患者54が自分で開始する呼吸と、機械式誘発呼吸とに対して、30回呼吸時間帯にわたる「PS/Qave(max)」比は、個別に決定される。後述のように、機械式誘発呼吸は、患者動作が少なく又はなくても患者54に供給される呼吸である。予め決められた期間内に患者54が自発で呼吸しないとき、自動補助呼吸供給装置に基づいて機械式誘発呼吸が供給される。従って、自発的に誘起される呼吸のみに関連する比を含む30回呼吸時間帯もあれば、機械式誘発呼吸の供給を維持する別の30回呼吸時間帯もあることを理解できよう。自発呼吸データは、患者54の筋力負担を含むが、機械式誘発呼吸データは、筋力負担を含まずに、30回呼吸が実施される。
【0107】
図4に示す処理過程は、各呼吸時に圧力支援装置50が予め演算する計算を示す。図10は、図4の処理過程により決定する計算値を使用して、各呼吸時に実施する圧力/流量制御過程を示す。図10のステップ300では、制御装置64は、最初に呼吸周期の吸気段階にあるか否かを判定する。前記のように、吸気と呼気とを区別するあらゆる従来技術を使用して、呼気段階が判定される。本発明の例示的な実施の形態では、患者54が吸気状態にあるときは常にフラッグが設定である。
【0108】
患者54が呼吸周期の吸気段階にある場合、処理過程が経路302に沿って進み、制御装置64は、気体流量/圧力発生器52を作動させて、図4のステップ250で算出される吸気気道陽圧(IPAP)に基づく吸気圧力Pinspを患者54に供給し始める。その後、処理過程は、ステップ304及び306に進み、呼吸周期間又は呼吸周期範囲内で患者54に供給される圧力が制御される。図11〜図13についてステップ304で実行する処理過程を下記第E章で説明し、図14及び図15についてステップ306で実行する処理過程を下記第F章で説明する。ステップ304及び306で内部呼吸圧力増加及び圧力制御技術をその処理周期で実行した後、経路308に沿ってステップ300に戻り、処理過程が反復される。
【0109】
現段階で患者54がステップ300の呼吸周期の吸気段階になければ、処理過程は、ステップ310に進む。ステップ310では、制御装置64は、患者54が吸気周期を今始めたか否か、即ち、自発吸気の有無又は圧力支援装置50が呼吸を引き継ぎ、機械式誘発呼吸を供給したか否かを決定する。患者54が自発呼吸を開始したか否かの判断は、あらゆる従来の技術を使用して達成することができる。フラッグ又は他の表示を設けて、圧力支援装置50により、前記2つの異なる選択肢を区別させることが好ましい。
【0110】
ステップ310で患者54が呼気段階から吸気段階に自然発生的に圧力支援装置50を開始させたと認められるとき、圧力支援装置50は、前記吸気圧力データPinsp、即ち、図4のステップ250で算出される吸気気道陽圧(IPAP)統計に基づいて、吸気気道陽圧(IPAP)として吸気圧力を供給し始める。処理過程は、再び経路302に沿ってステップ304及び306に進む。
【0111】
自発呼吸が開始されなかったとステップ310で判定したとき、処理過程は、ステップ312に進む。ステップ312では、圧力支援装置50は、閾値期間Tapneaを決定し、これを使用して、機械式誘発呼吸を供給するか否かを決定する。閾値期間Tapneaは、患者54が自発吸気を開始するまでの圧力支援装置50の待機期間である。自発吸気を事前に検出しないとき、圧力支援装置50は、閾値期間Tapneaの終期に患者54に機械式誘発呼吸を供給する。図16及び図17A〜図17Cについて閾値期間Tapneaを設定する処理過程を下記第G章で説明する。
【0112】
ステップ314では、圧力支援装置50は、呼気から吸気に最後に移行した時点(自発呼吸又は機械式誘発呼吸に拘らず)即ち、最新の開始時に始動したタイマの出力と閾値期間Tapneaとを比較する。タイマの計数する時間が閾値期間Tapneaをまだ経過しないとき、圧力支援装置50は、経路308を通じてステップ300に戻る。他方、最新の開始時点からタイマの計数する時間が閾値期間Tapneaを経過したとき、圧力支援装置50は、ステップ316で機械式誘発呼吸を供給し、処理過程は、ステップ304及び306に続く。図4〜図14について本明細書で説明するように機械式誘発呼吸で供給される支援圧力が決定される。
【0113】
E.内部呼吸吸気気道陽圧(IPAP)増加
患者54に十分な換気(圧力支援)を確実に供給する本発明での処理過程を説明する。図10のステップ304で実施されるこの処理過程を図11〜図13に詳細を示す。自発開始呼吸及び機械式誘発呼吸を含む全呼吸に対し、圧力支援装置50は、図11に示す内部呼吸圧力制御過程を実行する。この過程の目標は、図4のステップ150で算出される目標流量を各呼吸間に患者54が確実に獲得することにある。呼気気道陽圧(EPAP)から吸気気道陽圧(IPAP)まで瞬時に圧力を増加せずに、時間経過と共に増加する点に留意すべきである。また、本発明の例示的な実施の形態では、通常、上昇時間と称するこの圧力増加変化速度は、使用者により設定される。本発明は、呼気気道陽圧(EPAP)から吸気気道陽圧(IPAP)への移行時の上昇時間及び圧力波形若しくは流量波形の形状又はデータを圧力支援装置50により制御して患者54の快適性を好適に最大化できることも企図する。
【0114】
ステップ400は、これまでに供給された圧力支援の増加が十分か否かを決定する過程である。本目的に対し、現在の供給量と増加速度の下で吸気段階間に圧力支援装置50が供給する支援圧力の増加が瞬間平均吸気流量Qave(t)に合致するか又は目標流量を超過すれば、これまでに供給された支援圧力は、十分であると認められる。第F章で更にこれを詳細に説明する。呼吸に対する支援圧力が十分であると判定されれば、経路402で示すように、この処理過程が反復される。呼吸に対する支援圧力が不十分で、瞬間平均吸気流量Qave(t)に合致し又は目標流量を超過するには、患者54が十分な支援圧力を受けないと決定された場合、処理過程は、ステップ404に進む。
【0115】
ステップ404では、圧力支援装置50は、患者54がどれほど長く吸気段階であったかを決定する。患者54がどれほど長く吸気段階であったかを判定することは、前回の呼吸周期の吸気段階からの平均吸気時間Tinsp(ave)を決定する過程を含む。本発明の例示的な実施の形態では、5分間の時間帯にわたり平均吸気時間Tinsp(ave)を測定し、吸気周期に値する最新の5分間にわたる吸気期間を平均化して、平均吸気時間Tinsp(ave)を算出する。圧力支援装置50は、半平均吸気時間「Tinsp(ave)/2」に相当する数値も算出する。
【0116】
図11の経路406及びブロック408並びに図13の符号417で示すように、「Tinsp(ave)/2」より100ミリ秒(ms)前の時点415で開始する期間412に患者54があるとき、圧力支援装置50は、流量データ、即ち、瞬間平均吸気流量Qave(t)データを収集する。「Tinsp(ave)/2」として数学的に期間412の終期を表すことができる。後述のように、期間412間(「Tinsp(ave)/2-100ミリ秒」から「Tinsp(ave)/2」までの時間)に収集されるデータを使用して、患者54に目標流量を確実に供給するのに圧力/流量の増加が必要であるか否かが決定される。
【0117】
期間412のデータ収集過程408間に、マイクロプロセッサの各過程周期間に決定される瞬間平均吸気流量Qave(t)は、呼吸周期間に図4から算出される目標流量と比較される。各過程周期間の前記比較に基づいて誤差信号(エラー)が作成され、期間412間に平均誤差信号が生成される。この誤差信号は、「誤差=目標流量-Qave(t)」として数学的に表される。患者54に供給される流量が目標流量に到達することを意味すれば、負の平均誤差値は、無視される。しかしながら、正の平均誤差は、目標流量を供給する圧力支援装置50に追加の吸気気道陽圧(IPAP)が必要であることを示唆する。しかしながら、吸気気道陽圧(IPAP)を増加する前に「Tinsp(ave)/2」に相当する時間が経過するまで、圧力支援装置50は、待機する。
【0118】
圧力支援装置50が吸気の開始から「Tinsp(ave)/2」に相当する時間が経過したと判断すれば、必要に応じて、吸気気道陽圧(IPAP)を増加する性能が圧力支援装置50に与えられる。流路416としてこれを図11に示す。平均誤差信号が正の場合、上記第D章「圧力支援/吸気気道陽圧(IPAP)の制御」で説明したように、平均誤差信号は、最大平均吸気流量Qave(max)にわたる支援圧力(PS)の統計的比率「PS/Qave(max)」とステップ418で乗算される。流量換算で表される平均誤差信号を圧力レベルに変換するのに、この計算が必要である。ステップ418で決定される圧力レベルは、患者54に既に供給される支援圧力に加える必要のある付加の吸気気道陽圧(IPAP)の数値に相当する。吸気の開始から「Tinsp(ave)/2」に等しいか又はそれより長い期間が経過した場合、即ち、制御装置64が作動する場合、吸気周期間になれば、この付加の吸気気道陽圧(IPAP)が印加される。この期間は、図13の時点417から開始し、吸気段階の終期に終了する。この追加の吸気気道陽圧(IPAP)の付加を示す図12Aに切欠部420では、第1の圧力波形422から第2の圧力波形424まで圧力が増加する。呼吸周期の吸気段階間の他の全時間での処理手順は、経路410に進み、ステップ400に戻される。
【0119】
F.内部呼吸吸気気道陽圧(IPAP)制御
図10のステップ306で実行する内部呼吸圧力制御技術を図14及び図15A〜図15Cについて以下説明する。図15A及び図15Bは、内部呼吸圧力制御過程間の例示的な圧力波形464及び流量波形466を夫々示す。
【0120】
瞬間平均吸気流量Qave(t)470を各呼吸内で収集して、瞬間平均吸気流量Qave(t)が目標流量472を超過するか否かが予測される。現流量及び増加率に基づいて、瞬間平均吸気流量Qave(t)が目標流量を超過すると決定される場合、吸気気道陽圧(IPAP)最小圧力制御条件を満たすのに必要であれば、支援圧力(PS)は、現数値を超えて単に増加しよう。
【0121】
この内部呼吸圧力制御技術の詳細は、以下の通りである。新たな呼吸の開始後、即ち、呼気から吸気への開始時に、瞬間平均吸気流量Qave(t)は、監視されかつ記憶装置アレイに記憶される。流量データ収集過程をステップ450に示す。50ミリ秒後、50ミリ秒の時間帯にわたる瞬間平均吸気流量Qave(t)の傾きがステップ452で算出され、算出された傾斜を使用して、今後50ミリ秒の瞬間平均吸気流量Qave(t)の次の出力レベルが予測される。時点474と476との間に得られる瞬間平均吸気流量Qave(t)の傾きとして図15Bのグラフに傾斜を示す。瞬間平均吸気流量Qave(t)の今後50ミリ秒の将来予測出力レベルを図15Cの予測出力レベル478として示す。
【0122】
この新たな(予測された)出力レベル478は、ステップ454で現在の目標流量472と比較される。予測する瞬間平均吸気流量Qave(t)が目標流量を超過する場合、即ち、予測する瞬間平均吸気流量Qave(t)が目標流量と交差する場合、上昇時間は、ステップ456で600ミリ秒に変更される。即ち、ステップ456で圧力増加率が変更される。これにより、圧力制御装置の動作を減速して、瞬間平均吸気流量Qave(t)を更に監視し、瞬間平均吸気流量Qave(t)の予測数値を目標流量と比較する。更に、タイマがステップ456で始動される。
【0123】
ステップ458では、制御装置64は、次に予測する瞬間平均吸気流量Qave(t)の出力レベルを目標流量と比較する。本発明の例示的な実施の形態では、上昇速度の増加した後100ミリ秒経過時にこの次の比較が行われる。即ち、ステップ456で始動されるタイマを監視して、100ミリ秒が経過したか否かが決定される。次に予測する瞬間平均吸気流量Qave(t)が目標流量を超過するか又は交差しかつ期間100ミリ秒が経過した場合、制御装置64は、ステップ460で圧力増加を停止し、残る呼吸の間、瞬間平均吸気流量Qave(t)のいかなる更なる分析も実施しない。しかしながら、最小吸気気道陽圧(IPAP)レベルに到達するまで、圧力を増加できるが、半吸気時間に達した後、追加の圧力変化がこの呼吸に印加されない。
【0124】
内部呼吸圧力制御を実行するか否かの決定に使用される種々の媒介変数及び圧力制御に関する媒介変数を前記媒介変数から変更できることは、理解されよう。例えば、時間帯長さは、50ミリ秒以外の数値でもよく、圧力のレベル及び/又は特性を圧力支援装置50により制御し又は予め設定して、目標流量を超過するか否かに応じて他の圧力に変更することもできる。例えば、新規(予測された)出力レベル478が目標流量を超過すると決定される場合、圧力支援装置50は、更なる圧力上昇を中止する代わりに、圧力を減少させ、いかなる所望の変化形態及びレベルでこの圧力を減少することもできる。更に、新規(予測された)出力レベルの目標流量超過度により、圧力を変更させることができる。例えば、新規(予測された)出力レベルが目標流量を僅かに超過するに過ぎないとき、圧力を一定に保持してもよい。しかしながら、新規(予測された)出力レベルが目標流量を大きく超過すれば、圧力を減少することができる。
【0125】
G.機械式誘発呼吸
上記のように、チェーンストークス呼吸症は、過呼吸期間36の間に呼吸低下期間又は無呼吸期間38が介在する特徴がある。呼吸低下期間又は無呼吸期間38を図1に示す。呼吸低下期間又は無呼吸期間38の期間中の呼吸期間は、気道閉塞とは認められないので、呼吸低下期間又は無呼吸期間38は、しばしば中枢性無呼吸と呼ばれる。特定の期間内に患者54が自発呼吸を開始しないとき、機械式誘発呼吸を支給するのが本来の機能である。最新の自発呼吸の開始時に特定の期間を計測し始める。新規自発呼吸が開始毎にタイマがリセットされる。圧力支援装置50が制御すべき呼吸速度及び患者54に供給する吸気気道陽圧(IPAP)の期間(吸気時間Tinsp)を特定する圧力支援装置50の設定により呼吸期間又は呼吸速度を制御することもある。
【0126】
機械式誘発呼吸によるこの従来の供給法は、ため息の対処法に問題がある。タイマは、ため息の開始時にリセットされ、通常の呼吸速度に基づいて機械式誘発呼吸が発生する。通常の呼吸期間より長いため息の期間中に、より長く息を患者54に吐出させるべきである。また、ため息に伴う換気量の増加により、患者の呼吸要求が更に遅延し、これも考慮すべきである。
【0127】
本発明は、図10のステップ310〜316について説明した機械式誘発呼吸供給過程の前記無呼吸期間に関連する。前記のように、機械式誘発呼吸の過程では、呼吸周期の呼気段階から吸気段階までの最新の移行時点から経過した時間量が監視される。一定の期間中に自発吸気動作を検出しないとき、圧力支援装置50は、「機械式誘発呼吸」を患者54に自動的に供給して、肺を換気する。現在の好適かつ例示的な実施の形態では、各吸気の開始時に無呼吸検出時間Tapneaの計数が開始される。
【0128】
本発明では、吸気気道陽圧(IPAP)から呼気気道陽圧(EPAP)への移行時にタイマをリセットし、機械式誘発呼吸を発生する前、例えば8秒間患者54による自発呼吸の開始を許容する。これは、機械式誘発呼吸を発生する前、例えば8秒間患者54の呼気を許容することを意味する。このように、患者54のため息は、機械式誘発呼吸の供給に影響を与える。大きな吸気は、呼吸支援の遅延となる。本発明は、100ml未満の自発呼吸を無視する。患者54に換気を供給する観点から見て、通常、チェーンストークス呼吸症に伴う逓減呼吸のうち、些細なものもある。小さい呼吸を無視すると、適切な期間、患者54に機械式誘発呼吸を供給できる。本発明は、患者54の自発呼吸を監視して、最適な呼吸期間及び吸気時間を決定する。
【0129】
呼気の終期を検出して、大部分の呼気流量の終了時にタイマをリセットすることが更に必要条件である。この方法は、有効な場合もあるが、マスクではなく自分の口外に患者54が息を吐出する場合、正確な動作に支障が生ずる。この場合、検出アルゴリズムは、全く呼気を認知せず又は短い呼気を認知する。何れの場合も、時期尚早の呼吸支援を発生する。機械式誘発呼吸の早過ぎる始動は、患者54に煩わしくかつ呼吸を阻害する。
【0130】
図16は、本発明の原理により無呼吸検出時間Tapneaを選択する過程を示し、図17A〜図17Cは、種々の機械式誘発呼吸供給モデルを示す。機械式誘発呼吸を供給すべきか否かを決定する方法を図10のステップ310〜316について既に説明したことに留意すべきである。図16は、図10のステップ312で実行される無呼吸検出時間Tapneaを設定する過程を示す。本目的のために、100ml未満の1回換気量は、1呼吸として計数せず、自発吸気とは認められない。
【0131】
無呼吸検出時間Tapneaを設定する第1の基準は、患者54が機械式誘発呼吸を既に受けたか否かを判定し、既に受けた場合、どれ位受けたかを決定する。このために、図16のステップ500は、先行する呼吸が自発呼吸であったことを意味しても、最初(第1回)の機械式誘発呼吸を患者54が受けているか否か又は患者54が既に4回若しくは3回以下の機械式誘発呼吸を既に受けたか否かを判定する。患者54が前回の呼吸で機械式誘発呼吸を受けなかった場合、処理過程は、ステップ502に移行する。ステップ502では、圧力支援装置50は、何らかの最新の睡眠障害呼吸事象の有無を判定する。図4に示すステップ110の処理過程で捕捉した睡眠障害呼吸事象を想起されたい。
【0132】
本発明の例示的な実施の形態では、圧力支援装置50は、最新の5分内に発生する睡眠障害呼吸事象を最新の事象と考慮する。従って、圧力支援装置50は、ステップ502で何らかの「最新の」睡眠障害呼吸事象があったか否かの決定に、睡眠障害呼吸事象が発生する最新の5分を記憶しかつ監視する。勿論、本発明は、他の期間を使用して、最新の睡眠障害呼吸事象を構成するものを定義することも企図する。圧力支援装置50によりこの期間を自動的に調整してもよい。
【0133】
最新の睡眠障害呼吸事象がなければ、ステップ504で吸気時間Tinspに定数8秒を加えて無呼吸検出時間Tapneaが設定される。即ち、「Tapnea=Tinsp+8秒」である。最新の睡眠障害呼吸事象であった場合、無呼吸検出時間Tapneaは、ステップ506で呼吸周期Tbreathに4秒を加えて設定される。即ち、「Tapnea=Tbreath+4秒」である。本発明は、ステップ504より短い一定時間をステップ506で使用する限り、ステップ504及び506でそれぞれ8秒及び4秒以外の定数を使用できることを企図する。
【0134】
自発呼吸を使用して、平均値呼吸期間及び平均値吸気期間が演算される。最新の睡眠障害呼吸事象がなかったとき、ステップ504で「Tapnea=Tinsp+8秒」を設定して、最初の機械式誘発呼吸を供給する前に呼気を行う患者54に8秒が与えられる。また、現在の自発呼吸の平均吸気期間に基づいて無呼吸検出時間Tapneaを設定するので、機械式誘発呼吸を支給する前に、大きく吸気し呼気する(一息つく)ため息に、より長い時間が患者54に与えられる。睡眠障害呼吸事象が発生するとき、4秒を加えた呼吸周期Tbreathに基づいて、最初の機械式誘発呼吸が実施される。
【0135】
ステップ500で患者54が1回の機械式誘発呼吸を既に受けていても、5回以上の機械式誘発呼吸を受けていない場合、処理過程は、ステップ508に移行する。この状況では、最初の機械式誘発呼吸と以降の機械式誘発呼吸との間の時間(無呼吸検出時間Tapnea)は、4秒を加えた呼吸周期Tbreath「Tapnea=Tbreath+4秒」に設定される。これにより、患者54に自発呼吸を再開する機会が与えられる。
【0136】
図17A〜図17Cは、図16の処理過程により機械開始補助呼吸を供給する種々の変形例モデルを示すグラフで、自発呼吸を黒点棒で示し、機械式誘発呼吸を白抜き棒で示す。図17Aは、如何なる最新の睡眠障害呼吸事象を患わなかった患者54に3回の自発呼吸550を与えた状態を示す。患者54は、期間552の後に自発呼吸をせずに、長い無呼吸を経験するので、「Tinsp+8秒」で決定される無呼吸検出時間Tapneaの終了後に機械式誘発呼吸554が供給される。次の4回目の機械式誘発呼吸を供給する期間は、「Tbreath+4秒」に設定される(図16のステップ508)。この例では、次の4回目の呼吸を供給する無呼吸検出時間Tapnea期間内に、患者54は、自発呼吸を行わない。5回目の機械式誘発呼吸556の後、圧力支援装置50は、最新の睡眠障害呼吸事象の有無を決定する。この場合、最新の睡眠障害呼吸事象が発生しても、5番目の機械式誘発呼吸556の後でも、無呼吸検出時間Tapneaは、「Tbreath+4秒」に設定される(図16のステップ506)。図示の例では、「Tbreath+4秒」で機械開始補助呼吸557の供給が続けられる。
【0137】
図17Bは、4回目の機械式誘発呼吸558後、無呼吸検出時間Tapnea(Tbreath+4秒)の終了前に患者54が自発呼吸560を行う点を除き、図17Aと同様のモデルを開始する。自発呼吸560後、図16のステップ508により、無呼吸検出時間Tapneaは、「Tbreath+4秒」に保持される。次の3回の呼吸560は、無呼吸検出時間Tapnea(Tbreath+4秒)の呼気前に患者54が開始する自発呼吸である。しかしながら、患者54は、3回の呼吸560の最後の呼吸後、無呼吸検出時間Tapneaの呼気前に、自発呼吸を行わず、「Tbreath+4秒」で機械式誘発呼吸562が供給される。
【0138】
図17Cは、患者54が一連の自発呼吸564を行うが、最新の睡眠障害呼吸事象がないため、「Tinsp+8秒」に無呼吸検出時間Tapneaを設定(図16のステップ504)する点を除き、図17Bのモデルと同様である。
【0139】
本発明は、本発明による圧力支援チェーンストークス呼吸症治療法の実施に加え、本発明は、制御装置64により圧力支援装置50の全ての標準機能を実施することを企図するが、この標準機能は、例えば、米国特許第5,203,343号、第5,458,137号及び第6,087,747号に開示される持続気道陽圧(CPAP)、2段階圧力支援BiPAP、比例気道陽圧(PPAP)の支援若しくは高性能持続気道陽圧(CPAP)の供給並びに米国特許第5,645,053号に開示される自動滴定持続気道陽圧(CPAP)の供給を含み、参照により前記米国特許の内容を本明細書の一部とする。本発明の一実施の形態では、換気モード選択入力装置を圧力支援装置50に設けて、使用者又は許可された介護者は、換気モード選択入力装置により、圧力支援装置50の動作に基く換気モード(本発明によるチェーンストークス呼吸症治療技術、持続気道陽圧(CPAP)、2段階、自動滴定持続気道陽圧(CPAP)、比例補助換気(PAV)、比例気道陽圧(PPAP)等)を選択することができる。また、本発明は、従来の圧力支援換気モードを実施しながら、チェーンストークス呼吸症検出技術を実施して、チェーンストークス呼吸症を一度検出すれば、圧力支援をチェーンストークス呼吸症治療モードに切り替えることを企図する。
【0140】
本発明は、圧力支援装置50からの気体の漏出を監視する過程と、異なる長さの時間帯等の本発明の種々の媒介変数に対する異なる基準を使用して、圧力支援装置50から漏出する気体の量又は安定性に依存して、移動平均値を演算する過程とを企図する。例示的な実施の形態では、漏出が安定しているか否かを判定する過程は、平均合計患者流量と実験上得られた圧力対流動曲線とを比較して、圧力支援装置50からの漏出量が悪例漏出量を超えるか否かを決定する過程を含む。流量制限制御層及び大漏出検出層を説明する特許文献4に前記処理過程の例が記載される。しかしながら、完全を期すために、この技術を簡単に下記に説明する。
【0141】
圧力支援装置50の各動作圧力レベルの最悪漏出流量曲線を予め決定する。最悪例の各漏出流量曲線は、圧力支援装置50の最悪例の装置漏出に相当する漏出流量を示す。圧力支援装置50の推定漏出量は、あらゆる従来の漏出推定技術を使用して決定される。現在の推定漏出量が、圧力支援装置50の動作時の圧力に関する最悪例の漏出流量曲線を超えるとき、推定漏出量は、圧力支援装置50の高精度動作範囲を構成する漏出流量を超過する。これにより、例えば、患者界面装置58が患者54から部分的に除去される場合、使用する患者回路の形式又は機能に期待しない限り、多くの気体が患者回路から漏出する。しかしながら、推定漏出量が最悪例の漏出曲線上又はその下方にあれば、圧力支援装置50の漏出許容量と認められる。
【0142】
H.代替チェーンストークス呼吸症検出技術
本発明での使用に適するチェーンストークス呼吸症を検出する一例示的技術を前記第A章の1で説明した。この技術では、使用者へ又は患者54からの気体流量に関する流速等の特徴を監視することにより、チェーンストークス呼吸症が検出される。前記技術と組み合わせて又は単独で使用されるチェーンストークス呼吸症の他の検出技術は、使用者の酸素飽和を監視してチェーンストークス呼吸症を検出する過程を含む。SpO2と称する患者54の酸素飽和度は、パルス酸素濃度計を使用して通常監視される。
【0143】
図18の状態図に示すように、患者54の酸素飽和度SpO2は、通常、基準線状態600又は平均値レベルにある。チェーンストークス呼吸症事象間に、状態602で示すように、酸素飽和度SpO2は、上昇又は増大する。患者54を過換気してより多量の酸素を血流に導入するとき、酸素飽和度SpO2の増大は、チェーンストークス呼吸症型の漸増期間32に一致する。勿論、肺内の酸素の交換に伴う時間遅延により、酸素飽和度SpO2の変化は、呼吸の変化より遅れる。状態604に示すように、チェーンストークス呼吸症事象間に、酸素飽和度SpO2は、減少する。患者54の呼吸運動が減少するので、状態604に示すように、酸素飽和度SpO2の減少は、チェーンストークス呼吸症周期の終期の漸減期間34に一致する。本発明は、酸素飽和度SpO2を監視して、患者54がチェーンストークス呼吸症周期を体験したことを示す上昇状態及び下降状態を確認する過程を企図する。
【0144】
より詳細には、制御装置64又は処理装置は、酸素飽和度SpO2監視装置から信号を受信し、患者54の各状態(600,602,602)を決定して、チェーンストークス呼吸症型を検出する。基準線状態600では、制御装置64は、移行時点610に示すように、酸素飽和度SpO2の上昇又は増大を探索する。本発明は、制御装置64が基準線酸素飽和度SpO2値を更新して、後にチェーンストークス呼吸症周期間の最小酸素飽和度SpO2値との比較を企図する。制御装置64が上昇状態602に切り替わった後予め決められた時間、酸素飽和度SpO2が定常状態のままであれば、その後、制御装置64は、基準線状態600に戻り(移行時点612)、チェーンストークス呼吸症周期が完了しない。他方、酸素飽和度SpO2サンプルが減少し始めれば、状態装置(制御装置64)は、下降状態604(移行時点614)に切り替わる。最後に、下降状態604では、定常状態に該当するとき又は酸素飽和度SpO2閾値に達するとき、制御装置64は、基準線状態600に切り替わる(移行時点616)。この閾値は、最小飽和百分率に相当する。何れの場合でも、状態装置(制御装置64)は、基準線の初期状態600に戻り、新規周期を始動する。移行時点610、614及び616を通過して、制御装置64が一周期を完了する場合、チェーンストークス呼吸症事象が宣言される。
【0145】
本発明は、酸素飽和度SpO2を監視するあらゆる技術を使用して、その変化を検出することを企図する。例えば、酸素飽和度SpO2が変化していると制御装置64が判定する前に、監視する酸素飽和度SpO2を閾値許容量レベルと比較してもよい。即ち、現在の酸素飽和度SpO2が許容量閾値を超え又はこれに満たない限り、酸素飽和度SpO2が変化しないことが宣言される。また、酸素飽和度SpO2の増大又は減少を宣言する前に、一定数の変化を連続して検出することを制御装置64が要求してもよい。更に、絶対的又は相対的な数値に基づいて、酸素飽和度SpO2の変化を検出してもよい。膨大かつ多様な技術を使用して、酸素飽和度SpO2の変化を検出できることは、理解できよう。従って、本発明では、簡潔化のため、無数の変化を検出する全技術の一覧表又は説明を省略する。
【0146】
本明細書では、特に明記しない限り、適切であれば、本明細書の何れかに開示した類似の構成及び/又は方法と前記の全構成及び/又は全過程との交換を考慮することができる。
【0147】
現在最も実用的で及び好適と思われる実施の形態を図示して詳述したが、前記記載は単に説明の便宜に過ぎず、本発明を開示した実施の形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内に該当すると共に、特許請求の範囲と同趣旨の変更態様並びに同等の装置を包含すること企図する。例えば、何れかの実施の形態の1つ又は2つ以上の特徴を何れかの他の実施の形態の1つ又は2つ以上の特徴に可能な範囲内で組み合わせることができることを本発明が企図することは、理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の圧力支援装置により治療される通常のチェーンストークス呼吸周期を示すグラフ
【図2】本発明の原理による圧力支援療法を実施する気道陽圧支援装置の機能を示すブロック図
【図3A】本発明の原理により図2の圧力支援装置に供給される例示的な圧力波形を示す波形図
【図3B】本発明の原理により図2の圧力支援装置に供給される例示的な圧力波形を示す波形図
【図4】本発明の圧力支援法を実施する過程の一部を示すフローチャート
【図5】推定患者流量から算出される瞬間平均吸気流量及び最大平均吸気流量の流量波形図
【図6A】可変気道陽圧支援装置から収集される最大流量データをプロットしたグラフ
【図6B】第1の直流バイアス電圧を除去する過程後の最大流量データをプロットしたグラフ
【図6C】圧力支援装置に使用する例示的なチェーンストークス呼吸症のひな型波形と比較するため基準化した最大流量データをプロットして、圧力支援治療の効果を評価するグラフ
【図7】最大平均吸気流量をプロットした正規分布曲線を例示するグラフ
【図8】本発明の原理による目標流量の選択過程を明示するブロック図
【図9A】本発明の圧力支援装置の動作を示す波形図
【図9B】本発明の圧力支援装置の動作を示す波形図
【図9C】本発明の圧力支援装置の動作を示す波形図
【図9D】本発明の圧力支援装置の動作を示す波形図
【図10】本発明の原理により各呼吸周期に実行する過程を示すフローチャート
【図11】本発明の原理による内呼吸気の吸気気道陽圧(IPAP)の制御法を示すフローチャート
【図12A】図11の制御法による内呼吸気の圧力制御技術の例示的な圧力波形図
【図12B】図11の制御法による内呼吸気の圧力制御技術の例示的な流量波形図
【図13】本発明の原理による内呼吸気の圧力増加法を示す例示的な流量波形図
【図14】本発明の原理による内呼吸気の圧力制御法を示すフローチャート
【図15A】本発明の原理による内呼吸気の圧力制御法を示す波形図
【図15B】本発明の原理による内呼吸気の圧力制御法を示す波形図
【図15C】本発明の原理による内呼吸気の圧力制御法を示す波形図
【図16】本発明の原理による機械式誘発呼吸圧力供給法を示すフローチャート
【図17A】図16の圧力供給法により機械式誘発呼吸を実施する形態を示すグラフ
【図17B】図16の圧力供給法により機械式誘発呼吸を実施する他の形態を示すグラフ
【図17C】図16の圧力供給法により機械式誘発呼吸を実施する別の形態を示すグラフ
【図18】周期的なチェーンストークス呼吸症を体験している患者の酸素飽和状態を示すブロック図
【符号の説明】
【0149】
(50)・・気体流量/圧力発生装置、 (52)・・圧力発生器、 (56)・・患者回路、 (60)・・圧力制御弁、 (62)・・監視手段、 (64)・・制御装置、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸用気体流を発生する気体流量/圧力発生装置(50)と、
気体流量/圧力発生装置に連結されかつ患者の気道に呼吸用気体流を搬送する患者回路(56)と、
呼吸用気体流の変動に基づいて変化する特性を監視する監視手段(62)と、
監視する特性に基づいて患者に供給する目標流量を決定する制御装置(64)とを備え、
チェーンストークス呼吸症(CSR)又は睡眠障害呼吸事象の治療に十分なレベルに目標流量を設定し、
制御装置は、患者が睡眠障害呼吸事象を体験しているか否かを判定し、
制御装置は、患者が睡眠障害呼吸事象を体験しているとの決定に基づいて目標流量を変更し、
制御装置は、目標流量に基づいて気体流量/圧力発生装置を制御することを特徴とする患者の気道に呼吸用気体流を供給する装置。
【請求項2】
気体流量/圧力発生装置(50)は、
呼吸用気体流を発生する圧力発生器(52)と、
圧力発生器又は患者回路に設けられて患者回路を通じて患者に供給される呼吸用気体流の圧力を制御する圧力制御弁(60)とを備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
制御装置は、
(a)呼吸周期の呼気段階から吸気段階への移行と(b)呼吸周期の吸気段階から呼気段階への移行Tinspとの間で経過する第1の時間量を監視し、
無呼吸検出時間Tapneaを「Tinsp+定数」として決定し、
呼吸周期の呼気段階から吸気段階までの移行以後に経過する第2の時間量を監視し、
第2の時間量と無呼吸検出時間Tapneaとを比較し、
無呼吸検出時間Tapneaに到達する第2の時間量に応答して、機械式誘発呼吸を実施する
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
患者が睡眠障害呼吸事象を体験したか否かに基づいて制御装置により定数を調整する請求項3に記載の装置。
【請求項5】
制御装置は、監視する特性に基づいて最大平均値吸気流量Qave(max)を決定し、
制御装置は、最大平均値吸気流量Qave(max)と目標流量とを比較し、
制御装置は、この比較の結果に基づいて気体流量/圧力発生装置を制御する請求項1に記載の装置。
【請求項6】
制御装置は、呼吸周期の吸気段階間に特性を監視し、この比較の結果に基づいて呼吸周期の吸気段階間に気体流量/圧力発生装置を制御する請求項1に記載の装置。
【請求項7】
制御装置は、
(1)目標流量に合致しないと決定する制御装置に応答して、気体流量/圧力発生装置が供給する呼吸用気体流の圧力を上昇させ、
(2)目標流量を超過すると決定する制御装置に応答して、呼吸用気体流の圧力を上昇させない請求項5に記載の装置。
【請求項8】
制御装置は、患者の呼吸に関する特性を決定し、この特性とチェーンストークス呼吸症の症例とを比較して、チェーンストークス呼吸症を検出する請求項1に記載の装置。
【請求項9】
患者の酸素飽和度を表す信号を出力する酸素飽和度監視装置を更に備え、
制御装置は、酸素飽和度監視装置の出力の少なくとも一部に基づいて患者がチェーンストークス呼吸症を体験しているか否かを決定する請求項1に記載の装置。
【請求項10】
患者回路を通じて呼吸用気体の供給源から患者の気道に気体流を供給する過程と、
呼吸用気体流の変動に基づいて変化する特性を監視する過程と、
監視する特徴に基づいて、チェーンストークス呼吸症又は睡眠障害呼吸事象の治療に十分なレベルに患者への目標流量を決定する過程と、
患者が睡眠障害呼吸事象を体験しているか否かを判定する過程と、
患者が睡眠障害呼吸事象を体験しているとの決定に基づいて目標流量を変更する過程と、
目標流量に基づいて呼吸用気体流を制御する過程とを含むことを特徴とする患者の気道に加圧された呼吸用気体を供給する方法。
【請求項11】
気体流を供給する過程は、
圧力発生器により呼吸気体流を発生する過程と、
(1)圧力発生器若しくは患者回路に取り付けられる圧力制御弁、(2)圧力発生器の動作速度制御又は(3)(1)と(2)との組み合わせ、により気体流の圧力を制御する過程とを含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(a)呼吸周期の呼気段階から吸気段階への移行時と(b)呼吸周期の吸気段階から呼気段階への移行時Tinspとの間に経過する第1の時間量を監視する過程と、
無呼吸検出時間Tapneaを「Tinsp+定数」として決定する過程と、
呼吸周期の呼気段階から吸気段階への移行時以後に経過する第2の時間量を監視する過程と、
第2の時間量と無呼吸検出時間Tapneaとを比較する過程と、
無呼吸検出時間Tapneaに到達する第2の時間量に応答して、機械式誘発呼吸を供給する過程とを含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
患者が睡眠障害呼吸事象を体験したか否かを決定する過程と、
患者が睡眠障害呼吸事象を体験したか否かに基づいて定数を調整する過程とを更に含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
監視する特性に基づいて最大平均値吸気流量Qave(max)を決定する過程と、
最大平均値吸気流量Qave(max)と目標流量とを比較する過程と、
この比較の結果に基づいて気体流を供給する過程とを更に含む請求項10に記載の方法。
【請求項15】
呼吸周期の吸気段階間に特性を監視する過程と、
比較結果に基づいて呼吸周期の吸気段階間に気体流を制御する過程とを更に含む請求項10に記載の方法。
【請求項16】
気体流を制御する過程は、
目標流量に合致しないとの決定に応じて気体流量/圧力発生装置により供給される呼吸用気体流の圧力を上昇させる過程と、
目標流量を超過するとの決定に応じて呼吸用気体流圧力の上昇を防止する過程とを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
患者が睡眠障害呼吸事象を体験しているか否かを決定する過程は、
特性に基づいて患者呼吸に伴う呼吸特性を決定する過程と、
呼吸特性とチェーンストークス呼吸症の症例とを比較してチェーンストークス呼吸症を検出する過程とを含む請求項10に記載の方法。
【請求項18】
患者の酸素を監視する過程を更に含み、
患者の酸素飽和度の少なくとも一部に基づいて、患者が睡眠障害呼吸事象を体験しているか否かを決定する請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2008−514379(P2008−514379A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534831(P2007−534831)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/035362
【国際公開番号】WO2006/039587
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(505338497)アールアイシー・インベストメンツ・エルエルシー (81)