説明

チェーン緩衝部材

【課題】特に自動二輪車にあって、チェーンの案内部材と緩衝材とを着脱自在にすることにより、損傷した一方の部材のみを交換することにより、使用が継続できると共に、チェーン緩衝部材の衝撃吸収能力を適宜変更可能なチェーン緩衝部材を提供することを目的とする。
【解決手段】スイングアームの外面に取付けられて動力伝達用チェーンの回転を案内するチェーン緩衝部材において、前記チェーンと当接して前記チェーンを案内する案内部材と、前記案内部材の前記スイングアーム側に緩衝材を着脱可能に取付けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーン緩衝部材に関する。
また、本発明は、自動二輪車の後輪にエンジン回転等を伝達する動力伝達用及び搬送用チェーンの案内と緩衝を行うチェーン緩衝部材に関する。
更に、本発明は、後輪支持用のスイングアームに固着されて後輪駆動用チェーンをガイドする自動2輪車のチェーン緩衝部材に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、自動二輪車にあって、その後輪にエンジンの回転を伝達するチェーンとチェーンの回転を案内する案内部材との組み立てを示す従来例の正面図であり、図6は、図5のA−A断面図である。
周知のように、自動二輪車の後輪10は、一般にはスイングアーム1と呼ばれる揺動式の懸架機構を介して車体フレームに軸支される。
エンジンの回転はその出力軸8からチェーン2によって後輪10に伝達されて走行させる。
チェーン2はフレーム状に構成された案内部材30の外周に捲回されて回転するようになっている。
案内部材30はスイングアーム1と共に支軸6を介して走行中一体に揺動する。
即ち、チェーン2はその回転を案内部材30にガイドされて後輪10に伝達しつつ、案内部材30およびスイングアーム1と共に、走行中後輪10のバウンドを吸収しながら揺動する構造である。
【0003】
図示されたチェーン2は、一般にローラチェーンと呼ばれる構造のものである。
即ち、だるまと通称される両側一対の板鎖(リンク鎖)21、21からなる組の多数を有し、一組の板鎖21、21と他の一組の板鎖21、21の互いの前後同士を抱合せ、回転可能なローラ22に挿通させたピンで連結して無端のローラチェーンを構成している。
【0004】
また、案内部材30は、図6に示すように、側面断面が凸状で内側の緩衝層部301と外側の耐摩耗層部302とが接着一体化されている。
外側の耐摩耗層部302にはその上面に長手方向へ延びる突起条303が設けられ、この突起条303をチェーン2の両側の板鎖21、21とローラ22が跨いで耐摩耗層部302の上に乗り合わせ、回転中のチェーン2は、案内部材30にガイドされて摺接すると共に、突起条303により回転軌道から逸脱しないようになっている。
また、案内部材30の内側の緩衝層部301は、その内面がスイングアーム1の上面に当接している。
【0005】
そして、走行使用中の案内部材30において、外側の耐摩耗層部302では、回転中のチェーン2との摺接による摩耗に耐えて耐摩耗性を補償し、内側の緩衝層部301では、スイングアーム1の上面との間に発生する打撃を緩衝して音の発生を防止すると共に、防振を行う。
【0006】
しかしながら、緩衝層部301と外側の耐摩耗層部302とを接着一体化しているため、接着面を脱脂処理する等の前処理が必要であった。
更に、緩衝層部301が損傷すると、耐摩耗層部302を含め、案内部材30全体を交換しなければならず、交換費用が嵩んだ。
【0007】
【特許文献1】特開平07−267170号公報
【特許文献2】特許第2719118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特に自動二輪車にあって、チェーンの案内部材と緩衝材とを着脱自在にすることにより、損傷した一方の部材のみを交換することにより、使用が継続できると共に、チェーン緩衝部材の衝撃吸収能力を適宜変更可能なチェーン緩衝部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のチェーン緩衝部材は、スイングアームの外面に取付けられて動力伝達用チェーンの回転を案内するチェーン緩衝部材において、前記チェーンと当接して前記チェーンを案内する案内部材と、前記案内部材の前記スイングアーム側に緩衝材を着脱可能に取付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下に記載される効果を奏する。
請求項1記載の発明のチェーン緩衝部材によれば、チェーンの案内部材と緩衝材とを着脱自在にすることにより、損傷した一方の部材のみを交換することが出来、経済的である。
【0011】
請求項2記載の発明のチェーン緩衝部材によれば、緩衝部材を案内部材に確実に保持出来る。
請求項3記載の発明のチェーン緩衝部材によれば、緩衝部材の取り付け、取り外しが容易である。
【0012】
請求項4記載の発明のチェーン緩衝部材によれば、スイングアームの衝撃を効果的に吸収できると共に、耐久性能を向上できる。
請求項5記載の発明のチェーン緩衝部材によれば、緩衝部材の荷重調整が容易に行える。
【0013】
請求項6記載の発明のチェーン緩衝部材によれば、案内部材の耐摩耗性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1乃至図4に基づき発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明の実施例に係るチェーン緩衝部材を示す側面図である。
図2は、図1のB−B断面図である。
図3は、図1で使用した緩衝材の平面図である。
図4は、図3の側面図である。
【0015】
本発明は、図5に示す、スイングアーム1の外面に取付けられて動力伝達用チェーン2の回転を案内するチェーン緩衝部材である。
そして、このチェーン緩衝部材は、チェーン2と当接してチェーン2を案内する案内部材3と、この案内部材3のスイングアーム1側に緩衝材4を着脱可能に取付ける構成となっている。
この緩衝材4には、その両側面に、その幅方向全体に、緩衝部材4本体よりも薄肉の取付け用フランジ41が形成されている。
【0016】
一方、案内部材3には、この取付け用フランジ41を受け入れるための溝31が形成されている。
この溝31は、案内部材3の一方の側面に開口し、緩衝材4を案内部材3の側面側からスライドして装着可能な構造となっている。
この緩衝材4の材質としては、耐摩耗性の優れた樹脂材又はゴム材が使用されるが、特に発泡ウレタン材が好ましい。
【0017】
また、緩衝材4には、図に示す様に、荷重調整用穴42が設けられている。
荷重が比較的軽い場合は、荷重調整用穴42を多く設け、逆に、荷重が比較的重い場合は、荷重調整用穴42を少なくするか、全く設けない態様とすることにより、同一硬さの発泡ウレタン材であっても、幅広い荷重に対応した仕様とすることが出来る。
また、案内部材3の材質は、耐摩耗性の優れた樹脂材が使用されるが、特に、硬質ウレタン材が好ましい。
【0018】
上記した実施例では、溝31は、案内部材3の一方の側面に開口する形としたが、開口していなくても、緩衝部材4を折り曲げて装着することは可能である。
また、案内部材3と緩衝部材4との間で凹凸係合させる各種の対応が、適宜選択して採用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例に係るチェーン緩衝部材を示す側面図である。
【図2】図1のB−B断面図である。
【図3】図1で使用した緩衝材の平面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】自動二輪車にあって、その後輪にエンジンの回転を伝達するチェーンとチェーンの回転を案内する案内部材との組み立てを示す従来例の正面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 スイングアーム
2 チェーン
3 案内部材
4 緩衝材
6 支軸
8 出力軸
10 後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイングアーム(1)の外面に取付けられて動力伝達用チェーン(2)の回転を案内するチェーン緩衝部材において、前記チェーン(2)と当接して前記チェーン(2)を案内する案内部材(3)と、前記案内部材(3)の前記スイングアーム(1)側に緩衝材(4)を着脱可能に取付けたことを特徴とするチェーン緩衝部材。
【請求項2】
前記緩衝材(4)の両側面に設けた取付用フランジ(41)と、前記取付用フランジ(41)を受け入れるための前記案内部材(3)に設けた溝(31)とにより着脱可能としたことを特徴とする請求項1記載のチェーン緩衝部材。
【請求項3】
前記溝(31)が前記案内部材(3)の一方の側面に開口し、前記緩衝材(4)を前記案内部材(3)の側面側からスライドして装着可能としたことを特徴とする請求項1または2記載のチェーン緩衝部材。
【請求項4】
前記緩衝材(4)が発泡ウレタン材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のチェーン緩衝部材。
【請求項5】
前記緩衝材(4)に荷重調整用穴(42)が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のチェーン緩衝部材。
【請求項6】
前記案内部材(3)が硬質ウレタン材であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のチェーン緩衝部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−166703(P2009−166703A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7745(P2008−7745)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)