説明

チオイミダート類の製造方法および3−イミノプロペン類の製造方法

【課題】3−イミノプロペン類の製造中間体などとして有用な化合物である、チオイミダート類を、効率よく工業的にも有利に製造することができる方法、および当該チオイミダート類を用いた3−イミノプロペン類の製造方法を提供する。
【解決手段】対応するクロロチオイミダート類から、エチニルマグネシウムハライドを用いて、下記一般式(I):


(式中、R1、R2およびpは、明細書に記載されたとおりである。)で示されるチオイミダート類を製造する方法、および、当該チオイミダート類から3−イミノプロペン類を製造する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害生物防除剤などの農薬における活性成分として有用な3−イミノプロペン類の製造中間体として有用な化合物である、チオイミダート類の製造方法に関する。また、本発明は、かかるチオイミダート類を製造中間体とする3−イミノプロペン類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の置換基を有する3−イミノプロペン類は、有害生物に対して優れた防除効力を有し、有害生物防除剤などの農薬における活性成分として有用であることが知られている(特許文献1)。下記式(A)で表される骨格を有するチオイミダート化合物は、上記3−イミノプロペン類の製造中間体として有用な化合物である。非特許文献1には、このような骨格を有するチオイミダート化合物の製造方法について参考となり得る合成ルートが開示されている。
【0003】
【化1】

【特許文献1】特開2008−1681号公報
【非特許文献1】Chemistry Letters,pp.1261−1264,1989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記非特許文献1に記載の合成ルートは、下記式に示されるとおり、N,S−ジフェニル−クロロチオイミダート4と、トリメチルシリル基で末端が保護されたアルキニル錫化合物2とを、特定のパラジウム−フェロセン触媒の存在下にカップリングさせて、対応するN,S−ジフェニル−トリメチルシリルエチニル基を有するチオイミダート5を得るものである。この合成ルートを利用して得られるN,S−ジフェニル−トリメチルシリルエチニル基を有するチオイミダート5のトリメチルシリル基を脱保護することにより、対応するN,S−ジフェニル−チオイミダート5’を得ることが可能である。
【0005】
【化2】

【0006】
しかし、上記の製造方法は、高価でかつ、市場において入手が困難な触媒および反応試剤を用いる必要があり、また、2段階の反応を行なう必要があることから、工業的に有利な方法であるとはいえない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、3−イミノプロペン類の製造中間体などとして有用な化合物である、上記式(A)で表される骨格を有するチオイミダート類を、効率よく工業的にも有利に製造することができる方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、当該チオイミダート類を用いた3−イミノプロペン類の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記式(A)で表される骨格を有するチオイミダート類を、対応するクロロチオイミダート類を原料として製造する方法に関し鋭意研究したところ、チオイミダート部位の炭素に結合したクロロ基が、グリニヤール試薬を用いて、効率的に、かつ選択的にエチニル基に置換できることを見出した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0009】
本発明は、下記一般式(II):
【0010】
【化3】

【0011】
[式中、R1は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。pは、0〜5の整数を表す。R2は独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルコキシル基、ニトロ基またはハロゲン原子を表す。また、pが2以上の場合、それぞれのR2は同じであっても異なっていてもよく、また、いずれか2つのR2が一緒になって、炭素数2〜5のポリメチレン基(該炭素数2〜5のポリメチレン基は、メチル基およびハロゲン原子からなる群より選ばれる基で置換されていてもよい。)またはメチレンジオキシ基を形成してもよい。]
で示されるクロロチオイミダート類(以下、化合物(II)ともいう。)を、下記一般式(III):
【0012】
【化4】

【0013】
[式中、Xはハロゲン原子を表す。]
で示される化合物(以下、化合物(III)ともいう。)と反応させることを特徴とする、下記一般式(I):
【0014】
【化5】

【0015】
[式中、R1、R2およびpは、前記と同じ意味を表す。]
で示されるチオイミダート類(以下、化合物(I)ともいう。)の製造方法を提供する。
【0016】
本発明において、上記化合物(II)は、下記一般式(IV):
【0017】
【化6】

【0018】
[式中、R1、R2およびpは、前記と同じ意味を表す。]
で示されるジチオカルバメート類(以下、化合物(IV)ともいう。)を、塩素化剤と反応させる方法により好ましく調製することができる。
【0019】
また、本発明は、上記化合物(I)を製造中間体とする3−イミノプロペン類の製造方法を提供する。すなわち、本発明の3−イミノプロペン類の製造方法は、上記化合物(II)を上記化合物(III)と反応させることにより、上記化合物(I)を得る工程と、該化合物(I)を、下記一般式(V):
【0020】
【化7】

【0021】
[式中、qは、0〜5の整数を表す。R3は独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルコキシル基、ニトロ基またはハロゲン原子を表す。また、qが2以上の場合、それぞれのR3は同じであっても異なっていてもよく、また、いずれか2つのR3が一緒になって、炭素数2〜5のポリメチレン基(該炭素数2〜5のポリメチレン基は、メチル基およびハロゲン原子からなる群より選ばれる基で置換されていてもよい。)またはメチレンジオキシ基を形成してもよい。]
で示される化合物(以下、化合物(V)ともいう。)と反応させることにより、下記一般式(VI):
【0022】
【化8】

【0023】
[式中、R1、R2、R3、pおよびqは、前記と同じ意味を表す。]
で示される3−イミノプロペン類(以下、化合物(VI)ともいう。)を得る工程とを含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、3−イミノプロペン類の製造中間体として有用な化合物であるチオイミダート類を、効率よく工業的にも有利な方法で製造することができる。また、当該チオイミダート類を製造中間体とすることにより、有害生物防除剤などの農薬における活性成分として有用な3−イミノプロペン類を効率的に工業的にも有利な方法で製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<チオイミダート類の製造方法>
本発明におけるチオイミダート類とは、下記一般式(I)で示される化合物(化合物(I))である。化合物(I)は、後述する3−イミノプロペン類(化合物(VI))の製造中間体などとして好適に用いることができる。
【0026】
【化9】

【0027】
上記一般式(I)中、R1は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基における、炭素数1〜20の炭化水素基は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のアルキニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数8〜20のビシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20の(シクロアルキル)アルキル基、炭素数9〜20の(ビシクロアルキル)アルキル基、または、炭素数7〜20のアラルキル基であってもよい。
【0028】
炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、1−プロピルブチル基、2−エチル−1−メチルブチル基、1−エチル−3−メチルブチル基、1,2−ジメチルペンチル基、1−エチル−2−メチルブチル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、1−エチル−2−メチルペンチル基、3−メチル−1−プロピルブチル基、2−メチル−1−プロピルブチル基、1−メチルオクチル基、1−エチルヘプチル基、1−プロピルヘキシル基、1−ブチルペンチル基、1,3−ジエチルペンチル基、1,5−ジメチルヘプチル基、1−エチル−3−メチルヘキシル基、1−メチルノニル基、1−エチルオクチル基、1−プロピルヘプチル基、1−ブチルヘキシル基、3−エチル−1−プロピルペンチル基、1,7−ジメチルオクチル基、1−エチル−4−メチルヘプチル基、2−メチル−1−プロピルヘキシル基などを挙げることができる。
【0029】
炭素数3〜20のアルケニル基としては、例えば、2−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、イソブテニル基、1−メチルアリル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、3,5−ジメチルオクテニル基、3,7−ジメチルオクテニル基などを挙げることができる。
【0030】
炭素数3〜20のアルキニル基としては、例えば、プロパルギル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、3−ペンチニル基、3−ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、3,5−ジメチルオクチニル基、3,7−ジメチルオクチニル基などを挙げることができる。
【0031】
炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、1−メチルシクロプロピル基、2−メチルシクロプロピル基、シクロブチル基、2−メチルシクロブチル基、シクロペンチル基、2−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、2,3−ジメチルシクロヘキシル基、2,4−ジメチルシクロヘキシル基、2,5−ジメチルシクロヘキシル基、3,5−ジメチルシクロヘキシル基、4,4−ジメチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、4−イソプロピルシクロヘキシル基、シクロオクチル基などを挙げることができる。
【0032】
炭素数8〜20のビシクロアルキル基としては、例えば、ビシクロ[4.1.0]−2−ヘプチル基、ビシクロ[3.2.0]−3−ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]−7−ヘプチル基、ビシクロ[4.2.0]−3−オクチル基、ビシクロ[3.3.0]−2−オクチル基、ビシクロ[4.3.0]−2−ノニル基、ビシクロ[4.3.0]−3−ノニル基、ビシクロ[4.3.0]−7−ノニル基、ビシクロ[4.3.0]−8−ノニル基、ビシクロ[4.4.0]−2−デシル基、ビシクロ[4.4.0]−3−デシル基などを挙げることができる。
【0033】
炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−アンスリル基などを挙げることができる。
【0034】
炭素数4〜20の(シクロアルキル)アルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル基、1−シクロプロピルエチル基、1−シクロプロピルプロピル基、シクロブチルメチル基、1−シクロブチルエチル基、1−シクロブチルプロピル基、シクロペンチルメチル基、1−シクロペンチルエチル基、1−シクロペンチルプロピル基、シクロヘキシルメチル基、1−シクロヘキシルエチル基、1−シクロヘキシルプロピル基、2−シクロプロピルエチル基、2−シクロプロピルプロピル基、2−シクロプロピル−1−メチルエチル基、3−シクロプロピルプロピル基、2−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルプロピル基、2−シクロブチル−1−メチルエチル基、3−シクロブチルプロピル基、2−シクロペンチルエチル基、2−シクロペンチルプロピル基、2−シクロペンチル−1−メチルエチル基、3−シクロペンチルプロピル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロヘキシルプロピル基、2−シクロヘキシル−1−メチルエチル基および3−シクロヘキシルプロピル基などを挙げることができる。
【0035】
炭素数9〜20の(ビシクロアルキル)アルキル基としては、例えば、(ビシクロ[4.4.0]−2−デシル)メチル基、(ビシクロ[4.4.0]−3−デシル)メチル基などを挙げることができる。
【0036】
炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−フェネチル基、β−フェネチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、4−イソプロピルベンジル基、(1−ナフチル)メチル基、(2−ナフチル)メチル基などを挙げることができる。
【0037】
上記の中でも、R1としては、ハロゲン原子で置換されていない炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく採用される。
【0038】
また、上記一般式(I)において、R2は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルコキシル基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、pは、0〜5の整数を表す。ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基は、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルコキシル基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。化合物(I)が2以上のR2を有する場合、これらのR2は、上記の中から独立して選択され、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。pが2以上の場合、いずれか2つのR2が一緒になって、炭素数2〜5のポリメチレン基またはメチレンジオキシ基を形成してもよい。炭素数2〜5のポリメチレン基は、メチル基およびハロゲン原子からなる群より選ばれる1または2以上の基で置換されていてもよい。pは、好ましくは0または1である。
【0039】
本発明において、化合物(I)は、下記に示されるように、クロロチオイミダート類(化合物(II))を、グリニヤール試薬である化合物(III)(エチニルマグネシウムハライド)と反応させることにより製造される。かかる本発明の製造方法によれば、比較的安価な反応試剤を用いて一段階で化合物(I)を得ることができるため、工業的生産にも好ましく適用することができる。また、本発明の方法によれば、−S−R1基が置換されることなく、選択的にクロロチオイミダート類のクロロ基をエチニル基に置換することが可能となる。化合物(III)において、Xはハロゲン原子であり、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。反応性の観点から、Xは、好ましくは塩素原子または臭素原子である。化合物(II)におけるR1、R2およびpは、上記と同じ意味を表す。
【0040】
【化10】

【0041】
上記反応における、グリニヤール試薬である化合物(III)の使用量は、化合物(II)1モルに対して、通常0.5〜5モル程度であり、好ましくは1〜3モル程度である。反応温度は、通常−80〜100℃程度であり、好ましくは、−20〜30℃程度の範囲である。反応時間は、反応温度や化合物(III)の使用量および種類、ならびに化合物(II)が有する置換基の種類等により異なるが、通常、0.1〜100時間であり、典型的には、0.1〜3時間程度である。
【0042】
グリニヤール試薬を用いた上記反応は、通常、溶媒の存在下に実施する。溶媒としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が好ましく用いられるが、エーテル系溶媒と他の有機溶媒との混合溶媒が用いられてもよい。溶媒の使用量は、特に制限されないが、化合物(II)1質量部に対して、たとえば0.1〜100質量部程度とすることができる。好ましくは、3〜20質量部程度である。ここで、本発明において、化合物(III)を用いたグリニヤール反応は、好ましくは、化合物(II)を含む溶液S1中に、化合物(III)を含む溶液S2を滴下するか、または、化合物(III)を含む溶液S2中に、化合物(II)を含む溶液S1を滴下することにより行なわれ、この場合、上記溶媒量は、溶液S1およびS2に含有される溶媒の合計量である。なお、溶液S1中の溶媒と溶液S2中の溶媒とは同じであっても異なっていてもよい。化合物(III)の調製は、従来公知の方法により行なうことができる。
【0043】
反応の進行は、従来公知の方法を採用することができ、たとえば反応混合物を一部取り出し、適切な試剤を用いてクエンチした後、化合物(I)および原料である化合物(II)の量またはその量比を薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等のクロマトグラフィーやNMRなどの手段を用いて、定性的または定量的に分析することにより確認することができる。クエンチ用試剤としては、水、アルコール類などを挙げることができる。
【0044】
反応終了後は、たとえば、洗浄、分液、濃縮等の、通常の後処理操作を行なうことにより、化合物(I)を単離することができる。単離された化合物(I)は、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製手段により精製されてもよい。また、単離された化合物(I)は、精製することなく、後述する3−イミノプロペン類の製造工程などの次工程に使用することもできる。あるいは、後処理操作の一部または全部を行なうことなく、次工程に供されてもよい。
【0045】
上記化合物(II)のクロロチオイミダート類は、下記に示されるように、たとえば、対応するジチオカルバメート類(化合物(IV))から一段階で合成することができる。具体的には、化合物(IV)を塩素化剤と反応させることにより、化合物(II)を得ることができる。化合物(IV)におけるR1、R2およびpは、上記と同じ意味を表す。
【0046】
【化11】

【0047】
塩素化剤としては、従来公知のものを用いることができ、たとえば、五塩化リンが挙げられる。化合物(IV)のモル数に対する塩素化剤が含有する塩素化反応に寄与し得る塩素原子のモル数は理論的には1であるが、反応の状況などに応じて適宜増減させてもよい。具体的には、塩素化剤として五塩化リンが用いられる場合、その使用量は、化合物(IV)1モルに対して通常0.2〜5モルである。また、溶媒量の塩素化剤を用いてもよい。
【0048】
塩素化反応は、必要に応じて溶媒の存在下に行なうことができる。溶媒としては、たとえば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル、酢酸エチル等のエステル、メチルイソブチルケトン等のケトンなどを挙げることができる。塩素化反応の反応性等を考慮すると、溶媒は、好ましくはトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素などであり、より好ましくはトルエン、キシレン、クロロベンゼンなどである。溶媒の使用量は、特に制限されないが、たとえば化合物(IV)1質量部に対して、0.5〜30質量部程度とすることができる。好ましくは、1〜10質量部程度である。塩素化反応の反応温度は、塩素化剤が五塩化リンである場合は、通常0〜100℃の範囲である。
【0049】
反応の進行は、たとえば反応混合物を一部取り出し、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等のクロマトグラフィーなどの手段を用いて、反応混合物中に存在する化合物(IV)および化合物(II)の量を定性的または定量的に分析することにより確認することができる。
【0050】
反応終了後の反応混合物は、そのまま、化合物(III)との反応に供されてもよいが、通常は、反応混合物の洗浄や単離操作などの後処理が行なわれる。反応混合物の洗浄は、たとえば、必要に応じて有機溶媒で希釈した後、水、アルカリ性水溶液、飽和食塩水などを用いて行なうことができる。また、化合物(IV)の単離は、たとえば、1)洗浄後の有機層を蒸発、乾固させる方法、2)必要に応じて部分濃縮した後、必要に応じて冷却して、生じた固体を濾別する方法などを挙げることができる。単離された化合物(IV)は、再結晶やクロマトグラフィーなどの手段により精製されてもよい。
【0051】
<3−イミノプロペン類の製造方法>
上記のようにして得られる化合物(I)は、有害生物防除剤などの農薬における有効成分等として適用できる下記一般式(VI):
【0052】
【化12】

【0053】
で示される3−イミノプロペン類(化合物(VI))の製造中間体として好適に用いることができる。化合物(VI)を化合物(I)から製造することにより、比較的容易な反応を用いて、高収率で化合物(VI)を得ることができる。なお、化合物(VI)は、(Z)体であってもよく、(E)体であってもよく、あるいは、これら幾何異性体の混合物であってもよい。
【0054】
ここで、上記一般式(VI)において、R1、R2およびpは、上記と同じ意味を表す。また、R3は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルコキシル基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、qは、0〜5の整数を表す。これらの置換基の具体例については、置換基R2について上述したものと同様である。化合物(VI)が2以上のR3を有する場合、これらのR3は、上記の中から独立して選択され、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。qが2以上の場合、いずれか2つのR3が一緒になって、炭素数2〜5のポリメチレン基またはメチレンジオキシ基を形成してもよい。炭素数2〜5のポリメチレン基は、メチル基およびハロゲン原子からなる群より選ばれる1または2以上の基で置換されていてもよい。
【0055】
上記化合物(VI)は、下記に示されるように、たとえば、化合物(I)の三重結合へ化合物(V)を付加させることにより得ることができる。化合物(V)におけるR3およびqは、上記と同じ意味を表す。
【0056】
【化13】

【0057】
上記付加反応において、化合物(V)の使用量は、たとえば、化合物(I)1モルに対して0.8〜5モル程度とすることができる。あるいは、化合物(V)は、溶媒として大過剰量用いられてもよい。
【0058】
上記付加反応を促進させる、あるいは副生成物を少なくする目的で、塩基の存在下に反応を行なってもよく、または塩基を付加反応の前後に作用させてもよい。かかる塩基としては、たとえば、ナトリウムエチラート、ナトリウムメチラート、カリウムtert−ブトキシド等のアルカリ金属のアルコラート;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチルアニリン等の有機塩基;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩基;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属水素化物;ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド等の有機リチウム試薬などを用いることができる。用いる塩基の量は、反応に悪影響を及ぼさない量であれば、特に限定されず、溶媒を兼ねて大過剰量用いることもできる。
【0059】
上記付加反応は、適当な溶媒を使用して行なうことができる。かかる溶媒としては、反応基質、反応試薬、および生成物と反応して副生成物を与えないものであれば、特に限定されないが、反応基質および反応試薬の両者を溶解するものが望ましい。かかる溶媒としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸エチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の酸アミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;スルホラン等のスルホン類;ヘキサメチルホスホルアミド等のリン酸アミド類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ピリジン、ピコリン、ルチジン、キノリン等の芳香族アミン類;水などが挙げられる。溶媒は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上の混合溶媒を用いてもよい。
【0060】
上記付加反応の反応温度は、通常、約−50〜200℃であり、好ましくは、約−30〜150℃である。反応時間は、一般には、約0.1〜96時間、好ましくは、0.1〜72時間、より好ましくは、約0.1〜24時間である。
【0061】
得られた化合物(VI)は、たとえば、濃縮、減圧濃縮、液性変換、転溶、溶媒抽出、蒸留、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー等の手段により、単離および/または精製することができる。
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
(製造例1:N−フェニルジチオカルバミン酸トリエチルアンモニウム塩の合成)
【0064】
【化14】

【0065】
アニリン10.0gと二硫化炭素16.4との混合液に、氷冷下、トリエチルアミン21.7gを滴下した後、室温まで昇温し、この温度で4時間攪拌した。ついで、反応混合物にジエチルエーテル200mlを加え、析出した結晶を濾取し、乾燥させることにより、N−フェニルジチオカルバミン酸トリエチルアンモニウム塩28.9gを結晶として得た。
【0066】
(製造例2:シクロヘキシルメチル N−フェニルジチオカルバメートの合成)
【0067】
【化15】

【0068】
DMF100mlにN−フェニルジチオカルバミン酸トリエチルアンモニウム塩15.0gを溶解させた溶液に、氷冷下、シクロヘキシルメチルブロマイド10.9gを滴下した後、室温まで昇温し、この温度で4時間攪拌した。ついで、反応混合物を冷食塩水にディスチャージした後、t−ブチルメチルエーテルで2回抽出し、有機層を食塩水で洗浄した。次に、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製し、シクロヘキシルメチル N−フェニルジチオカルバメート(化合物IV−1)9.7gを結晶として得た。
【0069】
得られたシクロヘキシルメチル N−フェニルジチオカルバメート(化合物IV−1)の1H−NMRデータは次のとおりである。
1H-NMR(CDCl3,400MHz,TMS)δ(ppm):0.92−1.30(m,5H)、1.57−1.76(m,4H)、1.78−1.88(m,2H)、3.22(d,2H,J=6.8Hz)、7.27−7.52(m,5H)、8.74(brs,1H)。
【0070】
<実施例1:S−シクロヘキシルメチル N−フェニル−チオプロピンイミデートの合成>
(a)S−シクロヘキシルメチル N−フェニル−クロロチオイミダート(S−シクロヘキシルメチル N−フェニルイミノクロロチオホルメート)の合成
【0071】
【化16】

【0072】
シクロヘキシルメチル N−フェニルジチオカルバメート(化合物IV−1)7.0gと五塩化リン5.5gとを室温で混合した後、50℃まで昇温し、この温度で3時間攪拌した。ついで、室温程度まで冷却後、反応混合物にヘキサン20mlを加え、不溶物を濾別した。濾液を減圧下に濃縮し、S−シクロヘキシルメチル N−フェニル−クロロチオイミダート(化合物II−1)6.8gを淡黄色油状物として得た。この油状物を精製することなく、次工程に使用した。
【0073】
(b)S−シクロヘキシルメチル N−フェニル−チオプロピンイミデートの合成
【0074】
【化17】

【0075】
氷冷下、エチニルマグネシウムブロマイドのTHF溶液(濃度0.5M、化合物II−1に対するエチニルマグネシウムブロマイドの仕込みモル比1.5)11.0mlに、S−シクロヘキシルメチル N−フェニル−クロロチオイミダート(化合物II−1)1.0gをTHF5mlに溶解させた溶液を滴下した後、室温まで昇温し、この温度で2時間攪拌した。ついで、反応混合物にヘキサン20mlを加え、不溶物を、シリカゲルを敷いたロートを用いて濾別し、さらに濾別された不溶物をヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒200ml(ヘキサン:酢酸エチル=15:1)で洗浄した。濾液と洗液とを合わせ、減圧下に濃縮した後、アルミナ(Aluminium oxide 90 active neutral)を用いたカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=30:1)により精製し、S−シクロヘキシルメチル N−フェニル−チオプロピンイミデート(化合物I−1)0.39gを淡黄色油状物として得た(化合物II−1の仕込み量に対する収率41%)。
【0076】
得られたS−シクロヘキシルメチル N−フェニル−チオプロピンイミデート(化合物I−1)の1H−NMRデータは次のとおりである。
1H-NMR(CDCl3,400MHz,TMS)δ(ppm):0.86−1.33(m,5H)、1.56−1.92(m,6H)、2.98−3.09(m,2H)、3.24(s,0.7H)、3.43(s,0.3H)、6.90−7.03(m,2H)、7.10−7.18(m,1H)、7.29−7.39(m,2H)。
【0077】
<実施例2>
エチニルマグネシウムブロマイドのTHF溶液の使用量を12.8mlとし、化合物II−1に対するエチニルマグネシウムブロマイドの仕込みモル比を1.75としたこと以外は、実施例1と同様にして、S−シクロヘキシルメチル N−フェニル−チオプロピンイミデート(化合物I−1)を得た。化合物I−1の収量は0.58gであり、化合物II−1の仕込み量に対する収率は、61%であった。
【0078】
<実施例3>
エチニルマグネシウムブロマイドのTHF溶液の使用量を14.8mlとし、化合物II−1に対するエチニルマグネシウムブロマイドの仕込みモル比を2.0としたこと以外は、実施例1と同様にして、S−シクロヘキシルメチル N−フェニル−チオプロピンイミデート(化合物I−1)を得た。化合物I−1の収量は0.45gであり、化合物II−1の仕込み量に対する収率は、47%であった。
【0079】
<実施例4:3−イミノプロペン類の合成>
(a)S−シクロヘキシルメチル 3−(4−フルオロフェニルチオ)−N−(フェニル)チオアクリルイミデートの合成
【0080】
【化18】

【0081】
S−シクロヘキシルメチル N−フェニル−チオプロピンイミデート(0.34g)をクロロホルム(8mL)に溶解させ、氷冷下、4−フルオロチオフェノール(0.14g)のクロロホルム(2mL)溶液を滴下して室温で16時間攪拌した。反応混合物を減圧下に濃縮し、残留物を中圧分取HPLC(ヘキサン/酢酸エチル=98/2)により精製し、S−シクロヘキシルメチル 3−(4−フルオロフェニルチオ)−N−(フェニル)チオアクリルイミデート0.25gを淡黄色油状物として得た。
【0082】
得られたS−シクロヘキシルメチル 3−(4−フルオロフェニルチオ)−N−(フェニル)チオアクリルイミデートの1H−NMRデータは次のとおりである。
1H-NMR(CDCl3,400MHz,TMS)δ(ppm):0.97−1.28(m,5H)、1.57−1.86(m,6H)、2.99(d,2H,J=6.8Hz)、5.93(d,1H,J=15.6Hz)、6.68(d,2H,J=7.3Hz)、6.97−7.35(m,8H)。
【0083】
同様にして、以下の3−イミノプロペン類を合成した。
(b)S−シクロヘキシルメチル N−フェニル−3−(フェニルチオ)チオアクリルイミデート
【0084】
【化19】

【0085】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):0.97−1.28(m,5H)、1.57−1.87(m,6H)、2.99(d,2H,J=6.8Hz)、6.07(d,1H,J=15.6Hz)、6.71(d,2H,J=7.3Hz)、7.02(t,1H,J=7.4Hz)、7.23−7.40(m,8H)。
【0086】
(c)S−シクロヘキシルメチル 3−(4−メチルフェニルチオ)−N−(フェニル)チオアクリルイミデート
【0087】
【化20】

【0088】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):0.97−1.28(m,5H)、1.57−1.86(m,6H)、2.32(s,3H)、2.98(d,2H,J=6.8Hz)、5.98(d,1H,J=15.5Hz)、6.69(d,2H,J=9.0Hz)、7.02(t,1H,J=7.4Hz)、7.10(d,2H,J=8.0Hz)、7.24(t,4H,J=7.6Hz)、7.35(d,1H,J=15.5Hz)。
【0089】
(d)S−シクロヘキシルメチル 3−(3−フルオロフェニルチオ)−N−(フェニル)チオアクリルイミデート
【0090】
【化21】

【0091】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):0.99−1.26(m,5H)、1.59−1.87(m,6H)、3.01(d,2H,J=6.8Hz)、6.12(d,1H,J=15.7Hz)、6.72(d,2H,J=7.6Hz)、6.96−7.13(m,4H)、7.25−7.35(m,4H)。
【0092】
(e)S−シクロヘキシルメチル 3−(3−クロロフェニルチオ)−N−(フェニル)チオアクリルイミデート
【0093】
【化22】

【0094】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):0.99−1.26(m,5H)、1.59−1.87(m,6H)、3.01(d,2H,J=6.8Hz)、6.10(d,1H,J=15.7Hz)、6.72(d,2H,J=7.3Hz)、7.04(t,1H,J=7.3Hz)、7.23−7.36(m,7H)。
【0095】
(f)S−シクロヘキシルメチル 3−(4−クロロフェニルチオ)−N−(フェニル)チオアクリルイミデート
【0096】
【化23】

【0097】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):1.01−1.28(m,5H)、1.58−1.87(m,6H)、3.00(d,2H,J=6.8Hz)、6.02(d,1H,J=15.7Hz)、6.69(d,2H,J=7.8Hz)、7.05(t,1H,J=7.6Hz)、7.24−7.31(m,7H)。
【0098】
(g)S−シクロヘキシルメチル 3−(3−ブロモフェニルチオ)−N−(フェニル)チオアクリルイミデート
【0099】
【化24】

【0100】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):0.99−1.28(m,5H)、1.57−1.87(m,6H)、3.00(d,2H,J=6.8Hz)、6.10(d,1H,J=15.4Hz)、6.72(d,2H,J=7.3Hz)、7.04(t,1H,J=7.6Hz)、7.17(t,1H,J=7.6Hz)、7.26−7.33(m,4H)、6.41(d,1H,J=7.8Hz)、7.51(br,1H)。
【0101】
(h)S−シクロヘキシルメチル 3−(4−ブロモフェニルチオ)−N−(フェニル)チオアクリルイミデート
【0102】
【化25】

【0103】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):1.02−1.28(m,5H)、1.59−1.87(m,6H)、3.00(d,2H,J=6.8Hz)、6.03(d,1H,J=15.4Hz)、6.69(d,2H,J=7.6Hz)、7.05(t,1H,J=7.8Hz)、7.14−7.43(m,7H)。
【0104】
(i)S−シクロヘキシルメチル 3−(3−メチルフェニルチオ)−N−(フェニル)チオアクリルイミデート
【0105】
【化26】

【0106】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):1.01−1.26(m,5H)、1.66−1.87(m,6H)、2.31(s,3H)、2.99(d,2H,J=6.8Hz)、6.05(d,1H,J=15.7Hz)、6.71(d,2H,J=7.6Hz)、7.02(t,1H,J=7.6Hz)、7.08−7.31(m,6H)、7.37(d,1H,J=15.7Hz)。
【0107】
(j)S−シクロヘキシルメチル 3−(3−メトキシフェニルチオ)−N−(フェニル)チオアクリルイミデート
【0108】
【化27】

【0109】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):1.01−1.28(m,5H)、1.58−1.87(m,6H)、3.00(d,2H,J=6.6Hz)、3.78(s,3H)、6.10(d,1H,J=15.4Hz)、6.72(d,2H,J=7.6Hz)、6.82(dd,1H,J=8.6、2.0Hz)、6.90(br,1H)、6.95(d,1H,J=8.1Hz)、7.03(t,1H,J=7.8Hz)、7.20−7.27(m,3H)、7.39(d,1H,J=15.4Hz)。
【0110】
(k)S−シクロヘキシルメチル N−(フェニル)−3−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)チオアクリルイミデート
【0111】
【化28】

【0112】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):1.03−1.28(m,5H)、1.62−1.89(m,6H)、3.06(d,2H,J=6.8Hz)、6.00(d,1H,J=12.1Hz)、6.78(d,2H,J=7.3Hz)、7.06(t,1H,J=7.3Hz)、7.18(d,1H,J=8.3Hz)、7.24(br,1H)、7.31(t,2H,J=8.1Hz)、7.39(d,1H,J=7.8Hz)、7.45(d,1H,J=8.1Hz)、7.51(d,1H,J=12.1Hz)。
【0113】
(l)S−シクロヘキシルメチル 3−(4−ニトロフェニルチオ)−N−(フェニル)チオアクリルイミデート
【0114】
【化29】

【0115】
1HNMR(CDCl3)δ(ppm):1.03−1.28(m,5H)、1.62−1.88(m,6H)、3.03(d,2H,J=6.8Hz)、6.33(d,1H,J=15.7Hz)、6.75(d,2H,J=7.3Hz)、6.99−7.09(m,1H)、7.28−7.39(m,3H)、7.44(d,2H,J=8.8Hz)、8.17(d,2H,J=8.8Hz)。
【0116】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(II):
【化1】

[式中、R1は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。pは、0〜5の整数を表す。R2は独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルコキシル基、ニトロ基またはハロゲン原子を表す。また、pが2以上の場合、それぞれのR2は同じであっても異なっていてもよく、また、いずれか2つのR2が一緒になって、炭素数2〜5のポリメチレン基(該炭素数2〜5のポリメチレン基は、メチル基およびハロゲン原子からなる群より選ばれる基で置換されていてもよい。)またはメチレンジオキシ基を形成してもよい。]
で示されるクロロチオイミダート類を、下記一般式(III):
【化2】

[式中、Xはハロゲン原子を表す。]
で示される化合物と反応させることを特徴とする、下記一般式(I):
【化3】

[式中、R1、R2およびpは、前記と同じ意味を表す。]
で示されるチオイミダート類の製造方法。
【請求項2】
下記一般式(IV):
【化4】

[式中、R1、R2およびpは、前記と同じ意味を表す。]
で示されるジチオカルバメート類を、塩素化剤と反応させることにより、下記一般式(II):
【化5】

[式中、R1、R2およびpは、前記と同じ意味を表す。]
で示されるクロロチオイミダート類を得る工程と、
前記一般式(II)で示されるクロロチオイミダート類を、下記一般式(III):
【化6】

[式中、Xはハロゲン原子を表す。]
で示される化合物と反応させる工程と、を含む、下記一般式(I):
【化7】

[式中、R1、R2およびpは、前記と同じ意味を表す。]
で示されるチオイミダート類の製造方法。
【請求項3】
下記一般式(II):
【化8】

[式中、R1、R2およびpは、前記と同じ意味を表す。]
で示されるクロロチオイミダート類を、下記一般式(III):
【化9】

[式中、Xはハロゲン原子を表す。]
で示される化合物と反応させることにより、下記一般式(I):
【化10】

[式中、R1、R2およびpは、前記と同じ意味を表す。]
で示されるチオイミダート類を得る工程と、
前記一般式(I)で示されるチオイミダート類を、下記一般式(V):
【化11】

[式中、qは、0〜5の整数を表す。R3は独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルコキシル基、ニトロ基またはハロゲン原子を表す。また、qが2以上の場合、それぞれのR3は同じであっても異なっていてもよく、また、いずれか2つのR3が一緒になって、炭素数2〜5のポリメチレン基(該炭素数2〜5のポリメチレン基は、メチル基およびハロゲン原子からなる群より選ばれる基で置換されていてもよい。)またはメチレンジオキシ基を形成してもよい。]
で示される化合物と反応させる工程と、を含む、下記一般式(VI):
【化12】

[式中、R1、R2、R3、pおよびqは、前記と同じ意味を表す。]
で示される3−イミノプロペン類の製造方法。