説明

チゼル

【課題】周囲に放射する騒音を良好に低減することができる構造のチゼルを提供する。
【解決手段】チゼル本体410の外面に内面が部分的に接合されているとともに部分的に空隙を介して離間している筒状のチゼルカバー320を有する。チゼル本体410の外面から放射される騒音を、チゼルカバー320の内面との空隙Sの空気層で減衰することができる。チゼル本体410とチゼルカバー320とが接合されている部分では振動が伝達されるが、チゼル本体410とチゼルカバー320とは部分的にしか接合されていないので、騒音を発生させる振動の伝達は軽微である。このため、周囲に放射する騒音を良好に低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーカ装置に着脱自在に装着されて破砕作業に利用されるチゼルに関し、特に、作業時に無視できない騒音を発生するチゼルに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コンクリートの破砕作業などにブレーカ装置が利用されている。このようなブレーカ装置の一従来例を図6および図7を参照して以下に説明する。なお、ここでは説明を簡単とするため、図示するように、上下方向を規定する。
【0003】
ブレーカ装置100は、図6に示すように、円筒状のブレーカ本体101を有する。このブレーカ本体101の内部には、上下方向にスライド自在なピストン部材と、このピストン部材を往復移動させる駆動機構と、が内蔵されている(図示せず)。
【0004】
ブレーカ装置100のブレーカ本体101の下端には、チゼル110が交換自在に装着される。チゼル110は、高硬度の鋼材などにより軸状に形成されている。チゼル110は、上下方向に変位自在な状態で、その上端である末端にピストン部材が当接するように、ブレーカ本体101に支持される。
【0005】
ブレーカ装置100は、図7に示すように、例えば、油圧パワーショベル等の建設車両120の可動アーム121にブラケット122により装着される。
【0006】
建設車両120がチゼル110の下端である先端を破砕対象に当接させた状態で、ブレーカ装置100が駆動される。すると、上下方向に往復移動されるピストン部材がチゼル110の上端を繰り返し打撃する。
【0007】
これでチゼル110の末端から先端まで圧縮の応力波が縦波として伝播する。そこで、このチゼル110の先端に圧接している破砕対象が、応力波によって破砕される。
【0008】
現在、上述のようなチゼルの各種の提案がある(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】実開昭63−020552号
【特許文献2】特開2003−175478号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のようなブレーカ装置100は、先端が破砕対象に圧接されているチゼル110の末端を打撃することにより、チゼル110の末端から先端まで伝搬する応力波で破砕対象を破砕する。
【0010】
このとき、当然ながらチゼル110から多大な騒音が発生する。前述の特許文献1,2には、チゼルの外面に弾性体などの制振材を圧接させることにより、その騒音を低減させることが開示されている。しかし、何れも構造が複雑で実用的ではない。
【0011】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、簡単で実用的な構造で騒音を低減することができるチゼルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のチゼルは、ブレーカ装置に装着されて破砕作業に利用されるチゼルであって、末端部がブレーカ装置に保持されて先端部が破砕対象に当接される軸状のチゼル本体と、筒状のチゼルカバーと、を有し、チゼル本体の外面とチゼルカバーの内面とが部分的に接合されているとともに部分的に空隙を介して離間している。
【0013】
従って、本発明のチゼルでは、チゼル本体の外面から放射される騒音が、チゼルカバーの内面との空隙の空気層で減衰される。チゼル本体とチゼルカバーとが接合されている部分では振動が伝達されるが、チゼル本体とチゼルカバーとは部分的にしか接合されていない。このため、騒音を発生させる振動の伝達は軽微である。
【0014】
本発明の第一のブレーカ装置は、チゼルが交換自在に装着されているブレーカ装置であって、本発明のチゼルと、このチゼルの末端部が先端部に挿入されているブレーカ本体と、このブレーカ本体の内部でチゼルの末端部を保持している保持機構と、保持されたチゼルの末端部を打撃する打撃機構と、を有する。
【0015】
従って、本発明のブレーカ装置では、ブレーカ本体に挿入されて保持機構で保持されたチゼルの末端部を打撃機構で打撃するので、チゼルの先端部に破砕力が発生する。打撃されるチゼルのチゼル本体は外面から騒音を放射するが、その騒音はチゼルカバーの内面との空隙の空気層で減衰される。
【0016】
本発明の第二のブレーカ装置は、チゼルが交換自在に装着されているブレーカ装置であって、本発明のチゼルと、このチゼルの末端部が先端部に挿入されているブレーカ本体と、このブレーカ本体の内部でチゼルの末端部を保持している保持機構と、保持されたチゼルの末端部を打撃する打撃機構と、ブレーカ本体の先端部に位置してチゼルが保持機構に保持されたときにチゼルカバーの少なくとも一部を非接触にカバーするブレーカカバーと、を有する。
【0017】
従って、本発明のブレーカ装置では、ブレーカ本体に挿入されて保持機構で保持されたチゼルの末端部を打撃機構で打撃するので、チゼルの先端部に破砕力が発生する。打撃されるチゼルのチゼル本体は外面から騒音を放射するが、その騒音はチゼルカバーおよびブレーカカバーの内面との空隙の空気層で減衰される。
【0018】
なお、本発明で云うチゼルとは、ブレーカ装置に装着されて破砕作業に利用される軸状の工具を意味している。このため、例えば、ウエッジ、アッシ、等と呼称されているものも内包される。
【0019】
また、本発明で云う各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はない。例えば、複数の構成要素が1個の部材として形成されていること、1つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のチゼルでは、チゼル本体の外面に内面が部分的に接合されているとともに部分的に空隙を介して離間している筒状のチゼルカバーを有することにより、チゼル本体の外面から放射される騒音を、チゼルカバーの内面との空隙の空気層で減衰することができ、チゼル本体とチゼルカバーとが接合されている部分では振動が伝達されるが、チゼル本体とチゼルカバーとは部分的にしか接合されていないので、騒音を発生させる振動の伝達は軽微になり、周囲に放射する騒音を良好に低減することができる。
【0021】
本発明の第一のブレーカ装置では、本発明のチゼルを有することにより、周囲に放射する騒音を良好に低減することができる。
【0022】
本発明の第二のブレーカ装置では、本発明のチゼルが保持機構に保持されたときにブレーカ本体の先端部に位置するブレーカカバーがチゼルカバーの少なくとも一部を非接触にカバーすることにより、チゼルのチゼル本体の外面から放射される騒音をチゼルカバーおよびブレーカカバーの内面との空隙の空気層で減衰することができるので、周囲に放射する騒音を良好に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の一形態を図1ないし図3を参照して以下に説明する。なお、本実施の形態に関して前述した一従来例と同一の部分は、同一の名称を使用して詳細な説明は省略する。
【0024】
また、本実施の形態では図示するように上下方向を規定して説明する。ただし、これは説明を簡単とするために便宜的に規定するものであり、本発明を実施する場合の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0025】
本実施の形態のブレーカ装置200は、ブレーカ本体210とチゼル300とを有しており、ブレーカ本体210に軸状のチゼル300が装着されている。図2に示すように、ブレーカ装置200のブレーカ本体210には、下端が開口した円柱状の開口穴214が形成されており、この開口穴214にチゼル300が下方から挿入されている。
【0026】
ブレーカ本体210の開口穴214の内周面には、円環状の凸部からなるストッパ部215が形成されている。このストッパ部215にチゼル300の末端部312が当接することにより、チゼル300はブレーカ本体210に位置決めされる。
【0027】
ブレーカ本体210の内部下方には、保持機構であるシャンク機構211が形成されている。シャンク機構211は、上述のように開口穴214に挿入されたチゼル300を交換自在に保持する。
【0028】
ブレーカ本体210の内部上方には、チゼル300の末端部を打撃する打撃機構が形成されている。より具体的には、シャンク機構211に保持されたチゼル300に接離する位置に、打撃機構のピストン部材212が上下方向にスライド自在に挿入されている。ブレーカ装置200のブレーカ本体210には打撃機構の駆動機構(図示せず)も内蔵されており、この駆動機構がピストン部材212を上下方向に往復移動させる。
【0029】
また、本実施の形態のブレーカ装置200は、防音型ブラケット220も有しており、この防音型ブラケット220の内部にブレーカ本体210が収容されている。さらに、防音型ブラケット220の下端には円筒状のブレーカカバー221が装着されている。
【0030】
このため、ブレーカカバー221はブレーカ本体210の先端部に位置しており、その内面はブレーカ本体210に装着されたチゼル300の外周面に非接触に対向している。
【0031】
本実施の形態のチゼル300は、図1に示すように、チゼル本体310、チゼルカバー320、カバーストッパ321、からなる。チゼル本体310は、クロムモリブデン鋼などの鋼材により全体的に円柱形の軸状に形成されている。
【0032】
チゼル本体310の下端近傍は、破砕作業に使用されて摩滅する先端部311となっている。チゼル本体310の上端近傍は、保持機構であるシャンク機構211により保持される末端部312となっている。そして、チゼル本体310の先端部311から末端部312まで中間部313が連続している。
【0033】
チゼルカバー320は、例えば、チゼル本体310と同一の材料であるクロムモリブデン鋼などの鋼材により円筒形に形成されている。チゼルカバー320は、チゼル本体310とは別体に形成されている。
【0034】
そして、チゼル本体310の下半部がチゼルカバー320に圧入されることにより、軸状のチゼル本体310の下半部の外周面上に円筒形のチゼルカバー320が装着されている。
【0035】
ただし、チゼル本体310は、図3に示すように、チゼルカバー320が装着されている下半部の外周面が部分的に平坦化されている。このため、チゼル本体310は、下半部の軸心方向と直交する断面形状が八角形状に形成されている。
【0036】
そこで、チゼル本体310の平坦に研削されていない部分が相対的に凸部315となっている。そして、円筒形のチゼルカバー320の内周面にチゼル本体310の凸部315が接合されている。
【0037】
一方、チゼル本体310の平坦に研削されている平面部分316はチゼルカバー320の内周面から離間している。換言すると、チゼル本体310の外面の平面部分316とチゼルカバー320の内周面とは空隙Sを介して対向している。
【0038】
さらに、チゼルカバー320とチゼル本体310とは、カバーストッパ321により軸心方向に相対的に固定されている。より詳細には、カバーストッパ321も、例えば、チゼル本体310と同一の材料であるクロムモリブデン鋼などの鋼材により円環状に形成されている。
【0039】
そして、カバーストッパ321は、チゼルカバー320の上端およびチゼル本体310の外周面上に接合されている。このため、カバーストッパ321によりチゼルカバー320がチゼル本体310に軸心方向に固定されている。
【0040】
なお、本実施の形態のチゼル300は、ブレーカ装置200に装着された状態で、図1および図2に示すように、そのチゼルカバー320の上端が、ブレーカ本体210の下端より下方に位置するが、ブレーカカバー221の下端より上方に位置する。
【0041】
上述のような構成において、本実施の形態のブレーカ装置200も、従来のブレーカ装置100と同様に、チゼル300の先端を破砕対象(図示せず)に圧接させた状態で、チゼル本体310の末端をピストン部材212で打撃する。これでチゼル本体310の末端から先端まで応力波が縦波として伝搬するので、その応力波により破砕対象が破砕される。
【0042】
本実施の形態のチゼル300では、上述のようにチゼル本体310の末端から先端まで応力波が伝播するとき、チゼル本体310の外面から多大な騒音が発生する。しかし、このチゼル本体310の外面が空隙Sを介してチゼルカバー320でカバーされている。
【0043】
このため、本実施の形態のチゼル300では、チゼル本体310の外面から放射される騒音を、チゼルカバー320の内面との空隙Sの空気層により減衰することができる。
【0044】
なお、本実施の形態のチゼル300は、ブレーカ装置200に装着された状態で、そのチゼルカバー320の上端が、ブレーカ本体210の下端より下方に位置するとともに、ブレーカカバー221の下端より上方に位置する。
【0045】
このため、チゼル本体310がチゼルカバー320でカバーされてない部分がブレーカ装置200より外側に存在するが、その部分はブレーカカバー221でカバーされている。
【0046】
従って、ブレーカ装置200より外側でチゼルカバー320によりカバーされていないチゼル本体310の外面から騒音が放射されるが、この騒音はブレーカカバー221により減衰される。
【0047】
さらに、チゼルカバー320はチゼル本体310の下半部をカバーしている。つまり、チゼル本体310は破砕対象に当接される下端までチゼルカバー320でカバーされている。
【0048】
このため、本実施の形態のチゼル300では、破砕対象に当接されるチゼル本体310の先端部311がチゼルカバー320から露出し、その先端部311から騒音が放射されることも防止されている。
【0049】
しかも、本実施の形態のチゼル300では、チゼル本体310の外面の複数の凸部315によりチゼルカバー320の内面が複数の位置で保持されている。さらに、そのチゼル本体310の複数の凸部315は、チゼルカバー320の先端から末端まで線形に形成されている。
【0050】
このため、チゼルカバー320の全体がチゼル本体310に強固に接合されている。従って、チゼル本体310に打撃により応力波が伝達されても、チゼルカバー320が変位したり脱落することがない。
【0051】
また、チゼル本体310とチゼルカバー320とが接合されている部分では、チゼル本体310からチゼルカバー320に振動が伝達される。しかし、チゼル本体310とチゼルカバー320とは部分的にしか接合されていない。しかも、チゼル本体310とチゼルカバー320とは別体のまま圧入等で固定されている。
【0052】
このため、チゼル本体310からチゼルカバー320への、騒音を発生させる振動の伝達は軽微である。従って、本実施の形態のチゼル300では、周囲に放射する騒音を良好に低減することができる。
【0053】
しかも、本実施の形態のチゼル300では、チゼル本体310とチゼルカバー320とが同一の材料で形成されている。このため、チゼル本体310とチゼルカバー320とを共通の設備(図示せず)で製造することができる。従って、チゼル300を簡単で生産性が良好な構造とすることができる。
【0054】
しかも、当然ながらチゼル本体310とチゼルカバー320との耐摩耗性も同一である。このため、破砕作業によりチゼル本体310が摩滅するとき、チゼルカバー320も同様に摩滅する。
【0055】
従って、チゼル本体310がチゼルカバー320より摩滅して破砕力が低下することも、チゼルカバー320がチゼル本体310より摩滅して騒音が増大することも、良好に防止されている。
【0056】
さらに、本実施の形態のチゼル300では、円柱形の軸状のチゼル本体310の外周面が部分的に平坦化されることで、チゼルカバー320の内周面に部分的に接合される複数の凸部315がチゼル本体310の外周面に形成されており、チゼル本体310の外面とチゼルカバー320の内周面とが複数の空隙Sを介して対向している。
【0057】
そして、上述のような形状のチゼル本体310は、例えば、円柱形の基材の外周面を部分的に研削することなどで簡単に形成することができる。また、チゼルカバー320は単純な円筒形に形成することができる。このため、さらに本実施の形態のチゼル300を簡単で生産性が良好な構造とすることができる。
【0058】
なお、前述した特許文献1には、チゼルを保持する一対の半円弧状のホルダ部材がブレーカ本体に装着されているブレーカ装置が開示されている(図示せず)。その一対のホルダ部材は、半円弧状の金属ホルダの内周面に弾性体とスリーブ金とが順番に配置された構造からなる。そして、チゼル本体の外周面から周囲に放射される騒音を低減するため、上述のようなホルダ部材が軸状のチゼル本体の外周面に圧接される。
【0059】
しかし、この特許文献1のホルダ部材は、上述のような機能を実現するために極度に複雑な構造となっている。しかも、特許文献1の装置では、チゼル本体の外周面の一部にホルダ部材を圧接させている。
【0060】
換言すると、チゼル本体の外周面の大部分は露出している。このため、ホルダ部材によりチゼル本体の外周面の振動を減衰させても、露出しているチゼル本体の大部分の外周面から周囲に多大な騒音が放射されることになる。
【0061】
また、特許文献2のチゼルは、チゼル本体の外周面に弾性体などからなる制振材を多重に密着させている。しかし、これでは消耗品であるチゼルの構造が複雑化して生産性が低下する。
【0062】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態では円柱形のチゼル本体310の外面が部分的に平坦化されることで、円筒形のチゼルカバー320の内面に接合される複数の凸部がチゼル本体310の外面に形成されていることを例示した。
【0063】
しかし、チゼル本体の外面とチゼルカバーの内面とが部分的に接合されるとともに離間するならば、チゼル本体やチゼルカバーは各種の形状に形成することができる。例えば、チゼル本体を矩形や星形などの断面形状に形成してもよく、チゼルカバーを矩形や六角形の筒状などに形成してもよい(ともに図示せず)。
【0064】
さらに、チゼル本体を円柱形に形成しておき、その外周面に接合される複数の凸部をチゼルカバーの内面に形成してもよい(図示せず)。この場合、チゼルカバーの構造は複雑となるが、チゼル本体は簡単で生産性が良好な構造となる。特に、チゼル本体として既存の製品を利用することができる。
【0065】
また、上記形態ではチゼル本体310とチゼルカバー320とが圧入により固定されていることを例示した。しかし、チゼル本体310とチゼルカバー320とが焼き嵌めやボルト締結や溶接等により固定されていてもよい。
【0066】
さらに、上記形態ではチゼルカバー320の上端がカバーストッパ321によりチゼル本体310に固定されていることを例示した。しかし、このようなカバーストッパ321を要することなく、チゼル本体310とチゼルカバー320とが固定されていてもよい。
【0067】
また、上記形態ではチゼル本体310のブレーカ装置200より外側に位置する部分が一部のみチゼルカバー320でカバーされており、このチゼルカバー320でカバーされることなくブレーカ装置200より外側に位置する部分はブレーカカバー221でカバーされていることを例示した。しかし、チゼル本体のブレーカ装置より外側に位置する部分の全域がチゼルカバーでカバーされている構造でもよい(図示せず)。
【0068】
さらに、上記形態ではチゼル本体310とチゼルカバー320とが同一の材料で形成されていることを例示した。しかし、チゼル本体310とチゼルカバー320とを別個の材料で形成してもよい。この場合、チゼル300の生産性は低下するが、チゼル本体310からチゼルカバー320に振動が伝搬されることを、より良好に防止することができる。
【0069】
また、上記形態ではチゼル本体310の外面にチゼルカバー320が一重に装着されていることを例示した。しかし、チゼル本体にチゼルカバーが二重以上に装着されていてもよい。
【0070】
このようなチゼルを図4および図5を参照して以下に説明する。ここで例示するチゼル400では、チゼル本体410の外面に第一のチゼルカバー420が装着されており、この第一のチゼルカバー320の外面に第二のチゼルカバー430が装着されている。
【0071】
チゼル本体410は単純な円柱形に形成されている。第二のチゼルカバー430は単純な円筒形に形成されている。第一のチゼルカバー420は、図5(b)に示すように、チゼル本体410の外周面に接合される複数の凸部421が内面に形成されているとともに、第二のチゼルカバー430の内周面に接合される複数の凸部422が外面に形成されている、異形の筒状に形成されている。なお、上述の第一のチゼルカバー420の内面と外面との凸部421,422は、チゼル本体410の軸心を中心とした放射方向で相違する位置に形成されている。
【0072】
このチゼル400では、チゼル本体410の外面と第一のチゼルカバー420の内面とが部分的に接合されているとともに部分的に空隙を介して離間している。さらに、第一のチゼルカバー420の外面と第二のチゼルカバー430の内周面も部分的に接合されているとともに部分的に空隙を介して離間している。このため、チゼル本体410の外面から放射される騒音が二重に低減される。
【0073】
さらに、チゼル本体410が単純な円柱形に形成されており、第二のチゼルカバー430は単純な円筒形に形成されているので、チゼル400は構造が簡単で生産性が良好な構造である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態のチゼルがブレーカ装置に装着されている状態を示す一部を破断した正面図である。
【図2】チゼルが装着されているブレーカ装置の全体を示す縦断正面図である。
【図3】チゼルの要部の組立構造を示す横断平面図である。
【図4】一変形例のチゼルがブレーカ装置に装着されている状態を示す一部を破断した正面図である。
【図5】チゼルの要部の組立構造を示す横断平面図である。
【図6】一従来例のチゼルがブレーカ装置に装着されている状態を示す側面図である。
【図7】ブレーカ装置が装着されている建設車両の外観を示す側面図である。
【符号の説明】
【0075】
200 ブレーカ装置
210 ブレーカ本体
211 シャンク機構
212 ピストン部材
214 開口穴
215 ストッパ部
220 防音型ブラケット
221 ブレーカカバー
300,400 チゼル
310,410 チゼル本体
311 先端部
312 末端部
313 中間部
315 凸部
316 平面部分
320 チゼルカバー
321 カバーストッパ
420 第一のチゼルカバー
421,422 凸部
430 第二のチゼルカバー
S 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーカ装置に装着されて破砕作業に利用されるチゼルであって、
末端部が前記ブレーカ装置に保持されて先端部が破砕対象に当接される軸状のチゼル本体と、筒状のチゼルカバーと、を有し、
前記チゼル本体の外面と前記チゼルカバーの内面とが部分的に接合されているとともに部分的に空隙を介して離間しているチゼル。
【請求項2】
前記チゼルカバーの内面に接合される複数の凸部が前記チゼル本体の外面に形成されている請求項1に記載のチゼル。
【請求項3】
前記チゼル本体の軸心方向と直交する断面形状が略多角形である請求項2に記載のチゼル。
【請求項4】
前記チゼルカバーの軸心方向と直交する前記内面の断面形状が円形である請求項2または3に記載のチゼル。
【請求項5】
前記チゼル本体の外面に接合される複数の凸部が前記チゼルカバーの内面に形成されている請求項1ないし3の何れか一項に記載のチゼル。
【請求項6】
前記チゼル本体の軸心方向と直交する断面形状が円形である請求項5に記載のチゼル。
【請求項7】
前記チゼル本体と前記チゼルカバーとが別体に形成されており、
前記チゼル本体が前記チゼルカバーに圧入されている請求項1ないし6の何れか一項に記載のチゼル。
【請求項8】
前記チゼルカバーは、前記チゼル本体の先端部から前記ブレーカ装置より外側の所定位置までをカバーしている請求項1ないし7の何れか一項に記載のチゼル。
【請求項9】
前記チゼル本体と前記チゼルカバーとの耐摩耗性が同等である請求項8に記載のチゼル。
【請求項10】
前記チゼル本体と前記チゼルカバーとが同一の材料で形成されている請求項9に記載のチゼル。
【請求項11】
前記チゼルカバーを第一のチゼルカバーとして、その外面に内面が部分的に接合されているとともに部分的に空隙を介して離間している筒状の第二のチゼルカバーを、さらに有する請求項1ないし10の何れか一項に記載のチゼル。
【請求項12】
前記チゼル本体に前記第一のチゼルカバーが接合されている位置と、前記第一のチゼルカバーに前記第二のチゼルカバーが接合されている位置と、が前記チゼル本体の軸心を中心とした放射方向で相違している請求項11に記載のチゼル。
【請求項13】
前記チゼル本体の外面に接合される複数の凸部が前記第一のチゼルカバーの内面に形成されており、
前記第二のチゼルカバーの内面に接合される複数の凸部が前記第一のチゼルカバーの外面に形成されている請求項11または12に記載のチゼル。
【請求項14】
前記チゼル本体の軸心方向と直交する断面形状が円形であり、
前記第二のチゼルカバーの軸心方向と直交する前記内面の断面形状が円形である請求項13に記載のチゼル。
【請求項15】
チゼルが交換自在に装着されているブレーカ装置であって、
請求項1ないし14の何れか一項に記載のチゼルと、
このチゼルの末端部が先端部に挿入されているブレーカ本体と、
このブレーカ本体の内部で前記チゼルの末端部を保持している保持機構と、
保持された前記チゼルの末端部を打撃する打撃機構と、
を有するブレーカ装置。
【請求項16】
チゼルが交換自在に装着されているブレーカ装置であって、
請求項8に記載のチゼルと、
このチゼルの末端部が先端部に挿入されているブレーカ本体と、
このブレーカ本体の内部で前記チゼルの末端部を保持している保持機構と、
保持された前記チゼルの末端部を打撃する打撃機構と、
前記ブレーカ本体の先端部に位置して前記チゼルが前記保持機構に保持されたときに前記チゼルカバーの少なくとも一部を非接触にカバーするブレーカカバーと、
を有するブレーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−326198(P2007−326198A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160620(P2006−160620)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】