チップホルダ
【課題】流路チップを保持すると共に、流路チップ内の流路に試料液をより容易に流すことが可能なチップホルダを提供する。
【解決手段】 チップホルダ1Aは、流路43を内部に有し、流路に試料液Wを導入する液導入孔44及び流路から試料液を排出する液排出孔45が形成された流路チップ40Aを保持する。チップホルダ1Aは、流路チップが載置されるベース部材10と、ベース部材に取り付けられ流路チップを押圧すると共に、液導入孔に供給する試料液を待機させるウェル26を有するウェル部材20と、ベース部材に取り付けられ流路チップを押圧すると共に、液排出孔に接続される第1のパイプ33及びウェルに挿入される第2のパイプ37を有するカバー部材30とを備え、ウェル部材20は、ウェルと液導入孔とを連結すると共に、ウェル内の試料液を液導入孔に流入せしめる連結部材27を有する。
【解決手段】 チップホルダ1Aは、流路43を内部に有し、流路に試料液Wを導入する液導入孔44及び流路から試料液を排出する液排出孔45が形成された流路チップ40Aを保持する。チップホルダ1Aは、流路チップが載置されるベース部材10と、ベース部材に取り付けられ流路チップを押圧すると共に、液導入孔に供給する試料液を待機させるウェル26を有するウェル部材20と、ベース部材に取り付けられ流路チップを押圧すると共に、液排出孔に接続される第1のパイプ33及びウェルに挿入される第2のパイプ37を有するカバー部材30とを備え、ウェル部材20は、ウェルと液導入孔とを連結すると共に、ウェル内の試料液を液導入孔に流入せしめる連結部材27を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路チップを保持するチップホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流路チップとしては、例えば、特許文献1に記載の化学マイクロデバイスや、特許文献2に記載の微細流路装置などがある。特許文献1及び2に記載の流路チップは、基板と、基板上に接合される弾性部材とを有する。そして、基板と弾性部材との接合部に微細な流路が形成されており、流路内への試料液の供給及び流路内からの試料液の排出が可能なように、流路からチップ表面まで供給口(液導入孔)や排出口(液排出孔)が延びている。
【0003】
このような流路チップでは、供給口を通して被計測対象としての試料(試料液)を流路内に供給し、例えば、特許文献1に記載されているように、流路内の試料に電圧を印加することによって電気泳動分析を実施することが可能となっている。また、特許文献2に記載されているように、流路内にDNAプローブを固定してDNAチップ等として利用される。
【特許文献1】特開2004−219199号公報
【特許文献2】特開2003−121311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、流路を有する流路チップを利用して、例えば、単一細胞レベルでの細胞情報伝達機能の機能解析などが求められている。細胞のような生体試料の機能解析を実施する場合、生体試料をより長く活かした状態を維持するために、流路に培養液として灌流液(試料液)を流すことが好ましい。
【0005】
しかしながら、例えば、特許文献1に記載されているような流路チップ自体に外部から試料液供給パイプ等を接続して流路に灌流液(試料液)を流すことは困難である。そのため、流路チップを保持し、流路チップ内の流路に容易に試料液を流すことが可能なチップホルダの開発が望まれている。
【0006】
なお、特許文献2に記載の微細流路装置では、供給口及び排出口上に、それらに連通した孔部を有する凸部を設け、凸部に嵌合する凹状のジョイント嵌合部を備えた接続装置を接続することによって、流路チップ内の流路への灌流液の供給及び流路からの灌流液の排出が可能となっている。しかしながら、流路チップ上に直接接続装置を被せるだけあるため、流路チップと接続装置との位置合わせなどが困難であり、結果として、流路チップへの灌流液の供給がしにくい場合がある。そのため、前述したようなチップホルダの開発が望まれている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、流路チップを保持すると共に、流路チップ内の流路に試料液をより容易に流すことが可能なチップホルダを提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るチップホルダは、流路を内部に有しており流路に試料液を導入する液導入孔及び流路から試料液を排出する液排出孔が形成されている流路チップを保持するチップホルダであって、(1)流路チップが載置されるベース部材と、(2)ベース部材に取り付けられ、流路チップを押圧すると共に、液導入孔に供給する試料液を待機させるウェルを有するウェル部材と、(3)ベース部材に取り付けられ、流路チップを押圧すると共に、液排出孔に接続される第1のパイプと、ウェルに挿入される第2のパイプとを有するカバー部材と、を備え、(4)ウェル部材は、ウェルと液導入孔とを連結すると共に、ウェル内の試料液を液導入孔に流入せしめる連結部材を有することを特徴とする。
【0009】
上記チップホルダは、ベース部材、ウェル部材及びカバー部材の3つの部材を有しており、ベース部材に流路チップを載置した後、ウェル部材及びカバー部材をベース部材に取り付けることで、流路チップを押圧してチップホルダ内に保持する。このように、ウェル部材及びカバー部材がベース部材に取り付けられた場合、ウェル部材が流路チップを押圧することに伴い、ウェル部材が有する連結部材が液導入孔に接続され、ウェルと液導入孔とが連結される。これにより、ウェル内に待機されている試料液を液導入孔を通して流路に供給できることになる。また、カバー部材が流路チップを押圧することに伴い、第1のパイプが液排出孔に接続され、第2のパイプはウェル内に挿入される。そして、第1のパイプを利用して、流路内の試料液を液排出孔を通して排出すると共に、第2のパイプを利用して試料液をウェル内に供給するか、又はウェル内の試料液を吸引して、ウェル内の試料液の容量を制御できることになる。
【0010】
従って、例えば、第1のパイプにポンプ等を接続し、第1のパイプ及び液排出孔を通して流路内を吸引することで、ウェル内に待機された試料液を流路内に流すことが可能である。また、例えば、第2のパイプにポンプ等を接続し、ウェル内に試料液を注入するか、又はウェル内の過剰の試料液を吸引してウェル外に排出することで、ウェル内の試料液の容量を所定量とするように制御することが可能である。そのため、ベース部材に流路チップを載置した後、ウェル部材及びカバー部材を取り付けるだけで、試料液を流路内に流しながらの流路チップを利用した計測等が可能となる。特に、第1のパイプ及び第2のパイプがカバー部材に設けられていることで、各パイプに接続されるチューブ等の煩雑な配管をカバー部材に集約することができるため、チップホルダの取り扱いが簡便になる。また、チップホルダでは、ウェル部材が有するウェル内に試料液を一時待機させることができるため、流路内に流す試料液の濃度調整などが容易になっている。
【0011】
また、本発明に係るチップホルダでは、ウェル及び連結部材は液導入孔の略直上に位置することが好ましい。この構成では、連結部材と液導入孔との連結時に、液導入孔などに気泡等が入った場合であっても、連結部材及びウェルを通して気泡等が抜けやすい。
【0012】
また、本発明に係るチップホルダでは、カバー部材は、ウェルに挿入される第3のパイプを有しており、第2のパイプ及び第3のパイプのうちの一方が、ウェルに試料液を供給するための供給パイプであり、他方がウェル内の試料液の一部を吸引するためのオーバーフローパイプであることが好ましい。この構成では、供給パイプを通してウェル内にチップホルダの外部から試料液を供給可能であり、また、オーバーフローパイプにより、ウェル内の試料液の一部が排出されるため、ウェル内から試料液があふれでることなく、所定量に制御される。
【0013】
また、本発明に係るチップホルダでは、第1のパイプにおいて液排出孔と接続される側の端部と反対側の端部は、カバー部材から突出しており、第2及び第3のパイプにおいて、ウェルに挿入される側の端部と反対側の端部はカバー部材から突出していることが好適である。
【0014】
この場合、第1のパイプにおいて液排出孔と接続される側と反対側の端部は、カバー部材から突出しているため、流路内の試料液を液排出孔及び第1のパイプを通して排出できることになる。更に、第2及び第3のパイプにおいてウェルに挿入される側の端部と反対側の端部がカバー部材から突出しているため、ウェル内への試料液の供給及びウェル内からの試料液の排出が容易になっている。
【0015】
更に、カバー部材が第2のパイプ及び第3のパイプを有する本発明に係るチップホルダでは、ウェルの内側には段差部が形成されていることが好適である。前述したように、第2のパイプ及び第3のパイプのうちの一方はオーバーフローパイプである。このオーバーフローパイプでウェル内の試料液の一部を排出する際、表面張力等により試料液の水位が一定にならない傾向にあるが、上記のように、段差部を設けることでウェル内の水位を一定にすることが可能である。その結果、例えば、ウェル内に待機中の試料液に刺激薬剤などを注入する場合、刺激薬剤等の濃度の調整が容易になる。
【0016】
更にまた、本発明に係るチップホルダでは、ベース部材及びカバー部材の少なくとも一方には、流路における被観察領域に対向する位置に窓部が形成されており、ウェル部材は、被観察領域上に位置しないようにベース部材に取り付けられることが好ましい。この構成では、窓部を通して流路チップ内の流路の被観察領域を観察できるため、例えば、光学的な計測等が可能である。
【0017】
また、本発明に係るチップホルダでは、ベース部材に設けられており、流路チップの位置決めをする第1位置決め手段と、ベース部材及びウェル部材の少なくとも一方に設けられており、ベース部材に対してウェル部材の位置を決める第2位置決め手段と、ベース部材及びカバー部材の少なくとも一方に設けられており、ベース部材に対するカバー部材の位置を決める第3位置決め手段と、更に備えることが好適である。
【0018】
第1位置決め手段によりベース部材に対する流路チップの位置が決定され、第2位置決め手段により、ベース部材に対するウェル部材の位置が決定され、第3位置決め手段により、カバー部材の位置が決定されるため、連結部材が確実にウェルと液導入孔とを連結でき、更に、第1のパイプと液排出孔とが接続される。
【0019】
なお、第1位置決め手段としては、流路チップと略同形状の凹部が例示される。また、第2位置決め手段としては、ベース部材に設けられた位置決め用のピンと、ウェル部材に形成されたピンと嵌合する貫通孔が例示される。第3位置決め手段も第2位置決め手段と同様のものが例示される。
【0020】
更にまた、本発明に係るチップホルダでは、流路チップは、流路をn本(nは2以上の整数)有しており、n本の流路にそれぞれに対して液導入孔及び液排出孔が形成されており、ウェル部材はウェル及び連結部材をそれぞれn個有しており、カバー部材は第1及び第2のパイプをそれぞれn本有しており、各連結部材は対応するウェルと液導入孔とを連結し、各第1のパイプは対応する液排出孔に接続され、各第2のパイプは対応するウェルに挿入されることが好適である。
【0021】
この場合、n本の第2のパイプの各々を利用して試料液を各ウェル内に供給するか、又は各ウェル内の試料液を吸引して、各ウェル内の試料液の容量を制御できることになる。そして、n個のウェルが連結部材を介して対応する液導入孔に連結されるため、各流路にそれぞれ試料液を供給することができる。また、n本の第1のパイプの各々が対応する液排出孔に接続されるため、各流路から試料液を排出することが可能である。よって、n本の流路にそれぞれ試料液を流すことが容易である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るチップホルダによれば、流路チップを保持しながら、流路チップ内の流路に容易に試料液を流すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係るチップホルダの実施形態について説明する。図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率等は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0024】
(第1の実施形態)
図1〜図4に示すチップホルダ1Aは、ベース部材10と、ウェル部材20と、カバー部材30とを有しており、チップホルダ1Aは流路チップ40Aを保持するためのものである。以下の説明では、ベース部材10に対してカバー部材30が位置する側を上側と称す。
【0025】
ここで、先ず、チップホルダ1Aで保持する流路チップ40Aの構成について流路チップ40Aの構成を示す図7を利用して説明する。図7(a)は流路チップの平面図である。図7(b)は流路チップの側面図である。図7(c)は、図7(a)のVIIc―VIIc線に沿った断面図である。なお、図7(c)は、流路チップ40Aの断面構成の一部を拡大して示している。
【0026】
流路チップ40Aは、基板としてのガラス板41の上面41aに例えばPDMAからなる弾性部材42が接合されて構成されており、板状を呈している。流路チップ40Aは、ガラス板41と弾性部材42との接合部に8本の微細な流路43、例えば、マイクロ流路を有する。8本の流路43は、図7(a)に示すように、互いに略平行に延在している被観察領域(所定領域)43aを有するように形成されており、各被観察領域43aの壁面の少なくとも一部には、図7(c)に示すように、被計測対象としての細胞Sが付着されている。また、各流路43の両端部からは液導入孔44及び液排出孔45が弾性部材42の上面42bまで延びている。
【0027】
次に、図1〜図6を利用して、流路チップ40Aを保持するチップホルダ1Aについて説明する。図1は、チップホルダ1Aの分解斜視図である。また、図2は、チップホルダ1Aの平面図である。図3は、チップホルダ1Aの側断面図であり、図3では、説明の便宜のため、チップホルダ1Aの特徴部分が現れるように示している。図1〜図3では、チップホルダ1Aが流路チップ40Aを保持している状態を示している。図4は、図3の一点鎖線で囲んだ領域の拡大図である。図5は、ウェル部材20の平面図である。更に、図6は、図5のVI―VI線に沿った断面図である。
【0028】
図1〜図3に示すように、チップホルダ1Aは、流路チップ40Aが載置されるベース部材10を有する。本実施形態では、ベース部材10の長手方向を横方向と称し、長手方向に略直交する方向を縦方向とも称す。
【0029】
ベース部材10は、板状を呈しており、例えばアルミとステンレスとからなる。ベース部材10は、ウェル部材20及びカバー部材30が装着される凹部11を有し、凹部11の底壁面には流路チップ40Aが装着される凹部(第1位置決め手段)12が形成されている。凹部12の形状は、流路チップ40Aと略同形状であり、凹部12の深さは、流路チップ40Aの厚さと略同一である。よって、流路チップ40Aが凹部12に装着されることで、ベース部材10に対する流路チップ40Aの位置が確実に決定され、更に、流路チップ40Aの上面が凹部11の底壁面と略同一平面上に位置することになる。凹部12への流路チップ40Aの着脱を容易にするために、凹部12の側壁面の一部が外側に切り欠かれ、切欠き部14が形成されていることが好ましい。また、凹部12のうち流路43の被観察領域43aに対向する部分には、観察用の窓部である開口13が形成されている。
【0030】
また、凹部11の底壁面において、凹部12の両側には、ウェル部材20及びカバー部材30の位置決め用のピン15,16が設けられ、ピン15及びピン16がそれぞれ設けられている側には、ウェル部材20及びカバー部材30を螺子止めするための螺子孔17,18が更に形成されている。
【0031】
ウェル部材20は、凹部11の側部11a側に配置されており、ウェル部材20は、ベース部材10のピン15に嵌合する貫通孔22−1と螺子51を通すための貫通孔22−2とが形成された第1プレート部21を有する。第1プレート部21の縦方向の長さは凹部11の縦方向の長さとほぼ同じである。また、第1プレート部21の横方向の長さは、第1プレート部21が液導入孔44を覆う一方、開口13を利用した被観察領域43aの観察が妨げられないように、端部21aが被観察領域43a上に位置しない長さとなっている。そして、第1プレート部21の端部21a側には、縦方向に延在した第2プレート部25が8個の液導入孔44上に一体的に設けられている。第1プレート部21及び第2プレート部25は例えばアルミとステンレスとからなる。
【0032】
図1及び図3に示すように、ウェル部材20は流路チップ40Aの各液導入孔44の直上に、流路43に灌流させる灌流液(試料液)Wを待機させるためのウェル26を有する。8個のウェル26の形状は略同一であり、その容量としては例えば1mlである。
【0033】
図5及び図6に示すように、ウェル26は、第2プレート部25の上面25aから第1プレート部21内部まで延びている穴部26aと、穴部26aの上端側の内壁の一部が外側に切り欠かれてなるパイプ挿入部26b,26cとから構成されている。パイプ挿入部26b,26cには、後述する供給パイプ37(第2のパイプ)及びオーバーフローパイプ38(第3のパイプ)がそれぞれ挿入される。また、パイプ挿入部26b,26cの深さは、第2プレート部25の厚さより浅いことから、ウェル26はそれぞれ内側に段差部26dを有する。
【0034】
各ウェル26の下端、換言すれば、穴部26aの下端からはステンレス製の連結パイプ(連結部材)27がウェル部材20の下面に向けて延びており、連結パイプ27の下端部27aは、ウェル部材20の下面から僅かに突出している。よって、各ウェル26に連通した連結パイプ27と、各ウェル26に対応する液導入孔44とが接続され、各ウェル26と対応する液導入孔44とが連結される。その結果、ウェル26内に灌流液(試料液)Wが供給されると、灌流液Wは連結パイプ27及び液導入孔44を通って流路43に流入することになる。また、連結パイプ27の下端部27aは、ウェル部材20の下面から僅かに突出していることから、図3及び図4に示すように、ウェル部材20がベース部材10に螺子止めされているとき、弾性部材42を弾性変形させながら、連結パイプ27と液導入孔44とが接続されるため、連結パイプ27と液導入孔44との接続部からの液漏れや、気泡等の侵入が抑制されている。
【0035】
連結パイプ27を通して液導入孔44に効率的に灌流液Wを導入させるために、ウェル26は、連結パイプ27に向けて先細りしたテーパ状であることが好ましい。また、多少の位置ずれを許容する観点から、連結パイプ27の下端部27aは、図6に示すように、面取りされていることが好適である。
【0036】
ここでは、ステンレス製連結パイプ27を、ウェル26と液導入孔44とを連結する連結部材であるとしたが、連結部材は、例えば、パッキンとすることもできるし、材質もステンレス製に限らずゴムとすることも可能である。
【0037】
図1〜図3に示すように、カバー部材30は、凹部11の側部11b側に配置されており、ベース部材10のピン16に嵌め合わされる貫通孔32−1と、螺子52を通すための貫通孔32−2とが形成された板状の第1カバー部31を有する。第1カバー部31の縦方向の長さは凹部11の縦方向の長さとほぼ同じである。また、第1カバー部31の横方向の長さは、端部31aが、第1プレート部21の端部21aと接する、或いは、近接するような長さである。
【0038】
また、第1カバー部31には、各液排出孔45に接続され液排出孔45を通して流路43内の灌流液Wを排出するためのステンレス製の排出パイプ33(第1のパイプ)が、各液排出孔45の直上に配設されている。各排出パイプ33は第1カバー部31の厚さ方向に延在し、第1カバー部31を貫くように設けられている。第1カバー部31において各排出パイプ33が配設されている部分の上面側には、図1及び図3に示すように凹部が形成されており、排出パイプ33の上端部33a側が露出するようになっている。また、排出パイプ33の下端部33bは、連結パイプ27の場合と同様に、第1カバー部31の下面から僅かに突出している。これにより、カバー部材30がベース部材10に螺子止めされているとき、弾性部材42を弾性変形させて液排出孔45に接続されるため、排出パイプ33と液排出孔45との接続部での液漏れが抑制される。
【0039】
第1カバー部31の端部31aには、板状の第2カバー部34が一体的に設けられている。なお、第1カバー部31及び第2カバー部34は例えばアルミとステンレスとからなる。第2カバー部34は、端部31aの上側から横方向に張り出すように第1カバー部31に対して設けられているため、第1カバー部31と第2カバー部34とは段違いになっている。
【0040】
第2カバー部34の下面側には、第2プレート部25を受けられるように第2プレート部25と略同形の凹部35が形成されている。そして、第2カバー部34のうち各穴部26aの直上には、例えば分注ヘッドなどを利用して各ウェル26に刺激薬剤を投入するための開口36が形成されている。また、各パイプ挿入部26b,26cの直上には、ステンレス製の供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38が設けられている。供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38は、第2カバー部34の厚さ方向に延在しており、第2カバー部34を貫くように配設されている。供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38は、その上端部37a,38a及び下端部37b,38bが第2カバー部34から突出しており、供給パイプ37の下端部37bは、オーバーフローパイプ38の下端部38bよりも深くウェル26内に挿入されるように設けられている。
【0041】
また、ベース部材10が有する開口13の直上であって流路43の被観察領域43aと対向する位置には開口39が形成されている。図1〜図3に示したカバー部材30では、第1カバー部31と第2カバー部34との境界部にかかるように円形の開口39が形成されている。
【0042】
上記構成のチップホルダ1Aで流路チップ40Aを保持する場合には、先ず、ベース部材10の凹部12に流路チップ40Aを装着する。凹部12は、流路チップ40Aと略同一形状であるため、ベース部材10に対して流路チップ40Aの位置が確実に決まる。また、凹部12の深さと流路チップ40Aの厚さとはほぼ同じであることから、凹部11の底壁面と流路チップ40Aの上面とが略同一平面上に位置することになる。
【0043】
次に、貫通孔22−1にピン15を嵌め合わせた後、ウェル部材20を螺子51を利用して螺子止めする。これにより、第1プレート部21によって流路チップ40Aが押圧される。その結果、連結パイプ27が液導入孔44に対して押しつけられるので、連結パイプ27と液導入孔44とが接続され、結果として、各ウェル26と、対応する液導入孔44とが連結される。
【0044】
続いて、貫通孔32−1にピン16を嵌め合わせた後、カバー部材30をベース部材10に螺子52によって螺子止めする。これにより、第1カバー部31により流路チップ40Aが押圧される。その結果、排出パイプ33が液排出孔45に対して押しつけられるため、排出パイプ33と液排出孔45とが接続される。また、第2カバー部34が有する凹部35内に第2プレート部25が収容され、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38が対応するパイプ挿入部26b,26cに挿入される。カバー部材30がベース部材10に取り付けられたとき、第2プレート部25の上面25aは第2カバー部34に接するため、第2カバー部34によって第2プレート部25が押圧される。このカバー部材30による第2プレート部25への押圧によって、連結パイプ27が更に液導入孔44側に押圧される。その結果、連結部での液漏れや、気泡等の侵入の防止がより一層図られていることになる。
【0045】
上記チップホルダ1Aは、図8に示す灌流システム60で好適に利用できる。灌流システム60は、チップホルダ1Aに保持された流路チップ40A内に培養液としての灌流液Wを灌流させながら、任意のタイミングで流路43内に試薬としての刺激薬剤を投入し、流路43内の細胞Sの刺激薬剤に対する反応を観察・計測するためのものである。ここでは、細胞Sに予め蛍光プローブを付けておき蛍光強度を検出するものとする。
【0046】
図8に示すように、灌流システム60は、灌流液タンク61と、廃液タンク62と、XYステージ63と、観察光学系64と、分注ヘッド65と、分注ヘッド駆動手段68とを有する。なお、図8は、チップホルダ1Aに保持された流路チップ40A内の細胞Sを観察・計測するときの状態を示している。
【0047】
灌流液タンク61には、流路43に流す培養液としての灌流液(試料液)Wが貯留されている。廃液タンク62は、流路43から液排出孔45を通して排出された灌流液Wを貯留する。また、XYステージ63は、流路チップ40Aが保持されたチップホルダ1Aを載置するためのものであり、下方から流路チップ40Aを観察するための開口63aが形成されている。
【0048】
観察光学系64は、流路43内に付着された細胞Sの刺激薬剤に対する反応を光学的に観察・計測するためのものである。観察光学系64は、細胞Sに付されている蛍光プローブを励起可能な波長の励起光71を出力する光源部64Aと、蛍光プローブからの蛍光72を検出するカメラ等の検出部64Bと、光源部64Aから出力された励起光71を流路43に収束光として照射すると共に、蛍光プローブからの蛍光72を集光して検出部64Bに入力する導光光学系64Cとを有する。導光光学系64Cとしては、例えば、対物レンズと、励起光及び蛍光のうち一方を透過し他方を反射させるダイクロイックミラーとを含んで構成されていればよい。
【0049】
分注ヘッド65は、8個のウェル26に刺激薬剤を一括して注入するためのものであり、いわゆる8連分注ヘッドが例示される。分注ヘッド駆動手段68は、分注ヘッド65を3次元的に移動せしめると共に、分注ヘッド65への刺激薬剤の注入及び刺激薬剤の排出を制御する。
【0050】
次に、灌流システム60におけるチップホルダ1Aの使用方法を説明する。
【0051】
先ず、蛍光プローブが付けられた細胞Sが流路43内に播種・培養されている流路チップ40Aと、チップホルダ1Aとを用意する。この際、チップホルダ1Aは、ベース部材10、ウェル部材20及びカバー部材30に分解しておく。
【0052】
そして、カバー部材30の供給パイプ37と灌流液タンク61とをチューブ66aにより連結し、カバー部材30の排出パイプ33及びオーバーフローパイプ38と、廃液タンク62とをチューブ66b及びチューブ66cにより連結し、カバー部材30を観察位置の上方に配置させておく。
【0053】
次に、チップホルダ1Aが有するベース部材10の凹部12に流路チップ40Aを取り付け、ウェル部材20をベース部材10に装着する。その後、流路チップ40A及びウェル部材20が装着されたベース部材10をXYステージ63上にセットする。この際、XYステージ63の開口63a上にベース部材10の開口13が位置するようにセットする。続いて、XYステージ63を駆動して、図8に示すように、観察光学系64上の所定の観察位置まで移動させた後、ベース部材10にカバー部材30を螺子止めしてチップホルダ1Aとする。
【0054】
次に、灌流液タンク61からチューブ66a上に設けられたポンプ67aを駆動して灌流液Wを送出しながら、チューブ66b上に設けられるポンプ67bを駆動してチューブ66b及び排出パイプ33を介して流路43内を吸引する。
【0055】
ポンプ67aにより灌流液タンク61から送出された灌流液Wは、供給パイプ37を介してウェル26内に流入した後、ウェル26の下端部から連結パイプ27及び液導入孔44を介して流路43内に流入する。流路43内は吸引されているため、流路43内に流入した灌流液Wは、液排出孔45、排出パイプ33及びチューブ66bを介して廃液タンク62に排出される。よって、流路43内を灌流液Wが灌流する。
【0056】
ウェル26内に灌流液Wを導入する場合には、ウェル26内から灌流液Wがあふれることを防止するために、チューブ66c上に設けられたポンプ67cを駆動し、チューブ66b及びオーバーフローパイプ38を介してウェル26内から一定水位以上の灌流液Wを廃液タンク62に排出しておく。
【0057】
また、流路43内への灌流液Wの灌流を開始させたときは、観察光学系64が有する光源部64Aから励起光71を出力して導光光学系64Cにより励起光71を開口63a,13及びガラス板41を通して8本の流路43における被観察領域43a内の細胞Sに収束光として照射する。細胞Sには蛍光プローブが付けられているため、励起光71の照射によって蛍光72が生じることになる。発生した蛍光72は、導光光学系64Cで集められて検出部64Bに入力され検出される。これにより、被観察領域43a内の細胞Sが観察されることになる。
【0058】
次に、分注ヘッド駆動手段68により分注ヘッド65を刺激薬剤を保持しているリガンドプレート(不図示)にアクセスさせ、分注ヘッド65にリガンドプレートから刺激薬剤を吸引させる。そして、図8に示すように、分注ヘッド駆動手段68によって分注ヘッド65の一部をウェル26内に開口36を通して挿入して、刺激薬剤をウェル26内の灌流液Wに注入する。刺激薬剤が注入された灌流液Wが、流路43内に流入することによって、刺激薬剤に細胞Sが反応し、蛍光強度の変化が生じる。よって、刺激薬剤の投与による蛍光強度の変化を検出部64Bで検出することで、刺激薬剤に対する細胞Sの応答が計測されることになる。
【0059】
次に、チップホルダ1Aの作用・効果について説明する。
【0060】
チップホルダ1Aでは、流路チップ40Aと略同形状の凹部12に流路チップ40Aを取り付けるため、ベース部材10に対して流路チップ40Aが一定の位置に固定される。また、ベース部材10にそれぞれ設けられたピン15,16にウェル部材20及びカバー部材30の貫通孔22−1及び貫通孔32−1をそれぞれ嵌合させることで、ウェル部材20及びカバー部材30を位置合わせさせているため、ウェル部材20及びカバー部材30がベース部材10の一定の位置に確実に固定される。よって、流路チップ40Aをベース部材10に取り付けた後に、ウェル部材20及びカバー部材30をベース部材10に装着しても、連結パイプ27と液導入孔44とが確実に接続され、また、排出パイプ33と液排出孔45とが確実に接続される。
【0061】
従って、灌流システム60を利用して説明したように、流路チップ40Aをベース部材10に載置し、ベース部材10にウェル部材20を装着した後に、所定の観察位置まで搬送して予めチューブ66a〜66cが接続されたカバー部材30をベース部材10に装着するだけで、細胞Sの機能解明のための解析を容易に実施でき、例えば、計測の自動化を図ることも可能である。
【0062】
また、チップホルダ1Aは、流路43の数に対応したウェル26を有することから、8個のウェル26への刺激薬剤の一括分注ができる。その結果、8本の流路43における一括計測が可能であり、細胞Sの刺激薬剤に対する反応の計測を大量に実施することが可能である。
【0063】
また、連結パイプ27が押圧されて液導入孔44に接続されるため、連結パイプ27と液導入孔44との接続部での液漏れや、気泡等の液導入孔44への侵入が抑制されている。このように、気泡等の液導入孔44への侵入が抑制されているが、仮に、接続時に液導入孔44に気泡等が侵入したとしても、液導入孔44の直上に連結パイプ27及びウェル26が位置することから、気泡は、連結パイプ27及びウェル26内を上昇して排出される。更に、液導入孔44、連結パイプ27及びウェル26の上記配置関係により、ウェル26から液導入孔44までの経路がより短くなっているので、ウェル26内に刺激薬剤を投入したときに、刺激薬剤が流路43内に速やかに流入し易い。各ウェル26への刺激薬剤の投入による各流路43内の細胞Sの反応をほぼ同じタイミングで計測する観点から、各ウェル43の下端部から液導入孔44までの経路長は同じであることが好ましい。
【0064】
更に、チップホルダ1Aでは、ウェル部材20が有するウェル26において灌流液Wを待機させ、そのウェル26内の灌流液Wに分注ヘッド等を利用して刺激薬剤を投入するため、刺激薬剤の濃度コントロールが容易である。
【0065】
また、ウェル26内に段差部26dが設けられていることから、ウェル26内に灌流液Wが導入された場合、灌流液Wの液面が一定になる。仮にウェルに段差部が形成されていないとすると、オーバーフローパイプ38を利用してウェル26内の灌流液Wの一部を吸引した際、表面張力などでウェル26の内壁を伝ってオーバーフローパイプ38に灌流液Wが流れ込み、液面が一定にならない虞がある。このように、ウェル26内の灌流液Wの水位が一定でない場合には、刺激薬剤を注入した際に、濃度コントロールが困難である。これに対して、チップホルダ1Aでは、段差部26dを設けているため、ウェル26内の液面が一定になる結果、刺激薬剤の濃度コントロールがより一層可能となっている。
【0066】
なお、本実施形態では、穴部26aの上端側の縁部の一部を切り欠いて、穴部26aの深さより浅いパイプ挿入部26b,26cを形成することによって、ウェル26内に2箇所の段差部26dを設けているが、例えば、穴部26aの全周に亘って段差部26dを形成していてもよい。
【0067】
また、段差部26dを有することで上記のように液面が一定になりやすいため、ウェル26内に段差部26dが形成されていることが好適であるが、段差部26dは形成されていなくてもよい。更に、ウェル26内の灌流液Wの液量を調節するために、オーバーフローパイプ38を設けるとしているが、ウェル26内への灌流液Wの導入量や流路43からの灌流液Wの排出量を制御することで、容量を調節してもよく、その場合には、オーバーフローパイプ38は設けなくてもよい。また更に、ウェル26内の灌流液Wの液量を調節するために、上記実施形態では、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38の二本のパイプを例示したが、これに限定されるのではなく、例えば、吸排出が可能なポンプ等を使用すれば、一本のパイプで液量を調節可能である。
【0068】
(第2の実施形態)
次に、図9〜図12を利用して、本発明に係るチップホルダの第2の実施形態について説明する。
【0069】
図9及び図10に示すように、チップホルダ1Bは、流路チップ40Bを保持するためのものである。
【0070】
本実施形態においても、図12を利用して、流路チップ40Bについて先ず説明する。流路チップ40Bの構成は、8本の流路43において、液導入孔44から被観察領域43aまでの距離がほぼ一致すると共に、液排出孔45から被観察領域43aまでの距離がほぼ一致するように、流路43が形成されている点で、流路チップ40Aの構成と相違する。この構成では、図12に示すように液導入孔44及び液排出孔45は円弧状に配列されることになる。
【0071】
次に、流路チップ40Bを保持するチップホルダ1Bについて説明する。チップホルダ1Bは、ベース部材80にウェルプレート(ウェル部材)90及び灌流プレート(カバー部材)100が取り付けられて構成されている。ベース部材80、ウェルプレート90及び灌流プレート100の材質は、第1の実施形態で例示したベース部材10、ウェル部材20及びカバー部材30の材質と同じとすることができる。
【0072】
ベース部材80は、上側からみた場合の形状が略長方形状であり、ベース部材10の場合と同様に、凹部11を有し、凹部11内には更に流路チップ40Bと略同形状の凹部12が形成されている。この凹部12の中央部には観察用の窓としての開口13が形成されている。また、凹部11の底壁面には、灌流プレート100の位置決めをするためのピン16と、灌流プレート100を螺子止めするための螺子52を受ける螺子孔18とが形成されている。
【0073】
なお、本実施形態においても、ベース部材80の長手方向を横方向と称し、長手方向に略直交する方向を縦方向とも称す。また、本実施形態において、「上側」とは、ベース部材80に対して灌流プレート100が配置される側である。
【0074】
ウェルプレート90は、端部90aが凹部11の側部11aに接するようにベース部材80に載置されている。図9に示すように、ウェルプレート90の縦方向の長さは、凹部11の縦方向の長さと略同一であるため、上記のようにベース部材80に載置することで、ウェルプレート90の位置が決定される。よって、凹部11がウェルプレート90の位置決め手段(第2位置決め手段)として機能していることになる。
【0075】
図11に示すように、ウェルプレート90には、端部90a側に同じ大きさの8個のウェル91を有する。各ウェル91は、上側からみた場合に略長方形状を有しており、各ウェル91からは溝部92が端部90b側に向けて液導入孔44の直上まで延びている。各溝部92の端部92aの下部からは、液導入孔44と接続される連結パイプ27がウェルプレート90の下面に向けて延びており、連結パイプ27の下端は、ウェルプレート90の下面から僅かに突出している。
【0076】
図9及び図10に示すように、灌流プレート100は、端部100a側における下面の一部が、ウェルプレート90の溝部92と、ウェル91のうち溝部92との接続側とをカバー可能なように切り欠かれている。灌流プレート100は、流路チップ40Bをカバーすると共に、ウェルプレート90のうちウェル91の一部が露出するようにウェルプレート90の端部90b側をカバーする。
【0077】
灌流プレート100には、ベース部材80のピン16に嵌合する貫通孔32−1及び螺子52を通す貫通孔32−2が形成されている。また、灌流プレート100のうちベース部材80の開口13の直上であって流路43の被観察領域43aに対向する部分には開口39が形成されている。更に、流路チップ40Bの液排出孔45の直上には、第1の実施形態の場合と同様に排出パイプ33が配設されており、各ウェル91の直上には、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38が、第1の実施形態と同様に配設されている。
【0078】
上記構成のチップホルダ1Bでは、ベース部材80の凹部12内に流路チップ40Bを取り付けた後、ベース部材80に前述したようにウェルプレート90を載置する。次に、灌流プレート100をピン16及び貫通孔32−1を利用して位置決めした後、螺子止めする。
【0079】
このようにしてチップホルダ1Bが組み立てられたとき、ウェル91のうち、灌流プレート100によってカバーされている部分に供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38の下端部37b,38bが挿入される。また、灌流プレート100がベース部材80に螺子止めされることによって、排出パイプ33が液排出孔45に押しつけられて排出パイプ33と液排出孔45とが連結される。更に、灌流プレート100によりウェルプレート90が押圧されるため、連結パイプ27が液導入孔44に押圧されることになる。その結果、連結パイプ27と液導入孔44とが接続されて連結パイプ27及び溝部92を介して液導入孔44とウェル26とが連結される。
【0080】
チップホルダ1Bは、第1の実施形態のチップホルダ1Aの場合と同様に、例えば、図8に示した灌流システム60において好適に利用される。灌流システム60でのチップホルダ1Bの使用方法は、チップホルダ1Bを組み立てる際に、ウェルプレート90を凹部11の側部11aに接するようにして配置して位置決めした後に、灌流プレート100でウェルプレート90を押圧し固定する点、及び、分注ヘッド65の一部が、ウェル91のうち灌流プレート100から露出している部分に挿入される点以外は、チップホルダ1Aの場合と同様である。
【0081】
また、チップホルダ1Bの作用・効果は、チップホルダ1Aの場合と同様である。すなわち、チップホルダ1Bにおいても、ベース部材80に対して流路チップ40B、ウェルプレート90及び灌流プレート100の位置が決定されるため、チップホルダ1Bを組み立てることで、連結パイプ27と液導入孔44とが確実に接続され、排出パイプ33と液排出孔45とが確実に接続される。また、灌流プレート100がベース部材80に螺子止めされることで、ウェルプレート90が押圧され、連結パイプ27と液導入孔44とが接続される。その結果、連結パイプ27と液導入孔44との接続部において、液漏れが防止され、更に、気泡等が流路43内に侵入することが抑制されている。
【0082】
また、チップホルダ1Bは、ウェル91において灌流液Wを待機させ、そのウェル91内の灌流液Wに分注ヘッド等を利用して刺激薬剤を投入するため、刺激薬剤の濃度コントロールが容易である。このような濃度コントロールを更に容易にする観点から、ウェル91の内側に段差部を形成することは好適である。また、各ウェル91への刺激薬剤の投入による各流路43内の細胞Sの反応をほぼ同様のタイミングで計測する観点から、各ウェル91から対応する液導入孔44までの経路長は同じであることが好ましい。
【0083】
なお、チップホルダ1Bにおいて、カバー部材としての灌流プレート100は、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38を有するとしたが、灌流プレート100は、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38のいずれかを有しない構成とすることも可能である。この場合は、灌流プレート100で覆われていないウェル91の部分に供給パイプ又はオーバーフローパイプを直接挿入すればよい。この場合でも、例えば、流路チップ40Bの液導入孔44に供給パイプ又はオーバーフローパイプを直接接続する場合よりも、流路43への灌流液Wの供給は容易である。また更に、ウェル91内の灌流液Wの液量を調節するために、上記実施形態では、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38の二本のパイプを例示したが、これに限定されるのではなく、例えば、吸排出が可能なポンプ等を使用すれば、一本のパイプで液量を調節可能である。
【0084】
以上、本発明のチップホルダの好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。第1の実施形態では、8本の連結パイプ(連結部材)27は直線上に配列されているが、例えば、図12に示した流路チップ40Bを利用する場合には、図13に示すように連結パイプ27の配列状態も円弧状にしておけばよい。なお、第1の実施形態のチップホルダ1Aにおいて、流路チップ40Bを保持する場合には、流路チップ40Bの液排出孔45の配列状態にあわせて、排出パイプ33の配列状態も円弧状にしておく。また、第2の実施形態のチップホルダ1Bにおいて、流路チップ40Aを保持する場合には、ウェルプレート90に設けられる連結パイプ27及び灌流プレート100に設けられた排出パイプ33の配列状態は直線状にすればよい。
【0085】
更に、第1の実施形態の場合、ウェル26は液導入孔44の直上に位置するとしたがこれに限定されない。ウェル26が対応する液導入孔44の直上に位置しない場合には、第2の実施形態のように溝部を設けて、ウェル26と連結パイプ27とを繋げても良いし、屈曲させた連結パイプ(連結部材)27を利用することで、ウェル26と液導入孔44とを連結することも可能である。また、供給パイプ37、オーバーフローパイプ38及び排出パイプ33は、直線状としたが屈曲していてもよい。
【0086】
更にまた、チップホルダ1A,1Bでは、灌流システム60が有する観察光学系64による光学的な観察・計測に利用できるように、窓部としての開口13,39を有するとしたが、光学的な観察・計測を実施しない場合、例えば、チップホルダ1A,1BでDNAチップとしての流路チップを保持する場合には、開口13,39は設けなくてもよい。
【0087】
また、光学的な観察をする場合であっても、開口13,39の何れか一方が形成されていればよい。なお、開口13,39が形成されている方が、開口13,39のうちの一方の開口を通して入射された励起光のうち蛍光プローブに吸収されなかった光が他方の開口を通してチップホルダ1A,1Bから抜けるため、より高感度に検出できるので好ましい。また、窓部は開口13,39としたがこれに限定されず、流路チップ40A,40Bを観察できるような透明部材から構成されていてもよい。
【0088】
更に、チップホルダ1Aでは、ウェル26、連結パイプ27、排出パイプ33、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38の数は、流路チップ40Aが有する流路43の数と同じ数だけ有していればよく、例えば、流路43が1本である場合には、ウェル26は1個でよく、また、連結パイプ27、排出パイプ33、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38はそれぞれ1本あればよい。また、流路43がn本(nは2以上の整数)である場合には、ウェル26はn個でよく、また、連結パイプ27、排出パイプ33、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38はそれぞれn本あればよい。チップホルダ1Bについても同様である。
【0089】
また、連結部材27の下端部27aは、ウェル部材20の下面から突出するとしたが、液導入孔44と接続できればよい。排出パイプ33についても同様である。
【0090】
更に、流路チップ40A,40Bを位置決めする第1位置決め手段は凹部12としたが、流路チップ40A,40Bをベース部材10の所定位置に配置できれば特に限定されず、例えば、流路チップ40A,40Bの角部の位置を規定するような隆起部がベース部材10に形成されていてもよい。更に、第1の実施形態において第2位置決め手段は、ピン16と貫通孔22−1とからなるとしたが、第2の実施形態で示したように凹部11を利用することも可能である。また、第3位置決め手段も、ピン16と貫通孔32−1に限定されず、例えば、凹部11を利用することも可能である。
【0091】
また、灌流システム60を利用して例えば計測の自動化を図るという観点からは、第1位置決め手段、第2位置決め手段及び第3位置決め手段を備えることが好ましいが、必ずしも備えなくてもよい。例えば、ベース部材10の所定位置にマークをつけておき、そのマークに応じて流路チップ40A,40Bを配置した後、ウェル部材20,90及びカバー部材30,100を、例えば、螺子51,52を利用して固定すれば、連結パイプ27と液導入孔44及び排出パイプ33と液排出孔45をそれぞれ接続できる。
【0092】
更にまた、第1の実施形態のチップホルダ1Aでは螺子51,52を利用してウェル部材20及びカバー部材30をベース部材10に螺子止めすることで、ウェル部材20及びカバー部材30を流路チップ40A,40Bに押圧している。しかしながら、例えば、灌流システム60がウェル部材20及びカバー部材30を押圧する押圧手段を有する場合は、必ずしも螺子止めによる固定に限定されない。また、チップホルダ1Bについても同様である。
【0093】
更に、チップホルダ1A,1Bで保持する流路チップ40A,40Bの上面は平面状としているが、例えば、特許文献2に記載されているように、液導入孔44及び液排出孔45に連通する孔部を有する凸部が設けられていても良い。この場合には、ウェル部材20,90及びカバー部材30,100において対応する箇所に、流路チップ40A,40B上に設けられた凸部を受ける凹部を形成しておけばよい。
【0094】
また、試料液Wは、培養液としての灌流液Wとしたが、前述したようにDNAチップとしての流路チップ40A,40Bを使用する場合には、検出する試料(DNA)を含んだ溶液とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に係るチップホルダの一実施形態の分解斜視図である。
【図2】図1に示したチップホルダの平面図である。
【図3】図1に示したチップホルダの側断面図である。
【図4】図3の一点鎖線で囲んだ領域の拡大図である。
【図5】図1示したチップホルダが有するウェル部材の平面図である。
【図6】図5のVI―VI線に沿った断面図である。
【図7】図1に示したチップホルダが保持する流路チップを示す図である。
【図8】灌流システムの概略構成図である。
【図9】本発明に係るチップホルダの他の実施形態の平面図である。
【図10】図9に示したチップホルダの側断面図である。
【図11】図9に示したチップホルダが有するウェル部材の平面図である。
【図12】図9に示したチップホルダが保持する流路チップの平面図である。
【図13】図5に示したウェル部材の他の例の平面図である。
【符号の説明】
【0096】
1A,1B…チップホルダ、10…ベース部材、11…凹部(第2位置決め手段)、12…凹部(第1位置決め手段)、13,39…開口(窓部)、15…ピン(第2位置決め手段)、16…ピン(第3位置決め手段)、20…ウェル部材、22−1…貫通孔(第2位置決め手段)、26…ウェル、26d…段差部、27…連結パイプ(連結部材)、30…カバー部材、32−1…貫通孔(第3の位置決め手段)、33…排出パイプ(第1のパイプ)、33a…上端部(液排出孔と接続される側と反対側の端部)、37…供給パイプ(第2のパイプ)、37a…上端部(ウェルに挿入される側と反対側の端部)、38…オーバーフローパイプ(第3のパイプ)、38a…上端部(ウェルに挿入される側と反対側の端部)、40A,40B…流路チップ、43…流路、43a…被観察領域、44…液導入孔、45…液排出孔、80…ベース部材、90…ウェルプレート(ウェル部材)、91…ウェル、100…灌流プレート(カバー部材)、W…灌流液(試料液)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路チップを保持するチップホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流路チップとしては、例えば、特許文献1に記載の化学マイクロデバイスや、特許文献2に記載の微細流路装置などがある。特許文献1及び2に記載の流路チップは、基板と、基板上に接合される弾性部材とを有する。そして、基板と弾性部材との接合部に微細な流路が形成されており、流路内への試料液の供給及び流路内からの試料液の排出が可能なように、流路からチップ表面まで供給口(液導入孔)や排出口(液排出孔)が延びている。
【0003】
このような流路チップでは、供給口を通して被計測対象としての試料(試料液)を流路内に供給し、例えば、特許文献1に記載されているように、流路内の試料に電圧を印加することによって電気泳動分析を実施することが可能となっている。また、特許文献2に記載されているように、流路内にDNAプローブを固定してDNAチップ等として利用される。
【特許文献1】特開2004−219199号公報
【特許文献2】特開2003−121311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、流路を有する流路チップを利用して、例えば、単一細胞レベルでの細胞情報伝達機能の機能解析などが求められている。細胞のような生体試料の機能解析を実施する場合、生体試料をより長く活かした状態を維持するために、流路に培養液として灌流液(試料液)を流すことが好ましい。
【0005】
しかしながら、例えば、特許文献1に記載されているような流路チップ自体に外部から試料液供給パイプ等を接続して流路に灌流液(試料液)を流すことは困難である。そのため、流路チップを保持し、流路チップ内の流路に容易に試料液を流すことが可能なチップホルダの開発が望まれている。
【0006】
なお、特許文献2に記載の微細流路装置では、供給口及び排出口上に、それらに連通した孔部を有する凸部を設け、凸部に嵌合する凹状のジョイント嵌合部を備えた接続装置を接続することによって、流路チップ内の流路への灌流液の供給及び流路からの灌流液の排出が可能となっている。しかしながら、流路チップ上に直接接続装置を被せるだけあるため、流路チップと接続装置との位置合わせなどが困難であり、結果として、流路チップへの灌流液の供給がしにくい場合がある。そのため、前述したようなチップホルダの開発が望まれている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、流路チップを保持すると共に、流路チップ内の流路に試料液をより容易に流すことが可能なチップホルダを提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るチップホルダは、流路を内部に有しており流路に試料液を導入する液導入孔及び流路から試料液を排出する液排出孔が形成されている流路チップを保持するチップホルダであって、(1)流路チップが載置されるベース部材と、(2)ベース部材に取り付けられ、流路チップを押圧すると共に、液導入孔に供給する試料液を待機させるウェルを有するウェル部材と、(3)ベース部材に取り付けられ、流路チップを押圧すると共に、液排出孔に接続される第1のパイプと、ウェルに挿入される第2のパイプとを有するカバー部材と、を備え、(4)ウェル部材は、ウェルと液導入孔とを連結すると共に、ウェル内の試料液を液導入孔に流入せしめる連結部材を有することを特徴とする。
【0009】
上記チップホルダは、ベース部材、ウェル部材及びカバー部材の3つの部材を有しており、ベース部材に流路チップを載置した後、ウェル部材及びカバー部材をベース部材に取り付けることで、流路チップを押圧してチップホルダ内に保持する。このように、ウェル部材及びカバー部材がベース部材に取り付けられた場合、ウェル部材が流路チップを押圧することに伴い、ウェル部材が有する連結部材が液導入孔に接続され、ウェルと液導入孔とが連結される。これにより、ウェル内に待機されている試料液を液導入孔を通して流路に供給できることになる。また、カバー部材が流路チップを押圧することに伴い、第1のパイプが液排出孔に接続され、第2のパイプはウェル内に挿入される。そして、第1のパイプを利用して、流路内の試料液を液排出孔を通して排出すると共に、第2のパイプを利用して試料液をウェル内に供給するか、又はウェル内の試料液を吸引して、ウェル内の試料液の容量を制御できることになる。
【0010】
従って、例えば、第1のパイプにポンプ等を接続し、第1のパイプ及び液排出孔を通して流路内を吸引することで、ウェル内に待機された試料液を流路内に流すことが可能である。また、例えば、第2のパイプにポンプ等を接続し、ウェル内に試料液を注入するか、又はウェル内の過剰の試料液を吸引してウェル外に排出することで、ウェル内の試料液の容量を所定量とするように制御することが可能である。そのため、ベース部材に流路チップを載置した後、ウェル部材及びカバー部材を取り付けるだけで、試料液を流路内に流しながらの流路チップを利用した計測等が可能となる。特に、第1のパイプ及び第2のパイプがカバー部材に設けられていることで、各パイプに接続されるチューブ等の煩雑な配管をカバー部材に集約することができるため、チップホルダの取り扱いが簡便になる。また、チップホルダでは、ウェル部材が有するウェル内に試料液を一時待機させることができるため、流路内に流す試料液の濃度調整などが容易になっている。
【0011】
また、本発明に係るチップホルダでは、ウェル及び連結部材は液導入孔の略直上に位置することが好ましい。この構成では、連結部材と液導入孔との連結時に、液導入孔などに気泡等が入った場合であっても、連結部材及びウェルを通して気泡等が抜けやすい。
【0012】
また、本発明に係るチップホルダでは、カバー部材は、ウェルに挿入される第3のパイプを有しており、第2のパイプ及び第3のパイプのうちの一方が、ウェルに試料液を供給するための供給パイプであり、他方がウェル内の試料液の一部を吸引するためのオーバーフローパイプであることが好ましい。この構成では、供給パイプを通してウェル内にチップホルダの外部から試料液を供給可能であり、また、オーバーフローパイプにより、ウェル内の試料液の一部が排出されるため、ウェル内から試料液があふれでることなく、所定量に制御される。
【0013】
また、本発明に係るチップホルダでは、第1のパイプにおいて液排出孔と接続される側の端部と反対側の端部は、カバー部材から突出しており、第2及び第3のパイプにおいて、ウェルに挿入される側の端部と反対側の端部はカバー部材から突出していることが好適である。
【0014】
この場合、第1のパイプにおいて液排出孔と接続される側と反対側の端部は、カバー部材から突出しているため、流路内の試料液を液排出孔及び第1のパイプを通して排出できることになる。更に、第2及び第3のパイプにおいてウェルに挿入される側の端部と反対側の端部がカバー部材から突出しているため、ウェル内への試料液の供給及びウェル内からの試料液の排出が容易になっている。
【0015】
更に、カバー部材が第2のパイプ及び第3のパイプを有する本発明に係るチップホルダでは、ウェルの内側には段差部が形成されていることが好適である。前述したように、第2のパイプ及び第3のパイプのうちの一方はオーバーフローパイプである。このオーバーフローパイプでウェル内の試料液の一部を排出する際、表面張力等により試料液の水位が一定にならない傾向にあるが、上記のように、段差部を設けることでウェル内の水位を一定にすることが可能である。その結果、例えば、ウェル内に待機中の試料液に刺激薬剤などを注入する場合、刺激薬剤等の濃度の調整が容易になる。
【0016】
更にまた、本発明に係るチップホルダでは、ベース部材及びカバー部材の少なくとも一方には、流路における被観察領域に対向する位置に窓部が形成されており、ウェル部材は、被観察領域上に位置しないようにベース部材に取り付けられることが好ましい。この構成では、窓部を通して流路チップ内の流路の被観察領域を観察できるため、例えば、光学的な計測等が可能である。
【0017】
また、本発明に係るチップホルダでは、ベース部材に設けられており、流路チップの位置決めをする第1位置決め手段と、ベース部材及びウェル部材の少なくとも一方に設けられており、ベース部材に対してウェル部材の位置を決める第2位置決め手段と、ベース部材及びカバー部材の少なくとも一方に設けられており、ベース部材に対するカバー部材の位置を決める第3位置決め手段と、更に備えることが好適である。
【0018】
第1位置決め手段によりベース部材に対する流路チップの位置が決定され、第2位置決め手段により、ベース部材に対するウェル部材の位置が決定され、第3位置決め手段により、カバー部材の位置が決定されるため、連結部材が確実にウェルと液導入孔とを連結でき、更に、第1のパイプと液排出孔とが接続される。
【0019】
なお、第1位置決め手段としては、流路チップと略同形状の凹部が例示される。また、第2位置決め手段としては、ベース部材に設けられた位置決め用のピンと、ウェル部材に形成されたピンと嵌合する貫通孔が例示される。第3位置決め手段も第2位置決め手段と同様のものが例示される。
【0020】
更にまた、本発明に係るチップホルダでは、流路チップは、流路をn本(nは2以上の整数)有しており、n本の流路にそれぞれに対して液導入孔及び液排出孔が形成されており、ウェル部材はウェル及び連結部材をそれぞれn個有しており、カバー部材は第1及び第2のパイプをそれぞれn本有しており、各連結部材は対応するウェルと液導入孔とを連結し、各第1のパイプは対応する液排出孔に接続され、各第2のパイプは対応するウェルに挿入されることが好適である。
【0021】
この場合、n本の第2のパイプの各々を利用して試料液を各ウェル内に供給するか、又は各ウェル内の試料液を吸引して、各ウェル内の試料液の容量を制御できることになる。そして、n個のウェルが連結部材を介して対応する液導入孔に連結されるため、各流路にそれぞれ試料液を供給することができる。また、n本の第1のパイプの各々が対応する液排出孔に接続されるため、各流路から試料液を排出することが可能である。よって、n本の流路にそれぞれ試料液を流すことが容易である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るチップホルダによれば、流路チップを保持しながら、流路チップ内の流路に容易に試料液を流すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係るチップホルダの実施形態について説明する。図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率等は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0024】
(第1の実施形態)
図1〜図4に示すチップホルダ1Aは、ベース部材10と、ウェル部材20と、カバー部材30とを有しており、チップホルダ1Aは流路チップ40Aを保持するためのものである。以下の説明では、ベース部材10に対してカバー部材30が位置する側を上側と称す。
【0025】
ここで、先ず、チップホルダ1Aで保持する流路チップ40Aの構成について流路チップ40Aの構成を示す図7を利用して説明する。図7(a)は流路チップの平面図である。図7(b)は流路チップの側面図である。図7(c)は、図7(a)のVIIc―VIIc線に沿った断面図である。なお、図7(c)は、流路チップ40Aの断面構成の一部を拡大して示している。
【0026】
流路チップ40Aは、基板としてのガラス板41の上面41aに例えばPDMAからなる弾性部材42が接合されて構成されており、板状を呈している。流路チップ40Aは、ガラス板41と弾性部材42との接合部に8本の微細な流路43、例えば、マイクロ流路を有する。8本の流路43は、図7(a)に示すように、互いに略平行に延在している被観察領域(所定領域)43aを有するように形成されており、各被観察領域43aの壁面の少なくとも一部には、図7(c)に示すように、被計測対象としての細胞Sが付着されている。また、各流路43の両端部からは液導入孔44及び液排出孔45が弾性部材42の上面42bまで延びている。
【0027】
次に、図1〜図6を利用して、流路チップ40Aを保持するチップホルダ1Aについて説明する。図1は、チップホルダ1Aの分解斜視図である。また、図2は、チップホルダ1Aの平面図である。図3は、チップホルダ1Aの側断面図であり、図3では、説明の便宜のため、チップホルダ1Aの特徴部分が現れるように示している。図1〜図3では、チップホルダ1Aが流路チップ40Aを保持している状態を示している。図4は、図3の一点鎖線で囲んだ領域の拡大図である。図5は、ウェル部材20の平面図である。更に、図6は、図5のVI―VI線に沿った断面図である。
【0028】
図1〜図3に示すように、チップホルダ1Aは、流路チップ40Aが載置されるベース部材10を有する。本実施形態では、ベース部材10の長手方向を横方向と称し、長手方向に略直交する方向を縦方向とも称す。
【0029】
ベース部材10は、板状を呈しており、例えばアルミとステンレスとからなる。ベース部材10は、ウェル部材20及びカバー部材30が装着される凹部11を有し、凹部11の底壁面には流路チップ40Aが装着される凹部(第1位置決め手段)12が形成されている。凹部12の形状は、流路チップ40Aと略同形状であり、凹部12の深さは、流路チップ40Aの厚さと略同一である。よって、流路チップ40Aが凹部12に装着されることで、ベース部材10に対する流路チップ40Aの位置が確実に決定され、更に、流路チップ40Aの上面が凹部11の底壁面と略同一平面上に位置することになる。凹部12への流路チップ40Aの着脱を容易にするために、凹部12の側壁面の一部が外側に切り欠かれ、切欠き部14が形成されていることが好ましい。また、凹部12のうち流路43の被観察領域43aに対向する部分には、観察用の窓部である開口13が形成されている。
【0030】
また、凹部11の底壁面において、凹部12の両側には、ウェル部材20及びカバー部材30の位置決め用のピン15,16が設けられ、ピン15及びピン16がそれぞれ設けられている側には、ウェル部材20及びカバー部材30を螺子止めするための螺子孔17,18が更に形成されている。
【0031】
ウェル部材20は、凹部11の側部11a側に配置されており、ウェル部材20は、ベース部材10のピン15に嵌合する貫通孔22−1と螺子51を通すための貫通孔22−2とが形成された第1プレート部21を有する。第1プレート部21の縦方向の長さは凹部11の縦方向の長さとほぼ同じである。また、第1プレート部21の横方向の長さは、第1プレート部21が液導入孔44を覆う一方、開口13を利用した被観察領域43aの観察が妨げられないように、端部21aが被観察領域43a上に位置しない長さとなっている。そして、第1プレート部21の端部21a側には、縦方向に延在した第2プレート部25が8個の液導入孔44上に一体的に設けられている。第1プレート部21及び第2プレート部25は例えばアルミとステンレスとからなる。
【0032】
図1及び図3に示すように、ウェル部材20は流路チップ40Aの各液導入孔44の直上に、流路43に灌流させる灌流液(試料液)Wを待機させるためのウェル26を有する。8個のウェル26の形状は略同一であり、その容量としては例えば1mlである。
【0033】
図5及び図6に示すように、ウェル26は、第2プレート部25の上面25aから第1プレート部21内部まで延びている穴部26aと、穴部26aの上端側の内壁の一部が外側に切り欠かれてなるパイプ挿入部26b,26cとから構成されている。パイプ挿入部26b,26cには、後述する供給パイプ37(第2のパイプ)及びオーバーフローパイプ38(第3のパイプ)がそれぞれ挿入される。また、パイプ挿入部26b,26cの深さは、第2プレート部25の厚さより浅いことから、ウェル26はそれぞれ内側に段差部26dを有する。
【0034】
各ウェル26の下端、換言すれば、穴部26aの下端からはステンレス製の連結パイプ(連結部材)27がウェル部材20の下面に向けて延びており、連結パイプ27の下端部27aは、ウェル部材20の下面から僅かに突出している。よって、各ウェル26に連通した連結パイプ27と、各ウェル26に対応する液導入孔44とが接続され、各ウェル26と対応する液導入孔44とが連結される。その結果、ウェル26内に灌流液(試料液)Wが供給されると、灌流液Wは連結パイプ27及び液導入孔44を通って流路43に流入することになる。また、連結パイプ27の下端部27aは、ウェル部材20の下面から僅かに突出していることから、図3及び図4に示すように、ウェル部材20がベース部材10に螺子止めされているとき、弾性部材42を弾性変形させながら、連結パイプ27と液導入孔44とが接続されるため、連結パイプ27と液導入孔44との接続部からの液漏れや、気泡等の侵入が抑制されている。
【0035】
連結パイプ27を通して液導入孔44に効率的に灌流液Wを導入させるために、ウェル26は、連結パイプ27に向けて先細りしたテーパ状であることが好ましい。また、多少の位置ずれを許容する観点から、連結パイプ27の下端部27aは、図6に示すように、面取りされていることが好適である。
【0036】
ここでは、ステンレス製連結パイプ27を、ウェル26と液導入孔44とを連結する連結部材であるとしたが、連結部材は、例えば、パッキンとすることもできるし、材質もステンレス製に限らずゴムとすることも可能である。
【0037】
図1〜図3に示すように、カバー部材30は、凹部11の側部11b側に配置されており、ベース部材10のピン16に嵌め合わされる貫通孔32−1と、螺子52を通すための貫通孔32−2とが形成された板状の第1カバー部31を有する。第1カバー部31の縦方向の長さは凹部11の縦方向の長さとほぼ同じである。また、第1カバー部31の横方向の長さは、端部31aが、第1プレート部21の端部21aと接する、或いは、近接するような長さである。
【0038】
また、第1カバー部31には、各液排出孔45に接続され液排出孔45を通して流路43内の灌流液Wを排出するためのステンレス製の排出パイプ33(第1のパイプ)が、各液排出孔45の直上に配設されている。各排出パイプ33は第1カバー部31の厚さ方向に延在し、第1カバー部31を貫くように設けられている。第1カバー部31において各排出パイプ33が配設されている部分の上面側には、図1及び図3に示すように凹部が形成されており、排出パイプ33の上端部33a側が露出するようになっている。また、排出パイプ33の下端部33bは、連結パイプ27の場合と同様に、第1カバー部31の下面から僅かに突出している。これにより、カバー部材30がベース部材10に螺子止めされているとき、弾性部材42を弾性変形させて液排出孔45に接続されるため、排出パイプ33と液排出孔45との接続部での液漏れが抑制される。
【0039】
第1カバー部31の端部31aには、板状の第2カバー部34が一体的に設けられている。なお、第1カバー部31及び第2カバー部34は例えばアルミとステンレスとからなる。第2カバー部34は、端部31aの上側から横方向に張り出すように第1カバー部31に対して設けられているため、第1カバー部31と第2カバー部34とは段違いになっている。
【0040】
第2カバー部34の下面側には、第2プレート部25を受けられるように第2プレート部25と略同形の凹部35が形成されている。そして、第2カバー部34のうち各穴部26aの直上には、例えば分注ヘッドなどを利用して各ウェル26に刺激薬剤を投入するための開口36が形成されている。また、各パイプ挿入部26b,26cの直上には、ステンレス製の供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38が設けられている。供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38は、第2カバー部34の厚さ方向に延在しており、第2カバー部34を貫くように配設されている。供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38は、その上端部37a,38a及び下端部37b,38bが第2カバー部34から突出しており、供給パイプ37の下端部37bは、オーバーフローパイプ38の下端部38bよりも深くウェル26内に挿入されるように設けられている。
【0041】
また、ベース部材10が有する開口13の直上であって流路43の被観察領域43aと対向する位置には開口39が形成されている。図1〜図3に示したカバー部材30では、第1カバー部31と第2カバー部34との境界部にかかるように円形の開口39が形成されている。
【0042】
上記構成のチップホルダ1Aで流路チップ40Aを保持する場合には、先ず、ベース部材10の凹部12に流路チップ40Aを装着する。凹部12は、流路チップ40Aと略同一形状であるため、ベース部材10に対して流路チップ40Aの位置が確実に決まる。また、凹部12の深さと流路チップ40Aの厚さとはほぼ同じであることから、凹部11の底壁面と流路チップ40Aの上面とが略同一平面上に位置することになる。
【0043】
次に、貫通孔22−1にピン15を嵌め合わせた後、ウェル部材20を螺子51を利用して螺子止めする。これにより、第1プレート部21によって流路チップ40Aが押圧される。その結果、連結パイプ27が液導入孔44に対して押しつけられるので、連結パイプ27と液導入孔44とが接続され、結果として、各ウェル26と、対応する液導入孔44とが連結される。
【0044】
続いて、貫通孔32−1にピン16を嵌め合わせた後、カバー部材30をベース部材10に螺子52によって螺子止めする。これにより、第1カバー部31により流路チップ40Aが押圧される。その結果、排出パイプ33が液排出孔45に対して押しつけられるため、排出パイプ33と液排出孔45とが接続される。また、第2カバー部34が有する凹部35内に第2プレート部25が収容され、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38が対応するパイプ挿入部26b,26cに挿入される。カバー部材30がベース部材10に取り付けられたとき、第2プレート部25の上面25aは第2カバー部34に接するため、第2カバー部34によって第2プレート部25が押圧される。このカバー部材30による第2プレート部25への押圧によって、連結パイプ27が更に液導入孔44側に押圧される。その結果、連結部での液漏れや、気泡等の侵入の防止がより一層図られていることになる。
【0045】
上記チップホルダ1Aは、図8に示す灌流システム60で好適に利用できる。灌流システム60は、チップホルダ1Aに保持された流路チップ40A内に培養液としての灌流液Wを灌流させながら、任意のタイミングで流路43内に試薬としての刺激薬剤を投入し、流路43内の細胞Sの刺激薬剤に対する反応を観察・計測するためのものである。ここでは、細胞Sに予め蛍光プローブを付けておき蛍光強度を検出するものとする。
【0046】
図8に示すように、灌流システム60は、灌流液タンク61と、廃液タンク62と、XYステージ63と、観察光学系64と、分注ヘッド65と、分注ヘッド駆動手段68とを有する。なお、図8は、チップホルダ1Aに保持された流路チップ40A内の細胞Sを観察・計測するときの状態を示している。
【0047】
灌流液タンク61には、流路43に流す培養液としての灌流液(試料液)Wが貯留されている。廃液タンク62は、流路43から液排出孔45を通して排出された灌流液Wを貯留する。また、XYステージ63は、流路チップ40Aが保持されたチップホルダ1Aを載置するためのものであり、下方から流路チップ40Aを観察するための開口63aが形成されている。
【0048】
観察光学系64は、流路43内に付着された細胞Sの刺激薬剤に対する反応を光学的に観察・計測するためのものである。観察光学系64は、細胞Sに付されている蛍光プローブを励起可能な波長の励起光71を出力する光源部64Aと、蛍光プローブからの蛍光72を検出するカメラ等の検出部64Bと、光源部64Aから出力された励起光71を流路43に収束光として照射すると共に、蛍光プローブからの蛍光72を集光して検出部64Bに入力する導光光学系64Cとを有する。導光光学系64Cとしては、例えば、対物レンズと、励起光及び蛍光のうち一方を透過し他方を反射させるダイクロイックミラーとを含んで構成されていればよい。
【0049】
分注ヘッド65は、8個のウェル26に刺激薬剤を一括して注入するためのものであり、いわゆる8連分注ヘッドが例示される。分注ヘッド駆動手段68は、分注ヘッド65を3次元的に移動せしめると共に、分注ヘッド65への刺激薬剤の注入及び刺激薬剤の排出を制御する。
【0050】
次に、灌流システム60におけるチップホルダ1Aの使用方法を説明する。
【0051】
先ず、蛍光プローブが付けられた細胞Sが流路43内に播種・培養されている流路チップ40Aと、チップホルダ1Aとを用意する。この際、チップホルダ1Aは、ベース部材10、ウェル部材20及びカバー部材30に分解しておく。
【0052】
そして、カバー部材30の供給パイプ37と灌流液タンク61とをチューブ66aにより連結し、カバー部材30の排出パイプ33及びオーバーフローパイプ38と、廃液タンク62とをチューブ66b及びチューブ66cにより連結し、カバー部材30を観察位置の上方に配置させておく。
【0053】
次に、チップホルダ1Aが有するベース部材10の凹部12に流路チップ40Aを取り付け、ウェル部材20をベース部材10に装着する。その後、流路チップ40A及びウェル部材20が装着されたベース部材10をXYステージ63上にセットする。この際、XYステージ63の開口63a上にベース部材10の開口13が位置するようにセットする。続いて、XYステージ63を駆動して、図8に示すように、観察光学系64上の所定の観察位置まで移動させた後、ベース部材10にカバー部材30を螺子止めしてチップホルダ1Aとする。
【0054】
次に、灌流液タンク61からチューブ66a上に設けられたポンプ67aを駆動して灌流液Wを送出しながら、チューブ66b上に設けられるポンプ67bを駆動してチューブ66b及び排出パイプ33を介して流路43内を吸引する。
【0055】
ポンプ67aにより灌流液タンク61から送出された灌流液Wは、供給パイプ37を介してウェル26内に流入した後、ウェル26の下端部から連結パイプ27及び液導入孔44を介して流路43内に流入する。流路43内は吸引されているため、流路43内に流入した灌流液Wは、液排出孔45、排出パイプ33及びチューブ66bを介して廃液タンク62に排出される。よって、流路43内を灌流液Wが灌流する。
【0056】
ウェル26内に灌流液Wを導入する場合には、ウェル26内から灌流液Wがあふれることを防止するために、チューブ66c上に設けられたポンプ67cを駆動し、チューブ66b及びオーバーフローパイプ38を介してウェル26内から一定水位以上の灌流液Wを廃液タンク62に排出しておく。
【0057】
また、流路43内への灌流液Wの灌流を開始させたときは、観察光学系64が有する光源部64Aから励起光71を出力して導光光学系64Cにより励起光71を開口63a,13及びガラス板41を通して8本の流路43における被観察領域43a内の細胞Sに収束光として照射する。細胞Sには蛍光プローブが付けられているため、励起光71の照射によって蛍光72が生じることになる。発生した蛍光72は、導光光学系64Cで集められて検出部64Bに入力され検出される。これにより、被観察領域43a内の細胞Sが観察されることになる。
【0058】
次に、分注ヘッド駆動手段68により分注ヘッド65を刺激薬剤を保持しているリガンドプレート(不図示)にアクセスさせ、分注ヘッド65にリガンドプレートから刺激薬剤を吸引させる。そして、図8に示すように、分注ヘッド駆動手段68によって分注ヘッド65の一部をウェル26内に開口36を通して挿入して、刺激薬剤をウェル26内の灌流液Wに注入する。刺激薬剤が注入された灌流液Wが、流路43内に流入することによって、刺激薬剤に細胞Sが反応し、蛍光強度の変化が生じる。よって、刺激薬剤の投与による蛍光強度の変化を検出部64Bで検出することで、刺激薬剤に対する細胞Sの応答が計測されることになる。
【0059】
次に、チップホルダ1Aの作用・効果について説明する。
【0060】
チップホルダ1Aでは、流路チップ40Aと略同形状の凹部12に流路チップ40Aを取り付けるため、ベース部材10に対して流路チップ40Aが一定の位置に固定される。また、ベース部材10にそれぞれ設けられたピン15,16にウェル部材20及びカバー部材30の貫通孔22−1及び貫通孔32−1をそれぞれ嵌合させることで、ウェル部材20及びカバー部材30を位置合わせさせているため、ウェル部材20及びカバー部材30がベース部材10の一定の位置に確実に固定される。よって、流路チップ40Aをベース部材10に取り付けた後に、ウェル部材20及びカバー部材30をベース部材10に装着しても、連結パイプ27と液導入孔44とが確実に接続され、また、排出パイプ33と液排出孔45とが確実に接続される。
【0061】
従って、灌流システム60を利用して説明したように、流路チップ40Aをベース部材10に載置し、ベース部材10にウェル部材20を装着した後に、所定の観察位置まで搬送して予めチューブ66a〜66cが接続されたカバー部材30をベース部材10に装着するだけで、細胞Sの機能解明のための解析を容易に実施でき、例えば、計測の自動化を図ることも可能である。
【0062】
また、チップホルダ1Aは、流路43の数に対応したウェル26を有することから、8個のウェル26への刺激薬剤の一括分注ができる。その結果、8本の流路43における一括計測が可能であり、細胞Sの刺激薬剤に対する反応の計測を大量に実施することが可能である。
【0063】
また、連結パイプ27が押圧されて液導入孔44に接続されるため、連結パイプ27と液導入孔44との接続部での液漏れや、気泡等の液導入孔44への侵入が抑制されている。このように、気泡等の液導入孔44への侵入が抑制されているが、仮に、接続時に液導入孔44に気泡等が侵入したとしても、液導入孔44の直上に連結パイプ27及びウェル26が位置することから、気泡は、連結パイプ27及びウェル26内を上昇して排出される。更に、液導入孔44、連結パイプ27及びウェル26の上記配置関係により、ウェル26から液導入孔44までの経路がより短くなっているので、ウェル26内に刺激薬剤を投入したときに、刺激薬剤が流路43内に速やかに流入し易い。各ウェル26への刺激薬剤の投入による各流路43内の細胞Sの反応をほぼ同じタイミングで計測する観点から、各ウェル43の下端部から液導入孔44までの経路長は同じであることが好ましい。
【0064】
更に、チップホルダ1Aでは、ウェル部材20が有するウェル26において灌流液Wを待機させ、そのウェル26内の灌流液Wに分注ヘッド等を利用して刺激薬剤を投入するため、刺激薬剤の濃度コントロールが容易である。
【0065】
また、ウェル26内に段差部26dが設けられていることから、ウェル26内に灌流液Wが導入された場合、灌流液Wの液面が一定になる。仮にウェルに段差部が形成されていないとすると、オーバーフローパイプ38を利用してウェル26内の灌流液Wの一部を吸引した際、表面張力などでウェル26の内壁を伝ってオーバーフローパイプ38に灌流液Wが流れ込み、液面が一定にならない虞がある。このように、ウェル26内の灌流液Wの水位が一定でない場合には、刺激薬剤を注入した際に、濃度コントロールが困難である。これに対して、チップホルダ1Aでは、段差部26dを設けているため、ウェル26内の液面が一定になる結果、刺激薬剤の濃度コントロールがより一層可能となっている。
【0066】
なお、本実施形態では、穴部26aの上端側の縁部の一部を切り欠いて、穴部26aの深さより浅いパイプ挿入部26b,26cを形成することによって、ウェル26内に2箇所の段差部26dを設けているが、例えば、穴部26aの全周に亘って段差部26dを形成していてもよい。
【0067】
また、段差部26dを有することで上記のように液面が一定になりやすいため、ウェル26内に段差部26dが形成されていることが好適であるが、段差部26dは形成されていなくてもよい。更に、ウェル26内の灌流液Wの液量を調節するために、オーバーフローパイプ38を設けるとしているが、ウェル26内への灌流液Wの導入量や流路43からの灌流液Wの排出量を制御することで、容量を調節してもよく、その場合には、オーバーフローパイプ38は設けなくてもよい。また更に、ウェル26内の灌流液Wの液量を調節するために、上記実施形態では、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38の二本のパイプを例示したが、これに限定されるのではなく、例えば、吸排出が可能なポンプ等を使用すれば、一本のパイプで液量を調節可能である。
【0068】
(第2の実施形態)
次に、図9〜図12を利用して、本発明に係るチップホルダの第2の実施形態について説明する。
【0069】
図9及び図10に示すように、チップホルダ1Bは、流路チップ40Bを保持するためのものである。
【0070】
本実施形態においても、図12を利用して、流路チップ40Bについて先ず説明する。流路チップ40Bの構成は、8本の流路43において、液導入孔44から被観察領域43aまでの距離がほぼ一致すると共に、液排出孔45から被観察領域43aまでの距離がほぼ一致するように、流路43が形成されている点で、流路チップ40Aの構成と相違する。この構成では、図12に示すように液導入孔44及び液排出孔45は円弧状に配列されることになる。
【0071】
次に、流路チップ40Bを保持するチップホルダ1Bについて説明する。チップホルダ1Bは、ベース部材80にウェルプレート(ウェル部材)90及び灌流プレート(カバー部材)100が取り付けられて構成されている。ベース部材80、ウェルプレート90及び灌流プレート100の材質は、第1の実施形態で例示したベース部材10、ウェル部材20及びカバー部材30の材質と同じとすることができる。
【0072】
ベース部材80は、上側からみた場合の形状が略長方形状であり、ベース部材10の場合と同様に、凹部11を有し、凹部11内には更に流路チップ40Bと略同形状の凹部12が形成されている。この凹部12の中央部には観察用の窓としての開口13が形成されている。また、凹部11の底壁面には、灌流プレート100の位置決めをするためのピン16と、灌流プレート100を螺子止めするための螺子52を受ける螺子孔18とが形成されている。
【0073】
なお、本実施形態においても、ベース部材80の長手方向を横方向と称し、長手方向に略直交する方向を縦方向とも称す。また、本実施形態において、「上側」とは、ベース部材80に対して灌流プレート100が配置される側である。
【0074】
ウェルプレート90は、端部90aが凹部11の側部11aに接するようにベース部材80に載置されている。図9に示すように、ウェルプレート90の縦方向の長さは、凹部11の縦方向の長さと略同一であるため、上記のようにベース部材80に載置することで、ウェルプレート90の位置が決定される。よって、凹部11がウェルプレート90の位置決め手段(第2位置決め手段)として機能していることになる。
【0075】
図11に示すように、ウェルプレート90には、端部90a側に同じ大きさの8個のウェル91を有する。各ウェル91は、上側からみた場合に略長方形状を有しており、各ウェル91からは溝部92が端部90b側に向けて液導入孔44の直上まで延びている。各溝部92の端部92aの下部からは、液導入孔44と接続される連結パイプ27がウェルプレート90の下面に向けて延びており、連結パイプ27の下端は、ウェルプレート90の下面から僅かに突出している。
【0076】
図9及び図10に示すように、灌流プレート100は、端部100a側における下面の一部が、ウェルプレート90の溝部92と、ウェル91のうち溝部92との接続側とをカバー可能なように切り欠かれている。灌流プレート100は、流路チップ40Bをカバーすると共に、ウェルプレート90のうちウェル91の一部が露出するようにウェルプレート90の端部90b側をカバーする。
【0077】
灌流プレート100には、ベース部材80のピン16に嵌合する貫通孔32−1及び螺子52を通す貫通孔32−2が形成されている。また、灌流プレート100のうちベース部材80の開口13の直上であって流路43の被観察領域43aに対向する部分には開口39が形成されている。更に、流路チップ40Bの液排出孔45の直上には、第1の実施形態の場合と同様に排出パイプ33が配設されており、各ウェル91の直上には、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38が、第1の実施形態と同様に配設されている。
【0078】
上記構成のチップホルダ1Bでは、ベース部材80の凹部12内に流路チップ40Bを取り付けた後、ベース部材80に前述したようにウェルプレート90を載置する。次に、灌流プレート100をピン16及び貫通孔32−1を利用して位置決めした後、螺子止めする。
【0079】
このようにしてチップホルダ1Bが組み立てられたとき、ウェル91のうち、灌流プレート100によってカバーされている部分に供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38の下端部37b,38bが挿入される。また、灌流プレート100がベース部材80に螺子止めされることによって、排出パイプ33が液排出孔45に押しつけられて排出パイプ33と液排出孔45とが連結される。更に、灌流プレート100によりウェルプレート90が押圧されるため、連結パイプ27が液導入孔44に押圧されることになる。その結果、連結パイプ27と液導入孔44とが接続されて連結パイプ27及び溝部92を介して液導入孔44とウェル26とが連結される。
【0080】
チップホルダ1Bは、第1の実施形態のチップホルダ1Aの場合と同様に、例えば、図8に示した灌流システム60において好適に利用される。灌流システム60でのチップホルダ1Bの使用方法は、チップホルダ1Bを組み立てる際に、ウェルプレート90を凹部11の側部11aに接するようにして配置して位置決めした後に、灌流プレート100でウェルプレート90を押圧し固定する点、及び、分注ヘッド65の一部が、ウェル91のうち灌流プレート100から露出している部分に挿入される点以外は、チップホルダ1Aの場合と同様である。
【0081】
また、チップホルダ1Bの作用・効果は、チップホルダ1Aの場合と同様である。すなわち、チップホルダ1Bにおいても、ベース部材80に対して流路チップ40B、ウェルプレート90及び灌流プレート100の位置が決定されるため、チップホルダ1Bを組み立てることで、連結パイプ27と液導入孔44とが確実に接続され、排出パイプ33と液排出孔45とが確実に接続される。また、灌流プレート100がベース部材80に螺子止めされることで、ウェルプレート90が押圧され、連結パイプ27と液導入孔44とが接続される。その結果、連結パイプ27と液導入孔44との接続部において、液漏れが防止され、更に、気泡等が流路43内に侵入することが抑制されている。
【0082】
また、チップホルダ1Bは、ウェル91において灌流液Wを待機させ、そのウェル91内の灌流液Wに分注ヘッド等を利用して刺激薬剤を投入するため、刺激薬剤の濃度コントロールが容易である。このような濃度コントロールを更に容易にする観点から、ウェル91の内側に段差部を形成することは好適である。また、各ウェル91への刺激薬剤の投入による各流路43内の細胞Sの反応をほぼ同様のタイミングで計測する観点から、各ウェル91から対応する液導入孔44までの経路長は同じであることが好ましい。
【0083】
なお、チップホルダ1Bにおいて、カバー部材としての灌流プレート100は、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38を有するとしたが、灌流プレート100は、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38のいずれかを有しない構成とすることも可能である。この場合は、灌流プレート100で覆われていないウェル91の部分に供給パイプ又はオーバーフローパイプを直接挿入すればよい。この場合でも、例えば、流路チップ40Bの液導入孔44に供給パイプ又はオーバーフローパイプを直接接続する場合よりも、流路43への灌流液Wの供給は容易である。また更に、ウェル91内の灌流液Wの液量を調節するために、上記実施形態では、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38の二本のパイプを例示したが、これに限定されるのではなく、例えば、吸排出が可能なポンプ等を使用すれば、一本のパイプで液量を調節可能である。
【0084】
以上、本発明のチップホルダの好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。第1の実施形態では、8本の連結パイプ(連結部材)27は直線上に配列されているが、例えば、図12に示した流路チップ40Bを利用する場合には、図13に示すように連結パイプ27の配列状態も円弧状にしておけばよい。なお、第1の実施形態のチップホルダ1Aにおいて、流路チップ40Bを保持する場合には、流路チップ40Bの液排出孔45の配列状態にあわせて、排出パイプ33の配列状態も円弧状にしておく。また、第2の実施形態のチップホルダ1Bにおいて、流路チップ40Aを保持する場合には、ウェルプレート90に設けられる連結パイプ27及び灌流プレート100に設けられた排出パイプ33の配列状態は直線状にすればよい。
【0085】
更に、第1の実施形態の場合、ウェル26は液導入孔44の直上に位置するとしたがこれに限定されない。ウェル26が対応する液導入孔44の直上に位置しない場合には、第2の実施形態のように溝部を設けて、ウェル26と連結パイプ27とを繋げても良いし、屈曲させた連結パイプ(連結部材)27を利用することで、ウェル26と液導入孔44とを連結することも可能である。また、供給パイプ37、オーバーフローパイプ38及び排出パイプ33は、直線状としたが屈曲していてもよい。
【0086】
更にまた、チップホルダ1A,1Bでは、灌流システム60が有する観察光学系64による光学的な観察・計測に利用できるように、窓部としての開口13,39を有するとしたが、光学的な観察・計測を実施しない場合、例えば、チップホルダ1A,1BでDNAチップとしての流路チップを保持する場合には、開口13,39は設けなくてもよい。
【0087】
また、光学的な観察をする場合であっても、開口13,39の何れか一方が形成されていればよい。なお、開口13,39が形成されている方が、開口13,39のうちの一方の開口を通して入射された励起光のうち蛍光プローブに吸収されなかった光が他方の開口を通してチップホルダ1A,1Bから抜けるため、より高感度に検出できるので好ましい。また、窓部は開口13,39としたがこれに限定されず、流路チップ40A,40Bを観察できるような透明部材から構成されていてもよい。
【0088】
更に、チップホルダ1Aでは、ウェル26、連結パイプ27、排出パイプ33、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38の数は、流路チップ40Aが有する流路43の数と同じ数だけ有していればよく、例えば、流路43が1本である場合には、ウェル26は1個でよく、また、連結パイプ27、排出パイプ33、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38はそれぞれ1本あればよい。また、流路43がn本(nは2以上の整数)である場合には、ウェル26はn個でよく、また、連結パイプ27、排出パイプ33、供給パイプ37及びオーバーフローパイプ38はそれぞれn本あればよい。チップホルダ1Bについても同様である。
【0089】
また、連結部材27の下端部27aは、ウェル部材20の下面から突出するとしたが、液導入孔44と接続できればよい。排出パイプ33についても同様である。
【0090】
更に、流路チップ40A,40Bを位置決めする第1位置決め手段は凹部12としたが、流路チップ40A,40Bをベース部材10の所定位置に配置できれば特に限定されず、例えば、流路チップ40A,40Bの角部の位置を規定するような隆起部がベース部材10に形成されていてもよい。更に、第1の実施形態において第2位置決め手段は、ピン16と貫通孔22−1とからなるとしたが、第2の実施形態で示したように凹部11を利用することも可能である。また、第3位置決め手段も、ピン16と貫通孔32−1に限定されず、例えば、凹部11を利用することも可能である。
【0091】
また、灌流システム60を利用して例えば計測の自動化を図るという観点からは、第1位置決め手段、第2位置決め手段及び第3位置決め手段を備えることが好ましいが、必ずしも備えなくてもよい。例えば、ベース部材10の所定位置にマークをつけておき、そのマークに応じて流路チップ40A,40Bを配置した後、ウェル部材20,90及びカバー部材30,100を、例えば、螺子51,52を利用して固定すれば、連結パイプ27と液導入孔44及び排出パイプ33と液排出孔45をそれぞれ接続できる。
【0092】
更にまた、第1の実施形態のチップホルダ1Aでは螺子51,52を利用してウェル部材20及びカバー部材30をベース部材10に螺子止めすることで、ウェル部材20及びカバー部材30を流路チップ40A,40Bに押圧している。しかしながら、例えば、灌流システム60がウェル部材20及びカバー部材30を押圧する押圧手段を有する場合は、必ずしも螺子止めによる固定に限定されない。また、チップホルダ1Bについても同様である。
【0093】
更に、チップホルダ1A,1Bで保持する流路チップ40A,40Bの上面は平面状としているが、例えば、特許文献2に記載されているように、液導入孔44及び液排出孔45に連通する孔部を有する凸部が設けられていても良い。この場合には、ウェル部材20,90及びカバー部材30,100において対応する箇所に、流路チップ40A,40B上に設けられた凸部を受ける凹部を形成しておけばよい。
【0094】
また、試料液Wは、培養液としての灌流液Wとしたが、前述したようにDNAチップとしての流路チップ40A,40Bを使用する場合には、検出する試料(DNA)を含んだ溶液とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に係るチップホルダの一実施形態の分解斜視図である。
【図2】図1に示したチップホルダの平面図である。
【図3】図1に示したチップホルダの側断面図である。
【図4】図3の一点鎖線で囲んだ領域の拡大図である。
【図5】図1示したチップホルダが有するウェル部材の平面図である。
【図6】図5のVI―VI線に沿った断面図である。
【図7】図1に示したチップホルダが保持する流路チップを示す図である。
【図8】灌流システムの概略構成図である。
【図9】本発明に係るチップホルダの他の実施形態の平面図である。
【図10】図9に示したチップホルダの側断面図である。
【図11】図9に示したチップホルダが有するウェル部材の平面図である。
【図12】図9に示したチップホルダが保持する流路チップの平面図である。
【図13】図5に示したウェル部材の他の例の平面図である。
【符号の説明】
【0096】
1A,1B…チップホルダ、10…ベース部材、11…凹部(第2位置決め手段)、12…凹部(第1位置決め手段)、13,39…開口(窓部)、15…ピン(第2位置決め手段)、16…ピン(第3位置決め手段)、20…ウェル部材、22−1…貫通孔(第2位置決め手段)、26…ウェル、26d…段差部、27…連結パイプ(連結部材)、30…カバー部材、32−1…貫通孔(第3の位置決め手段)、33…排出パイプ(第1のパイプ)、33a…上端部(液排出孔と接続される側と反対側の端部)、37…供給パイプ(第2のパイプ)、37a…上端部(ウェルに挿入される側と反対側の端部)、38…オーバーフローパイプ(第3のパイプ)、38a…上端部(ウェルに挿入される側と反対側の端部)、40A,40B…流路チップ、43…流路、43a…被観察領域、44…液導入孔、45…液排出孔、80…ベース部材、90…ウェルプレート(ウェル部材)、91…ウェル、100…灌流プレート(カバー部材)、W…灌流液(試料液)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を内部に有しており前記流路に試料液を導入する液導入孔及び前記流路から前記試料液を排出する液排出孔が形成されている流路チップを保持するチップホルダであって、
前記流路チップが載置されるベース部材と、
前記ベース部材に取り付けられ、前記流路チップを押圧すると共に、前記液導入孔に供給する前記試料液を待機させるウェルを有するウェル部材と、
前記ベース部材に取り付けられ、前記流路チップを押圧すると共に、前記液排出孔に接続される第1のパイプと、前記ウェルに挿入される第2のパイプとを有するカバー部材と、
を備え、
前記ウェル部材は、前記ウェルと前記液導入孔とを連結すると共に、前記ウェル内の前記試料液を前記液導入孔に流入せしめる連結部材を有することを特徴とするチップホルダ。
【請求項2】
前記ウェル及び前記連結部材は前記液導入孔の略直上に位置することを特徴とする請求項1に記載のチップホルダ。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記ウェルに挿入される第3のパイプを有しており、
前記第2のパイプ及び前記第3のパイプのうちの一方が、前記ウェルに前記試料液を供給するための供給パイプであり、他方が前記ウェル内の前記試料液の一部を吸引するためのオーバーフローパイプである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のチップホルダ。
【請求項4】
前記第1のパイプにおいて前記液排出孔と接続される側の端部と反対側の端部は、前記カバー部材から突出しており、
前記第2及び第3のパイプにおいて、前記ウェルに挿入される側の端部と反対側の端部は前記カバー部材から突出していることを特徴とする請求項3に記載のチップホルダ。
【請求項5】
前記ウェルの内側には段差部が形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のチップホルダ。
【請求項6】
前記ベース部材及び前記カバー部材の少なくとも一方には、前記流路における被観察領域に対向する位置に窓部が形成されており、
前記ウェル部材は、前記被観察領域上に位置しないように前記ベース部材に取り付けられることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のチップホルダ。
【請求項7】
前記ベース部材に設けられており、前記流路チップの位置決めをする第1位置決め手段と、
前記ベース部材及び前記ウェル部材の少なくとも一方に設けられており、前記ベース部材に対して前記ウェル部材の位置を決める第2位置決め手段と、
前記ベース部材及び前記カバー部材の少なくとも一方に設けられており、前記ベース部材に対する前記カバー部材の位置を決める第3位置決め手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のチップホルダ。
【請求項8】
前記流路チップは、前記流路をn本(nは2以上の整数)有しており、n本の前記流路それぞれに対して前記液導入孔及び前記液排出孔が形成されており、
前記ウェル部材は前記ウェル及び前記連結部材をそれぞれn個有しており、
前記カバー部材は前記第1及び第2のパイプをそれぞれn本有しており、
前記各連結部材は対応する前記ウェルと前記液導入孔とを連結し、
前記各第1のパイプは対応する前記液排出孔に接続され、
前記各第2のパイプは対応する前記ウェルに挿入されることを特徴とする請求項1に記載のチップホルダ。
【請求項1】
流路を内部に有しており前記流路に試料液を導入する液導入孔及び前記流路から前記試料液を排出する液排出孔が形成されている流路チップを保持するチップホルダであって、
前記流路チップが載置されるベース部材と、
前記ベース部材に取り付けられ、前記流路チップを押圧すると共に、前記液導入孔に供給する前記試料液を待機させるウェルを有するウェル部材と、
前記ベース部材に取り付けられ、前記流路チップを押圧すると共に、前記液排出孔に接続される第1のパイプと、前記ウェルに挿入される第2のパイプとを有するカバー部材と、
を備え、
前記ウェル部材は、前記ウェルと前記液導入孔とを連結すると共に、前記ウェル内の前記試料液を前記液導入孔に流入せしめる連結部材を有することを特徴とするチップホルダ。
【請求項2】
前記ウェル及び前記連結部材は前記液導入孔の略直上に位置することを特徴とする請求項1に記載のチップホルダ。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記ウェルに挿入される第3のパイプを有しており、
前記第2のパイプ及び前記第3のパイプのうちの一方が、前記ウェルに前記試料液を供給するための供給パイプであり、他方が前記ウェル内の前記試料液の一部を吸引するためのオーバーフローパイプである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のチップホルダ。
【請求項4】
前記第1のパイプにおいて前記液排出孔と接続される側の端部と反対側の端部は、前記カバー部材から突出しており、
前記第2及び第3のパイプにおいて、前記ウェルに挿入される側の端部と反対側の端部は前記カバー部材から突出していることを特徴とする請求項3に記載のチップホルダ。
【請求項5】
前記ウェルの内側には段差部が形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のチップホルダ。
【請求項6】
前記ベース部材及び前記カバー部材の少なくとも一方には、前記流路における被観察領域に対向する位置に窓部が形成されており、
前記ウェル部材は、前記被観察領域上に位置しないように前記ベース部材に取り付けられることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のチップホルダ。
【請求項7】
前記ベース部材に設けられており、前記流路チップの位置決めをする第1位置決め手段と、
前記ベース部材及び前記ウェル部材の少なくとも一方に設けられており、前記ベース部材に対して前記ウェル部材の位置を決める第2位置決め手段と、
前記ベース部材及び前記カバー部材の少なくとも一方に設けられており、前記ベース部材に対する前記カバー部材の位置を決める第3位置決め手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のチップホルダ。
【請求項8】
前記流路チップは、前記流路をn本(nは2以上の整数)有しており、n本の前記流路それぞれに対して前記液導入孔及び前記液排出孔が形成されており、
前記ウェル部材は前記ウェル及び前記連結部材をそれぞれn個有しており、
前記カバー部材は前記第1及び第2のパイプをそれぞれn本有しており、
前記各連結部材は対応する前記ウェルと前記液導入孔とを連結し、
前記各第1のパイプは対応する前記液排出孔に接続され、
前記各第2のパイプは対応する前記ウェルに挿入されることを特徴とする請求項1に記載のチップホルダ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−82772(P2008−82772A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261048(P2006−261048)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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