説明

チップ保持装置およびそれを備えた分注装置並びにチップ装着方法

【課題】装着時に、各ピペットとチップの間に均等な力を加えることができ、その結果、全てのピペットに確実にチップを装着できるチップ保持装置、分注装置およびチップ装着方法を提供すること。
【解決手段】多連ピペットを備えた装置にチップ保持装置に保持されたチップを装着するに際し、一ないし複数のピペットがチップに当接することによりチップの上端側から下方へ作用される力を、チップ保持装置内の閉空間に充填された非圧縮性の流体に伝達し、該流体を介して多連ピペットと対向する全てのチップの下端側から上方へ均等に作用させることにより各チップのレベルを対向する各ピペットのレベルと同一に揃えることを特徴とするチップ装着方法および当該方法を実施するための装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多連のピペットが装着された分注装置のピペットに装着されるチップを保持する装置および方法に関し、より具体的には、各ピペットに確実にチップを装着することを可能とするチップ保持装置およびそれを備えた分注装置並びにチップ装着方法に関する。なお、分注とは、液体をある場所から吸引して、別の場所に排出することを言うものとする。
【背景技術】
【0002】
薬液の試験などにおいては、図1に示すようなウェルと呼ばれる収容部を格子状に多数設けたマイクロプレート5において、各ウェル6に複数のピペット2を有した分注装置1によって、薬液を分注する作業が行われている。この作業においては、図1のようにピペット2の先端に使い捨て可能なチップ3を取り付け、このチップ3内に分注する薬液を薬液槽から吸引し、吸引した薬液をマイクロプレート5のウェル6に分注している。分注終了後には、チップ3を交換することでピペット2を汚さずに繰り返し分注作業を行うことができる。
ここで、ピペット2に装着するチップ3は、図2に示すような略円錐状の形状であり、尖っている側の端部は薬液の吸入・排出口14となっており、反対側はピペットが装着される装着口10となっている。ピペット装着口10の近傍の内周には、ピペットのチップ装着部外周に設けた凹溝に係合する凸条11がとその下方に段差12が設けられており、また、外周には段差13が設けられている。
【0003】
チップ3は、図3(a)に示すようなチップ保持装置7によって保持されている。このチップ保持装置7は、図3(b)に示すように、上面に複数のチップ保持用の貫通孔8がマイクロプレート5に設けられたウェル6と同じ配置で設けられている。チップ3が貫通孔8に挿入されると、図3(c)に示すように、チップ3の外周に設けられた段差12が貫通孔8に引っかかって保持される。
【0004】
分注装置1の複数のピペットは、図1に示すように、各ピペット2にチップ3を装着したときに、各チップの吸入・排出口14の配置が、マイクロプレート5の分注すべきウェル6の配置に合致するようになっている。チップ保持装置1に設けられた貫通孔8もマイクロプレート5のウェル6と同位置に設けられているので、ピペットの配置はチップ保持装置のチップ保持用の貫通孔に保持されたチップの配置とも合致している。
このようなピペット2にチップ3を装着するときは、チップ保持装置7に保持されたチップ3の上方からピペット2を押し付けて、ピペット2の先端外周に設けた凹溝に、チップ3のピペット装着口の内周に設けた凸条11を係合させて装着させる。
【0005】
上述の処理を効率よくしかも高い信頼性で行うための方法として、マイクロプレートに行と列から格子状に形成された複数のウェルに吐出する分注方法であって、複数の分注チップをウェルと同様の配列で保持した保持体を準備する工程と、保持体に保持されている分注チップを2つの分注ヘッドに装着する分注チップ装着工程とを含み、この分注チップ装着工程において少なくとも1回は分注ヘッドに分注チップが未装着のピペットを残した状態で部分的に分注チップを装着することを特徴とする分注方法が提言されている(特許文献1)。
【特許文献1】特許公報第3705058号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のチップ保持装置においては、チップ保持用の貫通孔が設けられた面の歪みや撓みによって、保持されているチップの上下方向の位置が揃わない場合があり、複数のピペットが保持された分注装置を上方から押し当てた際に、各ピペットとチップとの間に均等な力が加わらず、全てのピペットに確実にチップが装着できないという問題があった。かかる場合には、分注作業の最中にピペットからチップが外れたり、チップとピペットとの間から空気がもれ、チップ内に薬液を吸引できなかったりといった問題が発生していた。
特に、ピペットの装着を繰り返し行なうと、上方から繰り返し押え付けられることにより、チップ保持用の貫通孔が設けられた面がへこみが生じ、さらにチップの上下方向の位置がくるうため、チップの装着が難しくなっていた。
また、上記の問題は、分注装置のピペットの上下位置にずれがある場合も同様に生じるものであり、全てのピペットに確実にチップを装着することができなかった。
【0007】
本願発明は、このような従来技術の問題点を解決するものであり、その目的は、装着時に、各ピペットとチップの間に均等な力を加えることができ、その結果、全てのピペットに確実にチップを装着できるチップ保持装置、分注装置およびチップ装着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の1ないし8の装置を要旨とする。
第1の発明は、多連ピペットを備えた装置に装着するためのチップを保持する装置であって、上面に複数の貫通孔が設けられた筐体と、各貫通孔に上下に摺動自在に挿着されたチップ保持部材と、複数の貫通孔と連通して筐体内に設けられ、非圧縮性の流体が充填された閉空間と、を備えるチップ保持装置である。
第2の発明は、第1の発明において、前記閉空間に充填された非圧縮性の流体は、前記一ないし複数のピペットが前記チップ保持部材の保持するチップに当接することにより前記チップの上端側から下方へ作用される力が伝達されると、それを前記多連ピペットと対向する全てのチップの下端側から上方へ均等に作用する力に変換することを特徴とする。
第3の発明は、第1または2の発明において、前記閉空間は、同一行または同一列に設けられた貫通孔と連通する複数の閉空間から構成されることを特徴とする。
第4の発明は、第1、2または3の発明において、前記閉空間は、前記分注装置のピペットに1回で装着されるチップとのみ連通する複数の閉空間から構成されることを特徴とする。
第5の発明は、第4の発明において、前記チップ保持部材は、複数のチップを保持できることを特徴とする。
第6の発明は、第1ないし5のいずれかの発明において、前記閉空間は、非圧縮性の流体の圧力を調整するための調圧手段を有することを特徴とする。
第7の発明は、第1ないし6のいずれかの発明において、前記チップ保持部材は、外周に段差が構成されており、当該段差に嵌合することができ、チップ保持部材を筐体に固定する着脱自在な凹部材を有することを特徴とする。
第8の発明は、第1ないし7のいずれかのチップ保持装置を備えることを特徴とする分注装置である。
【0009】
また、本発明は以下の9ないし11の方法を要旨とする。
第9の発明は、多連ピペットを備えた装置にチップ保持装置に保持されたチップを装着するに際し、一ないし複数のピペットがチップに当接することによりチップの上端側から下方へ作用される力を、チップ保持装置内の閉空間に充填された非圧縮性の流体に伝達し、該流体を介して多連ピペットと対向する全てのチップの下端側から上方へ均等に作用させることにより各チップのレベルを対向する各ピペットのレベルと同一に揃えることを特徴とするチップ装着方法である。
ここで、各チップのレベルを対向する各ピペットのレベルと同一に揃えることの意義は、各ピペットの先端部の位置が異なる(ピペットの高さにずれがある)場合においても、チップの内周に設けられた段差の位置がピペットの先端部の位置と揃えることで、確実にチップを装着することが可能とすることにある。
第10の発明は、第9の発明において、前記チップ保持装置内の閉空間が、前記分注装置のピペットに1回で装着されるチップとのみ連通する複数の閉空間であることを特徴とする。
第11の発明は、第9または10の発明において、前記非圧縮性の流体を、前記閉空間に連通する調圧手段により調圧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多連ピペットにチップを装着する際に、各ピペットとチップの間に均等な力を加えることが可能となるため、全てのピペットに確実にチップを装着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下では、本発明を実施するための最良の形態を、実施例により説明する。ただし、本発明は何ら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
≪構成≫
本実施例のチップ保持装置は、複数のウェルが行および列方向に格子状に形成されたマイクロプレートへの分注に用いられる分注装置に装着するためのチップを保持するものである。
本実施例では、図1と同様に、横8個、縦12個のウェル6を有するマイクロプレート5への分注に用いられる分注装置1へチップ3を装着する場合の例で説明する。ここで、分注は一度に横方向に並んだ8個のウェルに対して行なう。すなわち、この作業を縦方向に12回繰り返すことで、一つのマイクロプレート5の分注作業が完了されることを前提とする。なお、本実施例で使用されるマイクロプレート5およびチップ3は公知のものである。
分注装置1は、横方向に8個の一列に並んだピペット2を有したもので、このピペット2はチップ3を装着したときにチップ先端の吸引・排出口14の配置が、横方向に並んだ各ウェルの8個の配置と等しくなるように配置されている。なお、このような分注装置であれば、作業者が手に持って使用するものでも、大型の装置に搭載されたものでもよい。
【0013】
図4は、本実施例のチップ保持装置7の外観斜視図である。本実施例のチップ保持装置7は、本体上部21と本体底板22とで覆われた筐体である本体部20と、本体部に挿通され、マイクロプレート5のウェル6と同様に格子状に配列された96個(横8×縦12)のチップ保持部材9とから構成される。
図5は、チップ保持装置7を上から見た平面図において、本体部20の内部に設けられた12の部屋A〜Lを点線で囲ったものである。
【0014】
図6は、図5のA−A’断面図であり、同図によりチップ保持部材9を説明する。チップ保持部材9は、概略的には、2つの径が異なる円柱を同軸上に結合したような形状である。径が大きい側の端部は開口してチップ挿入穴15を形成している。このチップ挿入穴15は、他端には貫通していない。そして、底に近い部分で内径が小さい小径穴17を形成しており、チップ3を挿入したときに、チップ3の先端部がこの小径穴に入ることで、チップ3が横方向にぶれるのを防いでいる。
チップ保持部材9の中間位置には段差があり、そこから反対側の端部にかけて、小径に形成された摺動部19を構成している。摺動部19は、周方向に凹溝2つが設けられており、各凹溝内にはOリング18が装着されている。
チップ挿入穴15とは反対側の端部は、端に行くにつれて径が小さくなる円錐台の形状となっている。円錐台の部分と摺動部19と境目の近傍に着脱可能につば23が設けられている。
【0015】
本体上部21は、ほぼ直方体で、底面側に、横方向に延在した凹部である部屋26が、縦方向に12個並んで形成されている。さらに本体上部は、本体上部の上面から部屋26に連通する貫通孔8が各部屋26ごとに横方向に8個ずつ設けられている。本体上部には部屋26が12個あるので、本体上部は合計で96個の貫通孔8を有する。各部屋26に設けられた8個の貫通孔8の配置は、マイクロプレート5のウェル6の配置すなわち分注装置1のピペット2の配置と同じになっている。各貫通孔の内径は、チップ保持部材の摺動部の外径とほぼ同じである。各貫通孔の開口部にはテーパー29が形成されており、チップ保持部材9の摺動部19を貫通孔8に挿入しやすくしている。
【0016】
チップ保持部材9は、円錐台に形成された側の端部を、本体上部21の上面側から貫通孔8に挿入される。このとき、摺動部19に設けられた2つのOリング18が貫通孔8の内周に位置することで チップ保持部材9が密着される。チップ保持部材9を貫通孔8に挿入した後、チップ保持部材9の円錐台部と摺動部との境目に、部屋26側からつば23がはめられるので、チップ保持部材9が貫通孔8から抜けることがなくなる。
【0017】
部屋26にはオイルが満たされ、底面側からゴム板27を介して本体底板22によってふさがれている。このオイルは、一のチップ保持部材9から受けた力を他のチップ保持部材9に伝達する目的であるために、非圧縮性の流体で、比較的低粘度のものが好ましい。また、チップ保持装置7を長く使用するためには、腐食せず、長時間経過しても変化しないものが好ましい。本体上部21と本体底板22とは、ゴム板27によりシールされるので、オイルがこの間から漏れることはない。また、全ての貫通孔8にチップ保持部材9が挿入され、貫通孔8とチップ保持部材9の摺動面19とがOリング18によってシールされているので、貫通孔8からオイルが漏れることはない。
【0018】
≪動作≫
横方向に8個のピペット2が搭載された分注装置1において、各ピペットにチップ3を装着する際の動作を説明する。部屋Aに連通する貫通孔8に挿入されたチップ保持部材9が保持する計8個のチップ3をピペット2に装着する例で説明する。
まず、8個のチップ保持部材9のチップ挿入穴15にチップ3を挿入する。チップ3は外周部に段差13が設けられているので、この段差13がチップ挿入穴15の開口部に引っかかることで、チップ保持部材9に保持される。次に、図8に示すように、分注装置1の備える8個のピペットが各チップ3の真上に位置するよう分注装置1を移動させる。ここで、本実施例においては、最左側の2つのチップ保持部材9を他より高い位置となるよう装着している。続いて、図9に示すように、チップに向けて分注装置を下降させる(或いはチップ保持装置7を上昇させる)と、他より高い位置にある最左側の2つのチップ保持部材9が保持するチップ3の段差12にピペット2が当接し、他の6つのチップ3の段差12にはピペット2は当接しない状態となる。更にピペット2を下降させると、最左側の2つのチップ保持部材9はピペット2により下方向への力を受けて下降すると、部屋26内に充填されたオイルに圧力がかけられる。この圧力は他のチップ保持部材9を上昇させる方向に働く。その結果、全てのチップ3の段差12にピペットが当接し、更にピペット2を下方向に移動させる力を加えると、全てのチップ3とピペット2との間に均等の圧力がかかり、全てのピペット2にチップが装着される(図10参照)。
【0019】
このように、全てのチップ3とピペット2との間に均等の圧力をかけてチップ3をピペット2に装着するので、全てのチップ3を確実に装着することができるので、分注作業の最中にピペット2からチップ3が外れたり、チップ3とピペット2との間から空気がもれ、チップ3内に薬液を吸引できないといったこと問題を防ぐことができる。
なお、実際の装置の使用においては、装置の部品寸法の誤差などの要因により、いくつかのピペットに対して先にチップが装着される場合があるが、そのまま、ピペットを下降させる力を加えることで、最終的には全てのピペットに確実にチップを装着することができる。
【0020】
分注作業終了後は、ピペット2からチップ3が取り外され、新しいチップ3がピペット2に装着が行なわれる。続いてピペット2に装着されるチップ3は、本体上部21において縦方向に隣接した8個のチップである。例えば、部屋A→部屋B…部屋Lの順に新しいチップ3の装着が行われる。チップ3の装着動作を12回繰り返すと、チップ保持装置7に保持されたチップ3が全てなくなるので、そのタイミングでチップ保持装置7のチップ保持部材9にチップ3の挿入作業を行うこととなる。
【0021】
本実施例の装置では、部屋26に挿入された側のチップ保持部材9の端部が円錐台に形成されているため、真下からの力だけでなく横方向からの力をもチップ保持部材9の上方への移動に作用させることができる。
また、ピペット2の高さにずれにがある場合でも、チップ3の段差12の位置がピペットの先端部の位置と揃えられるため、全てのチップ3を確実に装着することができる。
【実施例2】
【0022】
本実施例は、実施例1の部屋26に調圧手段31を設けた装置である。
図11および12に示すように、調圧手段31は、本体部20の側面に設けられた貫通孔に密着して挿入された管状のシリンダ37と、シリンダ37の内側に設けられたねじ溝33と、ねじ溝33に螺号するねじ部材35と、ねじ部材35とピストン32とを連結するコイルバネ36とから構成される。
ねじ部材35には、シリンダのねじ溝に螺号するねじ溝が設けられており、コイルバネ36と反対側の端部には、径が大きく形成されたつまみ34を備えている。シリンダ37の部屋26側の内部には、ピストン32が挿入されている。ピストン32は、シリンダ37の内径とほぼ同じ大きさの外径の円柱であり、この円柱の外周上に設けられた凹溝内にOリング38を有し、シリンダ37の内部を摺動可能に構成されている。コイルバネ36は、シリンダ内でねじ部材34とピストン32との間に設けられる。
【0023】
上記構成の調圧手段31を備えることにより、コイルバネ36と部屋26内のオイルの圧力が等しくなるように、ピストン32がシリンダ37内を移動して圧力を調整するので、つまみ34を回転させて、コイルバネ36の圧縮率を変化させることにより、オイルの圧力を所望の圧力にすることができ、もっとも好ましい条件でピペット2にチップ3を装着させることが可能となる。
【実施例3】
【0024】
本実施例の装置は、実施例1とは、部屋26とチップ保持部材9の形状および配置が異なるチップ保持装置7を備える分注装置である。
本実施例のチップ保持装置7では、図13に示すように、本体部20の行方向に2つ、列方向に4つの計8つの部屋26が設けられている。各部屋26は2つの貫通孔8を有し、各貫通孔8には2つのチップを保持するチップ保持部材9が挿着されている。図14(a)は図13のB−B’断面図、図14(b)は図13のC−C’断面図である。
なお、チップ保持部材9の構成は図13のものに限られず、一つの部屋26に対してチップ保持部材9が複数設けられてさえいればよく、一つのチップ保持部材9により多数のチップ3を保持させる構成としてもよい。このように一つのチップ保持部材9により複数のチップを保持する構成とすると、貫通孔8の数が少なくて済むため、よりシンプルとなる。但し、チップ3をピペット2に装着する際に、同じチップ保持部材9に保持されたチップ3間で、均等な力をかけられなくなるおそれがあるので、一つの保持部材で保持できるチップの数は、少ない方が好ましい。また、一つのチップ保持部材9に保持されているチップの位置精度がくるわないように気をつける必要がある。
【0025】
上記のような分注装置1を構成する際には、ピペット2の数および配置と、チップ保持部材9の数および配置とを等しい構成とする必要がある。すなわち、ある一つの部屋26に連通する貫通孔8に挿着されチップ保持部材9に保持された全てのチップ3の配置が、分注装置1のピペット2の配置と同じになる。
【0026】
本実施例においては、図13に示すように、ピペット2の数および配置と、一つの部屋26に連通する貫通孔8に保持されたチップ3の数および配置が等しくなるよう構成されている。このように、一つの部屋26に対して、ピペット2とチップ3の数および配置が等しく構成されている限り、全てのピペット2に確実にチップ3を装着することができる。そのため、部屋26の形状、貫通孔8の配置、チップ保持部材9の数などを自由に構成することができるため、使用の状態に合わせて適宜選択することで設計の自由度を高めることができる。なお、2以上のチップ保持部材9と連通する部屋26を1つないし複数備えることが最低限の要件となる。
【実施例4】
【0027】
ピペット2の数がチップ保持部材9の数よりも少ない場合においては、図15に示すように余ったチップ保持部材9を凹部材であるストッパー39により上下に動かないように固定することで、各ピペットとチップとの間にかかる力を等しくすることできる。
ストッパー39は、図16に示すような形状であり、保持部材9の外周にある段差16と本体上部21との間に嵌め込まれて使用される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本願チップ保持装置は、分注装置に留まらず、ピペットを有する全ての装置に使用できる。例えば、試験管やビンのような容器類にピペットから液体を吐出する場合や、ガラス板のような凹みのない板状のものにピペットから液体を塗布する用途が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】既存の分注装置による分注方法の説明斜視図である。
【図2】既存のチップの構成断面図である。
【図3】既存のチップ保持装置によるチップ装着方法の説明図である。
【図4】実施例1の装置の斜視図である。
【図5】実施例1の装置の平面図である。
【図6】チップ保持部材のA−A’断面図である。
【図7】実施例1の装置の構成断面図である。
【図8】実施例1の装置におけるチップ装着動作の説明断面図(1/3)である。
【図9】実施例1の装置におけるチップ装着動作の説明断面図(2/3)である。
【図10】実施例1の装置におけるチップ装着動作の説明断面図(3/3)である。
【図11】実施例2の装置の構成断面図である。
【図12】調圧手段の構成断面図である。
【図13】実施例3の装置の平面図である。
【図14】実施例3の装置のB−B’断面図およびC−C’断面図である。
【図15】実施例4の装置において、ストッパーを装着した状態の構成断面図である。
【図16】ストッパーの斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 分注装置
2 ピペット
3 チップ
5 マイクロプレート
6 ウェル
7 チップ保持装置
8 貫通孔
9 チップ保持部材
10 装着口
11 凸条
12,13 段差
14 吸引・排出口
15 チップ挿入穴
16 保持部材外周段
17 小径穴
18 Oリング
19 摺動部
20 本体部
21 本体上部
22 本体底板
23 つば
24 円錐台
25 貫通孔
26 部屋
27 ゴム板
29 テーパー
31 調圧手段
32 ピストン
33 ねじ溝
34 つまみ
35 ねじ部材
36 コイルバネ
37 シリンダ
38 Oリング
39 ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多連ピペットを備えた装置に装着するためのチップを保持する装置であって、
上面に複数の貫通孔が設けられた筐体と、各貫通孔に上下に摺動自在に挿着されたチップ保持部材と、複数の貫通孔と連通して筐体内に設けられ、非圧縮性の流体が充填された閉空間と、を備えるチップ保持装置。
【請求項2】
前記閉空間に充填された非圧縮性の流体は、前記一ないし複数のピペットが前記チップ保持部材の保持するチップに当接することにより前記チップの上端側から下方へ作用される力が伝達されると、それを前記多連ピペットと対向する全てのチップの下端側から上方へ均等に作用する力に変換することを特徴とする請求項1のチップ保持装置。
【請求項3】
前記閉空間は、同一行または同一列に設けられた貫通孔と連通する複数の閉空間から構成されることを特徴とする請求項1または2のチップ保持装置。
【請求項4】
前記閉空間は、前記分注装置のピペットに1回で装着されるチップとのみ連通する複数の閉空間から構成されることを特徴とする請求項1、2または3のチップ保持装置。
【請求項5】
前記チップ保持部材は、複数のチップを保持できることを特徴とする請求項4のチップ保持装置。
【請求項6】
前記閉空間は、非圧縮性の流体の圧力を調整するための調圧手段を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかのチップ保持装置。
【請求項7】
前記チップ保持部材は、外周に段差が構成されており、
当該段差に嵌合することができ、チップ保持部材を筐体に固定する着脱自在な凹部材を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかのチップ保持装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかのチップ保持装置を備えることを特徴とする分注装置。
【請求項9】
多連ピペットを備えた装置にチップ保持装置に保持されたチップを装着するに際し、一ないし複数のピペットがチップに当接することによりチップの上端側から下方へ作用される力を、チップ保持装置内の閉空間に充填された非圧縮性の流体に伝達し、該流体を介して多連ピペットと対向する全てのチップの下端側から上方へ均等に作用させることにより各チップのレベルを対向する各ピペットのレベルと同一に揃えることを特徴とするチップ装着方法。
【請求項10】
前記チップ保持装置内の閉空間が、前記分注装置のピペットに1回で装着されるチップとのみ連通する複数の閉空間であることを特徴とする請求項8のチップ装着方法。
【請求項11】
前記非圧縮性の流体を、前記閉空間に連通する調圧手段により調圧することを特徴とする請求項9または10のチップ装着方法。




【図16】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−155336(P2007−155336A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346586(P2005−346586)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(390026387)武蔵エンジニアリング株式会社 (56)
【Fターム(参考)】