説明

チップ状電子部品連およびその製造方法

【課題】 各々チップ状電子部品を収納した複数個のキャビティを長手方向に分布させて形成したキャリアテープの下方主面には、ボトムテープが樹脂層を介して熱溶着により接着され、同じく上方主面には、トップテープが熱シール法にて接着された、チップ状電子部品連において、キャビティの底面に位置するボトムテープ上の樹脂層が未硬化の状態でチップ状電子部品がキャビティに挿入されたため、チップ状電子部品がキャビティの底面に接着され、その取り出しが阻害されることを防止する。
【解決手段】 樹脂層22をキャリアテープ23側に予め形成し、キャリアテープ23にキャビティ25を形成したとき、キャビティ25の底面に位置すべき部分において樹脂層22をも除去しておき、その状態で、ボトムテープ26をキャリアテープ23に熱溶着する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、各々チップ状電子部品を収納している複数個のキャビティがその厚み方向に貫通する穴として形成されたキャリアテープを備えるチップ状電子部品連およびその製造方法に関するもので、特に、キャビティの下方開口を覆うためのボトムテープをキャリアテープの下方主面に接着するための構造および方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4には、この発明にとって興味あるチップ状電子部品連1が斜視図で示されている。チップ状電子部品連1は、複数個のキャビティ2をその長手方向に分布させて形成したキャリアテープ3を備える。キャリアテープ3は、典型的には、紙から構成される。キャビティ2の各々には、たとえば積層セラミックコンデンサのようなチップ状電子部品4が1個ずつ収納されている。また、キャリアテープ3には、キャビティ2の形成ピッチに相関するピッチをもって、複数個の送り穴5が設けられている。
【0003】上述したキャビティ2は、キャリアテープ3の厚み方向に貫通する穴として形成されている。このようなキャビティ2内にチップ状電子部品4が収納された状態を保持するため、ボトムテープ6が、キャビティ2の下方開口を覆うようにキャリアテープ3の下方主面に接着されるとともに、トップテープ7が、キャビティ2の上方開口を覆うようにキャリアテープ3の上方主面に接着される。
【0004】ボトムテープ6の接着については、図5および図6を参照して後述するが、トップテープ7は、通常、樹脂シートからなり、熱シール法を用いて、図4において破線によってその接着領域8を示すように、トップテープ7の両側縁部のみにおいて接着される。このトップテープ7は、キャビティ2からチップ状電子部品4を取り出すとき、キャリアテープ3から剥がされる。
【0005】ボトムテープ6としては、図5に示すように、和紙のような紙からなる紙層9とその上方主面上にポリエチレンのような熱可塑性樹脂からなる樹脂層10とからなる2層構造のものが用意される。このボトムテープ6を、キャリアテープ3の下方主面に対向するように配置し、さらにその下方から、加熱された熱シールアイロン11を、ボトムテープ6に向かって押圧するように、作用させる。このようにして、樹脂層10が溶融され、キャリアテープ3の紙の繊維と絡み合って、図6に示すように、キャリアテープ3とボトムテープ6とが、熱溶着に基づき接着される。図4において、キャリアテープ3とボトムテープ6との接着領域12が、ボトムテープ6上に破線のハッチングを施すことによって示されている。
【0006】このようにボトムテープ6がキャリアテープ3に接着された後、各キャビティ2内にチップ状電子部品4が挿入され、その後、前述したように、トップテープ7がキャリアテープ3に接着されることによって、チップ状電子部品連1が完成される。他方、このチップ状電子部品連1を用いて、チップ状電子部品4を供給するときには、送り穴5を用いてチップ状電子部品連1をその長手方向へ送りながら、トップテープ7をキャリアテープ3から剥がし、順次、上方開口が開いた状態とされたキャビティ2からチップ状電子部品4が、たとえば真空吸引チャックにより取り出され、これをマウントしようとする所望の回路基板等にまで供給される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述したように、キャビティ2からチップ状電子部品4を取り出そうとしたとき、チップ状電子部品4がキャビティ2の下方開口内すなわちキャビティ2の底面に位置するボトムテープ6に多少なりとも接着されていて、そのような取り出しをしくじることが時としてあった。その原因は、ボトムテープ6がキャリアテープ3に熱溶着されるとき、ボトムテープ6の樹脂層10が溶融されるが、キャビティ2の底面に位置する樹脂層10が未硬化のまま、チップ状電子部品4がキャビティ2に挿入されたためである。
【0008】このように、キャビティ2の底面に位置する樹脂層10が未硬化のまま、チップ状電子部品4がキャビティ2に挿入される状況に遭遇するのは、ボトムテープ6をキャリアテープ3に熱溶着するに際して、樹脂層10が熱シールアイロン11で加熱されたとき、キャリアテープ3に接触している部分に比べて、キャリアテープ3に接触していない部分すなわちキャビティ2の底面に位置する部分が過剰に溶融され、その結果、キャリアテープ3との接着に寄与している部分の樹脂層10は既に硬化しているにもかかわらず、キャビティ2の底面に位置している部分にある樹脂層10は未硬化のままの状態で残されることがあるからである。
【0009】なお、上述の問題を回避するためには、キャビティ2の底面に位置する樹脂層10の完全な硬化を待って、チップ状電子部品4の挿入を行なえばよいのであるが、それでは、チップ状電子部品連1を連続的に製造するためのラインが長くなったり、チップ状電子部品連1の製造を連続的に実施できなくなったりし、チップ状電子部品連1の能率的な量産を阻害してしまうことになる。
【0010】そこで、この発明の目的は、上述した問題を解決し得るチップ状電子部品連およびその製造方法を提供しようとすることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明は、まず、複数個のキャビティを、それぞれ厚み方向に貫通する穴として、長手方向に分布させて形成したキャリアテープと、キャビティの各々に収納されたチップ状電子部品と、各キャビティの下方開口を覆うようにキャリアテープの下方主面に樹脂層を介して熱溶着により接着されるボトムテープと、各キャビティの上方開口を覆うようにキャリアテープの上方主面に接着されるトップテープとを備える、チップ状電子部品連に向けられ、上述の技術的課題を解決するため、前記樹脂層が、キャビティの下方開口内に位置する部分を除いてボトムテープがキャリアテープに向かう部分に形成されていることを特徴としている。
【0012】この発明は、また、上述したようなチップ状電子部品連の製造方法にも向けられる。この発明に係るチップ状電子部品連の製造方法は、下方主面上に樹脂層を形成したキャリアテープ、キャリアテープの下方主面に接着されるボトムテープ、およびキャリアテープの上方主面に接着されるトップテープをそれぞれ用意する工程と、キャリアテープの長手方向に分布する複数個のキャビティを形成するため、キャリアテープの厚み方向に貫通する複数個の穴を樹脂層をも貫通して設ける工程と、各キャビティの下方開口を覆うように、樹脂層を介して、ボトムテープをキャリアテープの下方主面に熱溶着する工程と、各キャビティ内にチップ状電子部品を挿入する工程と、各キャビティの上方開口を覆うように、トップテープをキャリアテープの上方主面に接着する工程とを備えている。
【0013】この発明の特定的な実施形態では、キャリアテープおよびボトムテープは、それぞれ、紙から構成される。
【0014】
【発明の効果】この発明に係るチップ状電子部品連によれば、ボトムテープをキャリアテープに接着するための樹脂層が、キャビティの下方開口内に位置する部分を除いてボトムテープがキャリアテープに向かう部分に形成されているにすぎないので、キャビティの下方開口内すなわち底面には、樹脂層が存在しない。したがって、未硬化の樹脂層が、キャビティ内に挿入されたチップ状電子部品を接着してしまう、という状況は生じ得ず、このことが原因となって、キャビティからのチップ状電子部品の取り出しをしくじるようなことがなくなる。そのため、高い信頼性をもってチップ状電子部品の供給を行なうことができる。
【0015】また、この発明に係るチップ状電子部品連の製造方法によれば、樹脂層を、ボトムテープ側ではなく、キャリアテープ側に予め形成しておくので、キャリアテープにキャビティのための貫通する穴を設けたとき、キャビティの範囲内で樹脂層を予め除去しておくことができる。したがって、ボトムテープをキャリアテープに熱溶着したとき、キャビティの下方開口内すなわちキャビティの底面に樹脂層が存在しないようにすることが容易である。
【0016】
【発明の実施の形態】図1ないし図3には、この発明の一実施形態によるチップ状電子部品連の製造方法に含まれるいくつかの工程が拡大断面図で示されている。このチップ状電子部品連は、外観上、図4に示したチップ状電子部品連1と実質的に同様であり、以下において特に断らない限り、チップ状電子部品連1と同様の要素を備えている。
【0017】図1に示すように、下方主面上に樹脂層22を形成したキャリアテープ23が用意される。キャリアテープ23は、たとえば紙からなり、樹脂層22は、このようなキャリアテープ23の下方主面をたとえばポリエチレンのような熱可塑性樹脂でたとえば約25μm の厚みをもってコーティングすることにより形成される。
【0018】次に、キャリアテープ23には、一点鎖線24で示した位置において、その厚み方向に貫通する穴が樹脂層22をも貫通するように設けられ、図2に示すように、キャビティ25が形成される。キャビティ25は、図4に示したキャビティ2と同様、キャリアテープ23の長手方向に分布するように形成される。他方、図2R>2に示すように、キャリアテープ23の下方主面に接着されるボトムテープ26が用意される。ボトムテープ26は、たとえば和紙のような紙からなるが、図5に示した従来のボトムテープ6のような2層構造とはされない。
【0019】次に、このボトムテープ26を、キャリアテープ23の下方主面に対向するように配置し、さらにその下方から、加熱された熱シールアイロン27を、ボトムテープ26に向かって押圧するように、作用させる。このようにして、樹脂層26が溶融され、キャリアテープ23の紙の繊維と絡み合って、図3に示すように、キャリアテープ23の下方主面に、樹脂層22を介して、ボトムテープ26が熱溶着に基づき接着され、キャビティ25の下方主面がボトムテープ26によって覆われる。
【0020】この熱溶着によりキャリアテープ23とボトムテープ26とが接着される領域は、図4に示したキャリアテープ3とボトムテープ6との接着領域12と同様であるが、キャビティ25の下方開口内すなわちキャビティ25の底面には、樹脂層22が存在していないことに注目すべきである。以後、図示しないが、図4に示したチップ状電子部品連1の場合と同様、各キャビティ25内にチップ状電子部品4(図4参照)が挿入され、その後、トップテープ7(図4参照)がキャリアテープ23に接着されることによって、チップ状電子部品連が完成される。
【0021】また、このチップ状電子部品連を用いて、チップ状電子部品4を供給するときには、送り穴5(図4R>4参照)を用いてチップ状電子部品連をその長手方向へ送りながら、トップテープ7をキャリアテープ23から剥がし、順次、上方開口が開いた状態とされたキャビティ25からチップ状電子部品4が、たとえば真空吸引チャックにより取り出され、これをマウントしようとする所望の回路基板等にまで供給される。
【0022】上述のチップ状電子部品4のキャビティ25からの取り出しにおいて、キャビティ25の底面には樹脂層22が存在していないので、チップ状電子部品4が未硬化の樹脂層22に不所望にも接着されることによって、その取り出しをしくじることはあり得ない。以上、この発明を図示の特定的な実施形態に関連して説明したが、この発明の範囲内において、その他、種々の実施形態が可能である。
【0023】たとえば、この発明に係るチップ状電子部品連を製造するため、図示の好ましい実施形態では、キャリアテープ23に樹脂層22を予め形成しておき、このキャリアテープ23にキャビティ25となる穴を設けるとき、キャビティ25の底面に位置する樹脂層22を同時に除去するようにしたが、これに代えて、キャビティ25の底面に相当する領域に樹脂層22が形成されないようなパターンをもって、ボトムテープ26上に樹脂層22を形成し、このボトムテープ26をキャビティ25が形成されているキャリアテープ23に熱溶着するようにしてもよく、あるいは、予めキャリアテープ23にキャビティ25を形成しておき、このキャリアテープ23の一面に樹脂層22を形成した後、樹脂層22を介してボトムテープ26をキャリアテープ23に熱溶着させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態によるチップ状電子部品連を製造するために用意されるキャリアテープ23の一部を示す拡大断面図である。
【図2】図1に示したキャリアテープ23にキャビティ25を形成し、ボトムテープ26を熱溶着しようとする工程を示す断面図である。
【図3】図2に示した工程を経て、ボトムテープ26がキャリアテープ23に熱溶着された状態を示す断面図である。
【図4】この発明にとって興味ある従来のチップ状電子部品連1の一部を示す斜視図である。
【図5】図4に示したチップ状電子部品連1を得るために用意されたキャリアテープ3にボトムテープ6を熱溶着しようとする工程を示す拡大断面図である。
【図6】図5に示した工程を経て、ボトムテープ6がキャリアテープ3に熱溶着された状態を示す断面図である。
【符号の説明】
4 チップ状電子部品
7 トップテープ
22 樹脂層
23 キャリアテープ
25 キャビティ
26 ボトムテープ
27 熱シールアイロン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数個のキャビティを、それぞれ厚み方向に貫通する穴として、長手方向に分布させて形成したキャリアテープと、前記キャビティの各々に収納されたチップ状電子部品と、各前記キャビティの下方開口を覆うように前記キャリアテープの下方主面に樹脂層を介して熱溶着により接着されるボトムテープと、各前記キャビティの上方開口を覆うように前記キャリアテープの上方主面に接着されるトップテープとを備える、チップ状電子部品連において、前記樹脂層は、前記キャビティの下方開口内に位置する部分を除いて前記ボトムテープが前記キャリアテープに向かう部分に形成されていることを特徴とする、チップ状電子部品連。
【請求項2】 前記キャリアテープおよび前記ボトムテープは、それぞれ、紙からなる、請求項1に記載のチップ状電子部品連。
【請求項3】 下方主面上に樹脂層を形成したキャリアテープ、前記キャリアテープの下方主面に接着されるボトムテープ、および前記キャリアテープの上方主面に接着されるトップテープをそれぞれ用意し、前記キャリアテープの長手方向に分布する複数個のキャビティを形成するため、前記キャリアテープの厚み方向に貫通する複数個の穴を前記樹脂層をも貫通して設け、各前記キャビティの下方開口を覆うように、前記樹脂層を介して、前記ボトムテープを前記キャリアテープの下方主面に熱溶着し、各前記キャビティ内にチップ状電子部品を挿入し、各前記キャビティの上方開口を覆うように、前記トップテープを前記キャリアテープの上方主面に接着する、各工程を備える、チップ状電子部品連の製造方法。
【請求項4】 前記キャリアテープおよび前記ボトムテープは、それぞれ、紙からなる、請求項3に記載のチップ状電子部品連の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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