説明

チャート分析装置及びチャート分析方法に関するものである。

【課題】 同一の金融商品にかかる2以上のチャートを用いることによって、多様な観点から金融商品の売買に適したタイミングを分析することが可能な、チャート分析装置及びチャート分析方法を提供する。
【解決手段】 複数のチャートを選択し、各々のチャートを構成する数値を度数分布などの所定のルールに基づいてスコアに置き換える。置き換えたスコアに、価格、出来高等について重視したい項目を加重値によって調整して、多様な要素を反映した総合スコアを算出する。算出された総合スコアの時系列的な変局を所定のロジックによって捉えるよう構成することによって、トレンド、出来高、信用取引の影響など、様々な要因を反映した総合的なセンチメントを数値化して分析し、売買のシグナルを発生させることを可能にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の金融商品にかかる2以上のチャートを用いることによって、多様な観点から金融商品の売買に適したタイミングを分析するチャート分析装置及びチャート分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金融商品の一つである株式への投資を判断するための分析手法として、株式を発行する企業の収益力や資産状況などから投資対象を分析するファンダメンタルズ分析と、株価の時系列的な変局を捉えて投資のタイミングを分析するテクニカル分析の2つが、投資家の間で広く用いられている。このうち、特に後者のテクニカル分析については、コンピュータの進歩に伴って多様な分析がなされるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
テクニカル分析は時系列的な変局を捉えるものであるため、株価や売買高、その他の指数の時系列的な推移を示したチャートを描画することによって行われる。チャートの描き方にも様々な種類があり、移動平均線や一目均衡表を用いたトレンド分析、RSIやストキャティクスを用いたモメンタム分析、ローソク足を用いたフォーメーション分析など、多くの分析手法が提供されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−196497号公報
【非特許文献1】日本テクニカルアナリスト協会・ホームページ、「テクニカル分析とは」、[平成18年11月17日検索]、インターネット<URL:http://www.ntaa.or.jp/technical/index.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらのチャートは、それぞれが上昇局面への変化を捉えやすい、天井を捉えやすいなどの特徴を有しており、テクニカル分析を用いる投資家は、複数のチャートの動きを考慮しながら売買のタイミングを計ることが一般的である。ところが、各々のチャートは別々に描画されるものであるため、投資家は必要なチャートをそれぞれ参照しながら、自らの判断でそこから何らかの傾向を読み取らなければならない。コンピュータを用いたチャートを描画するツールとして、複数のチャートを重ねて描画できるものも提供されているが、描画された複数のチャートをどのように読み取るかは投資家の判断に委ねられることになってしまう。
【0006】
本発明は、このような課題に対応するためになされたものであり、同一の金融商品にかかる2以上のチャートを用いることによって、多様な観点から金融商品の売買に適したタイミングを分析することが可能な、チャート分析装置及びチャート分析方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明は、同一の金融商品にかかる2以上のチャートから前記金融商品の売買に適したタイミングを分析するためのチャート分析装置であって、同一の金融商品にかかる2以上のチャートを構成する数値を時系列に従って記憶するチャート記憶手段と、前記チャート記憶手段から、各々のチャートについて所定の対象期間中の数値を読み出して、各々の数値を所定のルールに基づくスコアに置き換えて記憶するスコア記憶手段と、前記スコア記憶手段に記憶された各々のチャートについての全てのスコア値から、前記対象期間中の日毎に総合スコアを算出して記憶する総合スコア記憶手段と、前記対象期間中の日毎に、前記総合スコア記憶手段に記憶された総合スコアの所定の期間の移動平均値を算出して時系列に従って記憶する移動平均値記憶手段と、前記移動平均値記憶手段に記憶された移動平均値を前日の移動平均値と比較して、前日比に対する増減のいずれかの傾向を時系列に従って記憶する増減傾向記憶手段と、前記増減傾向記憶手段に記憶された増減の傾向が、減少から増加に転じた日を買いシグナルの発生日として、増加から減少に転じた日を売りシグナルの発生日として特定するシグナル発生日特定手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、チャートを構成する数値をスコアに置き換えて、複数のチャートのスコアを反映した総合スコアの変化から時系列的な変局を捉えるよう構成することによって、トレンド、出来高、信用取引の影響など、多様な要素を反映した総合的なセンチメントを数値化して分析し、売買のシグナルを発生させることを可能にしている。
【0009】
また、本発明は、前記チャート記憶手段に構成する数値が記憶された各々のチャートについての加重値を記憶するチャート加重値記憶手段を備えていて、前記総合スコア記憶手段は、各々のチャートのスコアに前記加重値記憶手段に記憶された加重値を反映した総合スコアを算出して記憶することを特徴とすることもできる。
【0010】
このように構成すると、チャートの種類によって加重値を調整することによって、バランス型、価格重視型、出来高重視型など、重視するポイントを変化させた多様なセンチメントの分析が可能になる。
【0011】
さらに、本発明は、前記スコア記憶手段がスコアへの置き換えに用いた所定のルールを各々のチャート毎に記憶する置換ルール記憶手段と、シグナルの判定対象となる対象日の各々のチャートを構成する数値を取得する数値取得手段と、前記数値取得手段の取得した数値を、前記置換ルール記憶手段を参照してスコアに置き換えて記憶する第2のスコア記憶手段と、前記第2のスコア記憶手段に記憶された各々のチャートについての全てのスコア値から、前記対象日の総合スコアを算出して記憶する第2の総合スコア記憶手段と、前記第2のスコア記憶手段に記憶された対象日の総合スコア以前の所定の期間の移動平均値を前記総合スコア記憶手段に記憶された総合スコアを用いて算出し、前記移動平均値記憶手段に記憶された前記対象日の前日の移動平均値と比較して、減少から増加に転じた場合は買いシグナルを、増加から減少に転じた場合は売りシグナルを、ディスプレイへのシグナル発生通知の表示、チャート分析装置に接続されたプリンタへのシグナル発生通知の出力、チャート分析装置に接続されたスピーカへのシグナル発生音の出力、又はネットワークで接続された端末装置へのシグナル発生通知の送信のいずれかの方法によって通知するシグナル通知手段と、を備えることを特徴としてもよい。
【0012】
このように構成すると、日々の最新のデータを分析して、センチメントが売り又は買いに転換した際には、速やかに投資家にシグナルを通知することが可能になる。
【0013】
さらに、本発明は、本発明にかかるチャート分析装置のそれぞれの構成によって実行されるチャート分析方法として特定することもできる。
【0014】
つまり、本発明のチャート分析方法は、同一の金融商品にかかる2以上のチャートを構成する数値を時系列に従って記憶するチャート記憶部を備えるコンピュータによって、前記金融商品の売買に適したタイミングを分析するためのチャート分析方法であって、前記コンピュータが、前記チャート記憶部から、各々のチャートについて所定の対象期間中の数値を読み出して、各々の数値を所定のルールに基づくスコアに置き換えて第1の記憶領域に記憶させるスコア記憶ステップと、前記コンピュータが、前記スコア記憶ステップにおいて記憶された各々のチャートについての全てのスコア値から、前記対象期間中の日毎に総合スコアを算出して第2の記憶領域に記憶させる総合スコア記憶ステップと、前記コンピュータが、前記対象期間中の日毎に、前記総合スコア記憶ステップにおいて記憶された総合スコアの所定の期間の移動平均値を算出して時系列に従って第3の記憶領域に記憶させる移動平均値記憶ステップと、前記コンピュータが、前記移動平均値記憶ステップにおいて記憶された移動平均値を前日の移動平均値と比較して、前日比に対する増減のいずれかの傾向を時系列に従って第4の記憶領域に記憶させる増減傾向記憶ステップと、前記コンピュータが、前記増減傾向記憶ステップで記憶された増減の傾向が、減少から増加に転じた日を買いシグナルの発生日として、増加から減少に転じた日を売りシグナルの発生日として特定するシグナル発生日特定ステップと、を有することを特徴とするチャート分析方法である。
【0015】
また、前記コンピュータには、前記チャート記憶部に構成する数値が記憶された各々のチャートについての加重値を記憶するチャート加重値記憶部が備えられていて、前記総合スコア記憶ステップでは、各々のチャートのスコアに前記加重値記憶部に記憶された加重値を反映した総合スコアを算出して前記第2の記憶領域に記憶させることを特徴とすることもできる。
【0016】
さらに、前記コンピュータには、前記スコア記憶ステップにおいてスコアへの置き換えに用いた所定のルールを各々のチャート毎に記憶する置換ルール記憶部が備えられていて、前記コンピュータが、シグナルの判定対象となる対象日の各々のチャートを構成する数値を取得する数値取得ステップと、前記コンピュータが、前記数値取得ステップにおいて取得した数値を、前記置換ルール記憶部を参照してスコアに置き換えて第5の記憶領域に記憶させる第2のスコア記憶ステップと、前記コンピュータが、前記第2のスコア記憶ステップにおいて記憶された各々のチャートについての全てのスコア値から、前記対象日の総合スコアを算出して第6の記憶領域に記憶させる第2の総合スコア記憶ステップと、前記コンピュータが、前記第2のスコア記憶ステップにおいて記憶された対象日の総合スコア以前の所定の期間の移動平均値を前記第2の記憶領域に記憶された総合スコアを用いて算出し、前記第3の記憶手段に記憶された前記対象日の前日の移動平均値と比較して、減少から増加に転じた場合は買いシグナルを、増加から減少に転じた場合は売りシグナルを、ディスプレイへのシグナル発生通知の表示、チャート分析装置に接続されたプリンタへのシグナル発生通知の出力、チャート分析装置に接続されたスピーカへのシグナル発生音の出力、又はネットワークで接続された端末装置へのシグナル発生通知の送信のいずれかの方法によって通知するシグナル通知ステップと、を有することを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、株式等の金融商品に投資する投資家は、複数のチャートを描画して自ら分析することを行わなくても、複数のチャートが反映された総合的なセンチメントによって分析された売買シグナルを受け取ることによって、高度なテクニカル分析結果を利用しながら売買のタイミングを計ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。尚、以下には、本発明にかかるチャート分析装置によって株価チャートを分析する例について説明するが、この説明は本発明の実施形態の一例であって、本発明は他の金融商品のチャート分析に用いることとしてもよい。
【0019】
図1は、本発明にかかるチャート分析装置の第1の実施形態における構成を示すブロック図である。図2は、本発明にかかるチャート分析装置の第2の実施形態における構成を示すブロック図である。図3は、本発明にかかるチャート分析装置において分析に用い得るチャートの例を示す図である。図4は、本発明にかかるチャート分析装置において分析に用いるチャートの設定値の一例を示す図である。図5は、本発明にかかるチャート分析装置による売買タイミングの分析の一例を示す図である。図6は、本発明にかかるチャート分析装置による売買シグナルを発生させるロジックの一例を示す図である。図7は、本発明にかかるチャート分析装置によるセンチメントの時系列分析のフローを示すフローチャートである。図8は、本発明にかかるチャート分析装置により分析対象日の売買シグナル発生の要否を判断するフローを示すフローチャートである。図9は、本発明にかかるチャート分析装置の実施例における検証方式別の設定条件を示す図である。図10〜図15は、本発明にかかるチャート分析装置の実施例により作成された第1のチャート(バランス型・1996〜2000年)、第2のチャート(バランス型・2001〜2006年7月)、第3のチャート(価格重視型・1996〜2000年)、第4のチャート(価格重視型・2001〜2006年7月)、第5のチャート(出来高重視型・1996〜2000年)、第6のチャート(出来高重視型・2001〜2006年7月)である。図16は、本発明にかかるチャート分析装置の実施例におけるドテン方式による売買シミュレーション結果を示す図である。
【0020】
図1は、本発明にかかるチャート分析装置の第1の実施形態で、本発明にかかるチャート分析装置はユーザの使用するコンピュータ10の一部の機能として構成されている。コンピュータ10には、アプリケーションプログラムの演算処理や通信機能を備えた一般的なパーソナルコンピュータを用いることとすればよい。売買シグナル判定部11は機能的に特定されるものであって、コンピュータ10のメインメモリに売買シグナルを判定する機能を実行するためのアプリケーションプログラムが読み出され、CPUにおいて演算処理が行なわれることによって、該機能が実行される。
【0021】
加重条件記憶部12、株価情報記憶部13、チャート情報記憶部14、演算値記憶部15は、いずれもコンピュータ10のHDDの所定の記憶領域に設けられるものであるが、演算処理のために一時的に記憶されるものについては、コンピュータ10のメインメモリに一時記憶されるものであってもよい。
【0022】
コンピュータ10とマーケット情報提供サーバ20とは、インターネットを通じて接続されていて、チャートの描画に必要な株価や出来高などの数値データをマーケット情報提供サーバ20から受信するように構成されている。これらの数値データについては、随時マーケット情報提供サーバ20から送信された数値データが株価情報記憶部13とチャート情報記憶部14に記憶され、コンピュータ10においてチャートを描画する際には株価情報記憶部13とチャート情報記憶部14から必要な数値データを読み出すこととしてもよいし、コンピュータ10においてチャートを描画する際にマーケット情報提供サーバ20から必要な数値データを受信して、株価情報記憶部13とチャート情報記憶部14に一時記憶させた数値データを用いてチャートを描画することとしてもよい。
【0023】
尚、株価情報記憶部13とチャート情報記憶部14には、株価の分析に必要なチャートを描画するために必要な数値データが記憶されているが、株価情報記憶部13とチャート情報記憶部14に記憶される情報は特に限定されるものではない。ここでは移動平均線、新値足などに用いる株価情報を株価情報記憶部13に、出来高回転率、貸借倍率などに用いられる株価以外の情報をチャート情報記憶部14に記憶させることとした。コンピュータ10では、株価情報記憶部13とチャート情報記憶部14に記憶された数値データを用いて、様々なチャートを描画することが可能となっている。
【0024】
ここで、本発明では、売買シグナル判定部11において固有のチャート分析を行うことができるよう構成されている。図3に例示したように、株価を分析するためのチャートには、エンベロープ、RSI、新値足など様々な種類が存在しており、それぞれのチャートは異なる特性を有するものとなっている。例えば、エンベロープ、新値足は上昇・下降トレンドに効力を発揮する、RSIやボリュームレシオは(もみ合い)局面に強い、といった傾向が検証されている。このように、どのチャートも一つをもって十分な分析ができるものではないため、投資家は複数のチャートを用いながら売買のタイミングを計ることが少なくないが、本発明では複数のチャートを採用して加重したスコアを算出し、そのスコアの変動から多様な要因を織り込んだ分析を、一のチャート分析によって行おうとするものである。
【0025】
図4は、かかる着想のもと、分析の対象として8種類のチャートを選んで条件設定を行ったものである。本発明においては、これらの8種類のチャートを描画することが可能な数値データが株価情報記憶部13とチャート情報記憶部14に記憶されており、ここに記憶された数値データを用いて8種類のチャートを加重したスコアを算出する。以降、本発明において演算される該スコアを、「GOセンチメント」(「GO」は、発明者のうち2名のイニシャルをとったものである。)として説明する。
【0026】
GOセンチメントの演算処理は、図7及び図8のフローチャートに示したフローによって行われる。図7は、ある期間中のGOセンチメントの時系列での推移を分析することによって、数値データと度数分布処理の対応関係などのパラメータ設定を含む、GOセンチメントの過日分の演算処理フローを示しており、図8は、図7によってGOセンチメントの時系列での推移が記録されていることを前提に、分析対象日となる当日の売買シグナル発生の要否を判断するフローを示したものとなっている。
【0027】
まず、GOセンチメントの算出対象となる2以上のチャート種類を選択する(S01)。ここで選択するチャートについては、例えば、図5のように対象とすることが可能なチャートについて、算出対象とするか否かを示すフラグをたてることによって(図5の例では「Y」が算出対象であることを示すフラグとなっている。)、ユーザが予め選択しておくことができるよう構成すればよい。この算出対象とするか否かを示すフラグは、ユーザが入力装置16を操作して設定し、後に説明する各々のチャートの加重値とともに加重条件記憶部12に記憶される。
【0028】
次に、算出対象となっているチャートについて、分析対象となる期間中のチャートの基礎となる数値データを株価情報記憶部13又はチャート情報記憶部14から読み出して取得する(S02)。取得した数値データは、対象期間の最大値と最小値を求めて度数分布処理を行い(S03)、対象期間中の各日の数値データをスコアに置換する(S04)。図5の例では、対象期間の最大値から最小値までを21等分した後に、各日の数値データを上位から順に+10から−10までの21段階のスコアに置き換えている。尚、新値足については、陽線10本以上は+10、陰線10本以上を−10として、陽線又は陰線の本数からスコアを付与している。このように、ここで置き換えられるスコアは、数値データの大小関係を何らかのルールに基づいて後の総合スコアの演算を行いやすい数値に置換するものであればよく、置換のためのルールの内容は特に限定されるものではない。
【0029】
対象期間中の各日についてスコアへの置き換えが行われると、選択されている次のチャートがあるかを確認して(S05)、GOセンチメントの算出対象となる全てのチャートについて同様の処理を繰り返し、チャートを構成する数値データをスコアに置換していく。図5の例では、対象となる8種類の全てのチャートについて、+10から−10までの21段階のスコアへの置き換えが行われている。
【0030】
続いて、対象期間中の各日のスコアについて、加重値を反映した総合スコアを算出する(S06)。ここで算出される総合スコアが、複数のチャートが反映されたGOセンチメントである。対象となる各々のチャートには、図5の例ではそれぞれ0〜2の加重値が予め設定されている(加重値=0のチャートは、結果的に算出対象から除外されることになる。)。この加重値は、ユーザが入力装置16を操作して設定して加重条件記憶部12に記憶されるが、ユーザが各々のチャートに加重値を設定することとしてもよいし、例えばユーザが「バランス型」「価格重視型」などの項目を選択すると、予め指定された加重値の組み合わせが自動的に登録されるよう構成することとしてもよい。
【0031】
このようにして対象期間中の各日のGOセンチメント(総合スコア)が算出されると、算出されたGOセンチメントは演算値記憶部15に一時記憶され、対象期間中の各日についての移動平均値(例えば、対象日以前の25日間のGOセンチメントを平均した25日移動平均値)を算出する(S07)。
【0032】
算出した移動平均値は前日の移動平均値と比較して、図5の「前日比」の欄のように前日からの増減関係を順に記録していく。この増減関係が転換した点を確認し(S08)、転換点となった部分に売買シグナルを記録する(S09)。売買シグナルを発生させるロジックについては、図6の例に示したように、前日まで減少傾向が続いていたのが当日には増加傾向に転じた日を買いシグナルの発生日に、前日まで増加傾向が続いていたのが当日には減少傾向に転じたことを売りシグナルとして設定すればよい。
【0033】
図5の例では、減少から増加に転じた2006年1月30日と2月3日に買いシグナルが、増加から減少に転じた2006年2月1日に売りシグナルが発生している。このように、過去のある期間のGOセンチメントを算出してシグナルの発生時を特定し、これを期間中の株価推移と対照させると、GOセンチメントの有効性を検証することができる。また、後の実施例に示すように、このシグナル発生時に売買を行ったと仮定したシミュレーションのよって、GOセンチメントの有効性を検証することも可能である。
【0034】
一方、図8のフローチャートは、日々GOセンチメントの推移をチェックして、売買シグナルをタイムリーに発生するための処理フローを示したものである。この処理を行うためには、各日毎にスコアの度数分布処理を行うと、過去のGOセンチメントの数値が日々変化することとなってしまうため、例えば図7のS03で行った度数分布処理により求められた各々のチャートを構成する数値データとスコアの対応関係を演算値記憶部15に記憶させておき、スコアへの置き換えはこの対応関係を参照することによって行うこととすればよい。また、図7のフローによって算出された各日のGOセンチメントの値や移動平均値についても、演算値記憶部15に記憶させておく。
【0035】
まず、シグナルの判定対象となる日のチャートの基礎となる数値データを、株価情報記憶部13又はチャート情報記憶部14から読み出して取得する(S11)。取得した数値データについて、演算値記憶部15に記憶されたチャート上の数値データと置換するスコアの対応関係を参照して(S12)、対象日の数値データをスコアに置換する(S13)。スコアへの置き換えが行われると、選択されている次のチャートがあるかを確認して(S14)、GOセンチメントの算出対象となる全てのチャートについて同様の処理を繰り返し、チャートを構成する数値データをスコアに置換していく。
【0036】
全てのチャートについてスコアへの置き換えが行われると、加重値を反映した総合スコアである対象日のGOセンンチメントを算出する(S15)。算出されたGOセンチメントについて、演算値記憶部15から移動平均値を算出するための対象日数分(例えば、25日移動平均値を求めるのであれば対象日前日から過去24日間のGOセンチメント)のGOセンチメントを読み出して、移動平均値を算出する(S16)。
【0037】
算出したGOセンチメントは、前日のGOセンチメントとの増減関係を確認し、前日までの増減傾向から転換しているかを確認する(S17)。前日から転換している場合には売買シグナルを発生させ(S18)、転換していない場合はそのまま処理を終了する。例えば、図5の例において、2006年1月31日までの数値データを演算して演算値記憶部15に度数分布処理の対応関係等を記憶させていた場合には、2006年2月1日には売りシグナルが発生し、2006年2月3日には買いシグナルが発生することとなる。
【0038】
売買シグナルが発生した場合の通知方法は特に限定されるものではないが、出力装置17がディスプレイである場合にはポップアップ表示させる、出力装置17がプリンタである場合には通知をプリントアウトさせる、出力装置17がスピーカである場合には音声を発生させる、などの方法が考えられる。
【0039】
尚、これまでの図7及び図8のフローチャートを用いた説明では、図7においてチャートの時系列分析を行った際に算出された度数分布処理の対応関係や総合スコアと移動平均値を利用して、図8により売買シグナルを発生させる前提として説明したが、図7の時系列分析を経ることなく、売買シグナルの判定を行うことも可能である。
【0040】
この場合、準備段階として、度数分布処理の対応関係を設定することが必要になる。この設定は、ある一定期間、例えば過去10年間の数値データの分布からスコアとの対応関係を設定して、演算値記憶部15に記憶させておくこととすればよい。
【0041】
また、設定した度数分布処理の対応関係を用いて、移動平均値の算出に必要な日数分の数値データについてのスコアの置換を行い、演算値記憶部15に記憶させておく。この処理は、図7でいえば、S01、S02、S04、S05に対応する処理を繰り返し、置換したスコアを演算値記憶部15に記憶させておけばよく、この段階での度数分布処理(S03)や、移動平均値の算出(S07)、シグナルの判定と記録(S08〜S09)などの処理は不要となる。総合スコアの算出(S06)は、この段階で行っておいてもよいし、図8のシグナル判定時に行うこととしてもよい。
【0042】
上記のような設定を行えば、図8の処理を行う際には、S16の移動平均値の算出において、必要な日数分のスコア(又は総合スコア)を演算値記憶部15から読み出して、移動平均値算出のための演算処理を行うことができる。
【0043】
図2は、本発明にかかるチャート分析装置の第2の実施形態で、本発明にかかるチャート分析装置はユーザの使用する端末装置50〜52からインターネットを通じてアクセス可能な売買シグナル通知サーバ30の一部の機能として構成されている。
【0044】
この場合も、売買シグナル通知サーバ30を構成する各部の動作は、第1の実施形態と基本的には同じであるが、チャートの選択や加重値の設定などは端末装置50〜52において操作が行われ、インターネットを介して売買シグナル通知サーバ30の加重条件記憶部32に登録されることになる。また、売買シグナルが発生した場合には、売買シグナル判定部31から端末装置50〜52へ、メール送信などによって売買シグナルが通知される。
【実施例】
【0045】
本発明にかかるチャート分析装置によって算出されるGOセンチメントの有用性について、1996年1月から2006年7月の間の日経225平均株価により検証を行った。検証は、バランス型、価格重視型、出来高重視型の3つの方式について行ったが、検証方式別に選択したチャート種類と加重値の設定条件は、図9に示したとおりである。図9に示した設定値は、これまでの検証結果では、各々の方式において最適のパターンと考えられるものである。
【0046】
図10〜図15は、それぞれバランス型の1996〜2000年、バランス型の2001〜2006年7月、価格重視型の1996〜2000年、価格重視型の2001〜2006年7月、出来高重視型の1996〜2000年、出来高重視型の2001〜2006年7月について、日経225平均株価とGOセンチメントの25日移動平均の値の推移を示したものである。
【0047】
これらのグラフ上に示した、上向きの矢印は買いシグナルが発生した点を、下向きの矢印は売りシグナルが発生した点を示している。シグナルが発生した点では、日経225平均株価がシグナルの発生後にシグナルに示された方向性(買いシグナルであれば上昇、売りシグナルであれば下落)に向かって動いていることが多いことが検証され、GOセンチメントが株価の変局に有効であることが確認された。
【0048】
また、これらの売買シグナルの発生時点において売り又は買いを繰返す、いわゆる「ドテン方式」(例えば、最初に買いシグナルが出た時点で1単位を買い、次の売りシグナルで2単位を売り、次の買いシグナルで2単位を買い、・・・と繰り返す方式)によって売買シミュレーションを行った。その結果は、図16に示したとおりである。
【0049】
このシミュレーション結果によると、バランス型の場合は、期間中に202回の売買が発生し、利益が85回に対して損失は117回、累計損益は+15,100円となった。直近6年間では、120回の売買が発生し、利益が48回に対して損失は72回、累計損益は+5,300円となっている。
【0050】
価格重視型の場合は、期間中に190回の売買が発生し、利益が79回に対して損失は111回、累計損益は+12,100円となった。直近6年間では、114回の売買が発生し、利益が45回に対して損失は69回、累計損益は+3,000円となっている。
【0051】
出来高重視型の場合は、期間中に168回の売買が発生し、利益が44回に対して損失は46回、累計損益は+26,200円となった。直近6年間では、90回の売買が発生し、利益が44回に対して損失は46回、累計損益は+13,300円となっている。
【0052】
以上のドテン方式による売買シミュレーションの結果によると、利益と損失の回数ではいずれも損失の数が多くなっているにもかかわらず、トータルで生じた損益はプラスの結果となっている。この結果は、損失の幅が抑制される一方で、大きな利益を得たことが多かったことを示しており、GOセンチメントが損切りや利食いに有効であることが検証されたものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明にかかるチャート分析装置の第1の実施形態における構成を示すブロック図である。
【図2】本発明にかかるチャート分析装置の第2の実施形態における構成を示すブロック図である。
【図3】本発明にかかるチャート分析装置において分析に用い得るチャートの例を示す図である。
【図4】本発明にかかるチャート分析装置において分析に用いるチャートの設定値の一例を示す図である。
【図5】本発明にかかるチャート分析装置による売買タイミングの分析の一例を示す図である。
【図6】本発明にかかるチャート分析装置による売買シグナルを発生させるロジックの一例を示す図である。
【図7】本発明にかかるチャート分析装置によるセンチメントの時系列分析のフローを示すフローチャートである。
【図8】本発明にかかるチャート分析装置により分析対象日の売買シグナル発生の要否を判断するフローを示すフローチャートである。
【図9】本発明にかかるチャート分析装置の実施例における検証方式別の設定条件を示す図である。
【図10】本発明にかかるチャート分析装置の実施例により作成された第1のチャート(バランス型・1996〜2000年)である。
【図11】本発明にかかるチャート分析装置の実施例により作成された第2のチャート(バランス型・2001〜2006年7月)である。
【図12】本発明にかかるチャート分析装置の実施例により作成された第3のチャート(価格重視型・1996〜2000年)である。
【図13】本発明にかかるチャート分析装置の実施例により作成された第4のチャート(価格重視型・2001〜2006年7月)である。
【図14】本発明にかかるチャート分析装置の実施例により作成された第5のチャート(出来高重視型・1996〜2000年)である。
【図15】本発明にかかるチャート分析装置の実施例により作成された第6のチャート(出来高重視型・2001〜2006年7月)である。
【図16】本発明にかかるチャート分析装置の実施例におけるドテン方式による売買シミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
10 コンピュータ
11 売買シグナル判定部
12 加重条件記憶部
13 株価情報記憶部
14 チャート情報記憶部
15 演算値記憶部
16 入力装置
17 出力装置
20 マーケット情報提供サーバ
30 チャート分析サーバ
31 売買シグナル判定部
32 加重条件記憶部
33 株価情報記憶部
34 チャート情報記憶部
35 演算値記憶部
40 マーケット情報提供サーバ
50 端末装置
51 端末装置
52 端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の金融商品にかかる2以上のチャートから前記金融商品の売買に適したタイミングを分析するためのチャート分析装置であって、
同一の金融商品にかかる2以上のチャートを構成する数値を時系列に従って記憶するチャート記憶手段と、
前記チャート記憶手段から、各々のチャートについて所定の対象期間中の数値を読み出して、各々の数値を所定のルールに基づくスコアに置き換えて記憶するスコア記憶手段と、
前記スコア記憶手段に記憶された各々のチャートについての全てのスコア値から、前記対象期間中の日毎に総合スコアを算出して記憶する総合スコア記憶手段と、
前記対象期間中の日毎に、前記総合スコア記憶手段に記憶された総合スコアの所定の期間の移動平均値を算出して時系列に従って記憶する移動平均値記憶手段と、
前記移動平均値記憶手段に記憶された移動平均値を前日の移動平均値と比較して、前日比に対する増減のいずれかの傾向を時系列に従って記憶する増減傾向記憶手段と、
前記増減傾向記憶手段に記憶された増減の傾向が、減少から増加に転じた日を買いシグナルの発生日として、増加から減少に転じた日を売りシグナルの発生日として特定するシグナル発生日特定手段と、
を備えることを特徴とするチャート分析装置。
【請求項2】
前記チャート記憶手段に構成する数値が記憶された各々のチャートについての加重値を記憶するチャート加重値記憶手段を備えていて、
前記総合スコア記憶手段は、各々のチャートのスコアに前記加重値記憶手段に記憶された加重値を反映した総合スコアを算出して記憶すること
を特徴とする請求項1記載のチャート分析装置。
【請求項3】
前記スコア記憶手段がスコアへの置き換えに用いた所定のルールを各々のチャート毎に記憶する置換ルール記憶手段と、
シグナルの判定対象となる対象日の各々のチャートを構成する数値を取得する数値取得手段と、
前記数値取得手段の取得した数値を、前記置換ルール記憶手段を参照してスコアに置き換えて記憶する第2のスコア記憶手段と、
前記第2のスコア記憶手段に記憶された各々のチャートについての全てのスコア値から、前記対象日の総合スコアを算出して記憶する第2の総合スコア記憶手段と、
前記第2のスコア記憶手段に記憶された対象日の総合スコア以前の所定の期間の移動平均値を前記総合スコア記憶手段に記憶された総合スコアを用いて算出し、前記移動平均値記憶手段に記憶された前記対象日の前日の移動平均値と比較して、減少から増加に転じた場合は買いシグナルを、増加から減少に転じた場合は売りシグナルを、チャート分析装置に接続されたディスプレイへのシグナル発生通知の表示、チャート分析装置に接続されたプリンタへのシグナル発生通知の出力、チャート分析装置に接続されたスピーカへのシグナル発生音の出力、又はネットワークで接続された端末装置へのシグナル発生通知の送信のいずれかの方法によって通知するシグナル通知手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のチャート分析装置。
【請求項4】
同一の金融商品にかかる2以上のチャートを構成する数値を時系列に従って記憶するチャート記憶部を備えるコンピュータによって、前記金融商品の売買に適したタイミングを分析するためのチャート分析方法であって、
前記コンピュータが、前記チャート記憶部から、各々のチャートについて所定の対象期間中の数値を読み出して、各々の数値を所定のルールに基づくスコアに置き換えて第1の記憶領域に記憶させるスコア記憶ステップと、
前記コンピュータが、前記スコア記憶ステップにおいて記憶された各々のチャートについての全てのスコア値から、前記対象期間中の日毎に総合スコアを算出して第2の記憶領域に記憶させる総合スコア記憶ステップと、
前記コンピュータが、前記対象期間中の日毎に、前記総合スコア記憶ステップにおいて記憶された総合スコアの所定の期間の移動平均値を算出して時系列に従って第3の記憶領域に記憶させる移動平均値記憶ステップと、
前記コンピュータが、前記移動平均値記憶ステップにおいて記憶された移動平均値を前日の移動平均値と比較して、前日比に対する増減のいずれかの傾向を時系列に従って第4の記憶領域に記憶させる増減傾向記憶ステップと、
前記コンピュータが、前記増減傾向記憶ステップで記憶された増減の傾向が、減少から増加に転じた日を買いシグナルの発生日として、増加から減少に転じた日を売りシグナルの発生日として特定するシグナル発生日特定ステップと、
を有することを特徴とするチャート分析方法。
【請求項5】
前記コンピュータには、前記チャート記憶部に構成する数値が記憶された各々のチャートについての加重値を記憶するチャート加重値記憶部が備えられていて、
前記総合スコア記憶ステップでは、各々のチャートのスコアに前記加重値記憶部に記憶された加重値を反映した総合スコアを算出して前記第2の記憶領域に記憶させること
を特徴とする請求項4記載のチャート分析方法。
【請求項6】
前記コンピュータには、前記スコア記憶ステップにおいてスコアへの置き換えに用いた所定のルールを各々のチャート毎に記憶する置換ルール記憶部が備えられていて、
前記コンピュータが、シグナルの判定対象となる対象日の各々のチャートを構成する数値を取得する数値取得ステップと、
前記コンピュータが、前記数値取得ステップにおいて取得した数値を、前記置換ルール記憶部を参照してスコアに置き換えて第5の記憶領域に記憶させる第2のスコア記憶ステップと、
前記コンピュータが、前記第2のスコア記憶ステップにおいて記憶された各々のチャートについての全てのスコア値から、前記対象日の総合スコアを算出して第6の記憶領域に記憶させる第2の総合スコア記憶ステップと、
前記コンピュータが、前記第2のスコア記憶ステップにおいて記憶された対象日の総合スコア以前の所定の期間の移動平均値を前記第2の記憶領域に記憶された総合スコアを用いて算出し、前記第3の記憶手段に記憶された前記対象日の前日の移動平均値と比較して、減少から増加に転じた場合は買いシグナルを、増加から減少に転じた場合は売りシグナルを、ディスプレイへのシグナル発生通知の表示、チャート分析装置に接続されたプリンタへのシグナル発生通知の出力、チャート分析装置に接続されたスピーカへのシグナル発生音の出力、又はネットワークで接続された端末装置へのシグナル発生通知の送信のいずれかの方法によって通知するシグナル通知ステップと、
を有することを特徴とする請求項4又は5記載のチャート分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−129952(P2008−129952A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316240(P2006−316240)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(506391174)
【出願人】(506391244)
【出願人】(506391107)