説明

チューブポンプ

【解決手段】 チューブポンプ1の導管2は、ループ状の大径チューブ8と、大径チューブ8の一端に供給側コネクタ17によって接続される供給チューブ18と、大径チューブ8の他端に排出側コネクタ17’によって接続される排出チューブ19とを備えている。ホルダ7は、両コネクタ17、17’の外面と係合可能な一対の段付係合凹部7D、7D’を備えている。
上記両コネクタ17、17’をホルダ7の段付係合凹部7D、7D’によって保持し、その状態のホルダ7をハウジング6の切欠き部6Bに取り付ける。
【効果】 ハウジング6への導管2の着脱が容易なチューブポンプ1を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチューブポンプに関し、より詳しくは、例えば血液や生理食塩水等の液体を送液するチューブポンプの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転されるロータによってチューブを扱いて液体を送液するようにしたチューブポンプは公知であり、特に、透析治療に用いられる透析装置の血液ポンプや補液ポンプとしてチューブポンプが用いられている。
こうしたチューブポンプを用いる透析装置においては、透析治療の開始前と終了後に、チューブポンプや透析器に装着されるチューブの取り付け・取り外しの作業が必要となる。そして、複数のチューブにより構成される血液回路は、チューブポンプへのチューブの装着順番や装着方向が決められているので、血液回路のチューブポンプへの着脱作業が煩雑であった。
そこで、こうした煩雑な作業を簡素化するために、コネクタ等の接続手段を介してポンプのハウジングにチューブを装着することが提案されている(例えば特許文献1、特許文献2)。
また、屈曲チューブの両端と接続された一対の給排チューブにホルダを固定し、該ホルダをハウジングに取り付けるようにしたチューブポンプも公知である(例えば特許文献3、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−75785号公報
【特許文献2】特表2007−537390号公報
【特許文献3】特開2007−198150号公報
【特許文献4】特許第2593058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載のコネクタはいずれも合成樹脂を一体成形したものであって、該コネクタ内に血液回路の一部となる血液通路が設けられていたものである。そのため、上述した特許文献1、2に記載のチューブポンプにおいては、コネクタを製作するための金型の構造が複雑となり、ひいてはチューブポンプの製造コストが高くなるという問題があった。
他方、上記特許文献3、4においては予めチューブに対してホルダを直交状態で固定するので、そのような固定作業が煩雑であった。しかも、ホルダを取り付け後の複数のチューブは、他のチューブのホルダと絡まないように注意して取り扱う必要があるため、チューブの取り扱いや管理が煩雑になるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような事情に鑑み、請求項1に記載した本発明は、内部に円筒状側壁を有するハウジングと、上記ハウジングの円筒状側壁の内方側に配置されたローラを有するとともに駆動源によって回転されるロータと、上記円筒状側壁と上記ローラとの間に屈曲部が装着されるとともに液体を流通させる導管とを備えて、上記ロータを回転させることで上記ローラによって上記屈曲部を扱いて液体を導管により送液するようにしたチューブポンプにおいて、
上記導管における液体の供給側と排出側の箇所のそれぞれに第1係合部を設けるとともに、該導管の両方の第1係合部と係合可能な第2係合部を有するホルダを設けて、該ホルダの第2係合部を上記導管の両第1係合部に係合させて導管をホルダによって保持し、その状態において該ホルダを上記ハウジングに着脱可能としたことを特徴とするものである。
また、請求項2に記載した本発明は、上記請求項1に記載の発明において、上記導管は、上記屈曲部の一端に供給側コネクタを介して接続される供給チューブと、上記屈曲部の他端に排出側コネクタを介して接続される排出チューブとを備え、上記供給側コネクタおよび排出側コネクタの外周部の所定位置には、上記第1係合部としてのフランジ部が形成されており、また、上記ホルダには、上記両コネクタのフランジ部と係合可能な第2係合部としての凹部が形成されていることを特徴とするものである。
さらに、請求項3に記載した本発明は、上記請求項1又は請求項2に記載の発明において、上記導管は、上記屈曲部の一端に供給側コネクタを介して接続される供給チューブと、上記屈曲部の他端に排出側コネクタを介して接続される排出チューブとを備え、上記供給側コネクタおよび排出側コネクタの外周部の所定位置には、上記第1係合部としての略棒状の突起が形成されており、また、上記ホルダには、上記両コネクタの突起と係合可能な第2係合部としての凹部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
上記請求項1に記載した発明によれば、上記両第1係合部に第2係合部を係合させて導管をホルダによって保持し、その状態のホルダをハウジングに着脱することができる。そのため、ハウジングへの導管の取り付け・取り外し作業を容易に行うことができる。また、ホルダ自体には液体通路を設けないので、従来と比較してホルダの構成を簡略化することができる。そのため、従来と比較してホルダ製作用の金型の構成を簡略化することができ、ひいては従来と比較してチューブポンプの製造コストを低減させることができる。
また、上記請求項2に記載した発明によれば、上記請求項1の効果に加え、ロータの回転によって生じる引っ張り力が導管に作用した際に、ホルダによる導管の保持位置が軸方向にずれることを防止することができる。
さらに、上記請求項3に記載した発明によれば、上記請求項1または請求項2の効果に加えて、導管の回転方向のずれを良好に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施例を示すチューブポンプの正面図。
【図2】図1に示したチューブポンプの斜視図。
【図3】図2の要部を破断させた状態の斜視図。
【図4】図1に示した導管とホルダとの係合前の斜視図。
【図5】図4の導管とホルダとを係合させた状態の斜視図。
【図6】図5に示す導管とホルダとを下面側から見た斜視図。
【図7】図1のチューブポンプにおいて、ループ状の大径チューブをハウジングの円筒状側壁に取り付ける際の工程図であり、(a)は大径チューブを円筒状側壁に嵌め込む直前の状態を示し、(b)は大径チューブを円筒状側壁に嵌め込み中の状態を示し、(c)は大径チューブを円筒状側壁に嵌め込んだ状態を示している。
【図8】図1のチューブポンプにおいて、大径チューブをハウジングの円筒状側壁から取り外す際の工程図であり、(a)は円筒状側壁から大径チューブを取り外す直前の状態を示し、(b)は円筒状側壁から大径チューブを取り外し中の状態を示し、(c)は円筒状側壁から大径チューブを取り外した状態を示している。
【図9】本発明の他の実施例を示すチューブポンプの要部の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、図1ないし図3において1はチューブポンプであり、このチューブポンプ1は、軟質のチューブからなる導管2をロータ3のローラ4、4で扱いて液体(血液)を送液するようになっている。このチューブポンプ1は透析装置の血液ポンプとして用いられており、透析装置における本体部の正面に設けられている。図1は上記透析装置の本体部の正面に設けられたチューブポンプ1の正面図を示し、図2はチューブポンプ1の斜視図である。
本実施例のチューブポンプ1は、透析装置の本体部に配置されて、駆動軸5Aが水平となるように支持されたモータ5と、このモータ5の駆動軸5Aの先端に中心部を連結されて、駆動軸5Aを回転中心として鉛直面で回転されるロータ3と、ロータ3を囲繞して透析装置の本体部に鉛直方向に配置されたハウジング6と、直列に接続された複数のチューブからなる可撓性を有する導管2と、この導管2を保持した状態でハウジング6に着脱自在に取り付け可能なホルダ7とを備えている。
【0009】
ロータ3には、その回転方向において相互に180度ずれた箇所に一対のローラ4、4が回転自在に軸支されるとともに、各ローラ4の回転方向前方に放射方向のガイドピン11、11が配置されている。各ガイドピン11は、駆動軸5Aと直交方向に配置された棒状部材とその外周部に回転自在に装着された円筒部材とから構成されており、これら各ガイドピン11は、各ローラ4よりも透析装置の本体部における正面の外部側に配置されている(図2参照)。そのため、図示しない制御装置によって上記モータ5の駆動軸5Aが回転されると、ロータ3が駆動軸5Aを回転中心として図1において反時計方向に回転され、その際にはローラ4よりも少し先行してガイドピン11が移動されるようになっている。
後に詳述するが、本実施例においては、ロータ3とともに各ガイドピン11が反時計方向に回転される際に、各ガイドピン11が導管2の屈曲部である大径チューブ8の外面に透析装置の外面側から接触した状態で反時計方向に回転されることにより、ハウジング6の円筒状側壁6Aとローラ4、4との間に導管2の大径チューブ8を自動装着することができる。また、そのように円筒状側壁6Aに装着された大径チューブ8とハウジング6の円筒底面との間にガイドピン11を潜り込ませた状態でロータ3を回転させることにより、ハウジング6の円筒状側壁6Aから導管2の大径チューブ8を自動的に取り外すことができる。このような導管2の円筒状側壁6Aへの自動着脱の際に、各ガイドピン11の円筒部材が大径チューブ8の外面と接触して回転(自転)されるので、大径チューブ8を円筒状側壁6Aとローラ4、4の間に円滑に着脱できるようになっている。
なお、本実施例においてはロータ3に一対のローラ4、4と一対のガイドピン11、11を設けているが、ローラ4とガイドピン11は少なくとも1つロータ3に設ければ良い。
【0010】
本実施例のハウジング6は、ロータ3を囲繞して円筒状に形成された円筒状側壁6Aと、この円筒状側壁6Aから連続して水平方向の一側へ伸びる切欠き部6Bを備えている。また、ハウジング6には、上記円筒状側壁6Aと切欠き部6Bを透析装置の正面の外部側から覆うために、合成樹脂製の透明な開閉カバー12が設けられている。この開閉カバー12は、チューブポンプ1の正面に向かって左側のヒンジ部6Cを介して開閉されるようになっている。
作業者が開閉カバー12を開放すると、円筒状側壁6Aと切欠き部6Bの正面側が外部へ露出されるようになっている。そして、その状態において、導管2を保持した状態のホルダ7を作業者がハウジング6の切欠き部6Bに取り付けてから、前述したようにロータ3によりガイドピン11、11を回転させて導管2の大径チューブ8を円筒状側壁6Aとローラ4、4との間に自動的に装着させるようになっている。
【0011】
ハウジング6の切欠き部6Bにおける上下の側壁には、長手方向(左右方向)に伸びる係合溝6D、6Dがそれぞれ形成されており、ホルダ7側に形成された一対の係合部7A、7Aが上記両係合溝6D、6Dに係合されるようになっている。
また、切欠き部6Bにおける上方の側壁の所定位置は、係合溝6Dと直交方向に位置決め凹部6Eが形成されており、他方、ホルダ7における上方側となる係合部7Aの長手方向所定位置には位置決め突起7Cが形成されている。
本実施例では、導管2に作業者がホルダ7を嵌め込んで保持させるようになっており、作業者がその状態のホルダ7の位置決め突起7Cをハウジング6の位置決め凹部6Eに挿入してからホルダ7を切欠き部6Bに嵌合させて押し込むと、ホルダ7の両係合部7A、7Aが両係合溝6D、6Dに係合するようになっている。それにより、ホルダ7がハウジング6の切欠き部6Bに取り付けられるようになっている。ホルダ7の取り付け完了状態ではハウジング6に対してホルダ7とそれに保持された箇所の導管2が上下、左右および内外方向において位置決めされるようになっている。
また、切欠き部6Bの底面の中央には検出スイッチ13が配置されており、上述したようにホルダ7の係合部7A、7Aを係合溝6D、6Dに係合させた際には、ホルダ7の裏面中央にある突出部7Bが検出スイッチ13に当接するようになっている(図3参照)。その際には、検出スイッチ13による検出信号が図示しない制御装置に伝達されるようになっており、制御装置はホルダ7を介して導管2がハウジング6の切欠き部6Bに取り付けられたことを認識できるようになっている。
【0012】
また、切欠き部6Bの底面には、透析装置の外部側方向に進退動可能な円柱状のリジェクトピン14が設けられており、このリジェクトピン14は、透析装置の本体部に配置されたモータ15によって進退動されるようになっている。
導管2を保持した状態のホルダ7をハウジング6の切欠き部6Bから取り外す場合には、制御装置は上記モータ15を介してリジェクトピン14を切欠き部6Bの底面から所定量だけ透析装置の正面の外部側に向けて突出させる。それにより、リジェクトピン14の先端部によってホルダ7およびそれに保持された導管2が透析装置の外部側に向けて強制的に押し出されるので、ホルダ7の係合部7A、7Aが切欠き部6Bの係合溝6D、6Dから離脱するようになっている。このようにして、リジェクトピン14によってホルダ7をハウジング6の切欠き部6Bから取り外すようになっている。
リジェクトピン14の突出作動によってホルダ7をハウジング6の切欠き部6Bから取り外す操作は、透析装置の操作盤を作業者が操作して行っても良いし、あるいは透析装置における一連の透析治療プログラムが実施される際の最終工程に組み込んでも良い。
【0013】
次に、図4〜図6に示すように、本実施例の導管2は、ループ状の屈曲部となって上記ハウジング6の円筒状側壁6A内に装着される大径チューブ8と、この大径チューブ8の一端に段付円筒状の供給側コネクタ17を介して接続される供給チューブ18と、大径チューブ8の他端に段付筒状の排出側コネクタ17’を介して接続された排出チューブ19とを備えている。
供給チューブ18と排出チューブ19とは同径のものを用いており、大径チューブ8は両チューブ18、19よりも大径のものを用いている。大径チューブ8は、ループ状の屈曲部となって上記各ローラ4、4によって押圧されて扱かれるので、液体(血液)の流量と耐久性を確保するためにポリ塩化ビニール等の柔軟な材質から構成されている。また、供給チューブ18、排出チューブ19もポリ塩化ビニールによって構成されている。
【0014】
図4に示すように、両コネクタ17、17’は同一形状・同一寸法のポリ塩化ビニールからなるので、ここでは供給側コネクタ17の構成について説明する。すなわち、供給側コネクタ17は、大径チューブ8の一端が嵌合される大径接続部17Aと、これに連設されて供給チューブ18の端部が嵌合される小径接続部17Bと、上記大径接続部17Aの自由端となる外周部に形成された環状突起であるフランジ部17Cと、小径接続部17Bの外周部における大径接続部17の隣接位置に突設させた円柱状の突起部17Dとを備えている。
上記フランジ部17Cは、後述するホルダ7側の係合溝7Hと係合されるようになっている。また、上記突起部17Dは、供給側コネクタ17の軸心に対して直交方向に突出させて形成されており、この突起部17Dはホルダ7側の円筒凹部7Gに係合されるようになっている。
以上は供給側コネクタ17の構成の説明であるが、前述したように排出側コネクタ17’も供給側コネクタ17と同一形状に形成されているので、排出側コネクタ17’の詳細な説明は省略する。なお、排出側コネクタ17’においては、供給側コネクタ17と対応する各部分にそれぞれ’を付して示している。
また、上述した両コネクタ17、17’の構成は従来公知であり、本実施例においては、このように既存の両コネクタ17、17’によって大径チューブ8の両端を供給チューブ18と排出チューブ19に接続し、その接続部分となる両コネクタ17、17’をホルダ7によって着脱自在に保持できるようになっている。なお、上記両コネクタ17、17’の突起部17D、17D’の形状は、上述した円柱状の代わりに多角柱、円錐、角錐等であっても良く、ホルダ7側の円筒凹部7G、7G’と係合可能な形状であれば良い。
【0015】
本実施例の導管2はホルダ7によって保持される前に、次のようにして各チューブ8、18、19が接続される。すなわち、予め大径チューブ8の一端の外周部に接着剤を塗布して供給側コネクタ17の大径接続部17A内に嵌合させるとともに、供給チューブ18の一端の外周部に接着剤を塗布してから供給側コネクタ17の小径接続部17Bに嵌合させる。また、大径チューブ8の他端の外周部に接着剤を塗布して排出側コネクタ17’の大径接続部17A’内に嵌合させるとともに、排出チューブ19の一端の外周部に接着剤を塗布してからコネクタ17’の小径接続部17B’に嵌合させる。これにより、両コネクタ17、17’を介して複数のチューブ8、18、19が直列に接続されて導管2が形成される。また、本実施例においては、大径チューブ8をループ状に屈曲させて屈曲部とした際には、両コネクタ17、17’の突起部17D、17D’が隣接位置で相互に平行となるように、両コネクタ17、17’の軸回りの取り付け位置を一致させるようにしている(図4参照)。
また、屈曲部となる大径チューブ8の長さは、ハウジング6の円筒状側壁6Aの円周方向長さよりも少し長い寸法に設定されている。大径チューブ8はこのような寸法に設定されているので、両コネクタ17、17’を保持した状態のホルダ7をハウジング6の切欠き部6Bに取り付けると、屈曲部としての大径チューブ8が余裕をもって円筒状側壁6A上に重合できるようになっている。
【0016】
しかして、本実施例のチューブポンプ1の特徴は、導管2の大径チューブ8と両チューブ18、19の接続部分である両コネクタ17、17’をホルダ7によって保持し、その保持状態のホルダ7をハウジング6の切欠き部6Bに着脱できるようにしたことである。
すなわち、図4〜図6に示すように、本実施例のホルダ7は一体成形の合成樹脂からなり、上記両コネクタ17、17’の外周面を透析装置の正面の外方側から覆う大きさで形成されている。このホルダ7は、両コネクタ17、17’とそれらに隣接する両チューブ18、19を保持可能な左右一対の段付係合凹部7D、7D’と、それら両段付係合凹部7D、7D’を接続する中央平坦部7Eと、両段付係合凹部7D、7D’の外方の側部に形成された左右一対の平坦部7F、7F’とを備えている。
各段付係合凹部7D、7D’は同一寸法で左右対称形に形成されており、両段付係合凹部7D、7D’の内面側(両コネクタ17、17’との対向側)は軸方向全域にわたる開口部となっている(図6参照)。これらの開口部を介して両コネクタ17、17’の外周部とそれらの隣接位置となる両チューブ18、19の外周部を各段付係合凹部7D、7D’に嵌め込んで保持させるようになっている。
【0017】
各段付係合凹部7D、7D’の内面である段付凹部の形状は、両コネクタ17、17’のフランジ部17C(17C’)、大径接続部17A(17A’)、小径接続部17B(17B’)および両チューブ18、19の外周面の形状と寸法に対応させた形状となっている。そして、両段付係合凹部7D、7D’における両コネクタ17、17’と係合される主要部分の軸心は相互に所定角度をなしてV字状となっており、また、両段付係合凹部7D、7D’における両チューブ18、19と係合される付属部分の軸心は相互に平行になっている。
そのため、各段付係合凹部7D、7D’に各コネクタ17、17’とそれらの隣接位置の両チューブ18、19を嵌合させると、このホルダ7によって両コネクタ17、17’は同一平面上でV字状に保持されるとともに、両チューブ18、19は同一平面状で相互に平行に保持されるようになっている。
各段付係合凹部7D、7D’における大径チューブ8側の端部には、それぞれ上記両コネクタ17、17’のフランジ部17C、17C’と係合可能な円周方向の係合溝7H、7H’が形成されている。また、各段付係合凹部7D、7D’における軸方向の所定位置には、それぞれ上記両コネクタ17、17’の突起部17D、17D’と係合可能な円筒凹部7G、7G’が外部に向けて突設されている。ここでは、一方の円筒凹部7Gは有底孔からなり、他方の円筒凹部7G’は底がない円筒状となっている。これにより、両コネクタ17、17’に対するホルダ7の突起部17D、17Dの係合方向を作業者が目視で確認できるようになっている。なお、円筒凹部7G’を有底孔とし、円筒凹部7Gを底がない円筒形状としても良く、更には上記円筒凹部7G、7G’を両方とも有底孔としても良いし、あるいは両方とも底がない円筒形状としてもよい。
前述したように、各段付係合凹部7D、7D’に両コネクタ17、17’とそれらの隣接位置の両チューブ18、19を嵌合させると、各コネクタ17、17’のフランジ部17C、17C’が係合溝7H、7H’に係合するとともに、各コネクタ17、17’の突起部17D、17D’が円筒凹部7G、7G’に係合するようになっている(図4〜図6参照)。
【0018】
このように、本実施例のホルダ7は、一方の段付係合凹部7Dに供給側コネクタ17とその隣接位置の供給チューブ18を嵌め込んで保持させるとともに、他方の段付係合凹部7D’に排出側コネクタ17’とその隣接位置の排出チューブ19を保持させるようになっている。その際、ホルダ7の一方の係合溝7Hに供給側コネクタ17のフランジ部17Cが係合し、ホルダ7の他方の係合溝7H’に排出側コネクタ17’のフランジ部17C’が係合する。また、ホルダ7の一方の円筒凹部7Gに供給側コネクタ17の突起部17Dが係合し、ホルダ7の他方の円筒凹部7G’に排出側コネクタ17’の突起部17D’が係合する(図4〜図6参照)。それにより、両チューブ18、19の長手方向におけるホルダ7の取り付け位置が決まるとともに、両コネクタ17、17’は同一平面状でV字状に保持されるようになっている(図4、図5参照)。
さらに、ホルダ7の中央平坦部7Eと外方側の平坦部7F、7F’は同一平面となるように形成されており、上記両平坦部7F、7F’の縁部は相互に平行に維持されている。それらの両平坦部7F、7F’の縁部は円柱状に形成されており、そこが直線状の係合部7A、7Aとなっている。前述したように、これらの係合部7A、7Aをハウジング6の係合溝6D、6Dに係合させることで、ホルダ7をハウジング6に取り付けることができる。
【0019】
また、供給チューブ18側となる係合部7Aには、長手方向所定位置に表裏誤挿入を防止するために位置決め突起7Cが形成されている。ハウジング6側の位置決め凹部6Eにホルダ7の位置決め突起7Cを係合させることにより、ハウジング6に対するホルダ7の左右方向の係合位置を規制できるようになっている。
また、ホルダ7の中央平坦部7Eの内面側には、略円柱状をした突出部7Bが内方側に向けて突設されている。両コネクタ17、17’を保持した状態のホルダ7をハウジング6の切欠き部6Bに係合させて、両係合溝6D、6Dに両係合部7A、7Aを完全に係合させると、このホルダ7の突出部7Bが上記ハウジング6側の検出スイッチ13に当接する(図3参照)。それにより、上述した透析装置の制御装置はハウジング6に導管2が装着されたことを認識できるようになっている。
【0020】
以上の構成からなる本実施例のチューブポンプ1を透析装置の血液ポンプとして使用する場合の作業工程を説明する。
この場合、先ず使用前の準備工程において、導管2を構成する大径チューブ8、供給チューブ18、排出チューブ19が両コネクタ17、17’を介して接続される。
さらに、導管2の大径チューブ8を屈曲させてループ状の屈曲部を形成して両コネクタ17、17’を隣接位置に位置させ、その状態において、両コネクタ17、17’の突起部17D、17D’側から両コネクタ17、17’の外面および両チューブ18、19の外面にホルダ7の段付係合凹部7D、7D’を係合させる(図4、図5参照)。また、両コネクタ17、17’のフランジ部17C、17C’に段付係合凹部7D、7D’の係合溝7H、7H’を係合させるとともに、両コネクタ17、17’の突起部17D、17D’に段付係合凹部7D、7D’側の円筒凹部7G、7G’を係合させる。これにより、ホルダ7の段付係合凹部7D内に供給側コネクタ17と供給チューブ18が保持されるとともに、他方の段付係合凹部7D’内に排出側コネクタ17’と排出チューブ19が保持される。
【0021】
このように、準備工程において、両コネクタ17、17’が保持された状態の導管2を、ハウジング6の開閉カバー12を開放してから上述した状態のホルダ7をハウジング6の切欠き部6Bに係合させる。その際には、先ずホルダ7の位置決め突起7Cを位置決め凹部6Eに係合させ、その後からホルダ7全体を切欠き部6B内に押し込んでから両方の係合部7A、7Aを係合溝6D、6Dに係合させる。
これにより、導管2の両コネクタ17、17’を保持したホルダ7のハウジング6の切欠き部6Bへの取り付けが完了する。このようにして取り付けが完了した際には、ホルダ7の突出部7Bが検出スイッチ13と当接することで、図示しない制御装置は導管2がハウジング6に取り付けられたことを認識できるようになっている。
なお、導管2の両コネクタ17、17’をホルダ7によってハウジング6の切欠き部6Bへの取り付けた状態では、ループ状の大径チューブ8は円筒状側壁6Aには噛み込んでおらず、ロータ3の外周部に透析装置の正面の外部側から重合した状態となっている。そのため、ロータ3のガイドピン11はホルダ7の隣接箇所の大径チューブ8よりも透析装置の外部側に位置している。
【0022】
そして、この後に作業者が透析装置の操作盤を操作して、モータ5を介してロータ3を図1において反時計方向に一回転させるので、回転されるロータ3の両ガイドピン11によってループ状の大径チューブ8のほぼ全域が円筒状側壁6Aとロータ3の外周部およびローラ4との間に嵌め込まれるようになっている(図7(a)〜図7(c)参照)。本実施例においては、このようにして、ロータ3とそれに設けたガイドピン11、11により導管2の大径チューブ8を自動的にハウジング6の円筒状側壁6Aに装着することができる。このように装着されると、ロータ3の両ローラ4、4とそれらの対向位置の円筒状側壁6Aとによって大径チューブ8が挟み込まれるようになっている。
このようにして、導管2の大径チューブ8、両コネクタ17、17’および両チューブ18、19をホルダ7によってハウジング6に取り付けが完了したら、作業者は開閉カバー12を閉鎖する。その後、作業者は、供給チューブ18および排出チューブ19における図示しない他端を所要箇所に接続する。
【0023】
この後、透析装置は予め定められた操作プログラムにより作動されて、透析治療が行われる。それに伴い、上記モータ5を介してロータ3が回転されることにより大径チューブ8がローラ4、4によって扱かれるので、導管2を介して血液が送液されるようになっている。
この透析作業後においては、次のようにしてホルダ7の取り外しが行われる。すなわち、先ず、制御装置はモータ15を介してリジェクトピン14を突出させる。そのため、リジェクトピン14によってホルダ7は所定寸法だけ透析装置の外部側へ押し出されて、ホルダ7の係合部7A、7Aはハウジング6の係合溝6D、6Dから離脱する。すると、両コネクタ17、17’がロータ3のガイドピン11、11よりも透析装置の外部側に浮き上がった状態となるので、その状態においてモータ5の駆動軸5Aを介してロータ3が回転される。これにより、ガイドピン11がロータ3によって回転しながら大径チューブ8とハウジング6の円筒底面との間に潜り込むので、大径チューブ8の全体が円筒状側壁6Aとローラ4、4の間から透析装置の外部側へ押し出されて取り外される(図8(a)〜図8(c)参照)。このように、本実施例においては、屈曲部である大径チューブ8の円筒側壁6Aへの着脱をロータ3とガイドピン11によって自動的に着脱することができる。
【0024】
上述した本実施例のチューブポンプ1においては、導管2における血液の供給側および排出側となる両コネクタ17、17’を着脱可能に保持するホルダ7を備えており、ホルダ7によって両コネクタ17、17’を保持し、その状態のホルダ7をハウジング6に着脱するようにしている。
そのため、ハウジング6に対して導管2を所定の取り付け位置である切欠き部6Bに正確に取り付けることができる。また、ホルダ7を介して導管2の供給側及び排出側の箇所(両コネクタ17、17’)をハウジング6に取り付けるので、導管2のハウジング6への取り付け、取り外し作業を容易に行うことができる。
また、本実施例では、両コネクタ17、17’のフランジ部17C、17C’がホルダ7の係合溝7H、7H’に係合するとともに、突起部17D、17D’が円筒凹部7G、7G’に係合している。そのため、ロータ3が回転されてローラ4によって大径チューブ8が扱かれる際に、導管2に対して長手方向に引っ張り力が作用しても、導管2が長手方向に位置ずれすることを良好に防止することができる。また、突起部17D、17D’が円筒凹部7G、7G’に係合していることにより、導管2そのものが軸回りに回転することを防止することができる。
また、本実施例のホルダ7は、両コネクタ17、17’、つまり大径チューブ8の両端と両チューブ18、19との接続部分を外部から保持するので、ホルダ7自体に液体通路を形成する必要がない。そのため、上述したような内部に液体通路を有するホルダと比較すると、ホルダ7の構成を簡略化することができる。そのため、ホルダ7を製作するための金型を従来の場合よりも簡略化することができ、その分だけチューブポンプ1の製造コストを低減させることができる。また、ホルダ7自体に液体を流通させる液体通路を設けていないので、上記特許文献1に開示された従来品と比較してホルダ7の管理が極めて容易なものとなる。
さらに、本実施例では、両コネクタ17、17’として突起部17D(17D’)を備えた既存のコネクタを用いることができるとともに、両コネクタ17、17’を保持するホルダ7は、導管2の両ホルダ17、17’を保持するために何度も繰り返し使用することも可能である。この意味からも本実施例のチューブポンプ1は、従来と比較して製造コストを低減させることができる。
なお、上記実施例においては、両コネクタ17、17’の第1係合部としてのフランジ部17C、17C’をホルダ7側の第2係合部としての係合溝7H、7H’に係合させるとともに、同じく第1係合部としての突起部17D、17D’をホルダ7側の第2係合部としての円筒凹部7G、7G’に係合させているが、次のような構成であっても良い。つまり、上記実施例における両コネクタ17、17’の第1係合部としてのフランジ部17C、17C’を省略するとともに、ホルダ7側の第2係合部としての係合溝7H、7H’を省略しても良い。また、そのような構成とは逆に、上記実施例における両コネクタ17、17’側の第1係合部としての突起部17D、17D’を省略するとともに、ホルダ7側の第2係合部としての円筒凹部7G、7G’を省略してもよい。換言すると、少なくとも両コネクタ17、17’側に第1係合部を形成し、ホルダ7側に第1係合部と係合可能な第2係合部を形成する構成であれば良い。また、第1係合部とそれに係合される第2係合部の凹部と凸部の関係は、上記実施例とは逆でもよい。例えば、導管2側に第1係合部としての凹部を形成するとともに、ホルダ7側に第2係合部としての凸部を形成しても良い。
【0025】
つぎに、図9は本発明の第2実施例としてのチューブポンプ1の要部を示した構成図である。この第2実施例においては、ホルダ7における排出側となる段付係合凹部7D’を改良することで、大径チューブ8の長さのばらつきを吸収できるようにしたものである。より詳細には、ホルダ7の排出チューブ19側の段付係合凹部7D’に上記円筒凹部の代わりに導管2(排出チューブ19)の長手方向に伸びる長孔状の筒状凹部7G’を形成している。また、段付係合凹部7D’における、排出側コネクタ17’のフランジ部17C’と係合する係合溝7H’の軸方向長さは、フランジ部17C’の軸方向長さの数倍に設定されている。その他の構成は、上述した第1実施例のチューブポンプ1の構成と変わるところはない。
このような第2実施例によれば、ホルダ7の段付係合凹部7D’に排出側コネクタ17’の外面を係合させた際に、排出側コネクタ17’の軸方向における係合位置が所定範囲で選択することができるように、上記筒状凹部7G’、係合溝7H’の軸方向長さに遊びを設けている。そのため、この第2実施例によれば、導管2の屈曲部である大径チューブ8の長さのばらつきを吸収して両コネクタ17、17’をホルダ7に保持することができ、その保持状態の該ホルダ7をハウジング6の切欠き部6Bに取り付けることができる。
このような第2実施例においても、上述した第1実施例と同様の作用・効果を得ることができ、さらに大径チューブ8の全長が所定範囲に収まっていればホルダ7によりハウジング6に取り付けることができるので、導管2の製作コストを抑えることができる。
【0026】
なお、上述した実施例においては、大径チューブ8、供給チューブ18、排出チューブ19および両コネクタ17、17’により導管2を構成し、両コネクタ17、17’に突起部17D、17D’を形成しているが、次のような構成であっても良い。すなわち、可撓性を有する単一のチューブによって導管2を構成して、上記実施例における両コネクタ17、17’と対応する箇所、すなわち導管2における液体の供給側および排出側の外周部にそれぞれ上記突起部17D、17D’と同様に一対の突起部を形成する。また、その導管2側の両突起部と対応させて、それらと係合可能な一対の凹部をホルダ7側に形成する。そして、導管2における両突起部にホルダ7の両凹部を係合させることで、ホルダ7によって導管2を保持し、その状態のホルダ7をハウジング6の切欠き部6Bに着脱させる。そのような構成であっても、上述した実施例と同様の作用・効果を得ることが可能である。
【0027】
また、上記実施例においては、ホルダ7の両係合部7A、7Aは、ホルダ7の端部に相互に平行に設けられており、これに対応してハウジング6の両係合溝6D、6Dも平行に設けられているが、他の実施例として次のような構成を採用しても良い。すなわち、ホルダ7の両係合部7A、7Aを相互に所定角度を成すように形成するとともに、それらと対応するようにハウジング6の両係合溝6D、6Dも所定角度を成すように形成してもよい。例えば、ハウジング6内のロータ3に向かって両係合部7A、7Aの成す角度が小さくなるようにハ字形に形成し、かつ、それらに合せて両係合溝6D、6Dもハ字形にすると、次のような効果を得ることができる。つまり、ロータ3が回転されることで導管2がロータ3側へ引っ張られた際に、ハ字形の両係合部7A、7Aと両係合溝6D、6Dがストッパとして機能するので、ホルダ7および導管2の供給チューブ18がロータ3に向けて引き込まれるのを確実に防止することができる。
また、上述した説明は本実施例のチューブポンプ1を透析装置の血液ポンプとして用いた場合を説明したが、生理食塩水等を送液するポンプとしても本実施例のチューブポンプ1を使用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1‥チューブポンプ 2‥導管
3‥ロータ 4、4‥ローラ
6‥ハウジング 6A‥円筒状側壁
7‥ホルダ 8‥大径チューブ(屈曲部)
18‥供給チューブ 19‥排出チューブ
17C、17C’‥フランジ部(第1係合部)
7H、7H’‥係合溝(第2係合部)
17D、17D’‥突起部(第1係合部)
7G、7G’‥円筒凹部(第2係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に円筒状側壁を有するハウジングと、上記ハウジングの円筒状側壁の内方側に配置されたローラを有するとともに駆動源によって回転されるロータと、上記円筒状側壁と上記ローラとの間に屈曲部が装着されるとともに液体を流通させる導管とを備えて、上記ロータを回転させることで上記ローラによって上記屈曲部を扱いて液体を導管により送液するようにしたチューブポンプにおいて、
上記導管における液体の供給側と排出側の箇所のそれぞれに第1係合部を設けるとともに、該導管の両方の第1係合部と係合可能な第2係合部を有するホルダを設けて、該ホルダの第2係合部を上記導管の両第1係合部に係合させて導管をホルダによって保持し、その状態において該ホルダを上記ハウジングに着脱可能としたことを特徴とするチューブポンプ。
【請求項2】
上記導管は、上記屈曲部の一端に供給側コネクタを介して接続される供給チューブと、上記屈曲部の他端に排出側コネクタを介して接続される排出チューブとを備え、
上記供給側コネクタおよび排出側コネクタの外周部の所定位置には、上記第1係合部としてのフランジ部が形成されており、
また、上記ホルダには、上記両コネクタのフランジ部と係合可能な第2係合部としての凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のチューブポンプ。
【請求項3】
上記導管は、上記屈曲部の一端に供給側コネクタを介して接続される供給チューブと、上記屈曲部の他端に排出側コネクタを介して接続される排出チューブとを備え、
上記供給側コネクタおよび排出側コネクタの外周部の所定位置には、上記第1係合部としての略棒状の突起が形成されており、
また、上記ホルダには、上記両コネクタの突起と係合可能な第2係合部としての凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチューブポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−190062(P2010−190062A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33071(P2009−33071)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)