説明

チューブリーク検出方法

【課題】ボイラにおけるチューブリーク発見までの期間を短縮することができるチューブリーク検出方法を提供すること。
【解決手段】火炉(3)に供給された熱により蒸気を発生させる汽水胴(4)のチューブリークを検出するチューブリーク検出方法であって、火炉(3)に空気を供給するための風道(10)に設けられ、液体(24)を収容するためのドレンポット(14)と、風道(10)を介して供給された燃焼用の空気を排出するための煙道(19)を閉止する煙道出口ダンパ(20)と、を備え、火炉(3)への熱の供給を停止する停止ステップと、煙道出口ダンパ(20)により煙道(19)を閉止する閉止ステップと、ドレンポット(14)において収容された液体(24)を検知ステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラにおける液体のチューブリークを検出するチューブリーク検出方法に関し、特に、チューブリークの検出を短期間で行うことができるチューブリーク検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火力発電所や化学プラント等において使用されるボイラは、経年劣化や腐食等による亀裂に伴い生ずるチューブリークの確認を行う必要がある。
【0003】
チューブリークの確認方法としては、ボイラ運転中における発生蒸気量と補給水量の偏差や火炉内の状況を確認することによる手法が知られている。例えば、特許文献1には、補給水量の増加を検知したときに、温度センサで計測したチューブリーク検出箇所の温度変化から水蒸気等のチューブリークを検出するチューブリーク検出手法が開示されている。
【0004】
ところで、火力発電所等において用いられる大きな規模のボイラと比較して小さい15〜30tクラスの規模のボイラでは、発生蒸気量と補給水量とに差が生じていた場合であっても、この差がリークにより生じたものであるか計器誤差により生じたものであるかを正確に掴むことが難しく、また、ドラム内の水圧が低いため火炉内の状況を目視しただけではチューブリークを判断しにくい面があった。そのため、比較的小さい規模のボイラでは、チューブリークが生じているであろうと予測されている状況でボイラを停止し、ボイラ停止中におけるドラム内の水量を示すドラムレベルが低下したか否かを判断することによりチューブリークの検出を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−144995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ボイラ停止から炉内が完全冷却状態になるまでは、温度降下による水の体積変化に伴いドラムレベルが低下するため、ドラムレベルの低下がボイラ内における液体のチューブリークを要因とするものであるか否か判断が難しかった。
【0007】
このため、ドラムレベルの低下によるチューブリークの検出手法を用いた場合には、ボイラ停止から完全冷却状態となるまで早くて2〜3日、遅い場合には5〜6日後から開始する必要があるため、チューブリークの発見に相当の遅れが生じていた。つまり、従来の手法においては、ボイラ運転中におけるチューブリークの発見が難しく、また、ボイラ停止後についても完全冷却状態になるまで判断が難しく、発見までに相当の日数を要していた。
【0008】
本発明は、このような問題を鑑みてなされたものであり、ボイラにおけるチューブリーク発見までの期間を短縮することができるチューブリーク検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明は、火炉に供給された熱により蒸気を発生させる汽水胴のチューブリークを検出するチューブリーク検出方法であって、前記火炉に空気を供給するための風道に設けられ、液体を収容するための収容部と、前記風道を介して供給された空気を排出するための煙道を閉止する閉止部と、を備え、前記火炉への熱の供給を停止する停止ステップと、前記閉止部により前記煙道を閉止する閉止ステップと、前記収容部において収容された液体を検知ステップと、を含むチューブリーク検出方法に関する。
【0010】
(1)のチューブリーク検出方法によれば、汽水胴から液体が漏洩し、チューブリークが発生したと考えられる場合には、はじめに、火炉への熱の供給を停止する。このとき、火炉への熱の供給を停止した場合であっても、火炉内に残存する保有熱により汽水胴から漏洩した水等の液体は火炉内において気化し水蒸気となる。そして、閉止部により煙道を閉止することにより火炉内において充満した水蒸気は、行き場を失い風道に逃げ込むこととなる。
【0011】
このとき、風道には火炉と違って熱供給源となるようなものはないため、風道に逃げ込んだ水蒸気は、風道内において周囲の外気温付近まで冷却されて凝縮し再び液体となる。この汽水胴から漏洩し風道内において再び凝縮した液体は、風道内の収容部に収容される。そして、この収容部において収容されている液体を検知することにより、汽水胴から液体が漏洩していることを確認することができる。
【0012】
このため、汽水胴を含むボイラ全体が未だ保有熱を有し完全冷却状態となる前であっても、汽水胴から漏洩した液体を検知しチューブリークを検出することができる。したがって、ボイラにおけるチューブリーク発見までの期間を短縮することができる。さらに、風道、煙道及び煙道を閉止するための閉止部といった既存のボイラの設備において一般的に使用されている構成を基にチューブリークの検出を行うことができるため、システムの構築に必要となるコストを低減することができる。
【0013】
(2) また、前記検知ステップにより所定量の液体を検知したときには、警報を発生する警報ステップをさらに備えることが望ましい。
【0014】
(2)のチューブリーク検出方法によれば、汽水胴から所定量の液体が漏洩したことを検知した場合には、自動的に警報が発生される。したがって、チューブリークの可能性が高い場合には、ボイラ作業員にいち早く伝達することができ、ボイラ作業員がチューブリークを発見するまでの期間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ボイラにおけるチューブリーク発見までの期間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のチューブリーク検出方法を実施するためのボイラシステムを示す図である。
【図2】図1のボイラシステムにおいてチューブリークの検出を行っている状態を示す図である。
【図3】図2のボイラシステムにおけるドレンポットを拡大した状態を示す図である。
【図4】本発明のチューブリーク検出方法を実現するためのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
まず、図1を参照して、本実施形態に係るチューブリーク検出方法を実施するためのボイラシステム1の概要について説明する。
ボイラシステム1は、発電所内の補助蒸気を発生させるために用いられる15〜30tの規模の小型ボイラである。ボイラシステム1は、上部に汽水胴4が配置され下部に水胴5が配置されたボイラ本体2の火炉3内に、燃焼用の空気を押込送風機(FDF)11によって風道10から風箱9を介して供給する。そして、バーナ8から燃料を噴射して燃焼させ、生成された燃焼ガスにより汽水胴4の伝熱管内の水を加熱して蒸気を発生させる。該蒸気を汽水胴4から蒸気管7を介して取り出し、発電所のメインボイラ(図示せず)へ蒸気を供給する一方、熱を奪われた燃焼ガスを煙道19を介して煙突21から大気へ放出する。
【0019】
本実施形態に係るボイラシステム1を用いることにより、図2に示すように、火炉3内において汽水胴4の亀裂22や穿孔等から水等の液体が漏洩した場合であっても、その漏洩した液体を短期間で検知することによりチューブリーク発見までの期間を短縮することができる。
【0020】
図1に示すように、ボイラシステム1は、ボイラ本体2と、燃焼用の空気を供給するための風道10と、風道10を介して供給された燃焼用の空気を排出するための煙道19と、煙道19に接続された煙突21と、を備えて構成されている。
【0021】
図1に示すように、ボイラ本体2は、火炉3と、火炉3の上部に設けられ火炉3に供給された熱により蒸気を発生させる汽水胴4と、火炉3の下部に設けられた水胴5と、軽油等の燃料を噴射して燃焼させることにより火炉3内に熱を供給するバーナ8と、火炉3の側方に設けられ、バーナ8の周辺に風道10から供給された燃焼用の空気を供給する風箱9と、を備えて構成されている。汽水胴4には、汽水胴4内に水等の液体を供給する供給管6と、汽水胴4において加熱されて発生した蒸気をメインボイラに供給する蒸気管7と、がそれぞれ接続されている。
【0022】
図1に示すように、風道10は、所定の長さを有する略円筒状に形成され、長さ方向略中間位置の下方において、汽水胴4において漏洩した液体24を収容するための収容部としてのドレンポット14と、ドレンポット14内に収容された液体24の量を検知するレベルスイッチ15と、ドレンポット14の下方において開閉自在に接続されたドレンポットダンパ16と、ドレンポット14において所定量の液体24が収容されたと判定したときに信号を送信する制御部17と、制御部17からの信号に基づいて警報を発生する警報装置18と、を備えて構成されている。
【0023】
風道10の下側は、ドレンポット14に向かってすり鉢状に傾斜して形成されている。ここで、風道10に進入した水蒸気23は、バーナ8が設けられている火炉3から温度の低い風道10内に入った際の温度変化により凝結した結果、図3に示すように風道10の内側に液体24として結露する。そして、この結露した液体24は、風道10内側の傾斜に沿って少しずつ下方に流動しドレンポット14内に滴り収容される。
【0024】
ドレンポット14に収容されている液体24の量は、ドレンポット14に設けられているレベルスイッチ15により検知することができる。すなわち、ドレンポット14において所定量の液体24が収容されたと検知された場合には、レベルスイッチ15に設けられた制御部17においてチューブリークであると判定される。そして、ドレンポット14において所定量の液体24が収容されたと判定された場合には、制御部17は警報装置18に対し信号を送信する。これにより警報装置18は、警報音や警報光による警報を行う。したがって、周囲の作業員等は、チューブリークが発生したということをいち早く知ることができる。また、ドレンポット14に液体24が過度に収容された場合には、通常時には閉止されているドレンポットダンパ16を開放することにより、ドレンポット14に収容されていた液体24を外部に排出することができる。
【0025】
図1に示すように、風道10の長さ方向端部のうちボイラ本体2の反対側には、外気を吸気して風道10及び風箱9を介して火炉3内に燃焼用の空気を供給するFDF11と、FDF11によって燃焼用の外気を吸気する際の吸気音を消音するための吸込サイレンサ13と、FDF11と吸込サイレンサ13との間に配置されFDF11から吸気される空気の流れを一時的に遮断するためのFDF入口ベーン12と、を備えて構成されている。また、火炉3内部において発生した燃焼ガスは、煙道19に接続されている煙突21による煙突効果により煙道19側に吸引され、風道10を介して供給された空気とともに共に煙道19を介して煙突21から放出される。
【0026】
煙道19には、煙道19内に設けられ煙道19内を通過する空気の流れを一時的に閉止する閉止部としての煙道出口ダンパ20が設けられている。
【0027】
図4を参照して、チューブリーク検出時におけるチューブリーク検出方法を実現するためのボイラシステム1のフローチャートについて説明する。
はじめに、図2に示すようにボイラ本体2の汽水胴4が亀裂22等により破損することにより汽水胴4内の液体が漏洩し、チューブリークが発生する(ステップS1)。
【0028】
チューブリークが発生したと考えられる場合には、チューブリークを検出するために、火炉3への熱の供給を停止する(ステップS2)。具体的には、バーナ8への燃料の供給を停止し、熱供給源としてのバーナ8の活動を停止する。
【0029】
次に、火炉3への熱の供給の停止後に、煙道出口ダンパ20により、煙道19を閉止し、火炉3から煙道19を介して煙突21へと流れる空気の流れを遮断する(ステップS3)。
【0030】
図2に示すように、汽水胴4から漏洩した液体である漏洩水は、火炉3内の保有熱により気化し水蒸気23となる。すなわち、バーナ8を停止した場合であっても、火炉3内の熱は残存し、しばらくの間高温状態を保っているため、漏洩水は火炉3内の保有熱により速やかに気化する。この時、煙道19が閉止されているため煙突21方向へと向かう空気の流れはなく、水蒸気23は火炉3内において充満する。なお、風道10に設けられているFDF入口ベーン12により、吸込サイレンサ13側の風道10を閉止することで、煙道19だけでなく風道10も併せて閉止することとしてもよい。これにより、空気及び水蒸気23が吸込サイレンサ13側から外方へ流れ出るのを防止することができる。
【0031】
そして、通常のボイラ運転時における出口である煙道19を塞がれて行き場を失った火炉3内において充満している水蒸気23は、風箱9を介して風道10内に進入する。
【0032】
ここで、火炉3内は、ボイラシステム1の運転時にバーナ8により常時熱が供給されているため、熱の供給を停止した場合であってもしばらくの間は高温状態となっている。これに対し、風道10内は、高温状態の火炉3内と異なり、FDF11により供給される外気により、外気と略同じ温度まで冷却されている。したがって、図3に示すように、火炉3内から風道10内に進入した水蒸気23は、風道10内において冷やされて凝縮し風道10の内側において結露し液体24となる。風道10において結露した液体24は、風道10の下部の傾斜に沿って下方に流動し、風道10の傾斜の最下部に設置されているドレンポット14内に流れ落ち収容される。
【0033】
そして、ドレンポット14において収容された液体24は、ドレンポット14に設置されているレベルスイッチ15により検知される(ステップS4)。そして、ドレンポット14において所定量の液体24が検知された場合には、制御部17はチューブリークが発生したと判定し、警報装置18に対し信号を送信することにより警報装置18による警報が行われる。(ステップS5)。
【0034】
前述した構成を有する本実施形態に係るチューブリーク検出方法によれば、以下の効果が奏される。
【0035】
本実施形態に係るチューブリーク検出方法によれば、チューブリークが発生したと考えられる場合には、火炉3への熱の供給を停止する。このとき、火炉3への熱の供給が停止された場合であっても、火炉3内に残存する保有熱により汽水胴4の亀裂22から漏洩した水等の液体は火炉3内において気化し水蒸気23となる。次に、煙道出口ダンパ20により煙道19を閉止することで空気の流動がなくなった結果、水蒸気23は火炉3内において充満する。そして、火炉3内において充満している水蒸気23は、行き場を失い風箱9を介して風道10に逃げ込むこととなる。
【0036】
このとき、火炉3内は、バーナ8の熱により高温状態となっていたため、バーナ8を停止した場合であっても、しばらく高温状態が継続する。これに対して風道10内は、FDF11により供給される外気により外気と略同じ温度まで冷却されている。したがって、火炉3から風道10に逃げ込んだ水蒸気23は、風道10内において冷却されて凝縮し再び液体24となり、風道10内のドレンポット14に収容される。そして、ドレンポット14において収容されている液体24を検知することにより、汽水胴4から液体が漏洩していることを確認することができる。
【0037】
このため、高温状態が長時間継続する火炉3、煙道19及び汽水胴4を含むボイラシステム1全体が完全冷却状態になる前であっても、外気により冷却されやすい風道10において凝縮した液体24を検知することによりチューブリークを検出することができるため、ボイラにおけるチューブリーク発見までの期間を短縮することができる。
【0038】
さらに、本実施形態のチューブリーク検出方法によれば、汽水胴4から所定量の液体が漏洩したことを検知した場合には、警報装置18により警報が発生される。したがって、チューブリークの可能性が高い場合には、チューブリークであることをボイラ作業員にいち早く伝達することができる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲はこれらに限られるものではない。
【0040】
例えば、本実施形態では、チューブリーク検出時には、閉止部である煙道出口ダンパ20により、煙道19を閉止し、火炉3から煙突21へと流れる空気の流れを遮断しているがこれに限られない。例えば、収容部であるドレンポット14を煙道19に設け、風道10に設けられているFDF入口ベーン12のみを閉止してもよい。この場合、汽水胴4から漏洩した液体は、火炉3内において気化して水蒸気となり、煙道19に進入することにより凝縮して液体24となり、この液体24が煙道19内に設けられたドレンポットにおいて収容される。したがって、このドレンポット内に収容された液体24を検知することによりチューブリークが発生したということを検出することができる。しかし、煙道19は、バーナ8により熱せられた高温の空気を排出している場所であるため、バーナ8を停止した場合であってもしばらくの間高温状態が継続する。その結果、水蒸気23が火炉3から煙道19に進入した場合であっても、FDF11により外気温まで冷却されている風道10内と比較して煙道19内は高温であるため、水蒸気23が凝縮しにくい。したがって、チューブリークを早期に検出するためには、ドレンポットは風道10内に設けることが好ましい。
【0041】
また、制御部17は、レベルスイッチ15に設けられ、ドレンポット14において所定量の液体24が収容されたと判定された場合には、制御部17は警報装置18に対し信号を送信し、警報装置18による警報を行っているがこれに限られない。例えば、制御部17は、管理者用の制御用PC(パーソナルコンピュータ)のCPUであってもよい。この場合、レベルスイッチ15により、所定量の液体24が検知された場合に、レベルスイッチ15から制御用PCに対し検知信号が送信される。検知信号を受信した制御用PCのCPUは、制御用PC付近に設けられている警報装置に対し信号を送信し、信号を受信した警報装置が警報を行ってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 ボイラシステム
2 ボイラ本体
3 火炉
4 汽水胴
10 風道
14 ドレンポット
15 レベルスイッチ
17 制御部
18 警報装置
19 煙道
20 煙道出口ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炉に供給された熱により蒸気を発生させる汽水胴のチューブリークを検出するチューブリーク検出方法であって、
前記火炉に空気を供給するための風道に設けられ、液体を収容するための収容部と、
前記風道を介して供給された空気を排出するための煙道を閉止する閉止部と、を備え、
前記火炉への熱の供給を停止する停止ステップと、
前記閉止部により前記煙道を閉止する閉止ステップと、
前記収容部において収容された液体を検知ステップと、
を含むことを特徴とするチューブリーク検出方法。
【請求項2】
前記検知ステップにより所定量の液体を検知したときには、警報を発生する警報ステップをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のチューブリーク検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−141085(P2011−141085A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2149(P2010−2149)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)